説明

接着フィルム、それを用いる成形体の製造方法及び得られる成形体

【課題】真空加熱圧着機による加熱成形法で成形体に貼り付けられる装飾フィルムに使用した場合、貼り付け後高温に長時間さらされても、被着体からのズレや剥れを生じることがない接着フィルムを提供すること。
【解決手段】基材と基材上の接着層を含む接着フィルムであって、前記接着層が、(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25mol%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15mol%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーから形成され、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25である、接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着フィルム、それを用いた成形体の製造方法及び得られる成形体に係り、より詳しくは高温での接着性に優れた接着フィルム、それを用いた成形体の製造方法及び得られる成形体を提供する。
【背景技術】
【0002】
立体成形基材などの立体構造物の表面を装飾する方法として、インサート成形が用いられるが、製品毎に型を製造する必要があるので、多種の製品に対応するには不向きである。
【0003】
立体成形基材などの立体構造物に装飾フィルムや保護フィルムを貼り付ける方法は、多種の製品に容易に対応できるので有利である。立体成形基材などの立体構造物にフィルムを良好にきれいに貼り付けるためには、真空加熱圧着機などを用い、フィルムを加熱、延伸させながら貼り付けられる。そのため、被着体への接着には、感熱性接着剤が一般的に用いられている。しかしながら、貼り付け後、瞬時に十分な接着性を発揮することができず、熱間接着性・熱間保持力に問題があった。
【0004】
本発明と技術的に関連するわけではないが、本発明の接着層と組成が近い従来技術として下記が挙げられる。
【0005】
特許文献1は、(1)重量平均分子量800,000以上のカルボキシル基含有接着性成分100重量部に対して、(2)40℃以上のTgを有し、重量平均分子量100,000以下であるアミノ基含有接着性向上成分を1〜40重量部、を添加してなる粘着剤組成物を開示し、プラスチックに貼り付けた場合、高温での耐発泡性を示す。
【0006】
特許文献2は、酸官能基または塩基官能基を有する少なくとも1種のポリマーを含む粘着剤成分 70〜90重量%;酸官能基または塩基官能基を含み、重量平均分子量100,000以上である高Tg(20℃以上)ポリマー10〜30重量%;および、架橋剤のブレンドを含む光学的に透明な粘着剤組成物を開示している。
【0007】
特許文献3は、(A)下記(1)及び(2)よりなる−85〜0℃のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを5〜95重量部:
(1)炭素数2〜18のアルキルアクリレートまたはアルコキシアルキルアクリレート 85〜99.5重量部;及び
(2)エチレン性不飽和のアミン、カルボン酸、スルホン酸またはそれらの混合物 0.5〜15重量部;及び
(B)下記(3)及び(4)よりなる20〜150℃のTgを有するポリマーを5〜95重量部、
(3)アルキル、シクロアルキルまたはイソボルニル(メタ)アクリレート 85〜99.5重量部;及び
(4)エチレン性不飽和のアミン、カルボン酸、スルホン酸またはそれらの混合物0.5〜15重量部
からなり、(A)及び(B)のどちらか一方が酸基を含有し、他方がアミノ基を含有するホットメルト接着剤組成物を開示している。
【0008】
特許文献4は、
(A)0℃以上のTgを有するカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート、及び
(B)0℃以下のTgを有する3級アミノ基含有ポリ(メタ)アクリレート、
をブレンドする、または、
(C)0℃以上のTgを有する3級アミノ基含有ポリ(メタ)アクリレート、及び
(D)0℃以下のTgを有するカルボキシル基含有ポリ(メタ)アクリレート
をブレンドすることにより得られる、ポリ(メタ)アクリレートフィルム組成物を提案している。(A):(B)=10:90〜90:10wt%、(C):(D)=10:90〜90:10wt%とされている。
【0009】
【特許文献1】特許第3516035号公報(WO1998/051754パンフレット)
【特許文献2】特表2006−522856号公報(WO2004/094549パンフレット)
【特許文献3】米国特許第4045517号明細書
【特許文献4】特表2005−105256号公報(WO2005/023913パンフレット)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のごとく、立体成形基材などの立体構造物に接着フィルムを加熱、延伸させながら貼り付けると、従来の感熱性接着剤では、瞬時に十分な接着性を発揮できないため、エッジからのズレや剥がれが生じてしまう。また、従来の粘着剤を用いた場合では、高温条件に曝された場合、延伸時の残留応力の伸縮力に耐えられず、エッジからのズレや剥れが生じてしまう。とりわけフィルムの伸びが大きい部分や、さらには凹面への接着では、従来の感熱性接着剤および粘着剤ではエッジからのズレや剥れを完全に防止することは困難であった。
【0011】
特許文献1においては、粘着剤(於常温)であるため、アミノ基含有ポリマーの配合量が20wt%以下であり、熱間接着性・熱間保持力が不十分である。実施例中には、アクリル酸n−ブチル(BA)/アクリル酸(AA)=95wt%:5wt%(カルボキシル基含有モノマー量8.6mol%)とメタクリル酸メチル(MMA)/メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DM)=95wt%:5wt%(アミノ基含有モノマー量3.2mol%)との71.5:28.5wt%ブレンドの組成が開示されているが、アミノ基量が3.5mol%未満であるため、カルボキシル基含有ポリマーとの混和性が悪く、100℃という高温では、十分な接着力を発揮せず、熱間接着性・熱間保持力に劣る。
