説明

接地端子台

【課題】接地レールへの固定に要する手間と作業工数を削減して、接地レールの鍔部分の変形を抑えつつ接地不良を防止する。
【解決手段】 導電端子1の下方位置で導電端子1の長手方向に互いにスライド自在に設置され、長穴11に対向してねじ穴21が設けられ、接地レール5の両側鍔部分5aに係合可能とする二つの接地金具2と、二つの接地金具2に対して互いに内側に付勢力を付与するばね3とを有し、絶縁ユニット4には、二つの接地金具2およびばね3が収容保持され、ばね3の付勢力により導電端子1が二つの接地金具2を介して接地レール5に接地可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられ、例えば総合接地配線と各機器からの接地配線との配線中継および配線分岐するための接地端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、この種の接地端子台100としては、導体端子101の両端縁部分の両ねじ穴102間の中央部分に、接地レール103に差し込んで上下に金具にて挟み込むためのレール固定用のねじ穴104が設けられている。この導体端子101は前後に直角に断面コ字状に折り曲げられて逆T字状に形成されている。このレール固定用のねじ穴にねじ105を螺合させて、接地レール103の両側から突き出た鍔部分103aを下方から係合するように、導体端子101の逆T字状の折り曲げ部先端面部分101aとの間で上下に挟み込むための固定金具106が設けられている。この固定金具106は接地レール103の鍔部分103aを下方から受けられるようにレール両側から内側に屈曲した形状をしている。この接地端子台100は、ねじを締結して導体端子101を介して配線を連結する配線中継および分岐装置としてのねじアップ式の端子台に適用している。
【0003】
樹脂製のユニット107には、導体端子101および固定金具106が所定位置に収められてユニット部が構成され、その厚み方向に複数のユニット部が連結されている。この樹脂製のユニット107は、緑色と黄色が交互に用いられて、接地端子台100として、電圧が印加される端子を接続するとショートするので、他の通常の端子台と色で区別されている。
【0004】
なお、従来の接地端子台の特許文献としては、特許文献1および特許文献2があるが、いずれも接地用の端子そのものが示されているだけで、上記図5のようなユニット式で複数配線が可能な端子台で接地レールを通して接地するものではない。このような従来のユニット式で複数配線が可能な端子台としては、接地端子台ではないが、特許文献3にねじアップ式端子台が開示されている。
【特許文献1】特開2000−324601号公報
【特許文献2】特開2002−180258号公報
【特許文献3】特開2001−52776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の接地端子台100を接地レール103に固定するためには、折り曲げ部先端面部分101aと固定金具106間に接地レール103の鍔部分103aを挟み込んで中央部のねじ105を締め付けることにより、接地レール103の鍔部分103aを、導体端子101の逆T字状の折り曲げ部先端面部分101aと固定金具106とで上下から固定しなければならない。よって、この接地用の中央部のねじ105の締め付けを忘れた場合には、接地端子台100の導電端子101が接地レール103に電気的に接続されず、接地不良が発生して、各機器の動作が不安定になるという問題が発生する。
【0006】
しかも、この接地端子台100の輸送時には、導電端子101と固定金具106とを動かないようにかつ音が出ないように固定するために接地用の中央部のねじ105を予め締め付けた状態としている。このため、この接地端子台100の取り付け時には、接地用の中央部のねじ105を一旦戻して(緩めて)から、接地レール103を挟んで締め付けなければならず、手間と作業工数がかかる。
【0007】
