接触可能な金属表面を有する金属コロイド
本発明は、配位子(例えば、カリックスアレーン関連化合物)が金属コロイド、例えば金コロイドに配位結合した錯体を提供する。例示的実施形態において、金属コロイドと錯体を形成した2つ以上の配位子は、金属コロイドよりも大きく、したがって接触可能な金属中心を提供する。錯体は、基体上に固定化することができる。本発明の錯体は、分子の結合において及び化学反応の触媒作用において使用が見出されている、調節可能で、極めて強固な、単離された金属コロイドとして有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35USC119(e)(1)に基づき、すべての目的のため、その全体が参照により組み込まれている2009年11月6日出願の、米国出願第61/258,814号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、金属コロイド、より具体的には、配位子のリンカーコンポーネントを介して金属コロイド配位結合した配位子によって形成されるものに関し、コロイド上の少なくとも1個の原子に配位結合した配位原子を含む。生成した配位子結合コロイドは、基体の表面上に固定化され、触媒として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
カリックスアレーンは、アルカリ条件下で、ホルムアルデヒドをp−アルキルフェノールと縮合させることによって通常作製される、周知の種類の環状鎖オリゴマーである。V.Bohmerは、優れた総説の中で、カリックスアレーンの化学的性質を要約した(Angew.Chem、Int.Ed.Engl.第34巻:713頁(1995年))。カリックス[4]アレーン又はO−メチル化されたカリックス[4]アレーンの4個の酸素原子が金属にキレートしている初期の遷移金属錯体は、現在公知である(例えば、J.Am.Chem.Soc.第119巻:9198頁(1997年)を参照されたい)。
【0004】
金属コロイドは、触媒及び触媒前駆体として好ましい特性を有する一群の化合物を構成する。米国特許第4,144,191号において、ヒドロホルミル化によりアルコールを生成するためのバイメタルカルボニルクラスター化合物触媒が開示されている。アミン基を含有する有機ポリマーに結合したRh2Co2(CO)12又はRh3Co(CO)12のいずれかが使用されている。触媒は、低温で作用し、ほとんど全くアルコールだけを生成する。
【0005】
フィンランド特許出願第844634号において、アミン樹脂担体に結合した、モノメタルクラスター化合物Rh4(CO)12とCo4(CO)12の混合物が、アルコールを生成する上で極めて選択性のある触媒の役目をするという知見が示されている。クラスター混合触媒の利点は、調製がより簡単であり、その活性を金属のモル比の関数として最適化できることである。無機酸化物の表面上に担持された場合、Ir4などのクラスター形態及びナノ粒子形態でのイリジウム金属コロイドは、オレフィン水素化(Nature、415:623頁(2002年))及びトルエン水素化(Journal of Catalysis、第170巻:161頁(1997年)及びJournal of Catalysis、第176巻:310頁(1998年))に対して活性のある触媒である。オレフィン水素化に加えて、イリジウムは、様々な触媒プロセスに対して一般的に使用され、これら触媒プロセスとして、プロパン水素化分解、CO水素化、トルエン水素化、デカリン開環及びメチルシクロヘキサンからジメチルペンタンへの関連する変換(Catalysis Letters 131:7(2009年)を参照されたい)、メタン化、分子内ヒドロアミノ化、第一級アリルアルコールの不斉異性化反応、アリルのアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを使用したヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環付加、メタノールのカルボニル化、メタンヒドロキシル化(Chemical Communications 3270〜3272頁(2009年)を参照されたい)、及び右側の鎖置換基の有意な脱アルキル化のない選択性ナフテン系開環(米国特許第5,763,731号を参照されたい)などが挙げられる。
【0006】
金属クラスターの化学特性、例えば触媒活性又は電子特性、例えば電子結合エネルギーなどは、クラスターサイズ(原子凝集体)並びに配位子の性質及び数に応じて異なることが知られている。金属クラスター、概して金属コロイド触媒の産業上の用途を妨げる重大な制限は、凝集に対する安定性が欠けていることであることがさらに知られている(Gatesら、Nature 第372巻:346頁(1994年))。金属クラスターの安定性の欠如に対処する一つの方法は、例えば無機酸化物の平面的な表面又はゼオライト内部の微細気孔などの支持上に金属クラスターを堆積させることである。これらの表面は、金属クラスターにさらなる安定性を与えることができ、これは、脱カルボニル化の場合でさえも、ゼオライト内部のIr4金属コロイド種に対してこれまでに実証されている(Gatesら、J.Phys.Chem.B103:5311頁(1999年)、Gatesら、J.Am.Chem.Soc.1999121:7674頁(1999年)、Gatesら、J.Phys.Chem.B108:11259頁(2004年)、及びGatesら、J.Phys.Chem.C111:262頁(2007年))。しかし、配位子としてのゼオライト及び無機酸化物の表面は、有機配位子と比較した場合、主にクラスターとの相互作用に利用できる官能基が欠如しているために、クラスターの触媒特性及び電子特性を幅広く調整する能力を欠いている(ゼオライトに対してO、Si、及びAlに限る)。さらに、不連続数のクラスターを互いに組織化された空間的な形式でパターン化することが極めて望ましい。なぜなら、このような組織を使用することによって、原理的に触媒作用にも影響を及ぼすことができるからである。多かれ少なかれランダムなクラスターの堆積が全体を通して生じるので、無機酸化物の平面的な表面又はゼオライト内部の微細気孔をテンプレートとして使用してこれを達成することはできない。金属有機フレームワーク材料の内部微細空孔を使用する場合も同じである(J.Materials Chem.第19巻:1314頁(2009年)を参照されたい)。半導体工業において使用されてきたリソグラフィーによる組立方法を使用することによって、均一な大きさの一連の金属粒子を調製してきたが、これらの粒子は、一般的に直径100nmよりも大きい(Somorjaiら、Langmuir、第14巻:1458頁(1998年)を参照されたい)。最近では、カリックスアレーンを配位子として使用することによって、カリックスアレーン分子を構造上の足場として使用して、8つまでのコバルトコロイドをパターン化することに成功した(Vicensら、Dalton Transactions、2999〜3008頁(2009年)及びWeiら、Chem Comm、4254〜4256頁(2009年)を参照されたい)。これらのコロイドは、単一のアルキン基からなる非カリックスアレーン配位子に使用されたものと等しい条件下で、Co2(CO)8又はCo4(CO)12のいずれかと、アルキン含有レソルシンアレーンとの直接の反応を介して合成された。しかし、このタイプの直接反応の手法は、金属多面体と反応させた場合、Co4(CO)12を使用した場合、明確な、特徴付けが可能なセットの生成物を合成しなかった。さらに、カリックスアレーン結合イリジウムコロイドを合成しない。金属コロイドに対してカリックスアレーンを配位子として使用する場合、追加の利点は、カリックスアレーンを使用することによって、幾何学的制限及び/又は多価性を介して、合成中の核生成及びコロイドの成長を小さなサイズに制限することができることである(Weiら、ChemComm、4254〜4256頁(2009年)を参照されたい)。金属コロイドの核生成及び成長の間のこの種の制限はまた、金属コロイドに対してデンドリマーを配位子として使用して以前に実証された(Crooksら、Accounts of Chemical Research、第34巻:181頁(2001年)を参照されたい)。しかし、デンドリマーは、不連続数の8つ未満のコロイドをパターン化する制御を可能としない。現在の発明は、環境の調節能力も提供する一方で、組織化されたアセンブリー内でコロイドをパターン化する能力を提供している。
【0007】
オレフィン再編成[Gianniniら、J.Am.Chem.Soc.第121巻:2797頁(1999年)]、末端アルカンの付加環化[Ozerovら、J.Am.Chem.Soc.第122巻:6423頁(2000年)]及びヒドロホルミル化[Csokら、J.Organometallic Chem.第570巻:23頁(1998年)]に対する、カリックスアレーンと錯体形成した遷移金属の一部の触媒効果が示された。これらの研究におけるカリックスアレーンは、金属コロイドでの場合のように、還元された金属との間に相互作用を含有しない1つ又は複数の金属カチオンと配位結合している。酸化物表面上にグラフトされた金属カチオンに配位結合したカリックスアレーンは、凝集によるオキシド構造の拡張を阻止することによって、グラフトした金属カチオンの単離を実施し[Katzら、J.Am.Chem.Soc.第126巻:16478頁(2004年)]、[Katzら、J.Am.Chem.Soc.第129巻:15585頁(2007年)]、及び[Katzら、Chem.Mater.第21巻:1852頁(2009年)]、またカリックスアレーン骨格上の置換基としての配位基の性質によって、グラフトしたカチオンの触媒作用を調整する能力が生じる[Katzら、J.Am.Chem.Soc.、第129巻:1122頁(2007年)]。
【0008】
カリックスアレーン配位子を金属クラスターに配位結合させることは、これだけに限らないが、立体的に嵩高いバリアとしてのカリックスアレーンの役割により、凝集に対するより高い弾力性を含めた多くの利点をもたらし、おそらくより重要なことに、新しい種類の極めて適合可能な機能材料の合成の道を開くが、この合成において、カリックスアレーンは、複雑な活性サイトのアセンブリーのためのナノスケールの組織的骨格の役目をする。カリックスアレーンはまた、カリックスアレーン骨格上の官能基及び置換基を配位結合することによって、金属コロイド中心の電子密度に影響を与えることができる。さらに、カリックスアレーンと結合した金属コロイドは、表面上のカリックスアレーンの間又はカリックスアレーン空洞の真下のいずれかに空間を含有し、これを分子の結合及び触媒作用に使用することができる。上記作用のすべては、カリックスアレーン結合金コロイドで以前に実証されている[Haら、Langmuir、第25巻:10548頁(2009年)]。
【0009】
有機配位子で安定化されている、より小さな金コロイドの継続した探究は、様々な分野、例えばドラッグデリバリー及び遺伝子デリバリーなどの分野における、機能材料のアセンブリーのための構成単位としてのこれらの使用が主に機動力となっている((a)Rivere、C.、Roux、S.、Tillement、O.、Billotey、C.、Perriat、P.、医学的応用のためのナノシステム:生物学的検出、ドラッグデリバリー、診断及び治療。Annales de Chimie − science des Materiaux、第31巻、351〜367頁(2006年)。(b)Wang、G.L.、Zhang、J.、Murray、R.W、単層保護された金クラスターに結合したエチジウム挿入剤のDNA結合。Anal.Chem.第17巻、4320〜4327頁(2002年)。(c)Patra、C.R.、Bhattacharya、R.、Mukhopadhyay、D.、Mukherjee、P.、癌のターゲット療法のための金コロイドの応用。J.B.N.4、99〜132頁(2008年))、バイオセンシング((a)Zhao、W.、Chiuman、W.、Lam、J.C.F.、McManus、S.A.、Chen、W.、Yuguo、C.、Pelton、R.、Brook、M.A.;Li、Y.金コロイド上のDNAアプタマーの畳み込み:コロイド化学からバイオセンサーまで、J.Am.Chem.Soc.第130巻、3610〜3618頁(2008年)。(b)Scodeller、P.、Flexer、V.、Szamocki、R.、Calvo、E.J.、Tognalli、N.、Troiani、H.、Fainstein、A.、ワイヤード酵素のコアシェルAuコロイドバイオセンサー。J.Am.Chem.Soc.第130巻、12690〜12697頁(2008年)。(c)Wang、L.H.、Zhang、J.、Wang、X.、Huang、Q.、Pan、D.、Song、S.P.、Fan、C.H.、ターゲット応答DNA構造用の金コロイドベースのオプティカルプローブ。Gold.Bull.、第41巻、37〜41頁(2008年))、ナノファブリケーション((a)Li、H.Y.、Carter、J.D.、LaBean、T.H.、DNA自己組織化によるナノファブリケーション。Mater.Today、第12巻、24〜32頁(2009年)。(b)Becerril、H.A.、Woolley、A.T.、DNA−テンプレートしたナノファブリケーション。Chem.Soc.Rev.38、329〜337頁(2009年)及びこの中の参考文献)及び不均一な触媒作用((a)Choudhary、T.V.、Goodman、D.W.、担持された金ナノクラスターによる酸化触媒作用。Top.Catal.、第21巻、25〜34頁(2002年)。(b)Turner、M.、Golovko、V.B.、Vaughan、O.P.H.、Abdulkin、P.、Berenguer−Murcia、A.、Tikhov、M.S.、Johnson、B.F.G.、Lambert、R.M.、55−原子クラスターから誘導される金コロイド触媒による二酸素での選択性酸化。Nature、第454巻、981−U31(2008年)。(c)Lee、S.、Molina、L.M.、Lopez、M.J.、Alonso、J.A.、Hammer、B.、Lee、B.、Seiferi、S.、Winans、R.E.、Elam、J.W.、Pellin、M.J.、Vajda、S.、固定化したAu6−10クラスター上の選択性のプロペンのエポキシ化:活性及び選択性についての水素及び水の効果。Angew.Chem.、Int.Ed.、第48巻、1467〜1471頁(2009年)。(d)Hughes、M.D.、Xu、Y.−J.、Jenkins、P.、McMorn、P.、Landon、P.、Enache、D.I.、Carley、A.F.、Attard、G.A.、Hutchings、G.J.、King、F.、Stitt、E.H.、Johnston、P.、Griffin、K.、Kiely、C.J.、温和な条件下での炭化水素の選択性酸化のための調節可能な金触媒。Nature、第437巻、1132〜1135頁(2005年)。(e)Haruta、金が貴金属ではない場合:コロイドによる触媒作用。Chemical Record、第3巻、75〜87頁(2003年))。固体支持体上の金属クラスターの触媒の活性について、以前リサーチが行われた。Xu Zら、Nature、1994年、第372巻:346〜348頁;及びArgoら、Nature、2002年、第415巻:623〜626頁。これらの参考文献が、ある意味で配位子として考えることができる、金属酸化物の支持体上の金属クラスターを開示している限りにおいて、参考文献は、1つの配位子のみとしか錯体を形成しない金属クラスターを開示している。
【0010】
これらの用途において小さな金コロイドは、制限された場所、例えば大きなコロイドでは接触不可能な細胞内のコンパートメントなどへの貫通性という観点から有利であり、より高い分解能及び情報密度での材料のアセンブリーを可能にし、塊状のものとは異なる好ましい触媒特性を示す表面配位子の選択を介して、より大きな表面積対体積及び電子の調節能力を提供する。有機配位子で小さな金属コロイドをパッシベーションすることにより、より大きく、より安定したコロイドへ凝集するという、これらに遍在する傾向が低減する。このようなパッシベーション層に理想的なのは、一見互いに両立困難不に見える2つの機能:(i)小さな金属コロイドを安定化すること、その一方ではまた(ii)他の分子への結合及び共役を容易にするために金属表面への接触を可能にすることを促進することである。嵩高いカリックスアレーン配位子と結合した大きな(4nm)金コロイドは、凝集及び焼結に対してより高い安定性を有し、配位結合するカリックスアレーン置換基との相互作用を介して調節可能な電子密度を有し、吸着された配位子との間に位置する小分子結合部位としての役目を果たす接触可能な金属表面を有することが以前から示されていた(Ha JM、Solvyov A、Katz A、カリックスアレーン結合金コロイドにおける接触可能な金属表面の合成及び特徴づけ。Langmuir、第25巻、10548〜10553頁(2009年)及び本明細書中の参考文献)。上記のすべての作用は、カリックスアレーン結合金コロイドに対して以前実証された[Haら、Langmuir、第25巻:10548頁(2009年)]。
【0011】
かなり驚くことに、発明者らは、例えばカリックスアレーンなどの配位子を用いて、金属原子に錯体を形成させることによって、以前生成されたものより小さな金属コロイドの形成が可能となることを発見した。さらに、直観に反して、より小さなコロイドは、より大きなコロイドよりも、接触可能な表面原子をより高い割合で有することが発見された。金属表面上に曝露された原子は、化学の重要なエレメント、例えば、金属コロイドの触媒特性及び吸着(結合)特性などであるため、この発見は、金属コロイドの有用性及び汎用性を増大させる。
【0012】
これまでに知られている金クラスターは、ククルビツリル内に封入されているものを含む。CormaAら、Chem.Eur.J.、2007年、第13巻:6359〜6364頁。しかし封入された配位子は、金浸出剤としてシアン化物アニオンに接触不可能であった。これら封入されたクラスターのストイキオメトリは、1つの金中心につき1つの配位子である。より小さな空洞サイズのククルビツリルの使用は、より大きな金クラスター(4nm)をもたらし、金属中心は、配位子サイズよりかなり大きかった。
【0013】
NowickiAら、Chem.Commun.、2006年、296〜298頁;Denicourt−NowickiAら、Dalton Trans.、2007年、5714〜5719頁(Denicourt−NowickiI);及びDenicourt−NowickiAら、Chem.Eur.J.、2008年、第14巻:8090〜8093頁(Denicourt−Nowicki II)は、シクロデキストリンと錯体形成したルテニウムナノ粒子について研究した。Denicourt−Nowicki Iの図1のヒストグラムは、すべての金属中心が、配位子として使用されるβ−シクロデキストリンのサイズより大きいことを示している。これは、スキーム2と標識されたNowickiにおける概略図と一致しており、より小さいシクロデキストリン配位子で取り囲まれたより大きなRu(0)中心を示唆している。
【0014】
Sylvestre J−Pら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、第126巻:7176〜7177頁は、Denicourt−Nowicki Iと同種のシクロデキストリン配位子を使用した金粒子の調製について記載している。やはり、Denicourt−NowickiIの場合のように、金属中心のサイズは、シクロデキストリンよりも大きく、2〜2.5nmに及ぶ。
【0015】
Goldipas KRら、J.Am.Chem.Soc.、2003年、第125巻:6491〜6502頁は、著者によると、これらと錯体を形成している配位子を含む樹状楔よりも大きなAu中心からなり、したがって封入が物理的に不可能なナノ粒子コアデンドリマーを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書中に提供されているのは、配位子と金属コロイドとのサイズの差が接触可能な金属中心を提供する上で重要な役割を果たす、金属コロイドとの配位子錯体である。本発明の例示的コロイドは、これらが結合している配位子よりも小さい金属中心を有し、驚くことに、類似のより大きなコロイドと比較して、より高いパーセンテージのこれら金属表面原子が、配位子より小さな様々なプローブ分子と接触可能である。本発明以前の、配位子に結合した金属コロイドは、配位子−金属コロイド錯体の中心との、このような潜在的に広範な接触を可能としなかった。本明細書に記載される錯体の例示的実施形態は、結合という事象の間に、錯体を凝集及び/又は分解することなしに、錯体が溶液又は気相からの分子と結合することができるという意味で接触可能である。これは、接触可能な部位を持たないか、又は配位子交換プロセス中に、溶液又は気相からの分子の結合を伴い、焼結(凝集)を介して分解する、本分野で知られている多くのクラスターとは対照的である。本明細書中に開示されている錯体は、錯体を形成する少なくとも2つの配位子を有するので、これまでに知られている錯体と比較して、封入の危険性は回避される。
【0017】
本発明の例示的化合物は、以下:(i)表面上の立体的に嵩高い配位子として作用する配位子による、凝集及び焼結からの保護、(ii)配位子間の領域に位置する曝露された金属による金属表面への接触可能性、(iii)配位子上の置換基官能基によるコロイド中心の電子特性及び立体特性を調整するために使用することができる部分を提供する。容易に変えられる配位子として作用し、配位子に配位結合しているコロイド中で、ある特定の所望の性質を成し遂げるために調節可能な、例えばカリックスアレーン関連化合物などの配位子が同様に提供される。これらの配位子を作製し、コロイドとこれらを配位結合させる方法もまた提供される。さらに、化合物を作製するための方法及びこれらの使用のための方法もまた、これらの遊離状態及び固定化した状態の両方で提供される。カリックスアレーン関連化合物の錯体及び本発明の金属コロイドは、当技術分野で公知のものも含め、金属媒介プロセスで触媒されるべき触媒プロセスに使用することができる。
【0018】
本発明は、例示的配位子としてカリックスアレーン様部分に依存して例示される。本発明は、カリックスアレーン様部分と結合した、金などの貴金属のコロイドを参照することによりさらに例示される。結合配位子は、同様に金属コロイドの表面で結合及び/又は反応することができる分子への接触可能性も同時に提供しながら、凝集/分解からの金属部分の保護を提供する。本発明の例示的実施形態において、配位子、例えばカリックスアレーンを使用することによって、電子環境、立体的接触、パターン化、及び、最終的に金属コロイド中心の触媒活性を調整することができる。さらに、金属コロイド、配位子(例えばカリックスアレーン関連分子など)及びその錯体の合成のための一般化できる手法が提供される。例示的実施形態において、本発明は、例えば、カリックスアレーン関連部分などの配位子との配位による、金属コロイド、例えば金含有コロイドの反応性の制御面の方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】単結晶エックス線の1a、1b及び1cの結晶構造を示す。
【0020】
【図2】(a)1a−赤(0.9±0.1nm、242粒子)、(b)1b−赤(1.1±0.2nm、295粒子)、及び(c)1c−赤(1.9±0.5nm、257粒子)のHAADF−STEMイメージを表す。スケールバーは、5nmを示す。
【0021】
【図3】結合した2NTに応じて、1a−赤(正方形)及びAu11(PPh3)7(SCN)3(三角形)の2NTの蛍光発光強度を示す。各溶液は、ジクロロメタン中の55μMの金原子を含有し、283nmで励起される。発光強度は、ジクロロメタン溶媒のベースラインを差し引く。
【0022】
【図4】カリックス[4]アレーン−結合した(a)4nm金コロイド及び(b)サブナノメートルの金コロイドの略図である。(b)の中の別のカリックス[4]アレーンを結合するのに不十分な空間が、カリックス[4]アレーンのサイズよりわずかに小さく、コロイドの総表面積の有意な割合を占める小分子サイズの空隙の生成を引き起こす。(c)HAADF−STEMを使用して測定した、2NT(下界)と結合した金表面原子と、コロイド直径の割合。
【0023】
【図5】−60℃での1a−赤の31P NMRスペクトルである。
【0024】
【図6】室温での1aの31P NMRスペクトルである。
【0025】
【図7】−60℃での1aの31P NMRスペクトルである。
【0026】
【図8】室温での1aの1H NMRスペクトルである。
【0027】
【図9】室温での1bの31P NMRスペクトルである。
【0028】
【図10】室温での1bの1H NMRスペクトルである。
【0029】
【図11】室温での1cの31P NMRスペクトルである。
【0030】
【図12】室温での1cの1H NMRスペクトルである。
【0031】
【図13】1a−赤の分子のイオンフラグメント(上の図)及び[Au11L2Cl3]2+の理論的シミュレーションを示すESI質量スペクトルである。L=tert−ブチル−カリックス[4]−(OMe)2(OCH2PPh2)2(下の図)。
【0032】
【図14】前駆体、(a)1a、(b)1b、及び(c)1cの[M−Cl]+分子イオンのESI質量スペクトル(上の図)及び理論的シミュレーション(下の図)である。
【0033】
【図15】CH2Cl2中の1a−赤、1b−赤及び1c−赤のUV−可視スペクトルである。
【0034】
【図16】1a、1b、1c、及び2bの単結晶構造である。1a及び1b中の溶媒分子は排除している。水素原子以外の各熱振動楕円体は、50%の可能性を表す。
【0035】
【図17】tert−ブチル−カリックス[4]−(OR)2(OCH2PPh2)2(R=C3H7−n)の単結晶エックス線の結晶構造である。ホスフィン基の一つが無秩序であるにもかかわらず(すなわち、P2A、77%、P2B、23%)、両方のホスフィン基は、底縁部の酸素平面上で組織化されている。
【0036】
【図18】(a)5μMの2NTを1a−赤、1b−赤、及び1c−赤に結合する前(黒)及び後(赤)のクラスターのUV−Visスペクトルである。このスペクトルは350nmで規格化されている。
【0037】
【図19】1b−赤上の2NTの蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Auコロイド1つ当たりの2NTは、それぞれ0.92(i)、1.38(ii)、1.61(iii)、1.84(iv)、2.07(v)、及び2.30(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中の4.35uMのAuコロイドを含有し、283nmで励起される。Auコロイドパウダーは、38重量%金(XPS結果に基づく)からなり、各コロイドは、46個の金原子(TEMイメージに基づく)からなると仮定して、コロイド濃度を算出する。
【0038】
【図20】1c−赤上の2NTの蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Auコロイド1つ当たりの2NTは、それぞれ1.21(i)、2.41(ii)、3.62(iii)、4.82(iv)、6.03(v)、及び7.23(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中の0.83uMのAuコロイドを含有し、283nmで励起される。Auコロイドパウダーは、100%金からなり、各コロイドは、241個のAu原子(TEMイメージに基づく)からなると仮定してコロイド濃度を算出する。
【0039】
【図21】(a)1a−赤及び(b)Au11(PPh3)7(SCN)3上の2NTの蛍光発光スペクトルである。Au11フラグメント1つ当たりの2NTは、それぞれ(a)の中で1.15(i)、1.38(ii)、1.61(iii)、1.84(iv)、2.07(v)、及び2.30(vi)であり、(b)の中で、(i)、0.125(ii)、0.25(iii)、0.375(iv)、0.5(v)、及び0.625(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中に5μMのAu11フラグメントを含有すると仮定し、283nmで励起される。
【0040】
【図22】[Au11(PPh3)8Cl2]PF6上の2NTの(a)蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Au11フラグメント1つ当たりの2NTは、それぞれ、0(i)、0.15(ii)、0.3(iii)、0.45(iv)、0.6(v)、及び0.75(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中に5μMのAu11フラグメントを含有し、283nmで励起される。
【0041】
【図23】合成後に2a−及び2c−結合した4−nm金コロイド上の2NTの蛍光発光強度を示す(▲:1.25−単層等価2a−結合コロイド、▼:2−単層等価2a−結合コロイド、△1.25−単層等価2a−結合コロイド、▽:2−単層等価2a−結合コロイド)。2a−及び2c−結合したコロイドは、1a−赤及び1c−赤に関連する。
【0042】
【図24】1a−赤、1b−赤、及び1c−赤の(a)P2p及び(b)Au4fXPS結果を示す。(a)の1a−赤結果の逆畳み込みが(c)において示されている。結合エネルギーは、284.8eVで、C1sにより補正される。
【0043】
【図25】(a)−57℃でのカリックスアレーンの脂肪領域の1H NMR(CDCl3、DRX−500MHz)を(b)配座異性体の配置と共に示す。
【0044】
【図26】配座異性体の計算した分布である。
【0045】
【図27】XPS及び元素分析(ICP)結果と一致する1a−赤、並びにHAADF−STEMを介して観察したサイズの略図である。これは、5つのカリックスアレーンホスフィン配位子が結合している、Au11金属コロイドの中心からなる。これらカリックスアレーンホスフィンのうちの2つは、二座の形式で金表面に結合し、残りの3つは、非結合のPがホスフィンオキシドとして酸化状態+5となるように、単座の形式で結合している。VDW摩擦が最小化するように、カリックスアレーンを金表面上に手作業で配置した。次いでこの系をMaestro9.5、Macromodel 9.7(2009 Schrodinger、LLC)のOPLS力場を用いて最小化の対象とし、Au原子への結合が強制された。明瞭となるよう、tert−ブチル基及び水素は計算に含まれるが、表示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
「アルキル」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、完全に飽和した、一価又は多価不飽和であってよく、一価、二価及び多価の基を含み、場合によって明示された炭素原子の数を有する(すなわちC1〜C10は1から10個の炭素を意味する)、直鎖又は分枝の鎖、又は環式の炭化水素基、又はこれらの組合せを意味する。飽和した炭化水素基の例として、これらに限らないが、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどのホモログ及び異性体が挙げられる。不飽和のアルキル基は、1つ又は複数の二重結合又は三重結合を有するものである(すなわち、アルケニル及びアルキニル部分)。不飽和のアルキル基の例として、これらに限らないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニル、並びにより高級なホモログ及び異性体が挙げられる。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。「アルキル」という用語は、「アルキレン」を指すことができ、アルキレンは、それ自体で又は別の置換基の一部として、アルカンから誘導された二価の基を意味し、これに限らないが、−CH2CH2CH2CH2−で例示することができ、「ヘテロアルキレン」として以下に記載されたような基をさらに含む。通常、アルキル(又はアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子を有することになり、10個以下の炭素原子を有するような基が好ましい場合がある。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」は、より短い鎖のアルキル又はアルキレン基であり、一般的に8個以下の炭素原子を有する。ある実施形態において、アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29及びC30アルキルから選択されるいずれかの組合せ(単一を含む)を指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C20アルキルを指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C10アルキルを指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C6アルキルを指す。
【0047】
「アルコキシ」「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)という用語は、これらの従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、窒素原子(例えばアミン基)、又は硫黄原子を介して、分子の残りに結合しているようなアルキル基及びヘテロアルキル基を指す。
【0048】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で又は別の用語と組み合わせて、他に述べられていない限り、安定した直鎖又は分枝鎖、又は環式アルキル部分、又はこれらの組合せを意味し、1個又は複数の炭素原子と、O、N、Si、B及びSからなる群から選択される、少なくとも1個のヘテロ原子とからなり、前記窒素及び硫黄原子は、場合によって酸化されていてもよく、前記窒素ヘテロ原子は、場合によって四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、S、B及びSiは、ヘテロアルキル基の内側の位置又はアルキル基が分子の残りに結合している位置のいずれかに配置されてもよい。例として、これらに限らないが、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2,−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3、及び−CH=CH−N(CH3)−CH3などが挙げられる。2個までのヘテロ原子が、例えば、−CH2−NH−OCH3及び−CH2−O−Si(CH3)3などのように連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価の基を意味し、これらに限らないが、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−及び−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−などが例示される。ヘテロアルキレン基に関しては、ヘテロ原子が、鎖末端のいずれか一方又は両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基に関しては、連結基の幾何学的配置は、連結基の式が書かれた方向によって暗示されない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−及び−R’C(O)2−の両方を表す。
【0049】
「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」という用語は、これら自体で又は他の用語と組み合わせて、他に述べられていない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環式の形を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りに結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例として、これらに限らないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例として、これらに限らないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0050】
「アシル」という用語は、部分−C(O)R(Rは、本明細書中で定義された意味を有する)を含む種を指す。Rに対する例示的な種として、H、ハロゲン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルが挙げられる。
【0051】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、これら自体で又は別の置換基の一部として、他に述べられていない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意図する。例えば、「ハロ(C1〜C4)アルキル」という用語は、これらに限らないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意図する。
【0052】
「アリール」という用語は、他に述べられていない限り、単環又は多環(好ましくは1〜3環)であってよい多価不飽和の、芳香族置換基を意味し、これらの環は、一緒に縮合又は共有結合により連結されている。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有するアリール基(又は環)を指し、前記窒素及び硫黄原子は、場合によって酸化されており、前記窒素原子(単数又は複数)は、場合によって四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りに結合することができる。アリール基及びヘテロアリール基の非限定的な例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、及び6−キノリルが挙げられる。上に記述したアリール及びヘテロアリール環系のそれぞれに対する置換基は、以下に記載した許容可能な置換基の群から選択される。
【0053】
略して、「アリール」又は「ヘテロアリール」という用語は、他の用語と組み合わせて使用された場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)は、上で定義されたアリール環及びヘテロアリール環の両方を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基がアルキル基に結合されているような基を含むことを意図し(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)、これらには、炭素原子(例えばメチレン基)が、例えば酸素原子などで置き換えられているアルキル基が含まれる(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)。
【0054】
ある実施形態において、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールのいずれかは、置換されていてもよい。各タイプの基に対する好ましい置換基を以下に提供する。
【0055】
