説明

接合膜付き基材、接合方法および接合体

【課題】被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率良く接合することができる接合膜を備えた接合膜付き基材、かかる接合膜付き基材と他の被着体とを、低温下で効率良く接合する接合方法、前記接合膜付き基材と被着体とが高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接合膜付き基材1は、基板2と、基板2上に設けられ、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含有する接合膜3とを有している。このような接合膜3は、エネルギー線が照射されると、他の被着体との接着性が発現するとともに、接合膜3中に含まれるエネルギー線吸収物質4が、エネルギー線の一部を吸収して発熱し、接合膜3に発現する接着性を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合膜付き基材、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部材(基材)同士を接合(接着)する際には、従来、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤を用いて行う方法が多く用いられている。
接着剤は、部材の材質によらず、接着性を示すことができる。このため、種々の材料で構成された部材同士を、様々な組み合わせで接着することができる。
例えば、インクジェットプリンタが備える液滴吐出ヘッド(インクジェット式記録ヘッド)は、樹脂材料、金属材料、シリコン系材料等の異種材料で構成された部品同士を、接着剤を用いて接着することにより組み立てられている。
このように接着剤を用いて部材同士を接着する際には、液状またはペースト状の接着剤を接着面に塗布し、塗布された接着剤を介して部材同士を貼り合わせる。その後、熱または光の作用により接着剤を硬化させることにより、部材同士を接着する。
【0003】
ところが、このような接着剤では、以下のような問題がある。
・接着強度が低い
・寸法精度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
また、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程の高コスト化・複雑化を招いている。
【0004】
一方、接着剤を用いない接合方法として、固体接合による方法がある。
固体接合は、接着剤等の中間層が介在することなく、部材同士を直接接合する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接着剤のような中間層を用いないので、寸法精度の高い接合体を得ることができる。
【0005】
しかしながら、固体接合には、以下のような問題がある。
・接合される部材の材質に制約がある
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
このような問題を受け、接合に供される部材の材質によらず、部材同士を、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合する方法が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−82404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率良く接合することができる接合膜を備えた接合膜付き基材、かかる接合膜付き基材と他の被着体とを、低温下で効率良く接合する接合方法、および、前記接合膜付き基材と被着体とが高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜付き基材は、基材と、
前記基材上に設けられ、シリコーン材料を含有し、エネルギー線の照射により、他の被着体との接着性が発現する接合膜とを有し、
前記接合膜は、さらに、前記エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質が添加されることにより、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記他の被着体との接着性が促進されるものであることを特徴とする。
これにより、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜を備えた接合膜付き基材が得られる。
【0009】
本発明の接合膜付き基材では、前記接合膜は、前記シリコーン材料と、前記エネルギー線吸収物質とを含有する液状材料を前記基材上に供給することにより液状被膜を形成し、前記液状被膜を乾燥することにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜中にエネルギー線吸収物質をより均一に分散させることができる。そのため、接合膜は、エネルギー線が照射されることにより、より確実に被着体に対する接着性が発現するものとなる。また、比較的少量のエネルギー線照射によっても確実にかかる接着性が発現するため、より省エネルギーで、接合膜付き基材を被着体に接合することができる。また、接合膜表面の平滑性が特に高いものとなり、接合膜付き基材を被着体に、より高い寸法精度で接合することができる。
【0010】
本発明の接合膜付き基材では、前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成されることが好ましい。
これにより、接合膜付き基材を構成する接合膜は、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜の膜強度が特に優れたものとなる。
本発明の接合膜付き基材では、前記シリコーン材料は、シラノール基を有することが好ましい。
これにより、液状被膜を乾燥させて接合膜を得る際に、シラノール基の反応性がより向上し、隣接するシリコーン材料が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになり、得られる接合膜の膜強度が特に優れたものとなる。
【0011】
本発明の接合膜付き基材では、前記エネルギー線吸収物質は、酸化チタン、酸化セリウム、インジウム錫酸化物(ITO)、およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種の材料を構成成分として含むものであることが好ましい。
これにより、接合膜は、より少量のエネルギー線照射によって、より確実に被着体に対する接着性が発現するものとなる。結果として、より省エネルギーで接合膜付き基材を被着体に接合することができる。また、接合膜中に、このような材料で構成されたエネルギー線吸収物質を含むことにより、接合膜の耐熱性、耐候性、および寸法安定性がさらに優れたものとなる。
【0012】
本発明の接合膜付き基材では、前記エネルギー線吸収物質は、粒子状をなしていることが好ましい。
これにより、接合膜にエネルギー線を付与した際に、接合膜に効率良く接着性を発現させることができる。
本発明の接合膜付き基材では、前記エネルギー線吸収性物質の平均粒径は、100〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合膜にエネルギー線を照射した際に、接合膜により効率良く接着性を発現させることができる。また、このような接合膜は、接合膜中のエネルギー線吸収物質の含有量を調整することにより、容易に、光透過性を制御することができるものとなる。
【0013】
本発明の接合膜付き基材では、前記接合膜の平均厚さをT[nm]、前記エネルギー線吸収物質の平均粒径をL[nm]としたとき、1.5≦T/L≦10の関係を満足することが好ましい。
これにより、接合膜の被着体との接合面を十分に平滑なものとすることができる。その結果、接合膜付き基材を被着体に対して、特に高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0014】
本発明の接合膜付き基材では、前記接合膜中における前記エネルギー線吸収物質の含有率は、1〜30wt%であることが好ましい。
これにより、接合膜にエネルギー線を付与した際に、接合膜により効率良く接着性を発現させることができる。
本発明の接合膜付き基材では、前記エネルギー線は、紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜付き基材を、被着体に対して、より強固に接合することができる。また、本発明において、接合膜は、比較的短時間の紫外線照射によって、好適に接着性を発現することができ、より省エネルギーで接合膜付き基材を被着体に接合することができる。
【0015】
本発明の接合膜付き基材は、基材と、
前記基材上に設けられ、シリコーン材料を含有し、エネルギー線の照射により、他の被着体との接着性が発現する接合膜とを有し、
前記接合膜は、前記エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質が、部分的に添加されることにより、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記エネルギー線吸収物質を含む部分における前記他の被着体との接着性が促進されるものであり、
前記接合膜の前記エネルギー線吸収物質を含む部分と、前記接合膜の前記エネルギー線吸収物質を含まない部分とは、前記被着体に対する接合強度が互いに異なるものであることを特徴とする。
これにより、被着体に対して、高い寸法精度で接合されるとともに、被着体との接合箇所に応じて接合強度が調整された接合膜付き基材を提供することができる。
【0016】
本発明の接合方法は、基材および被着体を用意する工程と、
前記基材上に、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質とを含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成した後、前記液状被膜を乾燥して接合膜を形成する工程と、
