説明

接合焼結体の製造方法および接合焼結体

【課題】胴部と管状部とを嵌め合わせて焼成収縮を利用して接合する方法において、胴部と管状部とを強固に接合し、胴部の変形や反りを抑制できるようにする。
【解決手段】胴部用被焼成体12と管状部用被焼成体14とを固定する。胴部用被焼成体12の回転対称軸Aを含む断面において、胴部用被焼成体12の外周面12bの法線Dと内周面12cの法線Eとによって形成される仮想中心Fの軌跡FFの末端Pと胴部用被焼成体12の管状部14との接合面12aとが形成する交差角αが30°以上となるようにする。これらを熱処理することによって、胴部用被焼成体12および管状部用被焼成体14を焼結させて胴部および管状部を生成させると共に胴部と管状部とを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管等の接合焼結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックス、高融点金属、セラミックス/金属複合体は、通常、原料粉末を焼結して製造されるため、製品への形状付与は、主として成形時に行われる。しかし、形状付与のし易さは成形法に依存する。例えば、円板製品は、金型プレス法では成形しやすい。しかし、複雑形状の製品は、CIP(Cold Isostatic Press)にて塊状被焼成体をいったん成形してから、機械加工により形状付与することが行われている。
【0003】
ゲルキャスト法は、無機粉末を含む液状スラリーを、スラリーに含まれる有機化合物相互の化学反応により固化して無機粉末被焼成体を得る方法である。成形型を高精度に転写することができるため、高精度の形状付与に優れている。しかしながら閉構造を有する製品の場合、離型不可のため適用できなくなるか、あるいはロストワックス法のように別途中子型を設けて内表面形状を付与する必要がある。
【0004】
特に、メタルハライドランプ用発光管、あるいは高圧ナトリウムランプ用発光管のように、胴部の内径より管状部の穴径が小さい製品においては、生産性を向上させることが難しい。発光管を構成する各要素を、単純形状となるよう小部品に分割し、各小部品を、押出成形あるいはドライバックプレス成形、金型プレス成形により得ることは考えられる。この場合には、中子を別途成形して、中子と外型の間の隙間にスラリーを注型するゲルキャスト法にて、予め一体化した被焼成体を得る方法が採用されている(特許文献1、2)。また、複数の部品の焼成収縮率差を利用し、焼結時により一体化させる方法がある(焼き嵌めと記す:特許文献3)
【特許文献1】再公表特許WO2002-085590A1
【特許文献2】国際出願WO2005-028170A1
【特許文献3】特開2000-113817
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いわゆる焼き嵌めに際しては、耐リーク性を確保する目的で、一定の焼き嵌め幅Wが必要になる。この点について本発明者の検討結果を説明する。図7に示すように、管状部分4と胴部32とを焼き嵌めしたものとする。焼き嵌めに際して、径が相対的に大きい胴部32の端部の内側面32cを、径が相対的に小さい管状部4の外側で焼成収縮させ、両者を圧着させ、一体化する。この際には、ガス漏れを防止するという観点から、接合部分の幅(焼き嵌め幅)Wをできるだけ大きくする必要がある。
【0006】
しかし、この場合、胴部32の末端は細長い形状をしており、この末端が比較的に大面積にわたって管状部4の接合面4cに対して接触しており、胴部の末端部が回転対称軸へと向かって焼成収縮していく。しかし、この過程で、径の小さい管状部4の外周面4cからの反力によって、端部の回転対称軸へと向かう収縮Bが抑えられる。この結果、端部の末端面32a近辺は外周面32bへと向かって反り、端面32aは外側を向く傾向がある。また、内側面32cには、回転対称軸へと向かって突出する変形突起40が生成する傾向がある。
【0007】
このような変形や反りが生ずると、接合部分からのガスリーク量が増加する傾向がある。しかし、こうした変形や反りを防止するために、胴部32の厚さを大きくして強度を高くした場合には、この接合部分近辺の熱容量が大きくなり、発光効率低下の原因となる。
【0008】
本発明の課題は、胴部と管状部とを嵌め合わせて焼成収縮を利用して接合する方法において、胴部と管状部とを強固に接合し、胴部の変形や反りを抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、中空の胴部と管状部とを備えている接合焼結体の製造方法であって、
胴部用被焼成体の回転対称軸を含む断面において、胴部用被焼成体の外周面の法線と内周面の法線とによって形成される仮想中心の軌跡の末端と胴部用被焼成体の管状部との接合面とが形成する交差角αが30°以上となるように、胴部用被焼成体と管状部用被焼成体とを固定する固定工程;
