説明

接続構造及び当該接続構造を備える表示装置

【課題】電極間のショート不良を引き起こすことなく導電部材によるトランスファ接続を実現し、導電部材のクラックによる導通不良を防止する。
【解決手段】第1基板の上面に形成された第1電極と、第1基板の上面に貼り付けられた第2基板の上面に形成された第2電極と、を導電部材で接続する接続構造において、第2基板は、第1基板よりも外形サイズが小さく、第1電極は、第1基板上の第2基板の周囲に配置され、第2基板の周縁には、第1基板との間に間隙が形成されており、第1電極の近傍において、第2基板の側面の一部を覆い、第1基板と前記第2基板との間隙を埋めるように、絶縁性樹脂が配置され、第1基板の第1電極から、絶縁性樹脂上を通って、第2基板の第2電極に至る領域に、導電部材が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造及び当該接続構造を備える表示装置に関し、特に、上下の基板に設けた電極を導電部材で接続するトランスファ接続構造及び当該トランスファ接続構造を備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つである液晶表示装置は、近年、タッチパネル機能を付与した表示機器として利用されることが多くなってきており、LCD(Liquid Crystal Display)パネルの製造工程でタッチパネル機能を形成して一体化したインセルタッチパネル、あるいはオンセルタッチパネルの開発が進められている。オンセルタッチパネル、特に、表面型静電容量方式のオンセルタッチパネルでは、上下の基板上に設けた電極間を導電部材で接続するトランスファ接続構造が採用されている。
【0003】
上記トランスファ接続構造は、具体的には、CF(Color Filter)基板の裏面(TFT(Thin Film Transistor)基板に対向しない面)にITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜層を一様に形成し、CF基板の裏面の4隅にAgペースト等の導電部材を用いてタッチ時の静電容量変化を検知する信号検出用電極を形成して、この信号検出用電極とTFT基板上に設けた端子電極とを粘性を有する導電部材を用いて接続するものである。このトランスファ接続構造は、一般的なLCDパネルの構造を大きく変えることなく、比較的容易に実現可能である点で注目されており、トランスファ接続構造に関する様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、第1の基板と、前記第1の基板に対向配置される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板とに狭持された電気光学物質と、前記第1の基板の前記電気光学物質側の面に形成された共通電極及び画素電極と、前記第1の基板の前記第2の基板の一辺から外側へ張り出す張り出し領域の前記第2の基板側の面に形成された接地用端子と、前記第2の基板の前記電気光学物質と反対側の面に形成された導電層と、前記第2の基板の前記一辺側の前記導電層の端部の少なくとも一部において前記接地用端子と電気的に接続される導通部と、前記第2の基板の前記導電層の上に前記導通部を少なくとも除いて形成される光学部材と、前記第1の基板の前記張り出し領域から前記第2の基板の前記導電層が形成された領域にわたる領域の少なくとも一部を被覆する被覆部材と、を備え、前記被覆部材は、前記接地用端子及び前記導通部に重なる領域に開口を有し、前記接地用端子と前記導通部は、前記被覆部材の前記開口内に配置された導電部材を通じて電気的に接続される電気光学装置が開示されている。また、下記特許文献2にも、同様の電気光学装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299161号公報
【特許文献2】特開2009−008971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のトランスファ接続構造は、図10に示すように、第1の基板と第2の基板が貼り合わされ、第1の基板(TFT基板)の張り出し部に設けられた電極(接地用端子)と、第2の基板(CF基板)上の導電層とを、導電部材を用いて接続する構造であるが、この構造には重大な問題がある。
【0007】
第1の問題は、特許文献1、2のトランスファ接続構造は、いわゆるIPS(In Plane Switching)方式(横電界方式)のような、CF基板に共通電極が存在しない場合に限定されるということである。すなわち、TN(Twisted Nematic)方式(縦電界方式)の液晶表示装置では、上下の基板間に電圧を印加して液晶を駆動するため、CF基板のTFT基板に対向する面にはITO等からなる共通透明電極が必要になる。そのため、トランスファ接続に用いる導電部材がCF基板とTFT基板の間隙に染み込み、図8に示すように、CF基板に形成された共通透明電極と導電部材とが容易にショート不良を引き起こしてしまう。
