説明

接地システム

【課題】遠隔接地極を設けることなく、特定需要家内の各種電気設備や共同受電している一般需要家に雷害が波及するのを防止可能とした接地システムを提供する。
【解決手段】引込配電線13から一般需要家20及び特定需要家50が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、一般需要家20の電気設備と、耐雷変圧器32を介して受電する特定需要家50の電気設備35とを、雷害から保護するための接地システムにおいて、特定需要家50の構内に設置されている鉄塔40に設置された避雷針41と、この避雷針41に接続された引下げ導線42と、耐雷変圧器32、電気設備35、鉄塔40及び引下げ導線42が共通して接地される等電位接地極43と、耐雷変圧器32の一次側を、続流阻止避雷器31を介し地中深く埋設して絶縁接地するための深埋設絶縁独立接地極39とを備え、この深埋設絶縁独立接地極39を特定需要家50の敷地内に埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固定無線用基地局にある鉄塔などの高層構造物やそれに取り付けられた避雷針等が雷撃を受けた場合に、基地局内の各種電気設備(通信設備も含む)や、基地局と同一配電系統に接続された一般需要家の電気設備に雷害が波及するのを防止するための接地システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の接地システムは、種々提供されており、例えば、特許文献1に記載された「建物における雷障害の低減装置」が知られている。
この従来技術は、建物を囲むように、建物の敷地内に接地されている複数の周囲接地極と、それらの周囲接地極同士を導通する導線と、その建物から離れた位置に設けられる遠隔接地極と、前記周囲接地極ないし導線と前記遠隔接地極とを接続する接続線とを備えたものである。
【0003】
上記構成によれば、建物を囲む敷地から遠隔接地極が及ぶ範囲の全体が広い範囲で同電位となり、広い範囲で電気的に平坦な領域が実現できるため、落雷し易い電気的に突出する部位がなく、落雷自体を防止することができる。
また、雷雲が建物に近づいていくとき、建物に接近するよりも早くその建物と同電位の遠隔接地極に接近するので、仮に落雷する場合でも、建物より早く遠隔接地極に落雷することにより、建物への落雷を避けることができる等の効果を有している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−278118号公報(段落[0009]〜[0015]、図1,図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に係る従来技術では、雷電流が流れていない状態で建物の敷地内の周囲接地極と同電位となる遠隔接地極を設けることが必須要件となっているが、例えば保護対象である建物の敷地が狭く、同一敷地内に遠隔接地極を所定距離隔てて設置できない場合もある。その場合には、遠隔接地極の設置場所を確保するために新たに用地を買収したり、用地を借用しなくてはならず、それらの手続や費用が大きな負担となっていた。
【0006】
そこで本発明の解決課題は、遠隔接地極を設けることなく、各種の電気設備や共同受電している同一配電系統の一般需要家に雷害が波及するのを防止するようにした構成簡単な接地システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した接地システムは、引込配電線から一般需要家及び特定需要家が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、一般需要家の電気設備と、耐雷変圧器を介して受電する前記特定需要家の電気設備とを、雷害から保護するための接地システムにおいて、
前記特定需要家の構内に設置されている高層構造物に設置された避雷針と、
この避雷針に接続された引下げ導線と、
前記耐雷変圧器、前記特定需要家の電気設備、高層構造物及び引下げ導線が共通して接地される等電位接地極と、
前記耐雷変圧器の一次側に低圧配電電圧の続流阻止避雷器を介して接続され、かつ、地中深く埋設されている深埋設絶縁独立接地極と、
を備え、
前記深埋設絶縁独立接地極を、前記特定需要家の敷地内に埋設したものである。
【0008】