前記接合膜に前記エネルギー線を照射することにより、前記接合膜に接着性を発現させるとともに、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記接合膜の接着性を促進させ、当該接合膜を介して前記基材と前記被着体とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、基材を、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる。
【0017】
本発明の接合方法は、基材および被着体を用意する工程と、
前記基材上に、シリコーン材料を含有する液状材料と、シリコーン材料に加えて、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質を含有する液状材料とをそれぞれ異なる領域に供給することにより、液状被膜を形成した後、前記液状被膜を乾燥して接合膜を形成する工程と、
前記接合膜に前記エネルギー線を照射することにより、前記接合膜に接着性を発現させるとともに、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記エネルギー線吸収物質を含む部分における前記被着体との接着性を促進させ、当該接合膜を介して前記基材と前記被着体とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、基材を、被着体に対して、高い寸法精度、かつ低温下で効率よく接合することができるとともに、基材と被着体との接合強度を容易に調整することができる。
本発明の接合体は、本発明の接合膜付き基材と、被着体とを有し、
これらを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする。
これにより、被着体に対して、接合膜付き基材が高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の接合膜付き基材、接合方法および接合体を、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の接合膜付き基材、この接合膜付き基材と対向基板(他の被着体)とを接合する接合方法、および本発明の接合膜付き基材を備える接合体の各第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の接合膜付き基材の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図2、図3は、本実施形態の接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1ないし図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0019】
以下では、まず、本発明の接合膜付き基材の第1実施形態について説明する。
図1に示す接合膜付き基材1は、板状をなす基板(基材)2と、基板2上に設けられた接合膜3とを有している。この接合膜付き基材1は、他の被着体に、接合膜3を介して基板2を接合して用いられる。
基板2は、他の被着体に対して、接合膜3を介して接合されるものである。
【0020】
このような基板2の構成材料は、それぞれ特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリブテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、MgAl、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
【0021】
また、基板2は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
また、基板(基材)2の形状は、接合膜3を支持する面を有するような形状であればよく、板状のものに限定されない。すなわち、基材の形状は、例えば、塊状(ブロック状)、棒状等であってもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、基板2が板状をなしていることから、基板2が撓み易くなり、基板2は、対向基板5の形状に沿って十分に変形可能なものとなるため、これらの密着性がより高くなる。また、接合膜付き基材1において、基板2と接合膜3との密着性が高くなるとともに、基板2が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和することができる。
この場合、基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。なお、後述する対向基板(他の被着体)5の平均厚さも、前述した基板2の平均厚さと同様の範囲内であるのが好ましい。
【0023】
接合膜3は、接合膜付き基材1を他の被着体に接合した際に、基板2と他の被着体との間に位置し、これらの接合を担うものである。
この接合膜3は、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含むものである。
接合膜3中に含まれるシリコーン材料は、エネルギー線が照射されると、他の被着体との接着性を発現するものである。
【0024】
また、接合膜3中に含まれるエネルギー線吸収物質4は、エネルギー線を吸収して、発熱するものである。
このような接合膜3は、エネルギー線の照射により、その表面付近に、他の被着体との接着性が発現するとともに、エネルギー線吸収物質4が、かかるエネルギー線を吸収して発熱することにより、他の被着体との接着性が促進される。
このような接合膜3を有する接合膜付き基材1は、他の被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率良く接合することができるものとなる。
なお、接合膜3の詳細な構成については、以下の接合方法において説明する。
【0025】
次に、本実施形態の接合膜付き基材と他の被着体との接合方法について説明する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き基材1を用意する工程と、接合膜付き基材1の接合膜3に対してエネルギー線を照射することにより、接合膜3の表面付近に接着性を発現させる工程と、対向基板(他の被着体)5を用意し、接合膜付き基材1が備える接合膜3と対向基板5とが密着するように、これらを貼り合わせ、接合体10を得る工程とを有する。
【0026】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜付き基材1を用意する。
この接合膜付き基材1は、上述したように、基板2と、接合膜3とを有するものである。
このような接合膜付き基材1は、例えば、以下のような接合膜付き基材の形成方法を用いて得ることができる。
具体的には、基板2を用意する工程と、基板2上にシリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含有する液状材料を供給することにより液状被膜30を形成する工程と、液状被膜30を乾燥して、基板2上に接合膜3を形成する工程とを経ることにより接合膜付き基材1が形成される。
【0027】
以下、これらの各工程を詳述する。
[1A]まず、基板2を用意する(図2(a)参照)。
基板2としては、前述したようなものを用いることができる。
また、用意した基板2の接合膜3が形成される表面25には、必要に応じて、形成される接合膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、表面25は清浄化および活性化され、表面25に対して接合膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、後述する工程において、表面25上に接合膜3を形成したとき、表面25と接合膜3との接合強度を高めることができる。これにより、接合膜付き基材1を対向基板(他の被着体)5に強固に固定することができる。
【0028】
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
このような表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、表面25を、より清浄化および活性化することができる。その結果、表面25と接合膜3との接合強度を特に高めることができる。
【0029】
また、基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
このような材料で構成された基板2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基板2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き基材1と対向基板5とを強固に接合することができる。
なお、この場合、基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0030】
[1B]次に、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含有する液状材料を基板2の表面25上に供給することにより、基板2の表面25上に、液状被膜30を形成する(図2(b)参照)。
このような供給方法としては、特に限定されないが、塗布法を用いるのが好ましい。
塗布法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法および液滴吐出法等が挙げられるが、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法によれば、図1(b)に示すように、液状材料を液滴31として表面25に供給することができるため、たとえ液状被膜30を表面25の一部の領域に選択的にパターニングして形成する場合であったとしても、液状材料をこの領域の形状に対応して(選択的に)供給することができる。
【0031】