アルキル及びヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれる基を含む)に対する置換基は、「アルキル基置換基」と総称的に呼ばれている。ある実施形態において、アルキル基置換基は、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、−NRSO2R’、−CN及び−NO2(数は、0〜(2m’+1)の範囲内であり、m’は、このような基の中の炭素原子の総数である)から選択される。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、例えば1〜3個のハロゲンで置換されているアリール、置換又は非置換のアルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を指す。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリール、アルコキシ、チオアルコキシ基、及びアリールアルキルから選択される。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素及び非置換のアルキルから選択される。例えば、本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、2つ以上のこれらの基が存在する場合には各R’、R”、R’”及びR””基が独立して選択されるように、R基のそれぞれが、独立して選択される。R’及びR”が同じ窒素原子に結合している場合、これらは、窒素原子と組み合わせることによって、5員、6員、又は7員の環を形成することができる。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニル及び4−モルホリニルを含むことができる。ある実施形態において、アルキル基置換基は、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。
【0056】
アルキル基に対して記載した置換基と同様に、アリール基及びヘテロアリール基に対する置換基は、「アリール基置換基」と総称的に呼ばれている。ある実施形態において、アリール基置換基は、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、−NRSO2R’、−CN及び−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシ、及びフルオロ(C1〜C4)アルキルから選択され(数は、0〜芳香環系上の開放原子価の総数の範囲内である)、ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される。ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のアリール及び非置換のヘテロアリールから選択される。ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素及び非置換のアルキルから選択される。例えば,本発明の化合物が、2つ以上のR基を含む場合、2つ以上のこれらの基が存在する場合に、各R’、R”、R’”及びR””基が独立して選択されるように、R基のそれぞれが、独立して選択される。ある実施形態において、アリール基置換基は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のヘテロシクロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される。
【0057】
アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−T−C(O)−(CRR’)q−U−(式中、T及びUは、独立して、−NR−、−O−、−CRR’−又は一重結合であり、qは、0〜3の整数である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−A−(CH2)r−B−(式中、A及びBは、独立して−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−又は一重結合であり、rは、1〜4の整数である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。こうして形成された新しい環の一重結合のうちの一つは、二重結合で場合によって置き換えられていてもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つが、式−(CRR’)s−X−(CR”R’”)d−(式中、s及びdは、独立して、0〜3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、又は−S(O)2NR’−である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。置換基R、R’、R”及びR’”は、独立して、水素又は置換又は非置換の(C1〜C6)アルキルから選択されるのが好ましい。
【0058】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)及びホウ素(B)を含む。
【0059】
他に特定されていない限り、「R」という記号は、アシル、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のシクロアルキル、置換又は非置換のヘテロシクロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0060】
「塩(単数又は複数)」という用語は、本明細書に記載されている化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸又は塩基で調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が、比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の塩基と、純正又は適切な不活性溶媒のいずれかの中で接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、又はマグネシウムの塩、又は同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の酸と、純正又は適切な不活性溶媒のいずれかの中で接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。酸付加塩の例として、例えば塩酸、臭水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸水素酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などの無機酸から誘導されたもの、並びに比較的無毒の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などから誘導される塩が挙げられる。同様に含まれているのが、アミノ酸の塩、例えばアルギネートなど、及び有機酸の塩、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸など(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science、第66巻:1〜19頁(1977年)を参照されたい)である。特定の具体的な本発明の化合物は、化合物を塩基又は酸性付加塩のいずれかへと変換させることできる塩基性及び酸性の官能基の両方を含有する。塩の水和物も同様に含まれる。
【0061】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学的中心)又は二重結合を所有する。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体及び個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。光学活性な(R)−及び(S)−異性体s並びにd及びl異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製してもよく、又は従来の技法を使用して分解してもよい。本明細書に記載されている化合物は、オレフィン二重結合又は他の幾何学的不斉中心を含有し、特に指定のない限り、化合物は、E及びZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。同様に、すべての互変異性体の形態が含まれる。
【0062】
本明細書中に開示されている化合物は、このような化合物を構成する、1つ又は複数の原子の位置で非天然の比率の原子アイソトープも含有し得る。例えば、化合物は、放射性同位元素、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)又は炭素−14(14C)などで放射標識してもよい。本発明の化合物のすべての同位体の変形は、放射性であるかどうかに関わらず、本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0063】
実施形態
一態様において、本発明は、金属コロイド、配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)及びその錯体を提供する。一態様において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、該複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含む。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つは、前記金属コロイドより大きい。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子と接触可能である。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)各それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つは、前記金属コロイドより大きく、前記金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子と接触可能である。
【0064】
「金属コロイド」という用語は、重要な金属−金属結合特徴を有する結合によりつなぎ合わせられた少なくとも2個の金属原子を含む粒子を指す。本発明の例示的金属コロイドは、複数の貴金属原子を含む金属コロイド、例えば複数の金原子を含む金属コロイドである。金属コロイドに対して有用な金属原子として、Ir、Pt、Pd、Ni、Mo、W、Co及びAuから選択されるものが挙げられる。
【0065】
金属コロイドのサイズは、様々であってよい。ある実施形態において、金属コロイドは、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される程度の長さの直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される程度の長さより短い直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、およそ1.0nm未満の直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、およそ0.9nm未満の直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の金属原子を含む。例示的実施形態において、金属コロイドは、11個の金属原子、例えば11個のAu原子を含む。
【0066】
例示的実施形態において、金属コロイドは、1つ又は複数の配位子(例えば、カリックスアレーン様部分)に結合している。コロイドは、2つ以上の配位子を含むことができ、これらの部分は、同一であっても、異なってもよい。様々な実施形態において、金属コロイドは、該金属コロイドに結合できるだけの多くの数の配位子と結合できる。配位原子と金属原子の典型的なモル比は、1付近であり、通常1と2の間である。典型的な配位子と金属原子の比は、0.5に近く、例示的実施形態では、0.5〜1の間である。
【0067】
例示的実施形態において、少なくとも2つの配位子は、金属コロイドよりも大きい。サイズの差の測定は、当業者であれば理解されるように、多くのいかなる方式でも求めることができる。例えば、ある実施形態において、配位子の長さが金属コロイドの直径よりも長いことによってそれぞれ特徴づけられている場合、2つの配位子は、金属コロイドよりも大きい。この場合、長さは、金属コロイドの表面の接線と平行なベクターに沿って測定され、この接線は、金属コロイドの表面の垂線に垂直であり、この垂線は、配位子の中心に向けられているか、又は中心を通り抜ける。別の例では、少なくとも2つの次元において配位子の直径のそれぞれが、金属コロイドの直径よりも大きい。
【0068】
例示的な実施形態において、錯体の金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子に、接触可能である。換言すれば、一態様において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーが前記複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つが前記金属コロイドよりも大きく、前記金属コロイドが前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。
【0069】
これらの文脈において、結合事象の間、凝集及び/又は分解プロセスを介して錯体の安定性を失うことなく、溶液又は気相からの分子を錯体が結合することができる場合、金属コロイドは「接触可能」である。接触可能性は、多くの方法で評価することができる。ある実施形態において、少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の表面金属原子が、配位子よりも小さいプローブ分子に接触可能である。ある実施形態において、少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の金属原子の表面積が、配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。例示的実施形態において、少なくともおよそ5%、又はおよそ5%〜25%の表面金属原子が、配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。例示的実施形態において、金属コロイドは、金属原子を介してさらなる配位子にさらに結合することはできない。
【0070】
配位子に結合している金属コロイドの接触可能な表面積の量に対する標準的な測定は、2−ナフタレンチオール(2−NT)の表面への結合を判定し定量することである。金属中心に結合した配位子よりも小さな他のプローブもまた有用である。例えば、チオール化したDNA及びRNAは、プローブ分子として使用することができる。
【0071】
「配位子」という用語は、当技術分野で普通これに帰属する意味を有する。例示的配位子は、立体的に嵩高い種、例えば大環状分子(例えば、カリックスアレーン様配位子、ポリアミン大環状分子、ポルフィリン)、デンドリマー及び他の分枝オリゴマー又はポリマーの種などを含む。ある実施形態において、配位子は、有機配位子である。「有機」という用語は、炭素と水素とを含む化合物を指し、場合によって、当技術分野で理解されるような有機分子に一般的に見出される他の原子も包含し、このような他の原子には、窒素、酸素、リン及び硫黄が含まれる。以下に記載する通り、配位子は、リンカーを一般的に含み、例示的実施形態において、配位子は、1つのリンカー又は2つのリンカーを含み、これらは、同一であっても、異なってもよい。
【0072】
例示的実施形態において、少なくとも1つの(例えば、2つ以上)配位子は、カリックスアレーン関連化合物である。「カリックスアレーン関連化合物」又は「カリックスアレーン様配位子」という用語は、カリックスアレーンと、さらに架橋部分により連結されたアリール基又はヘテロアリール基を含有することによって、「バスケット」を形成する点、及び他の環式基を同様に連結することによって形成された「バスケット」タイプの化合物を形成するという点でカリックスアレーンと同様の化合物を含むことを意図する。「再考:カリックスアレーン」という教科書(C.David Gutsche、Royal Society of Chemistry、1998)は、例えば23〜28頁にこれら化合物の一部を記載し、この教科書は、本明細書中での参照により本明細書に組み込まれている。「カリックスアレーン関連化合物」は、この教科書に述べられている化合物のタイプを含むことを意図する。したがってこれは、フェノール基の間の1つ又は複数の架橋が2個以上の炭素原子を含有する「ホモカリックスアレーン」と呼ばれる化合物を含む。Gutscheにおいて与えられた一例は、62番であり、これは、シクロブチル架橋を含む。
【0073】
「カリックスアレーン関連化合物」として、例えば、それぞれ1つ又は複数の酸素、窒素、ケイ素又は硫黄架橋を、フェノール基の間に含有する、オキサカリックスアレーン、アザカリックスアレーン、シリカカリックスアレーン及びチアカリックスアレーン、並びに1つ又は複数の白金架橋を有するカリックスアレーン化合物なども挙げられる。この用語はまた、例えば、Gutsche(1998年)において「カリックスアレーン関連シクロオリゴマー」と呼ばれる化合物など、例えばフェノールの残基よりはむしろフラン又はチオフェンから形成される同様の構造体を含む。他のカリックスアレーン関連化合物として、例えば、カリックス[n]ピロール、カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール又はカリックス[m]ピリジンなどが挙げられる。「カリックス[n]ピロール」は、α−位置で連結された「n」個のピロール環を有する大環状分子である。「カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール」は、α−位置で連結された、「m」個のピリジン環及び「n」個のピロール環を有する大環状分子である。「カリックス[m]ピリジン」は、α−位置で連結された「m」個のピリジン環を有する大環状分子である。
【0074】
カリックスアレーン配位子の骨格は、遷移金属で錯体を形成する配位子の能力を妨げない他の原子で置換することができる。例えば、カリックスアレーン配位子の骨格は、アルキル、アリール、ハライド、アルコキシ、チオエーテル、アルキルシリル、又は他の基で置換することができる。
【0075】
例示的カリックスアレーン関連化合物は、4、6、又は8つのフェノール部分を有する。したがって好ましいカリックスアレーンは、カリックス[4]アレーン、カリックス[6]アレーン、及びカリックス[8]アレーンである。カリックス[4]アレーンがより好ましい。一部の好ましい触媒系において、カリックスアレーン関連化合物は、p−アルキルカリックスアレーンであり、より好ましくはp−t−ブチルカリックスアレーンである。これらの物質を作製するための合成手順は、精密に磨きがかけられ、最適化されており、出発物質、例えば、p−t−ブチルフェノールは、容易に入手可能である。
【0076】
同様に提供されるのは、コロイドと錯体を形成する際に、カリックスアレーン関連部分に容易に変換される配位子である。本実施形態において、本発明は、1つ又は複数のアリール部分の1つ又は複数の位置で誘導体化された、カリックスアレーン関連化合物を提供し、このカリックスアレーン関連化合物は、コロイドの少なくとも1個の金属原子と配位結合することが可能な配位原子を含むリンカーを有する。
【0077】
例示的カリックスアレーン関連化合物は、ホルムアルデヒドと縮合したフェノール及び置換フェノールの環式オリゴマーであるカリックスアレーンであり、様々な実施形態において、一般的な構造:
【化1】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16である)により特徴づけられる。例示的実施形態において、nは4である。波線は、複数のこれら単量体のユニットが結合して閉環を形成することを表す。このような分子についての一般的情報は、例えば、Bauerら、JACS107、6053(1985年)及びC.David Gutscheによる教科書「カリックスアレーン」(これは、超分子化学(J.Fraser Stoddart編;Royal Society of Chemistry、1989年)の中の研究書の一部である)、及び同じ著者による「再考:カリックスアレーン」(1998年)に中に見出すことができる。カリックスアレーンは、「バスケット」の形を有する環式オリゴマーの形態であり、その空洞は、イオン及び分子を含めた多数のゲスト種に対して、結合部位としての役目をすることができる。
【0078】
ある実施形態において、基R2は水素であってよく、又はこれらだけに限らないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホネート、ホスホン酸、チオール、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルベン、スルホキシド、ホスホニウム、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル及びハロゲンを含めたいくつかのアリール置換基のいずれかであってよい。例示的カリックスアレーンにおいて、R2は、通常、OR1基に対してパラ位の単一の置換基を表す。しかし、本発明において有用なカリックスアレーンは、1つ又は複数のR2置換基を含むことができる。2つ以上の置換基が存在する場合、この置換基は、同一であっても、異なってもよい。2つの置換基を有する例示的種類のカリックスアレーン化合物は、カリックス[n]レソルシンアレーンとして当技術分野で公知であり、これは、互いにつなぎ合わせられたレゾルシノール部分を含み、通常、環の周囲に異なる配置でフェノキシ基を所有する。
【0079】
例示的R1置換基として、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリール部分が挙げられる。R1はまたHであってもよい。
【0080】
例示的実施形態において、少なくとも1つのR1は、1つ又は複数の配位原子を含む。「配位原子」とは、金属原子と配位結合する、特に金属コロイドの金属原子と配位結合(又は配位結合を形成する)することが可能な構成要素である。例示的「配位原子」として、窒素、酸素、硫黄、リン及び炭素(例えば、カルベンの場合など)が挙げられる。配位原子は、中性でも、電荷があってもよく、例えば、塩の成分又はこれから派生したものであってよい。
【0081】
「カリックスアレーン関連部分」は、配位原子を含むリンカーを介しての金属コロイドへの配位により、「カリックスアレーン関連化合物又は分子」から誘導された構造体である。
【0082】
「金属コロイド」という用語は、同一の金属、又は異なる金属であってよい、少なくとも2個の金属原子で構成される金属粒子の種を指す。金属コロイドは通常、少なくとも他の1個の有機配位子(例えば、CO)を含む。金属コロイド上の複数の配位子は、同一であっても、異なってもよい。
【0083】
したがって、さらなる例示的態様において、本発明は、カリックスアレーン関連部分と錯体を形成する金属コロイドを含む錯体を提供する。本発明の例示的化合物は、構造:
M−L−C
(式中、Mは金属コロイドであり、Lは、金属コロイドをC、カリックスアレーン関連部分に結合するゼロ次又はより高次のリンカーである)を有する。
【0084】
例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金原子を含む金属コロイドと、(b)リンカーを含む2つ以上のカリックスアレーン関連化合物とを含み、前記リンカーが、複数の金原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含む。例示的実施形態において、カリックスアレーン関連化合物の少なくとも2つは、金属コロイドより大きい。さらなる例示的化合物において、金属コロイドは、例えば、カリックスアレーン関連化合物より小さいプローブ分子に接触可能である。
【0085】
本明細書に記載されているいずれかの実施形態において、1つ又は複数のカリックスアレーン関連化合物は、式:
【化2】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数である)を有する。ある実施形態において、nは、4、5、6、7及び8から選択される整数である。例示的実施形態において、nは4である。
【0086】
ある実施形態において、R1は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分である。例示的実施形態において、少なくとも1つのR1は、配位原子を含む。例示的実施形態において、2つのR1は、配位原子を含む。ある実施形態において、R1は、置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、R1はC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルから選択される。ある実施形態において、R1はプロピルである。ある実施形態において、R1はメチルである。ある実施形態において、R1はHである。
【0087】
ある実施形態において、R2は、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分である。ある実施形態において、R2は置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、R2はC1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキルから選択される。ある実施形態において、R2はtert−ブチルである。ある実施形態において、R2は、−OR1に対してパラ位にある。
【0088】
ある実施形態において、少なくとも1つのR1はリンカーである。例示的実施形態において、1つのR1はリンカーである。例示的実施形態において、2つのR1はリンカーであり、これらは同一であっても、異なってもよい。「リンカー」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、固体支持体をカリックスアレーン関連化合物に連結している、又はカリックスアレーン関連化合物を金属コロイドに連結している、本明細書中に開示されている本発明の構成要素を、共有結合により一緒に連結する、C、N、O、S、Si、B及びPからなる群から選択される、1〜30個の非水素原子を組み込んだ、単一の共有結合(「ゼロ次」)又は一連の安定した共有結合を指す。例示的リンカーとして、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の非水素原子を含む。他に特定されていない限り、「連結している」「連結された」「連結」「共役している」「共役した」及び結合に関係する類似の用語は、リンカーを利用する技法及びリンカーを組み込む種を指す。カリックスアレーン関連化合物は、複数のリンカーを含むことができ、したがってより高いレベルの配位座数(denticity)が得られる。
【0089】
ある実施形態において、リンカーは、ホスフィン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される部分である。
【0090】
例示的実施形態において、リンカーは、配位原子を含む。例示的実施形態において、配位原子は、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される。配位原子は、当技術分野で公知の多数の様々な部分を介して提供することができる。便宜のため、これらの部分は、P、C、N及びO含有部分と呼ぶことができる。
【0091】
例示的実施形態において、リンカーは、P含有部分である。一つの特に有用なP含有部分はホスフィンである。様々な例示的実施形態において、リンカー上の配位原子は、ホスフィン部分のリン原子である。ある実施形態において、「ホスフィン」という用語は、総称的に、−Y1P(Y2)(Y3)、(式中、Y1は、結合、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択され、Y2及びY3は、独立して、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される)を指す。ある実施形態において、Y2及びY3は、それぞれ置換又は非置換のアリールである。例示的実施形態において、Y2及びY3はそれぞれフェニルである。ある実施形態において、Y1は、置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、Y1はC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルである。ある実施形態において、Y1はメチルである。ある実施形態において、Y1は結合である。
【0092】
様々な例示的実施形態において、配位子とコロイドの間のリンカー上の配位原子は、ホスフィン部分のリン原子である。例示的実施形態において、本発明は、カリックスアレーンホスフィン配位子を含有する金コロイド、例えば、単座のtert−ブチル−カリックス(OPr)3(O−CH2−PPh2)及び二座のtert−ブチル−カリックス(OMe)2(O−CH2−PPh2)2カリックスアレーン配位子、及びこのような配位子と錯体を形成した金属コロイドなどを提供する。
【0093】
ホスフィン配位子と同様に、ホスフィナイト、ホスホナイト及びホスファイトが、遷移金属触媒反応において汎用性のある配位子として最近出現した。隣接の、負に帯電したヘテロ原子、例えばN及びOなど(ただしこれらに限らない)の位置決めによって、触媒反応に有利となることが多いこれら配位子の電子特性の微妙な調節を可能にする。隣接するO及びNの存在は、これらのホスフィン類似体と比較して、これら配位子にさらなる酸化的安定性を提供する。これら配位子は、アミノアルコール及びキラルジオール由来の大きな天然及び合成のキラルプールが入手可能なことから、高収率で容易に作製することができる(モジュール式手法に関しては、Velder、J.;Robert、T.;Weidner、I.;Neudorfl、J.−M.;Lex、J.;Schmalz、H−G.Adv.Synth.Catal.2008年、第350巻、1309〜1315頁を参照されたい、;ホスファイト合成の概説に関しては、Montserrat Dieguez、Oscar Pamies、Aurora Ruiz、及びCarmen Claver、Methodologies in Asymmetric Catalysis、第11章、2004年、161〜173頁、ACS Symposium Series、Volume880(ホスファイトの合成に関する)を参照されたい、ホスホルアミダイトの合成に関しては、Adriaan J.Minnaard、Ben L.Feringa、Laurent Lefort及びJohannes G. de Vries Acc.Chem.Res.、2007年、第40巻(12)、1267〜1277頁を参照されたい)。
【0094】
ホスフィナイト配位子が使用された例は、Rhで触媒された、オレフィンの不斉水素化(Blankenstein、J.;Pflatz、A.Angew Chem.Int.Ed.、2001年、第40巻、4445〜47頁)及びPd触媒されたSuzukiクロスカップリング反応(Punji、B.;Mague、J.T.;Balakrishna、M.S.DaltonTrans.、2006年、1322〜1330頁)である。
【0095】
Pflatz及び共同研究者は、カルベン源としてジアゾ酢酸エチルを使用して、Ruを触媒とした、スチレンの不斉シクロプロパン化に対して、オキサゾリンベースのホスホナイト配位子を使用した。同じ触媒はまた、2−プロパノール及び対応するナトリウムアルコキシドの存在下で、移動水素化反応を行うことも可能であった(Braunstein、P.;Naud、F.;Pflatz、A.;Rettig、S.Organometallics、2000年、第19巻、2676〜2683頁)。Pringle、Ferringa及び共同研究者は、Cu(I)−ホスホナイトベースの触媒を用いた、ジエチル亜鉛のエノンへのエナンチオ選択性の共役付加を示した(Martorell、A.;Naasz、R.;Ferringa、B.L.;Pringle、P.G.、Tetrahedron Asymmetry、2001年、第12巻、2497〜2499頁)。Ding及び共同研究者は、エナンチオ選択性のヒドロホルミル化反応に対してフェロセンベースの二座のホスホナイト配位子を使用した(Peng、X.;Wang、Z.;Xia、C.;Ding、K.Tetrahedron Lett.、2008年、第49巻、4862〜4864頁)。
【0096】
Rajanbabu及び共同研究者は、不斉のヒドロビニル化反応に対してニッケルホスフィナイト、ホスファイト及びホスホルアミダイト配位子を使用した(Park、H.;Kumareswaran、R.;Rajanbabu、T.V.R.Tetrahedron、2005年、第61巻、6352〜67頁)。Sandovalらは、デヒドロアミノ酸派生物の不斉の水素化に対してRh(I)ジホスファイト配位子を使用した(Sandoval、C.A.;Liu、S.J.Molecular.Catalysis.A、2010年、第325巻、65〜72頁)。アレーンのPdホスファイトで触媒された脱ハロゲン化がLeeらによって報告された(Moon、J.;Lee、S.J.Organometal.Chem.、2009年、第694巻、473〜77頁)。アリルアルコールを使用して、Pd−トリフェニルホスファイトが脱水アリル化を触媒することが示された(Kayaki、Y.;Koda、T.;Ikariya、T.J.Org.Chem.、2004年、第69巻、2595〜97頁)。Pdに基づくビアリールホスファイト触媒は、酢酸アリル、炭酸アリル及びハロゲン化アリルの不斉アリル置換反応に効果的なことが知られている(Dieguez、M.;Pamies、O.Acc.Chem.Res.、2010年、第43巻、312〜22頁)。カリックスアレーンホスファイトは、Rh(0)中、オレフィンで触媒されたヒドロホルミル化反応において、線状対分枝の高い比を得るための半球状のキレーター配位子として使用されてきた(Monnereau、L.;Semeril、D.;Matt、D.;Toupet、L.Adv.Synth.Catal.2009年、第351巻、1629〜36頁)。
【0097】
ホスホルアミダイト配位子は、触媒による不斉水素化(Minnaard、A.J.;Feringa、B.L.;Lefort、L.;de Vries、J.G.Acc.Chem.Res.、2007年、第40巻、1267〜77頁)、エノンへの共役付加(Jagt、R.B.C.;de Vries、J.G.;Ferringa、B.L.;Minnaard、A.J.Org.Lett.、2005年、第7巻、2433〜35頁)、及びジエチル亜鉛を用いたアリルのアルキル化(Malda、H.;vanZijl、A.W.;Arnold、L.A.;Feringa、B.L.Org.Lett.、2001年、第3巻、1169〜1171頁)に使用されてきた。
【0098】
したがって、ある実施形態において、リンカーは、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト及びホスホルアミダイトから選択される。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換された、アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0099】
ある実施形態において、リンカーはC含有部分である。ある実施形態において、リンカーはカルベンである。特に有用なカルベンとして、Arduengoカルベンが挙げられる。一例は一般式:C(R’N)(R’’N)(式中、R’及びR’’は、場合によって架橋されることによって、ヘテロ環、例えばイミダゾール又はトリアゾールなどを形成する、様々な官能基(例えば総称的に上述したRなど)である)を有するジアミノカルベンである。例示的実施形態において、カルベンは、イミダゾリウム部分で置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)である。ある実施形態において、カルベンはイミダゾリウム部分でメチル置換されている。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0100】
例示的実施形態において、リンカーはN含有部分である。様々な有用なN含有部分として、アミン(Inorganica Chimica Acta、2005年、第358巻、2327〜2331頁)、イソニトリル(Organometallics、1994年、第13巻:760〜762頁)、ビス(ピラゾール−1−イル)メタン(Dalton Trans.、2004年、929〜932頁、例えばPdとの錯体−−同様の錯体はIrでも可能)、ピリジン(Dalton Trans.、2003年、2680〜2685頁、ピリジン−金錯体の例を記載−さらにIrなどの別の貴金属)、ビピリジン(Inorganic Chemistry、2008年、第47巻(12):5099〜5106頁、白金を含む、カリックスアレーンベースのビピリジン錯体を記載−さらにIrなどの別の貴金属、及びInorganica Chimica Acta、1989年、第165巻:51〜64頁、金を含むビピリジン錯体を記載−さらにIrなどの別の貴金属)、ターピリジン(J.Am.Chem.Soc.1999年、第121巻:5009〜5016頁を参照されたい。例えばイリジウムターピリジン錯体に関する)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁、TMEDAとのPd錯体について−同様の錯体がイリジウム金属で予測される)、及び1−10−フェナントロリン(1−10−フェナントロリンとのPd錯体については、Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁を参照されたい。−同様の錯体がイリジウム金属で予測される)が挙げられる。他のN含有部分として、アミド、アミン、アミン酸化物、ニトロソ、ニトロ、カルバメート及びピラゾールが挙げられる。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換された.アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0101】
例示的実施形態において、リンカーはO含有部分である。様々な有用なO含有部分として、アルコキシド(Dalton Trans.、2004年、929〜932頁、例えばPdとの錯体−−同様の錯体がIrで可能である)、水酸化物(Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁、例えばPdの水酸化物錯体−同様の錯体がIrで可能である)、フェノキシド(フェノキシは、配位子としてすべてのカリックスアレーンの底縁部のROH基に対して自然である)、アセチルアセトネート(acac)(Polyhedron、2000年、第19巻:1097〜1103頁)、カルボキシレート(Inorg.Chem.1993年、第32巻:5201〜5205頁(カルボキシレート−Ir錯体について)、並びにDalton Trans.2003年、2680〜2685頁及びVerlag der Zeitschriftfur Naturforschung、2002年、57b:605〜609頁、カルボキシレート−金の錯体の例を記載−Irなどの別の貴金属)、二酸化炭素及び炭酸(J.Am.Chem.Soc.1989年、第111巻:6459〜6461頁)が挙げられる。他のO含有部分として、パーオキソ、エステル及びエーテルが挙げられる。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0102】
