説明

接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法および得られたデバイス

本発明は、接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法において、基板上に載置された接続終端部分(7b、8b)を有するアンテナを供給または製作する過程と、基板上に接点パッド(5、6)を設置し、接点パッド(5、6)と接続終端部分(7b、8b)の間にエネルギーを取込むことにより溶接(38)の形でアンテナの接続終端部分(7b、8b)に接点パッドを接続する過程とを含む方法に関する。この方法は、接点パッド(5、6)が、アンテナの接続終端部分(7b、8b)に対面した一つの表面を有するような形で設置され、前記部分が基板の上に配置され、溶接エネルギーが、接点パッド(5、6)上に直接加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数トランスポンダの分野に関するものである。
本発明は、特に、接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法および得られたデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の方法は、特に接点パッドに対してアンテナを接続する過程を含み、これらの接点パッドは、場合によっては電子チップまたはモジュールといったようなマイクロ回路に接続されている。
【0003】
本発明は、厚みが薄く低価格であり、かつ、好ましくは、特に通信距離に関して優れた通信特性を示す無線周波数電子インサートの製造において利用されることを目的としている。
【0004】
かかるインサートは、基板上に、マイクロ回路に接続された少なくとも一本のアンテナを有する。
このインサートは、特に、ラミネートシート、電子パスポートのカバー、身分証明書、無線周波数通信機能を備えたあらゆる製品の中に挿入されるようになっており、そのため、その厚みが重要性をもつ。
【0005】
さまざまな接続技術の中でも、「ワイヤボンディング」タイプ、すなわち、チップまたはコンポーネントを接続すべきアンテナの端部近傍に配置した状態で、接続すべきさまざまな点の間に接続線を補給し溶接する超音波チップを用いる線溶接タイプの最も一般的な接続が知られている。
【0006】
この技術には、特にエッチングされた平担な金属接続表面および溶接工具の圧力に耐える表面支持体、接続部を保護するための接続部上の保護用樹脂ならびに樹脂の厚みを補完するシートを必要とするという欠点がある。
【0007】
別の解決法では、モジュールまたはチップを、例えば基板上にエッチングされた銅製のアンテナの接続端部上に直接設置した状態で、アンテナの端部とコンポーネントの接続部との間に配置された導電性接着材料によって、接続が行なわれる。
【0008】
導電性接着材料の使用には、剥き出しの金属トラックまたは巻回を必要とするという欠点があり、巻回の交差には、両面エッチングまたは絶縁ブリッジの製作過程が必要とされる。
【0009】
特開2002−298110号公報から、縫着により接続されたアンテナの製造方法が公知であり、これにおいては、モジュールがまず基板上に固定され、その後、縫着によりアンテナが基板上に固定され、モジュールをアンテナに接続するためには、パッドの上に線を延長させ、モジュールの接点パッドを接触により締めつけることになる。
【0010】
代替的には、超音波チップを線に押しつけて直接熱エネルギーをもたらし、接点パッド上にアンテナ線を熱圧着することによって接続を実現することができる。
【0011】
欧州特許第0880754号明細書におけるような別のケースでは、重合体シート内に嵌込まれた線の形で製作されたアンテナ線は、すでに所定の場所にあるチップの接点パッドまたはその対応する位置の上を通過した後、直接線を押しつけて直接エネルギーをもたらすことにより特に超音波または熱圧着溶接により接続される。
【0012】
接続用接触子の位置の上を通過する場合、基板には、電子チップまたはモジュールの収容キャビティが具備される。
製作中、嵌込み用工具は、キャビティの前で嵌込みを停止し、キャビティの上を通過し、キャビティの後で改めて線を固定する。
その後、チップまたはモジュールを、チップの接触子が線に対面するような形でキャビティの下から導入した後、溶接による接続を実施する。
【0013】
この方法には、時間がかかり、アンテナの製作に先立ちキャビティを必要とするという欠点がある。
