説明

接着性シリコーンゴム組成物

【課題】本発明は、各種の熱硬化性樹脂に対して優れた接着性を発現する、特にポリウレタン樹脂へ良好に接着するシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)アルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン、(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(C)芳香族炭化水素基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、(D)(C)成分を縮合反応させることが可能な有機金属化合物、(E)ポリオルガノシロキサンレジン、(F)ヒドロシリル化触媒を含有する熱硬化性樹脂に対する接着性シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物に関し、より詳しくは、加熱により速やかに硬化し、硬化後は各種熱硬化性樹脂、特にポリウレタン樹脂に対して優れた接着性を示し、かつ接着強度の低下や硬度の経時変化がない硬化物となり得る付加硬化型シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとポリオルガノハイドロジェンシロキサンを主成分として、白金系触媒の存在下に硬化するシリコーン組成物は、付加硬化型シリコーン組成物と呼ばれており、数多くの産業分野で使用されている。近年では、自動車、電子・電気、医療など付加価値の高い用途、特にシリコーンゴムと樹脂材料を一体化させた製品としての用途への展開が活発となっている。これまで一体化される際の有機樹脂としては、PBTやポリカーボネート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂が一般的であり、有機樹脂が、ポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂のような熱硬化性樹脂である場合には、シリコーンとの接着は必ずしも容易ではなかった。特にポリウレタン樹脂については、耐摩耗性が良好で、水分・油分・塩分などの浸透性が低いという特徴からシリコーンと一体化して使用される場合があるが、基材がシリコーンゴムの場合には、プラズマ処理やプライマー処理、UV処理など煩雑な前処理を行う必要があった。このため、近年では、該付加硬化性シリコーンゴム組成物自体に接着機能を持たせた、いわゆる自己接着性シリコーンゴム組成物を使用し、オゾン処理やプライマー処理を施すことなく、直接、被着体樹脂表面の上から硬化・接着させる方法が提案され、実施されるようになっている。
【0003】
この自己接着性シリコーンゴム組成物については、特にアルコキシシランと縮合触媒とを接着成分として配合したことを骨子とするものが数多く提案されている。例えば、該付加硬化型シリコーンゴム組成物に接着性を付与する為の接着付与成分として、エポキシ基含有アルコキシシランが配合された接着性を有するポリオルガノシロキサン組成物が提案されている(特許文献1参照)。ところが、この方法では、熱硬化性樹脂に対する接着性は不十分であり、かつ硬化時に反応しきれなかった接着付与成分中の未反応アルコキシ基の影響により硬化物の硬度が経時的に変化するといった問題や金型との離型性が悪いといった問題があった。
【0004】
また、プライマーなどを使用することなく熱硬化性樹脂に対して接着性を有するシリコーン組成物として各種の提案がなされている。分子中にフェノール基や酸無水物基、カルボキシル基などを有する官能性基がケイ素原子に結合したシリル基がシロキサン主鎖に結合し、分岐を形成したアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを使用することを特徴とした付加硬化型シリコーン組成物が提案されている(特許文献2参照)。これは熱硬化性樹脂に対して当該組成物を未硬化の状態で圧着し、硬化させて使用するもので、硬化後でも熱硬化性樹脂に対して接着力を有するとされている。しかしながら、特殊な官能基を有するシリル基を分岐に有するポリオルガノシロキサンの合成は容易ではなく、多段階の反応を要するという問題があり、熱硬化性樹脂に対する接着強度についても更なる改良が求められていたのである。
【0005】
熱硬化性樹脂を含む各種素材に対しての接着性付与及び金型離型性を付与する成分として、アルキレングリコールジアクリル酸エステルもしくはアルキレングリコールジメタクリル酸エステルを含有する付加硬化型シリコーン組成物も提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、この組成物は、熱硬化性樹脂を含む各種素材に対しての接着に用いるとされているが、熱硬化性樹脂に対する接着強度については更なる改良が求められていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−101146号公報
【特許文献2】特開平10−330620号公報
【特許文献3】特表2007−500266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑み、加熱により速やかに硬化し、硬化後は各種熱硬化性樹脂に対して優れた接着性を示し、かつ接着強度の低下や硬度の経時変化がない硬化物となり得る付加硬化型シリコーン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに付加硬化型シリコーンゴム組成物に、芳香族炭化水素基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物と当該成分を縮合反応させることが可能な有機金属化合物、及び特定の構造を有するポリオルガノシロキサンレジンを配合することにより課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、
[1](A)一般式 RSiO(4−a−b)/2 (1)