【0008】
第2の問題は、トランスファ接続構造に使用する導電部材の材料特性によっては、CF基板とTFT基板の段差部分において、導電部材にクラックが発生し、導通不良を引き起こすことがあるということである。すなわち、図9(a)のように導電部材を塗布した場合、導電部材の材料特性(粘性・チクソ性)によっては、導電部材がCF基板とTFT基板の段差部分で完全に濡れ広がらず、気泡を巻き込んでしまう。この気泡は、導電部材によって閉じ込められた空気であり、導電部材の硬化反応過程(例えば、焼成時の加熱)で膨張し、図9(b)に示すように、逃げ場のない空気が内部から導電部材の表面を突き破って放出されるため、図9(c)に示すように、トランスファ接続部分でクラックが発生する。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、電極間のショート不良を引き起こすことなく導電部材によるトランスファ接続を実現し、さらには導電部材のクラックによる導通不良を防止することができる、信頼性の高い接続構造及び当該接続構造を備える表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、第1基板の上面に形成された第1電極と、前記第1基板の上面に貼り付けられた第2基板の上面に形成された第2電極と、を導電部材で接続する接続構造において、前記第2基板は、前記第1基板よりも外形サイズが小さく、前記第1電極は、前記第1基板上の前記第2基板の周囲に配置され、前記第2基板の周縁には、前記第1基板との間に間隙が形成されており、前記第1電極の近傍において、前記第2基板の側面の一部を覆い、前記第1基板と前記第2基板との間隙を埋めるように、絶縁性樹脂が配置され、前記第1基板の前記第1電極から、前記絶縁性樹脂上を通って、前記第2基板の前記第2電極に至る領域に、前記導電部材が配置されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接続構造及び当該接続構造を備える表示装置によれば、トランスファ接続時において、貼り合わせた上下の基板の段差側面部分及び上下の基板間の間隙部分に絶縁性樹脂を配置するため、導電部材が上下の基板間の間隙部分に染み込まないようにすることができ、これにより、接続する必要のない電極との絶縁性を確保して、ショート不良の発生を未然に防止することができる。
【0012】
加えて、本発明の接続構造及び当該接続構造を備える表示装置によれば、貼り合わせた上下の基板の段差部分は、配置した絶縁性樹脂によって順テーパー形状となるため、導電部材が絶縁性樹脂の表面に沿って濡れ広がりやすくなり、気泡の巻き込みを抑制することができ、これにより、段差部分で発生しやすい導電部材の硬化クラックによるトランスファ導通不良を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置におけるトランスファ接続方法を模式的に示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の液晶表示装置のトランスファ接続部の他の構造を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の電子ペーパーディスプレイのトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【図8】従来の液晶表示装置のトランスファ接続部の構造及び問題を模式的に示す断面図である。
【図9】従来の液晶表示装置におけるトランスファ接続構造のクラックの発生メカニズムを説明する正面図及び側断面図である。
【図10】従来(特開2008−299161号公報)の液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
背景技術で示したように、オンセルタッチパネル、特に、表面型静電容量方式のオンセルタッチパネルではトランスファ接続構造が採用されているが、トランスファ接続構造では、粘性を有する導電部材を使用して電極間の接続を行うため、上下の基板(例えば、CF基板とTFT基板)の段差部分において、上下の基板の間隙部分に導電部材が染み込んでしまう。その結果、接続する必要のない電極(例えば、CF基板のTFT基板側の面に形成された共通透明電極)とのショート不良が発生し、また、導電部材の硬化時のクラックによるトランスファ導通不良が発生するという問題が生じる。
【0015】