液滴吐出法としては、特に限定されないが、圧電素子による振動を利用して液状材料を吐出する構成のインクジェット法が好適に用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴31として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴31のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴31のサイズを小さくすれば、たとえ膜を形成する領域の形状が微細なものであったとしても、この領域の形状に対応した液状被膜30を確実に形成することができる。
【0032】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、0.5〜200mPa・s程度であるのが好ましく、3〜20mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、吐出量の微調整が容易となる。これにより、基板2上(表面25上)に均一な膜厚を有する接合膜3を成膜することが可能となる。その結果、接合膜付き基材1と対向基板5とを高い寸法精度で接合することができる。さらに、この液状材料で構成される液状被膜30を次工程[1C]で乾燥させた際に、接合膜3を形成するのに十分な量のシリコーン材料を液状材料中に含有したものとすることができる。
【0033】
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴31の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、表面25に供給された際の液滴31の着弾径が小さなものとなることから、吐出量の微調整がさらに容易となる。
また、液状材料は、前述のようにシリコーン材料を含有するものであるが、シリコーン材料単独で、液状をなし目的とする粘度範囲である場合、シリコーン材料をそのまま液状材料として用いることができる。また、シリコーン材料単独で、固形状または高粘度の液状をなす場合には、液状材料として、シリコーン材料の溶液または分散液を用いることができる。
【0034】
シリコーン材料を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
シリコーン材料は、液状材料中に含まれ、次工程[1C]において、この液状材料を乾燥させることにより形成される接合膜3の主材料として構成するものである。
【0035】
このようなシリコーン材料を主材料として構成される接合膜3は、次工程[2]においてエネルギー線が照射されると、その表面35に接着性が発現するものとなる。
ここで、「シリコーン材料」とは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物であり、通常、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物のことを言い、主鎖の一部から突出する分枝状の構造を有するものであってもよく、主鎖が環状をなす環状体であってもよく、主鎖の末端同士が連結しない直鎖状のものであってもよい。
例えば、ポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物において、オルガノシロキサン単位は、その末端部では下記一般式(1)で表わされる構造単位を有し、連結部では下記一般式(2)で表わされる構造単位を有し、また、分枝部では下記一般式(3)で表わされる構造単位を有している。
【0036】
【化1】

[式中、各Rは、それぞれ独立して、置換または無置換の炭化水素基を表し、各Zは、それぞれ独立して、水酸基または加水分解基を表し、Xはシロキサン残基を表し、aは0または1〜3の整数を表し、bは0または1〜2の整数を表し、cは0または1を表す。]
【0037】
このようなシリコーン材料において、ポリオルガノシロキサン骨格は、分枝状をなすもの、すなわち上記一般式(1)で表わされる構造単位、上記一般式(2)で表わされる構造単位および上記一般式(3)で表わされる構造単位で構成されているのが好ましい。この分枝状をなすポリオルガノシロキサン骨格を有する化合物(以下、「分枝状化合物」と略すこともある。)は、主骨格(主鎖)部分が主としてオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる化合物であり、主鎖の途中でオルガノシロキサン単位の繰り返しが分枝するとともに、主鎖の末端同士が連結しないものである。
この分枝状化合物を用いることにより、次工程[1C]において、液状材料中に含まれるこの化合物の分枝鎖同士が互いに絡まり合うようにして接合膜3が形成されることから、得られる接合膜3は特に膜強度に優れたものとなる。
【0038】
なお、上記一般式(1)〜上記一般式(3)中、基R(置換または無置換の炭化水素基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。さらに、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部が、I)フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子、II)グリシドキシ基のようなエポキシ基III)メタクリル基のような(メタ)アクリロイル基IV)カルボキシル基、スルフォニル基のようなアニオン性基等で置換された基等が挙げられる。
【0039】
加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等が挙げられる。
また、分枝状化合物は、その分子量が、1×10〜1×10程度のものであるのが好ましく、1×10〜1×10程度のものであるのがより好ましい。分子量をかかる範囲内に設定することにより、液状材料の粘度を上述したような範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0040】
このような分枝状化合物は、シラノール基を有するものであるのが好ましい。すなわち、上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位において、各基Zは水酸基であるのが好ましい。これにより、次工程[1C]において、液状被膜30を乾燥させて接合膜3を得る際に、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士が結合することとなり、得られる接合膜3の膜強度が優れたものとなる。さらに、基板2として、前述したように、その接合面(表面)25から水酸基が露出しているものを用いた場合には、分枝状化合物が備える水酸基と、基板2が備える水酸基とが結合することから、分枝状化合物を物理的な結合ばかりでなく、化学的な結合によっても基板2に結合させることができる。その結果、接合膜3は、基板2の表面25に対して、強固に結合したものとなる。
【0041】
また、シラノール基が有するシリコン原子に連結している炭化水素基は、フェニル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが水酸基である上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、フェニル基であるのが好ましい。これにより、シラノール基の反応性がより向上するため、隣接する分枝状化合物が有する水酸基同士の結合がより円滑に行われるようになる。
【0042】
さらに、シラノール基が存在しないシリコン原子に連結している炭化水素基は、メチル基であるのが好ましい。すなわち、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rは、メチル基であるのが好ましい。このように、基Zが存在しない上記一般式(1)〜上記一般式(3)で表わされる構造単位に存在する基Rがメチル基である化合物は、比較的入手が容易で、かつ安価であるとともに、次工程[2]において、接合膜3に接合用エネルギーを付与することにより、メチル基が容易に切断されて、その結果として、接合膜3に確実に接着性を発現させることができるため、分枝状化合物(シリコーン材料)として好適に用いられる。
以上のことを考慮すると、分枝状化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表わされるような主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される化合物が好適に用いられる。
【0043】
【化2】

[式中、nは、それぞれ独立して、0または1以上の整数を表す。]
【0044】
さらに、上述した分枝状化合物は、比較的柔軟性に富む材料である。そのため、次工程[3]において、接合膜3を介して基板2に対向基板5を接合して接合体10を得る際に、例えば、基板2と対向基板5との各構成材料が互いに異なるものを用いる場合であったとしても、基板2と対向基板5との間に生じる熱膨張に伴う応力を確実に緩和することができる。これにより、最終的に得られる接合体10において、剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0045】
また、分岐状化合物は耐薬品性に優れているため、薬品類等に長期にわたって晒されるような部材の接合に際して効果的に用いることができる。また、このような分岐状化合物は、耐熱性にも優れていることから、高温下に晒されるような部材の接合に際しても効果的に用いることができる。
エネルギー線吸収物質4は、エネルギー線を吸収して発熱するものである。なお、このようなエネルギー線としては、具体的には、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等が挙げられる。
【0046】
このようなエネルギー線吸収物質4は、次工程[2]において、接合膜3に照射されたエネルギー線の一部を吸収して発熱し、接合膜3の対向基板(他の被着体)5に対する接着性を促進させるものである。これにより、接合膜3に対向基板5に対する接着性を確実に発現させることができる。また、エネルギー線吸収物質4を含む接合膜3は、比較的少量のエネルギー線照射によって、対向基板5との接着性が発現するものとなる。そのため、接合体10を得るのに、次工程[2]において、接合膜3に照射するエネルギー線の照射時間を短くしたり、照射するエネルギー線の強度を抑えることができ、接合方法の省エネルギー化を図ることができる。