[式中、Rはアルケニル基を表し;Rは脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価の炭化水素基を表し、aは1又は2、bは0、1又は2、かつa+bは1、2又は3を表す]で示される構成単位を1分子中に少なくとも2個有する25℃の粘度が10〜500,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン 100重量部、
(B)一般式 RSiO(4−c−d)/2 (2)
[式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表し;cは0、1、2又は3を表し;dは0、1又は2を表し;c+dは1、2又は3を表す]で示される構成単位からなり、かつケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(A)成分中のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子の個数が、0.5〜7.0となる量、
(C)芳香族炭化水素基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物 0.1〜10重量部、
(D)(C)成分を縮合反応させることが可能な有機金属化合物 0.01〜5重量部、
(E)シロキサンユニットの平均組成が式(3)
SiO(4−e)/2 (3)
(式中、Rは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基またはアルケニル基、eは0.5〜2.0である)
で示され、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット含有比が0〜80モル%、ジオルガノシロキサンユニット含有比が0〜60モル%、モノオルガノシロキサンユニット含有比が0〜80モル%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニットの含有比が0〜60モル%であるポリオルガノシロキサンレジン 10〜200重量部、及び
(F)ヒドロシリル化触媒 触媒量
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂に対する接着性シリコーンゴム組成物。
【0009】
[2](E)成分が分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサンレジンであることを特徴とする[1]記載の接着性シリコーンゴム組成物。
[3](E)成分が、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット含有比が10〜80モル%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニットの含有比が20〜90モル%で構成されるポリオルガノシロキサンレジンであることを特徴とする[1]または[2]のいずれかに記載の接着性シリコーンゴム組成物。
[4](G)オルガノアルコキシシランを0.01〜20重量部含有含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の接着性シリコーンゴム組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、加熱により速やかに硬化し、硬化後は各種熱硬化性樹脂に対して優れた接着性を示し、かつ接着強度の低下や硬度の経時変化がない効果を奏する。特に従来から難接着樹脂とされていたポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂等へ良好に接着し得るもので、自己接着性シリコーンゴムとして幅広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に用いる(A)成分のポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に直結したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するものである。このポリオルガノシロキサンは、前記一般式(1)で表されるシロキサン単位を少なくとも2個、更に、一般式(4)で示されるシロキサン単位からなる。
SiO(4−f)/2 (4)
式(4)中、Rは式(1)で示したものと同様なものであり、fは0〜3の整数である。このポリオルガノシロキサンは直鎖状でも、分岐状であってもよく、またこれらの混合物であってもよい。このポリオルガノシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。合成が容易で、流動性が高く、かつ弾性を有するシリコーンゴムが得られる点で、直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0012】
前記の一般式(1)におけるRのアルケニル基としては、炭素数2〜6のビニル、アリル、1−ブテニル、1−ヘキセニルなどが例示されるが、経済性及び製造の容易さからビニル基が好ましい。一般式(1)および(4)におけるRとしては、炭素数1〜12の置換または非置換の一価炭化水素基であって、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ドデシルなどのアルキル基;フェニルなどのアリール基;2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルなどのアラルキル基;クロロメチル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどの置換炭化水素基などが例示される。これらのうち、経済性に優れ、製造が容易であり、しかも硬化後に良好な物理的性質を保つうえで必要な重合度をもち、かつ硬化前には低い粘度を保持するという点から、メチル基が最も好ましい。硬化後の組成物に耐寒性や特殊な光学的性質が求められる時は、分子中にフェニル基を、また耐油性が求められるときは、3,3,3−トリフルオロプロピル基を含有させるなど、任意に選択することができる。
