説明

接触力測定におけるゼロ点変動の検出及び補正

【課題】 力センサーを有するプローブを、患者の体腔内に挿入することと、力センサーから複数の測定値を受け取ることであって、測定値のそれぞれが、力センサーに加えられた力を示すことと、から構成される方法を提供する。
【解決手段】この方法は、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出することと、更なる測定で使用するために、力センサーの基準値を、期間中に受け取った測定値に基づく値に設定することと、を更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には侵襲的プローブに関し、具体的には、侵襲的プローブ内の力センサーを較正することに関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲の医療処置には、センサー、チューブ、カテーテル、分配デバイス、及びインプラントなどの物体を、患者の身体内部に配置することが含まれる。そのような物体を追跡するために、位置検知システムが開発されている。磁気位置検知は、当該技術分野において既知の方法の1つである。磁気位置検知では、磁場発生器が、典型的には、患者の身体外部の既知の位置に配置される。プローブの遠位端内部の磁場センサーが、この磁場に反応して電気信号を生成し、この信号が処理されることにより、プローブの遠位端の位置座標が決定される。これらの方法及びシステムは、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、PCT国際特許公開第WO 1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に記載されており、それらの開示内容は全て、参照として本明細書に組み込まれる。
【0003】
プローブを身体内部に配置するとき、プローブの遠位先端部を身体組織に直接接触させることが望ましい場合がある。この接触は、例えば、遠位先端部と身体組織との間の接触圧力を測定することによって、検証することができる。その開示内容が参照として本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0100332号、同第2009/0093806号、及び同第2009/0138007号には、カテーテル内に埋め込まれた力センサーを使用して、カテーテルの遠位先端部と体腔内の組織との接触圧力を検知する方法が、記載されている。
[課題を解決するための手段]
【0004】
本発明の実施形態は、
力センサーを有するプローブを、患者の体腔内に挿入することと、
力センサーから複数の測定値を受け取ることであって、測定値のそれぞれが、力センサーに加えられた力を示すことと、
少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出することと、
更なる測定で使用するために、力センサーの基準値を、期間中に受け取った測定値に基づく値に設定することと、を含む方法を提供する。
【0005】
典型的には、プローブは心臓カテーテルを含む。
【0006】
一実施形態では、体腔は心腔を含む。
【0007】
本方法は、
測定値が既定量を超えて変動していないことを検出した上で、測定値にフィルターを適用することであって、このフィルターが、特定の周波数範囲内でフィルター処理された測定値を分離するように構成されている、ことと、
フィルター処理された測定値が、プローブと体腔の組織との接触を示さないことを検出した上で、基準値を設定することと、を更に含み得る。
【0008】
典型的には、基準値を設定することは、受け取った測定値に基づく関数を計算することを含む。この関数は、受け取った測定値の平均とすることができる。
【0009】
開示される実施形態では、指定の持続時間は、少なくとも単一心周期を含む。
【0010】
代替的な実施形態では、既定量は、力センサーのノイズ変動よりも大きい。
【0011】
更なる代替的な実施形態では、本方法は、受け取った測定値が既定量を超えて変動することを検出した上で、受け取った測定値から基準値を差し引くことにより、プローブの遠位先端部によって体腔の表面に加えられた力を評価することを含む。
【0012】
本発明の別の実施形態により、
患者の体腔内に挿入するように構成され、力センサーに加えられる力を測定するための力センサーを含む、プローブと、
それぞれが力を示す複数の測定値を、力センサーから受け取って、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出し、更なる測定で使用するために、力センサーの基準値を、期間中に受け取った測定値に基づく値に設定するように構成された、プロセッサと、を含む装置が、更に提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態により、力センサーに加えられる力を測定するための力センサーを含む医療プローブと共に動作するコンピュータソフトウェア製品が更に提供され、この製品は、プログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を含み、この命令は、コンピュータによって読み取られると、コンピュータに、それぞれが力を示す複数の測定値を力センサーから受け取らせ、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出させ、更なる測定で使用するために、力センサーの基準値を、期間中に受け取った測定値に基づく値に設定させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示を、添付の図面を参照しながら、単に例示として、本明細書で説明する。