【0014】
アンテナを製作する前に基板上にモジュールが存在することに関しては、これにより一部のアンテナ製作方法でアンテナの大量生産速度を減速させてしまう可能性がある。
【0015】
欧州特許第1328899号明細書においては、アンテナは、シート上に縫着された金属線を用いて製作され、接点チップは、予めシート上に配置されアンテナ線と縫着されている。
チップは、基板上に設置され、接点チップに対し特に溶接線結合「ワイヤボンディング」によって接続されている。
この技術では、接点チップを拘束する予備位置づけ、および、先に示したとおり接続部を後で被覆することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、特に通信距離に関して優れた通信特性を示し、厚みが薄く低価格である無線周波数電子インサートの製造の一環として、特にアンテナに対するマイクロ回路の接続に関する上述の欠点を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このため、本発明の目的は、接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法において、
−基板上に載置された接続終端部分を有するアンテナを製作する過程と、
−基板上に接点パッドを設置し、接点パッドと終端部分との間にエネルギーを取込むことにより溶接の形でアンテナの終端部分に接点パッドを接続する過程を含む方法にある。
【0018】
この方法は、接点パッドが、アンテナの接続終端部分に対面した一表面を有するような形で設置され、前記部分が基板の上に配置され、溶接エネルギーが接点パッド上に直接加えられることを特徴とする。
【0019】
上述の欠点を解決すること以外に、本発明は、従来のインサート製造のその他の作業、特に基板上への接点パッドの予備的設置、接続すべきアンテナ部分の下のキャビティの事前の作製、溶接工具の汚染を回避するための接続部の被覆、などの作業からアンテナ製作を切り離すことにより、デバイスの製造に柔軟性を付与することができる。
【0020】
方法実施のその他の特徴にしたがうと、
−アンテナは、織地の備った可撓性支持体上に刺繍または縫製によって製作されており、方法には、終端部分を担持する基板面と反対側の基板面上に特にシートまたは層の形で補強材料を配置する過程が含まれている;
−補強用層またはシートは、アンテナを製作した後に配置する;
−方法は、アンテナの接続終端部分近傍で基板および/または補強用シートもしくは層の中にキャビティを形成する過程を含む;
−方法は、マイクロ回路に結着された接点パッドをアンテナの終端部分と対面して設置する過程を含み、マイクロ回路は、少なくとも一部分がキャビティ内に挿入されている;
−方法は、熱圧着タイプまたは超音波溶接を実施する過程を含む;
−溶接には、支持体内へのアンテナの終端部分の押込みに対する支えとなるアンビルが利用される;
−アンビルは、接続すべき終端部分が、溶接中、アンビルにより支持されるように、接続すべき終端部分に対面して少なくとも補強用シートまたは層を貫通する;
−アンテナ線は、少なくとも一本の非導電線に結着されたハイブリッド線である。
【0021】
本発明は、同様に、接点パッドに接続されたアンテナを有するデバイスにおいて、前記デバイスが、基板および基板上に載置された接続終端部分を備えたアンテナを有し、前記アンテナが、溶接により終端部分に接続されているデバイスをも目的とする。
【0022】
このデバイスは、電気接点パッドが、アンテナの接続終端部分に対面した一つの表面を有し、前記部分が基板上に配置されていることを特徴とする。
【0023】
デバイスのその他の特徴にしたがうと:
−アンテナは、織地の備った可撓性支持体上に刺繍または縫製によって製作されており、デバイスは終端部分を担持する基板面と反対側の基板面上にシートまたは層の形で補強材料を含む;
−デバイスは、アンテナの接続終端部分近傍で基板および/または補強用シートもしくは層の中にキャビティを含む;
−接点パッドは、マイクロ回路に結着され、基板および基板上に載置されたアンテナの終端部分と対面して配置されており、一方、マイクロ回路は、少なくとも一部分がキャビティ内に挿入されている;
−パッドは、溶接される面とは反対側のパッドの面上にパッドを横断して溶接マークを有する;
−デバイスは、接続される各終端部分に対面して補強材料内に穿孔を有する;
−アンテナ線は、少なくとも一本の非導電線に結着されたハイブリッド線である。
【0024】