ある実施形態において、リンカーは、アルキル及びヘテロアルキルから選択される部分であり、配位原子に加えて、本明細書に記載されている1つ又は複数のアルキル基置換基で場合によって置換されている。ある実施形態において、リンカーは、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、炭酸、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている。
【0103】
ある実施形態において、配位子、例えばカリックスアレーン関連化合物は、1つ又は複数のリンカーで官能化されている。様々な実施形態において、リンカーは、少なくとも1個の金属原子に配位結合することが可能な1つ又は複数の配位原子を含む。リンカーで官能化されたカリックスアレーン関連化合物は、当分野で認められた方法により調製することができる。例えば、様々な実施形態において、カリックスアレーン関連化合物は、少なくとも1つのフェノールサブユニットを含む。フェノールヒドロキシルは、脱プロトン化し、フェノキシドイオンは、フェノキシドイオンと相補的な反応性を有する反応性の官能基を有するリンカー前駆体と反応し、これによって、カリックスアレーン関連化合物のフェノール酸素原子を官能化する。フェノール以外の反応性の官能基は、カリックスアレーン関連化合物上の置換基として機能することができ、リンカーに対する結合ポイントとしての役目を果たすことができることを、当業者であれば理解されよう。
【0104】
本発明のリンカーで官能化された配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)を形成する上で有用な、例示的反応性の官能基を、以下に記載する。
【0105】
ある実施形態において、配位子及びリンカーの中心は、配位子中心上の第一の反応性官能基と、リンカーの前駆体上の、第2の反応性官能基との反応によりつなぎ合わせられている。反応性の官能基は、相補的な反応性を有し、反応することによって、2つの構成要素化合物の間に共有結合の連結基を形成する。
【0106】
例示的な反応性官能基は、これら前駆体、例えば、アルキル又はヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールの核又はアリール又はヘテロアリール核上の置換基上の任意の位置に位置することができる。同様に、反応性官能基は、アルキル又はヘテロアルキル鎖の任意の位置に位置する。様々な実施形態において、反応基が、アルキル(又はヘテロアルキル)、又は置換されたアルキル(又はヘテロアルキル)鎖に結合する場合、反応基は、鎖の末端位置に位置するのが好ましい。
【0107】
反応基及び本発明を実施する上で有用な種類の反応は一般的に、バイオコンジュゲート化学(Bioconjugate Chemistry)の分野で周知のものである。本発明のオリゴマーの反応性前駆体と共に利用可能な現在好まれている反応の種類は、比較的温和な条件下で進行するものである。これらの反応としては、求核置換(例えば、アミン及びアルコールと、ハロゲン化アシル、活性のあるエステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)及び炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、Diels−Alder付加)などが挙げられるが、これらに限らない。これら及び他の有用な反応は、例えば、Advanced Organic Chemistry、3月号、第3版、John Wiley & Sons、NewYork、1985年;Hermanson、Bioconfugate Techniques、Academic Press、San Diego、1996年;及びFeeneyら、タンパク質の改質;Advances in Chemistry Series、Vol.198、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982年において論じられている。
【0108】
例として、本発明に有用な反応性官能基は、これらに限らないが、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、硫化物、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、スルフィット、エナミン、イナミン、尿素、イソ尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、及びニトロソ化合物が挙げられる。また反応性官能基として、バイオコンジュゲートを調製するために使用されもの、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなども挙げられる。これら官能基のそれぞれを調製する方法は、当技術分野において周知であり、ある特定の目的のためのこれらの適用又は修飾は、当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler及びKaro編、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS、Academic Press、San Diego、1989年を参照されたい)。
【0109】
有用な反応性官能基の変換として、例えば以下が挙げられる:
(a)カルボキシル基:これらだけには限定されないが、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル)、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステルを含めた様々な誘導体に容易に変換される、
(b)ヒドロキシル基:エステル、エーテル、ハロゲン化物、アルデヒドなどに変換できる、
(c)ハロアルキル基:ハロゲン化物を、求核基、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン、又はアルコキシドイオンなどで後に置き換ることができ、これによって、ハロゲン原子の部位で新しい基の共有結合が生じる、
(d)ジエノフィル基:Diels−Alder反応に加わることが可能なもの、例えばマレイミド基など、
(e)アルデヒド又はケトン基:その後の誘導体化がカルボニル誘導体の生成を介して可能なもの、例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン又はオキシムなど、又はGrignard付加又はアルキルリチウム付加などの機序を介して可能なもの、
(f)ハロゲン化スルホニル基:例えば、スルホンアミドを形成するための、アミンとのそれに続く反応のためのもの、
(g)チオール基:例えば、ジスルフィドへ変換又はハロゲン化アシルと反応することができる、
(h)アミン基又はスルフヒドリル基:例えば、アシル化、アルキレート化又は酸化できる、
(i)アルケン:例えば、環付加、アシル化、マイケル付加などを施すことができる、
(j)エポキサイド:例えば、アミン及びヒドロキシル化合物と反応することができる、
(k)ホスホルアミダイト及び他の標準的官能基:核酸合成に有用である。
【0110】
これらの反応性官能基は、本発明のオリゴマーを組み立てるのに必要な反応に加わらない、又はこれを妨げないように選択することができる。或いは、反応性官能基は、保護基の存在により、反応に加わらないよう保護することできる。当業者であれば、このような選択されたセットの反応条件を妨げないように、ある特定の官能基をどのように保護するかを理解している。有用な保護基の例として、例えば、Greeneら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS、John Wiley&Sons、NewYork、1991年を参照されたい。
【0111】
本発明に有用な例示的カリックスアレーン様化合物は、
Ra−カリックス[Z]−(ORb)2(OCH2PPh2)2
(式中、Ra及びRbは、独立して、H、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。Zは、3、4、5、6、7及び8から選択される整数である。)である。
【0112】
さらなる配位子として、以下が挙げられる。
【化3−1】
【化3−2】
【0113】
1つ又は複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、1つ又は複数の金属コロイドに配位結合することができる。特に有用な金属コロイドは、Ir、Pt、Pd及びAuから選択される複数の金属原子を含む。1つ又は複数の貴金属から構成される、及び/又は1つ又は複数の非貴金属と関連する金属含有コロイド(例えば、金コロイド)を使用することができる。例示的実施形態において、金属コロイドは、複数のAu原子を、例えばAux(式中、xは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20から選択される)の形態で含む。金属コロイドは、配位子、例えば−CO又は他のある有機配位子でさらに置換することができる。
【0114】
ある実施形態において、複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、金属コロイドに配位結合されている。ある実施形態において、2、3、4又は5個の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、金属コロイドに配位結合する。ある実施形態において、複数の金属コロイドは、一個又は複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)に配位結合される。
【0115】
ある実施形態において、金属コロイドは、2個以上の配位子に対して配位的に飽和されている。「配位的に飽和した」という用語は、それ以上の配位子(例えばコロイドに結合したものと同じ構造の配位子)が金属コロイドと錯体を形成することができないように、1つ又は複数の配位子(例えば、カリックスアレーン関連部分)と錯体形成した金属コロイドを指す。さらなる結合パートナーのこのような排除の例示的機序は、立体障害である。様々な実施形態において、「配位的に飽和した」金属コロイドは、この混合物中に化学量論的に過剰の配位子が存在する混合物から生成されるが、コロイドは、この混合物中のすべての配位子と錯体を形成しているわけではない。様々な実施形態において、「配位的に飽和した」とは、1つ又は複数の配位子部分に結合した金属コロイドを指し、この金属コロイドは、第一の錯化反応と同一又は異なる条件下での第2の錯化反応において配位子部分と接触させた場合、さらなる配位子部分と錯体を形成しない。
【0116】
本明細書に記載されている錯体は、さらなる化合物を提供するためのさらなる条件の対象とすることができる。例えば、金属コロイドは、本明細書に記載されている錯体で反応を実施するステップを含むプロセスによって形成することができ、この反応は、高温分解、熱分解、酸化的分解及びこれらの組合せから選択される。このような金属コロイドは、本明細書中に記載されている様々な反応、具体的には触媒作用にこれらが適切となるような特性を有することができる。
【0117】
基体への固定化
本発明は、基体上に固定化することができる、本明細書に記載されている配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)、金属コロイド及び錯体を提供する。配位子は、リンカーを介して又は直接、すなわち、フレキシブルなテザーで配位子を誘導体化する必要なしに、基体に結合することできる。金属コロイドは、第一に基体に結合し、続いて配位子と錯体を形成することができるか、又は配位子に結合し、続いて配位子を介して又は金属コロイドを介して基体に結合することができる。或いは、金属コロイドは、配位子が結合している基体と接触することができ、これによって、固定化された錯体を形成することになる。カリックスアレーンなどの配位子を表面にテザーする方法は、一般的に当技術分野で公知である。例えば、US公開第2005/0255332A1号及びUS特許第6380266B1号を参照されたい。
【0118】
例示的な基体の構成要素として、これらに限らないが、金属、金属又は非金属酸化物、ガラス及びポリマーが挙げられる。有用な基体の非限定的なリストとして、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄が挙げられる。好ましい基体は、シリカであり、シリカが遊離ヒドロキシル基を保有するのが最も好ましい。しかし、他の無機酸化物基体、好ましくはチタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、タングステン、ニオブ、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素ロジウム、モリブデン、銅、白金若しくは鉄などの酸化物、又は基体と安定したアリールオキシドを形成する別の元素の酸化物を使用することができる。基体は、任意の便利な物理的形態、例えばゲル、様々な種類の粒子の内側又は外側のポア、又は平面的表面、例えばウエハー、チップ、プレートなどであってよく、表面又はその表面上にシリカ又は他のフィルムを配置させることができるデバイスであってよい。少なくともシリカ基体に関しては、一部には、カリックスアレーン又は関連化合物と基体との間の連結の剛性により、この新しい方法は、アンカーされたカリックスアレーン及び/又は関連化合物に対して、物質1グラム当たりをベースとして、報告された中で最高の部位密度をもたらす。金属酸化物及びゼオライト(インタクトであり、薄い層に裂かれている)は、本発明の化合物と併用して、有用な例示的基体である。
【0119】
例示的実施形態において、基体は無機酸化物である。本発明において使用される無機酸化物として、例えば、Cs2O、Mg(OH)2、TiO2、ZrO2、CeO2、Y2O3、Cr2O3、Fe2O3、NiO、ZnO、Al2O3、SiO2(ガラス)、石英、In2O3、SnO2、PbO2などが挙げられる。無機酸化物は、様々な物理的形態、例えばフィルム、担持されたパウダー、ガラス、結晶などの形態で利用することができる。基体は、単一の無機酸化物又は2つ以上の無機酸化物の複合体からなることが可能である。例えば、無機酸化物の複合体は、層状構造(すなわち、第一の酸化物上に第2の酸化物が被覆されている)を有することができ、又は2つ以上の酸化物を隣接する非層状構造に並べることもできる。さらに、1つ又は複数の酸化物を、様々なサイズの粒子として混和でき、例えばガラス又は金属シートなどの支持体上に被覆することができる。さらに、1つ又は複数の無機酸化物の層は、2つの他の基体層(例えば、金属−酸化物−金属、金属−酸化物−結晶)との間にインターカレートすることができる。
【0120】
これらの実施形態において、例示的固定化プロセスは、配位子と基体を接触させるステップ(この基体は、安定したアリールオキシド種を形成可能な元素の1つ若しくは複数のポリハロゲン化物及び/又はポリアルコキシドを基体と反応させることによって表面修飾している)、又は基体と配位子を反応させるステップ(この配位子は、前記1つ若しくは複数のポリハロゲン化物及び/又はポリアルコキシドとの反応により事前に修飾又は誘導体化させておく)を含む。代替実施形態において、固定化プロセスは、1つ又は複数の元素(ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金若しくは鉄、又は安定したアリールオキシドを形成する別の元素から選択される)のポリハロゲン化物又はポリアルコキシドと、基体を反応させるステップと、修飾された基体を形成するステップと、修飾された基体と配位子を接触させることによって、少なくとも1つのフェノール酸素の連結を介して配位子を基体上に固定化するステップとを含む。
【0121】
基体材料に適した無機結晶及び無機ガラスとして、例えば、LiF、NaF、NaCl、KBr、KI、CaF2、MgF2、HgF2、BN、AsS3、ZnS、Si3N4などが挙げられる。結晶及びガラスは、当分野の標準的な技術で調製することができる。例えば、Goodman、C.H.L.、Crystal Growth Theory and Techniques、Plenum Press、NewYork、1974年を参照されたい。或いは、結晶は、商業的に購入することができる(例えば、Fischer Scientific)。結晶は、基体の唯一の構成要素であってもよく、又はこれらは、1つ又は複数のさらなる基体の構成要素でコーティングされていてもよい。したがって、例えば1つ若しくは複数の金属フィルム又は1つの金属フィルム及び有機のポリマーでコーティングされた結晶を利用することも本発明の範囲内である。さらに、結晶は、異なる物質でできた基体の別の部分、又は同じ物質の異なる物理的形態(例えば、ガラス)と接触する基体の一部を構成することができる。無機の結晶及び/又はガラスを利用した他の有用な基体構成は、塩の分野の当業者には明らかであろう。
【0122】
金属はまた、本発明の基体として有用である。本発明において基体として使用される例示的金属として、これらに限らないが、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル及び銅が挙げられる。一実施形態において、2種類以上の金属が使用される。2種類以上の金属がアロイとして存在することができるか、又はこれらは、層状の「サンドイッチ」構造を形成することができ、又はこれらは、互いに横方向に隣接することができる。
【0123】
有機ポリマーは、有用な種類の基体材料である。本発明において基体として有用な有機ポリマーとして、溶液中で、気体、液体及び分子に浸透性のあるポリマーが挙げられる。他の有用なポリマーは、1つ又は複数のこれら同じ種類の化合物に浸透性のないものである。
【0124】
有用な基体を形成する有機ポリマーとして、例えば、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン)、ポリアクリル(例えば、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシアノアクリレート)、ポリビニル(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリヘテロサイクル、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、ポリシラン、フッ化ポリマー、エポキシ、ポリエーテル及びフェノール樹脂などが挙げられる。Cognard、J.ALIGNMENT OF NEMATIC LIQUID CRYSTALS AND THEIR MIXTURES、Mol.Cryst.Liq.Cryst.1:1〜74頁(1982年)を参照されたい。現在好ましい有機ポリマーとして、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース系材料、ポリカーボネート及びポリビニルピリジニウムが挙げられる。
【0125】
本発明を実施する上で使用できる基体の表面は、滑らかなもの、粗いもの及び/又はパターン化されたものであってよい。表面は、力学的及び/又は化学的技法を使用することにより、技術的に処理することができる。例えば、表面は、摩擦、エッチング、溝削り、延伸、及び金属フィルムの斜め蒸着により、粗面にするか又はパターン化することができる。基体は、例えばフォトリソグラフィー(Kleinfieldら、J.Neurosci.第8巻:4098〜120頁(1998年))、フォトエッチング、化学エッチング及びミクロ接触プリンティング(Kumarら、Langmuir、第10巻:1498〜511頁(1994年))などの技術を使用してパターン化することができる。基体上にパターンを形成するための他の技術は、当業者には容易に明らかとなろう。
【0126】
基体上のパターン化のサイズ及び複雑さは、利用される技術の分解能及びそのパターンが意図する目的により制御される。例えば、ミクロ接触プリンティングを使用して、200nmまで小さな機構が基体上に層状化されている。Xiaら、J.Am.Chem.Soc.第117巻:3274〜75頁(1995年)を参照されたい。同様に、フォトリソグラフィーを使用して、1μmまで小さな機構を有するパターンが生産されている。Hickmanら、J.Vac.Sci.Technol.第12巻:607〜16頁(1994年)を参照されたい。本発明において有用なパターンとして、例えばウェル、囲い込み、仕切り、穴、入口、出口、チャネル、溝、回折格子などの機構を含むものが挙げられる。
【0127】
広く認められている技術を使用して、異なる化学特性の領域を有するパターン付の基体を作製することができる。したがって、例えば、一連の隣接する、単離した機構は、パターンを構成する物質の疎水性/親水性、電荷また他の化学的特徴を変化させることによって作り出される。例えば、親水性化合物は、疎水性材料を使用して、隣接する機構との間に「壁」をパターン化することによって、個々の親水性機構により閉じ込めることができる。同様に、正又は負に帯電した化合物は、閉じ込められる化合物のものと同じ電荷を有する化合物でできた「壁」を有する機構内に閉じ込めことができる。同様の基体構成は、所望の特性を有する層を直接基体上にマイクロプリントすることによっても接触可能となる。Mrkish,ら、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.第25巻:55〜78頁(1996年)を参照されたい。
【0128】
様々な例示的実施形態において、基体は、ゼオライト又はゼオライト様材料である。一実施形態において、本発明の錯体は、ITQ−2−タイプの層状材料及びゼオライト材料の表面の官能化により基体に付加される。例示的結合は、基体のアンモニア化を介して達成される。本発明は、配位子に共有結合で結合した、このような官能化された材料を提供する。例示的実施形態において、官能化された表面を使用することによって、材料の表面上に核を形成させ、金属コロイドを成長させる。
【0129】
配位子は、炭素、硫黄などを含有するフレキシブルなリンカー基を用いた合成による誘導体化に対する必要性なしに、上述されているように、シリカ又は他の基体の上に固定化することができる。生成した固定化した配位子及び関連化合物は、極低温の温度でのガス物理吸着実験で、また室温で中性の有機分子と接触可能な親油性の空洞を有する。フェノール及びニトロベンゼンは、この種類の材料の中で水溶液から可逆的に吸着される。
【0130】
生成した固定化された配位子及び関連化合物は、小分子、タンパク質及びイオン(カチオンとアニオンの両方)を含む部分を包括でき、したがって、気体流内の種の特定の吸着又はトラップにおいて、高圧液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーカラムにおいて、及び化学センシングにおいて、選択性触媒として、膜内での機能を含めたいくつかの機能のために使用することができる。Katzら、Langmuir、第22巻:4004〜4014頁(2006年)を参照されたい。
【0131】
様々な実施形態において、本発明は、(a)配位子と、以下に記載の通り、ポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により表面修飾された基体とを接触させること、又は(b)基体と、このようなポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により事前に修飾又は誘導体化させておいた配位子と反応させること、の2つの手段のうちの一つにより、基体へ配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)を固定化させるための方法を提供する。
【0132】
本発明の一つの例示的実施形態は、ケイ素ハロゲン化物又はアルコキシドを使用して、シリカ基体を修飾し、シリカ−酸素結合を介して、配位子を基体に固定化することである。しかし、以前に論じように、基体及び/又は改質剤は、別の元素の酸化物、ポリハロゲン化物又はポリアルコキシドであってよい。改質剤は、基体上の主要元素と同じ元素を含有していてもよく(例えばアルミニウムアルコキシドを使用して、酸化アルミニウム基体を修飾する)又は改質剤は、異なる元素を含有していてもよい(例えばシリコン四ハロゲン化物を使用して、酸化アルミニウム基体を修飾する)。本発明においてアルコキシドが使用される場合、アルコキシドの基体修飾元素(ケイ素、別の非金属、又は金属)は、配位子のフェノール酸素原子に直接結合し、アルコキシドに対応するアルコールが分裂する。本発明において基体改質剤として使用される好ましいアルコキシドとして、アルコキシド基1つ当たり4個までの炭素原子を有する、メトキシド、エトキシド及び他のアルコキシドが挙げられる。
【0133】
別の好ましい実施形態において、遷移金属又はケイ素以外の多価の非金属のハロゲン化物又はアルコキシドを使用することによって、配位子(例えばカリックスアレーン又はカリックスアレーン関連化合物)を基体に固定化させる。この金属又は非金属は、基体と安定したアリールオキシドを形成する任意のものでよく、これらだけに限らないが、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、鉄、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄が含まれる。
【0134】
合成
本明細書に記載されている、配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)、金属コロイド及びその錯体は、当業者の能力の範囲内での方法により合成することができる。例示的合成を本明細書中に記載するが、さらなる実用的な合成経路が、存在し、考案できることが当業者には明らかであろう。
【0135】
本発明の金コロイドを作製する方法は、前駆体の合成を示す、以下に記載のスキームを参照することにより例示される:
【化4−1】
【化4−2】
【0136】
前駆体1dは、配位子2dを用いて、同様のスキームを使用して作製することができる。
【化5】
【0137】
上に記載の方法は、任意の金属塩に適用できることを当業者であれば理解するであろう。本発明において有用な例示的金属塩は、金属塩が、配位子上でリンカーの配位原子と配位結合することによって錯体を形成するという判定基準を少なくとも満たしている。
【0138】
したがって、一態様において、本発明は、配位子−結合金属コロイドを合成する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、(a)配位子と金属塩の間に反応を引き起こすのに適した条件下で、配位子と金属塩を溶媒中で接触させるステップであって、前記配位子が、配位原子を含むリンカーを含み、これにより金属−配位子前駆体を形成するステップと、(b)金属−配位子前駆体と還元剤を接触させるステップであって、前記金属−配位子前駆体、前記還元剤又はこれら両方が、溶媒中にやや溶けにくく、これにより錯体を合成するステップとを含む。
【0139】
ある実施形態において、金属塩は、金属ハロゲン化物塩である。例示的実施形態において、金属塩は、金などの貴金属原子を含む。
【0140】
ある実施形態において、溶媒はアルコールである。例示的実施形態において、溶媒はエタノールである。
【0141】
ある実施形態において、配位子は、本明細書中に開示された錯体の配位子のうちの一つであるか、又は本明細書中に開示された配位子である。例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーン関連化合物である。
【0142】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホルアミダイトから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0143】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンカルベンである。
【0144】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンターピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0145】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンパーオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカーボネートから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0146】
ある実施形態において、カリックスアレーン関連化合物は、本明細書に記載されている錯体のカリックスアレーン関連化合物又は本明細書中に記載されているカリックスアレーン関連化合物である。
【0147】
上記スキームは、配位子(カリックスアレーン関連化合物)がモノデンテート部分である化合物を対象とする。理解されるように、より高い配位座数を有するリンカーもまた有用である。二座のカリックスアレーン関連化合物が配位子として利用される場合、この化合物及びその他のコロイドを、いくつかの配置のうちの一つで調製することができる。例えば、ジラジカル架橋、アキシアルラジアル架橋、ジアキシアル架橋、アキシアルラジアル架橋である。
【0148】
使用
一態様において、本発明は、本明細書中に開示される金属コロイド又は金属錯体を利用する方法を提供する。本発明の材料に適用できる、金コロイドを使用する方法の見本として、Malloukら、J.Am.Chem.Soc.、2009年、131:7938〜7939頁を参照されたい。
【0149】
例示的実施形態において、本発明の材料は、超微量検出の方法(上記の癌バイオマーカー検出(d);DNA検出のためのものを含む(L.H.Wangら、Gold Bulletin、第41巻、37〜41頁(2008年)及びQ.Q.Zhangら、Nanoscale Research Letters、第4巻、216〜220頁(2009年)を参照されたい、)、イメージング(金コロイド抱合体を生体分子マーカーとして使用することができる)、ドラッグデリバリー(C.R.Patra、Journal of Biomedical Nanotechnology、第4巻、99〜132頁(2008年)及び上記参考文献(b)を参照されたい)及び一般的な生物医学用途、P.Perriatら、Annales De Chimie−Science Des Materiaux volume、31、351〜367頁(2006年)、DNA/RNAデリバリー、療法(アンチセンスオリゴヌクレオチド修飾された金コロイド剤に関するもの、上記a(viii)を参照されたい)、及びナノファブリケーション(小さいサイズを使用して、情報保存のための高容量を作製するもの、T.Bjornholm in Current Opinion in Colloid&Interface Science、第14巻、126〜134頁(2009年)及びT.H.LaBean、Materials Today、第12巻、24〜32頁(2009年)を参照されたい)に使用できる。
【0150】
本発明による、接触可能な領域を保有する金属コロイドのさらなる用途は、金属触媒作用である((a)Goodman、W.、Chen、M.、触媒活性のある金:コロイドから極薄膜まで。Acc.Chem.Res.、第39巻、739〜746頁(2006年)。(b)Choudhary、T.V.、Goodman、D.W.、担持された金ナノ−クラスターによる酸化触媒作用。Top.Catal.第21巻、25〜34頁(2002年)。(c)Turner、M.、Golovko、V.B.、Vaughan、O.P.H.、Abdulkin、P.、Berenguer−Murcia、A.、Tikhov、M.S.、Johnson、B.F.G.、Lambert、R.M.、55−原子クラスターから誘導された金コロイド触媒による、二酸素での選択性酸化。Nature、第454巻、981−U31(2008年)。(d)Roldan、A.、Gonzalez、S.、Ricart、J.M.、Illas、F.、AuコロイドによるO−2分離のためのクリティカルサイズ。Chem.Phys.Chem.、第10巻、348頁(2009年)(e)Lee、S.、Molina、L.M.、Lopez、M.J.、Alonso、J.A.、Hammer、B.、Lee、B.、Seiferi、S.、Winans、R.E.、Elam、J.W.、Pellin、M.J.、Vajda、S.、Au6−10クラスター上に固定化された選択性プロペンのエポキシ化:活性及び選択性に対する水素及び水の効果。Angew.Chem.、Int.Ed.、第48巻、1467〜1471頁(2009年)。(f)Hughes、M.D.、Xu、Y.−J.、Jenkins、P.、McMorn、P.、Landon、P.、Enache、D.I.、Carley、A.F.、Attard、G.A.、Hutchings、G.J.、King、F.、Stitt、E.H.、Johnston、P.、Griffin、K.、Kiely、C.J.s、温和な条件下での選択性炭化水素の酸化のための調節可能な金触媒。Nature、第437巻、1132〜1135頁(2005年)。(g)Byrne、M.、金及び他の基体上のエチレンの電気触媒による還元。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、68、1898(1972)。(h)Bond、G.C.、Sermon、P.A.、Webb、G.、Buchanan、D.A.、Wells、P.B.、担持された金触媒上での水素化。J.Chem.Soc.Chem.Commun.、44〜45頁(1973年)。(i)Sermon、P.A.、Bond、G.C.、Wells、P.B.、担持された金上でのアルケンの水素化。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、第75巻、385〜394頁(1979年)。(j)Naito、S.、Tanimoto、M.、シリカ担持の金及び銀触媒上でのプロペンのジュウテリウム付加及び交換の機序。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、第84巻、4115〜4124頁(1988年))。
【0151】
Harutaらは、触媒作用に必要なのは、塊状の特性と異なる特性を有する小さな金コロイドであることを示した(300個未満の金原子の粒子の必要性については、A.Haruta、Chemical Record、第3巻、75〜87頁(2003年)を参照されたい)。Gatesらは、小さな金属コロイドについての重大な問題は、安定性の欠如であると強調している(Gatesら、Nature、第372巻:346頁(1994年)を参照されたい)。文献において強調されてきたように、触媒作用のための金コロイド上での接触可能性に対する重要な必要性も存在する(C.L.Friendら、J.Phys.Chem.C、第113巻、3232〜3238頁(2009年)及びM.Baumerら、ChemPhysChem、第7巻、1906〜1908頁(2006年)を参照されたい)。本発明は、安定した小さな金コロイドと金原子(金表面積)との接触可能性を提供する。
【0152】
金属コロイドは、様々な用途のための結合パートナーとも共役することができ、これら結合パートナーとして、これらだけに限らないが、核酸、ポリペプチド、機能性及び構造性タンパク質(例えば、酵素、抗体、抗体フラグメント)、含水炭素、天然ポリマー及び合成ポリマー、固体支持体、小分子(例えば、薬物、殺虫剤、軍事用薬剤)及びリピドなどが挙げられる。
【0153】
(i)Bioconjugate Chemistry、第19巻、751〜758頁、C.Geraciらによる;(ii)C.Geraciら、Langmuir、第24巻、6194〜6200頁;(iii)C.Geraciら、Tetrahedron、第63巻、10758〜10763頁の場合のように、共役は、配位子(例えばカリックスアレーン)を直接使用して実施行することができ、又は通常はチオール(スルフヒドリル)連結を介して実施する、金表面への分子の結合によって共役を実施することができる(又は両方法の組合せ)。後者の例として、以下への金の共役が挙げられる:
(a)チオール化した一本鎖のDNAは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)及びFidelity Systems(Gaithersburg、MD)から市販されており、標準的な機器、例えば、Expedite 8909 Nucleotide Synthesis Systemを使用し、標準的な固体相合成及び試薬(GlenResearch、Sterling、VA)を使用して合成することもできる。このタイプのチオール化したDNAは、DNAの金への共役に広く使用されている。以下を参照されたい(i)Alivisatosら、Nano Letters、第8巻、1202〜1206頁(2008年);(ii)C.A.Mirkinら、Nano Letters、第7巻、3818〜3821頁(2007年);(iii)Suzukiら、J.Am.Chem.Soc.、第131巻、7518〜7519頁(2009年);(iv)Alivisatosら、J.Am.Chem.Soc.第130巻、9598〜9605頁(2008年);(v)Dubertretら、Nature Biotechnology、第19巻、365〜370頁(2001年);(vi)A.P.Alivisatosら、Nature、第382巻、609〜611頁(1996年);(vii)C.A.Mirkinら、Nature、第382巻、607〜609頁(1996年)。関連の系は、固定された核酸−コロイド結合体である(viii)C.A.Mirkinら、ChemBioChem、第8巻、1230〜1232頁(2007年)、
(b)エチジウムチオレートを使用したエチジウム挿入剤(R.W.Murrayら、Analytical Chemistry、第74巻、4320〜4327頁(2002年));
(c)スルフヒドリル連結を介したRNA、C.A.Mirkinら、J.Am.Chem.Soc.、第131巻、2072〜2073頁(2009年)を参照されたい、
(d)金と結合するように進化させたペプチド、N.L.Rosiら、J.Am.Chem.Soc.、第130巻、13555〜13557頁(2008年)を参照されたい;
(e)多価性によりさらに効果的となったHIV治療法が、メルカプト安息香酸リンカーを使用して付加された。C.Melanderら、J.Am.Chem.Soc.第130巻、6896〜6897頁(2008年)を参照されたい;及び
(f)グルコースオキシダーゼ、C.Sunら、Sensors and Actuators B、第109巻、367〜374頁(2005年)を参照されたい。
【0154】