【図1】本発明の実施形態による、感圧カテーテルのための、ゼロ点変動の検出及び較正システムの概略絵図。
【図2】本発明の実施形態による、感圧カテーテルの遠位部分の詳細を示す概略側面図。
【図3】本発明の実施形態による、感圧カテーテルのゼロ点変動を示すグラフ。
【図4】本発明の実施形態による、感圧カテーテルに関するゼロ点変動の検出及び較正の方法を概略的に示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概観
心臓焼灼及び心臓内電気マッピングなどの、様々な診断処置並びに治療処置では、その遠位先端部に少なくとも1つの電極が取り付けられた、カテーテルなどの侵襲的プローブを使用する。この電極は、典型的には、体腔の表面にプローブが押し当てられるときに動作する。これらの処置では、通常は、遠位先端部が体腔表面に対して及ぼしている力を確認することが重要である。したがって、一部のカテーテルは、プローブと心内膜などの身体内組織との間の力を測定するための、力センサーを含む。
【0016】
遠位先端部が心内膜に対して及ぼす力を正確に測定するために、力センサーは、典型的には、本明細書では基準値とも称される「ゼロレベル」に較正される。本発明の実施形態では、この基準値は、遠位先端部が任意の表面と最小限の接触を有している(したがって、遠位先端部に対して及ぼされる有効力が本質的に存在しない)ときに、力センサーによって生成される測定値から決定される。基準値が特定されると、力センサーからの測定値を使用して、及ぼされた力の値を提供することができる。
【0017】
カテーテル内の力センサーは、典型的には、アナログ構成要素に依存しているため、センサーは、限定されるものではないが温度及び経時変化(すなわち、アナログ構成要素の)を含む要因によって、基準値が変化し得る、「基準値変動」を起こしやすい。この基準値変動は、力センサーの誤ったゼロレベルを生じさせることにより、遠位先端部が身体内組織に係合する際に評価される力に、不正確性を招く恐れがある。正確な力の値が確実にもたらされるように、本発明の実施形態は、カテーテル内に配置された力センサーの基準値変動を検出して較正するための方法及びシステムを提供する。一部の実施形態では、心臓内処置の間(すなわち、カテーテルが患者の心臓の内側にある間)、力センサーからの測定値を監視する。処置の間、指定の持続時間に関して、測定値が既定のノイズ閾値の範囲内にある(すなわち、測定値が比較的安定している)ことを検出した上で、カテーテルが心内膜組織と接触していないと想定し、指定の持続時間の間に収集した測定値を使用して、現時点の基準値を計算する。
【0018】
その一方で、測定値が既定のノイズ閾値を超えて変動する場合、カテーテルは心内膜組織と接触していると想定することができる。この場合、すなわち測定値が変動する場合に受け取った測定値を使用して、センサーに対して及ぼされた力の値を得ることができる。
【0019】
本発明の実施形態によって、動的システムにおける、力センサーの自動的な較正が可能になる。一部の実施形態では、力センサーは、変化が検出される場合は常に、たとえ変化が心臓内処置中に検出される場合であっても、自動的に再較正することができる。力センサーにおける基準値変動を検出して較正することによって、カテーテル挿入システムは、改善された正確性及び信頼性を伴った、力の測定が可能になる。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、ゼロ点変動の検出及び補正を使用する、医療システム20の図である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,California)製造のCARTO(商標)システムに基づき得る。システム20は、カテーテルなどのプローブ22、及び制御コンソール24を含む。以降で説明する実施形態では、プローブ22は、診断処置又は治療処置のため、例えば心臓26内の電位をマッピングするため、若しくは心臓組織の焼灼を実行するために使用されると想定される。あるいは、プローブ22は、心臓内又は他の身体器官内での、他の治療目的及び/又は診断目的のために、必要な変更を加えて使用してもよい。
【0021】
心臓専門医などの操作者28は、プローブ22の遠位端32が心臓26の心腔内に入るように、患者30の血管系を通してプローブ22を挿入する。操作者28は、プローブ22の遠位先端部34が、心内膜組織と所望の位置で係合するように、プローブ22を前進させる。プローブ22は、典型的には、その近位端で、適切なコネクタによってコンソール24に接続される。