本発明は、同様に、上述のデバイスまたは上述の方法にしたがって得られるデバイスを含む非接触チップカード、パスポートなどの無線周波数通信電子製品をも目的としている。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照しながら、限定的でなく例示目的で与えられた以下の記述を読むことで明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の方法の一実施形態にしたがって得ることのできるトランスポンダの概略図を例示する。
【図2】アンテナへの接続中の、図1の電子回路モジュールを詳細に例示する。
【図3】アンテナが、嵌込み線でできている第二の実施形態の断面図を例示する。
【図4】基板の腰の強さがシートで補強されている、第三の実施形態の断面図を例示する。
【図5】刺繍されたアンテナ線との接続を示す第四の実施形態の断面図を例示する。
【図6】ハイブリッドアンテナ線との接続を示す第五の実施形態の断面図を例示する。
【図7】複数のアンテナを有する支持体上への補強用シートのラミネーション過程を例示する。
【図8】図4にしたがったデバイス上の溶接工具およびアンビルが残した圧痕を例示する。
【図9】図4にしたがったデバイス上の溶接工具およびアンビルが残した圧痕を例示する。
【図10】モジュールおよび溶接工具との関係における接続終端部分の別の方向性を伴う別の圧痕および得られた圧痕を例示する。
【図11】アンテナ線に対面したパッドの別の形態およびその接続を例示する。
【図12】アンテナ線に対面したパッドの別の形態およびその接続を例示する。
【図13】刺繍糸により固定されたアンテナ線を担持する織布支持体を例示する。
【図14】好ましい一実施形態にしたがった方法の各過程を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の方法の一実施形態にしたがって得ることのできる、接点パッド5、6に接続されたアンテナ3を有するデバイス1の概略図を例示している。
【0028】
このデバイスは、基板2および基板上に載置された接続終端部分7、8の備わったアンテナを含む。
アンテナは、溶接(S)により終端部分に接続されている。
ここではアンテナは、電気化学エッチングによって製作される。
トラックは、例えば幅2mm/5mmといったパッドに比べ微細なものである。
モジュールは、誘電支持フィルムを含んでいてもいなくてもよい。
【0029】
好ましくは、溶接工具T(サーモード(thermode))が押し当てられた(図2)金属接点表面11には、溶接工具を汚染し得る材料がない。
【0030】
図2にある本発明の一実施形態にしたがうと、接続部分がすでに所定の位置にあるパッドの上を通過するかまたはチップもしくはモジュールの収納部の上を通過する先行技術とは異なり、ここでは、電気接点パッドは、基板2上に載置されたアンテナの接続終端部分に対面した一表面を有している。
パッドは、接続作業中、アンテナの端部7、8上に、それらと接触状態で載置されており、デバイス1は平面P上に載置されている。
【0031】
主として先行技術においては、エッチングされたアンテナとチップの接続は、導電性接着剤を用いて行われるか、あるいは、チップがアンテナ上に設置されている場合にはチップ上に接触子がある状態で、または、チップが上に配置される場合は、溶接された線を介して非導電性の接着剤を用いて実施される。
【0032】
図3では、パッドまたはモジュールの設置形態は、図2と同じである。
アンテナは、重合体シート2b上への導電線の嵌込みによって製作される。
導電線は、塗料または絶縁外装13で被覆され得る。
【0033】
図4では、引き続き同じ設置形態で、アンテナは、織地2fを有する可撓性支持体上に刺繍または縫製によって製作される。
支持体は、全ての薄い織地がそうであるように腰の強さ、剛性がないという点において可撓性である。
縦糸と横糸の間のゆるい網目(m)は、例えば、厚み80μmまたは48dtexのポリアミド製の糸で、両方向において200μm〜300μmの間に含まれる。
その上、織地2fは、通常特に対角線方向で、例えば、少なくとも3%〜20%だけ手で伸ばすことができるという点において、寸法的に安定していない。
この伸長は、生産時の繰出し張力下で基板の繰出し方向、縦糸または横糸方向において1%未満である。
【0034】
刺繍されたアンテナの支持織地(可撓性および多孔質の織布材料)の取扱いは非常に難しいため、アンテナの終端部分を担持する面とは反対側の基板の面上に配置されたシートまたは層の形の補強材料15で、それを安定化させることが想定される。
