説明

接続用クランプ装置

【課題】ホース2に対する締付け力の可視化を実現することにより、検査時に締付け力の適否を外観から容易に判別することができ、締付け力の管理が容易となって適切な品質管理が可能となる接続用クランプ装置1を提供する。
【解決手段】螺子8の回転操作時、周方向W2の引張力Fがストラップバンド3に直接加わるため、引張力Fは締付け力の信頼性の高い指標となる。変位可能部13の位置ずれ量Δ1、Δ2と引張力Fや締付け力との関係を示した検査表を予め作成しておき、位置ずれ量Δ1、Δ2を目視することにより、実際の締付け力を読取ってホース2が適正な締付け力で締付けられているか否かを簡易な手段で把握することができ、管理が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状部材と金属管などとを接続する被締結物にストラップバンドを巻締める接続用クランプ装置に係り、とりわけ高い締付け力が求められる場合に好適となる接続用クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接続用クランプ装置では、被締結物であるホースに高耐久性が要求されることから、ホースの機械的強度を向上させるため、ホースのゴム硬度を高くしたり、ホースに埋設された補強糸を増やしたり、ゴムホースを樹脂ホースと一体化させた接着複合化構造にするなどしている。このため、通常のゴム製ホースと異なり、ホースに高い締付け力が必要となり、ホースへの締付けが難しくなってきている。
【0003】
接続用クランプ装置の一般的な構造は、バンドの他端部に多数のスリット歯からなる歯列部を設け、ハウジングを有する一端部と摺動可能に重ね合わせるものである。ホースへの取付け時には、ハウジング内の螺子を歯列部のスリット歯に係合させて、回転操作することによりバンドの他端部が一端部を摺動してホースを巻締める。
【0004】
この種の接続用クランプ装置は、例えば特許文献1〜3にそれぞれスクリューバンド、ホース締具およびホースクランプとして開示されているが、いずれもウォーム螺子の締付けトルクにより締付け力を管理する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平07−44962号公報
【特許文献2】実開平01−176293号公報
【特許文献3】特開2003−28366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被締結物としてのホースは、軟質材から形成されていることもあって、内外径寸法や肉厚などの製造公差が±1.0mm前後と大きくなっている。
このため、特許文献1〜3のいずれの構造でも、整備・点検などの検査時に締付け量をホースの圧縮率に換算して管理すると、締付け量にばらつきが生じ易くなり、適正な圧縮率に調整することは煩雑な操作を必要とし、圧縮率による締付け力の管理は困難となる。
【0007】
また、締付け操作時、ウォーム螺子と歯部との噛合い誤差や摩擦の変動に起因するトルクのばらつきなどが生じ、締付けトルクに対して誤差を考慮しなければならず、特に高温・高圧に晒されるターボ系配管において、締付け量による締付けトルクの管理には困難性が伴うものである。
【0008】
なかでも、ホースが適正な締付け力で締付けられているか否かは、締付け後に呈する接続用クランプ装置の外観からは判別することが難しく、使用時にホースなどの被締結物に不具合が生じて初めて分かるものである。この事情は、バンドでホースを締付ける構造に共通する問題であり、締付け力の管理を行う上での懸案事項となっている。
【0009】
特許文献1〜3のいずれでも、螺子の締付け操作に伴い、螺子が歯部に係合して変形力を与えるため、締付けトルクのばらつきなどが生じ、検査時にホースが適正な締付け力で締付けられているか否かが外観からは判別できない。この結果、接続用クランプ装置における締付け力の適正な管理が難しくなり、品質管理を実現させる上で大きな障害となっている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、被締結物に対する締付け力の可視化を実現することにより、検査時に締付け力の適否を外観から容易に判別することができ、締付け力の管理が容易となって適切な品質管理が可能となる接続用クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(請求項1について)
有端環状のストラップバンドは被締結物に巻かれるもので、一端部側に筒状のハウジングが接線方向に設けられている。螺子は、ハウジング内に回転操作により締付け可能に配設され、所定のピッチ幅で形成された螺旋歯を有する。
歯列部は、ハウジングの内部を挿通してストラップバンドの一端部側の外側に位置する他端部側に設けられており、ストラップバンドを幅方向に横切り、周方向に対して螺旋歯と噛合う角度を有し、周方向に沿って複数に並列されて螺旋歯を係合させるスリット状の歯部から成る。
螺子の回転操作時、他端部側が一端部側に対して相対的に摺動することにより、ストラップバンドが引張力により縮径して被締結物を所定の締付け力で締付ける。
ストラップバンドに、引張力により変形する変位可能部を形成し、検査時に変位可能部の変形度合を目視することにより、引張力に対応する実際の締付け力を検出する。
【0012】
請求項1では、螺子の回転操作時、周方向の引張力がストラップバンドに直接加わって被締結物に働くため、引張力は締付け力の信頼性の高い指標となる。
このため、変位可能部の変形度合と引張力や締付け力との関係を示した検査表を予め作成しておき、変位可能部の変形度合を目視して計測することにより、検査表から実際の締付け力を読取って検出し、ストラップバンドにより被締結物が適正な締付け力で締付けられているか否かを簡易な手段で容易に把握することができる。
これにより、検査時に被締結物に対する締付け力の可視化を実現し、締付け力の適否を外観から容易に判別することが可能となる。すなわち、締付け力の管理が容易となって接続用クランプ装置の適切な品質管理を簡易な手段によりコスト的に有利に実現することができる。
【0013】
(請求項2について)