【0022】
コンソール24は、典型的には、磁気位置検知を使用して、心臓26内側の遠位端32の位置座標を決定する。位置座標を決定するために、コンソール24内の駆動回路36は、磁場発生器38を駆動して、患者30の身体内部に磁場を生成する。典型的には、磁場発生器38はコイルを含み、これらのコイルは、患者30の外部の既知の位置で、患者胴体の下方に配置される。これらのコイルは、心臓26を包含する既定の作業ボリューム内に磁場を生成する。プローブ22の遠位端32内部の磁場センサー62(図2で、センサー62をより詳細に示す)が、これらの磁場に反応して電気信号を生成する。信号プロセッサ40は、これらの信号を処理することにより、典型的には場所座標及び配向座標の双方を含む、遠位端32の位置座標を決定する。以上で説明した位置検知の方法は、上述のCARTO(商標)システムにおいて実装され、また上記の特許及び特許出願で詳細に説明されている。
【0023】
信号プロセッサ40は、典型的には、プローブ22からの信号を受信し、コンソール24の他の構成要素を制御するための、適切なフロントエンド回路及びインターフェース回路を備えた、汎用コンピュータを含む。プロセッサ40は、本明細書で説明される機能を実行するように、ソフトウェアでプログラムすることができる。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードしてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的な記憶媒体などの、非一時的な有形の媒体上に提供してもよい。あるいは、プロセッサ40の機能の一部又は全てを、専用の又はプログラム可能な、デジタルハードウェア構成要素によって実行することができる。
【0024】
入力/出力(I/O)インターフェース42によって、コンソール24とプローブ22との相互作用が可能になる。プローブ22から(インターフェース42、及びシステム20の他の構成要素を介して)受信した信号に基づいて、プロセッサ40がディスプレイ44を駆動し、操作者30に、患者の身体内の遠位端32の位置を示す画像46、並びに進行中の処置に関するステータス情報及びガイダンスを提示する。
【0025】
本実施形態では、プロセッサ40は、カテーテルが心内膜と接触していないと考えられる期間中、遠位端32内部の力センサー64(図2で、力センサー64をより詳細に示す)から受信した信号測定値を監視し、いずれの基準値変動をも検出する。基準値変動が検出される場合には、プロセッサ40は、遠位先端部34が心内膜組織に係合するときの、力センサーからの信号を補正することにより、センサーが受けた力を正確に評価することができる。
【0026】
プロセッサ40は、メモリ48内に、画像46を表すデータを記憶する。一部の実施形態では、操作者28は、1つ以上の入力デバイス50を使用して、画像46を操作することができる。
【0027】
あるいは、又は更には、システム20は、患者30の身体内部でプローブ22を操作して動作させるための、自動機構(図示せず)を含み得る。そのような機構は、典型的には、プローブ22の長手方向の動き(前進/後退)、及びプローブの遠位端32の横方向の動き(偏向/操舵)の双方を制御することが可能である。そのような実施形態では、プロセッサ40は、プローブ内の磁場センサーによって提供される信号に基づいて、プローブ22の動きを制御するための制御入力を生成する。
【0028】
図1は、特定のシステム構成を示しているが、他のシステム構成もまた、本発明の実施形態を実装するために採用することができ、したがって、それらは本発明の趣旨及び範囲内であると見なされる。例えば、以降で説明する方法は、インピーダンスベースのセンサー又は超音波位置センサーなどの、上述の磁場センサー以外の種類の位置変換器を使用して、適用することができる。本明細書で使用するとき、用語「位置変換器」は、プローブ22上に取り付けられる要素であって、その要素の座標を示す信号をコンソール24に受信させるものを指す。したがって、位置変換器は、変換器が受信したエネルギーに基づいて、制御ユニットへと位置信号を生成する受信器を、プローブ上に含み得るか、又はプローブの外部の受信器によって検知されるエネルギーを発する送信器を含み得る。更には、以降で説明する方法は、同様に、心臓内、並びに他の身体器官及び身体領域内の双方で、カテーテルだけではなく他の種類のプローブも使用して、治療用途及び診断用途に適用することができる。
【0029】
図2は、本発明の実施形態による、プローブ22の遠位端32の概略断面図である。具体的には、図2は、治療活動及び/又は診断活動のために使用される、遠位端32の機能要素を示す。プローブの遠位先端部34の電極60(例えば、焼灼電極)は、典型的には、プラチナ/イリジウム合金などの金属材料、又は別の好適な材料で作製される。あるいは、この目的のために、プローブの長さに沿った複数の電極(図示せず)を使用してもよい。
【0030】