商標Teslinで公知のものなどの多孔質プラスチックシートまたは合成紙を付加することにより、安定化材料15の固定が行なわれる。
【0035】
好ましくは、補強用シートの付加は、刺繍されたアンテナの生産速度を妨害しないように、アンテナを製作した後に行なわれる。
ただし、場合によっては、その前に実施することもできるが、その場合の効率は比較的悪く、刺繍機またはミシンの針を損傷する危険性などがある。
【0036】
シートの付加と類似した効果は、基板を寸法的に安定させることのできる上塗り、下塗り、樹脂、重合体発泡材、ゴムなどの製品を層に含浸させるか、もしくは、上塗りするか、または、噴霧することによって得ることができる。
【0037】
組立ては、ラミネーション、熱溶接(材料の溶融)または接着剤(フィルム状、液体)の付加によって実施できる。
基板は、生産性および使用の容易さという観点から極めて薄いものである。
【0038】
同じく、この過程により、コンポーネントの設置の際に、支持体内にコンポーネントの少なくとも一部分を収容できるようにするため、基板にさらなる厚みを付与することができる。
【0039】
デバイスは、接続すべき導電線の下に当てられ、以下で説明するとおりに材料を穿孔する非常に細いアンビルまたは針を利用することでもたらされるように、接続された各々の接続部および終端部分7b、8bに対面して、補強材料内に、場合によって一部再び閉じられている穿孔17を有する。
【0040】
図5では、マイクロ回路にまだ接続されていない単独のパッド16が、繊維質支持体2f上にアンテナを固定するための刺繍糸19で刺繍された線状アンテナ18の終端部分上に設置されている。
パッド付きマイクロ回路20への接続は、その後、あらゆる公知の手段で、特にフリップチップ(flip−chip)により実施可能である。
【0041】
図6では、デバイスの第五の実施形態は、アンテナ線3が四本の非導電線24に結着されているという点において、ハイブリッドアンテナ線22との接続部を有している。
しかしながら、この結着には、非導電線24が少なくとも一本含まれていればよい。
非導電線24は、好ましくは、熱エネルギーまたは超音波エネルギーの作用下で溶融するように熱溶融性または熱可塑性である。
【0042】
非導電線19および24が存在するため、本発明にしたがうと、金属パッド16上に工具(サーモード)(T)を押し当て、その結果、溶接工具の汚染なく、下を通る固定用の線および/または付随する線を溶融させることになる。
好ましくは、接続中、アンビルがアンテナ線を支持することになる。
【0043】
図8および図9では、デバイスは、基板および/または補強用シートもしくは層内でアンテナの接続終端部分近傍に、一つのキャビティ26を含んでいる。
接点パッド5、6は、被覆されたマイクロ回路28に結着されている。
マイクロ回路は、少なくとも一部分がキャビティ内に挿入され、かくしてデバイスの全体の厚みが減少している。
【0044】
パッド5、6は、線に溶接されているパッド面32とは反対側のパッド面11上に、パッド5、6を横断して実施される溶接38および溶接工具Tの溶接マーク30を有していることがわかる。
【0045】
図10には、接点パッド5、6との関係におけるアンテナ線7a、7bの別の形態が示されている。
端部は、チップの方向に直面する。
接続工具Tは、線とパッドに対し横方向に押し当てられ、その結果、パッドの上面(自由面11)に対応する二つの溶接マーク30が生じる。
両マークは互いに平行であり、かつパッド5および6の分離線Lに対して平行である。
【0046】
図11および図12では、デバイスの別の形態は、アンテナ線8bがパッドと垂直に、ただし支持体15さらには2f(織地が操作できる場合)の、接点パッド16を担持する面とは反対側の面上に配置されているような形態である。
この場合、非常に細いアンビルEは、支持体の材料15をクリープさせながら、かつ/または、補強材料15に結着された、または、結着されていない繊維質支持体2fのメッシュを開きながら、支持体を横断して接点パッドに対してアンテナ線を押しつける。
【0047】
図13では、織地は、48dtexのポリアミド糸で構成された、200μm〜300μmの間に含まれる、ゆるい網目(m)の縦糸と横糸を有する。
【0048】
図14を参照しながら、ここで、遭遇する問題点を予め提示した上で、目的の達成を可能にする本発明の方法の好ましい実施形態について記述する。
【0049】