【0012】
特許文献2においては、粘着剤(於常温)であり、実施例中にはアミノ基含有ポリマーの配合量が15wt%以下であり、熱間接着性・熱間保持力が不十分である。
【0013】
特許文献3では、ホットメルト接着剤であるため、高温で液状となり、熱間接着性・保持性がない。
【0014】
特許文献4は、フィルムであるため、接着剤としての使用を想定していない。また、アミノ基含有ポリマーの配合量が40wt%以上と高く、接着剤の被着体への濡れ性が悪く、常温での接着性に劣る。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記のような従来技術の現状に鑑み、加熱圧着により瞬時に十分な接着性を発揮し、また、高温での接着性・保持性に優れて、貼り付け後高温条件に曝されても、まったく剥れを生じない接着剤組成物を用いた接着フィルム、その接着フィルムを用いた成形体の製造方法、及び得られる成形体を提供するものである。
【0016】
本発明によれば、基材と基材上の接着層を含む接着フィルムであって、前記接着層が、
(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び
(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマー
を含み、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25である、接着フィルムが提供される。
【0017】
本発明はまた、成形体の表面に、上記の接着フィルムを加熱圧着する工程を含む、成形体の製造方法を提供する。その好適な形態において、成形体は三次元表面を有し、接着フィルムの接着を真空加熱圧着機を用いて行う。
【0018】
本発明によれば、さらに、成形体の表面に上記接着フィルムが接着された成形体も提供される。この成形体は高温に曝される三次元形状の自動車内装品に有用である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の接着フィルムは、加熱成形法で成形体に貼り付けられる接着フィルムに使用した場合、貼り付け後例えば100℃という高温に長時間さらされても、接着フィルムの被着体からのズレや剥れを生じないようにすることが可能である。
【0020】
本発明の接着フィルムは、自動車の内装製品に要求される耐熱性をクリアすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、基材と基材上の接着層を含む接着フィルムであって、前記接着層が、
(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び
(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマー
を含み、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25である、接着フィルムを提供する。フィルムというが、フィルムとシートを格別に区別する意図はない。
【0022】
この接着フィルムは、加熱圧着で被着体(成形体)に接着される。
【0023】
加熱圧着する接着フィルムの主たる用途は、三次元(立体)形状の被着体の修飾あるいは保護等のためのフィルムの貼着である。三次元(立体)形状の表面へフィルムを密着させるためには、加熱してフィルムを軟化させ、展伸させて接着を行うことが好ましい。代表的には、真空加熱圧着機を用いて貼着を行うことができる。
【0024】
接着フィルムの基材は、その加熱圧着工程時の加熱温度に耐熱性があればよく、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0025】
耐熱性の程度は、用途によるが、一般的には60℃以上であり、80℃以上が好ましい。例えば自動車の内装用途で、室内最高温度として80℃、さらには100℃が設定される場合には、耐熱性が100〜110℃又はそれ以上であることが望まれる。150〜160℃又はそれ以上の耐熱性を有することがより好ましく、150〜160℃の耐熱性を有することが特に好ましい。しかし、あまり耐熱温度が高いことは必要がなく、また加熱圧着時に展伸しにくいので、むしろ望ましくない場合もある。
【0026】
基材には、可塑剤を添加して展伸性を調整することができる。
【0027】
基材には、そのほか、用途に応じて、シリカなどの無機粒子を添加したり、紫外線吸収剤その他の機能性付与物質が添加されたり、着色剤で着色されたり、表面に印刷性を付与するために白色顔料を添加したり、各種のシートを用いることができる。また、表面に印刷することができる。
【0028】
基材は、装飾フィルム、保護フィルムなどとして知られているすべてのものを用いることができ、例えば表面に金属蒸着した修飾フィルム又はシートでもよい。
【0029】
基材の厚さは、限定されないが、特に修飾フィルム(装飾シート)として典型的には、10μm〜1200μm(1.2mm)であり、好ましくは25〜300μmである。
【0030】
本発明の接着フィルムの接着層は、下記成分:(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーを含み、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25である。
【0031】
アクリルポリマーおよびメタクリルポリマーは、まとめて本明細書で「(メタ)アクリル」ポリマーと呼ぶ。(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル系モノマー以外の他の非(メタ)アクリレートモノマー、例えばビニル不飽和モノマーと任意に組み合わせたコポリマーであってもよい。
