説明

接続端子

【課題】樹脂成型時にあって、接続端子内への溶融樹脂の流れ込みを金型によって防止する必要がなく、金型の位置決め管理が容易である接続端子を提供する。
【解決手段】相手端子が挿入される筒部3を有する端子接続部2と、電線Wが接続された電線接続部10と、端子接続部2と電線接続部10の間を連結する首部20とを備え、電線接続部10と電線Wの接続箇所が樹脂被覆部30によって被覆された接続端子1であって、端子接続部2には、筒部3内の首部20側を閉塞する閉塞壁5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続部と電線の接続箇所を樹脂被覆部によって被覆した接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線接続部と電線の接続箇所を樹脂被覆部によって被覆した接続端子が従来より種々提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。かかる接続端子の一従来例が図6〜図8に示されている。
【0003】
図6及び図7に示すように、接続端子100は、相手端子が接続される端子接続部102と、電線(図示せず)が接続された電線接続部103と、端子接続部102と電線接続部110の間を連結する首部120とを備えている。端子接続部102、電線接続部110及び首部120は、1枚の導電性金属板を折り曲げることによって形成されている。
【0004】
端子接続部101は、四角形の筒形状である。この筒形状の内部に相手端子が挿入される。電線接続部110は、U字状の囲み壁111を有する。この囲み壁111の両側端の上端面より一対の第1電線加締め部113と第2電線加締め部114が突設されている。一対の第1電線加締め部113で電線Wの芯線150が加締めによって圧着され、第2電線加締め部114で電線Wの被覆外皮151で覆われた箇所が加締めによって圧着されている。
【0005】
首部120は、底面壁121とこの底面壁121の両側端より立設された一対の側面壁122とを有する。底面壁121と一対の側面壁122は、端子接続部101と電線接続部110の各壁より連続して形成されている。一対の側面壁122は、端子接続部101から電線接続部110に向かって互いの間隔を徐々に狭くするよう傾斜している。首部120によって、端子接続部101の幅寸法が電線接続部110の幅寸法まで絞られている。
【0006】
電線接続部110と電線Wの接続箇所は、樹脂被覆部130によって被われている。樹脂被覆部130は、樹脂の射出成形によって作製される。
【0007】
つまり、図8に示すように、電線Wが接続された接続端子100を樹脂成型用の金型140にセットする。金型140は、下金型141と上金型(図示せず)からなる。図8では、接続端子100を下金型141にセットした状態を示す。次に、下金型141と上金型(図示せず)内のキャビティ141a,(図示せず)に樹脂を流し込み、流し込んだ樹脂が固化することによって樹脂被覆部130が作製される。
【0008】
ここで、樹脂成型の際には、首部120内には金型140の樹脂堰止め用駒部142(図7にて仮想線で示す)が入り込む。樹脂堰止め用駒部142の両側面は、一対の側面壁122に対応する傾斜面に形成されている。樹脂堰止め用駒部142は、溶融樹脂が電線接続部110側から端子接続部102側に向かって流れ込まないように堰き止める。
【0009】
上記従来例によれば、例えば、接続端子100と電線Wの芯線150とが異なる金属材質である場合(例えば、銅製の接続端子1とアルミニュウム製の電線W)、双方の接続箇所に水等が入り込むと双方の電位差で電流が流れて腐食が発生するため、樹脂被覆部130によってこのような腐食を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−97704号公報
【特許文献2】特開2010−135121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来例の接続端子100では、首部120の一対の側面壁122が傾斜しているため、図9(a)に示すように、首部120の所定位置より端子接続部101側にずれた位置に樹脂堰止め用駒部142がセットされると、樹脂堰止め用駒部142と各側面壁122の間に隙間dができ、溶融樹脂を確実に堰き止めることができない。端子接続部101内に溶融樹脂が流れ込むと、接触不良の原因となるおそれがある。
【0012】
