説明

接点ばね及びスライドスイッチ

【課題】接点位置を求めるのが容易であり、又、導通電極のエッジに引っ掛かる虞の少ない接点ばね及びスライドスイッチを提供する。
【解決手段】導通電極116に対して相対移動可能の接点取付支持体106に取り付けられ、導通電極116に接点部2が所定の接触圧にて当接される複数の同じ形状をしたブラシ片11を備え、ブラシ片11の相対移動方向にて各ブラシ片11の両側に設けた両接点基板9、10により各ブラシ片11を支持するようにした両側支持の接点ばね1であって、各ブラシ片11は、相対移動方向に直交する方向から見て山形形状とされ、且つ、相対移動方向に直交する方向に互いに離間して配置されており、各ブラシ片11は、山形形状の頂部である接点部を形成するための頂部湾曲部2を備えており、各ブラシ片11は、頂部湾曲部2と、頂部湾曲部2とは反対側の各端部を支持する両接点基板9、10との間に、第1及び第2の曲げ部12、13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テスター(回路計)などにおいて、そのレンジ切り替え装置として搭載されるロータリースイッチ装置などのスライドスイッチに使用される接点ばね、及び、斯かる接点ばねを備えたスライドスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引用文献1に記載されるような構造のテスター(回路計)が知られている。その構造を、本願添付の図5及び図6を参照して簡単に説明する。
【0003】
図5に示すように、テスター100は、テスター本体101を備え、テスター本体101には、リード線102にてテストプローブ(図示せず)が接続されている。
【0004】
テスター本体101は、本体ケース103を構成する上ケース103aと下ケース103bとを備え、内部に回路基板104(図6)が設置されている。
【0005】
上ケース103aには、測定モードを切り替えるためのロータリースイッチ装置105のダイアル106、及び表示部107が配置されている。ダイアル106は、その回転軸108が基板104の支持穴109に回転自在に取り付けられている。
【0006】
更に、ロータリースイッチ装置105は、ダイアル106をクリック的に回転させるクリック機構110と、ダイアル106の裏面に形成されたスイッチ本体111とを備えている。
【0007】
ダイアル106の裏面には、接点ブラシ、即ち、接点ばね112が複数配列されている。即ち、ダイアル106は、スイッチ本体111における接点ばね112を支持する接点取付支持体をも構成している。この接点ばね112により導通される導通電極、即ち、導通パターン116は、図8に示すように、接点ばね112に対向して回路基板104の上に同心円状に形成されている。
【0008】
本発明が関連するスイッチ本体111について説明する。従来の接点ばね112の構造を図7に示す。図7は、接点ばね112の構造を分かり易くするために、ダイアル106の裏面が上方に位置した状態で接点ばね112のみを図示しており、ダイアル裏面に接点ばね112を取り付けているネジ等は省略されている。
【0009】
図7に示すように、従来、接点ばね112は、片側支持構造とされ、ダイアル裏面に取り付けるために鋭角に折り曲げて成形された接点基板113と、この接点基板113の一端に接続された複数のブラシ片114を有している。本例では、スイッチ本体111には、ブラシ片114が2つの接点ばね112を3個と、ブラシ片114が3つの接点ばね112を1個、備えた構造を示しているが、これに限定されるものではない。
【0010】
各ブラシ片は同じ形状、構造とされ、従来、ブラシ片の他端は、湾曲部とされ、回路基板に形成された導通パターン116に所定の接触圧にて当接される接点部115を形成している。
【0011】
ここで、スイッチ本体111において、図8(a)に示すように、接点ばね112を取り付けたダイアル106が矢印方向に回転(移動)し、導通パターン116が形成された基板104は固定されているものとする。
【0012】
接点ばね112のブラシ片114の接点部115は、導通パターン116がない部分で導通が切れている(図8(a)の(イ))。ダイアル106を回すことにより、接点ばね112が、矢印方向に移動し、導通パターン116の一端に達すると、導通パターン116によりブラシ片114の接点部115が矢印方向に押し込まれ(図8(a)の(ロ))、導通パターン116と導通し、所定位置にまで移動した後停止する(図8(a)の(ハ))。ブラシ片114の接点部115は、所定位置にて矢印方向下方へと押し込まれた状態で所定の接触圧にて導通パターン116と導通状態を維持している。