そこで、本発明の一実施の形態では、導電部材にてトランスファ接続構造を形成する部分の内、少なくとも、上下の基板の段差側面部分及び上下の基板の間隙部分に絶縁性樹脂を配置する。これにより、少なくとも上下の基板の間隙部分の一部が封止されるため、導電部材と接続する必要のない電極(例えば、上下の基板の対向面に形成される電極)とのショートを防止することができる。また、トランスファ接続構造の近傍において、基板の端部の上記電極を除去したり、導電部材に含まれる導電性粒子のサイズを間隙部分よりも大きくしたりすることによって、上記電極とのショートをより確実に防止することができる。
【0016】
また、絶縁性樹脂を配置することによって、上下の基板の段差部分を順テーパー形状とする。これにより、その後に配置する導電部材が広がりやすくなり、絶縁性樹脂上を跨ぐように導電部材が配置されるため、気泡の巻き込みを防止して、導電部材の硬化時のクラックによるトランスファ導通不良を防止することができる。
【0017】
以下、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例では、表示装置としてTN方式(縦電界方式)の液晶表示装置を例にして説明するが、本発明は、TNやIPSといった液晶表示装置の駆動方式に限定されるものではなく、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイ、電子ペーパーディスプレイなどに対しても同様に適用することができる。
【実施例1】
【0018】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る接続構造及び当該接続構造を用いた表示装置について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本実施例の液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図であり、図2は、本実施例の液晶表示装置におけるトランスファ接続方法を模式的に示す平面図及び断面図である。
【0019】
本実施例の液晶表示装置を構成する表示パネルは、オンセルタッチパネル機能を備えた液晶表示パネルである。この液晶表示パネルは、通常のTN駆動方式の液晶表示パネルと同様に、各画素に画素電極が形成された薄膜トランジスタ基板(以下、TFT基板と称する。)と、各画素に色層が割り当てられ、全面に共通透明電極が形成されたカラーフィルタ基板(以下、CF基板と称する。)と、が液晶層を挟んでシール材を介して貼り合わされている。
【0020】
なお、液晶表示パネルを構成する上下の基板は、上記のTFT基板及びCF基板に限定されず、一方の基板が他方の基板よりもサイズが大きく、貼り合わせた時に上下の基板に段差部分が生じ、この段差部分を跨いで各々の基板に形成された電極間を立体的に導電接続する構造を有し、加えて共通透明電極に相当する導電層が上下の基板の対向面に形成される構造を有していればよい。
【0021】
本実施例では、表面型静電容量方式のオンセルタッチパネル機能を付与するために、図1に示すように、CF基板20の裏面(TFT基板10に対向しない面)には、一様に透明導電膜層21(例えば、シート抵抗が〜数kΩ/□の導電膜)が形成されている。さらに、CF基板20の表面(TFT基板10に対向する面)には、一様に共通透明電極24が形成されている。CF基板20の裏面の透明導電膜層21は、CF基板20の製造段階で成膜しても良いし、例えば、貼り合わせパネルとして分断した後に塗布導電膜等で形成しても構わない。
【0022】
一方、TFT基板10は、CF基板20よりもサイズが大きく、CF基板20を貼り合わせた時に、TFT基板10の一部が露出するようになっており、TFT基板10の表面(CF基板20に対向する面)の露出部分には、トランスファ接続用の端子電極11が形成されている。また、図示しないが、TFT基板10の表面には、端子電極11を通して外部接続端子電極を介し回路基板に検出信号を伝達する信号配線が形成されている。
【0023】
そして、CF基板20とTFT基板10を貼り合わせることによって液晶表示パネルが形成される。この液晶表示パネルには、後述するトランスファ接続構造に加えて、両基板の外側に偏光板(図示せず)が貼付されると共に、駆動ICや信号基板(図示せず)等が接続され、バックライトを組み込んで、フロントシャーシ板金等を組み付けることによって、オンセルタッチパネル機能付き液晶表示装置が完成する。
【0024】
次に、本実施例の液晶表示パネルにおけるトランスファ接続方法について、図2を参照して説明する。なお、図2の左側は液晶表示パネルを上面(CF基板20側)から見た平面図であり、中央はこの平面図のA−A’線における断面図である。また、図2の右側は従来の液晶表示パネルの断面図である。
【0025】