および両者を熱処理することによって、胴部用被焼成体および管状部用被焼成体を焼結させて胴部および管状部を生成させると共に胴部と管状部とを接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、図7に示す従来技術の焼き嵌め方法とは異なり、胴部の末端が管状部の外周面に対して斜めに交差するように設置し、この状態で焼成収縮差を利用して胴部と管状部との接合を実施している。これによって、接合部分の長さWを大きくしなくとも、胴部と管状部とを強固に接合することに成功した。しかも、焼成収縮方向にみたときの胴部の厚みが大きくなるので、前記したような変形や反りは生じにくくなり、これによるリーク特性の劣化を防止できることを見いだし、本発明に到達した。
【0011】
このような方法では、接合部分の信頼性を向上させ得るのと共に、接合部分の長さWを大きくする必要がないので、接合部分における熱容量を低減できる。従って、例えば発光管用途においては、発光効率を一層向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明の方法によって製造された発光管1を概略的に示す断面図である。
発光管1は、胴部2と、胴部2の両端に接合された一対の管状部4からなる。胴部2は、本例では樽状をなしているが、具体的形状には制限はなく、例えば直管状でもよい。2bは胴部2の外周面であり、2cは内周面であり、内周面は発光空間3に面している。胴部2の末端には開口が形成されており、開口中に管状部4が挿入され、接合されている。
【0013】
管状部4の両端にはそれぞれ開口4a、4bが形成されており、内周面4dは内側空間に面している。管状部4の外側の接合面4cが胴部2の接合面2aによって回転対称軸Aの方へと向かって圧着され、一体化している。なお、Gは焼成後の管状部の外径である。
【0014】
発光管の成形時には、図2に示すように、胴部用被焼成体12の開口12a内に、管状部用被焼成体14の先端を挿入する。12bは胴部用被焼成体12の外周面であり、12cは内周面である。管状部14の両端にはそれぞれ開口14a、14bが形成されており、内周面14dは内側空間に面している。管状部用被焼成体14の外側の接合面14cを開口に対向させる。この時点においては、開口の内径Jは、管状部用被焼成体14の外径Hよりも大きい。組み立て段階では、J−Hは0.02mm以上であることが好ましい。
【0015】
図3は、この接合部分の拡大図である。前述したように、胴部用被焼成体12の開口端面12aを、管状部用被焼成体14の外側接合面14cと対向させ、固定してアセンブリ(組み立て体)とする。この固定方法は特に限定されず、通常の機械的固定方法であってよい。また、両成形体の固定は、完全な固定である必要はなく、摩擦固定など、焼き嵌めに際して胴部と管状部が大きく位置ずれしない程度の固定でよい。
【0016】
ここで、胴部用被焼成体12の回転対称軸Aを含む断面(つまり図3の断面)を参照する。胴部用被焼成体12の外周面12bの法線Dと内周面12cの法線Eとによって形成される仮想中心Fの軌跡FFを考える。仮想中心Fの軌跡FFの末端Pと端面(接合面)12a接合面とが形成する交差角をαとする。ここで、本発明においては、この交差角αを30°以上とする必要がある。
【0017】
この状態で、胴部用被焼成体12の焼成収縮を、管状部用被焼成体14の焼成収縮に比べて十分に大きくすると、焼成段階において、接合面12aが14cと強固に圧着し、両者の接合界面が一体化する。この際、本発明では、交差角αが大きいことから、図7に示す例に比べて、矢印Aと垂直方向にみたときの胴部用被焼成体の肉厚が大きく、前述した反りや変形が生じない。しかも、接合部分の長さは、図7に示す例に比べて小さいが、胴部用被焼成体の実質的な肉厚が大きいことから、圧着力は大きく、両者の接合界面の信頼性は向上した。
【0018】
ここで、交差角αは特に限定されないが、本発明の観点からは、35°以上とすることが更に好ましく、45°以上とすることが一層好ましい。この上限は特にないが、本発明の観点からは、85°以下とすることが好ましく、75°以下とすることが更に好ましい。
【0019】
好適な実施形態においては、管状部用被焼成体を単独で焼結させて相対密度99%としたときの外径をD1とし、胴部用被焼成体を単独で焼結させて相対密度99%としたときの内径をD2としたとき、3%≦(D1−D2)/D1×100(%)≦20%となるようにする。なお、(D1−D2)/D1×100(%)を「焼き嵌め率」と呼ぶ。
【0020】
すなわち、図2、図3に示す胴部用被焼成体12を単独で焼結させて相対密度99%としたときに、図4に示すような焼結体22が得られたものとする。この焼結体22の接合部分の開口22aの内径をD2とする。また、図3に示す管状部用被焼成体14を単独で焼結させて相対密度99%としたときに,図4に示すような焼結体24が得られたものとする。この焼結体24の接合部分の外径をD1とする。
【0021】
(D1−D2)/D1×100(%)が正の値に向かって大きくなるほど、焼成時において、胴部用被焼成体から管状部用被焼成体へと印加される圧着力は大きくなり、接合部分の一体化が進行する。この観点からは、(D1−D2)/D1×100(%)を3%以上とすることが好ましく、5%以上とすることが更に好ましい。
【0022】
しかし、(D1−D2)/D1×100(%)が大きくなりすぎると、焼成時における胴部用被焼成体から管状部用被焼成体へと印加される圧着力が大きくなりすぎ、被焼成体の変形が大きくなり、かえって接合部分の信頼性が低下する傾向がある。この観点からは、(D1−D2)/D1×100(%)を20%以下とすることが好ましく、15%以下とすることが更に好ましい。