請求項2に記載した接地システムは、請求項1に記載した接地システムにおいて、前記耐雷変圧器の一次側に接続された前記続流阻止避雷器2個の接地接続点を、前記深埋設絶縁独立接地極に接続したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、避雷針が直撃雷を受けて等電位接地極の電位が上昇し、耐雷変圧器の一次側と二次側との間にサージ電圧が印加されても、設計値以内の電位上昇時には耐雷変圧器の絶縁能力によってくい止めることにより、特定需要家の電気設備や一般需要家の電気設備に過電圧が印加されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1(a)は本発明の実施形態を示す構成図である。図1(a)において、10は高圧配電線、11は高圧配電線10に一次側が接続された配電変圧器、13は配電変圧器11の二次側に接続された引込配電線である。なお、配電変圧器11の二次側はB種接地極14により接地されている。
【0011】
ここで、引込配電線13は、特定需要家50側へ引き込まれており、この特定需要家50は、例えば固定無線基地局等である。
また、引込配電線13は、配電変圧器11の二次側から一般需要家20の家屋21にも引き込まれており、前記特定需要家50と一般需要家20とは共同受配電系統を構成している。
【0012】
特定需要家50において、30は電源用保安装置であり、一次側が引込配電線13に接続された耐雷変圧器32と、この耐雷変圧器32の一次側に接続された2個の続流阻止避雷器31,31とを備えている。なお、個々の続流阻止避雷器31は、図1(b)に示すように、避雷素子31aとリアクトル31bとを直列に接続して構成されている。
また、耐雷変圧器32の二次側には、交流電圧を整流平滑して直流電源電圧を得るための整流回路34が接続され、その直流出力側には、直流電源電圧が供給される無線設備等の電気設備(前記同様に通信設備も含むものとする)35が接続されている。36は電気設備35に接続されて後述の鉄塔40に取り付けられたアンテナである。
【0013】
なお、電源用保安装置30内の続流阻止避雷器31同士の接続点には深埋設絶縁独立接地線37が接続されており、この接地線37は絶縁ケーブルや絶縁部材38に挿通されて地中深く埋設され、深埋設絶縁独立接地極39により接地されている。ここで、深埋設絶縁独立接地極39の埋設場所は、特定需要家50の敷地内となっている。
【0014】
更に、特定需要家50の敷地には、電気設備35とは隔離して高層構造物としての鉄塔40が構築されており、この鉄塔40の頭頂部には避雷針41が設置されている。また、避雷針41には引下げ導線42が接続されていると共に、引下げ導線42は鉄塔40に沿って架設され、局舎接地極としての等電位接地極43に接続されている。なお、この等電位接地極43には、鉄塔40の塔脚部と、前述した耐雷変圧器32、整流回路34及び電気設備35の接地端子も接続されており、等電位接地極43は例えば三条の環状低抵抗メッシュ接地材により構成されている。
【0015】
次に、この実施形態の動作を説明する。
いま、避雷針41が直撃雷を受けると、雷サージ電流Iは引下げ導線42を介して等電位接地極43に流れる。このとき、等電位接地極43の接地抵抗をRとするとI×Rの大きさの接地電位上昇電圧が発生する。
従来では、電源用保安装置として、例えば図2(a)に示すようにフューズ311及び放電素子312からなる続流阻止避雷器310を2個直列接続したものや、図2(b)に示すようにバリスタ313を2個直列接続したものを用いており、これらの電源用保安装置用接地端子Eが前記等電位接地極43に接続されている。このような電源用保安装置を使用すると、雷撃時の接地電位上昇電圧は図2(a)または図2(b)の電源用保安装置に接地端子Eを介して印加されることになり、引込配電線13’を介して図1の一般需要家20及びB種接地極14側に波及しようとする。
【0016】
しかしながら、本発明の実施形態では、耐雷変圧器32の一次側の続流阻止避雷器31の接地接続点が深埋設絶縁独立接地極39により接地されている。この深埋設絶縁独立接地極39は、等電位接地極43とは電気的に切り離されて独立した接地となっており、等電位接地極43の接地電位上昇電圧が耐雷変圧器32の絶縁耐電圧以下であれば引込配電線13の電位は上昇しないため、一般需要家20の電気設備を破壊したり人体に感電等の被害を与えることがなくなる。