低コストのインサートを製造するために、本発明者らは、特に、織地を含む支持体上に、例えば、縫製もしくは刺繍された、または、それと同等の線状アンテナを選択した。
【0050】
特に、生産性および使用の容易さを理由とした刺繍では、まず最初に、好ましくは、織布または不織布などの繊維質のテキスタイル支持体、または刺繍機、もしくはミシンが許容する支持体の上に、刺繍用ベンチにて同時に複数のアンテナが製作される。
【0051】
しかしながら、例えば、重合体材料製、PVC、PET(ポリエチレン)、紙、ポリイミド、合成皮革製、特に繊維/織地および重合体シート複合材製のフィルムまたはシートといった、その他の絶縁基板を含め、縫製または刺繍が可能なあらゆる材料が利用可能である。
【0052】
後で一つの物体に付加されるか、またはラミネートされるこのデバイスが、目立たないようにするためと同時に、縫製または刺繍の生産性および容易さを理由として、支持体は、非常に薄い織地である。
場合によって、二枚のフィルムまたはシートの間のインサートとして役立つか、あるいはカバーシートおよび/またはプリントシートの支持体として役立つように、デバイスの基板は、最終的に、一般に0.76mmのチップカードの厚み以下のさまざまな厚みを有することができる。
標準的には、基板は、例えば0.1mm〜0.5mmの厚みを有することができる。
【0053】
発明者らは、特に連続しているかまたは繰出ししている場合の、特にこの大量生産に適した織地製の或る種の基板に、寸法的安定性または腰の強さが欠如していることに注目した。
この腰の強さの欠如により、アンテナの製作前後に、特に基板上での割り付けにより、モジュール、マイクロ回路、もしくは接点パッドまたはキャビティを精確に位置づけすることが、困難、さらには不可能になる。
【0054】
発明者らが想定したとおりに予め設定されたモジュールの収容キャビティを場合によって伴って、基板に対し補強用シートもしくは補強材料または別の織地を付加することで、基板に対し寸法的安定性がもたらされると思われるが、これには、次のような欠点もある。
すなわち、基板の腰の強さが欠如し割り付けが困難であることから、キャビティの位置づけが不良となる危険性がある。
【0055】
アンテナを製作する前にシートを付加することは、刺繍効率にとって不利である。
逆に、キャビティ無しでこの補強材を付加することは、基板に寸法上の安定性をもたらすと思われるが、チップまたはモジュールを導入し接点パッドをアンテナの接続部分に近づけて優れた溶接を実現するためのキャビティが無いという点において、超音波または熱圧着による接続がより困難になると思われる。
【0056】
発明者らは、アンテナの縫製の容易さ、生産速度、モジュールの配置および接続のむずかしさを理由として、好ましくは、アンテナを製作した後に、基板上に電子コンポーネントまたは接点パッドを設置するべきであり、それにより経済的なアンテナの製作が可能になることを発見した。
【0057】
その上、アンテナは、特に巻回と交差する絶縁ブリッジを実現するために絶縁体で覆うことができ、または、特に丈夫さ、線の切断防止または支持体上への固定を理由として、非導電性の線または繊維に結着させることもできる。
この場合、溶接工具(サーモード)が線上に直接押し当てられ一つの形態においてはアンテナ線を囲む汚染材料と接触した状態となるかまたはモジュールがアンテナの巻回のそばまたはその下に設置されることから、超音波または熱圧着での溶接による接続の際に溶接工具の汚染、染みが発生する可能性がある。
【0058】
その上、線状アンテナは基板の上に載置されており、発明者らはアンテナの上から行なわれるパッドの設置および接続を選択していることから、このアンテナは、利用される材料の性質に応じて溶接手段の圧力の作用下で付加されたシートまたは繊維質集合体の中に、嵌り込む傾向をもち得る。
【0059】
これらのことを考慮した上で、図の方法は、以下のように構成される。
【0060】
過程100では、接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法は、基板上に載置された接続終端部分を伴うアンテナの供給または製作過程を含んでいる。
【0061】
アンテナは、好ましくは、織地を有する可撓性支持体の上に、刺繍または縫製によって製作される。
【0062】
アンテナ線は、その表面全体にわたり、少なくとも一つの絶縁コーティングを有していてよい。
アンテナ線は、また、所々で累積的にまたは交互に絶縁線と接触していてよい。
アンテナ線は、刺繍糸または縫製糸と呼ばれる非導電線を用いて基板上に固定される。
