説明

接合金物

【課題】接合金物によって接合された木材同士に離れる方向の力が加わった場合でも、木材を割れにくくすること。
【解決手段】突き合わせた二つの木材1,2の中にパイプ状の金物本体31が収容されると共に金物本体31の軸方向の両端部の周面に備わるピン貫通穴32に対して各木材の側面からピンが差し込まれる接合金物3において、金物本体31の軸方向の中間部はその周面に変形孔33を備えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物において、木材同士、例えば柱や梁などの部材同士を締結するための接合金物に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物において二つの木材同士を接合する場合に、接合金物が使われる。このような接合金物として、パイプ状の金物本体の軸方向の両端部にピン貫通穴を設けたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
上記接合金物を使って木材同士を接合する場合には次のように行う。まず、一方の木材の端面に金物本体の一端部を埋設し、他方の木材の面に金物本体の他端部を埋設する。次に、双方の木材の側面に形成されたピン差込孔からピン(ドリフトピン)をそれぞれ打ち込んで、埋設された金物本体のピン貫通穴にピンを貫通させる。このように接合金物とピンによって、木材同士が接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−114775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地震等の際に接合された木材同士を引き離す方向に力が加わると、木材がピンの付近から割れることある。これは、接合金物の強度が木材のそれよりも強いことによる。ピン貫通穴の位置は、正常な使用状態(木材同士が突き合わさっている状態)を想定して接合金物の両端部に形成されている。そして、接合金物のピン貫通穴の位置にあわせて木材の側面にピン差込孔が形成されている。従って、木材同士が瞬間的であっても離れると、木材のピン差込孔に広がる力が加わり、木材が割れることになる。
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は接合金物によって接合された木材同士に離れる方向の力が加わった場合でも、木材を割れにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の締結金物は、突き合わせた二つの木材の中にパイプ状の金物本体が収容されると共に金物本体の軸方向の両端部の周面に備わるピン貫通穴に対して各木材の側面からピンが差し込まれる接合金物を前提とする。
【0008】
そして、金物本体の軸方向の中間部はその周面に変形孔を備えることを特徴とする。
【0009】
軸方向と直交方向における金物本体の断面積は、変形孔を有する軸方向の中間部と、ピン貫通穴を有する軸方向の端部を比べると、同じであっても良いし、軸方向の中間部の方が大きくてもよい。しかし、変形のしやすさを考慮すると、次のようにすることが望ましい。すなわち、軸方向と直交方向における金物本体の断面積は、変形孔を有する軸方向の中間部の方がピン貫通穴を有する軸方向の端部よりも小さいことである。
【0010】
また、変形孔の個数は問わないし、変形孔を複数設ける場合にはその配列も問わない。しかし、接合金物の中間部の変形しやすさを周方向に均一に設けるには次のようにすることが望ましい。すなわち、複数の変形孔を金物本体の周方向に沿って千鳥状に設けてあることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接合金物は、金物本体の軸方向の中間部に変形孔を設けてあるので、中間部が変形しやすくなる。従って、この接合金物を用いながらピンを介して木材同士を接合した木造建築物であれば、地震等があって木材同士に離れる方向の力が加わった場合でも、接合金物の中間部が変形するので、木材を割れにくくできる。
【0012】
また、軸方向と直交方向における金物本体の断面積を、変形孔を有する軸方向の中間部の方がピン貫通穴を有する軸方向の端部よりも小さくしてあれば、接合金物の中間部が一段と変形し易くなる。
【0013】
さらに、複数の変形孔を金物本体の周方向に沿って千鳥状に設けてあれば、接合金物の中間部の変形しやすさが周方向に均一となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(イ)、(ロ)図は、接合金物の第一例の使用状態図、断面図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】(イ)〜(ホ)図は、接合金物の第一例の正面図、平面図、A−A線断面図、B−B線断面図、C−C線断面図である。
【図4】(イ)、(ロ)図は、接合金物の第二、第三例を示す正面図である。
【図5】(イ)、(ロ)図は、接合金物の異なる使用例を示す断面図である。
【図6】(イ)〜(ハ)図は、接合金物の異なる製造例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3には、木造建築物における二つの木材(土台と柱)1、2の接合に用いられる接合金物3の第一例が示されている。接合金物3の第一例は、パイプ、つまり中空丸形の金物本体31より構成されている。そして、金物本体31は、軸方向の両端部の周面に反対側まで貫通するピン貫通穴32を軸方向とは直交方向に形成してある。ピン貫通穴32は、各端部に上下に間隔をあけて複数設けてある。その上で、上端部においては、ピン貫通穴32は、平面視して直交状態(十字状)に設けられている。また、金物本体31は、軸方向の中間部の周面に複数の変形孔(丸孔)33を内部空間に達する深さに形成してある。変形孔33によって金物本体31の中間部には靭性が与えられる。また、これらの変形孔33は金物本体31の周方向に沿って均等に間隔をあけて且つ千鳥状に形成されている。これら変形孔33の配置によって、金物本体31の中間部には周方向に沿って均等な靭性が与えられる。