まず、公知の方法を用いて、TFT基板10とCF基板20を作成する。TFT基板10及びCF基板20の作成方法は特に限定されないが、TFT基板10は、例えば、ガラス等の透明絶縁性基板上にゲート配線を並設し、各画素に対応する位置にTFTを形成し、ゲート配線に直交する方向にドレイン配線を並設する。そして、各画素に画素電極を形成すると共に基板の周囲の任意の位置(本実施例では4隅)に端子電極11を形成する。また、CF基板20は、例えば、TFT基板10よりも小さいサイズ(端子電極11に重ならないサイズ)のガラス等の透明絶縁性基板上に、TFT基板10の各画素に対向するように赤(R)・緑(G)・青(B)の3原色の色層を形成し、余分な光を遮断するためのBM(遮光膜)22を形成する、そして、基板全面をOC層(平坦化膜)23で覆い、その上に共通透明電極24を形成する。また、共通透明電極24と反対側の面に透明導電膜層21を作成する。
【0026】
次に、一方の基板に、CF基板20の外形よりもやや小さいサイズの枠状のシール材30を塗布し、両基板を貼り合わせた後、液晶注入用の孔から上下の基板の間隙内に液晶を注入する。若しくは、シール材30を塗布した基板に液晶を滴下し、他方の基板を貼り合わせる。これにより、液晶表示パネルは、図2(a)に示すように、シール材30の外側のCF基板20とTFT基板10の間に間隙が形成され、その間隙においてCF基板20の共通透明電極24が露出した状態になる。
【0027】
次に、上記液晶表示パネルに対して、TFT基板10の端子電極11とCF基板20の透明導電膜層21をトランスファ接続するが、その際、上下の基板の間隙部分に後述の導電部材32が染み込まないようにするために、本実施例では、図2(b)に示すように、粘性を有する絶縁性樹脂31を塗布する。この絶縁性樹脂31を塗布する箇所は、後述の信号検出用電極33をトランスファ接続する箇所近傍であって、少なくともCF基板20の4隅部分におけるCF基板20とTFT基板10の間隙部分である。この絶縁性樹脂31により、上記間隙部分の外側(CF基板20の端側)が少なくとも封止され、かつ、側面部分が順テーパー形状となる。
【0028】
なお、本実施例では、CF基板20の4隅部分に絶縁性樹脂31を塗布しているが、絶縁性樹脂31はCF基板20の周囲全体に塗布することもできる。また、この絶縁性樹脂31は、例えばシリコーン樹脂やアクリル樹脂などであるが、熱硬化型や常温硬化型、UV硬化型など、要求する絶縁性レベル(≧数MΩ)を維持できる材料であれば構わない。また、絶縁性樹脂31の塗布方法は、ディスペンサ塗布やインクジェット塗布、滴下充填法(毛細管現象で間隙部分に樹脂を染み込ませる方法)等を用いることができる。
【0029】
絶縁性樹脂31を硬化させた後、図2(c)に示すように、タッチパネル機能を付与するために、CF基板20の裏面(TFT基板10に対向しない面)の透明導電膜層21上の4隅部分に、所定の形状(ここではL字型)の信号検出用電極33を形成する。この信号検出用電極33は、Agペースト等の導電部材を塗布、あるいは印刷法で形成することができる。あるいは、Cu箔であらかじめ所定の形状とした部品を異方性導電膜等の導電テープを介して圧着接続して電極とすることも可能である。
【0030】
そして、図2(d)に示すように、CF基板20上の信号検出用電極33とTFT基板10上の端子電極11とを、CF基板20の側面を介して、Agペースト等の粘性を有する導電部材32によってトランスファ接続する。その際、導電部材32は、絶縁性樹脂31を塗布した領域からはみ出さないようにする。このトランスファ接続には、ディスペンサやインクジェットによる塗布、あるいは印刷法(例えばパッド印刷法)等を適用することができる。その後、導電部材32の材料特性に応じて加熱焼成やUV照射等を行って導電部材32を硬化させ、所望のトランスファ接続構造を得る。
【0031】
このように、本実施例の液晶表示パネルでは、トランスファ接続部において、CF基板20とTFT基板10の段差部分及び間隙部分に絶縁性樹脂31が配置されているため、当該間隙部分に、CF基板20の信号検出用電極33とTFT基板10の端子電極11とを接続するための導電部材32が染み込むことがなく、CF基板20の共通透明電極24と導電部材32のショート不良を未然に防止することができる。
【0032】
また、CF基板20とTFT基板10の段差部分は、絶縁性樹脂31によって順テーパー形状となるため、導電部材32が絶縁性樹脂31の表面に沿って濡れ広がり、気泡の巻き込みを抑制することができるため、導電部材32の硬化時に生じるクラックによるトランスファ導通不良の発生を未然に防止することができる。
【実施例2】
【0033】
次に、本発明の第2の実施例に係る接続構造及び当該接続構造を備える表示装置について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施例の液晶表示装置の構造を模式的に示す斜視図であり、図4は、本実施例の液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【0034】