位置センサー62は、遠位端32の位置座標を示す信号を、コンソール24へ送信する。位置センサー62は、1つ以上の小型コイルを含み得、典型的には、異なる軸に沿って配向される複数のコイルを含む。あるいは、位置センサー62は、別の種類の磁気センサー、つまり位置変換器として働く電極か、又はインピーダンスベースのセンサー若しくは超音波位置センサーなどの、他の種類の位置変換器のいずれかを含み得る。図2は、単一の位置センサーを備えるプローブを示すが、本発明の実施形態では、2つ以上の位置センサーを備えるプローブを利用することができる。
【0031】
代替的な実施形態では、位置センサー62及び磁場発生器38の役割を逆転させることができる。換言すれば、駆動回路36は、遠位端32内の磁場発生器を駆動して、1つ以上の磁場を生成させることができる。発生器38内のコイルは、磁場を検知し、これらの磁場の成分の振幅を示す信号を生成するように構成することができる。心臓26内部の遠位端32の位置座標を決定するために、プロセッサ40はこれらの信号を受信し、処理する。
【0032】
力センサー64は、遠位先端部が身体内組織に対して及ぼす力を示す信号を、コンソールに搬送することによって、遠位先端部34が心臓26の心内膜組織に加える力を測定する。一実施形態では、力センサーは、遠位端32内のバネによって接続された磁場送受信器を含み得、このバネの偏向の測定に基づいて、力の指標を生成することができる。この種のプローブ及び力センサーの更なる詳細は、米国特許出願公開第2009/0093806号及び同第2009/0138007号に記載されており、それらの開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。あるいは、遠位端32は、別の種類の力センサーを含んでもよい。
【0033】
ゼロ点変動の検出及び補正
図3は、本発明の実施形態による、心臓内処置の間に力センサー64によって送信された、測定値を含む信号72に関する、力(グラム単位)対時間(秒単位)をプロットするグラフ70である。信号72が、指定の持続時間Tmaxにわたってノイズ閾値ΔFminの範囲内である場合、遠位先端部34は、心内膜組織と接触していないと想定することができる。その一方で、信号72が、ΔFminを超えて変動する場合、遠位先端部34は、心内膜組織と接触していると想定することができる。
【0034】
ノイズ閾値ΔFminは、典型的には、力センサー64のノイズ変動よりも大きい値に設定される。例えば、ΔFminは、力センサー64が1.0グラムのノイズ変動を有する場合には、3.0グラムに設定することができる。一実施形態では、例として、ΔFminの値は、±3σに相当するように設定され、この場合σは、センサー64が組織と接触していないときの、センサー64からの信号の標準偏差である。当業者は、±nσ(この場合、nは実数である)などの他のノイズ閾値、又はピーク間の変動に基づく閾値の値を、不必要な実験を行なうことなく定義することが可能であり、そのような閾値の全ては、本発明の範囲内であると想定される。
【0035】
一実施形態では、Tmaxは、心臓26の単一心周期(心周期は、典型的には1.0秒以下である)よりも実質的に長い、2.5秒に設定することができる。
【0036】
期間78の間、信号72は、ΔFminによって定義された範囲外で変動し(心臓26の運動のため)、遠位先端部34が恐らくは心内膜組織と接触していることを示す。しかしながら、期間79(グラフ70に示す実施例でのTmaxに相当)の間は、信号72は、ΔFminの範囲内で変動し、遠位先端部34が恐らくは心内膜組織と接触していないことを示す。期間Tmaxの間の、ΔFmin以下の量までの信号の変動は、センサー64に対する力が、この期間中には事実上存在しないことを示している。この期間中に取得された信号は、それゆえ、図4の流れ図によってより詳細に説明されるように、センサーに関する基準値を定式化するために使用することができる。
【0037】
一部の実施形態では、信号72がΔFmin以下の変動を有する場合であっても、組織接触が存在する可能性がある。信号72がΔFmin以下の変動を有する場合の組織接触を検証するために、プロセッサ40は、フィルターを適用して、信号72の特定の周波数を分離することができる。このフィルターは、典型的には帯域通過フィルターであり、心拍周波数(すなわち、この場合には心臓26の心拍数)に近似する周波数の信号を通過させ、他の周波数を阻止するように構成される。この帯域通過フィルターは、フィルター処理された信号のレベルと、既定の帯域通過周波数のレベルとの比較を可能にすることによって、遠位先端部34が、心内膜組織などの動いている物体と低レベルで接触している場合の、より正確な信号72の分析を提供することができる。
【0038】
図4は、本発明の実施形態による、ゼロ点変動の検出及び較正を使用する、心臓焼灼の方法を概略的に示す流れ図である。この流れ図は、例として提示されるものであって、本発明の実施形態は、心臓焼灼を伴う処置に限定されるものではないことが理解されよう。むしろ、力センサーの基準値が、身体内部でセンサーが動作している間に決定される場合には常に、本発明の実施形態を使用することができる。
【0039】