螺子の回転操作時に引張力により変形する変形度合が目視可能な変形辺を変位可能部に覆い重ねるように取付けている。
請求項2では、請求項1と同様な効果を奏する上に、変位可能部に変形辺を取付けているので、変位可能部を肉取りしても変形辺が変位可能部を補強し、ストラップバンドの強度低下を防ぐことができる。
【0014】
(請求項3について)
変位可能部には、螺子の回転操作時に引張力を受けて伸長することにより変化する変色度合が目視可能な合成樹脂製部材が取付けられている。
一般に、合成樹脂製部材は引張力を受けて伸長する過程で、白濁したり薄色化したりして変色するので、請求項3では、合成樹脂製部材の変色度合を目視することにより、締付け力の適否を外観から容易に判別することができる。
【0015】
この場合、合成樹脂製部材が受ける引張力や締付け力に応じた変色度合のグラデーションを比色紙表として予め作成しておき、検査時に変色度合と引張力とを比較照合することにより、締付け力を読取ることができる。
【0016】
(請求項4について)
変位可能部には、螺子の回転操作時に引張力を受けて伸長することにより破壊強さに達し、切断による破断音を発する金属辺材が取付けられている。
【0017】
請求項4では、検査時に、金属辺材の切断を契機として破断音を聞くとともに、金属辺材の切断を目視し、被締結物に対するストラップバンドの締付け力が適正な値に達したことを把握する。金属辺材の切断を目視することに加えて、破断音を聞く構成のため、視覚および聴覚を働かせて締付け力の適否を判定することになり、その判定が格段に向上して正確で信頼性の高いものとなる。
【0018】
(請求項5について)
変位可能部は、螺子の回転操作時に基準点からの相対的な回転変位量や位置ずれ量が変形度合として目視可能な打抜きパターンを有する。
請求項5では、変位可能部が引張力により変形して打抜きパターンを歪ませる。これに伴い、基準点からの相対的な回転変位量や位置ずれ量が変形度合として生じる。
【0019】
回転変位量や位置ずれ量を引張力や締付け力に換算した検査表を予め作成しておき、変位可能部の回転変位量や位置ずれ量を目視することにより、検査表から実際の締付け力が読取れるので、被締結物が適正な締付け力で締付けられているか否かを簡易な手段で把握することができる。
【0020】
(請求項6について)
ストラップバンドの他端部側は、他端部側を折返部で二重に折り重ね合わせて一体的に固定した第1側部と第2側部から成る端折り帯部を形成し、歯列部も折り重ね合わせることにより、外側となる第1側部の歯部と内側となる第2側部の歯部とが厚み方向に対応する。
【0021】
請求項6では、ストラップバンドの他端部側を二重に折り重ね合わせて一体的に固定しているので、端折り帯部の厚みが大きくなり、他端部側を簡単な構成で補強できて被締結物に要求される高い締付け力に低コストで対応することができる。
しかも、他端部側の補強は、他端部側のみを二重に折り重ね合わせることで実現するので、ストラップバンド全体の剛性が急増することがなく、良好な柔軟性を保持することができる。
【0022】
一般に、歯列部を強化するには、ストラップバンドの歯列部に対応する延出部分を厚くすることが考えられる。ところが、ストラップバンドを製作する圧延工程で延出部分のみを厚手に設定することは困難であり、仮にそれを可能にしたとしても製作工程が複雑化し、生産性が低下してコスト的に不利となる事情がある。
この観点に鑑み、ストラップバンドの他端部側を二重に折り重ね合わせて一体的に固定することは、ストラップバンドの厚みを小さくしつつ、歯列部を有する他端部側を補強する上で優れた手段である。
【0023】
(請求項7について)
ハウジングをストラップバンドに取付ける固定機構では、ハウジングの突部をストラップバンドの第1穴部に嵌合し、舌辺部を第2穴部に差し込むため、ストラップバンドを大きな締付け力で締付けて引張力を加えても、突部や舌辺部に引張方向の大きな曲げモーメントが生じることはない。
【0024】
これにより、突部と第1穴部との間ならびに舌辺部と第2穴部との間の隙間が拡開することがなく、被締結物に対する均一な巻締め分布を確保し、被締結物からガス冷媒などの循環媒体が外部に漏出する虞がなく、初期の良好な締付け状態を長期にわたって維持することができる。
また、ストラップバンドの一端部側に第1穴部および第2穴部を形成する簡素な構造のため、コスト的に有利であるとともに、ストラップバンドの剛性が増加することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は接続用クランプ装置を示す斜視図、(b)は変位可能部を示す斜視図である(実施例1)。
【図2】(a)は接続用クランプ装置の要部を示す縦断面図、(b)は固定機構に関してストラップバンドの一端部側を示す平面図である(実施例1)。
【図3】固定機構に関連してハウジングとストラップバンドの一端部側とを示す分解斜視図である(実施例1)。
【図4】(a)、(b)は変位可能部に覆い重ねるように取付けた変形辺の斜視図である(実施例2)。
【図5】変位可能部における打抜きパターンの類型1を示す平面図である(実施例3)。
【図6】変位可能部における打抜きパターンの類型2を示す平面図である(実施例3)。
【図7】変位可能部における打抜きパターンの類型3を示す平面図である(実施例3)。
【図8】変位可能部における打抜きパターンの類型4を示す平面図である(実施例3)。
【図9】変位可能部における打抜きパターンの類型5を示す平面図である(実施例3)。
【図10】変位可能部における打抜きパターンの類型6を示す平面図である(実施例3)。
【図11】変位可能部における打抜きパターンの類型7を示す平面図である(実施例3)。
【図12】変位可能部における打抜きパターンの類型8を示す平面図である(実施例3)。
【図13】変位可能部における打抜きパターンの類型9を示す平面図である(実施例3)。
【図14】変位可能部における打抜きパターンの類型10を示す平面図である(実施例3)。
【図15】変位可能部における打抜きパターンの類型11を示す平面図である(実施例3)。