(メタ)アクリルポリマーを構成するモノエチレン性不飽和モノマーは、一般には式CH2=CR1COOR2 (式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖又は分岐又は環状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基である。)で表されるものを主成分として使用するが、その他、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類も含まれる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレートや2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどがあり、所望のガラス転移温度や接着性、熱間接着性・熱間保持力を得るために、その目的に応じて適宜1種又は2種以上を使用する。モノエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の好ましい炭素数は1〜12である)が好ましい。
【0032】
成分(A)は、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーであり、軟らかい成分である。この軟らかい成分(A)自体は、常温で粘着性を有しているが、成分(B)と上記の量で混合された組成物は、常温では殆ど粘着性を示さない。しかし、この軟らかい成分(A)が含まれないか少ないと、接着剤が被着体表面で展開性が低く、濡れ性が低いものとなり、接着フィルムを加熱圧着後、常温に冷却されたときに、接着層が被着体から容易に剥離して、本発明が意図する接着フィルムとして十分な性能を発揮しない。成分(A)のガラス転移温度(Tg)が25℃以下でないと上記の所望の効果が得られない。
【0033】
ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の(メタ)アクリルポリマーは、そのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が25℃以下となるモノマーを主成分とすることにより、容易に提供できる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。室温での接着性、高温時での凝集力を考慮すると、(メタ)アクリルポリマーの好ましい範囲のTgは、0℃〜−50℃である。
【0034】
さらに、成分(A)はカルボキシル基を含有する(メタ)アクリルポリマーである。成分(A)がカルボキシル基を含有するとともに、成分(B)がアミノ基を含有することで、成分(A)と成分(B)との相溶性が向上し、接着剤組成物における成分(A)と成分(B)の相分離を回避できる。成分(A)と成分(B)が相分離すると、成分(A)と成分(B)を混合しても、接着フィルムの上記の効果、すなわち、所望の加熱接着性も所望の熱間接着性・熱間保持力がどちらも得られない。この所望の相溶性を得るために、成分(A)の(メタ)アクリルポリマーに含まれるカルボキシル基の量は、ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25%(カルボキシ基量mol%とも表示する。)であることが好ましい。
【0035】
カルボキシル基を含有した不飽和モノマーを上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合することで、(メタ)アクリルポリマーにカルボキシル基を含有させることができる。このようなモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。カルボキシル基を含有した不飽和モノマーは、耐黄変性を考慮すると、(メタ)アクリル酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0036】
成分(A)のカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマーの分子量は特に限定されないが、一般的には、重量平均分子量で約10万〜約100万が好ましく、約20万〜約80万がより好ましい。重量平均分子量が小さいと凝集性が低下し、大きいと相溶性が低下する傾向があるが、ポリマーが成分(A)の条件を満たせば特には限定されない。
【0037】
成分(B)は、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する(メタ)アクリルポリマーであり、硬い成分である。この硬い成分(B)が含まれないか少ないと、成分(A)だけでは接着剤は粘着剤(於常温)であり、耐熱性が低く、熱間接着性・熱間保持力が不足する。75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する成分(B)を含むことで、加熱接着時に接着剤が粘着性を発現する。三次元形状の被着体に延伸されて貼着された接着フィルムが、高温に曝されて、残留応力により伸縮しても、粘着フィルムがその伸縮力に耐久でき、接着フィルムがエッジからのズレや剥がれを生じることを防止することが可能にされる。成分(B)のガラス転移温度(Tg)は75℃以上であることが必要である。Tgが高いほどTg付近での高温接着力は高くできるが、Tgがあまり高いと室温接着性が低下して剥がれ易くなる場合があるので、また加熱圧着の温度が必要以上に高くなるので、Tgは250℃以下が好ましい。より好ましくは、80〜120℃の範囲である。
【0038】
ガラス転移温度(Tg)が75℃以上の(メタ)アクリルポリマーは、そのホモポリマーのTgが75℃以上となるモノマーを主成分とすることで容易に提供できる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