最初の工程80では、操作者30は、入力デバイス50を使用して、上述の、ノイズ閾値ΔFmin、指定の持続時間Tmax、及び既定の帯域通過周波数のレベルを設定する。あるいは、ΔFmin、Tmax、及び既定のレベルを、焼灼処置に先立って定義し、メモリ48内に記憶させてもよい。
【0040】
位置決め工程82で、操作者30がプローブ22を位置決めした後、収集工程84で、プロセッサ40が、指定の持続時間Tmaxの間、力センサー64からの測定値を収集する。第1比較工程86で、収集された力の測定値がΔFminの範囲内である場合には、フィルター工程87で、プロセッサ40は、上述のように、帯域通過フィルターを適用し、特定の周波数範囲内の測定値を分離することによって、力センサーの測定値をフィルター処理する。第2比較工程88で、フィルター処理された力の測定値が、プローブと組織との接触を示さない場合には、本方法は、続いて基準値計算工程89へと進む。接触が示されているか否かを評価するための、工程88で実行される比較は、典型的には、フィルター処理された力の測定値のレベルと、工程80で定義された既定の帯域通過周波数のレベルとの比較を含む。基準値計算工程89では、プロセッサ40は、収集された力の測定値(すなわち、指定の持続時間の間に収集されたもの)を平均化することによって、新たな基準値を計算する。あるいは、プロセッサ40は、収集された力の測定値に基づく代替的な関数を計算して、新たな基準値を決定してもよい。
【0041】
第3比較工程90では、この新たな基準値が、力センサー64に現時点で関連する基準値(すなわち、先行の基準値)と異なる場合には、プロセッサ40は、再較正工程92で、力センサーのゼロレベルを新たな基準値に設定することによって、力センサー64を再較正し、またプロセッサは、自動的な基準値の変更を操作者28に知らせる通知を、ディスプレイ44上に提示することができる。あるいは、プロセッサは、基準値の変更を操作者28に通知するメッセージを、ディスプレイ44上に提示してもよい。この場合、操作者には、先行の基準値を保持するか、又は新たな基準値を実装するかの選択肢が提供され得る。その後の心内膜組織との接触の間に、新たな基準値を実装することができる。
【0042】
力センサー64を再較正した後、プロセッサ40は、促進工程94で、操作者28がプローブ22の位置調整をすることが可能であるという通知を、ディスプレイ44上に提示し、本方法は、工程82に戻る。工程90に戻ると、基準値が変化しなかった場合には、本方法は工程94を続ける。
【0043】
工程86及び工程88に戻ると、収集された力の測定値がΔFminを超過する(すなわち、工程86で、収集された測定値が既定量ΔFminを超えて変動した)か、又はフィルター処理された力の測定値がプローブと組織との接触を示す(工程88で)、いずれかの場合には、遠位先端部34は、典型的には心内膜組織(又は体腔の別の表面)と接触しているため、非ゼロの力を受けていると想定され、本方法は、力計算工程96へと進む。工程96では、プロセッサ40は、力センサー64から収集された測定値(すなわち、遠位先端部34と心内膜組織との接触の間に)から現時点の基準値を差し引くことによって、遠位先端部34が心内膜組織に対して及ぼしている力の正確な測定値を提供する。一部の実施形態では、プロセッサ40は、遠位先端部34が非ゼロの力を受けている(例えば、期間78の間に)と想定される場合に、新たな基準値の計算を実施しないように操作者28に警告する通知を、ディスプレイ44上に提示することができる。
【0044】
第4比較工程98で、算出された力が、焼灼が許容可能な所定の範囲内である場合には、焼灼工程100で、プロセッサ40は、現時点のプローブ位置で焼灼を実行することを操作者28に促す通知を、ディスプレイ44上に提示する。工程98に戻ると、較正された力が、所定の範囲内でない場合には、本方法は、工程94を続ける。最終的に、第5比較工程102で、焼灼の標的となる、心臓26内の更なる領域が存在する場合には、本方法は、焼灼処置が完了するまで、工程94を続ける。
【0045】
以下の「特許請求の範囲」における、全ての手段又は工程、更には機能要素に対応する、構造、材料、行為、並びに等価物は、具体的に請求されるように、特許請求される他の要素と組み合わせて機能を実行するための、いずれの構造、材料、又は行為を含むことを意図するものである。本開示の説明は、実例及び説明の目的で提示しているが、網羅的であること、又は開示される形態に本開示を限定することを意図するものではない。当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの修正及び変更が明らかとなるであろう。本実施形態は、本開示の原理及び実際的な用途を最も良く説明し、想到される具体的な使用に適するような様々な修正を伴う様々な実施形態に関して、他の当業者が本開示を理解することを可能にするために選択されたものである。
【0046】