【0013】
さらに、(A)成分は付加反応型の硬化性ポリオルガノシロキサンのベースポリマーとなるもので、(A)成分中、前記の一般式で表されるアルケニル基を含む単位は、ポリオルガノシロキサンの分子鎖の末端、途中のいずれに存在してもよいが、硬化後の組成物に優れた機械的特性を与えるためには、少なくとも末端に存在することが好ましい。
【0014】
また、(A)成分の粘度は特に制限されないが、25℃において10〜500,000mPa・sであることが好ましく、特に硬化前の高い流動性と硬化後の優れた機械的特性が必要な用途には100〜250,000mPa・sであることが好ましい。
【0015】
本発明に用いる(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(A)成分のアルケニル基と付加反応して、本発明の組成物をゴム弾性体又はゲル状物へと硬化させるための不可欠の成分である。この(B)成分は、1分子中にSi−H結合を2個以上有するものであれば、その分子構造に特に制限はなく、従来公知の直鎖状、環状、分岐状のものが使用されうるが、製造の容易さから直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、又はRHSiO1/2単位及びSiO単位からなる分岐状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましい。
【0016】
前記一般式(2)のRとしては、前記式(1)で例示したものが挙げられ、式(1)と同一または異なっていてよく、式(2)中でも同一または異なっていてよいが、耐熱性や接着基材との密着性の点でメチル基及び/又はフェニル基が好ましい。特に好ましい(B)成分は、(CH)HSiO2/2単位、(CHSiO2/2単位を含有するポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び(CH)HSiO2/2単位、(CHSiO2/2単位、(CH)(C)SiO2/2単位を含有するポリメチルフェニルハイドロジェンシロキサンである。このポリオルガノハイドロジェンシロキサンは当業者にとって公知の方法によって製造される。
【0017】
(B)成分の使用量は、(A)成分のRすなわちアルケニル基1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜7.0個、好ましくは0.7〜5.0個、さらに好ましくは0.8〜3.0個となるような量がよい。水素原子が0.5個未満では組成物の硬化が十分に進行せず、また7.0個を超えると硬化時に発泡しやすく、さらに接着性発現が著しく低下し、なおかつ硬化後の物性、特に耐熱性の変化が大きくなるからである。
【0018】
本発明に用いる(C)成分の有機ケイ素化合物は、(D)成分の有機金属化合物とともに本発明の組成物に優れた自己接着性を付与するために用いられる成分である。この有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の芳香族炭化水素基とケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物である。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、(C)成分の有機ケイ素化合物は、塩素基、臭素基などのハロゲン基;その他、アミノ基、アミド基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ケイ素原子結合水素基、(メタ)アクリル基、エーテル結合酸素原子などの官能基を有していてもよい。
【0019】
本発明に用いる(C)成分において、より好ましいものは、下記式(5)〜(8)で表される芳香族炭化水素基を有する基を少なくとも1個を含んだ化合物である。
【化1】

【化2】

[但し、式中R〜R12は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ハロゲン置換もしくはシアノ置換又は非置換の炭素数1〜8の1価の炭化水素基、アルコキシ基から選ばれる1価の基である。また、Xは含まれていても、含まれていなくても良く、
【化3】

から選ばれる2価の基(R13及びR14は互いに同一又は異種の水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ハロゲン置換もしくはシアノ置換又は非置換の炭素数1〜8の1価の炭化水素基から選ばれる1価の基又はR13とR14とが結合して炭素環又は複素環を形成する基、aは2〜8の整数を示す)である。]
【0020】
このような有機ケイ素化合物の具体例としては次のようなものが例示される。例示の中にはアルケニル基を有するものも含まれているが、アルケニル基を含まないものでも本発明の目的を達成することができ、好ましい。なお、以下のMeはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Phはフェニル基、nは1〜20の整数を表す。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0021】
本発明に用いる(C)成分において、特に好ましいものは、下記式(9)で表される有機ケイ素化合物である。ただし、下記式(9)中の、R15〜R18は、互いに同一又は異種の、置換又は非置換の炭素数1〜8の1価の飽和脂肪族炭化水基、又は置換又は非置換の炭素数6〜18の1価の芳香族炭化水素基を表し、pは1,2又は3、qは0,1又は2、かつp+qは3を表す。
【化12】

【0022】
これらの(C)成分の有機ケイ素化合物は、いずれも本発明のシリコーンゴム組成物の接着性付与剤として有用であり、単独で用いることもできるが、より基材との接着性を向上させるためにはこれらの2種以上を併用してもよい。これら有機ケイ素化合物の使用量は(A)成分100重量部あたり0.1〜10重量部であり、より好ましくは0.2〜2重量部である。0.1重量部未満の場合は十分な接着力が得られず、また10重量部を超える場合は硬化後の弾性体の物理的特性が低下する。