【0023】
また、好適な実施形態においては、最終焼結後の製品寸法において(図1参照)、胴部の中央部の肉厚dに対して、W≦2dとすることが好ましい。更に好ましくは、0.5d≦Wとし、また、W≦1.5dとする。Wを2d以下、0.5d以上とすることによって、端部の反りおよび変形を防止できる。これらはいずれもシール性や耐熱衝撃性低下の原因となる。
【0024】
以下、更に好適な実施形態について述べる。
(胴部用被焼成体および管状部用被焼成体の製法)
胴部用被焼成体と管状部用被焼成体との各成形方法は特に限定されず、ドクターブレード、押し出し、ゲルキャスト法などの方法を利用できる。特に好ましくは、成形型に無機粉末と有機化合物を含むスラリーを鋳込み、有機化合物相互の化学反応、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により固化させた後、離型することにより粉末成形体を得ることができる。
【0025】
この成形スラリーは、原料粉体の他、分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や固化反応調整のための分散剤、触媒を含んでも良い。このような成形方法は、特許文献1,2に記載されている。
【0026】
各粉末成形体に含有される無機粉末は、特に限定されず、セラミック粉末、金属粉末、セラミック粉末と金属粉末との混合物であってよい。具体的には以下を例示できる。
【0027】
こうしたセラミック粉体としては、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、YAGおよびこれらの混合物を例示でき、99%以上の高純度の粉体が好ましい。焼結性や特性改善のための添加成分も原料粉体に含まれる。Mg, Y, Zr, Sc, La, Si,
B, Na, Cu, Fe, Caもしくはこれらの酸化物を例示できる。また、金属粉末としては、モリブデン、タングステンやその合金を例示できる。併用できる焼結助剤としては、酸化マグネシウムが好ましいが、ZrO2,
Y2O3,La2O3, Sc2O3も例示できる。
【0028】
各成形体中に含有される、反応性官能基を有する有機分散媒は、以下を例示できる。
反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化可能な液状物質であること、及び注型が容易な高流動性のスラリーを形成できる液状物質であること、の2条件を満たすことが必要である。ゲル化剤と化学結合し、スラリーを固化するためには、反応性官能基、即ち水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。
【0029】
前記有機分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より充分な固化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。
【0030】
2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール(エチレングリコールのようなジオール類、グリセリンのようなトリオール類等)、多塩基酸(ジカルボン酸類等)が考えられる。尚、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリエチレングリコールのように多数あってもよい。
【0031】
一方、注型が容易な高流動性のスラリーを形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0032】
既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリーを固化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0033】
エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば充分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0034】
この実施形態においては、非反応性分散媒を併用できる。この分散媒としては、エーテル、炭化水素、トルエン等が好ましい。
【0035】
また、ゲル化剤との反応効率を確保する観点からは、全分散媒のうち、反応性分散媒を60質量%以上含有させることが好ましく、85質量%以上含有させることがより好ましい。
【0036】
反応性分散媒は、具体的には、20℃での粘度が20cps以下のエステル類、エチレングリコールやグリセリン等のジオール、トリオール、多価アルコール。グルタル酸ジメチル等の多塩基酸エステル、トリアセチン、コハク酸ジメチル、マロン酸ジメチル等の多価アルコールの酸エステルを例示できる。
【0037】
反応性分散媒の具体例としては、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。他には、WO2002-085590A1の、22頁10行目〜25行目に記載されたものを例示できる。
【0038】