さらに、折り曲げ部先端面部分101aと固定金具106間に接地レール103の鍔部分103aを通して中央部のねじ105を締め付けて、接地端子台100を接地レール103に固定する構造であるため、中央部のねじ105の締め付けトルクが大きい場合はもちろんのこと、締め付けトルクが通常の場合であってもねじ105を締めすぎると接地レール103の鍔部分103aが変形して、接地端子台100の接地レール103への再取り付けが困難となる場合も発生する。また、ねじ105の締め付けトルクが小さ過ぎる場合には、接地端子台100の接地レール103への固定が不完全であったり、経時的に電気的に不接触状態となることもあり得る。このように、接地レール103の鍔部分103aの変形を抑えようとすると接地不良が経時的に発生する虞がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、接地レールへの固定に要する手間と作業工数を削減して、接地レールの鍔部分の変形を抑えつつ接地不良を防止できる接地端子台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の接地端子台は、両側に貫通穴が設けられた短冊状の導電端子と、該導電端子を保持する絶縁ユニットとを有する接地端子台において、該導電端子の下方位置で該導電端子の長手方向に互いにスライド自在に設置され、該貫通穴に対向してねじ穴が設けられ、接地レールの両側の鍔部分に係合可能とする係合部が設けられた二つの接地金具と、該二つの接地金具の各係合部に対して互いに内側に付勢するばねとを有し、該絶縁ユニットには、該二つの接地金具および該ばねが収容保持され、該ばねの付勢力により該各係合部が該接地レールに押圧可能とされており、そのことにより上記目的が達成される。
【0010】
また、好ましくは、本発明の接地端子台における導電端子は、配線時に、前記貫通穴を通して前記ねじ穴にねじが締結されて該二つの接地金具と一体的に固定されている。
【0011】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台において、前記二つの接地金具はそれぞれ、前後に直角に断面コ字状に折れ曲り、その折れ曲がった両先端板部分が該二つの接地金具に、前記接地レールの両側の鍔部分にそれぞれ係合可能とする前記各係合部がそれぞれ設けられ、前記ねじ穴が該断面コ字状の中央平面部分に設けられ、該平面部分からその半分の幅で延設された延設部が設けられ、該平面部分の幅部分の先端板部分が該延設部から断面L字状に、該断面コ字状部分の折れ曲り方向とは直交する方向に折れ曲がっており、該二つの接地金具を組合せて、該延設部から折れ曲がった先端板部分がそれぞれ対向配置され、該各先端板部分間に前記ばねが配置されている。
【0012】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台における係合部は、切り欠き部または段差部で構成されている。
【0013】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台において、前記二つの接地金具の各延設部にはそれぞれ、マイナス形状の先端部が挿入可能な長方形状の切り欠き部がその長手方向に直角な方向に互いに対向してそれぞれ設けられている。マイナス形状の先端部は、マイナスドライバの先端部の他に、マイナスドライバの先端部と同等な工具の先端部などがある。
【0014】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台における段差部には、前記接地レールの鍔部分に下方から当接可能に折り曲げられた折り曲げ部を有している。
【0015】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台における絶縁ユニットは、複数個その厚み方向に連結可能とされているかまたは、該厚み方向に互いに抱き合わせになった状態で、複数個その厚み方向に連結可能とされている。
【0016】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台において、前記導電端子と前記二つの接地金具との間には所定の隙間が設けられており、ねじ締結時に、該二つの接地金具の係合部が前記接地レールの鍔部分とその下方から係合するように移動して、該接地レールの鍔部分を、前記ユニットの底面部分と該係合部とで挟み込んで固定する構成としている。
【0017】
さらに、好ましくは、本発明の接地端子台において、ねじアップ用の座金付ねじと、該座金付ねじの下端部が前記ねじ穴から離間する方向に、該座金付ねじに付勢力を付与するばねとを更に有し、該絶縁ユニットは、これらを収容して保持すると共に、前記導電端子に対して垂直方向に該ねじアップ用の座金付ねじを上下移動自在にガイドする絶縁部材を有している。