【0047】
エネルギー線吸収物質4を構成する材料としては、上述したようなエネルギー線を吸収することにより発熱するものであれば、特に限定されず、カーボンブラックのような炭素系の顔料粉末、Ti、Cu、Fe、Zn、Mn、Mg、Ce、その他の金属の酸化物(例えば、TiO、CeO等)、インジウム錫酸化物(ITO)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
このような材料の中でも、エネルギー線吸収物質4は、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、またはITOから選択される少なくとも1種の材料を含むものであるのが好ましい。これらの材料は、上述したようなエネルギー線を吸収し、効率良く発熱する材料であり、次工程[2]において、エネルギー線が照射されることにより発現する接合膜3の接着性を促進する効果が特に高いものである。したがって、エネルギー線吸収物質4として、上述したような材料を用いることにより、接合膜3に対向基板5に対する接着性をより確実に発現させることができる。
【0049】
本実施形態では、エネルギー線吸収物質4は粒子状をなしている。これにより、液状被膜30を乾燥させて得られる接合膜3は、膜全体にエネルギー線吸収物質4が分散したものとなり、接合膜3に発現する接着性は、表面35の全領域でばらつきのない、均一なものとなる。その結果、接合膜付き基材1を対向基板5に対して、確実に接合することができ、接合体10に部分的に剥離が生じる等の不具合の発生を確実に防止することができる。
【0050】
このようなエネルギー線吸収物質4の平均粒径は、100〜1000nmであるのが好ましく、200〜800nmであるのがより好ましく、300〜500nmであるのがさらに好ましい。これにより、形成される接合膜3の表面35は確実に平滑なものとなり、接合膜付き基材1を対向基板5に対して、より高い寸法精度で接合することができる。また、エネルギー線吸収物質4がエネルギー線を吸収して発する熱(熱エネルギー)を、エネルギー線吸収物質4周囲のシリコーン材料に効率良く伝達することができ、接合膜3は、より短時間のエネルギー線照射によって、対向基板5に対する高い接着性を発現するものとなる。
【0051】
接合膜3中に含まれるエネルギー線吸収物質4の含有率は、1〜30wt%であるのが好ましく、3〜25wt%であるのがより好ましく、5〜20wt%であるのがさらに好ましい。これにより、接合膜3の接着性がより効率良く促進され、接合膜付き基材1を対向基板5に対して、さらに高い接合強度で接合することができる。また、比較的少量のエネルギー線照射により、接合膜3に十分な接着性を発現させることができる。
【0052】
[1C]次に、基板2上に設けられた液状被膜30を乾燥させることにより、接合膜3を形成する(図2(c)参照)。
このようにして形成された接合膜3は、膜全体にエネルギー線吸収物質4が分散したものとなっている。このような接合膜3は、エネルギー線が照射されると、表面35の全領域でばらつきのない、均一な接着性が発現されるものとなる。
【0053】
液状被膜30を乾燥させる際の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
また、乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で液状材料を乾燥させることにより、次工程[2]において、エネルギー線が照射されることにより接着性が好適に発現する接合膜3を確実に形成することができる。また、シリコーン材料として前記工程[1B]で説明したようなシラノール基を有するものを用いた場合には、シリコーン材料が有するシラノール基同士を、さらには、シリコーン材料が有するシラノール基と基板2が有する水酸基とを、確実に結合させることができるため、形成される接合膜3を膜強度に優れ、かつ基板2に対して強固に結合したものとすることができる。
【0054】
さらに、乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのが好ましい。具体的には、減圧の程度は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜3の膜密度が緻密化して、接合膜3をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
以上のように、接合膜3を形成する際の条件を適宜設定することにより、形成される接合膜3の膜強度等を所望のものとすることができる。
【0055】
接合膜3の平均厚さは、300〜10000nm程度であるのが好ましく、500〜8000nm程度であるのがより好ましい。供給する液状材料の量を適宜設定して、形成される接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合膜3は、膜全体にわたってエネルギー線吸収物質4が均一に分散したものとなる。これにより、接合膜3に発現する接着性は、表面35の全領域でばらつきのない、均一なものとなる。その結果、接合膜付き基材1を対向基板5に対して、確実に接合することができ、接合体10に部分的に剥離が生じる等の不具合の発生を確実に防止することができる。また、接合膜付き基材1を、対向基板5に対して、より高い寸法精度で接合することができる。
【0056】
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
さらに、接合膜3の平均厚さをかかる範囲とすることにより、接合膜3がある程度弾性に富むものとなることから、次工程[3]において、接合膜付き基材1を対向基板に接合する際に、接合膜3と接触させる対向基板5の接合面55にパーティクル等が付着していても、このパーティクルを接合膜3で取り囲むようにして接合膜3と接合面55とが接合することとなる。そのため、このパーティクルが存在することによって接合膜3と接合面55との界面における接合強度が低下したりこの界面において剥離が生じたりするのを的確に抑制または防止することができる。
【0057】
また、接合膜3の平均厚さをT[nm]、エネルギー線吸収物質4の平均粒径をL[nm]としたとき、1.5≦T/L≦10の関係を満足するのが好ましく、2≦T/L≦8の関係を満足するのがより好ましく、3≦T/L≦7の関係を満足するのがさらに好ましい。これにより、接合膜3中に、エネルギー線吸収物質4をより均一に分散させることができる。これにより、次工程[2]において、接合膜3にエネルギー線を照射することにより、その表面35全面に、より効率良く接着性を発現させることができる。特に、比較的少量のエネルギー線照射においても、接合膜3に対向基板5に対する接着性を確実に発現させることができる。また、エネルギー線吸収物質4が接合膜3の表面に偏析するのが確実に防止され、接合膜3の表面35は確実に平滑なものとなり、接合膜付き基材1を対向基板5に対して、より高い寸法精度で接合することができる。
【0058】
また、本実施形態では、液状材料を供給して接合膜3を形成する構成となっていることから、たとえ基板2の接合面25に凹凸が存在している場合であっても、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するようにして接合膜3を形成することができる。その結果、接合膜3が凹凸を吸収して、その表面がほぼ平坦面で構成されることとなる。
以上のようにして、接合膜付き基材1を得ることができる。
【0059】
[2]次に、接合膜付き基材1の接合膜3の表面35に対してエネルギー線を照射する。
接合膜3にエネルギー線を照射すると、この接合膜3では、表面35付近の分子結合(例えば、シリコーン材料の主骨格がボリジメチルシロキサンで構成されている場合、Si−CH結合)の一部が切断し、表面35が活性化されることに起因して、表面35付近に対向基板5との接着性が発現する。さらに、接合膜3に照射されたエネルギー線の一部が、膜中に含まれるエネルギー線吸収物質4に吸収され、エネルギー線吸収物質4が発熱する。これにより、エネルギー線吸収物質4の周囲のシリコーン材料に熱エネルギーが付与され、シリコーン材料の分子結合の一部が切断され易くなる。すなわち、接合膜3は、エネルギー線吸収物質4の発熱によって、対向基板5に対する接着性が促進される。
【0060】
このように、接合膜3は、エネルギー線吸収物質4を含むことにより、エネルギー線照射によって、その表面35が効率良く活性化され、対向基板5に対する接着性が確実に発現する。これにより、接合膜付き基材1は、対向基板5と、化学結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。また、このような接合膜3は、比較的少量のエネルギー線照射でも、エネルギー線による光エネルギーとエネルギー線吸収物質4の発熱による熱エネルギーとが相乗的に作用して、その表面35に確実に接着性が発現するものとなる。そのため、例えば、接合膜3に照射するエネルギー線の照射時間を短くしたり、照射するエネルギー線の強度を抑えることができ、接合方法の省エネルギー化を図ることができる。
【0061】
ここで、本明細書中において、表面35が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面35の分子結合の一部、具体的には、例えば、ポリジメチルシロキサン骨格が備えるメチル基が切断されて、接合膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0062】