【図16】(a)は変位可能部における合成樹脂製部材を示す平面図(実施例4)、(b)は金属辺材を示す平面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の接続用クランプ装置について、ストラップバンドに設けられた変位可能部の変形度合を検査時に目視や比較表・ゲージ等で検査可能にすることにより、締付け力の適否を容易に判定できて、適切な品質管理を実現する構成を各実施例により具体化する。
【実施例】
【0027】
〔実施例1の構成〕
本発明の実施例1を図1ないし図3に基づいて説明する。
図1における接続用クランプ装置1は、被締結物であるホース2に高耐久性が要求される近年の要請に応じるべく、ホース2のゴム硬度を高くし、かつ機械的強度を上げるため、補強糸を増やすなどしている。このため、ホース2に大きな面圧の巻締め力を締付け力として必要とする場合に好適となり、例えば、過給機付きエンジン(図示せず)であって、空気の充填率を高めるため、圧搾空気を冷却するインタークーラーと吸気管(いずれも図示せず)とを接続する場合に適用される。
以後の説明では、特に断らない限り、各部材の位置および方向の特定は、各実施例を通して対応する図面の左右および上下方向に従う。
【0028】
接続用クランプ装置1は、ホース2に巻かれる有端環状のストラップバンド3を備えている。ストラップバンド3は、例えばSUS304系のステンレス鋼板などの弾性材により、所望の幅寸法と長さ寸法とを有する帯状に形成されている。
【0029】
ストラップバンド3の一端部側3Aには、筒状のハウジング4が一端部側3Aの接線方向に沿って取付けられている。ハウジング4は、丸屋根部4aと丸屋根部4aの基底部から延出する両側の取付け辺4b、4cを有する(図3参照)。
【0030】
固定機構5は、図2および図3に示すように、ハウジング4からストラップバンド3にかけて設けられており、ハウジング4の取付け辺4b、4cをストラップバンド3の一端部側3Aに圧接状態に固定するものである。
この固定機構5において、ハウジング4の取付け辺4b、4cである底部4dから外方に突出する突部6が、例えばコイニングなどのハーフシャー加工Qにより形成されている。
【0031】
図3に示すように、底部4dの突部6から遠距離側となる遠端部4hには、ストラップバンド3に対して僅かに傾斜する舌辺部7が延出形成されている。また、底部4dの突部6から近距離側となる近端部4kには延長辺部4eが形成されている。舌辺部7は、挿通辺部として後述する螺子8の軸部8b側に位置し、一端部側3Aの曲率に応じて緩やかな弧状に湾曲している。
【0032】
ストラップバンド3の一端部側3Aには、突部6を嵌合して位置決めする第1穴部9が設けられているとともに、切起し辺部10aを押し上げるようにして舌辺部7が差し込まれる第2穴部10が切起しにより形成されている{図3参照}。
底部4dの舌辺部7とは反対側となる延長辺部4eは、図2(a)の記号Gで示すように、プロジェクション溶接、抵抗溶接、アーク溶接、プラズマ溶接、シーム溶接あるいはTIG溶接などの取付け手段により一端部側3Aに固定されている。
【0033】
複数の歯部11aから成る歯列部11は、ハウジング4の内底部を挿通してストラップバンド3の一端部側3Aの外部に位置する他端部側3Bに設けられている。歯部11aは、スリット状を成してストラップバンド3を幅方向W1に所定の傾斜角度をもって横切り、周方向W2に沿って並列配置されている{図1参照}。すなわち、歯部11aは、ストラップバンド3の周方向W2に対して螺子8の螺旋歯8sと噛合う角度を有している。
【0034】
とりわけ、ストラップバンド3の他端部側3Bは、図2(a)に示すように、他端部側3Bを折返部3Eを中心にして二重に折り重ね合わせて一体的に固定した第1側部3aと第2側部3bから成る端折り帯部3Cを形成している。
他端部側3Bを折り重ねることに伴い、歯列部11も折り重なり合って一体的に固定され、第1側部3aの歯部11aと第2側部3bの歯部11aとは、厚み方向に連通状態で対向する。これにより、端折り帯部3Cの第2側部3bが、ストラップバンド3の一端部側3A上に摺接するように位置する。
【0035】
第1側部3aを第2側部3bと一体的に固定するために、図2(a)に示す固定手段3Fが設けられている。固定手段3Fにおいては、第1側部3aの先端部に、例えばバーリング加工により形成した筒状部3cを設け、第2側部3bに取付け穴部3dを筒状部3cに対応させて形成している。筒状部3cを取付け穴部3dに圧入、あるいはかしめにより取付けて、第1側部3aと第2側部3bとを一体化する。
【0036】
なお、一端部側3Aおよび他端部側3Bの文言については、以後断らない限り、ストラップバンド3を省いてそのまま用いる。
【0037】
螺子8は、図2(a)に示すように、ハウジング4内に回転操作可能に配設され、歯列部11の歯部11aに対応する所定のピッチ幅Hで形成された螺旋歯8sを有する。螺子8の螺旋歯8sは、第1側部3aの歯部11aから第2側部3bの歯部11aにわたって係合している。
【0038】
ハウジング4の一端開口部4fは、環状を成す有端フランジ部12を一体に形成し、他端開口部に曲成リング部4gを一体に形成している。ハウジング4に対する螺子8の配設時、頭部8aの基端部が有端フランジ部12の内周縁部12Aに支持され、軸部8bの先端が曲成リング部4gに挿入されて支持される。
【0039】
さて、図1(a)、(b)に示すように、ストラップバンド3のホース2と接触する部分には、縦型の鼓状に打抜かれた打抜き部13Aを有する変位可能部13が形成されている。打抜き部13Aにおける上端13aおよび下端13bを幅広にし、左右両側の中間辺部を幅方向W1に窄む幅狭な括れ部13cとしている。
変位可能部13は、螺子8の締付け操作時に周方向W2の引張力Fを受けて変位し、変位可能部13の変形度合を目視や比較表・ゲージ等で検査可能にすることにより、後述するように引張力Fに対応する実際の締付け力を検出する。
【0040】
ホース2に対するストラップバンド3の締付け工程において、螺子8を図1(a)の矢印Y方向に回転操作すると、螺旋歯8sが歯部11aの内周縁部を押圧摺動し、他端部側3Bが一端部側3Aに対して図1(a)の矢印Z方向に相対的に摺動することになり、ストラップバンド3が引張力Fを受けて縮径してホース2を締付ける。
