説明

接地抵抗測定用補助電極

【課題】 接地抵抗測定用の補助電極であって、従来補助電極として使用されている金属棒を打ち込むことができない硬い地盤であってもうまく接地させることができ、しかも導電性の高い補助電極を提供する。
【解決手段】 銀メッキを施した化学繊維を素材として編んだ柔軟なネットからなる接地抵抗測定用補助電極本体の外周部に、より導電性の高いテープによる縁取りを設け、その適所に導線を接続するための接続用クリップを取付けるとともに、外周部の他の部分に薄い導電性金属板からなる接続端子を取り付けた。本体としては、銀メッキを施した化学繊維と、銀メッキを施していない化学繊維とを組み合わせて編んだものでもよい。ネットの編み方としては、ラッシェル編みが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、避雷器、高圧機器等を取り付けた鉄塔、電柱等に付設されている接地極の接地抵抗を測定する場合に使用するに適した補助電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器、避雷器、高圧機器等を取り付けた電柱には、漏電による事故を防ぐため、接地工事が法律で義務付けられている。この接地工事は、電柱位置の周辺に所定深さで接地部材を埋め込んで接地極とし、該接地極に接地線を接続することにより行われる。
【0003】
従来、この接地部材の埋め込み工事は、金属棒等の接地部材をハンマ−で地中に打ち込み、埋め込んだ接地部材の接地抵抗を測定し、その抵抗値が規定値以下である場合は合格としている。
【0004】
上記接地抵抗の測定は、図3に示すような方法で行われるのが一般的である。すなわち、被測定接地極101及び補助電極(接地棒)102,103をリード線105で測定器Mと接続し、被測定接地極101と補助電極103との間に電流(一般に交流が用いられる)を流して抵抗を測定する。この場合の被測定接地極101、補助電極102及び103間の距離Lは、5〜10m程度とする。
【0005】
図4はこの測定原理を表すもので、被測定接地極101と補助電極103とを同図(a)に示すように電源107に接続すると、両極101,103間の電位降下は同図(b)に示すようになる。この場合、両者の距離が十分長ければ、中央部分の電位は平らになるので、被測定接地極101の抵抗R1 による電位降下E1 と補助電極103の抵抗R2 による電位降下E2 が中央部分で明瞭に分離されることになる。したがって、この中央部分に別の補助電極102を設けて、被測定接地極101と該中央部分の補助電極102間の電位差E1 を測定すれば、E1 =IR1 の関係からR1 =E1 /Iとなり、被測定接地極101の接地抵抗R1 が求められるのである。
【0006】
上記接地抵抗測定用の補助電極としては、導電性に富んだ金属棒が用いられ、これを土中に打ち込んで測定するが、測定場所の地盤が乾燥した砂れき、コンクリート、岩盤等の場合は、金属棒からなる接地極(接地棒)を打ち込むことができないためうまく測定できないという問題があった。このため、金属製の網を地盤表面に被せて接地棒を載せ、その上から水をかけて測定する等の方法が採用されることもあった。
【0007】
しかしながら、金属網は面積が広いうえ、硬くて変形しにくいので、運搬、保管等の取扱に不便であるほか、地盤に密着させるのが難しく、補助電極の接地抵抗が大きくなり過ぎて、正確な測定値が得られないという問題があった。
【0008】
この問題を解決するため、本発明者等は、銀メッキを施した化学繊維を素材として編んだ柔軟なネットで構成される補助電極を開発し、既に特許出願している(下記特許文献1参照)。この補助電極は、実際に現場で広く実用され、好評を博している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−97087
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記新たに開発された補助電極は、リード線を接続するのが難しく、手間がかかるという問題点があった。本発明は、上記新たに開発された補助電極をさらに改良し、リード線との接続を簡単かつ確実にし、実用上極めて便利なものとすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、本発明にかかる接地抵抗測定用補助電極は、銀メッキを施した化学繊維を素材として編んだ柔軟なネットを本体とし、該本体の外周部に銀メッキした化学繊維等の糸を編んだ銀濃度の高い帯状の縁どりを設け、該縁取りを設けた外周部の一箇所にリード線を接続することのできるクリップを取り付けるとともに、外周部の縁取り上の他の位置に薄い金属板からなる接続端子を取り付けたことを特徴としている。
【0012】