本明細書中に開示されている金属コロイド及び錯体は、金属媒介によるプロセスで触媒されることが当技術分野で知られているものを含めた触媒プロセス、例えばオレフィン転位、オレフィンのヒドロホルミル化、及び末端アルカンの環付加など、並びに他のプロセス、例えば、酸化プロセス、水素化プロセス、及び酸性触媒反応などに使用することができる。例示的実施形態において、本発明の組成物は、ハイドロプロセシング触媒として有用である。本発明の化合物及び錯体が使用できる他のプロセスとして、プロパン水素化分解、CO水素化、トルエン水素化、メタン化、分子内ヒドロアミノ化、主要なアリルアルコールの不斉異性化反応、アリルのアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを使用した、ヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環付加、及びカルボニル化、メタンヒドロキシル化、及びナフテン系開環が挙げられる(米国特許第5763731号を参照されたい)。さらなるプロセスとして、水素化反応、例えばα,β−不飽和アルデヒドの水素化反応;環化反応、例えばテルペノイド(例えばシトロネラルからメントールへの変換);開環反応、例えばシクロアルキル(例えばメチルシクロヘキサンからジメチルペンタンへの変換又はナフテン系開環);NOの水蒸気触媒改質及び水素化変換反応、例えばシクロアルキルの水素化変換反応など(例えばシクロヘキセン)が挙げられる(Vuoriら、Catal.Lett.、2009年、第131巻:7〜15頁及び米国特許第5763731号を参照されたい)。一般的に有用な反応として、有機分子、例えばアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール(これらのうちのいずれかは、場合によって置換されている)などの上で実施される酸化及び還元が挙げられる。
【0155】
したがって、一実施形態において、触媒プロセスは、有機分子と、(a)本明細書中に開示される錯体又は金属コロイド及び(b)還元剤を接触させることによって有機分子を還元するステップを含む。ある実施形態において、有機分子は、不飽和分子である。ある実施形態において、有機分子は、置換又は非置換のアルキル(例えば、不飽和アルキル、例えば不飽和のC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルなど)である。ある実施形態において、還元ステップは、例えば、還元剤としてH2を使用した水素化を含む。
【0156】
一実施形態において、触媒プロセスは、有機の分子を、(a)本明細書中に開示されている錯体又は金属コロイド及び(b)酸化剤と接触させることによって、有機分子を酸化させるステップを含む。ある実施形態において、酸化ステップは、ヒドロキシル化を含む。
【実施例】
【0157】
(例1)
カリックスホスフィン配位子の合成
ジ−アルキル化したカリックス[4]アレーン4a、bを、カリックスアレーンのリン酸化のための出発前駆体として使用する。前述の2つ以上のホスホリル基を保有するカリックスアレーの合成に対するその効率のため、ジフェニルホスホリルメチル−4−メチルベンゼンスルホネートを使用する。カリックスアレーンホスフィンオキシド3a、bは、以前に公開された手順に従い、わずかに過剰の水素化ナトリウムのTHF/DMF(10/1v/v)中混合物の存在下、48時間、Ph2POCH2Tsで、4a、bを還流させることにより合成する。カリックスアレーンホスフィンオキシド3a、bは、メチレン架橋水素のABスピン系の存在下及び31P NMRスペクトルにおける単一共鳴の存在下において確認される円錐配座を採用している。カリックス[4]アレーンホスフィン2a、bの合成は、カリックスアレーン−ホスフィンオキシド3a、bを、大幅に過剰のトルエン中フェニルシランで、105℃で48時間加熱することによって実施する。ジメトキシ−カリックス−ホスフィン2aは、室温で大環状環を介してメトキシ化したフェノール環の自由回転を有する配座異性体の混合物として存在する。この配座挙動は、1H NMRにおいて広域共鳴を引き起こし、31P NMRの−21.10及び−21.96ppmにおいて、2つの共鳴を引き起こすが、これらはホスフィンの特徴である。カリックス[4]アレーンの底縁部の嵩高いプロポキシ基の存在が、環の反転を阻止し、円錐体の形をしたカリックス[4]アレーン−ホスフィン2bに配座剛性を与える。
【0158】
実験の詳細
材料。すべての化合物は、乾燥窒素大気下で取り扱う。無水トルエン、THF及びDMFをAldrichから購入し、開始のp−tert−ブチルカリックス[4]アレーン及びすべてのその他の試薬は、分析用グレードであり、入手してそのまま使用した。2−ナフタレンチオール(2NT)をAldrichから購入し、入手してそのまま使用した。カリックスアレーン4a、4b、及び3aを文献の手順に従い合成する。Dijkstra PJら,、J.Am.Chem.Soc.、1989年、第111号:7567〜7575頁;Gutsche CDら、Tetrahedron、1983年、第38号:409〜413頁;及びDielemanCBら、J.Organometal.Chem.、1997年、545〜546:461〜473頁。ジフェニルホスホリルメチルエントシレートを公開手順に従い調製した。Marmor RS及びSeyferth D、J.Org.Chem.、1969年、第34号:748〜749頁;及びWegener W、ZeitschriftChem.、1971年、第11号:262頁。1H、13C、及び31P NMRスペクトルは、CDCl3(293K)中で、UC BerkeleyのNMR施設のBrukerAV−300(300MHz)装置又はAVB−400(400MHz)装置のいずれかで記録した。残留するCHCl3(7.260ppm)に対して1H NMRスペクトルを参照し、トリメチルリン酸に対して31P NMRスペクトルを参照する。分析用薄層クロマトグラフィーを、プレコートしたシリカゲルプレート(0.25mm、60F−254、Selecto)上で実施し、カラムクロマトグラフィーのためにシリカゲル(Selecto 60)を使用する。UC Berkeleyの質量分析施設で、O−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)又はm−ニトロベンジルアルコール(NBA)を、マトリックスとして使用して、FAB−MSスペクトルを記録する。すべての融点は補正していない。
【0159】
カリックスアレーン−ホスフィンオキシド3bの合成のための一般的手順
カリックスアレーン1b(0.35mmol)と水素化ナトリウム(0.78mmol)のTHF/DMF(10/1v/v)中混合物を2時間還流させる。生成した黄色の水溶液に、Ph2P(O)CH2OTs(0.78mmol)を添加する。この反応混合物を48時間還流させる。過剰の水素化ナトリウムを約1.0mLのメタノールでクエンチし、溶媒を蒸発させる。残基をクロロホルム中に溶解し、水で2回洗浄する。有機相をMgSO4上で乾燥させ、蒸発乾燥させる。
【0160】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノイルメチレンオキシ)−27,28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(円錐体)(3b)
CH2Cl2/酢酸エチル(1:0.5)を用いたカラムクロマトグラフィーにより、収率53%の白色粉末を得る、Rf0.4:mp134〜138℃、
【化6】
【0161】
カリックスアレーン−ホスフィン2a、bの合成のための一般的手順
カリックスアレーン3a、b(7.0mmol)及びPhSiH3(各POPh2に対して、30当量が過剰)のトルエン15mL中水溶液を105℃で48時間加熱する。この反応の進行を、31PNMR分光学で観察する。この反応混合物を真空中で4時間蒸発乾燥させる(0.05mmHg)。油性の残基は、精製する。
【0162】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス[ジフェニルホスフィノメチレンオキシ]−27,28−ジメトキシカリックス[4]アレーン(配座異性体の混合物)(2a)
エタノール/DCM(20/1)からの結晶化により、白色固体を収率52%で生成する;mp123〜131℃、
【化7】
【0163】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノメチレンオキシ)−27、28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(円錐体)(2b)
CH2Cl2を用いたフラッシュクロマトグラフィーにより、収率41%の白色粉体を生成する、Rf0.9;mp128〜132℃、
【化8】
【0164】
金前駆体の合成
Au(I)−カリックスアレーン錯体tert−ブチル−カリックス[4]−(OR)4−x(OCH2PPh2AuCl)x(x=2、R=CH3(1a)C3H7−n(1b);x=1、R=C3H7−n(1c))は、Au(SMe2)Cl中のスルフィド基を化学量論的量のホスフィンに置き換えることにより合成する。このような置換反応はAu(I)−カリックスアレーンホスフィン錯体合成に対して以前使用された。錯体1a、1b、及び1cを、CH2Cl2/ヘキサンからの結晶化を介して純粋な形態で単離し、CDCl3中での31P及び1H NMRスペクトロスコピー法を使用して測定すると、すべてが、純粋な円錐体の配座異性体から構成されている。錯体1aにおいて、起こり得る部分的円錐体及び1,3−交互の配座異性体よりも円錐体が好まれることは、以下のデータから観察することができる。3つの配座異性体はすべて、−57℃で、CDCl3溶液中の遊離の(非配位結合の)メトキシ置換カリックスアレーン配位子2aに対して、1H NMRスペクトロスコピー法を介して(部分的円錐体と、1,3−交互と、円錐体との比は32:20:48)存在する。1aの金の錯化に続き、円錐配座に観察された排他性は、嵩高いtert−ブチル及び金置換基の近接を回避するのが配座異性体だけであることから、起きる可能性が最も高い。これは、錯体1a−c内の金原子の立体的に厳しい性質を示し、以下で論じているような金の組織上でのさらなる反動を生じる。
【0165】
1a、1b及び1dの場合、対応する配位子2a、2b又は2dは、室温で20分間、暗所で、CH2Cl2中の2当量のAu(SMe2)Clとそれぞれ別々に反応させる。濁りのある混合物を濾過することによって、透明な溶液を得る。これを蒸発させて、白色の粉体を得る。1a、1b及び1dの結晶を、50:50ヘキサン:CH2Cl2混合物中のゆっくりとした蒸発で得る。2c及び1当量のAu(SMe2)Clを使用して、同じ手順に従い1cを合成する。すべての錯体は、ジクロロメタン中に溶解した場合、光学的に透明な無色の溶液を生じる白色粉体であり、すなわち、いかなる固体も見えない。
【0166】
錯体1a、1b、及び1cは、図1の単結晶エックス線回折を介して特徴づけられる(表2の選択された結合の長さ及び角度)。1a及び1bの固体構造の比較は、カリックスアレーン底縁部の酸素平面に対して、金原子組織における有意な差を強調している。両方の金原子とも、1a構造のこの平面の同じ側に位置している。配位結合されたPPh2の両フェニル基と、メトキシ底縁部の置換基との間のσ(C−H)−π相互作用と一致して、1aの構造に見出される、芳香環(重心)とメトキシ置換基のCとの間の対の距離は3.5Åである。対照的に、1bの構造において、嵩高い金及び底縁部のプロポキシ基の立体的に好ましくない相互作用によって、両方の金原子が、カリックスアレーン底縁部の酸素平面の同じ側に位置することを阻止する。上述したAuPPh2Cl置換基の組織を規定する上でのプロポキシ基の立体的役割が、1a及び1bのDFTB3LYP/LACV3P*+計算でさらに明らかにされる。これらの計算は、1bの結晶構造は、電子のエネルギーが最低のエネルギー配座異性体(2つのAuPPh2Clユニットは、カリックスアレーンの底縁部の酸素により定義された平面の同じ面上にある)よりも少なくとも2.4kcal/モルだけ低いことを実証し、配座異性体の集団は、結晶構造において観察された形態で、>99%となるはずであると予測している。
前駆体の単結晶構造
【表1】
【表2】
【0167】
2a及び2cを用いた金ナノ粒子の合成後の修飾
テトラオクチルアンモニウムブロミド(20当量)−安定化したHAuCl4/ジクロロメタン溶液から金コロイドを合成する。手短に、1.25−及び2−単層等価カリックス[4]アレーン、2a又は2cを、200μMの金原子を含有する4−nm金コロイド溶液に添加し、これにより、2a−及び2c−結合金コロイドを生成する。
【0168】
還元された金コロイドの合成
NaBH4のエタノール溶液中での各前駆体錯体の還元を介して金コロイド合成を達成する。典型的な調製において、4当量(Auに対して)のNaBH4をAu前駆体錯体のエタノール中懸濁液に添加し、生成した混合物を室温で40分間撹拌し、濾過し、真空中で蒸発させる。この合成において極めて重要なことは、NaBH4とAu(I)錯体1a−cのエタノールへの制限された溶解度であり、これは、還元中の溶液中での両種の濃度を効果的に低く強制し、Au11コロイドの合成に以前使用された。例えばジクロロメタン、ベンゼン、及びTHFなどの溶媒は、両方の成分を完全に可溶化し、続いて還元後、小さな金コロイドの均一な分布を生成しない。1a−赤、1b−赤、及び1c−赤からなる生成したコロイドの金生成物を水及びヘキサン(1c−赤に対してはヘキサン洗浄剤なし)で洗浄し、乾燥させ、スペクトロスコピー法及びSTEMを使用して特徴づけを行った。
【0169】
例示的合成
金コロイド1a−赤の合成。3.9当量(Au原子に対して)のNaBH4(50mg)を、0.166mmol(255mg)の金前駆体錯体1aの無水エタノール80mL中懸濁液に添加する。この反応混合物からの開始前駆体の金錯体の消失を、ジクロロメタン中薄層クロマトグラフィーを介して観察する。生成した混合物を室温で40分間撹拌した、濾過し、真空中で蒸発させる。生成した金クラスター生成物を約150mLの脱気した(pH7)水で洗浄し、生成した固体を真空下で乾燥させ、続いてヘキサン約10mLで洗浄し、次いで再び真空下で乾燥させる。これにより、精製後、130mgの最終の1a−赤を合成する。
【0170】
金コロイド1b−赤の合成。3.6当量(Au原子に対して)のNaBH4(18mg)を、0.066mmol(105mg)の金前駆体錯体1bの無水エタノール30mL中懸濁液に添加する。洗浄用に使用する溶媒の量を、1a−赤に対して、合成でのカリックスアレーンのモル数に比例して調整する以外は、残りの手順は、1a−赤の合成と等しい。
【0171】
金コロイド1c−赤の合成。3.8当量(Au原子に対して)のNaBH4(6mg)を、0.041mmol(50mg)の金前駆体錯体1bの無水のエタノール20mL中懸濁液に添加する。洗浄用の溶媒として水を使用したこと、1a−赤に対して、合成でのカリックスアレーンのモル数に比例して調整する以外は、残りの手順は、1a−赤の合成と等しい。
【0172】
金コロイドのUV−Visスペクトロスコピー法をUV−Vis分光器(Cary−400、Bruker)で実施する。コロイド金上に吸着した2NTの蛍光を、950V及び5nmの励起/発光スリット幅で作動する、定常状態の蛍光光度計(F−4500、Hitachi)で測定する。蛍光試験に使用した溶媒は、ジクロロメタンであり、励起波長は283nmである。金クラスターの透過電子顕微鏡写真を、200kV FEI単色化したF20 UT Tecnai(National Center for Electron Microscopy、Lawrence Berkeley National Laboratory)で観察した。両面テープを使用してケイ素ウエハー上に金コロイドを堆積させることによって、金コロイドのXPS(X線光電子分光法)を実施した。XPS分析は、スペクトル解像度1.05eVで作動するUlvac Phy Quanteraスキャニングマイクロプローブを使用して実施した。標準的実施と一致するAg光電子放出ピークを使用して、分光器のエネルギースケールを較正した。284.6eVでのC 1s ピークを使用して、生成したXPS結果を補正した。
【0173】
CH2Cl2溶液中での1a−赤のUV可視スペクトルは、415nm付近の隆起帯からなり、これは、nが約11の小さなAunクラスターに見出されるバンドの領域特徴の範囲に入る。HAADF−STEMは、図2aにおいて、1a−赤に対する中心直径0.9±0.1nmを実証し、このサイズはまた小さなAunクラスターの特徴である。1a−赤のESIマススペクトル法は複雑なパターンの複数のピークを示し、これから[Au11L2Cl3]2+(L=カリックスアレーンホスフィン配位子)が、二重に帯電した分子のイオンとして同定される(補助情報を参照されたい)。1a−赤の元素分析及びX線光電子分光法の両方が、Auとホスフィンのモル比は1付近であることを示し(又は、同等に、金とカリックスアレーンのモル比が約2)、異常に低い金の質量分率21%を示している。これは、金コロイドに対して測定された金属と配位子の質量比の中で最も低い比の一つであるように見え、上記HAADF−STEM結果と一致して、小さな金の中心を必要とし、さらに1a−赤の一部のジホスフィン配位子のモノデンテート結合を必要とする。1a−赤におけるAu11中心のための元素分析は、5つのカリックスアレーン配位子を必要とするが、分子力学計算は、2つのカリックスアレーンホスフィン配位子のみが、二座形式でAu11中心に十分な結合空間を所有することを実証している。最大に対して、1a−赤でこのように低下した配位子配位座数は、1a−cの還元の間に溶液中に存在する過剰な未結合の配位子を考慮した場合、他の金コロイド系における観察と一致する。1a−赤の31P NMRスペクトロスコピー法はCD2Cl2中−60℃で、δ23.7ppm及び24.6ppmを中心とした2つの共鳴を示している。これらの共鳴は、CD2Cl2中−60℃で非還元の1aに対して観察された別々のδ22.5ppm共鳴と異なる。前の共鳴は、トリフェニルホスフィン配位子の遊離状態と金表面結合状態との間に以前に観察された化学シフト差と一致して、対応する遊離配位子2aに対して約45ppmの低磁場共鳴である。31P NMRスペクトルにおける24.6ppmの低磁場共鳴は、ホスフィンオキシドと一致し、XPSは、1a−赤においてホスフィンとホスフィン−オキシドの比は、2.25±0.36であると推測している。
【0174】
1b−赤及び1c−赤に対するSTEMデータは、図2において、それぞれ有意に大きな中心直径、1.1±0.2nm及び1.9±0.5nmを実証している。UV−Visスペクトルにおいて、520nm付近の、CH2Cl2溶液中の1c−赤の明らかに同定可能な表面プラズモン共鳴吸収バンドの存在は、1a−赤又は1b−赤のいずれにも存在しないより大きなコロイドの存在をさらに確認するものである。1a−赤のXPSは、84.15eVを中心とするAu 4f7/2結合エネルギーピークを示し、このピークに対して1.64eVのFWHM(半値全幅)を示す。この幅は、1b−赤及び1c−赤において、同じ対応するピークに対してそれぞれ観察された1.23eV及び1.11eV幅より大きく、これらはそれぞれ83.65eV及び83.55eVの結合エネルギーを所有する。1a−赤におけるAu 4f7/2ピークの増加幅は、1a−赤における様々な分散した、クラスター様電子の状態を示唆し、これは、表1に要約されているように、1b−赤及び1c−赤に対するより大きな結合エネルギー及び有意に低いその金質量分率と一致している。全体で、上記データは、小さなコロイドサイズと、コロイドの核生成及び成長中に、前駆体配位子2aが表面にキレートする能力との間に相互関係があることを示唆している。これは、両方のホスフィン基が、カリックスアレーンの底縁部の同じ面の金と配位結合することを必要とし、調べた3つのうち、錯体1aのみに対して可能である(上記参照)。
【0175】
金クラスター上の2NTの蛍光
接触可能な金表面の量は、化学吸着プローブ2−ナフタレンチオール(2NT)を使用して明らかにすることができる。なぜなら、このプローブは金コロイド上の吸着されたカリックスアレーンとの間で領域を結合することが、以前に示されているからである。
【表3】
【0176】
表3は、1a−赤、1b−赤、及び1c−赤における2NTの化学吸着後の結合した金原子のパーセンテージを要約し、3つの金コロイドにおける異なる程度の接触可能性を実証している。図3のデータは、1a−赤において2NTに配位結合された金原子全体のパーセンテージは、25.0%であることを実証している。これは、大きなカリックス[6]アレーンホスフィン配位子で修飾された4nm金コロイドで以前に観察されたもの(少なくとも13%の金表面が、2NTの範囲領域に基づき、カリックス[6]アレーン−結合した4nm金コロイドに接触可能であることに相当した)よりも18倍高い。金コロイドにおける接触可能性を解釈する上で使用するのに最も適した原理は、2NTと結合した表面原子の割合に依存するものである。なぜならこれは異なるサイズのコロイドの間の面積比のばらつきを説明しているからである。この原理を使用することによって、1a−赤では、2NTと結合したのは25.0%の金表面原子という結果となり、1b−赤及び1c−赤では金コロイドに対してそれぞれ8.0%及び2.1%というより低い値を得ている。中性のAu11(PPh3)7(SCN)3(図3に示す)及びカチオンの[Au11(PPh3)8Cl2]PF6からなるAu11クラスターを用いた対照実験は、恐らく配位飽和が原因で2NTの結合能力を実証していない。これらの対照実験は、2NT結合の根拠として、大幅に過剰のチオールの条件下で以前に観察されたチオール−ホスフィン交換の可能性を除外していない。
【0177】
別の対照では、Au(I)錯体1dの合成及び還元から、13C−標識した金クラスター1d−赤を得る。次いで13C−標識した2dを溶液中の遊離配位子の感受性プローブとして使用し、この結果により、2NT結合後の溶液中1dの可能性、また2NT結合後の溶液中での対応するホスフィンオキシド配位子の放出が除外される。さらなる対照により、分子錯体1a、1b及び1cに対して2NTが結合しないことが実証され、溶液中の微量の非還元の錯体による明らかな結合の可能性が除外されている。
【0178】
表3のデータは、2NTの化学吸着後の結合した金原子のパーセンテージを要約し、結合した表面原子の割合が、粒径の増加と共に、1a−赤>1b−赤>1c−赤>(4nm−1c)−赤((4nm−1a)−赤と同じ)の順序で単調に低減することを実証している。上記データの2NTの結合の傾向は、表1の表面原子をベースとするデータを考えると、面積比の検討では説明することができず(Corma Aら、Nanoparticles and Catalystsにおける酸化触媒としての担持された金ナノ粒子、389〜426頁(Wiley VCH Verlag2008年))、この傾向(例えば、1c−赤に対する(4nm−1c)−赤の接触可能性)もまた半径の曲率(塊状の金表面と比較した場合、1.6−nmの金クラスターに対して利用できる表面積の1.4−倍の増加を占めると以前に報告された)に基づいて説明することができない。2NTプローブ(>24.4Å2)の範囲を考慮すると、これら接触可能なギャップ内の金原子の実際の量は、表3の2NTに結合した表面原子の割合より有意に多いはずである。1a−赤に対して室温で6カ月間、暗所での保存された後、接触可能性は、20%未満低減し、ここで報告されているすべてのクラスターは空気及び水に対して安定している。上で論じたすべての結果は、異なる合成バッチで少なくとも3回は再現された。
【0179】
上記データは、図4で示す通り、カリックスアレーン配位子で表面修飾された小さな金コロイド状で利用できる、接触可能な表面の量が増強されたという証拠を提供している。この増強された接触可能性は、コロイド中心サイズがカリックスアレーン配位子のサイズより小さい場合、パッキングの問題から生じる可能性が高い。単座形式又は二座形式のいずれかの形式での表面上のカリックス[4]アレーン配位子の密接なパッキングが恐らく原因で、わずかな接触可能な空間がより大きな粒子上に作り出される。しかし、より小さなコロイド上で、パッキング問題が結果として生じ、これが接触可能性を作り出す。これは、一つには非整数の配位子を結合することが不可能であるためであり、さらには、tert−ブチルカリックス[4]アレーンよりわずかに小さな小分子と釣り合ったサイズのギャップを有するためである。これら接触可能なギャップ内の金原子の量は、1a−赤などの小さなコロイドにおける全表面の有意な割合である。図4cは、2NTプローブに結合した表面金原子の割合が、コロイドの金のサイズが変化するにつれて、鋭く変動することを表す。このデータは、小さな金コロイドサイズに接触可能な表面の割合の鋭い増加を明らかに実証している。この鋭い増加を統治している機序の図解を、図4a−bに模式的に示す。要約すれば、1a−赤は、溶液中コロイドには不相容であると以前からみなされていた特徴を組み合わせている独自の金コロイドである:小さなサイズ、カリックスアレーン−結合コロイドの頑丈さ、及び異常に高い程度の金属表面接触可能性。よって、例えば上述されたものなど、様々な領域において、広範な適応性が発見されることが予想される。
【0180】
「a」、「an」及び「the」などの冠詞は、本明細書で使用する場合、文脈により他に明らかに述べられていない限り、指示対象の複数の数を排除しない。接続詞「又は」は、文脈により他に明らかに述べられていない限り、相互に排他的ではない。「挙げられる」という用語は、これを使用して、非完全な例を指す。
【0181】
本明細書中で引用されたすべての参考文献、公開、特許出願、交付済み特許、受託記録及びデータベースは、いかなる付録を含め、すべての目的のため、これらの全体が参照により組み込まれている。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35USC119(e)(1)に基づき、すべての目的のため、その全体が参照により組み込まれている2009年11月6日出願の、米国出願第61/258,814号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、金属コロイド、より具体的には、配位子のリンカーコンポーネントを介して金属コロイド配位結合した配位子によって形成されるものに関し、コロイド上の少なくとも1個の原子に配位結合した配位原子を含む。生成した配位子結合コロイドは、基体の表面上に固定化され、触媒として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
カリックスアレーンは、アルカリ条件下で、ホルムアルデヒドをp−アルキルフェノールと縮合させることによって通常作製される、周知の種類の環状鎖オリゴマーである。V.Bohmerは、優れた総説の中で、カリックスアレーンの化学的性質を要約した(Angew.Chem、Int.Ed.Engl.第34巻:713頁(1995年))。カリックス[4]アレーン又はO−メチル化されたカリックス[4]アレーンの4個の酸素原子が金属にキレートしている初期の遷移金属錯体は、現在公知である(例えば、J.Am.Chem.Soc.第119巻:9198頁(1997年)を参照されたい)。
【0004】
金属コロイドは、触媒及び触媒前駆体として好ましい特性を有する一群の化合物を構成する。米国特許第4,144,191号において、ヒドロホルミル化によりアルコールを生成するためのバイメタルカルボニルクラスター化合物触媒が開示されている。アミン基を含有する有機ポリマーに結合したRh2Co2(CO)12又はRh3Co(CO)12のいずれかが使用されている。触媒は、低温で作用し、ほとんど全くアルコールだけを生成する。
【0005】
フィンランド特許出願第844634号において、アミン樹脂担体に結合した、モノメタルクラスター化合物Rh4(CO)12とCo4(CO)12の混合物が、アルコールを生成する上で極めて選択性のある触媒の役目をするという知見が示されている。クラスター混合触媒の利点は、調製がより簡単であり、その活性を金属のモル比の関数として最適化できることである。無機酸化物の表面上に担持された場合、Ir4などのクラスター形態及びナノ粒子形態でのイリジウム金属コロイドは、オレフィン水素化(Nature、415:623頁(2002年))及びトルエン水素化(Journal of Catalysis、第170巻:161頁(1997年)及びJournal of Catalysis、第176巻:310頁(1998年))に対して活性のある触媒である。オレフィン水素化に加えて、イリジウムは、様々な触媒プロセスに対して一般的に使用され、これら触媒プロセスとして、プロパン水素化分解、CO水素化、トルエン水素化、デカリン開環及びメチルシクロヘキサンからジメチルペンタンへの関連する変換(Catalysis Letters 131:7(2009年)を参照されたい)、メタン化、分子内ヒドロアミノ化、第一級アリルアルコールの不斉異性化反応、アリルのアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを使用したヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環付加、メタノールのカルボニル化、メタンヒドロキシル化(Chemical Communications 3270〜3272頁(2009年)を参照されたい)、及び右側の鎖置換基の有意な脱アルキル化のない選択性ナフテン系開環(米国特許第5,763,731号を参照されたい)などが挙げられる。
【0006】
金属クラスターの化学特性、例えば触媒活性又は電子特性、例えば電子結合エネルギーなどは、クラスターサイズ(原子凝集体)並びに配位子の性質及び数に応じて異なることが知られている。金属クラスター、概して金属コロイド触媒の産業上の用途を妨げる重大な制限は、凝集に対する安定性が欠けていることであることがさらに知られている(Gatesら、Nature 第372巻:346頁(1994年))。金属クラスターの安定性の欠如に対処する一つの方法は、例えば無機酸化物の平面的な表面又はゼオライト内部の微細気孔などの支持上に金属クラスターを堆積させることである。これらの表面は、金属クラスターにさらなる安定性を与えることができ、これは、脱カルボニル化の場合でさえも、ゼオライト内部のIr4金属コロイド種に対してこれまでに実証されている(Gatesら、J.Phys.Chem.B103:5311頁(1999年)、Gatesら、J.Am.Chem.Soc.1999121:7674頁(1999年)、Gatesら、J.Phys.Chem.B108:11259頁(2004年)、及びGatesら、J.Phys.Chem.C111:262頁(2007年))。しかし、配位子としてのゼオライト及び無機酸化物の表面は、有機配位子と比較した場合、主にクラスターとの相互作用に利用できる官能基が欠如しているために、クラスターの触媒特性及び電子特性を幅広く調整する能力を欠いている(ゼオライトに対してO、Si、及びAlに限る)。さらに、不連続数のクラスターを互いに組織化された空間的な形式でパターン化することが極めて望ましい。なぜなら、このような組織を使用することによって、原理的に触媒作用にも影響を及ぼすことができるからである。多かれ少なかれランダムなクラスターの堆積が全体を通して生じるので、無機酸化物の平面的な表面又はゼオライト内部の微細気孔をテンプレートとして使用してこれを達成することはできない。金属有機フレームワーク材料の内部微細空孔を使用する場合も同じである(J.Materials Chem.第19巻:1314頁(2009年)を参照されたい)。半導体工業において使用されてきたリソグラフィーによる組立方法を使用することによって、均一な大きさの一連の金属粒子を調製してきたが、これらの粒子は、一般的に直径100nmよりも大きい(Somorjaiら、Langmuir、第14巻:1458頁(1998年)を参照されたい)。最近では、カリックスアレーンを配位子として使用することによって、カリックスアレーン分子を構造上の足場として使用して、8つまでのコバルトコロイドをパターン化することに成功した(Vicensら、Dalton Transactions、2999〜3008頁(2009年)及びWeiら、Chem Comm、4254〜4256頁(2009年)を参照されたい)。これらのコロイドは、単一のアルキン基からなる非カリックスアレーン配位子に使用されたものと等しい条件下で、Co2(CO)8又はCo4(CO)12のいずれかと、アルキン含有レソルシンアレーンとの直接の反応を介して合成された。しかし、このタイプの直接反応の手法は、金属多面体と反応させた場合、Co4(CO)12を使用した場合、明確な、特徴付けが可能なセットの生成物を合成しなかった。さらに、カリックスアレーン結合イリジウムコロイドを合成しない。金属コロイドに対してカリックスアレーンを配位子として使用する場合、追加の利点は、カリックスアレーンを使用することによって、幾何学的制限及び/又は多価性を介して、合成中の核生成及びコロイドの成長を小さなサイズに制限することができることである(Weiら、ChemComm、4254〜4256頁(2009年)を参照されたい)。金属コロイドの核生成及び成長の間のこの種の制限はまた、金属コロイドに対してデンドリマーを配位子として使用して以前に実証された(Crooksら、Accounts of Chemical Research、第34巻:181頁(2001年)を参照されたい)。しかし、デンドリマーは、不連続数の8つ未満のコロイドをパターン化する制御を可能としない。現在の発明は、環境の調節能力も提供する一方で、組織化されたアセンブリー内でコロイドをパターン化する能力を提供している。
【0007】
オレフィン再編成[Gianniniら、J.Am.Chem.Soc.第121巻:2797頁(1999年)]、末端アルカンの付加環化[Ozerovら、J.Am.Chem.Soc.第122巻:6423頁(2000年)]及びヒドロホルミル化[Csokら、J.Organometallic Chem.第570巻:23頁(1998年)]に対する、カリックスアレーンと錯体形成した遷移金属の一部の触媒効果が示された。これらの研究におけるカリックスアレーンは、金属コロイドでの場合のように、還元された金属との間に相互作用を含有しない1つ又は複数の金属カチオンと配位結合している。酸化物表面上にグラフトされた金属カチオンに配位結合したカリックスアレーンは、凝集によるオキシド構造の拡張を阻止することによって、グラフトした金属カチオンの単離を実施し[Katzら、J.Am.Chem.Soc.第126巻:16478頁(2004年)]、[Katzら、J.Am.Chem.Soc.第129巻:15585頁(2007年)]、及び[Katzら、Chem.Mater.第21巻:1852頁(2009年)]、またカリックスアレーン骨格上の置換基としての配位基の性質によって、グラフトしたカチオンの触媒作用を調整する能力が生じる[Katzら、J.Am.Chem.Soc.、第129巻:1122頁(2007年)]。
【0008】
カリックスアレーン配位子を金属クラスターに配位結合させることは、これだけに限らないが、立体的に嵩高いバリアとしてのカリックスアレーンの役割により、凝集に対するより高い弾力性を含めた多くの利点をもたらし、おそらくより重要なことに、新しい種類の極めて適合可能な機能材料の合成の道を開くが、この合成において、カリックスアレーンは、複雑な活性サイトのアセンブリーのためのナノスケールの組織的骨格の役目をする。カリックスアレーンはまた、カリックスアレーン骨格上の官能基及び置換基を配位結合することによって、金属コロイド中心の電子密度に影響を与えることができる。さらに、カリックスアレーンと結合した金属コロイドは、表面上のカリックスアレーンの間又はカリックスアレーン空洞の真下のいずれかに空間を含有し、これを分子の結合及び触媒作用に使用することができる。上記作用のすべては、カリックスアレーン結合金コロイドで以前に実証されている[Haら、Langmuir、第25巻:10548頁(2009年)]。
【0009】
有機配位子で安定化されている、より小さな金コロイドの継続した探究は、様々な分野、例えばドラッグデリバリー及び遺伝子デリバリーなどの分野における、機能材料のアセンブリーのための構成単位としてのこれらの使用が主に機動力となっている((a)Rivere、C.、Roux、S.、Tillement、O.、Billotey、C.、Perriat、P.、医学的応用のためのナノシステム:生物学的検出、ドラッグデリバリー、診断及び治療。Annales de Chimie − science des Materiaux、第31巻、351〜367頁(2006年)。(b)Wang、G.L.、Zhang、J.、Murray、R.W、単層保護された金クラスターに結合したエチジウム挿入剤のDNA結合。Anal.Chem.第17巻、4320〜4327頁(2002年)。(c)Patra、C.R.、Bhattacharya、R.、Mukhopadhyay、D.、Mukherjee、P.、癌のターゲット療法のための金コロイドの応用。J.B.N.4、99〜132頁(2008年))、バイオセンシング((a)Zhao、W.、Chiuman、W.、Lam、J.C.F.、McManus、S.A.、Chen、W.、Yuguo、C.、Pelton、R.、Brook、M.A.;Li、Y.金コロイド上のDNAアプタマーの畳み込み:コロイド化学からバイオセンサーまで、J.Am.Chem.Soc.第130巻、3610〜3618頁(2008年)。(b)Scodeller、P.、Flexer、V.、Szamocki、R.、Calvo、E.J.、Tognalli、N.、Troiani、H.、Fainstein、A.、ワイヤード酵素のコアシェルAuコロイドバイオセンサー。J.Am.Chem.Soc.第130巻、12690〜12697頁(2008年)。(c)Wang、L.H.、Zhang、J.、Wang、X.、Huang、Q.、Pan、D.、Song、S.P.、Fan、C.H.、ターゲット応答DNA構造用の金コロイドベースのオプティカルプローブ。Gold.Bull.、第41巻、37〜41頁(2008年))、ナノファブリケーション((a)Li、H.Y.、Carter、J.D.、LaBean、T.H.、DNA自己組織化によるナノファブリケーション。Mater.Today、第12巻、24〜32頁(2009年)。(b)Becerril、H.A.、Woolley、A.T.、DNA−テンプレートしたナノファブリケーション。Chem.Soc.Rev.38、329〜337頁(2009年)及びこの中の参考文献)及び不均一な触媒作用((a)Choudhary、T.V.、Goodman、D.W.、担持された金ナノクラスターによる酸化触媒作用。Top.Catal.、第21巻、25〜34頁(2002年)。(b)Turner、M.、Golovko、V.B.、Vaughan、O.P.H.、Abdulkin、P.、Berenguer−Murcia、A.、Tikhov、M.S.、Johnson、B.F.G.、Lambert、R.M.、55−原子クラスターから誘導される金コロイド触媒による二酸素での選択性酸化。Nature、第454巻、981−U31(2008年)。(c)Lee、S.、Molina、L.M.、Lopez、M.J.、Alonso、J.A.、Hammer、B.、Lee、B.、Seiferi、S.、Winans、R.E.、Elam、J.W.、Pellin、M.J.、Vajda、S.、固定化したAu6−10クラスター上の選択性のプロペンのエポキシ化:活性及び選択性についての水素及び水の効果。Angew.Chem.、Int.Ed.、第48巻、1467〜1471頁(2009年)。(d)Hughes、M.D.、Xu、Y.−J.、Jenkins、P.、McMorn、P.、Landon、P.、Enache、D.I.、Carley、A.F.、Attard、G.A.、Hutchings、G.J.、King、F.、Stitt、E.H.、Johnston、P.、Griffin、K.、Kiely、C.J.、温和な条件下での炭化水素の選択性酸化のための調節可能な金触媒。Nature、第437巻、1132〜1135頁(2005年)。(e)Haruta、金が貴金属ではない場合:コロイドによる触媒作用。Chemical Record、第3巻、75〜87頁(2003年))。固体支持体上の金属クラスターの触媒の活性について、以前リサーチが行われた。Xu Zら、Nature、1994年、第372巻:346〜348頁;及びArgoら、Nature、2002年、第415巻:623〜626頁。これらの参考文献が、ある意味で配位子として考えることができる、金属酸化物の支持体上の金属クラスターを開示している限りにおいて、参考文献は、1つの配位子のみとしか錯体を形成しない金属クラスターを開示している。