【0018】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0019】
本発明においては、二つの接地金具の各係合部に対して互いに内側にばねで付勢することにより各係合部が接地レールに押圧可能とされている。
【0020】
これによって、ワンタッチで各係合部の接地レールへの着脱が可能で、接地レールへの固定に要する手間と作業工数が削減されて、接地レールの鍔部分の変形を抑えつつ接地不良が防止される。
【発明の効果】
【0021】
以上により、本発明によれば、二つの接地金具の各係合部に対して互いに内側にばねで付勢して各係合部を接地レールに押圧可能としているため、ワンタッチで各係合部の接地レールへの着脱が可能で、接地レールへの固定に要する手間と作業工数を削減して、接地レールの鍔部分の変形を抑えつつ接地不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の接地端子台の実施形態1、2について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る接地端子台の要部構成例を示す上面図、図1(b)は、図1(a)の正面図、図1(c)は、図1(b)の側面図である。図2(a)は、図1の接地端子台から金具部分を取り出した場合の正面図、図2(b)は、図2(a)の側面図である。
【0023】
図1(a)〜図1(c)、図2(a)および図2(b)において、本実施形態1の接地端子台10は、両端縁部分にねじ締結用の長円状の穴11(貫通孔)を持つ短冊状の導電端子1と、この導電端子1の下方位置で導電端子1の長手方向に互いにスライド自在に設置され、穴11に対向する位置にねじ穴21がそれぞれ設けられた二つの接地金具2と、二つの接地金具2に対して互いに内側にレール固定用の付勢力を付与する圧縮ばね3と、これらを収容する樹脂製の絶縁ユニット4とを有している。
【0024】
導電端子1は、例えば短冊状の銅板または真鍮板にニッケルめっきや錫めっきが施されており、配線時に、その両端縁部分にそれぞれ設けられた両長円状の穴11にねじ12をそれぞれ通してその下の接地金具2のねじ穴21にねじ12を螺合させて締結するようになっている。導電端子1の両長円状の穴11(貫通穴)からねじ12を締結することにより、後述するように二つの接地金具2の位置が固定される。この固定により、配線などで引っ張られても、接地金具2が互いにスライドして開いて接地レール5から外れることはない。
【0025】
二つの接地金具2はそれぞれ同じ形状をしており、前後に直角に断面コ字状に折れ曲り、その折れ曲がった両先端板部分24に、接地レール5の鍔部分5aが収容可能なように係合部(切り欠き部または段差部、ここでは切り欠き部)22が形成されている。また、接地金具2は、断面コ字状の中央の平面部分23にねじ穴21がバーリング加工されており、平面部分23からその半分の幅で延設された延設部25が設けられ、平面部分23の幅と同じ幅部分の先端板部分26が延設部25から断面L字状に、上記断面コ字状部分の折れ曲り方向とは直交する方向に折れ曲がっている。二つの接地金具2の各延設部25にはそれぞれその長手方向に直交する方向に長方形状の切り欠き部25aが互いに対向する位置に設けられている。二つの接地金具2の各切り欠き部25aの上方の導電端子1には丸穴(または角穴などの貫通穴)が設けられており、上方から導電端子1側の丸穴を通して各切り欠き部25a(長方形の穴になっている)内にマイナスドライバの先端部分を挿入してマイナスドライバを回転させることにより、容易に、二つの接地金具2を接地レール5から開いて外す方向にスライドさせることができる。図1(a)では二つの切り欠き部25aが互いにスライドした状態を示している。
【0026】
これらの二つの接地金具2を組合せて、各先端板部分26を対向配置させると共に、接地レール用の係合部22を対向配置させて、各先端板部分24間に圧縮ばね3を収容することにより、各先端板部分26を外側に広げる方向に付勢力を付与する。これによって、対向した接地レール用の係合部22も連動して、互いに接近する方向に付勢力が働く。二つの接地金具2は、導電端子1の下方位置で、導電端子1の長手方向に、各係合部22が接近または離間方向に移動自在に配置される。
【0027】