【特許文献1】特開平10−241495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、本発明者の研究実験の結果によれば、このような接点ばね112が導通パターン116に対して相対移動するスライドタイプのスイッチ105は、上述のように、接点ばね112は、その接点部115を矢印方向に或る程度押し込んで、その反力を接触圧とするが、片側支持の場合、押し込んだ時の接点部115の位置が設計では求め難い。そのために、ブラシ片114の接点部115の位置が、設計と実際とでは、ズレが大きくなる。ズレが大きくなると、ダイアル106を回すことによる測定モード切替の精度が不安定となる。
【0014】
そのために、現状では、試作して、導通パターンの微調整をすることが余儀なくされている。
【0015】
また、片側支持のタイプの接点ばねは、図8(b)に示すように、導通パターン116にエッジ116aがある場合には、接点ばね112が、図8(b)にて、矢印A方向(左側方向)に移動する場合には、接点部分は矢印方向に逃げることができるので、問題がない。
【0016】
接点ばね112を矢印A方向とは逆の方向、即ち、図8(b)にて、矢印B方向(右側方向)へと移動させた場合には、接点部115が導通パターン116のエッジ部116aに引っ掛かってしまい、座屈し変形する虞があることが分かった。
【0017】
そこで、本発明者は、図9に示すように、接点ばね112の移動方向の両側にて支持された山形形状の接点ばね112を作製し、その性能を検討した。つまり、接点ばね112は、山形形状のブラシ片114の頂部に接点部115を備え、両側端に接点基板113を備えた構造とした。
【0018】
この両側支持のスライドタイプのスイッチ105の接点ばね112は、両側で支持されているために、接点ばね112の接点部115は、図10(a)に示すように、矢印で示す垂直方向に変位し、従って、接点位置は、設計通りであり、接点位置を求めるのは容易である。
【0019】
しかしながら、接点ばね112は、接点部115の左右方向への変形の余地がなく、座屈は起こり難いものの、図10(b)に示すように、導通パターン116にエッジ116aがある場合には、接点部115がエッジ116aに引っ掛かる虞があることが分かった。
【0020】
本発明の目的は、接点位置を求めるのが容易であり、又、導通電極のエッジに引っ掛かる虞の少ない接点ばね及びスライドスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的は本発明に係る接点ばね及びスライドスイッチにて達成される。要約すれば、本発明は、導通電極に対して相対移動可能の接点取付支持体に取り付けられ、前記導通電極に接点部が所定の接触圧にて当接される複数の同じ形状をしたブラシ片を備え、前記ブラシ片の相対移動方向にて前記各ブラシ片の両側に設けた両接点基板により前記各ブラシ片を支持するようにした両側支持の接点ばねであって、
前記各ブラシ片は、相対移動方向に直交する方向から見て山形形状とされ、且つ、相対移動方向に直交する方向に互いに離間して配置されており、
前記各ブラシ片は、山形形状の頂部である接点部を形成するための頂部湾曲部を備えており、
前記各ブラシ片は、前記頂部湾曲部と、前記頂部湾曲部とは反対側の各端部を支持する前記接点基板との間に、第1及び第2の曲げ部が形成されていることを特徴とする両側支持の接点ばねである。
【0022】
本発明の一実施態様によると、前記頂部湾曲部には、この湾曲形状より突出するようにして球面状とされる接点接触部が形成されている。
【0023】
本発明の他の実施態様によると、前記各ブラシ片は、
(i)前記頂部湾曲部に連接し、互いのなす角度が180°より小さい所定の角度θ1をなすように配置された第1及び第2のアームと、
(ii)前記第1及び第2アームに対して、それぞれ、180°より小さい角度θ2にて外方へと折り曲げられ、前記第1の曲げ部を形成する第3及び第4アームと、
(iii)前記第3及び第4アームに対して、それぞれ、180°より小さい角度θ3にて内方へと折り曲げられ、前記第2の曲げ部を形成する第5及び第6アームと、
を有しており、前記各ブラシ片の前記第5及び第6アームは、それぞれ、互いのなす角度が180°より小さい角度θ4にて配置された前記両接点基板に接続される。