成分(B)はアミノ基を含有する(メタ)アクリルポリマーである。成分(A)と成分(B)との相溶性を向上させて、成分(A)と成分(B)が相分離しないようにするためである。成分(A)と成分(B)が相分離すると、成分(A)と成分(B)を混合しても、接着フィルムの上記の効果、すなわち、所望の加熱接着性も所望の熱間接着性・熱間保持力がどちらも得られない。この所望の相溶性効果を得るためには、成分(B)の(メタ)アクリルポリマーに含まれるアミノ基の量は、ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15%(アミノ基量mol%とも表示する。)でなければならない。
【0040】
上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーを構成する、アミノ基を含有した不飽和モノマーとしては、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及びビニルイミダゾールなどの含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される3級アミノ基を有するモノマーを挙げることができる。
【0041】
成分(B)のアミノ基含有(メタ)アクリルポリマーの分子量は特に限定されないが、一般的には、重量平均分子量で約1万〜約20万が好ましく、約4万〜約15万がより好ましい。重量平均分子量が小さいものは熱間接着性・熱間保持力が劣り、大きいと相溶性が低下する傾向があるが、ポリマーが成分(B)の条件を満たすポリマーを製造できれば、平均分子量は特に限定されない。
【0042】
上記の効果を得るために、成分(A)と成分(B)の量は、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25となる量である。成分(A)の量がこれより少ないと、室温接着性および加熱接着性が不足し、これより多いと成分(B)が不足し、熱間接着性・熱間保持力が不足する。成分(B)がこれより少ないと、熱間接着性・熱間保持力が不足し、これより多いと接着剤が被着体表面に対して濡れ性が低下し、室温接着性および加熱接着性が不足する。成分(A)と成分(B)のより好ましい配合比は重量比で65:35〜70:30の範囲である。
【0043】
(メタ)アクリルポリマーは、ラジカル重合法により生成でき、その製造方法は、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法など公知であり、本発明でもその公知の方法によることができるので、格別の説明を要しない。開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100重量部あたり、0.05〜5重量部とするのがよい。
【0044】
本発明の接着フィルムの接着剤は、そのほか、必要に応じて、可塑剤、架橋剤(例えばエポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系、ビスアミド系の官能基を有する架橋剤、金属キレート系架橋剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、フィラーなどの添加剤を含むことができる。
【0045】
接着フィルムの接着層の厚さは、限定されないが、5〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。
【0046】
基材上への接着層の形成は、適当な剥離フィルム上に接着剤塗工液(例えば成分Aと成分Bのブレンド)を塗工し、乾燥後、基材を積層し、必要に応じて剥離フィルムを剥離する公知の方法で行うことができる。接着剤塗工液は成分Aと成分Bのほか、任意に、第三成分や溶剤を含むことができる。
【0047】
図1に接着フィルムの断面図を示す。接着フィルム1は、基材2と接着層3を有する。
【0048】
被着体(成形体)の材質は限定されず、プラスチック、金属、木材など、加熱圧着温度に耐久するものであればよい
接着フィルムの被着体(成形体)への加熱圧着は、接着フィルムを接着剤が粘着性を発現する温度に加熱して、被着体に圧着すればよい。加熱温度は、限定されないが、60℃以上が好ましく、80〜140℃がより好ましい。100〜130℃が更に好ましい。例えば自動車の内装部品は、厳しいものでは80℃の耐熱性が要求され、さらに厳しいものは100〜110℃の耐熱性が要求される。したがって、このような温度で耐熱性を発現するような接着フィルムを用い、適当な加熱及び圧着条件を選択する。
【0049】
本発明の接着フィルムは、被着体に加熱圧着するが、特に被着体が三次元(立体)形状である場合に好適に使用できる。被着体が三次元(立体)形状であると、加熱圧着の際に接着フィルムが延びて被着体表面に接着される必要があり、延びた部分で残留応力が存在するが、本発明の接着フィルムは残留応力が存在しても、高温に加熱されたときも常温に冷却されても、接着力が保持される。接着時の延びとしては、被着体の形状にもよるが、フィルムの面積が延びの前を100面積%とすると、300面積%(縦、横方向ともに約1.73倍に延伸)以内が通常の範囲となる。
【0050】
熱間接着性・熱間保持力は、被着体に接着した接着フィルムを幅25mm、長さ50mmにカットし、100℃の雰囲気中で、90度方向に荷重がかかるように100gの重りを接着フィルムの端部に下げたとき、50mm剥れるまでの時間を測定する「定荷重剥離試験」で、24時間以上保持できることで評価できる。
【0051】
自動車内装に使用されるフィルムとして接着信頼性を得るためには、25℃のみならず100℃においても10N/25mm以上の接着力を発揮することが望まれるが、本発明の接着フィルムはこの条件を満たすことができる。
【0052】
最も好ましいのは、真空加熱圧着機を用いた加熱圧着である。真空加熱圧着機は知られているが、その真空加熱圧着の工程を図2を参照して、模式的に説明する。
【0053】