ストラップバンド3の縮径変位に伴い、切起し辺部10aが他端部側3Bにより押し下げられて舌辺部7を押圧し、一端部側3Aに対する取付け辺4b、4cの圧接状態を強化して締付け分布の均等化を促す。
【0041】
ストラップバンド3が引張力Fを受けることに伴い、変位可能部13も引張力Fを受け、周方向W2に沿って変形して伸長する。
これにより、図1(b)に示すように、打抜き部13Aの括れ部13cが外側方向の拡開力Exを受け、括れ部13cの外側部13dが幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ1(変形度合)として把握し、括れ部13cの内側部13eが幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ2(変形度合)として把握する。
【0042】
〔実施例1の効果〕
実施例1では、螺子8の回転操作時、周方向W2の引張力Fがストラップバンド3に直接加わってホース2に働くため、引張力Fは締付け力の信頼性の高い指標となる。
【0043】
このため、変位可能部13の位置ずれ量Δ1、Δ2と引張力Fや締付け力との関係を示した検査表を予め作成しておき、位置ずれ量Δ1、Δ2を目視又はゲージ比較で検査可能にすることにより、検査表から実際の締付け力を読取って検出し、ストラップバンド3によりホース2が適正な締付け力で締付けられているか否かを簡易な手段で容易に把握することができる。
【0044】
これにより、検査時にホース2に対する締付け力の可視化を実現し、締付け力の適否を外観から容易に判別することが可能となる。すなわち、締付け力の管理が容易となって接続用クランプ装置1の適切な品質管理を簡易な手段によりコスト的に有利に実現することができる。
なお、変位可能部13の括れ部13cが拡大し、幅方向W1の寸法がストラップバンド3の幅寸法に最も近接することを目視した時点で、適正な締付け力が得られたと判定してもよい。
検査時に締付け力が不適と判定された場合、その殆どはストラップバンド3の締付け不足に起因するため、螺子8の増し締め操作により、締付け不足を解消して適正な締付け力に調整することができる。
【0045】
ストラップバンド3においては、他端部側3Bを二重に折り重ね合わせて一体的に固定しているので、端折り帯部3Cの厚みが大きくなり、他端部側3Bを簡単な構成で補強できる。
すなわち、他端部側3Bの補強は、他端部側3Bのみを二重に折り重ね合わせて一体的に固定することで実現するので、ストラップバンド3全体の剛性が急増することがなく、良好な柔軟性を保持することができる。このため、ストラップバンド3のホース2を締付ける部分は、薄くて優れた柔軟性を有しながらも、螺子8と歯部11aとが係合して引張力や捩り力を受ける端折り帯部3Cを所要の強度に設定することができる。
【0046】
ここで、ストラップバンド3の歯列部11に対応する帯長部分を厚くして歯列部11を強化することが考えられる。ところが、圧延工程でストラップバンド3の帯長部分のみを厚手に設定することは困難であり、仮にそれを可能にしたとしても製作工程が複雑化し、生産性が低下してコスト的に不利となる事情がある。
この観点に鑑み、ストラップバンド3の他端部側3Bを二重に折り重ね合わせて一体的に固定することは、ストラップバンド3の厚みを小さくしつつ、歯列部11を有する他端部側3Bを補強する上で優れた手段である。
【0047】
また、ハウジング4をストラップバンド3に取付ける固定機構5では、ハウジング4の突部6をストラップバンド3の第1穴部9に嵌合し、舌辺部7を第2穴部10に差し込むため、ストラップバンド3を大きな締付け力で締付けて引張力を加えても、突部6や舌辺部7に引張方向の大きな曲げモーメントが生じることはない。
【0048】
これにより、突部6と第1穴部9との間ならびに舌辺部7と第2穴部10との間の隙間が拡開することがなく、ホース2に対する均一な巻締め分布を確保し、ホース2からガス冷媒などの循環媒体が外部に漏出する虞がなく、初期の良好な締付け状態を長期にわたって維持することができる。
【0049】
〔実施例2〕
図4は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、矩形の変形辺14を変位可能部13に覆い重ねるように取付けたことである。
変形辺14は、図4(a)に示すように、径方向が幅方向W1に沿う弧状部14aを左右に有する打抜き部15を有し、上端15aおよび下端15bを変位可能部13に溶接Gjにより固定している。変形辺14の左右の中間辺部を幅方向W1に沿って外側に張り出る膨出辺部15cとしている。
【0050】
ストラップバンド3が引張力Fを受けることに伴い、変位可能部13および変形辺14が引張力Fを受け、周方向W2に沿って変形して伸長する。
これにより、変位可能部13は、図1(b)に示す実施例1と同様に変形し、打抜き部15の膨出辺部15cが、図4(a)に示すように、幅方向W1に沿って内側への引込力Eyを受ける。
これにより、図4(b)に示すように、膨出辺部15cの外側部15dが変形度合として幅方向W1に位置ずれ量Δ3だけ縮小し、膨出辺部15cの内側部15eが変形度合として幅方向W1に位置ずれ量Δ4だけ縮小する。
【0051】
このため、変位可能部13の位置ずれ量Δ1、Δ2に加えて、変形辺14の変形度合としての位置ずれ量Δ3、Δ4と引張力Fや締付け力との関係を示した検査表を予め作成しておき、位置ずれ量Δ1〜Δ4を変形度合として目視又はゲージ比較で計測することにより、検査表から実際の締付け力を読取って検出し、ホース2が適正な締付け力で締付けられているか否かを簡易な手段で容易に判定することができる。
【0052】
実施例2では、実施例1と同様な効果を奏する上に、変位可能部13に変形辺14を取付けているので、変位可能部13を打抜き部13Aにより肉取りしても変形辺14が変位可能部13を補強し、ストラップバンド3の強度低下を防ぐことができる。
なお、変位可能部13の括れ部13cが幅方向W1に拡大し、膨出辺部15cが幅方向W1に縮小して括れ部13cの外側部13dと膨出辺部15cの外側部15dとが最も近接したことを目視した時点で、適正な締付け力が得られたと判定してもよい。
【0053】