前記した第1の実施例では、CF基板20の表面(TFT基板10に対向する面)の全体に共通透明電極24が形成されているため、絶縁性樹脂31の塗布量が少ない場合は、共通透明電極24が部分的に露出して導電部材32と接触する恐れがある。また、導電部材32を塗布する領域の幅が絶縁性樹脂31よりも広い場合も、絶縁性樹脂31で覆われていない共通透明電極24が導電部材32と接触する恐れがある。
【0035】
そこで、第2の実施例では、共通透明電極24が導電部材32と接触する危険性を減らすために、図3及び図4に示すように、CF基板20のTFT基板10に対向する面側において、トランスファ接続する4隅領域の共通透明電極24をあらかじめ除去する構成とする。
【0036】
この4隅領域の共通透明電極24を除去する方法としては、メタルマスクスパッタにて当該4隅領域に共通透明電極24となるITO膜等が形成されないようにしても構わないし、全面に共通透明電極24となるITO膜等をスパッタした後に、4隅領域のITO膜等をエッチングによって除去しても構わない。また、共通透明電極24を除去する代わりに、4隅領域の共通透明電極24上に絶縁膜を形成する構成とすることもできる。
【0037】
また、共通透明電極24を除去する領域は図3の矩形形状に限定されず、例えば、CF基板20の周縁の共通透明電極24を帯状に除去してもよい。また、共通透明電極24をCF基板20の端部からどの程度後退させるかは任意であるが、共通透明電極24を除去した部分がシール材30を塗布する領域と重なると、シール性能が低下する恐れがあることを考慮することが好ましい。
【0038】
このように、第2の実施例では、トランスファ接続構造の断面において、共通透明電極24をCF基板20の端部から後退させた構造としているため、絶縁レベルが高くなり、導電部材32と共通透明電極24間のショート不良をより確実に、高い歩留りで防止することができ、第1の実施例における絶縁効果をさらに向上させることができる。
【実施例3】
【0039】
次に、本発明の第3の実施例に係る接続構造及び当該接続構造を備える表示装置について、図5を参照して説明する。図5は、本実施例の液晶表示装置のトランスファ接続部の構造を模式的に示す断面図である。
【0040】
前記した第1及び第2の実施例では、絶縁性樹脂31を塗布した後、導電部材32を塗布する構成としたが、この方法では、導電部材32を塗布する前に絶縁性樹脂31を加熱やUV照射によって硬化させなければならない。また、絶縁性樹脂31の塗布が不十分な場合は、共通透明電極24が露出する恐れがある。
【0041】
そこで、第3の実施例では、絶縁性樹脂31と導電部材32を2段階に分けて塗布するのではなく、導電部材32のみを塗布することによって、第2の実施例と同様の構造が得られるようにする。
【0042】
具体的に説明すると、図5に示すように、導電部材32の一例であるAgペーストは、絶縁性樹脂32a中に導電性フィラー32bであるAg粉(図では理解を容易にするために大きく表示している。)が30%〜95%程度混合されている。そこで、絶縁性樹脂32aに含有されるAg粉の大きさ(図中の「φAg」)をCF基板20とTFT基板10の間隙のサイズ(図中の「G」)より大きくする(すなわち、φAg>Gの関係にする。)ことによって、間隙部分にAg粉が染み込まないようにし、導電部材32と共通透明電極24間のショートを防止する。
【0043】
このとき、Ag粉を分散させる絶縁性樹脂32aの粘性を、CF基板20とTFT基板10の間隙に染み込む程度の粘性となるように設計することによって、間隙部分には絶縁性樹脂32aのみを染み込ませることができるため、導電部材32のトランスファ接続工程において、共通透明電極24との絶縁と上下の基板間の電極接続とを同時に実現することができる。
【0044】
なお、図5では、第2の実施例と同様に、共通透明電極24をCF基板20の端部から後退させた構造としているが、第1の実施例の図1の構造に対して、第3の実施例の導電部材32を適用することもできる。この場合、共通透明電極24の端面が導電性フィラー32bと接触する可能性はあるが、接触面積は従来構造よりも遙かに小さくなるため、共通透明電極24と導電部材32の絶縁性を従来よりも高めることはできる。
【0045】
このように、第3の実施例では、トランスファ接続構造において、CF基板20とTFT基板10の間隙に導電部材(導電性フィラー32b)が入り込まない構造としているため、第2の実施例と同様に、絶縁レベルが高くなり、導電部材32と共通透明電極24間のショート不良をより確実に、高い歩留りで防止することができる。また、第3の実施例では、導電部材32を塗布する前に、絶縁性樹脂31を塗布したり硬化させたりする必要がなくなるため、第2の実施例よりもトランスファ接続に要する時間を短縮することができる。