また、各粉末成形体に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して固化反応を引き起こすものであり、例えばWO2002-085590A1の21頁〜22頁9行目に記載されているが、以下を例示できる。
【0039】
ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリーを固化することが好ましい。
【0040】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリーを固化可能な物質である。従って、本発明におけるゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0041】
但し、前記反応性ゲル化剤は、スラリーの流動性を確保する観点から、粘性が低いもの、具体的には20℃における粘度が3000cps以下の物質を使用することが好ましい。
【0042】
一般に平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本発明では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。尚、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0043】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアナート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアナート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0044】
イソシアナート類はジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリーが固化してしまう場合がある。
【0045】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましく、より充分な固化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤との反応によりスラリーを固化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリーを大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0046】
イソシアナート基、及び/又はイソチオシアナート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアナート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアナート)系イソシアナート(樹脂)、イソチオシアナート(樹脂)等を挙げることができる。
【0047】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0048】
尚、ゲル化剤分子内に、イソシアナート基又はイソチオシアナート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアナート基とイソチオシアナート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアナートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0049】
各粉末成形体を製造するためのスラリーは、以下のように作製できる。
(1)分散媒に無機物粉体を分散してスラリーとした後、ゲル化剤を添加する。
(2)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリーを製造する。
【0050】
注型時の作業性を考慮すると20℃におけるスラリーの粘度は30000cps以下であることが好ましく、20000cps以下であることがより好ましい。スラリーの粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー濃度(スラリー全体体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0051】
但し、スラリー濃度は、通常は、スラリー濃度が25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものが更に好ましい。
【0052】
各粉末成形体を接合した後、接合体を脱脂あるいは仮焼することができる。この脱脂工程や仮焼工程は、還元性雰囲気下で行うことが好ましい。また、焼結工程も還元性雰囲気下で行うことが好ましい。還元性雰囲気は代表的には水素であり、不活性ガスを含んでいて良い。
【0053】
成形型、接合冶具は、アルミニウム合金、鉄系材料の他、シリコーン、高密度ポリエチレン等の樹脂で作製することが好ましい。型表面に離型性向上、あるいは耐摩耗性向上のためのコーティング、例えばテフロン(登録商標)やDLC(Diamond-Like-Carbon)を施しても良い。
【0054】
(管状部用被焼成体と胴部用被焼成体との焼成収縮率の調整)