【0017】
更に、図1において、配電変圧器11から侵入する誘導雷によるサージ電圧や、高圧配電線10と低圧配電線(引込配電線13)との混触事故等による異常電圧の侵入に対しても、耐雷変圧器32の一次側の続流阻止避雷器31を介して深埋設絶縁独立接地極39側に放流することになり、引込配電線13の電位の上昇を防いで一般需要家20や特定需要家50に対して雷サージやその他の異常電圧を低減できることになり、各種電気設備に影響を及ぼすことがなくなる。
【0018】
上記のように、本実施形態によれば、特定需要家50の敷地内において、耐雷変圧器32の一次側の続流阻止避雷器31の接地接続点を深埋設絶縁独立接地極39により接地することにより、従来のように遠隔接地極を設ける場合の用地買収や借用に伴う手続や費用の負担を解消し、直撃雷や誘導雷から一般需要家20や特定需要家50の各種電気設備を確実に保護することができる。
また、回路構成上も既存の接地システムに深埋設絶縁独立接地極39等を追加すればよいため、低コストでの施工が可能である。
【0019】
なお、図1の構成において、等電位接地極43として低抵抗の接地が採れない場合には、図1の引下げ導線42を用いずに、高絶縁ケーブルを用いた特別の引下げ導線(図示せず)によってその接地側を等電位接地極43から切り離し、深埋設絶縁独立接地極39と同様の別の深埋設絶縁独立接地極を施工し接続することにより、一層優れた総合的な接地システムを構成することもできる。
【0020】
また、上述した実施形態では、単相の配電系統を対象として説明したが、本発明は三相の配電系統に対しても適用可能である。
図3は、本発明を三相配電系統に適用した場合の主要部の構成図である。図3において、11Aは配電変圧器、13Aは引込配電線、30Aは電源用保安装置、32Aは耐雷変圧器であり、他の構成要素については図1と同一の番号を付してある。この場合には、電源用保安装置30Aにおいて、耐雷変圧器32Aの一次側に続流阻止避雷器31を3個接続し、その接地接続点を前記同様に深埋設絶縁独立接地極39に接続すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示す構成図である。
【図2】従来の電源用保安装置の構成図である。
【図3】本発明を三相配電系統に適用した場合の主要部の構成図である。
【符号の説明】
【0022】
10:高圧配電線
11,11A:配電変圧器
13,13A:引込配電線
14:B種接地極
20:一般需要家
21:家屋
30,30A:電源用保安装置
31:続流阻止避雷器
32,32A:耐雷変圧器
34:整流回路
35:電気設備
36:アンテナ
37:深埋設絶縁独立接地線
38:絶縁部材
39:深埋設絶縁独立接地極
40:鉄塔
41:避雷針
42:引下げ導線
43:等電位接地極
50:特定需要家

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引込配電線から一般需要家及び特定需要家が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、一般需要家の電気設備と、耐雷変圧器を介して受電する前記特定需要家の電気設備とを、雷害から保護するための接地システムにおいて、
前記特定需要家の構内に設置されている高層構造物に設置された避雷針と、
この避雷針に接続された引下げ導線と、
前記耐雷変圧器、前記特定需要家の電気設備、高層構造物及び引下げ導線が共通して接地される等電位接地極と、
前記耐雷変圧器の一次側に低圧配電電圧の続流阻止避雷器を介して接続され、かつ、地中深く埋設されている深埋設絶縁独立接地極と、
を備え、
前記深埋設絶縁独立接地極を、前記特定需要家の敷地内に埋設したことを特徴とする接地システム。
【請求項2】
請求項1に記載した接地システムにおいて、
前記耐雷変圧器の一次側に接続された前記続流阻止避雷器2個の接地接続点を、前記深埋設絶縁独立接地極に接続したことを特徴とする接地システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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