【0046】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成は適宜変更可能である。例えば、OC層(平坦化膜)23がない構造や、BM層(遮光層)22を金属膜、あるいは低抵抗樹脂材料で形成する構造であっても、本発明を同様に適用することができる。また、上記実施例では、CF基板20の表面(TFT基板10に対向する面)に共通透明電極24が形成されている構造について記載したが、例えば、IPS構造の液晶表示パネルや電子ペーパーディスプレイのように共通透明電極24がない構造(図6、図7参照)に対しても本発明を適用することができる。これらの構造では、共通透明電極24がないため、ショート不良は発生し得ないが、導電部材32の硬化時に生じるクラックによるトランスファ導通不良の発生を防止する効果は得られる。
【0047】
さらに、各実施例のトランスファ接続構造においては、少なくとも導電部材に対して図示しない絶縁性保護樹脂(例えばシリコーン樹脂)による被覆、あるいは絶縁テープ等によってモジュール組立時の板金部材等との絶縁性を必要に応じて確保しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、トランスファ接続構造を使用して上下の基板に設けた電極を接続する表示装置、特に、タッチパネル機能を形成して一体化したインセルタッチパネル、あるいはオンセルタッチパネルに利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 TFT基板
11 端子電極
20 CF基板
21 透明導電膜層
22 遮光膜
23 平坦化膜
24 共通透明電極
30 シール材
31 絶縁性樹脂
32 導電部材
32a 絶縁性樹脂
32b 導電性フィラー
33 信号検出用電極
40 フィルム基板
41 E−inkフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の上面に形成された第1電極と、前記第1基板の上面に貼り付けられた第2基板の上面に形成された第2電極と、を導電部材で接続する接続構造において、
前記第2基板は、前記第1基板よりも外形サイズが小さく、
前記第1電極は、前記第1基板上の前記第2基板の周囲に配置され、
前記第2基板の周縁には、前記第1基板との間に間隙が形成されており、
前記第1電極の近傍において、前記第2基板の側面の一部を覆い、前記第1基板と前記第2基板との間隙を埋めるように、絶縁性樹脂が配置され、
前記第1基板の前記第1電極から、前記絶縁性樹脂上を通って、前記第2基板の前記第2電極に至る領域に、前記導電部材が配置される、ことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
前記第2基板の前記第1基板に対向する面において、少なくとも前記第2基板の端部周縁に第3電極が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記第3電極は、前記第1電極の近傍部分が除去されている、ことを特徴とする請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記導電部材は、導電性粒子を前記絶縁性樹脂に分散させた構成であり、前記導電性粒子の粒径は、前記第1基板と前記第2基板との間隙よりも大きく設定され、前記第1基板と前記第2基板との間隙には、前記導電部材の導電性粒子は配置されず絶縁性樹脂のみが配置される、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の接続構造。
【請求項5】
前記導電部材は、導電性ペーストである、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の接続構造。
【請求項6】
前記第1基板と前記第2基板との間隙を埋めるように配置された前記絶縁性樹脂は、前記第2基板の側面から前記第1基板表面にて順テーパー形状となる、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の接続構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の前記接続構造を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−242432(P2012−242432A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109367(P2011−109367)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】