接合膜3に照射するエネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図2(d)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、接合膜3から表面35付近の分子結合を選択的に切断することができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0063】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、分子結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜30mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。接合膜3は、このように比較的低いエネルギー量のエネルギー線照射によって、その表面35に確実に接着性を発現するものとなる。
【0064】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の分子結合を切断し得る程度の時間、すなわち、接合膜3の表面付近に存在する分子結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜8分程度であるのがより好ましい。接合膜3は、このように比較的短時間のエネルギー線照射によって、その表面35に確実に接着性を発現するものとなる。
【0065】
上述したように、接合膜3は、膜中に含まれるエネルギー線吸収物質4がエネルギー線を吸収して発熱する作用により、エネルギー線吸収物質を含まない接合膜に比べて、少量のエネルギー線照射で効率良く表面35付近を活性化させることができる。このように、接合膜3に照射するエネルギー線量を減らして、シリコーン材料の分子結合を過度に切断することなく、その表面35付近を活性化することができるため、接合膜3の機械的強度を特に優れたものとしながら、その表面35に対向基板5に対する接着性を確実に発現させることができる。
【0066】
また、紫外線は、時間的に連続して照射してもよいし、間欠的(パルス状)に照射してもよい。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、不活性ガス雰囲気中または減圧雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、表面35付近にオゾンガスが生じて、表面35の活性化がより円滑に行われることになる。さらに、雰囲気を制御することに手間や、コストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0067】
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギー線量の大きさを、精度良く簡単に調整することができる。このため、接合膜3の表面35付近で切断される分子結合の量を多くすることにより、接合膜3の表面35付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、表面35付近で切断される分子結合の量を少なくすることにより、接合膜3の表面35付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与する接合用エネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
【0068】
[3]対向基板(他の被着体)5を用意する。そして、図3(e)に示すように、活性化させた接合膜3と対向基板5とが密着するように、接合膜付き基材1と対向基板5とを貼り合わせる。これにより、図3(f)に示すような接合体10を得る。
このような接合体10は、基板2と対向基板5とが、接合膜3を介して高い寸法精度で強固に接合したものとなる。また、前工程[2]において、比較的少量のエネルギー線照射によって、接合膜3に効率良く接着性を発現することができるため、省エネルギーでかかる接合体10を得ることができる。
【0069】
また、このようにして得られた接合体10では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜付き基材1と対向基板5とが接合されている。このため、接合体10は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0070】
また、このような接合膜付き基材1を用いて得られた接合体10を得る方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基板2および対向基板5をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して基板2と対向基板5とを接合しているため、基板2や対向基板5の構成材料に制約がないという利点もある。
【0071】
以上のことから、本発明によれば、基板2および対向基板5の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、基板2の熱膨張率と対向基板5の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
【0072】
具体的には、基板2と対向基板5との熱膨張率差にもよるが、基板2および対向基板5の温度が25〜50℃程度である状態下で、接合膜付き基材1と対向基板5とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基板2と対向基板5の熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体10における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
【0073】
また、この場合、基板2と対向基板5との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
また、基板2と対向基板5は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、接合膜付き基材1と対向基板5とをより強固に接合することができる。
【0074】
このような対向基板5の接合膜付き基材1との接合に供される領域には、対向基板5の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、対向基板5と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜付き基材1と対向基板5との接合強度をより高めることができる。
なお、表面処理としては、基板2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
【0075】
また、対向基板5の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き基材1と対向基板5との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる対向基板5の構成材料には、前述した基板2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を用いることができる。
さらに、対向基板5の接合膜付き基材1との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜付き基材1と対向基板5との接合強度を十分に高くすることができる。
【0076】
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。このような基または物質を有する表面は、接合膜付き基材1の接合膜3に対する接合強度のさらなる向上を実現し得るものとなる。
【0077】
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜付き基材1と特に強固に接合可能な対向基板5が得られる。
また、表面処理に代えて、対向基板5の接合膜付き基材1との接合に供される領域には、あらかじめ、接合膜3との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、かかる中間層を介して接合膜付き基材1と対向基板5とを接合することになり、より接合強度の高い接合体10が得られるようになる。
【0078】
かかる中間層の構成材料には、前述の基板2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本工程において、基板2と対向基板5とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、対向基板5の接合面55に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、基板2に形成された接合膜3と、対向基板5の接合面55とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、対向基板5の接合面55に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、基板2と対向基板5とが接合されると推察される。
【0079】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、基板2と対向基板5との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、基板2と対向基板5とがより強固に接合されると推察される。
また、基板2の接合膜3の表面や内部、および、対向基板5の接合面55や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、基板2と対向基板5とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、接合膜3と対向基板5とが特に強固に接合される。
【0080】