【0063】
好ましくは、アンテナ線は、特に線の破断が無く最良の速度を可能にするため、少なくとも一本の非導電線に結着されたハイブリッド線である。
【0064】
この非導電線は、少なくとも所々でアンテナ線を囲み、所々でいわば絶縁性被覆を構成する。
【0065】
好ましくは、非導電線は、溶接ゾーンのところで撤去または除去されることができるように、熱溶融性または熱可塑性である。
【0066】
熱溶融性でない線は、溶接エネルギーがそれらの線を除去し劣化させるのに充分なものである場合(または、それを横断して通り抜けるのに充分なロウづけ材料が付加される場合)には、適切であり得る。
【0067】
ただし、基板上に導電線を固定するその他の技術を、嵌込みまたはエッチングなど、その他の比較的性能の低い技術の中から選択することができる。
【0068】
刺繍によるアンテナの製作には、好ましくは、前記終端部分のうちの少なくとも一つの先端における、縫製、刺繍、編組アンテナ線の停止点(図示せず)の実現過程と、次に好ましくは、停止点に対面した支持体の材料の除去、および、場合によっては、キャビティの形成を含む、前記停止点の除去過程とが含まれていてよい。
アンテナの終端部分、すなわち、停止点は、除去すべき支持体のゾーン内で実現されるか、または重ね合わされていてよい。
押抜きにより停止点を除去する場合、対応する終端部分は、一つのキャビティの縁部まで延びる。
【0069】
前述のとおり、支持体は、好ましくは、非常に薄い織地であるが、その他の薄い支持体も企図可能である。
【0070】
次に過程200において、一つの特徴にしたがって、この方法は、終端部分を担持する面とは反対側の基板面上に、シートまたは層の形で補強材料を配置する過程を有している。
【0071】
この実施例においては、補強用層またはシートは、アンテナを製作した後に直接配置されている。
【0072】
すでに言及したとおり、基板を寸法的に安定化できる上塗り、下塗り、樹脂、重合体発泡材、ゴムなどの製品の含浸もしくは層の上塗りまたは噴霧によって、シートの付加に類似した効果を得ることができる。
【0073】
過程300では、支持体は安定化されていることから、このときこの支持体を操作し、特に基板上に接点パッドをより容易に設置するなどといった、より典型的な作業を実施することが可能である。
【0074】
しかしながら、別の特徴にしたがうと、基板および/または補強用シートもしくは層の中に、チップまたはモジュールを導入するような形でアンテナの接続終端部分近傍に、キャビティを形成する過程を行うことが好ましい。
【0075】
キャビティは、押抜きにより実現されるが、圧力による成形、または型打ち、または基板の少なくとも部分的な別の形の機械加工を企図することもできると思われる。
【0076】
過程400では、パッドは、基板上に載置されているアンテナの接続終端部分に対面した一表面を有するような形で、設置される。
必要があれば、チップを、特にフリップチップによりパッド上または基板後部面上に、または公知のあらゆる手段、さらには溶接線タイプの手段による従来の接続のために接点パッド上に設置してもよい。
【0077】
明細書中で用いられている対面する表面は、接点パッド上の一本の線8bの長手方向断面の投影、すなわち、線の直径分の幅と、対面して走るパッドの長さ分の長さとを一般に有する矩形に対応する。
【0078】
好ましくは、パッドは、すでに、チップなどの電子マイクロ回路に接続されており、マイクロ回路は、少なくとも一部分がキャビティ内に挿入され、パッドは、キャビティの外にとどまり、それ自体支持体の上に載置されているアンテナの終端部またはトラック部分の上に載っている。
【0079】
過程500では、アンテナの終端部分に対するパッドの接続を行なう。
この接続は、パッドと終端部分の間にエネルギーをもたらすことによって溶接の形で実施され、溶接エネルギーは、熱圧着タイプの溶接にはサーモードを用いて、また超音波溶接には超音波チップを用いて、パッド上に直接加えられる。
【0080】
溶接のためには、好ましくは、支持体内へアンテナの終端部分が押込まれるのに対抗して支持するアンビルを利用する。
アンビルは、アンテナ線が、それ自体細く、かつ/または基板および/または補強材料が軟らかいために基板内に押込まれる傾向をもつことから、なおさら推奨される。
【0081】
アンビルは、接続すべき終端部分が溶接中アンビルによって支持されるように、接続すべき終端部分に対面して、少なくとも補強用シートまたは層を貫通する。
