説明

接触センサ及び移動ロボット

【課題】比較的少数の接触センサで、接触の力とその方向を推測することが可能で、さらに接触部が周囲の物体を損傷するなどの危険を軽減する接触センサを提供すること。
【解決手段】本発明の接触センサは、細長い弾性材の両端に、軸と回転センサを配置し、円形にたわませた形とする。円形の弾性材に物体を接触させると、その力と接触方向に応じて弾性材が変形し、それに連動して両端の軸が回転する。両端の軸の回転角度の変化から円形の弾性材に加えられた力と向きを推測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットが自律走行、または半自律走行を行う際の障害物の有無の判断、また、進行方向を決定するための接触センサに関するものである。
【0002】
また、本発明は、円形にたわませた柔らかい弾性材の変形により回転する回転センサを両端に設けることで、力とその向きを検出する接触センサに関するものである。
【背景技術】
【0003】
自律走行をする移動ロボットとして、昆虫の触角のような接触センサを複数搭載し、物体の有無を検知し、進行方向の決定を行う方法が知られている。または赤外線距離センサなどの非接触センサを複数配置して、自律走行をする方法もある。非接触センサを用いたものは、物体を損傷させる危険がないという利点があるため、多くの自律走行ロボットに使用される。また接触センサを用いた方法は、物体に直接触れることで確実に物体の有無の検知ができ、接触の力も得られるという利点がある。そのため、表面が複雑な形状の物体の検知を行う時になどに利用される。
【0004】
また、このようなロボットにおいては、進行方向を決定するために少なくとも2つのセンサを左右に設ける必要がある。さらに全周囲についての物体の方向を検知するには、ロボットの周囲に多数のセンサを設けることで実現される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触センサを利用した際、物体の表面が複雑な形状である、センサに接近しすぎている、または物体の形状が細く、複雑である場合では正確な検知ができない可能性が高い。
【0006】
昆虫の触角のような接触センサを利用した際、接触させる物体が植物の茎や葉などの損傷しやすいものであった場合、接触センサが物体を損傷させる危険がある。
【0007】
また物体を全方位について検知するには、多数のセンサが必要となる。それに伴い構造が大型化し、ロボットの小型化において不利がある。
【0008】
本発明は、比較的少数の接触センサで、接触の力とその方向を推測することが可能で、さらに接触部が周囲の物体を損傷するなどの危険を軽減する接触センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の接触センサは、細長い弾性材の両端に、軸と回転センサを配置し、円形にたわませた形とする。円形の弾性材に物体を接触させると、その力と接触方向に応じて弾性材が変形し、それに連動して両端の軸が回転する。両端の軸の回転角度の変化から円形の弾性材に加えられた力と向きを推測する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接触センサは、2つの回転センサの回転角度の変化から力とその向きを得るため、従来のように多数のセンサを必要としない。また、接触部分は面であるため、周囲の物体の損傷を軽減する、または損傷を軽減させるための加工を施しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1にセンサの台座を示す。軸、回転センサ、弾性材固定部が連動して回転する。ここでは回転センサとして可変抵抗器を使用した。弾性材の取り外しは、締めネジによって行う。
【0012】
図2は本発明の接触センサの構成を示している。2つの軸の弾性材固定部に円形にたわませた弾性材を固定する。ここでは弾性材として長さ500mm、幅9mmのナイロン製のバンドを使用し、円形にたわませたときの直径は約165mmである。
【0013】
センサに力を加えて離した際には、弾性材が元の形状に戻る必要がある。そこで弾性材が一定の形状を保つように、軸にバネなどの弾性素材を取り付ける必要がある。ここではゴムバンドを使用し、図3にそのモデル図を示す。図1、図2、図4、図6、図8、図9では、簡略化のためこれを省略している。
【0014】
請求項1によれば、本発明の接触センサは弾性材の変形を両端に設けた回転センサで判別することで、加えられた力と向きを推定する。ここでは図4に示すように、弾性材の中心に1N、2N、3Nの力を加えた。図4のように力を加えた際の、左右の軸の回転角度の変化をグラフ化したものを図5に示す。次に、図6に示すように、弾性体の中心から−40から+40mmの範囲で接触させる位置を変化させ、それぞれ3Nの力を垂直に加えた。図6のように力を加えた際の左右の軸の回転角度の変化をグラフ化したものを図7に示す。回転角度は右回転で+となっている。
【0015】
請求項2によれば、本発明の接触センサは移動ロボットの物体の進行方向の決定の手段として用いられる。図8に本発明のセンサを搭載したクローラ型移動ロボットの外観図を示す。ロボットは前後進、左右旋回が可能な移動ロボットである。本発明の接触センサは移動ロボット前方に左右に向けて配置されている。左右のセンサが物体の接触を検知しながら走行することで自律走行を行う。このとき、加えられる力の向きを得る必要はないことから、使用する回転センサは左右それぞれ1つである。
【0016】
図2に示すセンサを図8に示すようにクローラ型移動ロボットに取り付け、圃場を模した試験場で走行させた。この試験場は、1.3m×0.9mの土の地面に、おおむね幅650mm、200mmの間隔でガラス棒を地面に差して立てており、ガラス棒を農作物,ガラス棒の間隔(650mm)を畝間に見立てている。図9に、試験場を走行させた時の走行の始点と終点のクローラ型移動ロボットの進行方向を示す。図10には移動ロボットの軌跡を示す。ここでは、走行の始点をA、終点をBとし、クローラ型移動ロボット前部を1、後部を2とし、点A1、点A2、点B1、点B2として表している。直進方向を0°とし、進行方向30°の状態である点(始点)A1−A2から走行を開始し、ガラス棒を検知し、移動ロボットが方向を変えた状態である点(終点)B1−B2の進行方向は−6.8°であった。なお,進行方向を表す角度は右回転が+となっている。このように移動ロボットの進行方向が直進方向から大きく外れた場合においても、左右のセンサにより進行方向の修正が可能であり,自律走行が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】センサの台座部分である。
【図2】センサの構成図である。
【図3】センサ構成略図の補足である。
【図4】センサに加えた力を説明するための図である
【図5】センサに加えた力と軸の回転角度の変化をグラフ化したものである。
【図6】センサに加えた力の位置を説明するための図である
【図7】センサに加えた力の位置と軸の回転角度の変化をグラフ化したものである。
【図8】センサを搭載したクローラ型移動ロボットの全体図である。
【図9】圃場を模した試験場の図とクローラ型移動ロボットを走行させた時の始点と終点の進行方向を示した図である。
【図10】クローラ型移動ロボットを走行させた時の軌跡を表す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 軸
2 回転センサ
3 弾性材固定部
4 締めネジ
5 弾性材
6 ゴムバンド
7 左軸
8 右軸
9 クローラ型移動ロボット
10 ガラス棒
11 A1
12 A2
13 B1
14 B2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触部に曲面の弾性材または円形、半円形にたわませた弾性材を使用し、弾性材の変形を両端に設けた回転センサで判別することで、加えられた力と向き、またはそのいずれかを推定する事ができ、接触させた物体の損傷や絡まりなどの危険を軽減した接触センサ。
【請求項2】
物体の検知、進行方向の決定の手段として、請求項1に記載の接触センサを備えた移動ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−175533(P2010−175533A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39966(P2009−39966)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509051635)
【Fターム(参考)】