【0023】
なお、これらの有機ケイ素化合物は、その合成方法、合成操作、性質ならびに取扱方法などが明記された、以下の非特許文献1及び非特許文献2を参考にすることで容易に調製できる。
【0024】
【非特許文献1】日本化学会編、“第4版 実験化学講座24 有機合成VI(ヘテロ元素・典型金属元素化合物)”、丸善(1992)
【非特許文献2】日本化学会編、“第4版 実験化学講座25 有機合成VII(有機金属試薬による合成)”、丸善(1991)
【0025】
代表的な例としては、例えば、(1)市販のアルケニル基を持った有機化合物に対して、Si−H基の含まれたクロロシラン化合物をヒドロシリル化反応によって付加させた後、グリニャール試薬によるアルキル化反応およびアルコールによるアルコキシ化反応を行う方法、(2)市販のアルケニル基を持った有機化合物に対して、Si−H基の含まれたクロロシラン化合物をヒドロシリル化反応によって付加させた後、アルコールによるアルコキシ化反応を行う方法、あるいは(3)市販のアルケニル基を持った有機化合物に対して、Si−H基の含まれたアルコキシシラン化合物をヒドロシリル化反応によって付加させる方法などが挙げられる。
【0026】
本発明に用いる(D)成分の有機金属化合物は(C)成分の有機ケイ素化合物とともに本発明の組成物に優れた自己接着性を付与し、かつ組成物の硬化後の硬度が経時的に変化するのを抑えることを目的として用いられる。この有機金属化合物は(C)成分の有機ケイ素化合物を、必要により水分を介して縮合反応させることが可能なものであればどのようなものでも構わない。このような化合物としては、B、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Sn、Os、Ir、Hg、レアアースなどを金属原子としてなる金属メトキシド、金属エトキシドあるいは金属イソプロポキシドなどの金属アルコキシド;金属ステアレート、金属オクチレートなどの金属酸塩;金属アセチルアセトネート、金属オクチレングリコレートあるいは金属エチルアセトアセテートなどの金属キレートなどが例示され、入手の容易さ、適度な反応性及び接着向上の機能の点で、B、Al、Ti及びZrの金属アルコキシド、金属酸塩及び金属キレートが好ましく、より好ましくはテトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ボロンイソプロポキシドである。さらに当該金属アルコキシドのアルコールとしては、入手が容易なイソプロパノールやブタノールなどの汎用アルコールを使用しても良いし、該金属アルコキシドの大気中での安定性、また製造後の付加硬化型シリコーン組成物の保存安定性を考慮して、人工的に化学合成された、または天然物から抽出されたさらに高分子量のアルコールを使用しても良い。
【0027】
また、これらは単独で用いることもできるが、熱硬化性樹脂との接着性を向上させるために、これらの2種以上を併用してもよい。これらの(D)成分の有機金属化合物の使用量は(A)成分100重量部あたり0.01〜5重量部であり、より好ましくは0.02〜2重量部である。0.01重量部未満の場合は縮合触媒としての機能が十分に果たせないために良好な接着力が得られず、また5重量部を超える場合は硬化物の耐熱性や物理的特性が悪化する。
【0028】
本発明に用いる(E)成分のポリオルガノシロキサンレジンは、本発明によって得られる付加硬化型シリコーン組成物に各種熱硬化性樹脂との接着性をより向上させるだけでなく、ベースポリマーの機械的強度を向上させることを目的として添加され、本発明の必須成分の一つである。(E)成分のポリオルガノシロキサンレジンは、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット(Mユニット)含有比が0〜80モル%、ジオルガノシロキサンユニット(Dユニット)含有比が0〜60モル%、モノオルガノシロキサンユニット(Tユニット)含有比が0〜80モル%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニット(Qユニット)の含有比が0〜60モル%で構成される。これらユニットの平均組成が前記一般式(3)で示され、
SiO(4−e)/2 (3)
一般式(3)のeはこれらユニットの構成の平均を示すものであって、0.5〜2.0である。好ましくは、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット含有比が10〜80モル%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニットの含有比が20〜90モル%で構成される、MおよびQユニットからなるポリオルガノシロキサンレジンである。このようなポリオルガノシロキサンレジンは、構成ユニットに対応するクロロシラン類またはアルコキシシラン類を加水分解縮合するという当業者にとって公知の方法によって製造することができる。
【0029】
本発明の(E)成分の一般式(3)におけるRは、同一または異なっていてもよい、炭素数1〜12のアルキル基またはアルケニル基であるが、アルキル基としては前記Rで例示したものが、アルケニル基についてはRで例示したものを各々あげることができる。本発明の(E)成分は、分子中にすくなくとも1つのアルケニル基を含有することが好ましい。これは、アルケニル基により、当該ポリオルガノシロキサンレジンがベースポリマーのマトリックス中に取り込まれることにより、ベースポリマーの機械的強度がさらに向上されるだけでなく、接着性の向上を図ることができるためである。
【0030】
該ポリオルガノシロキサンレジンの使用量は(A)成分100重量部あたり10〜200重量部であり、より好ましくは20〜100重量部である。10重量部未満の場合は十分な接着力及び機械的強度が得られず、また200重量部を超える場合は硬化後の弾性体の物理的特性が低下する。
【0031】