ユニット4は、複数個その厚み方向に連結可能とされ、ユニット4のそれぞれに、ねじ12が取り付けられた導電端子1、二つの接地金具2および圧縮ばね3をそれぞれ収容して保持している。なお、ユニット4は、互いに抱き合わせになって収容物を内部に収容するように縦方向に二つに分割されていてもよい。
【0028】
上記構成により、まず、接地端子台10の対向した各係合部22の一方を接地レール5の鍔部分5aの一方に嵌め込んだ状態で、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各係合部22間の距離を広げてワンタッチで他方の係合部22を鍔部分5aの他方に嵌め込む。二つの接地金具2の各係合部22は、圧縮ばね3の付勢力により、接地レール5の鍔部分5aに両側から内側に押圧して電気的に接触している。
【0029】
次に、導電端子1の一方の長円状の穴11(貫通孔)にねじ12を通して、接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ12を締結することにより配線を行う。また、導電端子1の他方の長円状の穴11(貫通孔)にねじ12を通して、別の接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ12を締結することにより配線を行う。別途、接地レール5への接地用にねじ締めすることなく、配線作業のねじ締めだけで、導電端子1から接地金具2を介して接地レール5に安定した接圧で電気的に接続して接地することができる。
【0030】
この場合に、導電端子1は二つの接地金具2とねじ締結によって一体的に固定されており、配線を引っ張っても二つの接地金具2がスライドして接地レール5から外れたり外に出てくることはない。
【0031】
定期的なメンテナンス時などに、まず、接地端子台10を接地レール5から外す場合、導電端子1上の配線をねじを緩めて外して二つの接地金具2がスライド可能状態にし、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各係合部22間の距離を広げてワンタッチで取り外すことができる。また、前述したように、マイナスドライバを用いて、対向した各係合部22間の距離を広げて取り外すこともできる。
【0032】
次に、接地端子台10に新たなユニット部を加えるなどして、対向した各係合部22の一方を接地レール5の鍔部分5aの一方に嵌め込んだ状態で、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各係合部22間の距離を広げてワンタッチで他方の係合部22を鍔部分5aの他方に嵌め込む。二つの接地金具2の各係合部22は、圧縮ばね3の付勢力により、接地レール5の鍔部分5aに両側から内側に押圧して電気的に安定して接触する。
【0033】
同様に、導電端子1の長円状の穴11(貫通孔)にねじ12を通して、接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ12を締結する。これによって、従来のように、別途、接地レール5への接地用にねじ締めすることなく、配線作業のねじ締めだけで、圧縮ばね3の付勢力により、導電端子1から接地金具2を介して接地レール5に安定して接地することができる。
(実施形態2)
上記実施形態1では本発明を通常の端子台に適用した場合について説明したが、本実施形態2では本発明をねじアップ式の端子台に適用した場合について説明する。
【0034】
図3(a)は、本発明の実施形態2に係る接地端子台の要部構成例を示す上面図、図3(b)は、図3(a)の正面図、図3(c)は、図3(b)の側面図である。図4は、図3の接地端子台から金具部分を取り出した場合の正面図である。なお、図3(a)〜図3(c)および図4では、上記図1(a)〜図1(c)、図2(a)および図2(b)で説明した各部材と同様の作用効果を奏する部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図3(a)〜図3(c)および図4において、本実施形態2の接地端子台20は、両端縁部分に締結用の長円状の穴11(貫通孔)を持つ短冊状の導電端子1と、導電端子1の下方位置で導電端子1の長手方向に互いにスライド自在に設置され、穴11に対向する位置にねじ穴21が設けられた二つの接地金具2と、二つの接地金具2に対して互いに左右方向内側にレール固定用の付勢力を付与する圧縮ばね3と、ねじアップ用の座金付ねじ13と、座金付のねじ13の下端部がねじ穴2から離間する方向(垂直方向)に、座金付のねじ13に付勢力を付与する圧縮ばね6と、これらを収容して保持すると共に、導電端子1に対して垂直方向にねじアップ用の座金付ねじ13を上下移動(アップ・ダウン)自在にガイドする絶縁部材からなるユニット4Aとを有している。