上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、以上で具体的に図示し、説明しているものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ本発明の範囲は、以上で説明した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの双方、並びに前述の説明の読了後に当業者が思いつくであろう、先行技術に開示されていない、それらの変更及び修正が含まれる。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
力センサーを有するプローブを、患者の体腔内に挿入することと、
前記力センサーから複数の測定値を受け取ることであって、前記測定値のそれぞれが、前記力センサーに加えられた力を示す、ことと、
少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った前記測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出することと、
更なる測定で使用するために、前記力センサーの基準値を、前記期間中に受け取った前記測定値に基づく値に設定することと、を含む、方法。
(2) 前記プローブが、心臓カテーテルを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記体腔が心腔を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記測定値が前記既定量を超えて変動していないことを検出した上で、前記測定値にフィルターを適用することであって、前記フィルターが、特定の周波数範囲内でフィルター処理された測定値を分離するように構成されている、ことと、
前記フィルター処理された測定値が、前記プローブと前記体腔の組織との接触を示さないことを検出した上で、前記基準値を設定することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記基準値を設定することが、前記受け取った測定値に基づく関数を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記関数が、前記受け取った測定値の平均を含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記指定の持続時間が、少なくとも単一心周期を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記既定量が、前記力センサーのノイズ変動よりも大きい、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記受け取った測定値が前記既定量を超えて変動することを検出した上で、前記受け取った測定値から前記基準値を差し引くことにより、前記プローブの遠位先端部によって前記体腔の表面に加えられた力を評価することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 装置であって、
患者の体腔内に挿入するように構成され、力センサーに加えられる力を測定するための前記力センサーを含む、プローブと、
それぞれが前記力を示す複数の測定値を、前記力センサーから受け取って、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った前記測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出し、更なる測定で使用するために、前記力センサーの基準値を、前記期間中に受け取った前記測定値に基づく値に設定するように構成される、プロセッサと、を含む装置。
【0048】
(11) 前記プローブが、心臓カテーテルを含む、実施態様10に記載の装置。
(12) 前記体腔が心腔を含む、実施態様10に記載の装置。
(13) 前記プロセッサは、前記測定値が前記既定量を超えて変動していないことを検出した上で、前記測定値に、特定の周波数範囲内でフィルター処理された測定値を分離するように構成されているフィルターを適用し、かつ前記フィルター処理された測定値が、前記プローブと前記体腔の組織との接触を示さないことを検出した上で、前記基準値を設定するように構成される、実施態様10に記載の装置。
(14) 前記フィルターが、帯域通過フィルターを含む、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記プロセッサが、前記受け取った測定値に基づく関数を計算することによって、前記基準値を設定するように構成される、実施態様10に記載の装置。
(16) 前記関数が、前記受け取った測定値の平均を含む、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記指定の持続時間が、少なくとも単一心周期を含む、実施態様10に記載の装置。
(18) 前記既定量が、前記力センサーのノイズ変動よりも大きい、実施態様10に記載の装置。
(19) 前記プロセッサが、前記受け取った測定値が前記既定量を超えて変動することを検出した上で、前記受け取った測定値から前記基準値を差し引くことにより、前記プローブの遠位先端部によって前記体腔の表面に加えられた力を評価するように構成される、実施態様10に記載の装置。