本発明に用いる(F)成分のヒドロシリル化触媒は、ヒドロシリル化と呼称される、(A)成分のポリオルガノシロキサンのアルケニル基Rと(B)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素原子に結合した水素原子との間の付加反応のための触媒として使用される。このヒドロシリル化触媒としては、金属及びその化合物、例えば白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム及びイリジウムが挙げられる。これらヒドロシリル化触媒の中で、特に好ましくは白金又は白金系化合物である。
【0032】
白金化合物としては、白金黒、白金ハロゲン化物(例えば、PtCl、HPtCl・6HO、NaPtCl・4HO、HPtCl・6HOとシクロヘキサンからなる反応生成物)、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコラート錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、ビス−(γ−ピコリン)−白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド)、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体などが挙げられる。
【0033】
また、ヒドロシリル化触媒は微粒子固体等にマイクロカプセル化した形で使用することもできる。この場合、触媒を含有し、かつポリオルガノシロキサン中に不溶の微粒子固体は、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂)である。また、ヒドロシリル化触媒は包接化合物の形で、例えば、シクロデキストリン内で使用することも可能である。なお、(F)成分のヒドロシリル化触媒は有効量、即ち、いわゆる触媒量で用いられ、金属換算で通常(A)成分に対し0.1〜1000ppmとなる範囲であり、硬化性及び硬化後の物理的特性を考慮した場合、好ましくは0.5〜200ppmの範囲である。
【0034】
さらに本発明に用いる(G)成分のオルガノアルコキシシランは、熱硬化性樹脂との接着性をより強固なものとすることを目的として、使用することができる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、α−(エトキシカルボニル)エチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられ、これらの中で、特にγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を使用しても良い。該オルガノアルコキシシランの使用量は、(A)成分100重量部あたり、0.01〜20重量部が好ましく、より好ましくは、0.05〜10重量部である。0.01重量部未満の場合には、オルガノアルコキシシランを添加する効果が得られにくくなり、20重量部よりも多い場合には、金型からの離型性が悪化し、また硬化後の硬度の変化が起こるため好ましくない。
【0035】
以上の(A)成分〜(G)成分以外に、物理的性質の改善などのために種々の無機質又は有機質充填剤を使用することは何らさしつかえない。この充填剤としては、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、粉砕シリカ、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどが挙げられる。これら充填剤などの使用量は本発明の目的を損なわないかぎり任意である。また本発明の組成物に、公知の反応制御剤、例えば、アセチレンアルコール、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アセチレン基含有シランやシロキサンを配合してもよい。なお、本発明を実施するに際して、用途によっては、本発明の組成物をトルエン、キシレンなど適当な有機溶剤に分散ないし溶解して用いてもよい。
【0036】
本発明の接着性シリコーンゴム組成物は、上記した(A)成分〜(F)成分と任意成分を常温で均一に混合するだけでも得ることが可能であるが、好ましくは(A)成分と充填剤などの任意成分をプラネタリーミキサーやニーダー等で100〜200℃の範囲で1〜4時間熱処理し、その後室温で(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)成分を混合して組成物を得ることができる。成形方法は、混合物の粘度により自由に選択することができ、注入成形、圧縮成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形等いずれの方法を採用してもよい。その硬化条件は、通常60〜200℃で10秒〜24時間の範囲内で加熱成形することができる。
【0037】
本発明の接着性シリコーンゴム組成物は、有機樹脂との一体成形体を得る場合に好適に用いられる。この場合、本発明に使用される熱硬化性樹脂とは、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0038】
このような組成からなる上記の未硬化の接着性シリコーンゴム組成物を上記熱硬化性樹脂の上に一体成形する方法としては、予め成形された熱硬化性樹脂の上に未硬化の接着性シリコーンゴム接着剤組成物を所望の形状にしてのせ、シリコーンゴム組成物が硬化する温度で加熱する方法、予め成形された熱硬化性樹脂の上に未硬化の接着性シリコーンゴム組成物をのせ、シリコーンゴム組成物が硬化する温度以下で圧縮する方法、射出成形機により熱硬化性樹脂を金型に仕込み、次いで該金型内に接着性シリコーンゴム組成物を加熱射出する方法等が挙げられる。
【0039】
一方、当該付加硬化型シリコーンゴム組成物は未硬化の状態で液状、パテ状、ペースト状のいずれでもよいが、成形のし易さから液状もしくはペースト状のものが好ましい。なお、本発明に係る付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化条件は、熱硬化性樹脂との強固な接着性を発現させるためには樹脂が変形、変質しない温度、硬化時間で行うことが必要である。樹脂の種類にもよるが、80〜180℃で0.2〜30分程度、とりわけ0.4〜10分程度の硬化条件で一体成形体を得ることができる。