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、基板2と対向基板5とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0081】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、エネルギー線吸収物質4を含むシリコーン材料を乾燥させて得られた接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。特に、接合膜3を構成するシリコーン材料が、紫外線等により変色、劣化するのを確実に防止することができる。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜3を備えた基板2を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載したエネルギー線照射を行うようにすれば、接合体10の製造効率の観点から有効である。
【0082】
以上のようにして、図3(f)に示す接合体(本発明の接合体)10を得ることができる。
このようにして得られた接合体10は、基板2と対向基板5との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体10は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。また、かかる構成の接合方法によれば、基板2と対向基板5とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体10を効率よく作製することができる。
なお、接合体10を得た後、この接合体10に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([4A]、[4B]および[4C])のうちの少なくとも1つの工程(接合体10の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体10の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0083】
[4A]図3(g)に示すように、得られた接合体10を、基板2と対向基板5とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、基板2の表面および対向基板5の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体10における接合強度をより高めることができる。
また、接合体10を加圧することにより、接合体10中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体10における接合強度をさらに高めることができる。
【0084】
このとき、接合体10を加圧する際の圧力は、接合体10が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合体10における接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、基板2および対向基板5の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、基板2および対向基板5の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体10の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基板2および対向基板5の各構成材料によっては、基板2および対向基板5に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体10を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0085】
[4B]図3(g)に示すように、得られた接合体10を加熱する。
これにより、接合体10における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体10を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体10の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体10が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0086】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図3(g)に示すように、接合体10を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体10の接合強度を特に高めることができる。
【0087】
[4C]得られた接合体10に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と基板2および対向基板5との間に形成される化学結合を増加させ、基板2および対向基板5と接合膜3との間の接合強度をそれぞれ高めることができる。その結果、接合体10の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[2]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
【0088】
また、本工程[4C]を行う場合、基板2および対向基板5のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基板側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体10における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、上記では、接合膜3を基板2に設けるものとして説明したが、接合膜3は、基板2と対向基板5の双方に設けてもよい。この場合には、表面処理や中間層の形成は、基板2と対向基板5の双方に行ってもよく、いずれか一方に選択的に行ってもよい。
【0089】
<第2実施形態>
次に、本発明の接合膜付き基材、この接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法、および本発明の接合膜付き基材を備える接合体の各第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の接合膜付き基材の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)、図5および図6は、本実施形態の接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図4ないし図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0090】
以下、第2実施形態にかかる接合膜付き基材、接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合膜付き基材は、接合膜付き基材が有する接合膜が、部分的にエネルギー線吸収物質を含むものであること以外は、前記第1実施形態と同様である。
本実施形態において、接合膜付き基材1aは、基板2と、基板2上の外周部251に設けられ、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含有する接合膜32と、基板2上の接合膜32で囲まれた領域252に設けられ、シリコーン材料を含有する接合膜33とを有している。
【0091】
このような接合膜付き基材1aが有する接合膜32と接合膜33とは、エネルギー線照射により発現する接着性がそれぞれ異なる。より具体的には、接合膜32および接合膜33に対して、均等にエネルギー線を照射すると、エネルギー線吸収物質4を含有する接合膜32の方が、接合膜33よりも、他の被着体との接着性がより早く発現するとともに、他の被着体との接合強度がより高いものとなる。これにより、接合膜付き基材1aは、外周部付近(接合膜32が設けられた領域)の方が、中心部付近(接合膜33が設けられた領域)よりも、より高い接合強度で他の被着体と接合可能なものとなる。このような接合膜付き基材1aは、基板2上に形成する接合膜32、接合膜33の面積を制御することにより、他の被着体との接合強度を容易に調整することが可能なものとなる。
【0092】
また、接合膜32中に含まれるエネルギー線吸収物質4として前述したような材料は、可視光を散乱または吸収する機能を有するものである。そのため、接合膜32は、接合膜33に比べて、高い接合強度で対向基板5と接合できるが、その一方で、光透過性が劣るものである。本実施形態の接合膜付き基材1aは、このような接合膜32がその外周部付近にのみ設けられたものであり、接合膜32で囲まれた中心部付近には、エネルギー線吸収物質4を含まず、十分な光透過性を有する接合膜33が設けられている。このような接合膜付き基材1aは、接合膜33が設けられた領域を有効領域(光透過領域)とするような、光学デバイス用の部材同士の接合に好適に用いることができるものとなる。
【0093】
次に、本実施形態にかかる接合膜付き基材と他の被着体との接合方法について説明する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合に供する接合膜付き基材の構成が異なる以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、接合膜付き基材1aを用意する工程と、接合膜付き基材1aの接合膜32および接合膜33に対してエネルギー線を照射することにより、接合膜32および接合膜33の表面付近に接着性を発現させる工程と、対向基板(他の被着体)5を用意し、接合膜付き基材1aが備える接合膜32および接合膜33と対向基板5とが密着するように、これらを貼り合わせ、接合体10aを得る工程とを有する。
【0094】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、接合膜付き基材1aを用意する。
この接合膜付き基材1aは、上述したように、基板2と、接合膜32および接合膜33とを有するものである。
このような接合膜付き基材1aは、例えば、以下のような接合膜付き基材の形成方法を用いて得ることができる。