本発明における接合を実現するためには、アセンブリを組み立てた時点において、管状部用被焼成体の焼成収縮率を、胴部用被焼成体の焼成収縮率よりも小さくする必要がある。この方法は特に限定されない。いずれの成形体も、組み立て前に脱脂することができ、また仮焼することができる。両者の焼成収縮差を調整するためには、例えば両者の組成を変更できる。特に好ましくは、管状部用粉末成形体を成形、乾燥した後に、大気中で1000〜1500℃で仮焼しておき、得られた仮焼体を被焼成体として使用する。
【0055】
また、胴部用被焼成体の末端に管状部分が突き出していてもよい。また、管状部は胴部の内側空間に、図1に示すように突き出していてもよい。むろん管状部用被焼成体は単純円筒形状である必要はない。例えば接合部分のみ拡径あるいは縮径していてもよい。
【0056】
(焼結)
焼結温度は材料によって決定する。しかし、好適な実施形態においては、焼結時の最高温度を1750℃以下とすることもできる。
【0057】
焼成温度の下限も特になく、材料によって選択するが、例えば1350℃以上、更には1450℃以上とすることが好ましい。また、焼成体の色調(例えば黒化)に応じ、適宜加湿してよい(露点−10〜+10℃)。
【0058】
また、好適な実施形態においては、被焼成体を1000℃以上、1200℃以下の温度で脱脂し、次いで焼結できる。脱脂は大気雰囲気中で行うことが好ましい。この際、炉内が酸欠状態にならないように、適宜大気もしくは酸素を供給してよい。
【0059】
ゲルキャスト被焼成体中有機分は、通常成形(粉末プレス用バインダや押出し加工)法によって得られた被焼成体中の有機分に比べて分解しにくいので、本脱脂工程は有機分の分解促進に有効であり、焼結体の黒化抑制に効果的である。脱脂時間も限定されないが、30時間以上とすることが好ましく、60時間以上とすることが更に好ましい。
【0060】
また、焼成体色調に応じ(例えば黒化)、1000〜1500℃で大気中アニールしてよい。この際、炉内が酸素欠乏状態にならないように、適宜大気もしくは酸素を供給してよい。
【0061】
本発明の焼結体は、放電灯の発光管に対して好適にし用できる。高圧放電灯は、自動車用ヘッドランプ、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)、液晶プロジェクターなどの各種の照明装置に適用可能である。この発光管は、メタルハライドランプ用発光管や高圧ナトリウムランプ発光管を含む。また、本発明の焼結体の用途は限定されず、耐熱衝撃性を必要とする熱サイクル機関における構造体など、各種の用途に適用できる。
【実施例】
【0062】
(実験例1〜6)
図1〜図4を参照しつつ説明した前記方法にしたがって、図1の発光管1を作製した。
具体的には、成形スラリーは、原料粉末としてアルミナ粉末(商品名
アルミナAES-11C、住友化学工業株式会社)100重量部、およびマグネシア0.025重量部)、分散媒として、マロン酸ジメチル24重量部、ゲル化剤(商品名
バイヒジュール3100、住友バイエルウレタン株式会社)2重量部、分散剤(商品名 マリアリムAKM0531、日本油脂株式会社)1重量部、触媒としてトリエチルアミン0.2重量部を混合したものを用いた。
【0063】
この成形用スラリーを、アルミニウム合金製の型に室温で注型の後、室温で1時間放置した。次いで、40℃で30分放置して固化を進めてから、被焼成体を離型した。さらに室温、次いで90℃の各々にて2時間放置して、最終焼成後の寸法が外径17mm、胴部中央肉厚1mm、胴部長20mmのメタルハライドランプ用発光管となる胴部被焼成体12を得た。
【0064】
管状部4、最終焼成後の寸法で、各キャピラリ長15mm、外径3mmとなるよう、押出成形法により円筒被焼成体を得た。管状部の仮焼温度を大気中1000℃〜1500℃の範囲で調整することにより、焼き嵌め率を下表のように調整した。接合幅Wは、いずれも最終焼成後の幅で1.2mmである。Heリークは各々10本測定した。Heリーク測定機にて測定し、1×10−7atm・cc/秒以上を示したものを不良とした。変形は目視で判断した。実験例1〜6とも交差角αは50°であった。
【0065】
最終焼成は、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃で焼成し、緻密化、透光化させて行った。Heリーク、および変形を評価の後、合格品について水中急冷法で耐熱衝撃性を評価し、150℃未満でクラックが発生したものを耐熱衝撃不良とした。耐熱衝撃性評価の後、合格品についてHeリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、1×10−8atm・cc/秒以下であり、問題なかった。
【0066】
【表1】

【0067】
図6は、実験例3について、得られた発光管の接合部分を拡大して示す顕微鏡写真である。胴部と管状部とが強固にクラックなしに結合されていることがわかる。
【0068】
(実験例7)
実験例1〜6と同様の方法で、胴部用被焼成体12を得た。ただし、図5に示すように、焼き嵌め部分の接合部幅Wを1.5mmに変更し、交差角αを35°に変更した。焼き嵌め率は8%とした。それ以外は実験例1と同じである。
【0069】