【0040】
また、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物はコート剤として、熱硬化性樹脂の表面に塗工することができる。塗工に際しては、塗工方法に応じて粘度調整のために希釈剤を添加しても良い。希釈剤としては特に制限はなく、トルエン、キシレン、n−へプタン、n−ヘキサン、エタノール、イソプロパノールなど各種有機溶剤を使用することができる。塗工方法についても特に制限はないが、スクリーン印刷、スプレーコート、ディップコートなどが適しており、熱硬化性樹脂表面に塗工後、50〜200℃で5分間〜3時間程度加熱乾燥させることにより良好な塗膜を形成させることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例における部は、いずれも重量部を示す。
【0042】
[はく離試験方法]
実施例及び比較例におけるシリコーンゴムと樹脂シートからなる試験片の形状ならびにはく離試験は、JIS K6256−2(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着試験方法、6.剛板と加硫ゴムの90度はく離試験)に基づいて実施した。
【0043】
[実施例1]
両末端がそれぞれジメチルビニルシリル基で封鎖された25℃における粘度が20,000mPa・sのポリジメチルシロキサン((A)成分)100部と、比表面積が200m/gである煙霧質シリカ40部、ヘキサメチルジシラザン8部及びイオン交換水1重量部を万能混練機に仕込み、常温で1時間撹拌混合を行なった後、150℃に昇温し、2時間加熱混合を行なった。その後、混合物を常温まで冷却し、これに、(CH)HSiO2/2単位と(CHSiO2/2単位との比が67/33であり、25℃における粘度が20mPa・sのポリメチルハイドロジェンシロキサン((B)成分)3.1部、(CHSiO1/2単位58モル%、(CH=CH)(CHSiO1/2単位2モル%、SiO4/2単位40モル%で構成されるポリメチルシロキサンレジン((E)成分、以下レジン1)20部を添加し、常温における硬化までの時間を延長させるためアセチレンアルコールを0.8部、白金原子含有量0.5wt%の白金−ビニルシロキサン錯体溶液((F)成分)0.3部をそれぞれ添加し、均一になるまで混合した。次いでこの組成物に、本発明の(C)成分である下記式(i)で表される有機ケイ素化合物0.5部、ならびに本発明の(D)成分のジルコニウムテトラアセチルアセトネート(松本製薬工業社製オルガチックスZC−150)0.1部をそれぞれ添加し、本発明に係るシリコーンゴム組成物を調製した。
【化13】

【0044】
次に、金型の内面寸法が、長さ約125mm、幅約90mm、深さ約6.0mmの3個取り金型に、長さ約60mm、幅約25mm、厚さ約2mmの寸法のポリウレタン樹脂(大日本インキ株式会社製パンデックス4030)の成形シートを置き、その上から上記のシリコーンゴム組成物を充填、120℃×10分の条件でプレス加硫して試験片を作成し、オートグラフを用いて、常温下、50mm/minの速度条件で90度はく離試験を行った。はく離強さとはく離面の状態(凝集破壊率(%))を表1に示す。また、ポリウレタン樹脂シートの代わりに、フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製AVライト811)又はエポキシ樹脂(旭化成エポキシ株式会社製AER−260)成形シートを用いた以外は同様にして、試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、式(i)の有機ケイ素化合物((C)成分)及びジルコニウムテトラアセチルアセトネート((D)成分)を添加しない以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、(E)成分を添加しない以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【0047】
[比較例3]
実施例1において、式(i)の有機ケイ素化合物((C)成分)及びジルコニウムテトラアセチルアセトネート((D)成分)の代わりにγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)0.5部を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【0048】
[実施例2]
実施例1において、(D)成分であるジルコニウムテトラアセチルアセトネートの代わりにジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)(松本製薬工業社製オルガチックス TC−750)0.20部を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
実施例1において、(E)成分であるレジン1の代わりに(CHSiO1/2単位15モル%、(CHSiO2/2単位20モル%、(CH)SiO3/2単位25モル%、SiO4/2単位40モル%で構成されるポリメチルシロキサンレジン(以下レジン2)を用いた以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
実施例1において、さらにγ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)0.5部を添加する以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例5]
実施例4において、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの代わりにメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS710)0.5部を添加する以外は、実施例4と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、PU樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例4]