【0010】
これらの用途において小さな金コロイドは、制限された場所、例えば大きなコロイドでは接触不可能な細胞内のコンパートメントなどへの貫通性という観点から有利であり、より高い分解能及び情報密度での材料のアセンブリーを可能にし、塊状のものとは異なる好ましい触媒特性を示す表面配位子の選択を介して、より大きな表面積対体積及び電子の調節能力を提供する。有機配位子で小さな金属コロイドをパッシベーションすることにより、より大きく、より安定したコロイドへ凝集するという、これらに遍在する傾向が低減する。このようなパッシベーション層に理想的なのは、一見互いに両立困難不に見える2つの機能:(i)小さな金属コロイドを安定化すること、その一方ではまた(ii)他の分子への結合及び共役を容易にするために金属表面への接触を可能にすることを促進することである。嵩高いカリックスアレーン配位子と結合した大きな(4nm)金コロイドは、凝集及び焼結に対してより高い安定性を有し、配位結合するカリックスアレーン置換基との相互作用を介して調節可能な電子密度を有し、吸着された配位子との間に位置する小分子結合部位としての役目を果たす接触可能な金属表面を有することが以前から示されていた(Ha JM、Solvyov A、Katz A、カリックスアレーン結合金コロイドにおける接触可能な金属表面の合成及び特徴づけ。Langmuir、第25巻、10548〜10553頁(2009年)及び本明細書中の参考文献)。上記のすべての作用は、カリックスアレーン結合金コロイドに対して以前実証された[Haら、Langmuir、第25巻:10548頁(2009年)]。
【0011】
かなり驚くことに、発明者らは、例えばカリックスアレーンなどの配位子を用いて、金属原子に錯体を形成させることによって、以前生成されたものより小さな金属コロイドの形成が可能となることを発見した。さらに、直観に反して、より小さなコロイドは、より大きなコロイドよりも、接触可能な表面原子をより高い割合で有することが発見された。金属表面上に曝露された原子は、化学の重要なエレメント、例えば、金属コロイドの触媒特性及び吸着(結合)特性などであるため、この発見は、金属コロイドの有用性及び汎用性を増大させる。
【0012】
これまでに知られている金クラスターは、ククルビツリル内に封入されているものを含む。CormaAら、Chem.Eur.J.、2007年、第13巻:6359〜6364頁。しかし封入された配位子は、金浸出剤としてシアン化物アニオンに接触不可能であった。これら封入されたクラスターのストイキオメトリは、1つの金中心につき1つの配位子である。より小さな空洞サイズのククルビツリルの使用は、より大きな金クラスター(4nm)をもたらし、金属中心は、配位子サイズよりかなり大きかった。
【0013】
NowickiAら、Chem.Commun.、2006年、296〜298頁;Denicourt−NowickiAら、Dalton Trans.、2007年、5714〜5719頁(Denicourt−NowickiI);及びDenicourt−NowickiAら、Chem.Eur.J.、2008年、第14巻:8090〜8093頁(Denicourt−Nowicki II)は、シクロデキストリンと錯体形成したルテニウムナノ粒子について研究した。Denicourt−Nowicki Iの図1のヒストグラムは、すべての金属中心が、配位子として使用されるβ−シクロデキストリンのサイズより大きいことを示している。これは、スキーム2と標識されたNowickiにおける概略図と一致しており、より小さいシクロデキストリン配位子で取り囲まれたより大きなRu(0)中心を示唆している。
【0014】
Sylvestre J−Pら、J.Am.Chem.Soc.、2004年、第126巻:7176〜7177頁は、Denicourt−Nowicki Iと同種のシクロデキストリン配位子を使用した金粒子の調製について記載している。やはり、Denicourt−NowickiIの場合のように、金属中心のサイズは、シクロデキストリンよりも大きく、2〜2.5nmに及ぶ。
【0015】
Goldipas KRら、J.Am.Chem.Soc.、2003年、第125巻:6491〜6502頁は、著者によると、これらと錯体を形成している配位子を含む樹状楔よりも大きなAu中心からなり、したがって封入が物理的に不可能なナノ粒子コアデンドリマーを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書中に提供されているのは、配位子と金属コロイドとのサイズの差が接触可能な金属中心を提供する上で重要な役割を果たす、金属コロイドとの配位子錯体である。本発明の例示的コロイドは、これらが結合している配位子よりも小さい金属中心を有し、驚くことに、類似のより大きなコロイドと比較して、より高いパーセンテージのこれら金属表面原子が、配位子より小さな様々なプローブ分子と接触可能である。本発明以前の、配位子に結合した金属コロイドは、配位子−金属コロイド錯体の中心との、このような潜在的に広範な接触を可能としなかった。本明細書に記載される錯体の例示的実施形態は、結合という事象の間に、錯体を凝集及び/又は分解することなしに、錯体が溶液又は気相からの分子と結合することができるという意味で接触可能である。これは、接触可能な部位を持たないか、又は配位子交換プロセス中に、溶液又は気相からの分子の結合を伴い、焼結(凝集)を介して分解する、本分野で知られている多くのクラスターとは対照的である。本明細書中に開示されている錯体は、錯体を形成する少なくとも2つの配位子を有するので、これまでに知られている錯体と比較して、封入の危険性は回避される。
【0017】
本発明の例示的化合物は、以下:(i)表面上の立体的に嵩高い配位子として作用する配位子による、凝集及び焼結からの保護、(ii)配位子間の領域に位置する曝露された金属による金属表面への接触可能性、(iii)配位子上の置換基官能基によるコロイド中心の電子特性及び立体特性を調整するために使用することができる部分を提供する。容易に変えられる配位子として作用し、配位子に配位結合しているコロイド中で、ある特定の所望の性質を成し遂げるために調節可能な、例えばカリックスアレーン関連化合物などの配位子が同様に提供される。これらの配位子を作製し、コロイドとこれらを配位結合させる方法もまた提供される。さらに、化合物を作製するための方法及びこれらの使用のための方法もまた、これらの遊離状態及び固定化した状態の両方で提供される。カリックスアレーン関連化合物の錯体及び本発明の金属コロイドは、当技術分野で公知のものも含め、金属媒介プロセスで触媒されるべき触媒プロセスに使用することができる。
【0018】
本発明は、例示的配位子としてカリックスアレーン様部分に依存して例示される。本発明は、カリックスアレーン様部分と結合した、金などの貴金属のコロイドを参照することによりさらに例示される。結合配位子は、同様に金属コロイドの表面で結合及び/又は反応することができる分子への接触可能性も同時に提供しながら、凝集/分解からの金属部分の保護を提供する。本発明の例示的実施形態において、配位子、例えばカリックスアレーンを使用することによって、電子環境、立体的接触、パターン化、及び、最終的に金属コロイド中心の触媒活性を調整することができる。さらに、金属コロイド、配位子(例えばカリックスアレーン関連分子など)及びその錯体の合成のための一般化できる手法が提供される。例示的実施形態において、本発明は、例えば、カリックスアレーン関連部分などの配位子との配位による、金属コロイド、例えば金含有コロイドの反応性の制御面の方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】単結晶エックス線の1a、1b及び1cの結晶構造を示す。
【0020】
【図2】(a)1a−赤(0.9±0.1nm、242粒子)、(b)1b−赤(1.1±0.2nm、295粒子)、及び(c)1c−赤(1.9±0.5nm、257粒子)のHAADF−STEMイメージを表す。スケールバーは、5nmを示す。
【0021】
【図3】結合した2NTに応じて、1a−赤(正方形)及びAu11(PPh3)7(SCN)3(三角形)の2NTの蛍光発光強度を示す。各溶液は、ジクロロメタン中の55μMの金原子を含有し、283nmで励起される。発光強度は、ジクロロメタン溶媒のベースラインを差し引く。
【0022】
【図4】カリックス[4]アレーン−結合した(a)4nm金コロイド及び(b)サブナノメートルの金コロイドの略図である。(b)の中の別のカリックス[4]アレーンを結合するのに不十分な空間が、カリックス[4]アレーンのサイズよりわずかに小さく、コロイドの総表面積の有意な割合を占める小分子サイズの空隙の生成を引き起こす。(c)HAADF−STEMを使用して測定した、2NT(下界)と結合した金表面原子と、コロイド直径の割合。
【0023】
【図5】−60℃での1a−赤の31P NMRスペクトルである。
【0024】
【図6】室温での1aの31P NMRスペクトルである。
【0025】
【図7】−60℃での1aの31P NMRスペクトルである。
【0026】
【図8】室温での1aの1H NMRスペクトルである。
【0027】
【図9】室温での1bの31P NMRスペクトルである。
【0028】
【図10】室温での1bの1H NMRスペクトルである。
【0029】
【図11】室温での1cの31P NMRスペクトルである。
【0030】
【図12】室温での1cの1H NMRスペクトルである。
【0031】
【図13】1a−赤の分子のイオンフラグメント(上の図)及び[Au11L2Cl3]2+の理論的シミュレーションを示すESI質量スペクトルである。L=tert−ブチル−カリックス[4]−(OMe)2(OCH2PPh2)2(下の図)。
【0032】
【図14】前駆体、(a)1a、(b)1b、及び(c)1cの[M−Cl]+分子イオンのESI質量スペクトル(上の図)及び理論的シミュレーション(下の図)である。
【0033】
【図15】CH2Cl2中の1a−赤、1b−赤及び1c−赤のUV−可視スペクトルである。
【0034】
【図16】1a、1b、1c、及び2bの単結晶構造である。1a及び1b中の溶媒分子は排除している。水素原子以外の各熱振動楕円体は、50%の可能性を表す。
【0035】
【図17】tert−ブチル−カリックス[4]−(OR)2(OCH2PPh2)2(R=C3H7−n)の単結晶エックス線の結晶構造である。ホスフィン基の一つが無秩序であるにもかかわらず(すなわち、P2A、77%、P2B、23%)、両方のホスフィン基は、底縁部の酸素平面上で組織化されている。
【0036】
【図18】(a)5μMの2NTを1a−赤、1b−赤、及び1c−赤に結合する前(黒)及び後(赤)のクラスターのUV−Visスペクトルである。このスペクトルは350nmで規格化されている。
【0037】
【図19】1b−赤上の2NTの蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Auコロイド1つ当たりの2NTは、それぞれ0.92(i)、1.38(ii)、1.61(iii)、1.84(iv)、2.07(v)、及び2.30(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中の4.35uMのAuコロイドを含有し、283nmで励起される。Auコロイドパウダーは、38重量%金(XPS結果に基づく)からなり、各コロイドは、46個の金原子(TEMイメージに基づく)からなると仮定して、コロイド濃度を算出する。
【0038】
【図20】1c−赤上の2NTの蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Auコロイド1つ当たりの2NTは、それぞれ1.21(i)、2.41(ii)、3.62(iii)、4.82(iv)、6.03(v)、及び7.23(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中の0.83uMのAuコロイドを含有し、283nmで励起される。Auコロイドパウダーは、100%金からなり、各コロイドは、241個のAu原子(TEMイメージに基づく)からなると仮定してコロイド濃度を算出する。
【0039】
【図21】(a)1a−赤及び(b)Au11(PPh3)7(SCN)3上の2NTの蛍光発光スペクトルである。Au11フラグメント1つ当たりの2NTは、それぞれ(a)の中で1.15(i)、1.38(ii)、1.61(iii)、1.84(iv)、2.07(v)、及び2.30(vi)であり、(b)の中で、(i)、0.125(ii)、0.25(iii)、0.375(iv)、0.5(v)、及び0.625(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中に5μMのAu11フラグメントを含有すると仮定し、283nmで励起される。
【0040】
【図22】[Au11(PPh3)8Cl2]PF6上の2NTの(a)蛍光発光強度及び(b)発光スペクトルを示す。Au11フラグメント1つ当たりの2NTは、それぞれ、0(i)、0.15(ii)、0.3(iii)、0.45(iv)、0.6(v)、及び0.75(vi)である。各溶液は、ジクロロメタン中に5μMのAu11フラグメントを含有し、283nmで励起される。
【0041】
【図23】合成後に2a−及び2c−結合した4−nm金コロイド上の2NTの蛍光発光強度を示す(▲:1.25−単層等価2a−結合コロイド、▼:2−単層等価2a−結合コロイド、△1.25−単層等価2a−結合コロイド、▽:2−単層等価2a−結合コロイド)。2a−及び2c−結合したコロイドは、1a−赤及び1c−赤に関連する。
【0042】
【図24】1a−赤、1b−赤、及び1c−赤の(a)P2p及び(b)Au4fXPS結果を示す。(a)の1a−赤結果の逆畳み込みが(c)において示されている。結合エネルギーは、284.8eVで、C1sにより補正される。
【0043】
【図25】(a)−57℃でのカリックスアレーンの脂肪領域の1H NMR(CDCl3、DRX−500MHz)を(b)配座異性体の配置と共に示す。
【0044】
【図26】配座異性体の計算した分布である。
【0045】
【図27】XPS及び元素分析(ICP)結果と一致する1a−赤、並びにHAADF−STEMを介して観察したサイズの略図である。これは、5つのカリックスアレーンホスフィン配位子が結合している、Au11金属コロイドの中心からなる。これらカリックスアレーンホスフィンのうちの2つは、二座の形式で金表面に結合し、残りの3つは、非結合のPがホスフィンオキシドとして酸化状態+5となるように、単座の形式で結合している。VDW摩擦が最小化するように、カリックスアレーンを金表面上に手作業で配置した。次いでこの系をMaestro9.5、Macromodel 9.7(2009 Schrodinger、LLC)のOPLS力場を用いて最小化の対象とし、Au原子への結合が強制された。明瞭となるよう、tert−ブチル基及び水素は計算に含まれるが、表示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義
「アルキル」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、完全に飽和した、一価又は多価不飽和であってよく、一価、二価及び多価の基を含み、場合によって明示された炭素原子の数を有する(すなわちC1〜C10は1から10個の炭素を意味する)、直鎖又は分枝の鎖、又は環式の炭化水素基、又はこれらの組合せを意味する。飽和した炭化水素基の例として、これらに限らないが、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチルなどの基、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどのホモログ及び異性体が挙げられる。不飽和のアルキル基は、1つ又は複数の二重結合又は三重結合を有するものである(すなわち、アルケニル及びアルキニル部分)。不飽和のアルキル基の例として、これらに限らないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニル、並びにより高級なホモログ及び異性体が挙げられる。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。「アルキル」という用語は、「アルキレン」を指すことができ、アルキレンは、それ自体で又は別の置換基の一部として、アルカンから誘導された二価の基を意味し、これに限らないが、−CH2CH2CH2CH2−で例示することができ、「ヘテロアルキレン」として以下に記載されたような基をさらに含む。通常、アルキル(又はアルキレン)基は、1〜24個の炭素原子を有することになり、10個以下の炭素原子を有するような基が好ましい場合がある。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」は、より短い鎖のアルキル又はアルキレン基であり、一般的に8個以下の炭素原子を有する。ある実施形態において、アルキルは、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、C26、C27、C28、C29及びC30アルキルから選択されるいずれかの組合せ(単一を含む)を指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C20アルキルを指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C10アルキルを指す。ある実施形態において、アルキルは、C1〜C6アルキルを指す。
【0047】
「アルコキシ」「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)という用語は、これらの従来の意味で使用され、それぞれ酸素原子、窒素原子(例えばアミン基)、又は硫黄原子を介して、分子の残りに結合しているようなアルキル基及びヘテロアルキル基を指す。
【0048】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で又は別の用語と組み合わせて、他に述べられていない限り、安定した直鎖又は分枝鎖、又は環式アルキル部分、又はこれらの組合せを意味し、1個又は複数の炭素原子と、O、N、Si、B及びSからなる群から選択される、少なくとも1個のヘテロ原子とからなり、前記窒素及び硫黄原子は、場合によって酸化されていてもよく、前記窒素ヘテロ原子は、場合によって四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、S、B及びSiは、ヘテロアルキル基の内側の位置又はアルキル基が分子の残りに結合している位置のいずれかに配置されてもよい。例として、これらに限らないが、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2,−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3、及び−CH=CH−N(CH3)−CH3などが挙げられる。2個までのヘテロ原子が、例えば、−CH2−NH−OCH3及び−CH2−O−Si(CH3)3などのように連続していてもよい。同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自体で又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導された二価の基を意味し、これらに限らないが、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−及び−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−などが例示される。ヘテロアルキレン基に関しては、ヘテロ原子が、鎖末端のいずれか一方又は両方を占めることもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基に関しては、連結基の幾何学的配置は、連結基の式が書かれた方向によって暗示されない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−及び−R’C(O)2−の両方を表す。
【0049】
「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」という用語は、これら自体で又は他の用語と組み合わせて、他に述べられていない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環式の形を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りに結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例として、これらに限らないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例として、これらに限らないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0050】
「アシル」という用語は、部分−C(O)R(Rは、本明細書中で定義された意味を有する)を含む種を指す。Rに対する例示的な種として、H、ハロゲン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルが挙げられる。
【0051】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、これら自体で又は別の置換基の一部として、他に述べられていない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むことを意図する。例えば、「ハロ(C1〜C4)アルキル」という用語は、これらに限らないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意図する。
【0052】
「アリール」という用語は、他に述べられていない限り、単環又は多環(好ましくは1〜3環)であってよい多価不飽和の、芳香族置換基を意味し、これらの環は、一緒に縮合又は共有結合により連結されている。「ヘテロアリール」という用語は、N、O、及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有するアリール基(又は環)を指し、前記窒素及び硫黄原子は、場合によって酸化されており、前記窒素原子(単数又は複数)は、場合によって四級化されている。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りに結合することができる。アリール基及びヘテロアリール基の非限定的な例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、及び6−キノリルが挙げられる。上に記述したアリール及びヘテロアリール環系のそれぞれに対する置換基は、以下に記載した許容可能な置換基の群から選択される。
【0053】
略して、「アリール」又は「ヘテロアリール」という用語は、他の用語と組み合わせて使用された場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)は、上で定義されたアリール環及びヘテロアリール環の両方を含む。したがって、「アリールアルキル」という用語は、アリール基がアルキル基に結合されているような基を含むことを意図し(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)、これらには、炭素原子(例えばメチレン基)が、例えば酸素原子などで置き換えられているアルキル基が含まれる(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)。
【0054】
ある実施形態において、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリールのいずれかは、置換されていてもよい。各タイプの基に対する好ましい置換基を以下に提供する。
【0055】
アルキル及びヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルとしばしば呼ばれる基を含む)に対する置換基は、「アルキル基置換基」と総称的に呼ばれている。ある実施形態において、アルキル基置換基は、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、−NRSO2R’、−CN及び−NO2(数は、0〜(2m’+1)の範囲内であり、m’は、このような基の中の炭素原子の総数である)から選択される。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、例えば1〜3個のハロゲンで置換されているアリール、置換又は非置換のアルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を指す。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のシクロアルキル、非置換のヘテロシクロアルキル、非置換のアリール、非置換のヘテロアリール、アルコキシ、チオアルコキシ基、及びアリールアルキルから選択される。一実施形態においてR’、R”、R”’及びR””は、それぞれ独立して、水素及び非置換のアルキルから選択される。例えば、本発明の化合物が2つ以上のR基を含む場合、2つ以上のこれらの基が存在する場合には各R’、R”、R’”及びR””基が独立して選択されるように、R基のそれぞれが、独立して選択される。R’及びR”が同じ窒素原子に結合している場合、これらは、窒素原子と組み合わせることによって、5員、6員、又は7員の環を形成することができる。例えば、−NR’R”は、1−ピロリジニル及び4−モルホリニルを含むことができる。ある実施形態において、アルキル基置換基は、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。
【0056】
アルキル基に対して記載した置換基と同様に、アリール基及びヘテロアリール基に対する置換基は、「アリール基置換基」と総称的に呼ばれている。ある実施形態において、アリール基置換基は、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R”、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R”R”’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R”、−OC(O)NR’R”、−NR”C(O)R’、−NR’−C(O)NR”R”’、−NR”C(O)2R’、−NR−C(NR’R”R’”)=NR””、−NR−C(NR’R”)=NR’”、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R”、−NRSO2R’、−CN及び−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシ、及びフルオロ(C1〜C4)アルキルから選択され(数は、0〜芳香環系上の開放原子価の総数の範囲内である)、ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される。ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素、非置換のアルキル、非置換のヘテロアルキル、非置換のアリール及び非置換のヘテロアリールから選択される。ある実施形態において、R’、R”、R”’及びR””は、独立して、水素及び非置換のアルキルから選択される。例えば,本発明の化合物が、2つ以上のR基を含む場合、2つ以上のこれらの基が存在する場合に、各R’、R”、R’”及びR””基が独立して選択されるように、R基のそれぞれが、独立して選択される。ある実施形態において、アリール基置換基は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のヘテロシクロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される。
【0057】
アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−T−C(O)−(CRR’)q−U−(式中、T及びUは、独立して、−NR−、−O−、−CRR’−又は一重結合であり、qは、0〜3の整数である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つは、式−A−(CH2)r−B−(式中、A及びBは、独立して−CRR’−、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−又は一重結合であり、rは、1〜4の整数である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。こうして形成された新しい環の一重結合のうちの一つは、二重結合で場合によって置き換えられていてもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの2つが、式−(CRR’)s−X−(CR”R’”)d−(式中、s及びdは、独立して、0〜3の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、又は−S(O)2NR’−である)の置換基で場合によって置き換えられていてもよい。置換基R、R’、R”及びR’”は、独立して、水素又は置換又は非置換の(C1〜C6)アルキルから選択されるのが好ましい。
【0058】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)及びホウ素(B)を含む。
【0059】
他に特定されていない限り、「R」という記号は、アシル、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のシクロアルキル、置換又は非置換のヘテロシクロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される置換基を表す一般的な略語である。
【0060】
「塩(単数又は複数)」という用語は、本明細書に記載されている化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的無毒の酸又は塩基で調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が、比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の塩基と、純正又は適切な不活性溶媒のいずれかの中で接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、又はマグネシウムの塩、又は同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性の形態を、十分な量の所望の酸と、純正又は適切な不活性溶媒のいずれかの中で接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。酸付加塩の例として、例えば塩酸、臭水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸、リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸水素酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸などの無機酸から誘導されたもの、並びに比較的無毒の有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などから誘導される塩が挙げられる。同様に含まれているのが、アミノ酸の塩、例えばアルギネートなど、及び有機酸の塩、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸など(例えば、Bergeら、Journal of Pharmaceutical Science、第66巻:1〜19頁(1977年)を参照されたい)である。特定の具体的な本発明の化合物は、化合物を塩基又は酸性付加塩のいずれかへと変換させることできる塩基性及び酸性の官能基の両方を含有する。塩の水和物も同様に含まれる。
【0061】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学的中心)又は二重結合を所有する。ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体及び個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。光学活性な(R)−及び(S)−異性体s並びにd及びl異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製してもよく、又は従来の技法を使用して分解してもよい。本明細書に記載されている化合物は、オレフィン二重結合又は他の幾何学的不斉中心を含有し、特に指定のない限り、化合物は、E及びZ幾何異性体の両方を含むことが意図されている。同様に、すべての互変異性体の形態が含まれる。
【0062】
本明細書中に開示されている化合物は、このような化合物を構成する、1つ又は複数の原子の位置で非天然の比率の原子アイソトープも含有し得る。例えば、化合物は、放射性同位元素、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)又は炭素−14(14C)などで放射標識してもよい。本発明の化合物のすべての同位体の変形は、放射性であるかどうかに関わらず、本発明の範囲内に包含されることを意図している。
【0063】
実施形態
一態様において、本発明は、金属コロイド、配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)及びその錯体を提供する。一態様において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、該複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含む。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つは、前記金属コロイドより大きい。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子と接触可能である。例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)各それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーは、複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つは、前記金属コロイドより大きく、前記金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子と接触可能である。
【0064】
「金属コロイド」という用語は、重要な金属−金属結合特徴を有する結合によりつなぎ合わせられた少なくとも2個の金属原子を含む粒子を指す。本発明の例示的金属コロイドは、複数の貴金属原子を含む金属コロイド、例えば複数の金原子を含む金属コロイドである。金属コロイドに対して有用な金属原子として、Ir、Pt、Pd、Ni、Mo、W、Co及びAuから選択されるものが挙げられる。
【0065】
金属コロイドのサイズは、様々であってよい。ある実施形態において、金属コロイドは、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される程度の長さの直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される程度の長さより短い直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、およそ1.0nm未満の直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、およそ0.9nm未満の直径を有する。ある実施形態において、金属コロイドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の金属原子を含む。例示的実施形態において、金属コロイドは、11個の金属原子、例えば11個のAu原子を含む。
【0066】
例示的実施形態において、金属コロイドは、1つ又は複数の配位子(例えば、カリックスアレーン様部分)に結合している。コロイドは、2つ以上の配位子を含むことができ、これらの部分は、同一であっても、異なってもよい。様々な実施形態において、金属コロイドは、該金属コロイドに結合できるだけの多くの数の配位子と結合できる。配位原子と金属原子の典型的なモル比は、1付近であり、通常1と2の間である。典型的な配位子と金属原子の比は、0.5に近く、例示的実施形態では、0.5〜1の間である。
【0067】
例示的実施形態において、少なくとも2つの配位子は、金属コロイドよりも大きい。サイズの差の測定は、当業者であれば理解されるように、多くのいかなる方式でも求めることができる。例えば、ある実施形態において、配位子の長さが金属コロイドの直径よりも長いことによってそれぞれ特徴づけられている場合、2つの配位子は、金属コロイドよりも大きい。この場合、長さは、金属コロイドの表面の接線と平行なベクターに沿って測定され、この接線は、金属コロイドの表面の垂線に垂直であり、この垂線は、配位子の中心に向けられているか、又は中心を通り抜ける。別の例では、少なくとも2つの次元において配位子の直径のそれぞれが、金属コロイドの直径よりも大きい。
【0068】
例示的な実施形態において、錯体の金属コロイドは、配位子より小さいプローブ分子に、接触可能である。換言すれば、一態様において、錯体は、(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上とを含み、前記リンカーが前記複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、前記配位子の少なくとも2つが前記金属コロイドよりも大きく、前記金属コロイドが前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。
【0069】