最終焼成は、水素3:窒素1の雰囲気中1800℃で焼成、緻密化、透光化させて行った。10本ともHeリークは1×10−8atm・cc/秒以下であり、変形も認められなかった。更に水中急冷法で耐熱衝撃性を評価したが、10本とも150℃でクラックは発生しなかった。耐熱衝撃性評価の後、合格品10本について、Heリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、1×10−8atm・cc/秒以下であり、問題なかった。
【0070】
(比較例)
実験例1と同様にして発光管を作製した。ただし、焼き嵌め部分における接合部幅Wを4mmと長くし、交差角αを10°とした。この結果、図7に示すように、焼き嵌め部端部に反りや変形が確認された。また、Heリークは、10本中3本について、1×10−7atm・cc/秒より大きくなった。
【0071】
合格品7本について水中急冷法で耐熱衝撃性を評価したところ、150℃でクラックは発生しなかった。しかし、耐熱衝撃性評価の後、合格品7本について、Heリーク測定機にて胴部リーク量を測定したところ、2本が1×10−7atm・cc/秒より大きくなった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明によって製造できる発光管の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】胴部用被焼成体12と管状部用被焼成体とのアセンブリを模式的に示す断面図である。
【図3】胴部用被焼成体12と管状部用被焼成体14との接合部分の拡大図である。
【図4】胴部用被焼成体12および管状部用被焼成体14をそれぞれ単独で焼結することによって得られた各焼結体22、24を示す断面図である。
【図5】他の実施形態に係る 胴部用被焼成体12Aと管状部用被焼成体14との接合部分の拡大図である。
【図6】本発明によって得られた発光管の接合部分を示す顕微鏡写真である。
【図7】比較例の製法によって得られた発光管の接合部分を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1 発光管(焼結体) 2 胴部 2a 胴部の接合面 4 管状部 4c 管状部の接合面 12 胴部用被焼成体 12 胴部用被焼成体12の端面(接合面) 14 管状部用被焼成体 14c 管状部用被焼成体14の接合面 A 胴部の回転対称軸 B 焼成収縮の方向 D 胴部用被焼成体12の外周面12bの法線 E 胴部用被焼成体12の内周面12cの法線 F 仮想中心 FF 仮想中心Fの軌跡 α 交差角 P 軌跡FFの末端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の胴部と管状部とを備えている接合焼結体の製造方法であって、
胴部用被焼成体の回転対称軸を含む断面において、前記胴部用被焼成体の外周面の法線と内周面の法線とによって形成される仮想中心の軌跡の末端と前記胴部用被焼成体の前記管状部との接合面とが形成する交差角αが30°以上となるように、前記胴部用被焼成体と管状部用被焼成体とを固定する固定し;および
前記胴部用被焼成体および前記管状部用被焼成体を熱処理することによって、前記胴部用被焼成体および前記管状部用被焼成体を焼結させて前記胴部および前記管状部を生成させると共に前記胴部と前記管状部とを接合することを特徴とする、接合焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記管状部用被焼成体を単独で焼結させて相対密度99%としたときの外径をD1とし、前記胴部用被焼成体を単独で焼結させて相対密度99%としたときの内径をD2としたとき、D1とD2とが以下の関係を満足することを特徴とする、請求項1記載の接合焼結体の製造方法。
3%≦ (D1−D2)/D1×100(%) ≦ 20%
【請求項3】
前記回転対称軸方向における接合部分の幅Wと前記胴部の中心部の肉厚dとがW≦2dの関係を満足することを特徴とする、請求項1または2記載の接合焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記接合焼結体が発光管であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の接合焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記発光管がメタルハライドランプ用発光管であることを特徴とする、請求項4記載の接合焼結体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の方法によって得られたことを特徴とする、接合焼結体。
【請求項7】
発光管であることを特徴とする、請求項6記載の接合焼結体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−254225(P2007−254225A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82790(P2006−82790)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(597003608)エヌジーケイ・オプトセラミックス株式会社 (15)
【Fターム(参考)】