実施例4において、(E)成分を添加しない以外は、実施例4と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、PU樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、90度はく離試験を実施した。作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例5]
実施例4において、(C)成分である式(i)の有機ケイ素化合物の代わりに式(ii)で表される有機化合物0.5部を用いた以外は実施例4と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、PU樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【化14】

【0054】
[比較例6]
実施例4において、(C)成分である式(i)の有機ケイ素化合物の代わりに式(iii)で表される芳香族炭化水素基を有さない有機ケイ素化合物0.5部を用いた以外は実施例4と同様にしてシリコーンゴム組成物を調製し、PU樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂の成形シートとの試験片を作成し、作成から24時間経過後と室温で1ヶ月放置後の試験片を用いて90度はく離試験とタイプAデュロメータを使用して硬度測定を行った。結果を表2に示す。
【0055】
【化15】

【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の接着性シリコーンゴム組成物は、比較的低温において速やかに硬化し、各種の熱硬化性樹脂に対して優れた接着性を発現し、かつ接着強度の低下や硬度の経時変化がない。特に、従来、難接着樹脂とされていたポリウレタンへ良好に接着し得るもので、例えば、携帯電話のキーパットのような繰り返し接着面に荷重が掛かるような用途でも、長期間の使用に耐えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式 RSiO(4−a−b)/2 …(1)
[式中、Rはアルケニル基を表し;Rは脂肪族不飽和結合を含まない置換又は非置換の1価の炭化水素基を表し、aは1又は2、bは0,1又は2、かつa+bは1,2又は3を表す]で示される構成単位を1分子中に少なくとも2個有する25℃の粘度が10〜500,000mPa・sであるポリオルガノシロキサン 100重量部、
(B)一般式 RSiO(4−c−d)/2 (2)
[式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表し;cは0、1、2又は3を表し;dは0、1又は2を表し;c+dは1、2又は3を表す]で示される構成単位からなり、かつケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(A)成分中のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子の個数が、0.5〜7.0となる量、
(C)芳香族炭化水素基及びケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物 0.1〜10重量部、
(D)(C)成分を縮合反応させることが可能な有機金属化合物 0.01〜5重量部、
(E)シロキサンユニットの平均組成が式(3)
SiO(4−e)/2 (3)
(式中、Rは同一または異なっていてもよく、炭素数1〜12のアルキル基またはアルケニル基、eは0.5〜2.0である)
で示され、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット含有比が0〜80モル%、ジオルガノシロキサンユニット含有比が0〜60モル%、モノオルガノシロキサンユニット含有比が0〜80%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニットの含有比が0〜60モル%であるポリオルガノシロキサンレジン10〜200重量部、及び
(F) ヒドロシリル化触媒 触媒量
を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂に対する接着性シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(E)成分が分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサンレジンであることを特徴とする請求項1記載の接着性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(E)成分が、全シロキサンユニット中のトリオルガノシロキサンユニット含有比が10〜80モル%、オルガノ基を有しないSiO4/2ユニットの含有比が20〜90モル%で構成されるポリオルガノシロキサンレジンであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の接着性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(G)オルガノアルコキシシランを0.01〜20重量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着性シリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2011−26523(P2011−26523A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176211(P2009−176211)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(500004955)旭化成ワッカーシリコーン株式会社 (17)
【Fターム(参考)】