銀メッキを施した化学繊維は高価であるから、実際には、銀メッキを施した化学繊維と、銀メッキを施していない化学繊維とを組み合わせて編んだ柔軟なネットを本体とするのが経済的で好ましい。さらに、このネットにおける繊維と繊維が接触する交点は、互いの密着性を高くして、電気抵抗をできるだけ小さくする必要があるので、ネットの編み方としては、レース編み、魚網編み等が好ましく、特に、縦横の糸の交点が複雑に絡み合うラッシェル編みを採用するのが好ましい。この編み方によれば、交点がずれにくく、強度的にも優れている。また、ネットは、編み目が適度に開いている方が柔軟であり、地盤との密着性が良くなるので好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接地抵抗測定用補助電極は、本体が化学繊維を編んだ柔軟なネットであるから、地面や岩盤上に被せた場合にその凹凸によくなじみ、地盤等の表面に密着しやすい。しかも銀メッキを施した繊維を含んでいるので、導電性が良好で、接地抵抗測定に十分な接地効果が得られる。また、このネットからなる補助電極は柔軟であり、不使用時には小さく折り畳んでおくことができるので、取扱に便利なものである。
【0014】
さらに、ネットからなる本体の外周部に導電性の高い縁取りを枠状に設けているので、外部のリード線の本体に対する接続が簡単で、リード線をこの縁取り部分に接続した場合に、ネット全体に対し良好な通電性を確保できる。また、この枠状の縁取りには、アース線接続用のクリップが取り付けられているので、接地工事現場で簡単にリード線を接続することができる。しかも、ネットからなる本体のコーナー部であって前記高電導性縁取りの適所に薄い金属板からなる接続端子が一体に設けられているので、接続すべきリード線の端部に接続用のクリップが設けられている場合は、当該クリップで、この部分を挟むことにより、簡単に電気的に接続できる。このようなクリップを設けず、リード線をこの部分に蝋付等で直接接続することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を例示する外観図である。
【図2】その要部の拡大図である。
【図3】従来の補助電極を用いた接地抵抗測定法の説明図である。
【図4】その原理を表す説明図である。
【図5】縁取り部分の取り付け方法を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。この接地抵抗測定用補助電極Pは、図1、図2に示すように、自重で極めて容易にたわむほど柔軟なネットを本体1として備えている。本体1であるネットは、縦横の糸(本発明では化学繊維で構成される)f,…を例えばレース編み、魚網編み、ラッシェル編み等の公知の編み方で編んだもので、縦横の糸の交点がしっかりと絡み合っている。本体1を構成するネットの網目dの大きさは、一辺の長さが数mm程度である。なお、網目dの形状は、多角形(三角形、四角形、…)でもよく、その他の形状でもよい。
【0017】
上記縦横の糸は、導電性に富んだものであるのが好ましく、柔軟で強度の高い化学繊維(例えばポリエステル、ナイロン)に銀メッキを施したものが最も好ましい。銀メッキした化学繊維としては、ナイロン繊維に銀メッキを施したものが市販されており、これを利用するのが効果的である。しかしながら、経済的には、銀メッキした化学繊維と銀メッキしない化学繊維(ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等)とを適当な割合で組み合わせて使用するのが好ましい。例えば、銀メッキしたナイロン(以下「メッキ糸」と呼ぶ)とメッキしない化学繊維(以下「非メッキ糸」と呼ぶ)の割合を1:1〜1:2程度に混合したものを好適に使用することができる。なお、銀メッキの代わりに銅メッキ、ニッケルメッキ等他の金属のメッキを採用することも可能ではあるが、実用上不安定であるので、銀メッキがもっとも好ましい。
【0018】
ネットを構成する縦横の糸fの太さは10〜100デニール程度とするのが好ましいが、これに限定されるものではない。また、ネットからなる本体1の形状・寸法は、使用条件等に応じて適当なものとすればよい。通常は、一辺の長さ50〜100cmの方形とするのが適当であろう。
【0019】
本体1であるネットの外周部には、帯状の縁取り2が枠のように施されている。この縁取り2は、本体1よりも導電性の高いネット(シート)からなるテープ状のもので、例えばポリエステルの糸に銀メッキを施したものを本体1よりも密に編んだ布状のテープで構成されている。本体1のように、メッキを施さない糸は使用されず、全体が銀メッキ糸で構成されるので、導電性と単位面積あたりの重量は本体1よりも大幅に高くなっている。このテープからなる縁取り2用素材を、図5に示すように、その長手方向中央部で二つ折りし、本体1の外周部に被せてミシンで縫い付けている。このため、本体1の端縁部のほつれ等が生じにくく、耐久性が向上する。本体の表面上における縁取り2の幅は1〜1.5mm程度とするのが好ましい。
【0020】