【0024】
本発明の他の実施態様によると、前記各ブラシ片の前記第5及び第6アームは、それぞれ、対応する前記接点基板に対する角度θ5が180°にて接続される。
【0025】
第2の本発明によると、
回転軸を中心として回転可能な接点取付支持体と、
前記回転軸を通る直径方向に整列して設置された複数のブラシ片を備えた接点ばねと、
前記ブラシ片に設けた接点部が所定の接触圧にて当接される導通電極と、
を備えたスライドスイッチにおいて、
前記接点ばねは、上記構成の接点ばねであることを特徴とするスライドスイッチが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、両側支持であり、接点位置は、実質的に押し込み方向に対して垂直方向に変位し、そのために、接点位置は設計位置であると見なすことができ、接点位置を求めるのが容易である。また、接点ばねのスライド時における左右方向への変形の余地があり、導通パターンのエッジに引っ掛かり、座屈を起こすようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る接点ばね及びスライドスイッチを図面に則して更に詳しく説明する。
【0028】
実施例1
図1及び図2(a)、(b)を参照して、本発明に係る接点ばね及びスライドスイッチの一実施例を説明する。
【0029】
本実施例にて、本発明に係る接点ばね1は、図5及び図6を参照して説明したテスター100におけるロータリースイッチ装置105に適用されるものとして説明する。しかし、本発明のスライドスイッチは、ロータリースイッチ装置105に限定されるものではなく、接点ばね1が導通パターン(導通電極)116に対して相対移動するようなスライドスイッチに適用し得る。
【0030】
本実施例のスライドスイッチ、即ち、ロータリースイッチ装置105は、図5及び図6に示すように、ダイアル、即ち、概略円板形状とされる接点取付支持体106を備え、接点取付支持体106には、接点取付支持体106をクリック的に回転させるクリック機構110と、接点取付支持体106の裏面に形成されたスイッチ本体111とを備えている。
【0031】
図1は、本実施例の接点ばね1の構造を分かり易くするために、ロータリースイッチ装置105の接点取付支持体106の裏面が上方に位置した状態で、スイッチ本体111を構成する接点ばね1、及び、接点取付支持体106の裏面に設けられた接点ばね1の支持構造体50のみを示している。クリック機構110は、本発明の特徴部を構成するものではないので、図1には省略されている。
【0032】
接点取付支持体106の裏面には、接点取付支持体106を回路基板104(図6参照)に回転自在に取り付けるための回転軸108が一体に形成されている。従って、接点取付支持体106は、操作者により、回転軸108を中心として任意の方向に可動(回転可能)とされる。
【0033】
接点取付支持体106には、回転軸108を通る直径方向に整列して、接点ばね1が設けられる。この接点ばね1により導通される導通電極としての導通パターン116(図8、図10参照)は、回路基板104(図8、図10参照)上に、接点ばね1に対応して同心円状に形成されている。
【0034】
本実施例によれば、接点取付支持体106の裏面には、接点ばね1を取り付けるための支持構造体50が形成されている。支持構造体50については、接点ばね1及びスイッチ本体111の構造を説明する際に合わせて説明する。
【0035】
次に、本実施例に従った接点ばね1について説明する。
【0036】
本実施例によれば、接点ばね1は、図1及び図2(a)、(b)に示すように、可動の接点取付支持体106に取り付けられ、接点部2が所定の接触圧にて移動しながら導通パターン116(図10参照)に当接される複数の同じ形状をしたブラシ片11を備えている。接点ばね1は、導通パターン116に対して、移動する方向に沿った各ブラシ片11の両側に設けた接点基板9、10にて各ブラシ片11を支持した両側支持の接点ばねとされる。
【0037】
また、各ブラシ片11は、移動方向に直交する方向から見て山形形状とされ、且つ、相対移動方向に直交する方向に互いに離間して配置されている。詳しくは後述するが、各ブラシ片11は、頂部湾曲部2と、頂部湾曲部2とは反対側の各端部を支持する接点基板9、10との間に、第1及び第2の曲げ部12、13が形成されていることを特徴とする。
【0038】