〔実施例3〕
図5ないし図15は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例1と異なるところは、変位可能部13に目視可能な打抜きパターンPを設けたことである。
打抜きパターンPでは、螺子8の回転操作時に、打抜きパターンPが変形して歪むため、この変形による歪みを変位可能部13における基準点からの相対的な位置ずれ量として捉える。
類型1〜類型11における引張力Fと位置ずれ量については、予め対応関係を設定した対比表を作成しておき、位置ずれ量が複数ある場合、締付け力の適否を判定するにあたっては、位置ずれ量を単独で、あるいは組合わせて比較照合してもよい。
【0054】
〔類型1〕
打抜きパターンPの類型1では、図5に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P1を形成し、括れ部P1の左右には略コ字状の打抜き穴16a、16bが対称となるように形成され、打抜き穴16a、16bの間に横長穴16cが設けられている。
基準点として括れ部P1を設定し、螺子8の回転操作時、変位可能部13が引張力Fを受けて周方向W2に伸長変形するとともに、外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P1の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ5として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
なお、変位可能部13において、斜線を付した細長領域Rmは、括れ部P1の厚みを示す。括れ部P1の厚みを示したのは、その厚みによって括れ部P1の伸びが異なるからである。
【0055】
〔類型2〕
打抜きパターンPの類型2では、図6に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P2を基準点として設定し、括れ部P2の左右には、打抜き穴16d、16eが中心Opに対して点対称となるように形成されている。打抜き穴16d、16e間には、クランク形の異形穴16fが幅方向W1および周方向W2に対して傾斜状態に設けられている。
螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P2の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ6として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0056】
〔類型3〕
打抜きパターンPの類型3では、図7に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P3を形成し、左側に靴形の打抜き穴17a、17bを上下に形成し、打抜き穴17a、17bの間に縦長穴17cを設けている。変位可能部13の右側にも靴形の打抜き穴17d、17eを上下に形成し、打抜き穴17d、17eの間に縦長穴17fを設けている。
【0057】
打抜き穴17d、17eの間および打抜き穴17a、17bの間には、括れ部P3の延長線を横切るように横長穴17gが設けられている。基準点として括れ部P3を設定し、螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P3の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ7として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0058】
〔類型4〕
打抜きパターンPの類型4では、図8に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P4を形成している。括れ部P4の左右には略コ字状の打抜き穴18a、18bが対称となるように形成され、打抜き穴18a、18bの間に横長穴18cが設けられている。
基準点として打抜き穴18a、18b間に生じる最短連結島P5、P6をそれぞれ設定している。
螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P4の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ8として把握するとともに、最短連結島P5、P6の周方向W2に生じる伸びを位置ずれ量Δ9、Δ10として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0059】
〔類型5〕
打抜きパターンPの類型5では、図9に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P7を形成している。括れ部P7の上下には、横長な打抜き穴18d、18eが対称となるように形成され、打抜き穴18d、18eの間に横長穴18f、18gが左右に設けられている。横長穴18f、18gの中央部は、互いに近接する弧状部18F、18Gを有する。基準点として弧状部18F、18G間に存する最短連結島P8を設定している。
螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P7の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ11として把握するとともに、最短連結島P8の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ12として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0060】
〔類型6〕
打抜きパターンPの類型6では、図10に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P9を形成している。括れ部P9の上下には鍵形の打抜き穴19a、19bが対称となるように形成されている。打抜き穴19a、19bは左端部に弧状の湾曲部19c、19dをそれぞれ有している。湾曲部19c、19d間には、縦長穴19eが設けられている。基準点として縦長穴19eが有する幅間隔P10を設定している。
螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P9の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ13として把握するとともに、幅間隔P10の周方向W2に生じる伸びを位置ずれ量Δ14として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0061】
〔類型7〕
打抜きパターンPの類型7では、図11に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P11を形成している。
括れ部P11の上下には、略横コ字状の打抜き穴19f、19gが対称となるように形成され、打抜き穴19f、19gの間に三角穴19h、19iが左右に設けられている。基準点として三角穴19f、19gの斜辺19j、19k間に生じる周方向W2の隣接間隔P12を設定している。
螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P11の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ15として把握するとともに、隣接間隔P12に生じる時計回り方向の変位を回転変位量Δφとして把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
【0062】
〔類型8〕
打抜きパターンPの類型8では、図12に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P13を形成し、括れ部P13の上下に横長な打抜き穴20a、20bが対称となるように形成されている。打抜き穴20aの左右端部は、弧状を成す湾曲部20c、20dを形成し、打抜き穴20bの左右端部も、弧状を成す湾曲部20e、20fを形成している。湾曲部20c、20e間には、縦長穴20gが設けられ、湾曲部20d、20f間には、三隅を面取りした三角穴20hが設けられている。
打抜き穴20a、20b間に位置し、括れ部P13に沿う中間点P14を基準点としている。螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P13の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ17として把握するとともに、中間点P14の周方向W2に生じる伸びを位置ずれ量Δ18として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
位置ずれ量Δ18が中間点P14の左側に生じるのは、引張力Fの作用時に縦長穴20g側が三角穴20h側よりも変形し易いためである。
【0063】
〔類型9〕
打抜きパターンPの類型9では、図13に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P15を形成し、括れ部P15の上下に横長な打抜き穴21a、21bが形成されている。打抜き穴21aの右端部には突状の円弧部21cが設けられ、打抜き穴21bの右端部には円弧部21cを受ける径大な湾曲部21dが形成されている。
打抜き穴21a、21b間に位置し、括れ部P15の近辺に沿う中間点P16を基準点としている。螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P15の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ19として把握するとともに、中間点P16の周方向W2に生じる伸びを位置ずれ量Δ20として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
位置ずれ量Δ20が中間点P16の左側に生じるのは、引張力Fの作用時に円弧部21cおよび湾曲部21dが打抜き穴21a、21bの他の部分に先行して周方向W2に変形し始めることに起因する。
【0064】
〔類型10〕
打抜きパターンPの類型10では、図14に示すように、変位可能部13の中央に括れ部P17を形成し、括れ部P17の上下に横長な打抜き穴22a、22bが形成されている。打抜き穴21a、22bの各右端部には、湾曲部22c、22dが設けられている。湾曲部22c、22d間には、縦長穴22eが形成されている。
【0065】
括れ部P17に沿って打抜き穴21a、21b間に位置する中間点P18を基準点としている。螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが働くことにより、二点鎖線で示すように、括れ部P17の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ21として把握するとともに、中間点P18の周方向W2に生じる伸びを位置ずれ量Δ22として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
中間点P18の位置ずれ量Δ22が右側に生じるのは、引張力Fの作用時に縦長穴22eが変形するところが大きいと考えられる。
【0066】
〔類型11〕
図15は類型11の打抜きパターンPであり、例えば図6の類型2において、クランク形の異形穴16fに代えて、略平行四辺形状の横穴16Fを設け、打抜き穴16d、16eを省略したものである。横穴16Fの互いに対向する長辺部は、括れ部P2に沿って中心部Qp方向へ緩やかに湾曲する湾曲辺部16Gを形成している。
【0067】
類型11では、横穴16Fが括れ部P2を横切って周方向W2に延びていることから、螺子8の回転操作時、変位可能部13に引張力Fおよび外側方向の拡開力Exが周方向W2に働き、二点鎖線で示すように、括れ部P2の幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ23として把握するとともに、湾曲辺部16Gの幅方向W1に生じる伸びを位置ずれ量Δ24として把握する(打抜きパターンPの変形度合)。