【0036】
特に、本実施形態2の接地端子台20では、ユニット4Aに導電端子1とその下でスライド可能な二つの接地金具2とが収容保持されているが、導電端子1と接地金具2との間には隙間Aが設けられており、ねじアップ用の座金付ねじ13の締結時に、接地金具2が導電端子1側の隙間A(例えば1mm程度)をなくす方向に上側に移動して、これに伴って、接地レール5の鍔部分5aと下側から係合する係合部(切り欠き部または段差部、ここでは段差部)22も上方に移動して接地レール5の鍔部分5aを、ユニット4Aの底面部分とその係合部22とで挟み込んでより確実に、接地レール5を二つの接地金具2で固定することができるようになっている。
【0037】
このときに、二つの接地金具2の係合部22が接地レール5の鍔部分5aを下方から押し上げるように接触(押圧)するが、接地レール5の鍔部分5aへの食い込みがより少ないように先端部が折り返されており、レール変形を抑えるために、その折り返し部22aの接地レール5への接触面積を大きくすると共に、折り返し部22aにも多少の復元力(ばね性)を持たせて緩み止めとしている。
【0038】
上記構成により、まず、接地端子台20の対向した各係合部22の一方を接地レール5の鍔部分5aの一方側に嵌め込んだ状態で、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各段差22間の距離を広げてワンタッチで他方の係合部22をその鍔部分5aの他方に嵌め込む(テーパ部でワンタッチで嵌め込む)。二つの接地金具2の各係合部22は、圧縮ばね3の付勢力により、接地レール5の鍔部分5aに両側から内側に押圧して電気的に接続している。
【0039】
次に、アップしている座金付ねじ13の下方先端部と、導電端子1の穴11間に、電線が圧着された圧着端子(アンプ端子)を挿入して、アンプ端子のねじ用穴内にねじ先端部を通し、座金付ねじ13をその座金と共に、その先端部を圧縮ばね6の付勢力に抗して下降させ、ねじ先端部を接地金具2のねじ穴21に締め付けてアンプ端子を導電端子1と座金付ねじ13の座金とで挟み込む。このようにして、導電端子1の一方の長円状の穴11(貫通孔)にねじ13を通して、接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ13を締結することにより配線を行う。また、導電端子1の他方の長円状の穴11(貫通孔)にもねじ13の先端部を通して、別の接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ13を締結することにより配線を行う。よって、従来のように、別途、接地レール5への接地用にねじを締めることなく、配線作業のねじ締めだけで、導電端子1から接地金具2を介して接地レール5に安定した接圧で電気的に接続して接地することができる。
【0040】
この場合に、導電端子1は二つの接地金具2とのねじ締結によって一体的に固定されており、配線を引っ張っても二つの接地金具2がスライドして接地レール5から外れたり外部に抜け出てくることはない。
【0041】
定期的なメンテナンス時などに、まず、接地端子台10を接地レール5から外す場合、座金付のねじ13を緩めると、座金付のねじ13の下方先端が導電端子1のねじ穴11から離脱し、圧縮ばね6の付勢力により座金付ねじ13が座金と共に導電端子1の表面に対して垂直方向にアップ移動する。これによって、二つの接地金具2が互いにスライド可能状態になり、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各係合部22間の距離をマイナスドライバーなどで広げてワンタッチで取り外すことができる。
【0042】
次に、接地端子台10に新たなユニット部を加えるなどして、対向した各係合部22の一方を接地レール5の鍔部分5aの一方に嵌め込んだ状態で、圧縮ばね3の付勢力に抗して、対向した各係合部22間の距離を広げてワンタッチで他方の係合部22を鍔部分5aの他方に嵌め込む。二つの接地金具2の各係合部22は、圧縮ばね3の付勢力により、接地レール5の鍔部分5aに両側から内側に押圧して電気的に接続する。