アンビルの断面は、およそ0.3×1mm2〜1×5mm2の断面積をもつ矩形または正方形である。
【0082】
本発明は、ロウ付け材料を供給し、または供給せずに、溶接を介して、金属パッドを、金属よりも硬度の低い支持体上に配置された、同じく金属製のアンテナトラックまたはアンテナ終端部分上に、直接、いわば「手探りで」接続しなくてはならない場合に応用され、その逆が従来の作業である。
先験的に、溶接に際して、トラックまたは終端部分が、その支持体に対し伝達する圧力は、表面比および表面圧のため、パッドが伝達する圧力よりも大きい。
このため、当業者は、通常とは逆の接続形態を選ぶことを断念することになる。
【0083】
過程600では、補強用シートと反対側に、少なくとも一枚のシートを伴って支持体を組立てる。
シートは、例えば、パスポートもしくはチップカード、または別の物体のシートまたはカバーとして使用される材料で構成され得る。
その後、サイズに合わせた切断を行なう。
必要な場合には、その他の過程において、この切断を行なうこともできる。
【符号の説明】
【0084】
1 デバイス
2 基板
3 アンテナ
5 接点パッド
6 接点パッド
7 接続終端部分
8 接続終端部分
11 パッド面
16 パッド
17 穿孔
18 線状アンテナ
19 非導電線
20 マイクロ回路
22 ハイブリッド線
24 非導電線
26 キャビティ
28 マイクロ回路
30 溶接マーク
32 パッド面
34 基板面
36 基板面
38 溶接
40 表面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】
【特許文献1】特開2002−298110号公報
【特許文献2】欧州特許第0880754号明細書
【特許文献3】欧州特許第1328899号明細書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点パッドに接続されたトランスポンダアンテナを有するデバイスの製造方法において、
− 基板上に載置された接続終端部分(7b、8b)を有するアンテナ(3)を製作する過程と、
− 基板上に接点パッド(5、6)を設置し、接点パッド(5、6)と終端部分(7b、8b)の間にエネルギーを取込むことにより溶接(38)の形でアンテナの終端部分(7b、8b)に接点パッドを接続する過程とを含み、
接点パッド(5、6)が、アンテナの接続終端部分(7b、8b)に対面した一表面(40)を有するような形で設置され、
前記部分が、基板(2、2b、2f)の上に配置され、
溶接エネルギーが、接点パッド(5、6)上に直接加えられることを特徴とする、デバイスの製造方法。
【請求項2】
アンテナが、織地の備った可撓性支持体(2f)上に刺繍または縫製によって製作されること、
および、
終端部分を担持する基板面(34)と反対側の基板面(36)上に、シートまたは層の形で補強材料(15)を配置する過程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補強用層またはシートが、アンテナを製作した後に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アンテナの接続終端部分(7b、8b)近傍で、基板および/または補強用シートもしくは層の中に、キャビティ(26)を形成する過程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
マイクロ回路(20)に結着された接点パッドを、アンテナの終端部分(7b、8b)と対面して設置する過程を含み、
マイクロ回路は、少なくとも一部分がキャビティ(26)内に挿入されていることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
熱圧着タイプまたは超音波溶接(38)を実施する過程を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
溶接には、支持体内へのアンテナの終端部分の押込みに対する支えとなるアンビル(E)が利用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
接続終端部分(7b、8b)が、溶接中、アンビルにより支持されるように、アンビルが、接続すべき終端部分に対面して少なくとも補強用シートまたは層(15)に、一つの穴(17)を貫通させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アンテナ線(3)が、その表面全体にわたり、少なくとも一つの絶縁コーティング(13)を有し、かつ/または、所々で絶縁線と接触していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