これらの文脈において、結合事象の間、凝集及び/又は分解プロセスを介して錯体の安定性を失うことなく、溶液又は気相からの分子を錯体が結合することができる場合、金属コロイドは「接触可能」である。接触可能性は、多くの方法で評価することができる。ある実施形態において、少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の表面金属原子が、配位子よりも小さいプローブ分子に接触可能である。ある実施形態において、少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の金属原子の表面積が、配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。例示的実施形態において、少なくともおよそ5%、又はおよそ5%〜25%の表面金属原子が、配位子より小さいプローブ分子に接触可能である。例示的実施形態において、金属コロイドは、金属原子を介してさらなる配位子にさらに結合することはできない。
【0070】
配位子に結合している金属コロイドの接触可能な表面積の量に対する標準的な測定は、2−ナフタレンチオール(2−NT)の表面への結合を判定し定量することである。金属中心に結合した配位子よりも小さな他のプローブもまた有用である。例えば、チオール化したDNA及びRNAは、プローブ分子として使用することができる。
【0071】
「配位子」という用語は、当技術分野で普通これに帰属する意味を有する。例示的配位子は、立体的に嵩高い種、例えば大環状分子(例えば、カリックスアレーン様配位子、ポリアミン大環状分子、ポルフィリン)、デンドリマー及び他の分枝オリゴマー又はポリマーの種などを含む。ある実施形態において、配位子は、有機配位子である。「有機」という用語は、炭素と水素とを含む化合物を指し、場合によって、当技術分野で理解されるような有機分子に一般的に見出される他の原子も包含し、このような他の原子には、窒素、酸素、リン及び硫黄が含まれる。以下に記載する通り、配位子は、リンカーを一般的に含み、例示的実施形態において、配位子は、1つのリンカー又は2つのリンカーを含み、これらは、同一であっても、異なってもよい。
【0072】
例示的実施形態において、少なくとも1つの(例えば、2つ以上)配位子は、カリックスアレーン関連化合物である。「カリックスアレーン関連化合物」又は「カリックスアレーン様配位子」という用語は、カリックスアレーンと、さらに架橋部分により連結されたアリール基又はヘテロアリール基を含有することによって、「バスケット」を形成する点、及び他の環式基を同様に連結することによって形成された「バスケット」タイプの化合物を形成するという点でカリックスアレーンと同様の化合物を含むことを意図する。「再考:カリックスアレーン」という教科書(C.David Gutsche、Royal Society of Chemistry、1998)は、例えば23〜28頁にこれら化合物の一部を記載し、この教科書は、本明細書中での参照により本明細書に組み込まれている。「カリックスアレーン関連化合物」は、この教科書に述べられている化合物のタイプを含むことを意図する。したがってこれは、フェノール基の間の1つ又は複数の架橋が2個以上の炭素原子を含有する「ホモカリックスアレーン」と呼ばれる化合物を含む。Gutscheにおいて与えられた一例は、62番であり、これは、シクロブチル架橋を含む。
【0073】
「カリックスアレーン関連化合物」として、例えば、それぞれ1つ又は複数の酸素、窒素、ケイ素又は硫黄架橋を、フェノール基の間に含有する、オキサカリックスアレーン、アザカリックスアレーン、シリカカリックスアレーン及びチアカリックスアレーン、並びに1つ又は複数の白金架橋を有するカリックスアレーン化合物なども挙げられる。この用語はまた、例えば、Gutsche(1998年)において「カリックスアレーン関連シクロオリゴマー」と呼ばれる化合物など、例えばフェノールの残基よりはむしろフラン又はチオフェンから形成される同様の構造体を含む。他のカリックスアレーン関連化合物として、例えば、カリックス[n]ピロール、カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール又はカリックス[m]ピリジンなどが挙げられる。「カリックス[n]ピロール」は、α−位置で連結された「n」個のピロール環を有する大環状分子である。「カリックス[m]ピリジノ[n]ピロール」は、α−位置で連結された、「m」個のピリジン環及び「n」個のピロール環を有する大環状分子である。「カリックス[m]ピリジン」は、α−位置で連結された「m」個のピリジン環を有する大環状分子である。
【0074】
カリックスアレーン配位子の骨格は、遷移金属で錯体を形成する配位子の能力を妨げない他の原子で置換することができる。例えば、カリックスアレーン配位子の骨格は、アルキル、アリール、ハライド、アルコキシ、チオエーテル、アルキルシリル、又は他の基で置換することができる。
【0075】
例示的カリックスアレーン関連化合物は、4、6、又は8つのフェノール部分を有する。したがって好ましいカリックスアレーンは、カリックス[4]アレーン、カリックス[6]アレーン、及びカリックス[8]アレーンである。カリックス[4]アレーンがより好ましい。一部の好ましい触媒系において、カリックスアレーン関連化合物は、p−アルキルカリックスアレーンであり、より好ましくはp−t−ブチルカリックスアレーンである。これらの物質を作製するための合成手順は、精密に磨きがかけられ、最適化されており、出発物質、例えば、p−t−ブチルフェノールは、容易に入手可能である。
【0076】
同様に提供されるのは、コロイドと錯体を形成する際に、カリックスアレーン関連部分に容易に変換される配位子である。本実施形態において、本発明は、1つ又は複数のアリール部分の1つ又は複数の位置で誘導体化された、カリックスアレーン関連化合物を提供し、このカリックスアレーン関連化合物は、コロイドの少なくとも1個の金属原子と配位結合することが可能な配位原子を含むリンカーを有する。
【0077】
例示的カリックスアレーン関連化合物は、ホルムアルデヒドと縮合したフェノール及び置換フェノールの環式オリゴマーであるカリックスアレーンであり、様々な実施形態において、一般的な構造:
【化1】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16である)により特徴づけられる。例示的実施形態において、nは4である。波線は、複数のこれら単量体のユニットが結合して閉環を形成することを表す。このような分子についての一般的情報は、例えば、Bauerら、JACS107、6053(1985年)及びC.David Gutscheによる教科書「カリックスアレーン」(これは、超分子化学(J.Fraser Stoddart編;Royal Society of Chemistry、1989年)の中の研究書の一部である)、及び同じ著者による「再考:カリックスアレーン」(1998年)に中に見出すことができる。カリックスアレーンは、「バスケット」の形を有する環式オリゴマーの形態であり、その空洞は、イオン及び分子を含めた多数のゲスト種に対して、結合部位としての役目をすることができる。
【0078】
ある実施形態において、基R2は水素であってよく、又はこれらだけに限らないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスホネート、ホスホン酸、チオール、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルベン、スルホキシド、ホスホニウム、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル及びハロゲンを含めたいくつかのアリール置換基のいずれかであってよい。例示的カリックスアレーンにおいて、R2は、通常、OR1基に対してパラ位の単一の置換基を表す。しかし、本発明において有用なカリックスアレーンは、1つ又は複数のR2置換基を含むことができる。2つ以上の置換基が存在する場合、この置換基は、同一であっても、異なってもよい。2つの置換基を有する例示的種類のカリックスアレーン化合物は、カリックス[n]レソルシンアレーンとして当技術分野で公知であり、これは、互いにつなぎ合わせられたレゾルシノール部分を含み、通常、環の周囲に異なる配置でフェノキシ基を所有する。
【0079】
例示的R1置換基として、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリール部分が挙げられる。R1はまたHであってもよい。
【0080】
例示的実施形態において、少なくとも1つのR1は、1つ又は複数の配位原子を含む。「配位原子」とは、金属原子と配位結合する、特に金属コロイドの金属原子と配位結合(又は配位結合を形成する)することが可能な構成要素である。例示的「配位原子」として、窒素、酸素、硫黄、リン及び炭素(例えば、カルベンの場合など)が挙げられる。配位原子は、中性でも、電荷があってもよく、例えば、塩の成分又はこれから派生したものであってよい。
【0081】
「カリックスアレーン関連部分」は、配位原子を含むリンカーを介しての金属コロイドへの配位により、「カリックスアレーン関連化合物又は分子」から誘導された構造体である。
【0082】
「金属コロイド」という用語は、同一の金属、又は異なる金属であってよい、少なくとも2個の金属原子で構成される金属粒子の種を指す。金属コロイドは通常、少なくとも他の1個の有機配位子(例えば、CO)を含む。金属コロイド上の複数の配位子は、同一であっても、異なってもよい。
【0083】
したがって、さらなる例示的態様において、本発明は、カリックスアレーン関連部分と錯体を形成する金属コロイドを含む錯体を提供する。本発明の例示的化合物は、構造:
M−L−C
(式中、Mは金属コロイドであり、Lは、金属コロイドをC、カリックスアレーン関連部分に結合するゼロ次又はより高次のリンカーである)を有する。
【0084】
例示的実施形態において、錯体は、(a)複数の金原子を含む金属コロイドと、(b)リンカーを含む2つ以上のカリックスアレーン関連化合物とを含み、前記リンカーが、複数の金原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含む。例示的実施形態において、カリックスアレーン関連化合物の少なくとも2つは、金属コロイドより大きい。さらなる例示的化合物において、金属コロイドは、例えば、カリックスアレーン関連化合物より小さいプローブ分子に接触可能である。
【0085】
本明細書に記載されているいずれかの実施形態において、1つ又は複数のカリックスアレーン関連化合物は、式:
【化2】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数である)を有する。ある実施形態において、nは、4、5、6、7及び8から選択される整数である。例示的実施形態において、nは4である。
【0086】
ある実施形態において、R1は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分である。例示的実施形態において、少なくとも1つのR1は、配位原子を含む。例示的実施形態において、2つのR1は、配位原子を含む。ある実施形態において、R1は、置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、R1はC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルから選択される。ある実施形態において、R1はプロピルである。ある実施形態において、R1はメチルである。ある実施形態において、R1はHである。
【0087】
ある実施形態において、R2は、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分である。ある実施形態において、R2は置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、R2はC1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキルから選択される。ある実施形態において、R2はtert−ブチルである。ある実施形態において、R2は、−OR1に対してパラ位にある。
【0088】
ある実施形態において、少なくとも1つのR1はリンカーである。例示的実施形態において、1つのR1はリンカーである。例示的実施形態において、2つのR1はリンカーであり、これらは同一であっても、異なってもよい。「リンカー」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば、固体支持体をカリックスアレーン関連化合物に連結している、又はカリックスアレーン関連化合物を金属コロイドに連結している、本明細書中に開示されている本発明の構成要素を、共有結合により一緒に連結する、C、N、O、S、Si、B及びPからなる群から選択される、1〜30個の非水素原子を組み込んだ、単一の共有結合(「ゼロ次」)又は一連の安定した共有結合を指す。例示的リンカーとして、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個の非水素原子を含む。他に特定されていない限り、「連結している」「連結された」「連結」「共役している」「共役した」及び結合に関係する類似の用語は、リンカーを利用する技法及びリンカーを組み込む種を指す。カリックスアレーン関連化合物は、複数のリンカーを含むことができ、したがってより高いレベルの配位座数(denticity)が得られる。
【0089】
ある実施形態において、リンカーは、ホスフィン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される部分である。
【0090】
例示的実施形態において、リンカーは、配位原子を含む。例示的実施形態において、配位原子は、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される。配位原子は、当技術分野で公知の多数の様々な部分を介して提供することができる。便宜のため、これらの部分は、P、C、N及びO含有部分と呼ぶことができる。
【0091】
例示的実施形態において、リンカーは、P含有部分である。一つの特に有用なP含有部分はホスフィンである。様々な例示的実施形態において、リンカー上の配位原子は、ホスフィン部分のリン原子である。ある実施形態において、「ホスフィン」という用語は、総称的に、−Y1P(Y2)(Y3)、(式中、Y1は、結合、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択され、Y2及びY3は、独立して、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される)を指す。ある実施形態において、Y2及びY3は、それぞれ置換又は非置換のアリールである。例示的実施形態において、Y2及びY3はそれぞれフェニルである。ある実施形態において、Y1は、置換又は非置換のアルキルである。ある実施形態において、Y1はC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルである。ある実施形態において、Y1はメチルである。ある実施形態において、Y1は結合である。
【0092】
様々な例示的実施形態において、配位子とコロイドの間のリンカー上の配位原子は、ホスフィン部分のリン原子である。例示的実施形態において、本発明は、カリックスアレーンホスフィン配位子を含有する金コロイド、例えば、単座のtert−ブチル−カリックス(OPr)3(O−CH2−PPh2)及び二座のtert−ブチル−カリックス(OMe)2(O−CH2−PPh2)2カリックスアレーン配位子、及びこのような配位子と錯体を形成した金属コロイドなどを提供する。
【0093】
ホスフィン配位子と同様に、ホスフィナイト、ホスホナイト及びホスファイトが、遷移金属触媒反応において汎用性のある配位子として最近出現した。隣接の、負に帯電したヘテロ原子、例えばN及びOなど(ただしこれらに限らない)の位置決めによって、触媒反応に有利となることが多いこれら配位子の電子特性の微妙な調節を可能にする。隣接するO及びNの存在は、これらのホスフィン類似体と比較して、これら配位子にさらなる酸化的安定性を提供する。これら配位子は、アミノアルコール及びキラルジオール由来の大きな天然及び合成のキラルプールが入手可能なことから、高収率で容易に作製することができる(モジュール式手法に関しては、Velder、J.;Robert、T.;Weidner、I.;Neudorfl、J.−M.;Lex、J.;Schmalz、H−G.Adv.Synth.Catal.2008年、第350巻、1309〜1315頁を参照されたい、;ホスファイト合成の概説に関しては、Montserrat Dieguez、Oscar Pamies、Aurora Ruiz、及びCarmen Claver、Methodologies in Asymmetric Catalysis、第11章、2004年、161〜173頁、ACS Symposium Series、Volume880(ホスファイトの合成に関する)を参照されたい、ホスホルアミダイトの合成に関しては、Adriaan J.Minnaard、Ben L.Feringa、Laurent Lefort及びJohannes G. de Vries Acc.Chem.Res.、2007年、第40巻(12)、1267〜1277頁を参照されたい)。
【0094】
ホスフィナイト配位子が使用された例は、Rhで触媒された、オレフィンの不斉水素化(Blankenstein、J.;Pflatz、A.Angew Chem.Int.Ed.、2001年、第40巻、4445〜47頁)及びPd触媒されたSuzukiクロスカップリング反応(Punji、B.;Mague、J.T.;Balakrishna、M.S.DaltonTrans.、2006年、1322〜1330頁)である。
【0095】
Pflatz及び共同研究者は、カルベン源としてジアゾ酢酸エチルを使用して、Ruを触媒とした、スチレンの不斉シクロプロパン化に対して、オキサゾリンベースのホスホナイト配位子を使用した。同じ触媒はまた、2−プロパノール及び対応するナトリウムアルコキシドの存在下で、移動水素化反応を行うことも可能であった(Braunstein、P.;Naud、F.;Pflatz、A.;Rettig、S.Organometallics、2000年、第19巻、2676〜2683頁)。Pringle、Ferringa及び共同研究者は、Cu(I)−ホスホナイトベースの触媒を用いた、ジエチル亜鉛のエノンへのエナンチオ選択性の共役付加を示した(Martorell、A.;Naasz、R.;Ferringa、B.L.;Pringle、P.G.、Tetrahedron Asymmetry、2001年、第12巻、2497〜2499頁)。Ding及び共同研究者は、エナンチオ選択性のヒドロホルミル化反応に対してフェロセンベースの二座のホスホナイト配位子を使用した(Peng、X.;Wang、Z.;Xia、C.;Ding、K.Tetrahedron Lett.、2008年、第49巻、4862〜4864頁)。
【0096】
Rajanbabu及び共同研究者は、不斉のヒドロビニル化反応に対してニッケルホスフィナイト、ホスファイト及びホスホルアミダイト配位子を使用した(Park、H.;Kumareswaran、R.;Rajanbabu、T.V.R.Tetrahedron、2005年、第61巻、6352〜67頁)。Sandovalらは、デヒドロアミノ酸派生物の不斉の水素化に対してRh(I)ジホスファイト配位子を使用した(Sandoval、C.A.;Liu、S.J.Molecular.Catalysis.A、2010年、第325巻、65〜72頁)。アレーンのPdホスファイトで触媒された脱ハロゲン化がLeeらによって報告された(Moon、J.;Lee、S.J.Organometal.Chem.、2009年、第694巻、473〜77頁)。アリルアルコールを使用して、Pd−トリフェニルホスファイトが脱水アリル化を触媒することが示された(Kayaki、Y.;Koda、T.;Ikariya、T.J.Org.Chem.、2004年、第69巻、2595〜97頁)。Pdに基づくビアリールホスファイト触媒は、酢酸アリル、炭酸アリル及びハロゲン化アリルの不斉アリル置換反応に効果的なことが知られている(Dieguez、M.;Pamies、O.Acc.Chem.Res.、2010年、第43巻、312〜22頁)。カリックスアレーンホスファイトは、Rh(0)中、オレフィンで触媒されたヒドロホルミル化反応において、線状対分枝の高い比を得るための半球状のキレーター配位子として使用されてきた(Monnereau、L.;Semeril、D.;Matt、D.;Toupet、L.Adv.Synth.Catal.2009年、第351巻、1629〜36頁)。
【0097】
ホスホルアミダイト配位子は、触媒による不斉水素化(Minnaard、A.J.;Feringa、B.L.;Lefort、L.;de Vries、J.G.Acc.Chem.Res.、2007年、第40巻、1267〜77頁)、エノンへの共役付加(Jagt、R.B.C.;de Vries、J.G.;Ferringa、B.L.;Minnaard、A.J.Org.Lett.、2005年、第7巻、2433〜35頁)、及びジエチル亜鉛を用いたアリルのアルキル化(Malda、H.;vanZijl、A.W.;Arnold、L.A.;Feringa、B.L.Org.Lett.、2001年、第3巻、1169〜1171頁)に使用されてきた。
【0098】
したがって、ある実施形態において、リンカーは、ホスフィナイト、ホスホナイト、ホスファイト及びホスホルアミダイトから選択される。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換された、アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0099】
ある実施形態において、リンカーはC含有部分である。ある実施形態において、リンカーはカルベンである。特に有用なカルベンとして、Arduengoカルベンが挙げられる。一例は一般式:C(R’N)(R’’N)(式中、R’及びR’’は、場合によって架橋されることによって、ヘテロ環、例えばイミダゾール又はトリアゾールなどを形成する、様々な官能基(例えば総称的に上述したRなど)である)を有するジアミノカルベンである。例示的実施形態において、カルベンは、イミダゾリウム部分で置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)である。ある実施形態において、カルベンはイミダゾリウム部分でメチル置換されている。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0100】
例示的実施形態において、リンカーはN含有部分である。様々な有用なN含有部分として、アミン(Inorganica Chimica Acta、2005年、第358巻、2327〜2331頁)、イソニトリル(Organometallics、1994年、第13巻:760〜762頁)、ビス(ピラゾール−1−イル)メタン(Dalton Trans.、2004年、929〜932頁、例えばPdとの錯体−−同様の錯体はIrでも可能)、ピリジン(Dalton Trans.、2003年、2680〜2685頁、ピリジン−金錯体の例を記載−さらにIrなどの別の貴金属)、ビピリジン(Inorganic Chemistry、2008年、第47巻(12):5099〜5106頁、白金を含む、カリックスアレーンベースのビピリジン錯体を記載−さらにIrなどの別の貴金属、及びInorganica Chimica Acta、1989年、第165巻:51〜64頁、金を含むビピリジン錯体を記載−さらにIrなどの別の貴金属)、ターピリジン(J.Am.Chem.Soc.1999年、第121巻:5009〜5016頁を参照されたい。例えばイリジウムターピリジン錯体に関する)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)(Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁、TMEDAとのPd錯体について−同様の錯体がイリジウム金属で予測される)、及び1−10−フェナントロリン(1−10−フェナントロリンとのPd錯体については、Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁を参照されたい。−同様の錯体がイリジウム金属で予測される)が挙げられる。他のN含有部分として、アミド、アミン、アミン酸化物、ニトロソ、ニトロ、カルバメート及びピラゾールが挙げられる。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換された.アルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0101】
例示的実施形態において、リンカーはO含有部分である。様々な有用なO含有部分として、アルコキシド(Dalton Trans.、2004年、929〜932頁、例えばPdとの錯体−−同様の錯体がIrで可能である)、水酸化物(Inorganic Chemistry、2003年、第42巻(11):3650〜61頁、例えばPdの水酸化物錯体−同様の錯体がIrで可能である)、フェノキシド(フェノキシは、配位子としてすべてのカリックスアレーンの底縁部のROH基に対して自然である)、アセチルアセトネート(acac)(Polyhedron、2000年、第19巻:1097〜1103頁)、カルボキシレート(Inorg.Chem.1993年、第32巻:5201〜5205頁(カルボキシレート−Ir錯体について)、並びにDalton Trans.2003年、2680〜2685頁及びVerlag der Zeitschriftfur Naturforschung、2002年、57b:605〜609頁、カルボキシレート−金の錯体の例を記載−Irなどの別の貴金属)、二酸化炭素及び炭酸(J.Am.Chem.Soc.1989年、第111巻:6459〜6461頁)が挙げられる。他のO含有部分として、パーオキソ、エステル及びエーテルが挙げられる。ある実施形態において、リンカーは、これらの部分のいずれかを含む。例えば、リンカーは、これらの部分のいずれかで置換されたアルキル(例えば、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキル)、ヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってよい。
【0102】
ある実施形態において、リンカーは、アルキル及びヘテロアルキルから選択される部分であり、配位原子に加えて、本明細書に記載されている1つ又は複数のアルキル基置換基で場合によって置換されている。ある実施形態において、リンカーは、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、炭酸、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている。
【0103】
ある実施形態において、配位子、例えばカリックスアレーン関連化合物は、1つ又は複数のリンカーで官能化されている。様々な実施形態において、リンカーは、少なくとも1個の金属原子に配位結合することが可能な1つ又は複数の配位原子を含む。リンカーで官能化されたカリックスアレーン関連化合物は、当分野で認められた方法により調製することができる。例えば、様々な実施形態において、カリックスアレーン関連化合物は、少なくとも1つのフェノールサブユニットを含む。フェノールヒドロキシルは、脱プロトン化し、フェノキシドイオンは、フェノキシドイオンと相補的な反応性を有する反応性の官能基を有するリンカー前駆体と反応し、これによって、カリックスアレーン関連化合物のフェノール酸素原子を官能化する。フェノール以外の反応性の官能基は、カリックスアレーン関連化合物上の置換基として機能することができ、リンカーに対する結合ポイントとしての役目を果たすことができることを、当業者であれば理解されよう。
【0104】
本発明のリンカーで官能化された配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)を形成する上で有用な、例示的反応性の官能基を、以下に記載する。
【0105】
ある実施形態において、配位子及びリンカーの中心は、配位子中心上の第一の反応性官能基と、リンカーの前駆体上の、第2の反応性官能基との反応によりつなぎ合わせられている。反応性の官能基は、相補的な反応性を有し、反応することによって、2つの構成要素化合物の間に共有結合の連結基を形成する。
【0106】
例示的な反応性官能基は、これら前駆体、例えば、アルキル又はヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールの核又はアリール又はヘテロアリール核上の置換基上の任意の位置に位置することができる。同様に、反応性官能基は、アルキル又はヘテロアルキル鎖の任意の位置に位置する。様々な実施形態において、反応基が、アルキル(又はヘテロアルキル)、又は置換されたアルキル(又はヘテロアルキル)鎖に結合する場合、反応基は、鎖の末端位置に位置するのが好ましい。
【0107】
反応基及び本発明を実施する上で有用な種類の反応は一般的に、バイオコンジュゲート化学(Bioconjugate Chemistry)の分野で周知のものである。本発明のオリゴマーの反応性前駆体と共に利用可能な現在好まれている反応の種類は、比較的温和な条件下で進行するものである。これらの反応としては、求核置換(例えば、アミン及びアルコールと、ハロゲン化アシル、活性のあるエステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)及び炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子多重結合への付加(例えば、マイケル反応、Diels−Alder付加)などが挙げられるが、これらに限らない。これら及び他の有用な反応は、例えば、Advanced Organic Chemistry、3月号、第3版、John Wiley & Sons、NewYork、1985年;Hermanson、Bioconfugate Techniques、Academic Press、San Diego、1996年;及びFeeneyら、タンパク質の改質;Advances in Chemistry Series、Vol.198、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982年において論じられている。
【0108】
例として、本発明に有用な反応性官能基は、これらに限らないが、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、酸化物、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、硫化物、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、スルフィット、エナミン、イナミン、尿素、イソ尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、及びニトロソ化合物が挙げられる。また反応性官能基として、バイオコンジュゲートを調製するために使用されもの、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミドなども挙げられる。これら官能基のそれぞれを調製する方法は、当技術分野において周知であり、ある特定の目的のためのこれらの適用又は修飾は、当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler及びKaro編、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS、Academic Press、San Diego、1989年を参照されたい)。
【0109】
有用な反応性官能基の変換として、例えば以下が挙げられる:
(a)カルボキシル基:これらだけには限定されないが、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル)、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステルを含めた様々な誘導体に容易に変換される、
(b)ヒドロキシル基:エステル、エーテル、ハロゲン化物、アルデヒドなどに変換できる、
(c)ハロアルキル基:ハロゲン化物を、求核基、例えばアミン、カルボキシレートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン、又はアルコキシドイオンなどで後に置き換ることができ、これによって、ハロゲン原子の部位で新しい基の共有結合が生じる、
(d)ジエノフィル基:Diels−Alder反応に加わることが可能なもの、例えばマレイミド基など、
(e)アルデヒド又はケトン基:その後の誘導体化がカルボニル誘導体の生成を介して可能なもの、例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン又はオキシムなど、又はGrignard付加又はアルキルリチウム付加などの機序を介して可能なもの、
(f)ハロゲン化スルホニル基:例えば、スルホンアミドを形成するための、アミンとのそれに続く反応のためのもの、
(g)チオール基:例えば、ジスルフィドへ変換又はハロゲン化アシルと反応することができる、
(h)アミン基又はスルフヒドリル基:例えば、アシル化、アルキレート化又は酸化できる、
(i)アルケン:例えば、環付加、アシル化、マイケル付加などを施すことができる、
(j)エポキサイド:例えば、アミン及びヒドロキシル化合物と反応することができる、
(k)ホスホルアミダイト及び他の標準的官能基:核酸合成に有用である。
【0110】
これらの反応性官能基は、本発明のオリゴマーを組み立てるのに必要な反応に加わらない、又はこれを妨げないように選択することができる。或いは、反応性官能基は、保護基の存在により、反応に加わらないよう保護することできる。当業者であれば、このような選択されたセットの反応条件を妨げないように、ある特定の官能基をどのように保護するかを理解している。有用な保護基の例として、例えば、Greeneら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS、John Wiley&Sons、NewYork、1991年を参照されたい。
【0111】
本発明に有用な例示的カリックスアレーン様化合物は、
Ra−カリックス[Z]−(ORb)2(OCH2PPh2)2
(式中、Ra及びRbは、独立して、H、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール及び置換又は非置換のヘテロシクロアルキルから選択される。Zは、3、4、5、6、7及び8から選択される整数である。)である。
【0112】
さらなる配位子として、以下が挙げられる。
【化3−1】
【化3−2】
【0113】
1つ又は複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、1つ又は複数の金属コロイドに配位結合することができる。特に有用な金属コロイドは、Ir、Pt、Pd及びAuから選択される複数の金属原子を含む。1つ又は複数の貴金属から構成される、及び/又は1つ又は複数の非貴金属と関連する金属含有コロイド(例えば、金コロイド)を使用することができる。例示的実施形態において、金属コロイドは、複数のAu原子を、例えばAux(式中、xは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20から選択される)の形態で含む。金属コロイドは、配位子、例えば−CO又は他のある有機配位子でさらに置換することができる。
【0114】
ある実施形態において、複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、金属コロイドに配位結合されている。ある実施形態において、2、3、4又は5個の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)は、金属コロイドに配位結合する。ある実施形態において、複数の金属コロイドは、一個又は複数の配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)に配位結合される。
【0115】
ある実施形態において、金属コロイドは、2個以上の配位子に対して配位的に飽和されている。「配位的に飽和した」という用語は、それ以上の配位子(例えばコロイドに結合したものと同じ構造の配位子)が金属コロイドと錯体を形成することができないように、1つ又は複数の配位子(例えば、カリックスアレーン関連部分)と錯体形成した金属コロイドを指す。さらなる結合パートナーのこのような排除の例示的機序は、立体障害である。様々な実施形態において、「配位的に飽和した」金属コロイドは、この混合物中に化学量論的に過剰の配位子が存在する混合物から生成されるが、コロイドは、この混合物中のすべての配位子と錯体を形成しているわけではない。様々な実施形態において、「配位的に飽和した」とは、1つ又は複数の配位子部分に結合した金属コロイドを指し、この金属コロイドは、第一の錯化反応と同一又は異なる条件下での第2の錯化反応において配位子部分と接触させた場合、さらなる配位子部分と錯体を形成しない。
【0116】
本明細書に記載されている錯体は、さらなる化合物を提供するためのさらなる条件の対象とすることができる。例えば、金属コロイドは、本明細書に記載されている錯体で反応を実施するステップを含むプロセスによって形成することができ、この反応は、高温分解、熱分解、酸化的分解及びこれらの組合せから選択される。このような金属コロイドは、本明細書中に記載されている様々な反応、具体的には触媒作用にこれらが適切となるような特性を有することができる。
【0117】
基体への固定化
本発明は、基体上に固定化することができる、本明細書に記載されている配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)、金属コロイド及び錯体を提供する。配位子は、リンカーを介して又は直接、すなわち、フレキシブルなテザーで配位子を誘導体化する必要なしに、基体に結合することできる。金属コロイドは、第一に基体に結合し、続いて配位子と錯体を形成することができるか、又は配位子に結合し、続いて配位子を介して又は金属コロイドを介して基体に結合することができる。或いは、金属コロイドは、配位子が結合している基体と接触することができ、これによって、固定化された錯体を形成することになる。カリックスアレーンなどの配位子を表面にテザーする方法は、一般的に当技術分野で公知である。例えば、US公開第2005/0255332A1号及びUS特許第6380266B1号を参照されたい。
【0118】
例示的な基体の構成要素として、これらに限らないが、金属、金属又は非金属酸化物、ガラス及びポリマーが挙げられる。有用な基体の非限定的なリストとして、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄が挙げられる。好ましい基体は、シリカであり、シリカが遊離ヒドロキシル基を保有するのが最も好ましい。しかし、他の無機酸化物基体、好ましくはチタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、タングステン、ニオブ、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素ロジウム、モリブデン、銅、白金若しくは鉄などの酸化物、又は基体と安定したアリールオキシドを形成する別の元素の酸化物を使用することができる。基体は、任意の便利な物理的形態、例えばゲル、様々な種類の粒子の内側又は外側のポア、又は平面的表面、例えばウエハー、チップ、プレートなどであってよく、表面又はその表面上にシリカ又は他のフィルムを配置させることができるデバイスであってよい。少なくともシリカ基体に関しては、一部には、カリックスアレーン又は関連化合物と基体との間の連結の剛性により、この新しい方法は、アンカーされたカリックスアレーン及び/又は関連化合物に対して、物質1グラム当たりをベースとして、報告された中で最高の部位密度をもたらす。金属酸化物及びゼオライト(インタクトであり、薄い層に裂かれている)は、本発明の化合物と併用して、有用な例示的基体である。