【0043】
同様に、アップしている座金付ねじ13の下方先端部と、導電端子1の穴11間に、電線が圧着されたアンプ端子を挿入して、アンプ端子のねじ用穴内にねじ先端部を通し、座金付ねじ13をその座金と共に、その先端部を圧縮ばね6の付勢力に抗して下降させ、ねじ先端部を接地金具2のねじ穴21に締め付けてアンプ端子を導電端子1と座金付ねじ13の座金とで挟み込む。このように、導電端子1の長円状の穴11(貫通孔)にねじ13の先端部を通して、接地金具2の平面部分23のねじ穴21にねじ12を締結する。これによって、従来のように、別途、接地レール5への接地用にねじ締めすることなく、配線作業のねじ締めだけで、圧縮ばね3の付勢力により、導電端子1から接地金具2を介して接地レール5に安定して接地することができる。
【0044】
特に、本実施形態2では、ねじアップ用の座金付ねじ13の締結時に、接地金具2が導電端子1側の隙間をなくす方向に上側に移動し、これに伴って、接地レール5の鍔部分5aと係合する係合部22も上方に移動して接地レール5の鍔部分5aを、ユニット4Aの底面部分とその係合部22とで挟み込んでより確実に、接地レール5を二つの接地金具2で固定する。
【0045】
このとき、係合部22の折り返し部22aが接地レール5に食い込まず、接地レール5を変形させない。折り返し部22aにも多少の復元力(ばね性)があるため、接地レール5と折り返し部22aとの緩み止めになる。
【0046】
以上により、本実施形態1,2によれば、導電端子1の下方位置で導電端子1の長手方向に互いにスライド自在に設置され、長穴11に対向してねじ穴21が設けられ、接地レール5の両側鍔部分5aに係合可能とする二つの接地金具2と、二つの接地金具2に対して互いに内側に付勢力を付与するばね3とを有し、絶縁ユニット4には、二つの接地金具2およびばね3が収容保持され、ばね3の付勢力により導電端子1が二つの接地金具2を介して接地レール5に接地可能とされている。このように、二つの接地金具2の各係合部22に対して互いに内側にばね3で付勢して各係合部22を接地レール5に押圧可能としているため、ワンタッチで各係合部22の接地レール5への着脱が可能で、接地レール5への固定に要する手間と作業工数を削減して、接地レール5の両側の鍔部分の変形を抑えつつ接地不良を防止することができる。
【0047】
なお、上記実施形態1,2では、二つの接地金具2の各延設部25にそれぞれ、マイナスドライバの先端部が挿入可能な長方形状の切り欠き部25aがその長手方向に直角な方向に互いに対向してそれぞれ設けられる構成としたが、マイナスドライバの先端部に限らず、長方形状の切り欠き部25aに挿入可能なマイナス形状の先端部であればよい。このマイナス形状の先端部としては、マイナスドライバの先端部の他に、マイナスドライバの先端部と同等な工具の先端部であってもよい。
【0048】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1,2を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1,2に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1,2の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば原子力発電所、火力発電所および変電所などの配電盤、制御盤および監視盤などに用いられ、例えば総合接地配線と各機器からの接地配線との配線中継および配線分岐するための接地端子台の分野において、二つの接地金具の各係合部に対して互いに内側にばねで付勢して各係合部を接地レールに押圧可能としているため、ワンタッチで各係合部の接地レールへの着脱が可能で、接地レールへの固定に要する手間と作業工数を削減して、接地レールの鍔部分の変形を抑えつつ接地不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る接地端子台の要部構成例を示す上面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、(b)の側面図である。
【図2】(a)は、図1の接地端子台から金具部分を取り出した場合の正面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態2に係る接地端子台の要部構成例を示す上面図、(b)は、(a)の正面図、(c)は、(b)の側面図である。