つまり、本実施例の接点ばね1は、全体的に言えば、先に図9、図10を参照して説明した接点ばね112と同様に、薄板の矩形状のばね材を、左右対称形状に山形形状に折曲して作製された両側支持構造とされ、接点取付支持体106に取り付けられた状態で、内部に概略三角形状の空間を形成している。また、接点ばね1は、山形形状の頂部に接点部102を備えた構造とされる。ばね材としては、厚さtが0.1〜0.2mmとされるばね用リン青銅、ばね用ベリリウム銅、ばね用洋白などを好適に使用し得る。
【0039】
本明細書及び特許請求の範囲にて、接点ばね1の「内部」或いは「内方」とは、山形形状に成形されたブラシ片11にて内包される上記三角形状空間部を意味するものとし、接点ばね1の「外部」或いは「外方」とは、上記三角形状空間部の外方領域を意味するものとする。
【0040】
更に説明すると、接点ばね1は、山形形状に成形され、その頂部に接点部2を備えたブラシ片11が複数、例えば、2個或いは3個、平行に配列され、各ブラシ片11の接点部2とは反対の端部が両接点基板9、10にそれぞれ接続されている。接点ばね1の各ブラシ片11は、本実施例では、山形形状頂部の接点部2が、接点取付支持体106の回転軸108を通る直径方向に整列して配置されている。即ち、各ブラシ片11は、スライド(移動)方向に直交する方向から見て山形形状とされる。
【0041】
各ブラシ片11、11の間にはスリット(即ち、開口部)20が形成されており、複数のブラシ片11は、上述のように、互いに平行に配置されている。このスリット部20は、上記回転軸108を通る直径方向に対して直交する方向に形成され、詳しくは後述するように、接点ばね1を接点取付支持体106に取り付ける機能を有している。
【0042】
特に、図2(a)、(b)、(c)を参照すると理解されるように、本実施例によると、各ブラシ片11は、頂部に接点部2を形成するための頂部湾曲部に連接し、互いに所定の角度θ1にて配置された第1及び第2のアーム3、4を有している。本実施例では、頂部湾曲部2には、更に、この湾曲形状より高さhだけ突出するようにして球面状とされる接点接触部2aが形成されている。
【0043】
各ブラシ片11は、第1及び第2アーム3、4に対して角度θ2にて外方へと折り曲げられ、第1の曲げ部12を形成する第3及び第4アーム5、6と、第3及び第4アーム5、6に対して角度θ3にて内方へと折り曲げられ、第2の曲げ部13を形成する第5及び第6アーム7、8とを有している。
【0044】
各ブラシ片11の第5及び第6アーム7、8は、接点ばね1の第1及び第2の両接点基板9、10に接続される。各接点基板9、10は、矩形状とされ、両接点基板9、10は、互いに角度θ4を形成するようにして、前記各ブラシ片11の第5及び第6アーム7、8に、その一側縁部が接続されている。つまり、第5及び第6アーム7、8の延長上に、それぞれ、第1及び第2の接点基板9、10が位置しており、第5及び第6アーム7、8と、対応する接点基板9、10との間の角度θ5は180°とされる。勿論、必要に応じて、角度θ5は、180°より小さい角度でも良く、また、180°より大きい角度とすることもでき、例えば、150〜210°とすることができる。両接点基板9、10の他側縁部は、上述のように、接点取付支持体平面部に当接している。
【0045】
次に、図1を参照して、本実施例の接点ばね1をスライドスイッチとして使用する場合の接点取付支持体106への取付態様について説明する。
【0046】
本実施例によれば、接点ばね1を接点取付支持体106に取り付けるための支持構造体50は、図1に示すように、接点取付支持体106に一体に設置され、接点ばね1のスリット(開口部)20が装入される取付突起51を備えている。
【0047】
本実施例にて、接点ばね1のスリット20は、接点ばね1の平面図である図2(c)を参照すると理解されるように、平面図では矩形状の開口部とされる。従って、取付突起51は、本実施例では、接点ばね1のスリット(矩形状開口部)20に合致するように、断面が矩形状の柱状体とされる。勿論、取付突起51は、この突起に取り付けられた接点ばね1が回転しないことが重要であり、この機能をなすその他の形状、例えば、長円形、楕円形、その他種々の形状とし得る。
【0048】
また、図1にて、ブラシ片11が3個形成された接点ばね1(図1にて、左下の接点ばね1)においては、接点ばね1にスリット20が2個形成されることとなるので、取付突起51は、この2個のスリット(開口部)20に合致するように、断面が矩形状の柱状体51が2個並設される。
