説明

接着シート

【課題】残留溶剤がなく耐薬品性、耐水性及び耐油性に優れ、簡単な工程で被接着物を接着できる接着シートを提供する。
【解決手段】接着シート10は、熱溶融して被接着物に密着される酸変性ポリオレフィンから成る接着層12と、接着層12に積層して接着層12を被接着物に密着した後に剥離される耐熱性樹脂から成る基材11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接着物を接着する接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の部品は、金属、樹脂、セラミック等の材料から形成されており、同種材料または異種材料の工業製品の部品接着には、従来反応型接着剤や粘着剤等が用いられる。反応型接着剤として2液混合型樹脂、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等が使用される。特許文献1に示されるように、2つの被接着物間に塗布された反応型接着剤は硬化剤との反応、加熱による反応、紫外線照射による反応等により硬化する。これにより、2つの被接着物が接着される。
【0003】
また、粘着剤として、アクリル樹脂やエポキシ樹脂等を粘着層に有する両面粘着シート等が使用される。特許文献2に示されるように、粘着シートは一方の被接着物上に貼着され、剥離紙を剥離した後に他方の被接着物が圧着される。これにより、2つの被接着物が接着される。
【特許文献1】特開2001−115125号公報(第3頁−第6頁、第1図)
【特許文献2】特開平6―17011号公報(第3頁−第4頁、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被接着物の接着に反応型接着剤を用いた場合は、塗布工程が必要となるため接着工程が煩雑になる。また、耐薬品性が低く、薬品を用いる環境で強度が劣化する問題がある。被接着物の接着に粘着剤を用いた場合は、粘着層に溶剤成分が残留し、被接着物を浸食する問題がある。また、耐水性や耐油性が低く、長期間の使用で強度が劣化する問題がある。
【0005】
本発明は、残留溶剤がなく耐薬品性、耐水性及び耐油性に優れ、簡単な工程で被接着物を接着できる接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、熱溶融して被接着物に密着される酸変性ポリオレフィンから成る接着層と、前記接着層に積層して前記接着層を被接着物に密着した後に剥離される耐熱性樹脂から成る基材とを備えたことを特徴としている。
【0007】
この構成によると、酸変性ポリオレフィンから成る接着層が一方の被接着物上に載置され、加熱により溶融した接着層が被接着物に密着すると基材が剥離される。これにより、接着層が被接着物上に転写される。その後、接着層上に他方の被接着物が圧着され、接着層が常温に降温されると硬化して2つの被接着物が接着される。
【0008】
また本発明は、上記構成の接着シートにおいて、前記耐熱性樹脂がポリエチレンテレフタレートから成ることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の接着シートにおいて、前記基材上に同一形状の複数の前記接着層を所定間隔で配置したことを特徴としている。この構成によると、基材が所定間隔で送られ、各接着層が順に複数の被接着物に転写される。
【0010】
また本発明は、上記構成の接着シートにおいて、前記基材に所定間隔で位置決め用孔を設けたことを特徴としている。この構成によると、位置決め用孔にピン等を挿通して基材が所定間隔毎に位置決めされ、各接着層が同じ位置で転写される。
【0011】
また本発明は、上記構成の接着シートにおいて、接着層及び前記基材を貫通する貫通孔を設けたことを特徴としている。この構成によると、筒状の被接着物が接着シートにより接着される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、酸変性ポリオレフィンから成る接着層を有するので、熱融着により被接着物を簡単に接着することができる。また、酸変性ポリオレフィンは残留溶剤がなく耐薬品性、耐水性及び耐油性に優れるため、接着強度を長期間維持することができる。また、耐熱性樹脂から成る基材を接着層に積層したので、接着層を簡単に熱溶融することができる。
【0013】
また本発明によると、耐熱性樹脂がポリエチレンテレフタレートから成るので、強度が高く、接着工程での取扱いが容易になる。
【0014】
また本発明によると、基材上に同一形状の複数の接着層を所定間隔で配置したので、基材に送りを与えて複数の被接着物に対して簡単に接着層を転写することができる。
【0015】
また本発明によると、基材に所定間隔で位置決め用孔を設けたので、基材を所定間隔で簡単に位置決めすることができる。
【0016】
また本発明によると、接着層及び基材を貫通する貫通孔を設けたので、筒状の被接着物を簡単に接着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2は一実施形態の接着シートを示す平面図及び断面図である。接着シート10はポリエチレンテレフタレート(PET)から成る基材11上に酸変性ポリプロピレン(PPa)から成る接着層12が積層されている。
【0018】
基材11は厚さ約50μmのテープ状に形成され、長手方向に所定の間隔Tで位置決め用孔10aが形成されている。接着層12は基材11上に間隔Tで複数配列され、各接着層12は同一形状に形成されている。また、基材11及び接着層12を貫通する貫通孔10bが設けられている。貫通孔10bによって筒状の被接着物を簡単に接着することができる。
【0019】
酸変性ポリプロピレンは加熱により溶融し、基材11上に溶融した酸変性ポリプロピレンがTダイ押出機で押出し塗布される。基材11上に塗布された酸変性ポリプロピレンは基材11とともにロールで挟み込んで送られる。これにより、厚みが約50μmの接着層12を容易に形成することができる。
【0020】
基材11上に接着層12を積層した後にプレス加工により打ち抜いて位置決め孔10a及び貫通孔10bを容易に形成することができる。また、接着層12側からハーフカットして接着層12を所望の形状に形成することができる。接着層12の不要部分はロール等により巻き取って除去される。
【0021】
図3は接着シート10を用いて電子機器の部品等から成る被接着物を接着する接着工程を示す図である。尚、図1に示す接着シート10とは接着層12の平面形状が異なり、隣接した形状の異なる2つの接着層12を1組として各組が間隔Tで配列されている。
【0022】
第1被接着物W1はコンベア20上を送られる。接着シート10は供給ロール21に巻き付けられて送りロール22及び位置決めロール23により送られる。位置決めロール23にはピン23aが突設され、接着シート10の位置決め孔10aに嵌合して接着層12がヒータ24の下方に位置決めされる。この時、接着層12が基材11の下方に配されている。
【0023】
コンベア20によってヒータ24の下方に第1被接着物W1が位置決めされると、ヒータ24が降下して接着シート10が第1被接着物W1に押圧される。接着シート10はヒータ24によって加熱され、接着層12が溶融して第1被接着物W1に密着する。尚、基材11は耐熱性を有するため溶融しない。
【0024】
第1被接着物W1及び接着シート10はコンベヤ20、送りロール22及び位置決めロール23により一体に送られる。基材11は巻取ロール25により位置決めロール23から上方に巻き取られる。これにより、接着層12から基材11が剥離され、接着層12が第1被接着物W1に転写される。
【0025】
接着層12が転写された第1被接着物W1はコンベア20で送られ、所定位置で第2被接着物W2が載置される。ヒータ26の下方に第1、第2被接着物W1、W2が配置されると、ヒータ26が降下して第2被接着物W2が第1被接着物W1に押圧される。これにより、接着層12が溶融して第2被接着物W2に密着する。接着層12は冷却されると硬化し、第1、第2被接着物W1、W2が接着された製品Wが完成する。
【0026】
尚、基材11は耐熱性を有する耐熱性樹脂であればよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリメチルペンテン(TPX(登録商標))、ポリアセタール(POM)、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン(PP)等の無延伸または延伸フィルムを用いることができる。尚、ポリエチレンテレフタレートは安価で強度が強いため接着工程での取扱いが容易になるためより望ましい。また、基材11と接着層12との間に公知の剥離剤を設け、基材11と接着層12との間の剥離強度を調整してもよい。
【0027】
表1は酸変性ポリプロピレンの接着強度を測定した結果を示す図である。(a)60℃の乾燥状態、(b)60℃で湿度90%で保持した状態、(c)60℃で機械油に浸漬した状態でそれぞれ経時変化を測定している。
【0028】
【表1】

