説明

接着撚り構造の製造方法

熱可融性材料を溶射法によってヤーン同士の少なくとも接点又は交点に吹き付けた後、前記ヤーンを接合する、ことを特徴とするヤーンから接着撚り構造を製造する方法、および、まず初めに本発明による撚り構造を製造し、その後、必要に応じてさらに熱可融性材料を添加し、熱および圧力を加えながら前記構造を成形して繊維強化複合材料にする、ことを特徴とする繊維強化複合材料を製造する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤーンから接着撚り構造を製造する方法、および、同じ種類の撚り構造から繊維強化複合材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料の製造には、織物またはインターレイドスクリムのごとき平織物構造が使用される一方で、直接撚り構造も使用される。平織物構造は、一般に扱い易いが、複雑な又は三次元の形態を有する繊維強化複合材料の製造にはあまり向いていない。この用途には、撚り構造が推奨される。例えば、DE20120447では、ヤーンを合わせて撚り構造とした後、粉末状の熱可融性材料を分散させ、加熱して接合させる。このようにして、プリフォームが形成されるが、必要であれば前記プリフォームを、他のプリフォームと共にさらに加工して、複合材料にすることもできる。この方法は、複雑な及び/又は三次元の構造には限られた程度でしか適さない。それは、この方法を用いた接着工程においてヤーンを限られた程度でしか抑えておくことができないため、製造することができる唯一の構造は、ヤーンが配置された後でその位置に止まり、滑り落ちることがない構造であるためである。
【0003】
プリフォームの他の製法が、WO2005/095080A1に記載されている。この製法では、まず、強化用ヤーンに熱可融性材料を含浸させる。その後、前記ヤーンを撚り構造とし、加熱することによって、前記ヤーンを互いに接合させて接着撚り構造を形成する。平らな形態、例えばフラットバンド(テープ)の形態でも用いられるヤーンの敷設時においても、前記含浸用の熱可融性材料は少なくとも表面的には融解することができ、従って、ヤーンの敷設時においても、融解した材料の接着によって隣接する又は交差するヤーンを接合させることができるとすると、この方法に従って複雑な及び/又は三次元の構造を製造することができる。それでも尚、前記文献に記載されている方法は、全体として、非常に時間が掛かる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、複雑なおよび/または三次元の構造も比較的短い期間で直接製造することができることを意味する、ヤーンから接着撚り構造を製造する方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、本発明に従って製造されるのと同じ種類の撚り構造を使用することによって繊維強化複合材料を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、熱可融性材料を溶射法によってヤーンの少なくとも接点又は交点に噴霧する、ヤーンから接着撚り構造を製造する方法によって達成される。その後、前記ヤーンは、溶射法によって噴霧された前記熱可融性材料が塑性状態又は融解状態にある間に接合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
「溶射法」という用語は、DIN657:2005において定義されている。この標準規格には、スプレー添加剤の種類、製造及び/又はエネルギー源によって分類される様々な噴霧法がまとめられている。これらの溶射法の中でも、熱可融性材料を融かし、そして前記材料を、好ましくは小さな滴の形態で、敷設されたボディおよび/またはヤーンに対して、好ましくは高速で吹き付ける方法が特に好ましい。前記敷設されたボディは、最終形態に近い形態又はこの形態の上にすでに敷設された層である。
【0007】
これらの溶射法によって、可塑化された、好ましくはまだ融解している状態にある、熱可融性材料を、正確に制御および計量された量でヤーンに吹き付けることができる。この点に関して、本発明による方法を用いて、可塑化された、好ましくはまだ融解している状態にある熱可融性材料の塗布量を調節することによって、隣接するヤーン間の良好な接合が保証される一方で、前記可塑化された、好ましくはまだ融解している状態にある熱可融性材料の接着に必要とされる冷却段階を減らすことができる。
【0008】
本発明による方法は、とりわけ、熱可融性材料を、溶射によって、熱可融性材料である粉末とともに吹き付ける場合に効果的である。この方法を用いて、必要量の融解した熱可融性材料を非常に短い時間で塗布して、あるヤーンと別のヤーンをそれらの接点または交点で接着させる。
【0009】
この方法は、プラズマジェットがエネルギー源として使用される場合に特に効果的である。
【0010】
本発明による撚り構造の製造には、繊維強化複合材料の製造に用いられる材料への接着が良好である種類の熱可融性材料を使用するべきである。好適な材料としては、複合材料のマトリクスとして使用され且つ熱可融性である実質的にすべての材料が挙げられる。とりわけ、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、液晶性ポリマー、および熱可塑性挙動を有するデュロマーが挙げられる。溶射には、後に複合材料のマトリクスとしても使用されるポリマーと同様のポリマー、とりわけ同一のポリマーを使用することが好ましい。個々に敷設された層の間には、破損が生じた場合に引き裂き伝播を止めるといった特殊な機能を可能にする層を設けてもよい。繊維強化複合材料の製造に好適な実質的にすべてのヤーンが、前記ヤーンとして使用することができると考えられる。ガラス、石英、アラミド、炭化ケイ素または炭素繊維が最も好適である。