【0049】
本実施例では、取付突起51に取り付けられた接点ばね1の外側端縁部に隣接して、垂直突起52が形成されているが、これは、接点ばね1が導通パターン116(図10参照)により押圧された時、接点ばね1の長手方向両側に位置した取付基板9、10の外側端縁部が接点取付支持体平面部を滑り、両側の垂直突起52に当接することにより接点部2の位置を常に一定位置に位置決めするためのものである。
【0050】
本実施例の接点ばね1の具体的寸法形状について説明すれば、図2を参照して、頂部湾曲部2の半径R1は、0.8〜2mm、角度θ1は180°より小さい角度、例えば、30〜60°、角度θ2は180°より小さい角度、例えば、45〜80°、角度θ3は180°より小さい角度、例えば、90〜120°、角度θ4は180°より小さい角度、例えば、90〜130°とされる。また、第1及び第2アーム3、4の長さL1は2〜3mm、第3及び第4アーム5、6の長さL2は1.5〜2.5mm、第5及び第6アーム7、8の長さL3は1〜2mmとされる。又、ブラシ片11の幅W1は、0.8〜2mmとされ、各ブラシ片11の間に形成されるスリット幅W2は、0.8〜3mmとされ、第1及び第2の接点基板9、10の長さL4は、2〜4mmとされる。
【0051】
従って、接点ばね1の全体形状は、ブラシ片の長手方向に沿った長さL0が11〜13mmとされ、長手方向に直交する方向の幅W0が2.4〜12mmとされ、基板9、10の側端から頂部接点接触部2aまでの高さH0が4〜4.5mmとされる。
【0052】
本実施例の接点ばね1にて、ブラシ片11が2個形成された下記寸法の接点ばね1を作製し、接点ばね1の性能を検討した。
【0053】
・材質
厚さ(t)が0.15mmのばね用リン青銅板
・ブラシ片
頂部湾曲部の半径R1:0.9mm
接点接触部の半径R2:0.8mm
接点接触部の高さh:0.19mm
第1及び第2アームの長さL1:2.6mm
第3及び第4アームの長さL2:1.6mm
第5及び第6アームの長さL3:1.5mm
第1及び第2接点基板の長さL4:2.5mm
角度θ1:40°
角度θ2:60°
角度θ3:95°
角度θ4:110°
角度θ5:180°
ブラシ片の幅W1:1.2mm
・接点ばねの全体形状
接点ばねの高さH0:4.3mm
ブラシ片の長手方向に沿った長さL0:12.08mm
長手方向に直交する方向の幅W0:5.3mm
スリット幅W2:2.9mm
【0054】
図3は、上記構成の接点ばね1を使用し、接点部2に対してY方向に5Nの力を加えた時の接点ばね1の各部位における変形の状態を解析した図である。また、図4は、図10を参照して説明した山形形状の接点ばね112を使用し、同様に、接点部115に対してY方向に5Nの力を加えた時の接点ばね112の各部位における変形の状態を解析した図である。
【0055】
図3と図4とを比較すると、本実施例の接点ばね1は、接点部2と接点基板9、10との間に第1曲げ部12及び第2曲げ部13を設けたことにより、本実施例の接点ばね1の方が、接点位置のY方向への大幅な変位を来すことなく、ブラシ片11の変形量を増大し得ることが分かる。
【0056】
つまり、本実施例の接点ばね1によると、両側支持であり、接点位置は、実質的に押し込み方向に対して垂直方向に変位し、そのために、接点位置は設計位置であると見なすことができ、接点位置を求めるのが容易である。また、接点ばね1のスライド時における左右方向への変形の余地があり、導通パターン(導通電極)のエッジに引っ掛かり、座屈を起こすようなことがない。
【0057】
上記実施例では、接点ばね1を備えた接点取付支持体106が可動とされ、導通パターン(導通電極)116側が固定されるものとして説明したが、本発明の原理は、接点ばね1を備えた接点取付支持体106が固定とされ、導通パターン116側が移動する構成とすることも可能である。即ち、本発明の接点ばね及びスライドスイッチは、接点ばね1が導通パターン116に対して相対移動可能とする構成において同様の作用効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るスライドスイッチにおける接点ばねを備えたスイッチ本体の一実施例の斜視図である。
【図2】本発明に係る接点ばねを示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は正面図、図2(c)は平面図である。