【0029】
試験片Sは図4に示すように、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy)にアルミニウム(AL)を積層した基材上に酸変性ポリプロピレン(PPa)を積層した。これにより、基材と酸変性ポリプロピレンとの間の剥離を防止している。測定方法は、試験片Sをフェライト合金Fに接着して50mm/minの速度で引張り試験を行った。接着時の条件は200℃に加熱し、1MPaの圧力で20秒間加圧している。
【0030】
表1に示すように、各条件で15mm幅当たり約30Nの高い接着強度を有している。また、接着強度の経時変化も殆ど発生せず耐水性及び耐油性を有している。
【0031】
尚、接着層12は酸変性ポリプロピレンに限られず、酸変性ポリオレフィンであれば同様の接着強度を保持することができる。また、酸変性ポリオレフィンは樹脂やセラミックに対しても同様の高い接着強度を有し、高い耐薬品性を有する。
【0032】
本実施形態によると、酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィンから成る接着層12を有するので、熱融着により第1、第2被接着物W1、W2を簡単に接着することができる。また、金属、樹脂、セラミック等の同種材料及び異種材料の接着に対して高い接着強度を得ることができる。更に、酸変性ポリオレフィンは残留溶剤がなく耐薬品性、耐水性及び耐油性に優れるため、接着強度を長期間維持することができる。加えて、耐熱性樹脂から成る基材11を接着層12に積層したので、接着層12を簡単に熱溶融することができる。
【0033】
また、基材11上に同一形状の複数の接着層12を所定間隔Tで配置したので基材11に送りを与えて複数の第1被接着物W1に対して簡単に接着層12を転写することができる。また、接着シート12に位置決め孔11aを設けることにより、基材11を所定の間隔Tで簡単に位置決めすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によると、工業製品の部品(例えば、モータに搭載される磁石)等の被接着物を接着する接着シートに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の接着シートを示す平面図
【図2】本発明の実施形態の接着シートを示す断面図
【図3】本発明の実施形態の接着シートによる被接着物の接着工程を示す概略図
【図4】本発明の実施形態の接着シートの接着強度の測定方法を示す図
【符号の説明】
【0036】
10 接着シート
10a 位置決め孔
10b 貫通孔
11 基材
12 接着層
20 コンベア
21 供給ローラ
22 送りローラ
23 位置決めローラ
24、26 ヒータ
25 巻取ローラ
W 製品
W1 第1被接着物
W2 第2被接着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融して被接着物に密着される酸変性ポリオレフィンから成る接着層と、前記接着層に積層して前記接着層を被接着物に密着した後に剥離される耐熱性樹脂から成る基材とを備えたことを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記耐熱性樹脂がポリエチレンテレフタレートから成ることを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記基材上に同一形状の複数の前記接着層を所定間隔で配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記基材に所定間隔で位置決め用孔を設けたことを特徴とする請求項3に記載の接着シート。
【請求項5】
前記接着層及び前記基材を貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の接着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−262340(P2007−262340A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92623(P2006−92623)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】