なお、上記の位置ずれ量Δ1〜Δ15(図1、図4、図5〜図11)、位置ずれ量Δ17〜Δ24(図12〜図15)および回転変位量Δφ(図11)については、閲覧上の便宜から実際の寸法よりも大きくなるように誇張して描いている。
類型4の位置ずれ量Δ9、Δ10(図8)、類型5の位置ずれ量Δ12(図9)および類型6の位置ずれ量Δ14(図10)については、伸長前の全長を示すが、便宜上の観点から伸長後の伸びだけを示した。また、図5〜図15及び後述する図16は、全て変形前の状態を示すが、便宜上、変形後に伸長する形状を省略し、幅方向W1あるいは周方向W2の変形のみ二点鎖線で表示した。
【0068】
〔実施例4〕
図16(a)は本発明の実施例4を示す。実施例4が実施例1と異なるところは、変位可能部13に引張試験片状の合成樹脂製部材23を設けたことである。
変位可能部13は、中央に括れ部P19を形成し、中央から左右にわたって雲形の打抜き穴23dを打抜きパターンPとして設けている。括れ部P19の左右には、所定の離間長T1だけ周方向W2に離れたピン25、26が取付けられている。
【0069】
合成樹脂製部材23は、例えばポリアセタールといったエンジニアリング・プラスチックにより形成され、左右端部に長穴23a、23bを有する耳部23A、23Bと耳部23A、23B間を一体に連結する帯板状の軸部23Cから構成されている。合成樹脂製部材23は左端の長穴23aをピン25に嵌め込み、右端の長穴23bをピン26に嵌め込み、長穴23a、23bにおける横幅S1の範囲内で周方向W2に摺動可能に設けられている。
この時、ピン25、26の直径は、長穴23a、23bの縦幅S2よりも若干大きく設定されており、ピン25、26は、長穴23a、23bに耳部23A、23Bを弾性変形させながら嵌合により位置保持される。
【0070】
螺子8の回転操作時、ストラップバンド3に引張力Fが働くため、合成樹脂製部材23は変位可能部13とともに引張力Fを受ける。これにより、左のピン25が長穴23aの左端を押圧し、右のピン26が長穴23bの右端を押圧して合成樹脂製部材23の軸部23Cに引張力Fが加わる。
引張力Fを受けた軸部23Cは周方向W2に伸長して、離間長T1が判定長T2に変化し、点の集合群Psとして示すように、白濁したり薄色化したりして変色する。この過程で軸部23Cの変色度合について目視や比較表で判定をすることにより、締付け力の適否を外観から容易に判別することができる。
【0071】
軸部23Cの判別にあたって、合成樹脂製部材23の軸部23Cが受ける引張力Fや締付け力に応じた変色度合のグラデーションを比色紙表として予め作成しておき、検査時に変色度合と引張力Fとを比較照合することにより、締付け力を読取ることができる。
なお、合成樹脂製部材23には一般のプラスチック材料が適用でき、ポリアセタールに代わって、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)あるいはシンジオタクチックポリスチレン(SPS)などのプラスチック材料を適用してもよい。
なお、実施例4では、長穴23a、23bを合成樹脂製部材23に設け、ピン25、26を変位可能部13に取付けたが、これとは逆に長穴23a、23bを変位可能部13に設け、ピン25、26を合成樹脂製部材23に取付けてもよい。ピン25、26を変位可能部13あるいは合成樹脂製部材23に一体的に形成してもよい。
【0072】
〔実施例5〕
図16(b)は本発明の実施例5を示す。実施例5が実施例4と異なるところは、合成樹脂製部材23に代わって、中央部に幅狭部24Dを有する金属辺材24を設けたことである。
金属辺材24は鉄、鋼、アルミニウム、真鍮あるいは銅などにより形成されており、左右端部に長穴24a、24bを有する耳部24A、24Bと耳部24A、24B間を一体に連結する軸部24Cから構成されている。金属辺材24は、左端の長穴24aをピン25に嵌め込み、右端の長穴24bをピン26に嵌め込み、長穴24a、24bにおける横幅S1の範囲内で周方向W2に摺動可能に設けられている。
【0073】
螺子8の回転操作時、ストラップバンド3に引張力Fが働いて、変位可能部13とともに、金属辺材24が引張力Fを受けることになり、引張力Fは金属辺材24の幅狭部24Dに集中的に作用する。
この場合、幅狭部24Dは、例えば幅寸法を調整することにより、破壊強さを引張力F、すなわち適正な締付け力に応じた大きさに設定している。引張力Fは、幅狭部24Dの降伏点を超えて破壊強さに応じた大きさとなり、一点鎖線で示すように幅狭部24Dを切断して金属辺材24を左右に分断して破断音が発生する。
【0074】
検査時には、幅狭部24Dの切断を契機として破断音を聞くとともに、幅狭部24Dの切断を目視し、ホース2に対するストラップバンド3の締付け力が適正な値に達したことを把握する。幅狭部24Dの切断を目視することに加えて、破断音を聞く構成のため、視覚および聴覚を働かせて締付け力の適否を判定することになり、その判定が格段に向上して正確で信頼性の高いものとなる。なお、金属辺材24の軸部24Cは、幅狭部24Dを有しない一直線上の金属線であってもよい。
なお、実施例5では、長穴24a、24bを金属辺材24に設け、ピン25、26を変位可能部13に取付けたが、これとは逆に長穴24a、24bを変位可能部13に設け、ピン25、26を金属辺材24に取付けてもよい。ピン25、26を変位可能部13あるいは金属辺材24に一体的に形成してもよい。
【0075】
(変形例)
(a)実施例1における検査時とは、接続用クランプ装置1に対するホース2の組付け時に限らず、ホース2に組付け後に行う定期的な整備や点検・維持も含む。
(b)実施例1におけるストラップバンド3は、SUS304系のステンレス鋼板に代わって、強化合成樹脂、銅板または各種の金属合金により形成してもよい。ハウジング4は円筒状に限らず、三角筒状、四角筒状、五角筒状あるいは多角筒状にしてもよい。
(c)ハウジング4を一端部側3Aの接線方向に取付けたが、幾何学的な正確さは必要でなく、接線方向に対する多少のずれは許容範囲であり、実用上の観点から接線方向であればよい。
【0076】
(d)固定機構5において、突部6を嵌合して位置決めする第1穴部9は、内外に貫通しない窪みとしての底付穴であってもよい。突部6および第1穴部9は互いに同一の形状である限り矩形状の他、三角形、円形、方形あるいは五角形、六角形あるいは多角形であってもよい。