【図3】本発明の一実施例の接点ばねを使用し、接点接触部に対してY方向に5Nの力を加えた時の接点ばねの各部位における変形の状態を解析した図である。
【図4】比較例としての山形形状の接点ばねを使用し、接点接触部に対してY方向に5Nの力を加えた時の接点ばねの各部位における変形の状態を解析した図である。
【図5】本発明の接点ばね及びスライドスイッチを適用し得るテスターの斜視図である。
【図6】テスターの分解斜視図である。
【図7】従来の接点ばねを備えたスイッチ本体の一例を示す斜視図である。
【図8】従来の接点ばねの機能を説明する図である。
【図9】比較例としての山形形状の接点ばねを備えたスイッチ本体の一例を示す斜視図である。
【図10】比較例としての山形形状の接点ばねの機能を説明する図である。
【符号の説明】
【0059】
1 接点ばね
2 頂部湾曲部(接点部)
2a 接点接触部
3、4 第1及び第2のアーム
5、6 第3及び第4のアーム
7、8 第5及び第6のアーム
9、10 第1及び第2の接点基板
11 ブラシ片
12 第1の曲げ部
13 第2の曲げ部
20 スリット(開口部)
50 支持構造体
51 取付突起
52 垂直突起
100 テスター(回路計)
101 テスター本体
103 本体ケース
104 回路基板
105 ロータリースイッチ装置(スライドスイッチ)
106 ダイアル(接点取付支持体)
110 クリック機構
111 スイッチ本体
113 接点基板
115 接点部
116 導通パターン(導通電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通電極に対して相対移動可能の接点取付支持体に取り付けられ、前記導通電極に接点部が所定の接触圧にて当接される複数の同じ形状をしたブラシ片を備え、前記ブラシ片の相対移動方向にて前記各ブラシ片の両側に設けた両接点基板により前記各ブラシ片を支持するようにした両側支持の接点ばねであって、
前記各ブラシ片は、相対移動方向に直交する方向から見て山形形状とされ、且つ、相対移動方向に直交する方向に互いに離間して配置されており、
前記各ブラシ片は、山形形状の頂部である接点部を形成するための頂部湾曲部を備えており、
前記各ブラシ片は、前記頂部湾曲部と、前記頂部湾曲部とは反対側の各端部を支持する前記接点基板との間に、第1及び第2の曲げ部が形成されていることを特徴とする両側支持の接点ばね。
【請求項2】
前記頂部湾曲部には、この湾曲形状より突出するようにして球面状とされる接点接触部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接点ばね。
【請求項3】
前記各ブラシ片は、
(i)前記頂部湾曲部に連接し、互いのなす角度が180°より小さい所定の角度θ1をなすように配置された第1及び第2のアームと、
(ii)前記第1及び第2アームに対して、それぞれ、180°より小さい角度θ2にて外方へと折り曲げられ、前記第1の曲げ部を形成する第3及び第4アームと、
(iii)前記第3及び第4アームに対して、それぞれ、180°より小さい角度θ3にて内方へと折り曲げられ、前記第2の曲げ部を形成する第5及び第6アームと、
を有しており、前記各ブラシ片の前記第5及び第6アームは、それぞれ、互いのなす角度が180°より小さい角度θ4にて配置された前記両接点基板に接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の接点ばね。
【請求項4】
前記各ブラシ片の前記第5及び第6アームは、それぞれ、対応する前記接点基板に対する角度θ5が180°にて接続されることを特徴とする請求項3に記載の接点ばね。
【請求項5】
回転軸を中心として回転可能な接点取付支持体と、
前記回転軸を通る直径方向に整列して設置された複数のブラシ片を備えた接点ばねと、
前記ブラシ片に設けた接点部が所定の接触圧にて当接される導通電極と、
を備えたスライドスイッチにおいて、
前記接点ばねは、請求項1〜4のいずれかの項に記載の接点ばねであることを特徴とするスライドスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10002(P2010−10002A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169611(P2008−169611)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】