図2(A)において、真空加熱圧着機10の真空室(下)11、真空室(上)12は大気圧に開放されており、間に接着フィルム13がセットされている。真空室(下)11には被着体14が昇降台15にセットされている。図2(B)では、真空室(下)11、真空室(上)12を閉鎖し、両方とも真空引き16して、内部を真空(例えば−1MPa)にする。次いで、図2(C)の如く、接着フィルム13を加熱しつつ、昇降台15で被着体14を真空室(上)12まで押し上げると、接着フィルム13は延びるが、真空室(下)11、真空室(上)12の間を適当な手段17で仕切っておく。図2(D)を参照すると、接着フィルム13を加熱した上で、真空室(上)12内を適当な圧力(例えば2MPa)に加圧すると、接着フィルム13は被着体14の表面に押圧され、表面に沿って延びて、表面に密着した被覆を形成する。このとき、接着フィルム13は被着体14の側面はもちろん裏側19まで廻り込んで、表面をきれいに被覆し、皺は見られない。図2(E)を参照すると、被着体14の表面に密着された接着フィルム13のエッジをトリミング18すれば、真空加熱圧着は完了する。真空加熱圧着機による真空加熱圧着はこれに限定されるものではなく、変形は可能であり、加熱や加圧の条件も変更できることはいうまでもない。
【0054】
本発明の接着フィルムの用途は限定されないが、例えば自動車内装材、建材、化粧板、洗面台などを挙げることができる。
【0055】
図2(E)は、図2(A)〜(D)に示す真空加熱圧着機を用いた真空加熱圧着工程で得られる成形体の1例を示す。真空加熱圧着機によれば、被着体14の表面に接着フィルム13が接着されているが、接着フィルム14は被着体13の裏側19の部分まで均一に廻り込んで接着されており、しかも、接着フィルム14と被着体13の間には、気泡は全く入り込まず、しかも接着フィルム14には三次元形状の裏側に回り込んだにもかかわらず角部を含むどこにも皺が見られない特徴を有する。
【0056】
このような三次元形状の成形体に従来の接着フィルムを真空加熱圧着したものは、圧着時及び使用時に成形体が高温に曝されたときに、接着フィルムがエッジからズレや剥がれが見られるが、本発明の接着フィルムを真空加熱圧着した場合には、圧着時及び使用時に成形体が高温に曝されても、接着フィルムがエッジからズレや剥がれが見られない。さらに、図3に示すように、三次元形状の成形体30が例えば主表面が凹面31になっている場合には、従来の接着フィルムでは凹面の主表面に対して接着フィルムが十分な強度で接着できず、接着フィルムは凹部の主表面から剥がれてしまっていたが、本発明の接着フィルムは、高温で粘着性を有し、また冷却後も接着力を保持するので、凹部の主表面でも全く剥がれることなく、密着することができる。また、真空加熱圧着された接着フィルムは側面さらには裏側まで廻り込み、延びて密着しており、例えば、図3の成形体の角部32、33の周りでも接着フィルムは全く皺がない。
【実施例】
【0057】
<原材料>
BA: アクリル酸n−ブチル(三菱化学社製)
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル(日本触媒社製AEH)
IOA: アクリル酸イソオクチル(3M社製)
iso−BA: アクリル酸イソブチル(三菱化学社製)
AA: アクリル酸(東亞合成株式会社製)
V−65: アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製)
MMA: メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルM)
BMA: メタクリル酸n−ブチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルB)
CHMA: メタクリル酸シクロヘキシル(三菱レイヨン社製、アクリエステルCH)
DM: メタクリル酸ジメチルアミノエチル(三菱レイヨン社製、アクリエステルDM)
DMAPAA: N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製DMAPAA)
Vim:1−ビニルイミダゾール(東京化成工業社製)
V−601: ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(和光純薬工業株式会社製)
E−5XM: エポキシ樹脂系架橋剤溶液(5wt%2−ブタノン溶液)(綜研化学社製)
POLYMENTTM NK−350:35wt%アミノエチル化アクリルポリマーのトルエン/2−プロパノール(70/30)溶液(日本触媒社製)
<カルボキシル基含有アクリルポリマーの製造例(表1)>
アクリル酸n−ブチル(BA)98重量部、アクリル酸(AA)2重量部、溶媒として酢酸エチル185.7重量部、重合開始剤としてアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)0.2重量部を、窒素雰囲気下50℃・24時間反応させ、アクリルポリマー(A−1)の酢酸エチル溶液を作成した。ポリマー中のカルボキシル基量は3.5mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は−33℃であり、重量平均分子量は約58万であった。
【0058】
同様に、表1に示す組成でカルボキシル基含有アクリルポリマー(A−2)〜(A−10)の酢酸エチル溶液を得た。それぞれのポリマー中のカルボキシル基量、Tg及び重量平均分子量を表1に示す。
【0059】
なお、ポリマー中のカルボキシル基量は、カルボキシル基を含有するモノマーのモル数の全モノマーのモル数に対する割合(%)として計算した。
<アミノ基含有アクリルポリマーの製造例(表2)>
メタクリル酸メチル(MMA)95重量部、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DM)5重量部、溶媒として酢酸エチル150重量部、重合開始剤としてジメチル−2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601)0.6重量部を、窒素雰囲気下65℃・24時間反応させ、アクリルポリマー(B−1)の酢酸エチル溶液を作成した。できたポリマー中のアミノ基量は3.2mol%であり、ガラス転移温度(Tg)は、110℃であり、重量平均分子量は約12.0万であった。