縁取り2は、枠状に本体1の全周にわたって形成されているが、その枠状の縁取りの一つのコーナー部に通電用のクリップ3が取り付けられている。このクリップ3は、縁取り2に接続されるもので、縁取り2に対し着脱可能としておくのが好ましい。例えば、縁取りに固着した接続端子に対し嵌合、螺着等で着脱できるようにしておくのが好ましい。図示例では、クリップ3がコーナー部に取り付けられていて、取扱に便利なものとなっているが、場合によっては、コーナー部に限らず、本体1の外周部の他の位置(適所)でもよい。クリップ3は、導線の接続に常用されているもので、その基部が前記導電性の高い縁取り2の部分に接続され、反対側の自由端部が、鰐口状の口となっている。このクリップは、口を開くためのレバーを備え、これを押圧することにより、トルクバネ(図示省略)の弾力に抗してクリップの口を開くことができる。
【0021】
枠状の縁取り2の外周部の他の位置、図示例では前記クリップ取付け部以外の3箇所のコーナー部には、薄い導電性金属シート(板もしくは箔)からなる接続端子5が取り付けられている。接続端子5は、例えば縁取り2の部分にステープラー、リベット等の手段で固着しておけばよい。要は、縁取り2に対し電気的に接続されていればよい。図示例では、この接続端子5として、厚さ1mm以下の薄い銅板が使用されている。接続端子5は一辺の長さが数mm乃至数十mmであり、図示例では概略長方形であるが、2辺にわたるカギ形でもよく、楕円形そのたの形状でもよい。この接続端子5は、3箇所に限らず、縁取り2における前記クリップ3を取り付けた部分以外の適所(コーナー部以外でも可)に適当数だけ設けておけばよい。
【0022】
この接地抵抗測定用補助電極Pは、地盤上に被せて使用する。この場合、この補助電極自体が柔軟なネットからなるので、地盤の凹凸によく馴染み、地盤に対する密着性がよい。また、外周部に銀濃度が高く、重量の大きい縁取り2や、接続端子5が設けられているので、地盤に被せた場合に、捲れ上がったりしにくく、地盤に対する密着性が改善される。接地抵抗測定に際しては、本体1のコーナー部に取り付けた接続用クリップ3でリード線を接続してもよく、他のコーナー部に設けた接続端子5にリード線をロウ接等で接続してもよい。リード線の端部にクリップが取り付けられている場合は、このクリップで上記接続端子5を挟めばよい。なお、接地抵抗を低減するために、ネットの上から水をかけておくのが好ましい。測定が終わったら、柔軟な本体1を適当な大きさに折りたたんで、体積を小さくすることができる。
【実施例】
【0023】
メッキ糸として、米国Sauquoit社製銀メッキナイロン繊維(商品名「X−static 30XS10」)を使用し、メッキしないナイロン繊維からなる非メッキ糸と1:1の割合で組み合わせてラッシェル編みでネットからなる素材を製作した。このネットは、電気抵抗が100Ω以下であり、これを70cm角に切り出して本体1とし、これにアース線を接続して、横河電気(株)社製接地抵抗計3235型を用いて被測定接地極の接地抵抗を測定したところ、岩盤上においてもうまく接地抵抗を測定することができた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この接地抵抗測定用補助電極は、銀メッキを施した化学繊維を用いて編んだ柔軟なネットを主体とするもので、導電性に富んでいるばかりでなく、地盤に対する密着性が良好であり、従来の接地棒からなる補助電極を打ち込むことができない地盤においても接地抵抗を簡単かつ正確に測定することが可能となった。また、外周部に比重が大きく導電性の高い縁取りが設けられ、しかも導線接続用のクリップも適所に設けられているので、ネットが捲れあがりにくく、導線の接続にも便利である。
【符号の説明】
【0025】
1 本体
2 縁取り
3 クリップ
5 接続端子
P 補助電極
f 糸(化学繊維)
d 網目
E 接地端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀メッキを施した化学繊維を素材として編んだ柔軟なネットを本体とし、該本体の外周部に銀メッキした化学繊維等の糸を編んだ銀濃度の高い帯状の縁どりを設け、該縁取りを設けた外周部の一箇所にリード線を接続することのできるクリップを取り付けるとともに、外周部の縁取り上の他の位置に薄い金属板からなる接続端子を取り付けたことを特徴とする接地抵抗測定用補助電極。
【請求項2】
本体が、銀メッキを施した化学繊維と、銀メッキを施していない化学繊維とを組み合わせて編んだ柔軟なネットからなる請求項1に記載の接地抵抗測定用補助電極。
【請求項3】
本体のネットがラッシェル編みで編まれている請求項1又は請求項2に記載の接地抵抗測定用補助電極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134073(P2012−134073A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286797(P2010−286797)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(304040544)FTES有限会社 (2)
【Fターム(参考)】