すなわち、基板2を用意する工程と、基板2上にシリコーン材料を含有する液状材料と、シリコーン材料に加えて、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4を含有する液状材料とをそれぞれ異なる領域に供給して、液状被膜を形成した後、かかる液状被膜を乾燥して接合膜を形成する工程とを得ることにより接合膜付き基材1aが形成される。
【0095】
以下、これらの各工程を詳述する。
[1A]まず、基板2を用意する(図5(a)参照)。
[1B]次に、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質4とを含有する液状材料(液滴311)を、基板2の外周部251上に供給し、液状被膜301を形成する(図5(b)参照)。
このような供給方法としては、前述したような供給方法を用いることができるが、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい(図5(b)参照)。これにより、液状被膜301を基板2の外周部251の領域に確実にパターニングして形成することができる。
【0096】
[1C]次に、基板2上に設けられた液状被膜301を乾燥させることにより、基板2の外周部251上に接合膜32を形成する(図5(c)参照)。
このような乾燥方法は、例えば、前記第1実施形態で挙げた乾燥方法を用いることができる。
[1D]次に、シリコーン材料を含有する液状材料(液滴312)を、基板2上の接合膜32で囲まれた領域252に供給し、液状被膜302を形成する(図5(d)参照)。
本実施形態において、このような液状被膜302はエネルギー線吸収物質4を含まないものである。液状被膜302を構成する材料としては、例えば、上述した液状被膜301を構成する材料からエネルギー線吸収物質4を除いたもの等が挙げられる。
また、液状材料の供給方法としては、前述したような供給方法を用いることができる。
【0097】
[1E]次に、基板2上に設けられた液状被膜302を乾燥させることにより、基板2上の接合膜32で囲まれた領域に接合膜33が形成される(図5(e)参照)。
本実施形態では、[1B]、[1C]の各工程を経て、基板2の外周部251上にシリコーン材料とエネルギー線吸収物質4とを含有する接合膜32を形成した後に、[1D]、[1E]の各工程を経て、基板2上の接合膜32で囲まれた領域252にシリコーン材料を含有する接合膜33を形成する。このようにして、基板2上にシリコーン材料を含有する液状材料と、シリコーン材料に加え、エネルギー線吸収物質4を含有する液状材料とをそれぞれ異なる領域に供給して、液状被膜(液状被膜301および液状被膜302)を形成し、これらを乾燥させることにより、接合膜(接合膜32および接合膜33)が形成される。
【0098】
以上のようにして接合膜付き基材1aを得ることができる。
なお、上記では、[1B]、[1C]の各工程を経て、接合膜32を形成した後に、[1D]、[1E]の各工程を経ることによって接合膜33を形成して、接合膜付き基材1aを得たが、[1D]、[1E]の各工程を経て接合膜33を形成した後に、[1B]、[1C]の各工程を経て接合膜32を形成してもよい。
【0099】
[2]次に、図6(f)に示すように、接合膜32および接合膜33にエネルギー線を照射する。これにより、接合膜付き基材1aは、接合膜32および接合膜33に、対向基板5に対する接着性が発現する。
[3]次に、図6(g)に示すように、対向基板(他の被着体)5を用意し、接合膜32の表面325および接合膜33の表面335と対向基板5の接合面55とを密着するように、接合膜付き基材1aと対向基板5とを貼り合わせる。これにより、図6(h)に示す接合体10aを得る。
【0100】
このようにして得られた接合体10aは、基板2と対向基板5とが、外周部付近(接合膜32を介して接合している領域)において、中心部付近(接合膜33を介して接合している領域)よりもより強固に接合されたものとなる。このような接合体10aでは、基板2上に形成する接合膜32および接合膜33の形成領域を制御することにより、接合体10aの接合強度を容易に調整することができる。
【0101】
また、接合体10aは、接合膜33が十分な光透過性を有するものであるため、接合体10aとして光透過性が要求される場合にも好適に用いられる。例えば、接合体10aは、接合膜33が設けられた領域を有効領域(光透過領域)とした光学デバイス用の部材同士の接合に好適に用いることができるものとなる。
以上のようにして接合体10aを得ることができる。
【0102】
また、接合体10aを得た後、この接合体10aに対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
なお、上記では、基板2上の外周部に、エネルギー線吸収物質4を含有する接合膜32を有し、基板2上の接合膜32で囲まれた領域に、接合膜33を有する接合膜付き基材1aについて説明したが、例えば、接合膜32と接合膜33とを入れ替えたものであってもよいし、接合膜32および接合膜33がそれぞれ、任意のパターンで設けられたものであってもよい。
【0103】
以上のような前記各実施形態にかかる接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
このような接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
【0104】
以下、代表的に、前述した第2実施形態の接合体を適用した、偏光板と液晶表示素子とが接合された液晶表示装置について説明する。
図7は、本発明の接合膜付き基材の第2実施形態を適用した接合膜付き偏光板の斜視図、図8は、図7に示す接合膜付き偏光板を用いて得られる液晶表示装置の断面図である。なお、以下の説明では、図7および図8の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0105】
図7に示すように、液晶表示装置60は、液晶表示素子70と、2枚の接合膜付き偏光板68、69とを有している。このような液晶表示装置60は、各接合膜付き偏光板(71、72)が、被着体としての液晶表示素子70と、接合膜32および接合膜33を介して接合された構成を有している。
そのうち、液晶表示素子70は、基板611と、基板611上に形成された複数の隔壁(バンク)613と、基板611上に形成され、複数の隔壁613間に設けられた着色部612とを有するカラーフィルター61と、カラーフィルター61の着色部612が設けられた面側に配された基板(対向基板)67と、カラーフィルター61と基板67との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層63とを有している。そして、カラーフィルター61の着色部612および隔壁613が設けられた面(着色部612および隔壁613の基板611に対向する面とは反対の面)には、共通電極62が設けられており、基板(対向基板)67の液晶層63、カラーフィルター61に対向する面には、カラーフィルター61の各着色部612に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極66が配されている。さらに、共通電極62と液晶層63との間には配向膜65が設けられ、基板67(画素電極66)と液晶層63との間には配向膜64が設けられている。
【0106】
一方、2枚の偏光板68、69は、それぞれ、前述した本発明の接合膜付き基材の第2実施形態を適用したものである。そして、これらの接合膜付き偏光板71、72は、それぞれ接合膜32および接合膜33を介して、それぞれ液晶表示素子70を構成する基板611、67と接合されている。
接合膜付き偏光板71は、図6に示すように、偏光板68と、偏光板68上の外周部に設けられ、シリコーン材料と、エネルギー線吸収物質4とを含有する接合膜32と、偏光板68上の接合膜32に囲まれた領域に設けられ、シリコーン材料を含有する接合膜33とを有している。また、同様に、接合膜付き偏光板72は、偏光板69と、偏光板69上の外周部に設けられ、シリコーン材料と、エネルギー線吸収物質4とを含有する接合膜32と、偏光板69上の接合膜32に囲まれた領域に設けられ、シリコーン材料を含有する接合膜33とを有している。
【0107】
接合膜32および接合膜33は、偏光板とカラーフィルター用基板等とを接合するのに一般的に用いられる粘接着剤に比べて、厚みムラが生じにくいものである。そのため、接合膜付き偏光板71(または、接合膜付き偏光板72)を、基板611(または、基板67)に対して、高い寸法精度で接合することができ、液晶表示装置60の寸法精度は優れたものとなる。
【0108】
また、接合膜付き偏光板71(または、接合膜付き偏光板72)が有する接合膜33は、液晶表示装置60を平面視した際に、画像表示領域(後述するバックライトから発せられた光が透過する領域)を覆うように設けられている。言い換えると、液晶表示装置60において、接合膜付き偏光板71(または、接合膜付き偏光板72)が有するエネルギー線吸収物質4を含有する接合膜32が、画像表示領域から外れた領域に設けられている。このような液晶表示装置60は、偏光板68(または、偏光板69)と基板611(または、基板67)とが、光透過性に優れる接合膜33を介して接合されているため、表示画像の明るさが低下するのが防止される。また、液晶表示装置60の画像表示領域外において、接合膜33よりも他の被着体との接合強度に優れる接合膜32を介して液晶表示素子70と各偏光板(偏光板68、偏光板69)とが接合されているため、液晶表示素子70と2枚の偏光板68および偏光板69との間で剥離が生じるのを確実に防止することができる。
【0109】
基板611および基板67は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
カラーフィルター61を構成する隔壁613は、隣接する着色部612同士が混色してしまうのを防止したり、隣接する画素間からの光漏れを防止するために設けられ、例えば、カーボンブラック等の遮光性を有する材料で構成されている。また、着色部612は、各色(例えば、赤、緑、青)に対応する顔料等を主とする材料で構成されたものである。
【0110】