【0060】
同様に、表2に示す組成でアミノ基含有アクリルポリマー(B−2)〜(B−10)の酢酸エチル溶液を得た。それぞれのポリマー中のアミノ基量、Tg及び重量平均分子量を表2に示す。
【0061】
なお、ポリマー中のアミノ基量は、アミノ基を含有するモノマーのモル数の全モノマーのモル数に対する割合(%)として計算した。
<Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃未満)>
Rheometric Scientific社製、ARESを用い、Mode:Shear、Frequency:1.0Hz、温度:−60℃〜30℃(5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)のピーク温度を測定した。
<Tg(ガラス転移温度)の測定(30℃以上)>
Rheometric Scientific社製、RSA−IIIを用い、Mode:Tension、Frequency:10.0Hz、温度:30℃〜150℃((5.0℃/min)における、損失正接(tanδ)(損失弾性率E‘’/貯蔵弾性率E‘)のピーク温度を測定した。
<分子量測定(GPC法−ゲルパーミエーションクロマトグラフ法)>
下記条件でのGPC法によって、重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0062】
装置:HP-1090 Series II(Hewlett-Packard社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Plgel MIXED-Bx2(300mm x 外径7.5mm、内径5mm)
フローレート:1.0mL/min
検出手段:屈折率
サンプル濃度:0.1wt%
キャリブレーション標準:ポリスチレン
表1にカルボキシル基含有アクリルポリマーの製造例、表2にアミノ基含有アクリルポリマーの製造例のデータをまとめて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
<接着フィルムの作成>
上記で製造したカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液(A−1)〜(A−10)と、アミノ基含有アクリルポリマー溶液(B−1)〜(B−10)を、表3および表4に示す固形分比で混合し、さらに架橋剤として、E−5XM(綜研化学社製、エポキシ系架橋剤)をポリマ−全固形分に対して固形分比0.1wt% 添加した。ライナーとして38μm 剥離処理ポリエステルフィルム(帝人社製、ピューレックスTM A−71)に乾燥後厚みが40μmになるように塗布し、100℃・20分間加熱乾燥させ、さらに150℃・30分間再加熱乾燥した。接着剤面に、コロナ処理およびプライマーとして酢酸エチルで固形分1.0wt%に希釈したPOLYMENTTM NK−350(日本触媒社製、35wt%アミノエチル化アクリルポリマーのトルエン/2−プロパノール溶液)を塗布した80μ厚みのPETGフィルム(三菱樹脂社製、ディアフィクスTM)を70℃でラミネートし、接着フィルムを作成した。
【0066】
得られた接着フィルムに対して、以下に示す試験方法および評価方法で、各種接着特性試験を行った。結果を表3および表4に示す。
<接着力試験>
被着体(コーティングテスター工業社製、2mm厚みABS樹脂板)に、上記で作成したものからライナーを除去した接着フィルムを135℃でラミネートし、80℃10分、さらに100℃10分養生を行った。そして接着フィルムを25mm幅にカットし、テンシロン(ORIENTEC社製、UCT−100)を用いて、25℃および100℃それぞれの雰囲気中で、剥離角度180度、剥離速度300mm/minで接着力を測定した。
【0067】
自動車内装に使用されるフィルムとして接着信頼性を得るためには、25℃のみならず100℃においても10N/25mm以上の接着力を発揮することが望まれる。
<定荷重剥離試験>
被着体(コーティングテスター工業社製、2mm厚みABS樹脂板)に、上記で作成したものからライナーを除去した接着フィルムを135℃でラミネートし、80℃10分、さらに100℃10分養生を行った。そして接着フィルムを幅25mm、長さ50mmにカットし、100℃の雰囲気中で、90度方向に荷重がかかるように100gの重りを接着フィルムの端部に下げたとき、50mm剥れるまでの時間、または24時間後の剥離長さを測定した。
【0068】
熱間接着性・熱間保持力を得るためには、100℃における定荷重剥離試験で、24時間以上保持できることが望まれる。
<加熱成形試験>
フィルム二軸延伸装置(井元製作所社製、IMC−167D)を用いて、上記で作成したものからライナーを除去した接着フィルムを90℃雰囲気中で300面積%(縦、横ともに各々約173%延伸)の延伸を施し、90℃に加熱した被着体(コーティングテスター工業社製、2mm厚みABS樹脂板)に貼り付けた。その成型品を110℃のオーブンに入れ、168時間後のエッジからのズレおよび剥れの有無を観察した。
【0069】
自動車内装に使用されるフィルムとして耐熱信頼性を得るためには、エッジからのズレおよび剥離はあってはならない。
<実施例1、および、実施例13〜16>
カルボキシル基含有ポリマー A−4(Tg=−21℃、カルボキシル基量 10.2mol%)と、アミノ基含有ポリマー B−2,B−7,B−8とそれぞれ混合した結果、混和性が良好であった(混和性が良好とは、ライナーに接着剤を塗布、乾燥した後のフィルム状の接着層が目視観察で、透明性を有した状態を意味する)。25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