(20) 力センサーに加えられる力を測定するための前記力センサーを含む医療プローブと共に動作するコンピュータソフトウェア製品であって、前記製品は、プログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を含み、この命令は、コンピュータによって読み取られると、前記コンピュータに、それぞれが前記力を示す複数の測定値を前記力センサーから受け取らせ、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った前記測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出させ、更なる測定で使用するために、前記力センサーの基準値を、前記期間中に受け取った前記測定値に基づく値に設定させる、コンピュータソフトウェア製品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
患者の体腔内に挿入するように構成され、力センサーに加えられる力を測定するための前記力センサーを含む、プローブと、
それぞれが前記力を示す複数の測定値を、前記力センサーから受け取って、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った前記測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出し、更なる測定で使用するために、前記力センサーの基準値を、前記期間中に受け取った前記測定値に基づく値に設定するように構成される、プロセッサと、を含む装置。
【請求項2】
前記プローブが、心臓カテーテルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記体腔が心腔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記測定値が前記既定量を超えて変動していないことを検出した上で、前記測定値に、特定の周波数範囲内でフィルター処理された測定値を分離するように構成されているフィルターを適用し、かつ前記フィルター処理された測定値が、前記プローブと前記体腔の組織との接触を示さないことを検出した上で、前記基準値を設定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フィルターが、帯域通過フィルターを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記受け取った測定値に基づく関数を計算することによって、前記基準値を設定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記関数が、前記受け取った測定値の平均を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記指定の持続時間が、少なくとも単一心周期を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記既定量が、前記力センサーのノイズ変動よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記受け取った測定値が前記既定量を超えて変動することを検出した上で、前記受け取った測定値から前記基準値を差し引くことにより、前記プローブの遠位先端部によって前記体腔の表面に加えられた力を評価するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
力センサーに加えられる力を測定するための前記力センサーを含む医療プローブと共に動作するコンピュータソフトウェア製品であって、前記製品は、プログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ読み取り可能媒体を含み、この命令は、コンピュータによって読み取られると、前記コンピュータに、それぞれが前記力を示す複数の測定値を前記力センサーから受け取らせ、少なくとも指定の持続時間の期間にわたって受け取った前記測定値が、既定量を超えて変動していないことを検出させ、更なる測定で使用するために、前記力センサーの基準値を、前記期間中に受け取った前記測定値に基づく値に設定させる、コンピュータソフトウェア製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−96036(P2012−96036A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−240958(P2011−240958)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(511099630)バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
【住所又は居所原語表記】4 Hatnufa Street, Yokneam 20692, Israel
【Fターム(参考)】