アンテナ線が、非導電線(19)を用いて基板上に固定されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
アンテナ線が、少なくとも一本の非導電線に結着されたハイブリッド線(22)であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
非導電線(19)が、少なくとも所々で、アンテナ線を囲んでいることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
非導電線(19)が、熱溶融性または熱可塑性であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上に導電線を固定する技術が、縫製、刺繍、嵌込みから選択されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
接点パッド(5、6)に接続されたアンテナ(3)を有するデバイスにおいて、
前記デバイスが、基板と、基板(2、2b、2f、15)上に載置された接続終端部分(7b、8b)を備えたアンテナとを含み、
前記アンテナが、溶接(38)により終端部分に接続されており、
電気接点パッドが、アンテナの接続終端部分(7b、8b)に対面した一つの表面(40)を有し、
前記部分が、基板上に配置されていることを特徴とする、デバイス。
【請求項16】
アンテナ(3)が、織地の備った可撓性支持体(2f)上に刺繍または縫製によって製作されていること、および、
デバイスが、終端部分を担持する基板面と反対側の基板面上に、シートまたは層の形で補強材料(15)を含むことを特徴とする、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
アンテナの接続終端部分近傍で、基板および/または補強用シートもしくは層の中に、キャビティ(26)を含むことを特徴とする、請求項15または請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
接点パッドが、基板および基板上に載置されたアンテナの終端部分と対面してマイクロ回路(20)に結着され、
一方、マイクロ回路は、少なくとも一部分が、キャビティ(26)内に挿入されていることを特徴とする、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
パッドが、溶接される面とは反対側のパッドの面上にパッドを横断して溶接マーク(30)を有することを特徴とする、請求項15〜18のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項20】
接続される各終端部分に対面して補強材料内に、穿孔(17)を有することを特徴とする、請求項15〜19のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項21】
アンテナ線が、少なくとも一本の非導電線に結着されたハイブリッド線(22)であることを特徴とする、請求項15〜20のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項22】
非導電線が、熱溶融性または熱可塑性であることを特徴とする、請求項15〜21のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項23】
請求項15〜22のいずれか一つに記載のデバイスを含む、非接触チップカード、パスポートなどの無線周波数通信電子製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−528357(P2010−528357A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508797(P2010−508797)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055859
【国際公開番号】WO2008/141982
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509069331)
【氏名又は名称原語表記】GEMALTO S.A.
【Fターム(参考)】