【0070】
アミノ基量3.5mol%〜11.0mol%において、カルボキシル基含有ポリマーとの混和性が良好であり、優れた耐熱接着性を発揮した。
【0071】
アミノ基量の上限としては、15mol%を超えるものは、親水性が高くなりすぎ、耐水性に劣る恐れがある。
<実施例2〜5>
アミノ基含有ポリマー B−3(Tg=91℃、アミノ基量4.4mol%)を使用し、カルボキシル基含有ポリマーA−2,A−3,A−5,A−6とそれぞれ混合した結果、混和性が良好であった。25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
【0072】
カルボキシル基量4.0mol%〜23.9mol% において、アミノ基含有ポリマーとの混和性が良好であり、優れた耐熱接着性を発揮した。
【0073】
カルボキシル基量の上限としては、25mol%を超えるものは、親水性が高くなりすぎ、耐水性に劣る恐れがある。
【0074】
また、カルボキシル基含有ポリマーのTgが25℃を超えると、接着剤の被着体への濡れ性が悪化し、常温(25℃)での接着性が低下する恐れがある。
<実施例6、および、実施例7>
カルボキシル基含有ポリマーとして、アクリル酸2-エチルヘキシル(2−EHA)を使用したA−7(Tg=−25℃、カルボキシル基量11.8mol%)、A−8(Tg=−11℃、カルボキシル基量18.2mol%)をそれぞれ使用し、アミノ基含有ポリマーB−3 とそれぞれ混合した結果、混和性が良好であった。25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
<実施例17、および、実施例18>
カルボキシル基含有ポリマーA−4と、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)を使用したTgが80℃であるアミノ基含有ポリマーB−6を65wt%:35wt%および70wt%:30wt%で混合した結果、混和性は良好であった。
【0075】
25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
<実施例19、および、実施例20>
カルボキシル基含有ポリマーA−4を65wt%と、アミノ基として N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)および1−ビニルイミダゾール(Vim)を使用したアミノ基含有ポリマーB−9 およびB−10を35wt% を混合した結果、混和性は良好であった。
【0076】
25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
<実施例21>
カルボキシル基含有ポリマーとして、アクリル酸イソブチル(iso−BA)を使用したA−10(Tg=12℃、カルボキシル基量16.5mol%)を使用し、アミノ基含有ポリマーB−3と混合した結果、混和性が良好であった。25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。そのため、加熱成形したのち110℃,168時間エージングされても、エッジからのズレおよび剥離は観察されなかった。
【0077】
また、カルボキシル基含有ポリマーのTgが25℃を超えると、接着剤の被着体への濡れ性が悪化し、常温(25℃)での接着性が低下する恐れがある。
【0078】
さまざまな組成においても、4.0mol%以上のカルボキシル基を含有し、25℃以下のTgを有するアクリルポリマーは、3.5mol%以上のアミノ基を含有する75℃以上のTgを有するアクリルポリマーとの混和性が良好であり、75wt%:25wt%〜62wt%:38wt%で配合された接着剤組成物は、25℃および100℃において、十分な接着力を発揮し、熱間接着性・熱間保持力に優れていた。
<比較例1>
アミノ基含有ポリマーを含まない通常の粘着剤 A−9を使用した結果、熱間接着力が低く、熱間接着性・熱間保持力に乏しかった。そのため、加熱成形したのち110℃エージングで、エッジより剥離してしまった。
<比較例2>
アミノ基量が3.5mol%未満であるポリマーB−1(Tg=110℃、アミノ基量3.2mol%)を使用した結果、カルボキシル基含有ポリマーA−4との混和性が悪かった。そのため、接着性が著しく低く、熱間接着性・熱間保持力に乏しかった。加熱成形したのち110℃エージングで、エッジより剥離してしまった。
<比較例3>
カルボキシル基量が4.0mol%未満であるポリマーA−1(Tg=−33℃、カルボキシル基量3.5mol%)を使用した結果、アミノ基含有ポリマー B−3 との混和性が悪かった。25℃および100℃での接着性は十分発揮したが、熱間接着性・熱間保持力に乏しく、加熱成形したのち110℃エージングで、エッジより剥離してしまった。
<比較例4、比較例5、比較例13、比較例14>
カルボキシル基含有ポリマーA−4と、Tgが75℃未満であるアミノ基含有ポリマーB−4(Tg=61℃)またはB−5(Tg=72℃)を混合した結果、混和性は良好であった。
【0079】
25℃および100℃での接着性は十分発揮したが、アミノ基含有ポリマーのTgが低いため熱間接着性・熱間保持力に乏しく、加熱成形したのち110℃エージングで、エッジより剥離してしまった。
<比較例6および比較例7>
カルボキシル基含有ポリマーA−4を60wt%と、Tgが75℃以上であるアミノ基含有ポリマーB−2(Tg=110℃)またはB−6(Tg=80℃)をそれぞれ40wt%を混合した結果、混和性は良好であった。
【0080】
100℃での接着性は十分発揮し、加熱成形したのち110℃,168時間エージングでも、ズレおよび剥離は観察されなかった。しかし、アミノ基含有ポリマーの配合量が40wt%と多いため、常温(25℃)での接着力が著しく低下した。
【0081】
表3に以上の実施例1〜7、13〜21及び比較例1〜7、13〜14の接着特性の結果を示す。
【0082】
【表3】

【0083】