【0119】
例示的実施形態において、基体は無機酸化物である。本発明において使用される無機酸化物として、例えば、Cs2O、Mg(OH)2、TiO2、ZrO2、CeO2、Y2O3、Cr2O3、Fe2O3、NiO、ZnO、Al2O3、SiO2(ガラス)、石英、In2O3、SnO2、PbO2などが挙げられる。無機酸化物は、様々な物理的形態、例えばフィルム、担持されたパウダー、ガラス、結晶などの形態で利用することができる。基体は、単一の無機酸化物又は2つ以上の無機酸化物の複合体からなることが可能である。例えば、無機酸化物の複合体は、層状構造(すなわち、第一の酸化物上に第2の酸化物が被覆されている)を有することができ、又は2つ以上の酸化物を隣接する非層状構造に並べることもできる。さらに、1つ又は複数の酸化物を、様々なサイズの粒子として混和でき、例えばガラス又は金属シートなどの支持体上に被覆することができる。さらに、1つ又は複数の無機酸化物の層は、2つの他の基体層(例えば、金属−酸化物−金属、金属−酸化物−結晶)との間にインターカレートすることができる。
【0120】
これらの実施形態において、例示的固定化プロセスは、配位子と基体を接触させるステップ(この基体は、安定したアリールオキシド種を形成可能な元素の1つ若しくは複数のポリハロゲン化物及び/又はポリアルコキシドを基体と反応させることによって表面修飾している)、又は基体と配位子を反応させるステップ(この配位子は、前記1つ若しくは複数のポリハロゲン化物及び/又はポリアルコキシドとの反応により事前に修飾又は誘導体化させておく)を含む。代替実施形態において、固定化プロセスは、1つ又は複数の元素(ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金若しくは鉄、又は安定したアリールオキシドを形成する別の元素から選択される)のポリハロゲン化物又はポリアルコキシドと、基体を反応させるステップと、修飾された基体を形成するステップと、修飾された基体と配位子を接触させることによって、少なくとも1つのフェノール酸素の連結を介して配位子を基体上に固定化するステップとを含む。
【0121】
基体材料に適した無機結晶及び無機ガラスとして、例えば、LiF、NaF、NaCl、KBr、KI、CaF2、MgF2、HgF2、BN、AsS3、ZnS、Si3N4などが挙げられる。結晶及びガラスは、当分野の標準的な技術で調製することができる。例えば、Goodman、C.H.L.、Crystal Growth Theory and Techniques、Plenum Press、NewYork、1974年を参照されたい。或いは、結晶は、商業的に購入することができる(例えば、Fischer Scientific)。結晶は、基体の唯一の構成要素であってもよく、又はこれらは、1つ又は複数のさらなる基体の構成要素でコーティングされていてもよい。したがって、例えば1つ若しくは複数の金属フィルム又は1つの金属フィルム及び有機のポリマーでコーティングされた結晶を利用することも本発明の範囲内である。さらに、結晶は、異なる物質でできた基体の別の部分、又は同じ物質の異なる物理的形態(例えば、ガラス)と接触する基体の一部を構成することができる。無機の結晶及び/又はガラスを利用した他の有用な基体構成は、塩の分野の当業者には明らかであろう。
【0122】
金属はまた、本発明の基体として有用である。本発明において基体として使用される例示的金属として、これらに限らないが、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル及び銅が挙げられる。一実施形態において、2種類以上の金属が使用される。2種類以上の金属がアロイとして存在することができるか、又はこれらは、層状の「サンドイッチ」構造を形成することができ、又はこれらは、互いに横方向に隣接することができる。
【0123】
有機ポリマーは、有用な種類の基体材料である。本発明において基体として有用な有機ポリマーとして、溶液中で、気体、液体及び分子に浸透性のあるポリマーが挙げられる。他の有用なポリマーは、1つ又は複数のこれら同じ種類の化合物に浸透性のないものである。
【0124】
有用な基体を形成する有機ポリマーとして、例えば、ポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン)、ポリアクリル(例えば、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシアノアクリレート)、ポリビニル(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリヘテロサイクル、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、ポリシラン、フッ化ポリマー、エポキシ、ポリエーテル及びフェノール樹脂などが挙げられる。Cognard、J.ALIGNMENT OF NEMATIC LIQUID CRYSTALS AND THEIR MIXTURES、Mol.Cryst.Liq.Cryst.1:1〜74頁(1982年)を参照されたい。現在好ましい有機ポリマーとして、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース系材料、ポリカーボネート及びポリビニルピリジニウムが挙げられる。
【0125】
本発明を実施する上で使用できる基体の表面は、滑らかなもの、粗いもの及び/又はパターン化されたものであってよい。表面は、力学的及び/又は化学的技法を使用することにより、技術的に処理することができる。例えば、表面は、摩擦、エッチング、溝削り、延伸、及び金属フィルムの斜め蒸着により、粗面にするか又はパターン化することができる。基体は、例えばフォトリソグラフィー(Kleinfieldら、J.Neurosci.第8巻:4098〜120頁(1998年))、フォトエッチング、化学エッチング及びミクロ接触プリンティング(Kumarら、Langmuir、第10巻:1498〜511頁(1994年))などの技術を使用してパターン化することができる。基体上にパターンを形成するための他の技術は、当業者には容易に明らかとなろう。
【0126】
基体上のパターン化のサイズ及び複雑さは、利用される技術の分解能及びそのパターンが意図する目的により制御される。例えば、ミクロ接触プリンティングを使用して、200nmまで小さな機構が基体上に層状化されている。Xiaら、J.Am.Chem.Soc.第117巻:3274〜75頁(1995年)を参照されたい。同様に、フォトリソグラフィーを使用して、1μmまで小さな機構を有するパターンが生産されている。Hickmanら、J.Vac.Sci.Technol.第12巻:607〜16頁(1994年)を参照されたい。本発明において有用なパターンとして、例えばウェル、囲い込み、仕切り、穴、入口、出口、チャネル、溝、回折格子などの機構を含むものが挙げられる。
【0127】
広く認められている技術を使用して、異なる化学特性の領域を有するパターン付の基体を作製することができる。したがって、例えば、一連の隣接する、単離した機構は、パターンを構成する物質の疎水性/親水性、電荷また他の化学的特徴を変化させることによって作り出される。例えば、親水性化合物は、疎水性材料を使用して、隣接する機構との間に「壁」をパターン化することによって、個々の親水性機構により閉じ込めることができる。同様に、正又は負に帯電した化合物は、閉じ込められる化合物のものと同じ電荷を有する化合物でできた「壁」を有する機構内に閉じ込めことができる。同様の基体構成は、所望の特性を有する層を直接基体上にマイクロプリントすることによっても接触可能となる。Mrkish,ら、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.第25巻:55〜78頁(1996年)を参照されたい。
【0128】
様々な例示的実施形態において、基体は、ゼオライト又はゼオライト様材料である。一実施形態において、本発明の錯体は、ITQ−2−タイプの層状材料及びゼオライト材料の表面の官能化により基体に付加される。例示的結合は、基体のアンモニア化を介して達成される。本発明は、配位子に共有結合で結合した、このような官能化された材料を提供する。例示的実施形態において、官能化された表面を使用することによって、材料の表面上に核を形成させ、金属コロイドを成長させる。
【0129】
配位子は、炭素、硫黄などを含有するフレキシブルなリンカー基を用いた合成による誘導体化に対する必要性なしに、上述されているように、シリカ又は他の基体の上に固定化することができる。生成した固定化した配位子及び関連化合物は、極低温の温度でのガス物理吸着実験で、また室温で中性の有機分子と接触可能な親油性の空洞を有する。フェノール及びニトロベンゼンは、この種類の材料の中で水溶液から可逆的に吸着される。
【0130】
生成した固定化された配位子及び関連化合物は、小分子、タンパク質及びイオン(カチオンとアニオンの両方)を含む部分を包括でき、したがって、気体流内の種の特定の吸着又はトラップにおいて、高圧液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーカラムにおいて、及び化学センシングにおいて、選択性触媒として、膜内での機能を含めたいくつかの機能のために使用することができる。Katzら、Langmuir、第22巻:4004〜4014頁(2006年)を参照されたい。
【0131】
様々な実施形態において、本発明は、(a)配位子と、以下に記載の通り、ポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により表面修飾された基体とを接触させること、又は(b)基体と、このようなポリハロゲン化物又はポリアルコキシドとの反応により事前に修飾又は誘導体化させておいた配位子と反応させること、の2つの手段のうちの一つにより、基体へ配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)を固定化させるための方法を提供する。
【0132】
本発明の一つの例示的実施形態は、ケイ素ハロゲン化物又はアルコキシドを使用して、シリカ基体を修飾し、シリカ−酸素結合を介して、配位子を基体に固定化することである。しかし、以前に論じように、基体及び/又は改質剤は、別の元素の酸化物、ポリハロゲン化物又はポリアルコキシドであってよい。改質剤は、基体上の主要元素と同じ元素を含有していてもよく(例えばアルミニウムアルコキシドを使用して、酸化アルミニウム基体を修飾する)又は改質剤は、異なる元素を含有していてもよい(例えばシリコン四ハロゲン化物を使用して、酸化アルミニウム基体を修飾する)。本発明においてアルコキシドが使用される場合、アルコキシドの基体修飾元素(ケイ素、別の非金属、又は金属)は、配位子のフェノール酸素原子に直接結合し、アルコキシドに対応するアルコールが分裂する。本発明において基体改質剤として使用される好ましいアルコキシドとして、アルコキシド基1つ当たり4個までの炭素原子を有する、メトキシド、エトキシド及び他のアルコキシドが挙げられる。
【0133】
別の好ましい実施形態において、遷移金属又はケイ素以外の多価の非金属のハロゲン化物又はアルコキシドを使用することによって、配位子(例えばカリックスアレーン又はカリックスアレーン関連化合物)を基体に固定化させる。この金属又は非金属は、基体と安定したアリールオキシドを形成する任意のものでよく、これらだけに限らないが、ケイ素、タングステン、ニオブ、チタン、ジルコニウム、鉄、マンガン、バナジウム、クロム、タンタラム、アルミニウム、リン、ホウ素、ロジウム、モリブデン、ゲルマニウム、銅、白金又は鉄が含まれる。
【0134】
合成
本明細書に記載されている、配位子(例えばカリックスアレーン関連化合物)、金属コロイド及びその錯体は、当業者の能力の範囲内での方法により合成することができる。例示的合成を本明細書中に記載するが、さらなる実用的な合成経路が、存在し、考案できることが当業者には明らかであろう。
【0135】
本発明の金コロイドを作製する方法は、前駆体の合成を示す、以下に記載のスキームを参照することにより例示される:
【化4−1】
【化4−2】
【0136】
前駆体1dは、配位子2dを用いて、同様のスキームを使用して作製することができる。
【化5】
【0137】
上に記載の方法は、任意の金属塩に適用できることを当業者であれば理解するであろう。本発明において有用な例示的金属塩は、金属塩が、配位子上でリンカーの配位原子と配位結合することによって錯体を形成するという判定基準を少なくとも満たしている。
【0138】
したがって、一態様において、本発明は、配位子−結合金属コロイドを合成する方法を提供する。一実施形態において、この方法は、(a)配位子と金属塩の間に反応を引き起こすのに適した条件下で、配位子と金属塩を溶媒中で接触させるステップであって、前記配位子が、配位原子を含むリンカーを含み、これにより金属−配位子前駆体を形成するステップと、(b)金属−配位子前駆体と還元剤を接触させるステップであって、前記金属−配位子前駆体、前記還元剤又はこれら両方が、溶媒中にやや溶けにくく、これにより錯体を合成するステップとを含む。
【0139】
ある実施形態において、金属塩は、金属ハロゲン化物塩である。例示的実施形態において、金属塩は、金などの貴金属原子を含む。
【0140】
ある実施形態において、溶媒はアルコールである。例示的実施形態において、溶媒はエタノールである。
【0141】
ある実施形態において、配位子は、本明細書中に開示された錯体の配位子のうちの一つであるか、又は本明細書中に開示された配位子である。例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーン関連化合物である。
【0142】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホルアミダイトから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0143】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンカルベンである。
【0144】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンターピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0145】
例示的実施形態において、配位子は、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンパーオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカーボネートから選択されるカリックスアレーン関連化合物である。
【0146】
ある実施形態において、カリックスアレーン関連化合物は、本明細書に記載されている錯体のカリックスアレーン関連化合物又は本明細書中に記載されているカリックスアレーン関連化合物である。
【0147】
上記スキームは、配位子(カリックスアレーン関連化合物)がモノデンテート部分である化合物を対象とする。理解されるように、より高い配位座数を有するリンカーもまた有用である。二座のカリックスアレーン関連化合物が配位子として利用される場合、この化合物及びその他のコロイドを、いくつかの配置のうちの一つで調製することができる。例えば、ジラジカル架橋、アキシアルラジアル架橋、ジアキシアル架橋、アキシアルラジアル架橋である。
【0148】
使用
一態様において、本発明は、本明細書中に開示される金属コロイド又は金属錯体を利用する方法を提供する。本発明の材料に適用できる、金コロイドを使用する方法の見本として、Malloukら、J.Am.Chem.Soc.、2009年、131:7938〜7939頁を参照されたい。
【0149】
例示的実施形態において、本発明の材料は、超微量検出の方法(上記の癌バイオマーカー検出(d);DNA検出のためのものを含む(L.H.Wangら、Gold Bulletin、第41巻、37〜41頁(2008年)及びQ.Q.Zhangら、Nanoscale Research Letters、第4巻、216〜220頁(2009年)を参照されたい、)、イメージング(金コロイド抱合体を生体分子マーカーとして使用することができる)、ドラッグデリバリー(C.R.Patra、Journal of Biomedical Nanotechnology、第4巻、99〜132頁(2008年)及び上記参考文献(b)を参照されたい)及び一般的な生物医学用途、P.Perriatら、Annales De Chimie−Science Des Materiaux volume、31、351〜367頁(2006年)、DNA/RNAデリバリー、療法(アンチセンスオリゴヌクレオチド修飾された金コロイド剤に関するもの、上記a(viii)を参照されたい)、及びナノファブリケーション(小さいサイズを使用して、情報保存のための高容量を作製するもの、T.Bjornholm in Current Opinion in Colloid&Interface Science、第14巻、126〜134頁(2009年)及びT.H.LaBean、Materials Today、第12巻、24〜32頁(2009年)を参照されたい)に使用できる。
【0150】
本発明による、接触可能な領域を保有する金属コロイドのさらなる用途は、金属触媒作用である((a)Goodman、W.、Chen、M.、触媒活性のある金:コロイドから極薄膜まで。Acc.Chem.Res.、第39巻、739〜746頁(2006年)。(b)Choudhary、T.V.、Goodman、D.W.、担持された金ナノ−クラスターによる酸化触媒作用。Top.Catal.第21巻、25〜34頁(2002年)。(c)Turner、M.、Golovko、V.B.、Vaughan、O.P.H.、Abdulkin、P.、Berenguer−Murcia、A.、Tikhov、M.S.、Johnson、B.F.G.、Lambert、R.M.、55−原子クラスターから誘導された金コロイド触媒による、二酸素での選択性酸化。Nature、第454巻、981−U31(2008年)。(d)Roldan、A.、Gonzalez、S.、Ricart、J.M.、Illas、F.、AuコロイドによるO−2分離のためのクリティカルサイズ。Chem.Phys.Chem.、第10巻、348頁(2009年)(e)Lee、S.、Molina、L.M.、Lopez、M.J.、Alonso、J.A.、Hammer、B.、Lee、B.、Seiferi、S.、Winans、R.E.、Elam、J.W.、Pellin、M.J.、Vajda、S.、Au6−10クラスター上に固定化された選択性プロペンのエポキシ化:活性及び選択性に対する水素及び水の効果。Angew.Chem.、Int.Ed.、第48巻、1467〜1471頁(2009年)。(f)Hughes、M.D.、Xu、Y.−J.、Jenkins、P.、McMorn、P.、Landon、P.、Enache、D.I.、Carley、A.F.、Attard、G.A.、Hutchings、G.J.、King、F.、Stitt、E.H.、Johnston、P.、Griffin、K.、Kiely、C.J.s、温和な条件下での選択性炭化水素の酸化のための調節可能な金触媒。Nature、第437巻、1132〜1135頁(2005年)。(g)Byrne、M.、金及び他の基体上のエチレンの電気触媒による還元。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、68、1898(1972)。(h)Bond、G.C.、Sermon、P.A.、Webb、G.、Buchanan、D.A.、Wells、P.B.、担持された金触媒上での水素化。J.Chem.Soc.Chem.Commun.、44〜45頁(1973年)。(i)Sermon、P.A.、Bond、G.C.、Wells、P.B.、担持された金上でのアルケンの水素化。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、第75巻、385〜394頁(1979年)。(j)Naito、S.、Tanimoto、M.、シリカ担持の金及び銀触媒上でのプロペンのジュウテリウム付加及び交換の機序。J.Chem.Soc.Faraday Transactions I、第84巻、4115〜4124頁(1988年))。
【0151】
Harutaらは、触媒作用に必要なのは、塊状の特性と異なる特性を有する小さな金コロイドであることを示した(300個未満の金原子の粒子の必要性については、A.Haruta、Chemical Record、第3巻、75〜87頁(2003年)を参照されたい)。Gatesらは、小さな金属コロイドについての重大な問題は、安定性の欠如であると強調している(Gatesら、Nature、第372巻:346頁(1994年)を参照されたい)。文献において強調されてきたように、触媒作用のための金コロイド上での接触可能性に対する重要な必要性も存在する(C.L.Friendら、J.Phys.Chem.C、第113巻、3232〜3238頁(2009年)及びM.Baumerら、ChemPhysChem、第7巻、1906〜1908頁(2006年)を参照されたい)。本発明は、安定した小さな金コロイドと金原子(金表面積)との接触可能性を提供する。
【0152】
金属コロイドは、様々な用途のための結合パートナーとも共役することができ、これら結合パートナーとして、これらだけに限らないが、核酸、ポリペプチド、機能性及び構造性タンパク質(例えば、酵素、抗体、抗体フラグメント)、含水炭素、天然ポリマー及び合成ポリマー、固体支持体、小分子(例えば、薬物、殺虫剤、軍事用薬剤)及びリピドなどが挙げられる。
【0153】
(i)Bioconjugate Chemistry、第19巻、751〜758頁、C.Geraciらによる;(ii)C.Geraciら、Langmuir、第24巻、6194〜6200頁;(iii)C.Geraciら、Tetrahedron、第63巻、10758〜10763頁の場合のように、共役は、配位子(例えばカリックスアレーン)を直接使用して実施行することができ、又は通常はチオール(スルフヒドリル)連結を介して実施する、金表面への分子の結合によって共役を実施することができる(又は両方法の組合せ)。後者の例として、以下への金の共役が挙げられる:
(a)チオール化した一本鎖のDNAは、Integrated DNA Technologies(Coralville、IA)及びFidelity Systems(Gaithersburg、MD)から市販されており、標準的な機器、例えば、Expedite 8909 Nucleotide Synthesis Systemを使用し、標準的な固体相合成及び試薬(GlenResearch、Sterling、VA)を使用して合成することもできる。このタイプのチオール化したDNAは、DNAの金への共役に広く使用されている。以下を参照されたい(i)Alivisatosら、Nano Letters、第8巻、1202〜1206頁(2008年);(ii)C.A.Mirkinら、Nano Letters、第7巻、3818〜3821頁(2007年);(iii)Suzukiら、J.Am.Chem.Soc.、第131巻、7518〜7519頁(2009年);(iv)Alivisatosら、J.Am.Chem.Soc.第130巻、9598〜9605頁(2008年);(v)Dubertretら、Nature Biotechnology、第19巻、365〜370頁(2001年);(vi)A.P.Alivisatosら、Nature、第382巻、609〜611頁(1996年);(vii)C.A.Mirkinら、Nature、第382巻、607〜609頁(1996年)。関連の系は、固定された核酸−コロイド結合体である(viii)C.A.Mirkinら、ChemBioChem、第8巻、1230〜1232頁(2007年)、
(b)エチジウムチオレートを使用したエチジウム挿入剤(R.W.Murrayら、Analytical Chemistry、第74巻、4320〜4327頁(2002年));
(c)スルフヒドリル連結を介したRNA、C.A.Mirkinら、J.Am.Chem.Soc.、第131巻、2072〜2073頁(2009年)を参照されたい、
(d)金と結合するように進化させたペプチド、N.L.Rosiら、J.Am.Chem.Soc.、第130巻、13555〜13557頁(2008年)を参照されたい;
(e)多価性によりさらに効果的となったHIV治療法が、メルカプト安息香酸リンカーを使用して付加された。C.Melanderら、J.Am.Chem.Soc.第130巻、6896〜6897頁(2008年)を参照されたい;及び
(f)グルコースオキシダーゼ、C.Sunら、Sensors and Actuators B、第109巻、367〜374頁(2005年)を参照されたい。
【0154】
本明細書中に開示されている金属コロイド及び錯体は、金属媒介によるプロセスで触媒されることが当技術分野で知られているものを含めた触媒プロセス、例えばオレフィン転位、オレフィンのヒドロホルミル化、及び末端アルカンの環付加など、並びに他のプロセス、例えば、酸化プロセス、水素化プロセス、及び酸性触媒反応などに使用することができる。例示的実施形態において、本発明の組成物は、ハイドロプロセシング触媒として有用である。本発明の化合物及び錯体が使用できる他のプロセスとして、プロパン水素化分解、CO水素化、トルエン水素化、メタン化、分子内ヒドロアミノ化、主要なアリルアルコールの不斉異性化反応、アリルのアミノ化、ヒドロアミノ化、ヒドロチオール化、ヨードアレーンを使用した、ヘテロアレーンのC−H結合アリール化、[2+2+2]環付加、及びカルボニル化、メタンヒドロキシル化、及びナフテン系開環が挙げられる(米国特許第5763731号を参照されたい)。さらなるプロセスとして、水素化反応、例えばα,β−不飽和アルデヒドの水素化反応;環化反応、例えばテルペノイド(例えばシトロネラルからメントールへの変換);開環反応、例えばシクロアルキル(例えばメチルシクロヘキサンからジメチルペンタンへの変換又はナフテン系開環);NOの水蒸気触媒改質及び水素化変換反応、例えばシクロアルキルの水素化変換反応など(例えばシクロヘキセン)が挙げられる(Vuoriら、Catal.Lett.、2009年、第131巻:7〜15頁及び米国特許第5763731号を参照されたい)。一般的に有用な反応として、有機分子、例えばアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール(これらのうちのいずれかは、場合によって置換されている)などの上で実施される酸化及び還元が挙げられる。
【0155】
したがって、一実施形態において、触媒プロセスは、有機分子と、(a)本明細書中に開示される錯体又は金属コロイド及び(b)還元剤を接触させることによって有機分子を還元するステップを含む。ある実施形態において、有機分子は、不飽和分子である。ある実施形態において、有機分子は、置換又は非置換のアルキル(例えば、不飽和アルキル、例えば不飽和のC1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルなど)である。ある実施形態において、還元ステップは、例えば、還元剤としてH2を使用した水素化を含む。
【0156】
一実施形態において、触媒プロセスは、有機の分子を、(a)本明細書中に開示されている錯体又は金属コロイド及び(b)酸化剤と接触させることによって、有機分子を酸化させるステップを含む。ある実施形態において、酸化ステップは、ヒドロキシル化を含む。
【実施例】
【0157】
(例1)
カリックスホスフィン配位子の合成
ジ−アルキル化したカリックス[4]アレーン4a、bを、カリックスアレーンのリン酸化のための出発前駆体として使用する。前述の2つ以上のホスホリル基を保有するカリックスアレーの合成に対するその効率のため、ジフェニルホスホリルメチル−4−メチルベンゼンスルホネートを使用する。カリックスアレーンホスフィンオキシド3a、bは、以前に公開された手順に従い、わずかに過剰の水素化ナトリウムのTHF/DMF(10/1v/v)中混合物の存在下、48時間、Ph2POCH2Tsで、4a、bを還流させることにより合成する。カリックスアレーンホスフィンオキシド3a、bは、メチレン架橋水素のABスピン系の存在下及び31P NMRスペクトルにおける単一共鳴の存在下において確認される円錐配座を採用している。カリックス[4]アレーンホスフィン2a、bの合成は、カリックスアレーン−ホスフィンオキシド3a、bを、大幅に過剰のトルエン中フェニルシランで、105℃で48時間加熱することによって実施する。ジメトキシ−カリックス−ホスフィン2aは、室温で大環状環を介してメトキシ化したフェノール環の自由回転を有する配座異性体の混合物として存在する。この配座挙動は、1H NMRにおいて広域共鳴を引き起こし、31P NMRの−21.10及び−21.96ppmにおいて、2つの共鳴を引き起こすが、これらはホスフィンの特徴である。カリックス[4]アレーンの底縁部の嵩高いプロポキシ基の存在が、環の反転を阻止し、円錐体の形をしたカリックス[4]アレーン−ホスフィン2bに配座剛性を与える。
【0158】
実験の詳細
材料。すべての化合物は、乾燥窒素大気下で取り扱う。無水トルエン、THF及びDMFをAldrichから購入し、開始のp−tert−ブチルカリックス[4]アレーン及びすべてのその他の試薬は、分析用グレードであり、入手してそのまま使用した。2−ナフタレンチオール(2NT)をAldrichから購入し、入手してそのまま使用した。カリックスアレーン4a、4b、及び3aを文献の手順に従い合成する。Dijkstra PJら,、J.Am.Chem.Soc.、1989年、第111号:7567〜7575頁;Gutsche CDら、Tetrahedron、1983年、第38号:409〜413頁;及びDielemanCBら、J.Organometal.Chem.、1997年、545〜546:461〜473頁。ジフェニルホスホリルメチルエントシレートを公開手順に従い調製した。Marmor RS及びSeyferth D、J.Org.Chem.、1969年、第34号:748〜749頁;及びWegener W、ZeitschriftChem.、1971年、第11号:262頁。1H、13C、及び31P NMRスペクトルは、CDCl3(293K)中で、UC BerkeleyのNMR施設のBrukerAV−300(300MHz)装置又はAVB−400(400MHz)装置のいずれかで記録した。残留するCHCl3(7.260ppm)に対して1H NMRスペクトルを参照し、トリメチルリン酸に対して31P NMRスペクトルを参照する。分析用薄層クロマトグラフィーを、プレコートしたシリカゲルプレート(0.25mm、60F−254、Selecto)上で実施し、カラムクロマトグラフィーのためにシリカゲル(Selecto 60)を使用する。UC Berkeleyの質量分析施設で、O−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)又はm−ニトロベンジルアルコール(NBA)を、マトリックスとして使用して、FAB−MSスペクトルを記録する。すべての融点は補正していない。
【0159】
カリックスアレーン−ホスフィンオキシド3bの合成のための一般的手順
カリックスアレーン1b(0.35mmol)と水素化ナトリウム(0.78mmol)のTHF/DMF(10/1v/v)中混合物を2時間還流させる。生成した黄色の水溶液に、Ph2P(O)CH2OTs(0.78mmol)を添加する。この反応混合物を48時間還流させる。過剰の水素化ナトリウムを約1.0mLのメタノールでクエンチし、溶媒を蒸発させる。残基をクロロホルム中に溶解し、水で2回洗浄する。有機相をMgSO4上で乾燥させ、蒸発乾燥させる。
【0160】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノイルメチレンオキシ)−27,28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(円錐体)(3b)
CH2Cl2/酢酸エチル(1:0.5)を用いたカラムクロマトグラフィーにより、収率53%の白色粉末を得る、Rf0.4:mp134〜138℃、
【化6】
【0161】
カリックスアレーン−ホスフィン2a、bの合成のための一般的手順
カリックスアレーン3a、b(7.0mmol)及びPhSiH3(各POPh2に対して、30当量が過剰)のトルエン15mL中水溶液を105℃で48時間加熱する。この反応の進行を、31PNMR分光学で観察する。この反応混合物を真空中で4時間蒸発乾燥させる(0.05mmHg)。油性の残基は、精製する。
【0162】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス[ジフェニルホスフィノメチレンオキシ]−27,28−ジメトキシカリックス[4]アレーン(配座異性体の混合物)(2a)
エタノール/DCM(20/1)からの結晶化により、白色固体を収率52%で生成する;mp123〜131℃、
【化7】
【0163】
5,11,17,23−テトラ−tert−ブチル−25,26−ビス(ジフェニルホスフィノメチレンオキシ)−27、28−ジプロポキシ−カリックス[4]アレーン(円錐体)(2b)
CH2Cl2を用いたフラッシュクロマトグラフィーにより、収率41%の白色粉体を生成する、Rf0.9;mp128〜132℃、
【化8】
【0164】
金前駆体の合成
Au(I)−カリックスアレーン錯体tert−ブチル−カリックス[4]−(OR)4−x(OCH2PPh2AuCl)x(x=2、R=CH3(1a)C3H7−n(1b);x=1、R=C3H7−n(1c))は、Au(SMe2)Cl中のスルフィド基を化学量論的量のホスフィンに置き換えることにより合成する。このような置換反応はAu(I)−カリックスアレーンホスフィン錯体合成に対して以前使用された。錯体1a、1b、及び1cを、CH2Cl2/ヘキサンからの結晶化を介して純粋な形態で単離し、CDCl3中での31P及び1H NMRスペクトロスコピー法を使用して測定すると、すべてが、純粋な円錐体の配座異性体から構成されている。錯体1aにおいて、起こり得る部分的円錐体及び1,3−交互の配座異性体よりも円錐体が好まれることは、以下のデータから観察することができる。3つの配座異性体はすべて、−57℃で、CDCl3溶液中の遊離の(非配位結合の)メトキシ置換カリックスアレーン配位子2aに対して、1H NMRスペクトロスコピー法を介して(部分的円錐体と、1,3−交互と、円錐体との比は32:20:48)存在する。1aの金の錯化に続き、円錐配座に観察された排他性は、嵩高いtert−ブチル及び金置換基の近接を回避するのが配座異性体だけであることから、起きる可能性が最も高い。これは、錯体1a−c内の金原子の立体的に厳しい性質を示し、以下で論じているような金の組織上でのさらなる反動を生じる。
【0165】
1a、1b及び1dの場合、対応する配位子2a、2b又は2dは、室温で20分間、暗所で、CH2Cl2中の2当量のAu(SMe2)Clとそれぞれ別々に反応させる。濁りのある混合物を濾過することによって、透明な溶液を得る。これを蒸発させて、白色の粉体を得る。1a、1b及び1dの結晶を、50:50ヘキサン:CH2Cl2混合物中のゆっくりとした蒸発で得る。2c及び1当量のAu(SMe2)Clを使用して、同じ手順に従い1cを合成する。すべての錯体は、ジクロロメタン中に溶解した場合、光学的に透明な無色の溶液を生じる白色粉体であり、すなわち、いかなる固体も見えない。
【0166】
錯体1a、1b、及び1cは、図1の単結晶エックス線回折を介して特徴づけられる(表2の選択された結合の長さ及び角度)。1a及び1bの固体構造の比較は、カリックスアレーン底縁部の酸素平面に対して、金原子組織における有意な差を強調している。両方の金原子とも、1a構造のこの平面の同じ側に位置している。配位結合されたPPh2の両フェニル基と、メトキシ底縁部の置換基との間のσ(C−H)−π相互作用と一致して、1aの構造に見出される、芳香環(重心)とメトキシ置換基のCとの間の対の距離は3.5Åである。対照的に、1bの構造において、嵩高い金及び底縁部のプロポキシ基の立体的に好ましくない相互作用によって、両方の金原子が、カリックスアレーン底縁部の酸素平面の同じ側に位置することを阻止する。上述したAuPPh2Cl置換基の組織を規定する上でのプロポキシ基の立体的役割が、1a及び1bのDFTB3LYP/LACV3P*+計算でさらに明らかにされる。これらの計算は、1bの結晶構造は、電子のエネルギーが最低のエネルギー配座異性体(2つのAuPPh2Clユニットは、カリックスアレーンの底縁部の酸素により定義された平面の同じ面上にある)よりも少なくとも2.4kcal/モルだけ低いことを実証し、配座異性体の集団は、結晶構造において観察された形態で、>99%となるはずであると予測している。
前駆体の単結晶構造
【表1】
【表2】
【0167】
2a及び2cを用いた金ナノ粒子の合成後の修飾
テトラオクチルアンモニウムブロミド(20当量)−安定化したHAuCl4/ジクロロメタン溶液から金コロイドを合成する。手短に、1.25−及び2−単層等価カリックス[4]アレーン、2a又は2cを、200μMの金原子を含有する4−nm金コロイド溶液に添加し、これにより、2a−及び2c−結合金コロイドを生成する。
【0168】
還元された金コロイドの合成
NaBH4のエタノール溶液中での各前駆体錯体の還元を介して金コロイド合成を達成する。典型的な調製において、4当量(Auに対して)のNaBH4をAu前駆体錯体のエタノール中懸濁液に添加し、生成した混合物を室温で40分間撹拌し、濾過し、真空中で蒸発させる。この合成において極めて重要なことは、NaBH4とAu(I)錯体1a−cのエタノールへの制限された溶解度であり、これは、還元中の溶液中での両種の濃度を効果的に低く強制し、Au11コロイドの合成に以前使用された。例えばジクロロメタン、ベンゼン、及びTHFなどの溶媒は、両方の成分を完全に可溶化し、続いて還元後、小さな金コロイドの均一な分布を生成しない。1a−赤、1b−赤、及び1c−赤からなる生成したコロイドの金生成物を水及びヘキサン(1c−赤に対してはヘキサン洗浄剤なし)で洗浄し、乾燥させ、スペクトロスコピー法及びSTEMを使用して特徴づけを行った。
【0169】
例示的合成
金コロイド1a−赤の合成。3.9当量(Au原子に対して)のNaBH4(50mg)を、0.166mmol(255mg)の金前駆体錯体1aの無水エタノール80mL中懸濁液に添加する。この反応混合物からの開始前駆体の金錯体の消失を、ジクロロメタン中薄層クロマトグラフィーを介して観察する。生成した混合物を室温で40分間撹拌した、濾過し、真空中で蒸発させる。生成した金クラスター生成物を約150mLの脱気した(pH7)水で洗浄し、生成した固体を真空下で乾燥させ、続いてヘキサン約10mLで洗浄し、次いで再び真空下で乾燥させる。これにより、精製後、130mgの最終の1a−赤を合成する。
【0170】
金コロイド1b−赤の合成。3.6当量(Au原子に対して)のNaBH4(18mg)を、0.066mmol(105mg)の金前駆体錯体1bの無水エタノール30mL中懸濁液に添加する。洗浄用に使用する溶媒の量を、1a−赤に対して、合成でのカリックスアレーンのモル数に比例して調整する以外は、残りの手順は、1a−赤の合成と等しい。