図9(b)に示すように、首部104の所定位置より電線接続部103側にずれた位置に樹脂堰止め用駒部142がセットされると、樹脂堰止め用駒部142が各側面壁122の上端面に突き当たり、樹脂堰止め用駒部142をセットすることができない。その際に、樹脂堰止め用駒部122や側面壁104bが損傷等するおそれがある。従って、樹脂堰止め用駒部142を高精度に位置決め管理する必要があるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、樹脂成型時にあって、端子接続部内への溶融樹脂の流れ込みを金型によって防止する必要がなく、金型の位置決め管理が容易である接続端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、相手端子が挿入される筒部を有する端子接続部と、電線が接続された電線接続部と、端子接続部と電線接続部の間を連結する首部とを備え、電線接続部と電線の接続箇所が樹脂被覆部によって被覆された接続端子であって、端子接続部には、筒部内の首部側を閉塞する閉塞壁が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂被覆部の樹脂成型時にあって、溶融樹脂の端子接続部の筒部内への流れ込みが閉塞壁によって阻止される。従って、樹脂成型時にあって、端子接続部内への溶融樹脂の流れ込みを金型によって防止する必要がなく、金型の位置決め管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示し、接続端子の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は接続端子の側面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は樹脂被覆する前の接続端子の前面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、接続端子の展開図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、樹脂成型用の金型に接続端子をセットした状態を示す断面図である。
【図6】従来例を示し、接続端子の斜視図である。
【図7】従来例を示し、電線接続前の接続端子本体の平面図である。
【図8】従来例を示し、樹脂成型用の下金型に接続端子にセットした状態を示す平面図である。
【図9】従来例を示し、(a)は樹脂堰止め用駒部が端子接続部側に位置ずれした場合を示す平面図、(b)は樹脂堰止め用駒部が電線接続部側に位置ずれした場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示す。図1及び図2に示すように、接続端子1は、相手端子(図示せず)が接続される端子接続部2と、電線Wが接続された電線接続部10と、端子接続部2と電線接続部10の間を連結する首部20とを備えている。端子接続部2、電線接続部10及び首部20は、図4に示す形態の導電性金属板である銅合金製の板を折り曲げることによって形成される。
【0019】
端子接続部2は、四角形の筒部3と、この筒部3内に配置された弾性接触片部4(図3(a)、(b)に示す)とを有する。筒部3は、底面壁3aと、底面壁3aの両側端で上方に向かってそれぞれ折り曲げられた一対の側面壁3bと、各側面壁3bの両上端より互いに折り重なるよう水平方向に向かって折り曲げられた2枚の上面壁3cとから構成されている。又、筒部3には、一方の上面壁3cの後端より延設された閉塞壁5が一体に設けられている。閉塞壁5は、一方の上面壁3cの後端で下方に向かって折り曲げられている。閉塞壁5は、筒部3内の首部20側を閉塞している。
【0020】
筒部3に相手端子が挿入されると、相手端子が弾性接触片部4の撓み復帰力によって密着され、電気的に接続される。
【0021】
電線接続部10は、U字状の囲み壁11を有する。この囲み壁11の両側端の上端面からは、一対の第1電線加締め部13と一対の第2電線加締め部14が突設されている。一対の第1電線加締め部13で電線Wの露出された芯線40が加締めによって圧着されている。一対の第2電線加締め部14で電線Wの絶縁外皮41で覆われた箇所が加締めによって圧着されている。電線Wの芯線40は、アルミニュウム材である。
【0022】
首部20は、底面壁21とこの底面壁21の両側端より立設された一対の側面壁22とを有する。底面壁21と一対の側面壁22は、端子接続部2と電線接続部10の各壁より連続して形成されている。