(e)実施例1〜5における固定機構5を省略し、各種の溶接(抵抗溶接、プロジェクション溶接、アーク溶接、TIG溶接、シーム溶接、プラズマ溶接)などの取付手段を用いて端折り帯部3Cを一端部側3Aに固定してもよい。
【0077】
(f)実施例1〜5において、螺子8の軸部8bを鼓状に形成し、軸部8bをストラップバンド3の周方向に沿い易くするとともに、歯部11aに対する螺旋歯8sの係合数を増やしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
接続用クランプ装置のストラップバンドでは、螺子の回転操作時、周方向の引張力がストラップバンドに直接加わって被締結物に働くため、引張力が締付け力の信頼性の高い指標となる。これにより、被締結物に対する締付け力の可視化が実現し、検査時に締付け力の適否を外観から容易に判別することができ、締付け力の管理が容易となって接続用クランプ装置の適切な品質管理が可能となる。締付け力の管理が簡易な手段で実現することによって関係業者の需要が喚起されて、関連部品などの流通を介して機械業界に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 接続用クランプ装置
2 ホース(被締結物)
3 ストラップバンド
3a 第1側部
3b 第2側部
3A ストラップバンドの一端部側
3B ストラップバンドの他端部側
3C 端折り帯部
3E 折返部
3F 固定手段
4 ハウジング
4b、4c ハウジングの取付け辺
4d ハウジングの底部
4f ハウジングの一端開口部
5 固定機構
6 突部
7 舌辺部
8 螺子
8a 螺子の頭部
8b 螺子の軸部
8s 螺旋歯
9 第1穴部
10 第2穴部
10a 切起し辺部
11 歯列部
11a 歯部
13 変位可能部
14 変形辺
23 合成樹脂製部材
24 金属辺材
24D 幅狭部
Δ1〜Δ15、Δ17〜Δ24 位置ずれ量(変形度合)
Δφ 回転変位量(変形度合)
Ex 拡開力
F 引張力
P1〜P4、P7、P9、P11 括れ部(基準点)
P13、P15、P17、P19 括れ部(基準点)
P5、P6、P8 最短連結島(基準点)
P10 幅間隔(基準点)
P12 隣接間隔(基準点)
P14、P16、P18 中間点(基準点)
H 螺旋歯のピッチ幅
W1 ストラップバンドの幅方向
W2 ストラップバンドの周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側で前記一端部側の接線方向に筒状のハウジングを設けて被締結物に巻かれる有端環状のストラップバンドと、
前記ハウジング内に回転操作により締付け可能に配設され、所定のピッチ幅で形成された螺旋歯を有する螺子と、
前記ハウジングの内部を挿通して前記ストラップバンドの前記一端部側の外側に位置する他端部側に設けられ、前記ストラップバンドを幅方向に横切り、周方向に対して前記螺旋歯と噛合う角度を有し、周方向に沿って複数に並列されて前記螺旋歯を係合させるスリット状の歯部から成る歯列部とを備え、
前記螺子の回転操作時、前記他端部側が前記一端部側に対して相対的に摺動することにより、前記ストラップバンドが引張力により縮径して前記被締結物を所定の締付け力で締付ける接続用クランプ装置において、
前記ストラップバンドに、前記引張力により変形する変位可能部を形成し、検査時に前記変位可能部の変形度合を目視することにより、前記引張力に対応する実際の締付け力を検出することを特徴とする接続用クランプ装置。
【請求項2】
前記螺子の回転操作時に前記引張力により変形する変形度合が目視可能な変形辺を前記変位可能部に覆い重ねるように取付けていることを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項3】
前記変位可能部には、前記螺子の回転操作時に前記引張力を受けて伸長することにより変化する変色度合が目視可能な合成樹脂製部材が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項4】
前記変位可能部には、前記螺子の回転操作時に前記引張力を受けて伸長することにより破壊強さに達し、切断による破断音を発する金属辺材が取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項5】
前記変位可能部は、前記螺子の回転操作時に基準点からの相対的な回転変位量や位置ずれ量が前記変形度合として目視可能な打抜きパターンを有することを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項6】
前記ストラップバンドの前記他端部側は、前記他端部側を折返部で二重に折り重ね合わせて一体的に固定した第1側部と第2側部から成る端折り帯部を形成し、前記歯列部も折り重ね合わせることにより、外側となる前記第1側部の前記歯部と内側となる前記第2側部の前記歯部とが厚み方向に対応することを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項7】
前記ハウジングから前記ストラップバンドにかけて設けられて前記ハウジングを前記ストラップバンドの前記一端部側に取付けるための固定機構は、
前記ハウジングの底部から裏面側に突出するように形成された突部と、
前記底部に形成されて前記ストラップバンドの周方向に沿って延設された舌辺部と、
前記ストラップバンドの前記一端部側に設けられて、前記突部を嵌合して位置決めする第1穴部と前記舌辺部が差し込まれる第2穴部とを有することを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−163173(P2012−163173A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24882(P2011−24882)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(592243357)株式会社高木製作所 (9)
【Fターム(参考)】