<実施例8〜12、および比較例8〜12>
カルボキシル基含有ポリマーA−4(Tg=−21℃、カルボキシル基量10.2mol%)と、アミノ基含有ポリマーB−3(Tg=91℃、アミノ基量4.4mol%)を、さまざまな混合比で混合し、接着性を評価した。どの配合においても、混和性は良好であった。
【0084】
アミノ基含有ポリマーの配合量が、増加することにより、熱間接着力が上昇し、熱間接着性・熱間保持力が向上していった。しかし、常温(25℃)での接着性が低下していった。
【0085】
アミノ基含有ポリマーが25wt% 未満においては、25℃、100℃で十分な接着性を発揮したが、熱間接着性・熱間保持力に劣っていた。そのため、加熱成形したのち110℃エージングで、エッジから剥離してしまった。
【0086】
アミノ基含有ポリマーが25〜38wt% において、25℃のみならず100℃で十分な接着性を示し、また熱間接着性・熱間保持力が良好であり、加熱成形したのち110℃,168時間エージングでも、エッジからのズレおよび剥離はまったく観察されなかった。
【0087】
アミノ基含有ポリマーが40wt% 以上においては、100℃での接着性は十分発揮し、加熱成形したのち110℃,168時間エージングでも、ズレおよび剥離は観察されなかった。しかし、常温(25℃)での接着力が著しく低下した。
【0088】
表4に実施例8〜12、および比較例8〜12の接着特性(混合比)の結果を示す。
【0089】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の接着フィルムは、特に真空加熱圧着機を用いた三次元形状製品への装飾フィルム、保護フィルムなどの接着に有利に用いることができ、例えば100℃までの高温耐久性が要求される自動車の内装製品のほか、建材、化粧板、洗面台などの三次元形状製品の装飾、保護等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の接着フィルムの模式断面図を示す。
【図2】真空加熱圧着機を用いて接着フィルムを被着体に接着する工程を模式的に説明する図である。
【図3】本発明の接着フィルムを接着して得られる成形体の例を示す。
【符号の説明】
【0092】
1 接着フィルム
2 基材
3 接着層
11、12 真空室
13 接着フィルム
14 被着体
15 台
31 凹表面
32,33 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と基材上の接着層を含む接着フィルムであって、前記接着層が、
(A)ポリマーの全繰返し単位数に対してカルボキシル基を含有する繰返し単位数の割合が4.0〜25%である、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するカルボキシル基含有(メタ)アクリルポリマー、及び
(B)ポリマーの全繰返し単位数に対してアミノ基を含有する繰返し単位数の割合が3.5〜15%である、75℃以上のガラス転移温度(Tg)を有するアミノ基含有(メタ)アクリルポリマー
を含み、成分(A)と成分(B)の配合比が重量比で62:38〜75:25である、接着フィルム。
【請求項2】
成分(A)がモノエチレン性不飽和モノマーとカルボキシル基を含有する不飽和モノマーとの共重合体であり、成分(B)がモノエチレン性不飽和モノマーとアミノ基を含有する不飽和モノマーとの共重合体である、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
モノエチレン性不飽和モノマーが(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が1〜12である、請求項2記載の接着フィルム。
【請求項4】
アミノ基を含有する不飽和モノマーが、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、及び含窒素複素環を有する不飽和モノマーから選ばれる不飽和モノマーである、請求項2に記載の接着フィルム。
【請求項5】
装飾フィルムである請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項6】
基材が樹脂フィルムである、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項7】
幅25mm、長さ50mmの接着フィルムを被着体に接着し、100℃の雰囲気中で、90度方向に荷重がかかるように100gの重りを接着フィルムの端部に下げたとき、50mm剥れるまでの時間が24時間以上である、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項8】
成形体の表面に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着フィルムを加熱圧着する工程を含む、成形体の製造方法。
【請求項9】
成形体が三次元表面を有し、接着フィルムの接着を真空加熱圧着機を用いて行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
100℃以上の温度で真空加熱圧着する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
成形体の表面に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着フィルムがその接着層により接着された成形体。
【請求項12】
自動車内装品である、請求項11に記載の成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−35588(P2009−35588A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198964(P2007−198964)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】