【0023】
一対の側面壁22は、互いの間隔が同じである平行壁部22aと、互いの間隔が変化する傾斜壁部22bとから構成されている。一対の傾斜壁部22bによって、端子接続部101の幅寸法が電線接続部110の幅寸法まで絞られている。
【0024】
電線接続部10と電線Wの接続箇所は、樹脂被覆部30によって被われている。樹脂被覆部30は、電線接続部10と電線Wの端末部の外周を完全に覆っている。樹脂被覆部30によって、電線接続部10と電線Wの接続箇所に水等が浸入することに起因する腐食が防止される。樹脂被覆部30は、下記するように、金型60による樹脂射出成形によって作製される。
【0025】
次に、接続端子1の作製手順を説明する。先ず、図4に示す形態の銅合金製の板を作り、これをプレス成形等によって接続端子1を作製する。次に、接続端子1と電線Wの端末部を接続する電線接続工程を行う。電線接続工程は、図示しない電線圧着装置を用いて行う。
【0026】
次に、金型60による樹脂成型工程を行う。先ず、金型60の構成を説明する。金型60は、下金型61と上金型62を有する。上金型62には、首部20の一対の平行壁部22aに対応する位置に樹脂堰止め用駒部63が設けられている。樹脂堰止め用駒部63は、一対の平行壁部22aの内部に隙間なく入り込む寸法に設定されている。樹脂堰止め用駒部63の両側面は、従来例とは異なり、一対の平行壁部22aに対応して互いに平行面に設定されている。
【0027】
樹脂堰止め用駒部63は、首部20の底面壁21を押圧し、接続端子1を適正位置に保持する。金型60は、電線Wを上下方向より挟持し、電線Wを適正位置に保持する電線保持部64を有する。つまり、金型60は、電線保持部64によって電線Wを適正位置に保持し、樹脂堰止め用駒部63によって接続端子1を適正位置に保持する。このような構成の金型60を使って樹脂成型を行う。
【0028】
樹脂成型工程では、図5に示すように、電線Wが接続された接続端子1を樹脂成型用の金型60にセットする。次に、金型60内のキャビティ61a,62aに樹脂を流し込み、流し込んだ樹脂が固化することによって樹脂被覆部30が作製される。
【0029】
樹脂成型の際には、樹脂堰止め用駒部63と首部20の隙間等より溶融樹脂が端子接続部2側に流入しても、溶融樹脂が閉塞壁5の位置で堰き止められ、溶融樹脂が端子接続部2の筒部3内に流れ込むことがない。
【0030】
以上説明したように、端子接続部2には、筒部3内の首部20側を閉塞する閉塞壁5が設けられている。従って、樹脂被覆部の樹脂成型時にあって、溶融樹脂の端子接続部2の筒部3内への流れ込みが閉塞壁5によって阻止される。以上より、樹脂成型時にあって、端子接続部2内への溶融樹脂の流れ込みを金型60によって防止する必要がなく、金型60の位置決め管理が容易である。但し、この実施形態では、金型60の樹脂堰止め用駒部63によっても溶融樹脂の端子接続部2側への流れ込みを防止しているが、上記したように、金型60の厳格な位置決め管理を行わなくても溶融樹脂の筒部3内への流れ込みを防止できる。
【0031】
樹脂被覆部30の成型時には、電線Wと接続端子1をそれぞれ適正位置に電線保持部64と端子保持部である樹脂堰止め用駒部63によって保持するので、接続端子1の曲げ変形(ベンドアップ)を極力抑制できる。樹脂堰止め用駒部63は、端子保持部を兼用するため、構成の簡略化を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 接続端子
2 端子接続部
3 筒部
5 閉塞壁
10 電線接続部
20 首部
W 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子が挿入される筒部を有する端子接続部と、電線が接続された電線接続部と、前記端子接続部と前記電線接続部の間を連結する首部とを備え、前記電線接続部と前記電線の接続箇所が樹脂被覆部によって被覆された接続端子であって、
前記端子接続部には、前記筒部内の前記首部側を閉塞する閉塞壁が設けられていることを特徴とする接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−115023(P2013−115023A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263270(P2011−263270)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】