【0016】
図示の例では、金物本体31の周方向に沿って設けられた孔の数は、軸方向の端部に設けられたピン貫通穴32よりも、軸方向の中間部に設けられた変形孔33の方が多くなっている。また、穴の直径は、ピン貫通穴32よりも変形孔33の方が僅かに大きいものとなっている。そして、軸方向と直交方向における金物本体31の断面積は、ピン貫通孔32をあけてある軸方向の端部よりも、変形孔33をあけてある軸方向の中間部の方が小さくなっている。
【0017】
上述した接合金物3を使用する木材である土台1と柱2には、それぞれドリルによる穴あけ加工が施される。矩形である土台1の上面には、金物本体31の下端部を収容する収容穴11が形成される。また、土台の前後側面には、その収容穴11に嵌まり込んだ金物本体31のピン貫通穴32に対応する位置に、ピン差込孔12が貫通して形成される。矩形である柱2の下端面の中央部には、金物本体31の中間部及び上端部を収容する別の収容穴21が形成される。また、柱2の前後側面には、その収容穴21に嵌まり込んだ金物本体31のピン貫通穴32に対応する位置にピン差込孔22が貫通して形成される。
【0018】
上述した接合金物3を用いた土台1と柱2との接合手順は、次の通りである。
1)土台1の上面の収容穴11に接合金物3の軸方向の下端部を挿入し、軸方向の中間部及び上端部を上に突出させる。
2)土台1の側面のピン差込孔12に丸い金棒のピン(ドリフトピン)Pを打ち込み、接合金物3のピン貫通穴32を貫通させて、土台1に接合金物3を固定する。
3)土台1の上に突き出ている接合金物3の軸方向の中間部及び上端部に柱2の下端面の収容穴21を差し込む。
4)柱2の側面のピン差込孔22から丸棒のピンPを打ち込み、ピン貫通穴32を貫通させて、柱2に接合金物3を固定する。
【0019】
このようにして土台1を柱2と接合させた接合金物3において、変形孔のある中間部は柱側に収容されている。地震等によって柱2に浮く方向の力が加わると、ピンPを介して接合金物3に力が伝わり、変形孔33が変形することによって中間部が瞬間的に伸びる。中間部が切断されないうちに柱2に落ちる方向の力が加わると、またも変形孔33が変形することによって中間部が瞬間的に縮む。このように変形孔33が変形することによって、中間部には靭性、ここでは伸縮性がもたらされる。
【0020】
図4には接合金物3の第二例、第三例を示してある。図4(イ)に示す第二例では、金物本体31の軸長を短くし、それに合わせて変形孔33及びピン貫通穴32を設ける列数を少なくしてある。また、図4(ロ)に示す第三例では、金物本体31の軸長を長くし、それに合わせて変形孔33及びピン貫通穴32を設ける列数を多くしてある。
【0021】
図5には接合金物3の使用例を示してある。図5(イ)に示す使用例では、変形孔33のある中間部が、土台1と柱2の双方に収容されている。図5(ロ)に示す使用例では、柱2と梁4との接合に接合金物3が用いられ、変形孔33のある中間部が柱2にのみ収容されている。
【0022】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、接合金物3の製造方法としては、金属パイプの金物本体31に対して孔をあける方法に限らず、平らな金属板に孔をあけてから曲げ加工によって図6(イ)に示すようにパイプ状にする方法であっても良いし、S字状に曲げ加工することによって図6(ロ)に示すようにパイプ状にする方法であっても良い(この場合、平面視してパイプの中空を仕切る片にも、ピン貫通穴32及び変形孔33をあけておく)。また、平らな金属板に孔をあけてから樋状(断面半円状)に曲げ加工して半割体とした上で、半割体の突合せ面に位置決め用の凹凸を形成し、二つの半割体を、凹凸を合わせながら突き合わせて図6(ハ)に示すようにパイプ状(平面視円形状)とする方法であっても良い。
【0023】
この接合金物3は、土台1と柱2、柱2と梁4といった、垂直材と水平材との接合に限らず、柱同士、梁同士といった同一部材同士を接合して長尺物とする場合に用いても良い。このように、この接合金物3を用いれば二本の木材1、2である棒状部材同士を接合することが可能である。
【0024】
なお、変形孔33の形状及び大きさは問わない。
【符号の説明】
【0025】
1木材(土台)
11収容穴
12ピン差込孔
2木材(柱)
21収容穴
22ピン差込孔
3接合金物
31金物本体
32ピン貫通穴
33変形孔
4梁
Pピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わせた二つの木材(1,2)の中にパイプ状の金物本体(31)が収容されると共に金物本体(31)の軸方向の両端部の周面に備わるピン貫通穴(32)に対して各木材の側面からピン(P)が差し込まれる接合金物(3)において、
金物本体(31)の軸方向の中間部はその周面に変形孔(33)を備えることを特徴とする接合金物。
【請求項2】
軸方向と直交方向における金物本体(31)の断面積は、変形孔(33)を有する軸方向の中間部の方がピン貫通穴(32)を有する軸方向の端部よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の接合金物。
【請求項3】
複数の変形孔(33)を金物本体(31)の周方向に沿って千鳥状に設けてあることを特徴とする請求項2記載の接合金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−226175(P2011−226175A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97793(P2010−97793)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(500292851)
【Fターム(参考)】