【図4】図3の接地端子台から金具部分を取り出した場合の正面図である。
【図5】従来の接地端子台の要部構成例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 導電端子
11 長円状の穴
12 ねじ
13 ねじアップ用の座金付ねじ
2 接地金具
21 ねじ穴
22 係合部(切り欠き部または段差部)
22a 折り返し部
23 平面部分
24 先端板部分
25 延設部
25a 切り欠き部
26 先端板部分
3、6 圧縮ばね
4、4A ユニット
5 接地レール
5a 鍔部分
10、20 接地端子台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側に貫通穴が設けられた短冊状の導電端子と、該導電端子を保持する絶縁ユニットとを有する接地端子台において、
該導電端子の下方位置で該導電端子の長手方向に互いにスライド自在に設置され、該貫通穴に対向してねじ穴が設けられ、接地レールの両側の鍔部分に係合可能とする係合部が設けられた二つの接地金具と、該二つの接地金具の各係合部に対して互いに内側に付勢するばねとを有し、該絶縁ユニットには、該二つの接地金具および該ばねが収容保持され、該ばねの付勢力により該各係合部が該接地レールに押圧可能とされている接地端子台。
【請求項2】
前記導電端子は、配線時に、前記貫通穴を通して前記ねじ穴にねじが締結されて前記二つの接地金具と一体的に固定されている請求項1に記載の接地端子台。
【請求項3】
前記二つの接地金具はそれぞれ、前後に直角に断面コ字状に折れ曲り、その折れ曲がった両先端板部分が該二つの接地金具に、前記接地レールの両側の鍔部分にそれぞれ係合可能とする前記各係合部がそれぞれ設けられ、前記ねじ穴が該断面コ字状の中央平面部分に設けられ、該平面部分からその半分の幅で延設された延設部が設けられ、該平面部分の幅部分の先端板部分が該延設部から断面L字状に、該断面コ字状部分の折れ曲り方向とは直交する方向に折れ曲がっており、該二つの接地金具を組合せて、該延設部から折れ曲がった先端板部分がそれぞれ対向配置され、該各先端板部分間に前記ばねが配置されている請求項1に記載の接地端子台。
【請求項4】
前記各係合部は、切り欠き部または段差部で構成されている請求項3に記載の接地端子台。
【請求項5】
前記二つの接地金具の各延設部にはそれぞれ、マイナス形状の先端部が挿入可能な長方形状の切り欠き部がその長手方向に直角な方向に互いに対向してそれぞれ設けられている請求項3に記載の接地端子台。
【請求項6】
前記段差部には、前記接地レールの両側の鍔部分に下方から当接可能に折り曲げられた折り曲げ部を有している請求項4に記載の接地端子台。
【請求項7】
前記絶縁ユニットは、複数個その厚み方向に連結可能とされているかまたは、該厚み方向に互いに抱き合わせになった状態で、複数個その厚み方向に連結可能とされている請求項1に記載の接地端子台。
【請求項8】
前記導電端子と前記二つの接地金具との間には所定の隙間が設けられており、ねじ締結時に、該二つの接地金具の係合部が前記接地レールの両側の鍔部分とその下方から係合するように移動して、該接地レールの両側の鍔部分を、前記絶縁ユニットの底面部分と該係合部とで挟み込んで固定する構成とした請求項1に記載の接地端子台。
【請求項9】
ねじアップ用の座金付ねじと、該座金付ねじの下端部が前記ねじ穴から離間する方向に、該座金付ねじに付勢力を付与するばねとを更に有し、前記絶縁ユニットは、これらを収容して保持すると共に、前記導電端子に対して垂直方向に該ねじアップ用の座金付ねじを上下移動自在にガイドする絶縁部材を有している請求項1に記載の接地端子台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−35590(P2007−35590A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221336(P2005−221336)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000236780)不二電機工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】