【0171】
金コロイド1c−赤の合成。3.8当量(Au原子に対して)のNaBH4(6mg)を、0.041mmol(50mg)の金前駆体錯体1bの無水のエタノール20mL中懸濁液に添加する。洗浄用の溶媒として水を使用したこと、1a−赤に対して、合成でのカリックスアレーンのモル数に比例して調整する以外は、残りの手順は、1a−赤の合成と等しい。
【0172】
金コロイドのUV−Visスペクトロスコピー法をUV−Vis分光器(Cary−400、Bruker)で実施する。コロイド金上に吸着した2NTの蛍光を、950V及び5nmの励起/発光スリット幅で作動する、定常状態の蛍光光度計(F−4500、Hitachi)で測定する。蛍光試験に使用した溶媒は、ジクロロメタンであり、励起波長は283nmである。金クラスターの透過電子顕微鏡写真を、200kV FEI単色化したF20 UT Tecnai(National Center for Electron Microscopy、Lawrence Berkeley National Laboratory)で観察した。両面テープを使用してケイ素ウエハー上に金コロイドを堆積させることによって、金コロイドのXPS(X線光電子分光法)を実施した。XPS分析は、スペクトル解像度1.05eVで作動するUlvac Phy Quanteraスキャニングマイクロプローブを使用して実施した。標準的実施と一致するAg光電子放出ピークを使用して、分光器のエネルギースケールを較正した。284.6eVでのC 1s ピークを使用して、生成したXPS結果を補正した。
【0173】
CH2Cl2溶液中での1a−赤のUV可視スペクトルは、415nm付近の隆起帯からなり、これは、nが約11の小さなAunクラスターに見出されるバンドの領域特徴の範囲に入る。HAADF−STEMは、図2aにおいて、1a−赤に対する中心直径0.9±0.1nmを実証し、このサイズはまた小さなAunクラスターの特徴である。1a−赤のESIマススペクトル法は複雑なパターンの複数のピークを示し、これから[Au11L2Cl3]2+(L=カリックスアレーンホスフィン配位子)が、二重に帯電した分子のイオンとして同定される(補助情報を参照されたい)。1a−赤の元素分析及びX線光電子分光法の両方が、Auとホスフィンのモル比は1付近であることを示し(又は、同等に、金とカリックスアレーンのモル比が約2)、異常に低い金の質量分率21%を示している。これは、金コロイドに対して測定された金属と配位子の質量比の中で最も低い比の一つであるように見え、上記HAADF−STEM結果と一致して、小さな金の中心を必要とし、さらに1a−赤の一部のジホスフィン配位子のモノデンテート結合を必要とする。1a−赤におけるAu11中心のための元素分析は、5つのカリックスアレーン配位子を必要とするが、分子力学計算は、2つのカリックスアレーンホスフィン配位子のみが、二座形式でAu11中心に十分な結合空間を所有することを実証している。最大に対して、1a−赤でこのように低下した配位子配位座数は、1a−cの還元の間に溶液中に存在する過剰な未結合の配位子を考慮した場合、他の金コロイド系における観察と一致する。1a−赤の31P NMRスペクトロスコピー法はCD2Cl2中−60℃で、δ23.7ppm及び24.6ppmを中心とした2つの共鳴を示している。これらの共鳴は、CD2Cl2中−60℃で非還元の1aに対して観察された別々のδ22.5ppm共鳴と異なる。前の共鳴は、トリフェニルホスフィン配位子の遊離状態と金表面結合状態との間に以前に観察された化学シフト差と一致して、対応する遊離配位子2aに対して約45ppmの低磁場共鳴である。31P NMRスペクトルにおける24.6ppmの低磁場共鳴は、ホスフィンオキシドと一致し、XPSは、1a−赤においてホスフィンとホスフィン−オキシドの比は、2.25±0.36であると推測している。
【0174】
1b−赤及び1c−赤に対するSTEMデータは、図2において、それぞれ有意に大きな中心直径、1.1±0.2nm及び1.9±0.5nmを実証している。UV−Visスペクトルにおいて、520nm付近の、CH2Cl2溶液中の1c−赤の明らかに同定可能な表面プラズモン共鳴吸収バンドの存在は、1a−赤又は1b−赤のいずれにも存在しないより大きなコロイドの存在をさらに確認するものである。1a−赤のXPSは、84.15eVを中心とするAu 4f7/2結合エネルギーピークを示し、このピークに対して1.64eVのFWHM(半値全幅)を示す。この幅は、1b−赤及び1c−赤において、同じ対応するピークに対してそれぞれ観察された1.23eV及び1.11eV幅より大きく、これらはそれぞれ83.65eV及び83.55eVの結合エネルギーを所有する。1a−赤におけるAu 4f7/2ピークの増加幅は、1a−赤における様々な分散した、クラスター様電子の状態を示唆し、これは、表1に要約されているように、1b−赤及び1c−赤に対するより大きな結合エネルギー及び有意に低いその金質量分率と一致している。全体で、上記データは、小さなコロイドサイズと、コロイドの核生成及び成長中に、前駆体配位子2aが表面にキレートする能力との間に相互関係があることを示唆している。これは、両方のホスフィン基が、カリックスアレーンの底縁部の同じ面の金と配位結合することを必要とし、調べた3つのうち、錯体1aのみに対して可能である(上記参照)。
【0175】
金クラスター上の2NTの蛍光
接触可能な金表面の量は、化学吸着プローブ2−ナフタレンチオール(2NT)を使用して明らかにすることができる。なぜなら、このプローブは金コロイド上の吸着されたカリックスアレーンとの間で領域を結合することが、以前に示されているからである。
【表3】
【0176】
表3は、1a−赤、1b−赤、及び1c−赤における2NTの化学吸着後の結合した金原子のパーセンテージを要約し、3つの金コロイドにおける異なる程度の接触可能性を実証している。図3のデータは、1a−赤において2NTに配位結合された金原子全体のパーセンテージは、25.0%であることを実証している。これは、大きなカリックス[6]アレーンホスフィン配位子で修飾された4nm金コロイドで以前に観察されたもの(少なくとも13%の金表面が、2NTの範囲領域に基づき、カリックス[6]アレーン−結合した4nm金コロイドに接触可能であることに相当した)よりも18倍高い。金コロイドにおける接触可能性を解釈する上で使用するのに最も適した原理は、2NTと結合した表面原子の割合に依存するものである。なぜならこれは異なるサイズのコロイドの間の面積比のばらつきを説明しているからである。この原理を使用することによって、1a−赤では、2NTと結合したのは25.0%の金表面原子という結果となり、1b−赤及び1c−赤では金コロイドに対してそれぞれ8.0%及び2.1%というより低い値を得ている。中性のAu11(PPh3)7(SCN)3(図3に示す)及びカチオンの[Au11(PPh3)8Cl2]PF6からなるAu11クラスターを用いた対照実験は、恐らく配位飽和が原因で2NTの結合能力を実証していない。これらの対照実験は、2NT結合の根拠として、大幅に過剰のチオールの条件下で以前に観察されたチオール−ホスフィン交換の可能性を除外していない。
【0177】
別の対照では、Au(I)錯体1dの合成及び還元から、13C−標識した金クラスター1d−赤を得る。次いで13C−標識した2dを溶液中の遊離配位子の感受性プローブとして使用し、この結果により、2NT結合後の溶液中1dの可能性、また2NT結合後の溶液中での対応するホスフィンオキシド配位子の放出が除外される。さらなる対照により、分子錯体1a、1b及び1cに対して2NTが結合しないことが実証され、溶液中の微量の非還元の錯体による明らかな結合の可能性が除外されている。
【0178】
表3のデータは、2NTの化学吸着後の結合した金原子のパーセンテージを要約し、結合した表面原子の割合が、粒径の増加と共に、1a−赤>1b−赤>1c−赤>(4nm−1c)−赤((4nm−1a)−赤と同じ)の順序で単調に低減することを実証している。上記データの2NTの結合の傾向は、表1の表面原子をベースとするデータを考えると、面積比の検討では説明することができず(Corma Aら、Nanoparticles and Catalystsにおける酸化触媒としての担持された金ナノ粒子、389〜426頁(Wiley VCH Verlag2008年))、この傾向(例えば、1c−赤に対する(4nm−1c)−赤の接触可能性)もまた半径の曲率(塊状の金表面と比較した場合、1.6−nmの金クラスターに対して利用できる表面積の1.4−倍の増加を占めると以前に報告された)に基づいて説明することができない。2NTプローブ(>24.4Å2)の範囲を考慮すると、これら接触可能なギャップ内の金原子の実際の量は、表3の2NTに結合した表面原子の割合より有意に多いはずである。1a−赤に対して室温で6カ月間、暗所での保存された後、接触可能性は、20%未満低減し、ここで報告されているすべてのクラスターは空気及び水に対して安定している。上で論じたすべての結果は、異なる合成バッチで少なくとも3回は再現された。
【0179】
上記データは、図4で示す通り、カリックスアレーン配位子で表面修飾された小さな金コロイド状で利用できる、接触可能な表面の量が増強されたという証拠を提供している。この増強された接触可能性は、コロイド中心サイズがカリックスアレーン配位子のサイズより小さい場合、パッキングの問題から生じる可能性が高い。単座形式又は二座形式のいずれかの形式での表面上のカリックス[4]アレーン配位子の密接なパッキングが恐らく原因で、わずかな接触可能な空間がより大きな粒子上に作り出される。しかし、より小さなコロイド上で、パッキング問題が結果として生じ、これが接触可能性を作り出す。これは、一つには非整数の配位子を結合することが不可能であるためであり、さらには、tert−ブチルカリックス[4]アレーンよりわずかに小さな小分子と釣り合ったサイズのギャップを有するためである。これら接触可能なギャップ内の金原子の量は、1a−赤などの小さなコロイドにおける全表面の有意な割合である。図4cは、2NTプローブに結合した表面金原子の割合が、コロイドの金のサイズが変化するにつれて、鋭く変動することを表す。このデータは、小さな金コロイドサイズに接触可能な表面の割合の鋭い増加を明らかに実証している。この鋭い増加を統治している機序の図解を、図4a−bに模式的に示す。要約すれば、1a−赤は、溶液中コロイドには不相容であると以前からみなされていた特徴を組み合わせている独自の金コロイドである:小さなサイズ、カリックスアレーン−結合コロイドの頑丈さ、及び異常に高い程度の金属表面接触可能性。よって、例えば上述されたものなど、様々な領域において、広範な適応性が発見されることが予想される。
【0180】
「a」、「an」及び「the」などの冠詞は、本明細書で使用する場合、文脈により他に明らかに述べられていない限り、指示対象の複数の数を排除しない。接続詞「又は」は、文脈により他に明らかに述べられていない限り、相互に排他的ではない。「挙げられる」という用語は、これを使用して、非完全な例を指す。
【0181】
本明細書中で引用されたすべての参考文献、公開、特許出願、交付済み特許、受託記録及びデータベースは、いかなる付録を含め、すべての目的のため、これらの全体が参照により組み込まれている。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、
(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上と、
を含む錯体であって、
該リンカーが該複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、
該配位子のうちの少なくとも2つが、該金属コロイドよりも大きい上記錯体。
【請求項2】
前記金属コロイドが、前記配位子より小さいプローブ分子と接触可能な請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の表面金属原子が、前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項4】
少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の前記金属コロイドの表面積が、前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項5】
前記プローブ分子が2−ナフタレンチオールである、請求項2から4までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項6】
前記金属コロイドが、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される長さ程度の直径を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項7】
前記金属コロイドが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の金属原子を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項8】
前記金属原子が貴金属原子である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項9】
前記金属原子がそれぞれAuである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項10】
少なくとも1つの前記配位子がカリックスアレーン関連化合物である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項11】
少なくとも1つの前記配位子が、式:
【化1】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数であり、
R1は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分であり、
少なくとも1つのR1はリンカーであり、
R2は、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分である)
を有するカリックスアレーン関連化合物である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項12】
R2が置換又は非置換のアルキルである、請求項11に記載の錯体。
【請求項13】
R2が、C1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキルから選択される、請求項11及び12のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項14】
R2がtert−ブチルである、請求項11から13までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項15】
R2が、−OR1に対してパラ位にある、請求項11から14までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項16】
R1が、置換又は非置換のアルキルである、請求項11から15までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項17】
R1が、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルから選択される、請求項11から16までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項18】
R1がメチルである、請求項11から17までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項19】
前記リンカーが、ホスフィン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される部分である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項20】
前記リンカーが、前記配位原子に加えて、1つ又は複数のアルキル基置換基で所望により置換されているアルキル及びヘテロアルキルから選択される部分である、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項21】
前記リンカーが、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている、請求項1から20までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項22】
前記リンカーがホスフィンである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項23】
前記ホスフィンが、−Y1P(Y2)(Y3)
(式中、Y1は、結合、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択され、
Y2及びY3は、独立して、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される)
である、請求項21及び22のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項24】
Y2及びY3が、それぞれ置換又は非置換のアリールである、請求項23に記載の錯体。
【請求項25】
Y2及びY3がそれぞれフェニルである、請求項23及び24のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項26】
Y1が置換又は非置換のアルキルである、請求項23から25までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項27】
Y1が、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルである、請求項23から26までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項28】
Y1がメチルである、請求項23から27までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項29】
Y1が結合である、請求項23から25までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項30】
前記リンカーがカルベンである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項31】
前記カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたアルキルである、請求項30に記載の錯体。
【請求項32】
前記カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたメチルである、請求項30及び31のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項33】
前記配位原子が、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される、請求項1から32までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項34】
nが4である、請求項1から33までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項35】
少なくとも1つの前記配位子が2つのリンカーを含む、請求項1から34までのいずれかに記載の錯体。
【請求項36】
2、3、4、5、6又は7つの前記配位子が金属コロイドに配位結合している、請求項1から35までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項37】
前記金属コロイドが2つ以上の配位子に対して配位的に飽和している、請求項1から36までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項38】
複数の前記金属コロイドが、前記2つ以上の配位子と配位結合している、請求項1から37までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項39】
基体上に固定化された、請求項1から38までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項40】
前記配位子又は前記金属コロイドが基体に直接結合されている、請求項39に記載の錯体。
【請求項41】
請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体上で反応を実施するステップを含むプロセスで形成される金属コロイドであって、該反応が、高温分解、熱分解、酸化による分解及びこれらの組合せから選択される、上記金属コロイド。
【請求項42】
(a)配位子と金属塩の間で反応を引き起こすのに適した条件下で、該配位子と該金属塩を溶媒中で接触させるステップであって、該配位子が、配位原子を含むリンカーを含み、これにより金属−配位子前駆体を形成する上記ステップと、
(b)該金属−配位子前駆体と還元剤を接触させるステップであって、該金属−配位子前駆体、外還元剤又はこれら両方が該溶媒中にやや溶けにくく、これにより錯体を合成する上記ステップと
を含む、請求項1から38までのいずれか一項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項43】
前記金属塩が金属ハロゲン化物塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記金属塩が貴金属原子を含む、請求項42及び43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒がアルコールである、請求項42から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記溶媒がエタノールである、請求項42から45までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記配位子が、請求項1から40までのいずれかに記載の錯体の配位子の1つである、請求項42から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記配位子がカリックスアレーン関連化合物である、請求項42から47までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホルアミダイトから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記カリックスアレーン関連化合物がカリックスアレーンカルベンである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンターピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンパーオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカーボネートから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
有機分子と、(a)請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項41に記載の金属コロイド及び(b)還元剤とを接触させることによって、該有機分子を還元するステップを含む、触媒プロセス。
【請求項54】
有機分子と、(a)請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項41に記載の金属コロイド及び(b)酸化剤とを接触させることによって、該有機分子を酸化するステップを含む、触媒プロセス。
【請求項1】
(a)複数の金属原子を含む金属コロイドと、
(b)それぞれがリンカーを含む配位子2つ以上と、
を含む錯体であって、
該リンカーが該複数の金属原子のうちの一つに配位結合した配位原子を含み、
該配位子のうちの少なくとも2つが、該金属コロイドよりも大きい上記錯体。
【請求項2】
前記金属コロイドが、前記配位子より小さいプローブ分子と接触可能な請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の表面金属原子が、前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項4】
少なくとも、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%及び40%から選択されるパーセンテージ程度の前記金属コロイドの表面積が、前記配位子より小さいプローブ分子に接触可能である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項5】
前記プローブ分子が2−ナフタレンチオールである、請求項2から4までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項6】
前記金属コロイドが、0.5nm、0.6nm、0.7nm、0.8nm、0.9nm、1.0nm、1.1nm、1.2nm、1.3nm、1.4nm、1.5nm、1.6nm、1.7nm、1.8nm、1.9nm、2.0nm、2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm及び2.5nmから選択される長さ程度の直径を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項7】
前記金属コロイドが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の金属原子を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項8】
前記金属原子が貴金属原子である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項9】
前記金属原子がそれぞれAuである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項10】
少なくとも1つの前記配位子がカリックスアレーン関連化合物である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項11】
少なくとも1つの前記配位子が、式:
【化1】
(式中、nは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16から選択される整数であり、
R1は、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、及びリンカーから選択される部分であり、
少なくとも1つのR1はリンカーであり、
R2は、水素、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のヘテロアリール、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分である)
を有するカリックスアレーン関連化合物である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項12】
R2が置換又は非置換のアルキルである、請求項11に記載の錯体。
【請求項13】
R2が、C1、C2、C3、C4、C5及びC6アルキルから選択される、請求項11及び12のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項14】
R2がtert−ブチルである、請求項11から13までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項15】
R2が、−OR1に対してパラ位にある、請求項11から14までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項16】
R1が、置換又は非置換のアルキルである、請求項11から15までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項17】
R1が、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルから選択される、請求項11から16までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項18】
R1がメチルである、請求項11から17までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項19】
前記リンカーが、ホスフィン、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される部分である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項20】
前記リンカーが、前記配位原子に加えて、1つ又は複数のアルキル基置換基で所望により置換されているアルキル及びヘテロアルキルから選択される部分である、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項21】
前記リンカーが、アルコール、スルホン酸、ホスフィン、フェニル、イミダゾリウム、カルベン、ホスホネート、ホスホン酸、ホスフィンオキシド、チオール、スルホキシド、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、第四級アンモニウム、ホスホニウム、イミン、アミド、イミド(imide)、イミド(imido)、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、アセタール、ケタール、ボロネート、シアノヒドリン、ヒドラゾン、オキシム、オキサゾール、オキサゾリン、オキサラン、ヒドラジド、エナミン、スルホン、スルフィド、スルフェニル、ハロゲン及びこれらの組合せから選択される部分で置換されている、請求項1から20までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項22】
前記リンカーがホスフィンである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項23】
前記ホスフィンが、−Y1P(Y2)(Y3)
(式中、Y1は、結合、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択され、
Y2及びY3は、独立して、置換又は非置換のアルキル、置換又は非置換のヘテロアルキル、置換又は非置換のアリール及び置換又は非置換のヘテロアリールから選択される)
である、請求項21及び22のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項24】
Y2及びY3が、それぞれ置換又は非置換のアリールである、請求項23に記載の錯体。
【請求項25】
Y2及びY3がそれぞれフェニルである、請求項23及び24のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項26】
Y1が置換又は非置換のアルキルである、請求項23から25までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項27】
Y1が、C1、C2、C3、C4、C5又はC6アルキルである、請求項23から26までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項28】
Y1がメチルである、請求項23から27までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項29】
Y1が結合である、請求項23から25までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項30】
前記リンカーがカルベンである、請求項1から19までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項31】
前記カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたアルキルである、請求項30に記載の錯体。
【請求項32】
前記カルベンが、イミダゾリウム部分で置換されたメチルである、請求項30及び31のいずれか一項に記載の錯体。
【請求項33】
前記配位原子が、リン、炭素、窒素及び酸素から選択される、請求項1から32までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項34】
nが4である、請求項1から33までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項35】
少なくとも1つの前記配位子が2つのリンカーを含む、請求項1から34までのいずれかに記載の錯体。
【請求項36】
2、3、4、5、6又は7つの前記配位子が金属コロイドに配位結合している、請求項1から35までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項37】
前記金属コロイドが2つ以上の配位子に対して配位的に飽和している、請求項1から36までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項38】
複数の前記金属コロイドが、前記2つ以上の配位子と配位結合している、請求項1から37までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項39】
基体上に固定化された、請求項1から38までのいずれか一項に記載の錯体。
【請求項40】
前記配位子又は前記金属コロイドが基体に直接結合されている、請求項39に記載の錯体。
【請求項41】
請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体上で反応を実施するステップを含むプロセスで形成される金属コロイドであって、該反応が、高温分解、熱分解、酸化による分解及びこれらの組合せから選択される、上記金属コロイド。
【請求項42】
(a)配位子と金属塩の間で反応を引き起こすのに適した条件下で、該配位子と該金属塩を溶媒中で接触させるステップであって、該配位子が、配位原子を含むリンカーを含み、これにより金属−配位子前駆体を形成する上記ステップと、
(b)該金属−配位子前駆体と還元剤を接触させるステップであって、該金属−配位子前駆体、外還元剤又はこれら両方が該溶媒中にやや溶けにくく、これにより錯体を合成する上記ステップと
を含む、請求項1から38までのいずれか一項に記載の錯体を合成する方法。
【請求項43】
前記金属塩が金属ハロゲン化物塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記金属塩が貴金属原子を含む、請求項42及び43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒がアルコールである、請求項42から44までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記溶媒がエタノールである、請求項42から45までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記配位子が、請求項1から40までのいずれかに記載の錯体の配位子の1つである、請求項42から46までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記配位子がカリックスアレーン関連化合物である、請求項42から47までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンホスフィン、カリックスアレーンホスフィナイト、カリックスアレーンホスホナイト、カリックスアレーンホスファイト及びカリックスアレーンホスホルアミダイトから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記カリックスアレーン関連化合物がカリックスアレーンカルベンである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンピリジン、カリックスアレーンビピリジン、カリックスアレーンターピリジン、カリックスアレーンピラゾール、カリックスアレーンフェナントロリン、カリックスアレーンイソニトリル、カリックスアレーンアミド、カリックスアレーンアミン、カリックスアレーンアミンオキシド、カリックスアレーンニトロソ、カリックスアレーンニトロ及びカリックスアレーンカルバメートから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記カリックスアレーン関連化合物が、カリックスアレーンカルボキシレート、カリックスアレーンアルコキシド、カリックスアレーンパーオキソ、カリックスアレーンフェノキシド、カリックスアレーンエステル、カリックスアレーンエーテル、カリックスアレーンアセチルアセトネート及びカリックスアレーンカーボネートから選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
有機分子と、(a)請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項41に記載の金属コロイド及び(b)還元剤とを接触させることによって、該有機分子を還元するステップを含む、触媒プロセス。
【請求項54】
有機分子と、(a)請求項1から40までのいずれか一項に記載の錯体又は請求項41に記載の金属コロイド及び(b)酸化剤とを接触させることによって、該有機分子を酸化するステップを含む、触媒プロセス。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図14(c)】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図26】
【図3】
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【図14(b)】
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【図16】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図26】
【公表番号】特表2013−510173(P2013−510173A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538042(P2012−538042)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055686
【国際公開番号】WO2011/057109
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055686
【国際公開番号】WO2011/057109
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】
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