共通電極62、画素電極66は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極66に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部612に対応する各画素電極66について、共通電極62との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部612(各画素電極66)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0111】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、接合膜付き偏光板72側(図8中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層63を透過し、カラーフィルター61の各着色部612に入射した光は、各着色部612に対応する色の光として、接合膜付き偏光板71(図8中下側)から出射する。前述したように、液晶表示装置60は、画像表示領域において、液晶表示素子70と各偏光板(偏光板68、偏光板69)とが光透過性に優れた接合膜33を介して接合されている。そのため、接合膜付き偏光板72側から入射したバックライトの光を、十分に高い透過率で接合膜付き偏光板71から出射することができ、液晶表示装置60の表示画像は十分に明るいものとなる。また、液晶表示装置60の画像表示領域外において、接合膜33よりも他の被着体との接合強度に優れる接合膜32を介して液晶表示素子70と各偏光板(偏光板68、偏光板69)とが接合されておるため、液晶表示素子70と各偏光板(偏光板68、偏光板69)とが十分に高い接合強度で接合され、液晶表示装置60の耐久性は優れたものとなる。
上述したような液晶表示装置60は、例えば、以下に説明するような電子機器に適用することができる。
【0112】
以下の説明では、液晶表示装置60を備える電子機器として、携帯電話について説明する。
図9は、携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
図9に示す携帯電話は、表示部1001を備える携帯電話本体1000を有している。携帯電話本体1000には、上述した液晶表示装置60が内蔵されており、これらは、携帯電話機本体1000において表示部1001などとして用いられる。
【0113】
なお、このような液晶表示装置60は、図9で説明した携帯電話の他に、種々の電子機器に対して適用できる。
例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0114】
以上、本発明の接合膜付き基材および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合体は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、前記各実施形態では、基板と対向基板の2枚の基材を接合する方法について説明しているが、3枚以上の基材を接合する場合に、本発明の接合膜付き基材および本発明の接合方法を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の接合膜付き基材の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】図1に示す接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の接合膜付き基材の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4に示す接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】図4に示す接合膜付き基材を用いて、接合膜付き基材と対向基板とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。。
【図7】本発明の接合膜付き基材の第2実施形態を適用した接合膜付き偏光板の斜視図である。
【図8】図7に示す接合膜付き偏光板を用いて得られる液晶表示装置の断面図である。
【図9】携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0116】
1……接合膜付き基材 10、10a…接合体 2…基板 25…表面 251…外周部 252…領域 3、32、33…接合膜 35、325、335…表面 30、301、302…液状被膜 31、311、312…液滴 4…エネルギー線吸収物質 5…対向基板 55…接合面 60…液晶表示装置 61…カラーフィルター 611…基板 612…着色部 613…隔壁 62…共通電極 63…液晶層 64、65…配向膜 66…画素電極 67…基板(対向基板) 68、69…偏光板 70…液晶表示素子 71、72…接合膜付き偏光板 1000…携帯電話本体 1001…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、シリコーン材料を含有し、エネルギー線の照射により、他の被着体との接着性が発現する接合膜とを有し、
前記接合膜は、さらに、前記エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質が添加されることにより、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記他の被着体との接着性が促進されるものであることを特徴とする接合膜付き基材。
【請求項2】
前記接合膜は、前記シリコーン材料と、前記エネルギー線吸収物質とを含有する液状材料を前記基材上に供給することにより液状被膜を形成し、前記液状被膜を乾燥することにより形成されたものである請求項1に記載の接合膜付き基材。
【請求項3】
前記シリコーン材料は、その主骨格がポリジメチルシロキサンで構成される請求項1または2に記載の接合膜付き基材。
【請求項4】
前記シリコーン材料は、シラノール基を有する請求項1ないし3のいずれかに記載の接合膜付き基材。
【請求項5】
前記エネルギー線吸収物質は、酸化チタン、酸化セリウム、インジウム錫酸化物(ITO)、およびカーボンブラックのうちの少なくとも1種の材料を構成成分として含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の接合膜付き基材。
【請求項6】
前記エネルギー線吸収物質は、粒子状をなしている請求項1ないし5のいずれかに記載の接合膜付き基材。
【請求項7】
前記エネルギー線吸収性物質の平均粒径は、100〜1000nmである請求項6に記載の接合膜付き基材。
【請求項8】
前記接合膜の平均厚さをT[nm]、前記エネルギー線吸収物質の平均粒径をL[nm]としたとき、1.5≦T/L≦10の関係を満足する請求項6または7に記載の接合膜付き基材。
【請求項9】
前記接合膜中における前記エネルギー線吸収物質の含有率は、1〜30wt%である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合膜付き基材。
【請求項10】
前記エネルギー線は、紫外線である請求項1ないし9のいずれかに記載の接合膜付き基材。
【請求項11】
基材と、
前記基材上に設けられ、シリコーン材料を含有し、エネルギー線の照射により、他の被着体との接着性が発現する接合膜とを有し、
前記接合膜は、前記エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質が、部分的に添加されることにより、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記エネルギー線吸収物質を含む部分における前記他の被着体との接着性が促進されるものであり、
前記接合膜の前記エネルギー線吸収物質を含む部分と、前記接合膜の前記エネルギー線吸収物質を含まない部分とは、前記被着体に対する接合強度が互いに異なるものであることを特徴とする接合膜付き基材。
【請求項12】
基材および被着体を用意する工程と、
前記基材上に、シリコーン材料と、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質とを含有する液状材料を供給することにより、液状被膜を形成した後、前記液状被膜を乾燥して接合膜を形成する工程と、
前記接合膜に前記エネルギー線を照射することにより、前記接合膜に接着性を発現させるとともに、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記接合膜の接着性を促進させ、当該接合膜を介して前記基材と前記被着体とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項13】
基材および被着体を用意する工程と、
前記基材上に、シリコーン材料を含有する液状材料と、シリコーン材料に加えて、エネルギー線を吸収するエネルギー線吸収物質を含有する液状材料とをそれぞれ異なる領域に供給することにより、液状被膜を形成した後、前記液状被膜を乾燥して接合膜を形成する工程と、
前記接合膜に前記エネルギー線を照射することにより、前記接合膜に接着性を発現させるとともに、前記エネルギー線吸収物質における前記エネルギー線の吸収による発熱によって、前記エネルギー線吸収物質を含む部分における前記被着体との接着性を促進させ、当該接合膜を介して前記基材と前記被着体とが接合された接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項14】
請求項1ないし11のいずれかに記載の接合膜付き基材と、被着体とを有し、
これらを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする接合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−298912(P2009−298912A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154708(P2008−154708)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】