【0011】
本発明による方法は、撚り工程において前記ヤーンの全長にわたって前記熱可融性材料を溶射によってコーティングする場合に特に有利である。
【0012】
熱可融性材料ですでにコーティングされたヤーンを使用すれば有利であることも証明されている。とりわけ、熱可融性材料を含浸させたヤーンを使用することができる。これには、WO2005/095080A1に記載されている含浸ヤーンが最も好適である。
【0013】
前記コーティングされたまたは含浸させたヤーンの中でも、特に有利であることが証明されているものは、非常に平坦な形を有するもの、この点についてテープ状であるものである。この種のヤーンは、例えば、EP0937560、EP1281498およびUS4900499に記載されている。
【0014】
本発明による方法は、溶射によって吹き付けられる前記材料が、熱可塑性挙動を有する材料、または好ましくは熱可塑性材料である場合に素晴らしい結果が得られる。
【0015】
本発明の目的は、まず初めに本発明による撚り構造を製造し、その後、必要に応じてさらに熱可融性材料を添加し、熱および圧力を加えながら前記構造を成形して繊維強化複合材料にする、ことを特徴とする繊維強化複合材料を製造する方法によっても達成される。
【0016】
前記溶射に使用される可融性材料、必要に応じて前記ヤーンをコーティングするまたは前記ヤーンに含浸させるのに使用される可融性材料、および前記複合材料を製造するのに使用される可融性材料は、同様のポリマー、とりわけ同一のポリマーからなることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可融性材料を溶射法によってヤーン同士の少なくとも接点又は交点に吹き付けた後、前記ヤーンを、前記溶射法によって吹き付けた前記熱可融性材料がまだ塑性又は融解状態にある間に接合する、ことを特徴とするヤーンから接着撚り構造を製造する方法。
【請求項2】
前記熱可融性材料を、溶射によって、熱可融性材料である粉末とともに吹き付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プラズマジェットをエネルギー源に使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
撚り工程において、前記ヤーンの全長にわたって、前記熱可融性材料を溶射によってコーティングする、請求項1〜3のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項5】
熱可融性材料ですでにコーティングされたヤーンを使用する、請求項1〜4のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項6】
熱可融性材料をすでに含浸させたヤーンを使用する、請求項1〜5のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項7】
前記ヤーンはテープ状である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
溶射によって吹き付けられる前記材料は、熱可塑性挙動を有する材料である、請求項1〜7のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項9】
溶射によって吹き付けられる前記材料は、熱可塑性材料である、請求項1〜7のうちの1つ以上に記載の方法。
【請求項10】
まず初めに請求項1〜8に記載の方法に従って撚り構造を製造し、その後、必要に応じてさらに熱可融性材料を添加し、熱および圧力を加えながら前記構造を成形して繊維強化複合材料にする、ことを特徴とする繊維強化複合材料を製造する方法。
【請求項11】
前記溶射に使用される可融性材料、必要に応じて前記ヤーンをコーティングするまたは前記ヤーンに含浸させるのに使用される可融性材料、および前記複合材料を製造するのに使用される可融性材料は、同様のポリマーからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記溶射に使用される可融性材料、必要に応じて前記ヤーンをコーティングするまたは前記ヤーンに含浸させるのに使用される可融性材料、および前記複合材料を製造するのに使用される可融性材料は、同一のポリマーからなる、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2009−528454(P2009−528454A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556699(P2008−556699)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001650
【国際公開番号】WO2007/101578
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506240883)トーホー・テナックス・ヨーロッパ・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】