説明

接触式ICカード用のリーダライタ

【課題】コストアップを抑えながら、接触式ICカードに帯電した静電気を放電できる接触式ICカード用のリーダライタを得る。
【解決手段】本発明に係るリーダライタ1は、本体ケース3内に接触式ICカード2の電極端子P1〜P8に接触する接触端子11〜18を設けてある。接触式ICカード2が本体ケース3内に挿入されたときは、接触式ICカード2のカード本体2aが接触端子11〜18に接触し、次いで電極端子P1〜P8が接触端子11〜18と接触する。本発明は、接地用スイッチング素子25〜27と、該スイッチング素子25〜27のオンオフを制御する制御部8とを有する。制御部8は、接触端子16〜18が接触式ICカード2のカード本体2aに接触している間はスイッチング素子25〜27をオンして接触端子16〜18を接地し、各電極端子P1〜P8と各接触端子11〜18とが接触したときには、スイッチング素子25〜27をオフして接地状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式ICカード用のリーダライタに関し、詳しくは接触式ICカードの複数の電極端子にそれぞれ接触することで電気的に接続される複数の接触端子が設けられたリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の接触式ICカード(以下、単にICカードともいう。)は、一般に、そのカード本体がプラスチックで形成されていることからカード本体には静電気が帯電し易い。そのため、リーダライタに挿入されると、カード本体に帯電している静電気がリーダライタの回路基板の配線や部品等にスパイク状に放電されて、リーダライタまたはICカードの誤動作や破損等を招く虞がある。
【0003】
その対策としては、例えば特許文献1に示すようにリーダライタに静電気除去用の放電端子を設けたものが知られている。詳しくは、特許文献1に記載のリーダライタでは、ICカード接続用の接触端子を設けた端子ブロックにグランド部を付設し、このグランド部に静電気除去用の放電端子を配置している。そして、リーダライタのICカード接続用の接触端子とICカードの電極端子とが接触する前に、静電気除去用の放電端子にICカードのカード本体の表面を接触させて、ICカードに帯電している静電気を除去するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−287198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すリーダライタでは、端子ブロックにグランド部を新たに付設することになるために端子ブロックの設計変更が必要なうえ、そのグランド部に静電気除去用の放電端子を取り付ける分だけ構造が複雑になって、リーダライタのコストアップを招くことになる。
【0006】
本発明は、上記のような問題に対処するもので、リーダライタのコストアップを抑えながら、接触式ICカードに帯電した静電気を除去できる接触式ICカード用のリーダライタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、図1〜8に示すように、複数の電極端子(図7および図8では電極端子P1〜P8)を備えた接触式ICカード(以下、単にICカードともいう。)2が挿入される本体ケース3を有し、この本体ケース3内には、ICカード2における複数の電極端子にそれぞれ対応する複数の接触端子(図7および図8では接触端子11〜18)が設けられており、ICカード2が本体ケース3内に挿入されたときに、まず当該ICカード2におけるカード本体2aが接触端子に接触し、次いで各電極端子がこれに対応する本体ケース3内の各接触端子と接触して電気的に接続される接触式ICカード用のリーダライタ1を対象とする。
【0008】
本発明のリーダライタ1は、複数の接触端子のうちの少なくとも一個の接触端子(特定接触端子、図1では接触端子16〜18)を接地するための接地用スイッチング素子(図1では接地用スイッチング素子接触端子25〜27)と、この接地用スイッチング素子のオンオフを制御する制御部8とを有する。この制御部8は、特定接触端子がICカード2のカード本体2aに接触している間は接地用スイッチング素子をオンして特定接触端子を接地状態にし、前記対応する各電極端子と各接触端子とがそれぞれ接触したときには接地用スイッチング素子をオフして前記接地状態を解除する構成としてある。
【0009】
また、本発明は、カード挿入方向C(図7参照)に向かって前後二列に配置された複数の電極端子を備えたICカード2が挿入される本体ケース3を有し、ICカード2における前後二列の複数の電極端子(図7および図8では電極端子P1〜P8)にそれぞれ対応する前後二列の複数の接触端子(図7および図8では接触端子11〜18)が設けられており、ICカード2を本体ケース3内に挿入したときに、まず当該ICカード2におけるカード本体2aが接触端子(図7および図8では接触端子15〜18)に接触し、次いで各電極端子がこれに対応する本体ケース3内の各接触端子と接触して電気的に接続されるICカード用のリーダライタ1をも対象とする。
【0010】
この場合における本発明のリーダライタ1は、前後二列の複数の接触端子(図1および図7では接触端子11〜18)のうち、ICカード2の挿入時にカード本体2aが先に接触することとなる前列側の少なくとも一個の接触端子(特定接触端子、図1および図7では接触端子16〜18)を接地するための接地用スイッチング素子(図1では接地用スイッチング素子接触端子25〜27)と、この接地用スイッチング素子のオンオフを制御する制御部8とを有する。この制御部8は、特定接触端子がICカード2のカード本体2aに接触している間は接地用スイッチング素子をオンして特定接触端子を接地状態にし、前記対応する各電極端子と各接触端子とがそれぞれ接触したときには接地用スイッチング素子をオフして前記接地状態を解除する。
【0011】
本体ケース3内には、ICカード2側の各電極端子がこれに対応するリーダライタ1側の各接触端子と接触する所定の装着位置までICカード2が挿入されたときに、これを検出するカード検出スイッチ7を設けることができる。この場合には、制御部8は、カード検出スイッチ7によってICカード2が装着位置に挿入されたことが検出されるまでは接地用スイッチング素子をオンし、カード検出スイッチ7によってICカード2が装着位置に挿入されたことが検出されると接地用スイッチング素子をオフするものとすることができる。
【0012】
複数の接触端子のうちの一つがICカード2に対する電源電圧供給用の接触端子(図7では接触端子11)とし、制御部8は、ICカード2が装着位置まで挿入されたことをカード検出スイッチ7が検出してから所定時間が経過したときに、電源電圧供給用の接触端子に電源電圧Vccを供給するものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る接触式ICカード用のリーダライタにおいては、特定接触端子がICカード2のカード本体2aに接触している間は接地用スイッチング素子をオンして特定接触端子を接地状態にし、ICカード2の各電極端子とリーダライタ1の各接触端子とがそれぞれ接触したときには接地用スイッチング素子をオフして接地状態を解除するので、まず、その接地によってICカード2のカード本体2aに帯電している静電気が特定接触端子を介してアースに流れて除去される。その結果、ICカード2の静電気がリーダライタ1内の基板9の配線や部品等に不本意に放電されることを回避でき、その放電によってリーダライタ1またはICカード2の誤動作や破損等を招くことを確実に防止できる。次いでICカード2の各電極端子とリーダライタ1の各接触端子とが接触したときには特定接触端子1の接地状態が解除され、これによってリーダライタ1とICカード2とは、前述の静電気の除去後に各接触端子と各電極端子とを介して適正に通信を行なうことができる。
【0014】
そのうえで、ICカード接続用のリーダライタ1の接触端子のうちから特定した少なくとも一個の接触端子を特定接触端子として、ICカード2の静電気除去に使用するので、例えば、ICカード2の静電気除去に専用に使用する放電端子およびその放電端子を支持するための部材をリーダライタ1に設けなくても済み、その分だけリーダライタ1の構造の複雑化を防止できて、リーダライタ1のコストアップを抑制できる。本発明では、スイッチング素子を設けることになるが、スイッチング素子は、安価であるうえに制御部8の構成部品等を設けた基板9に容易に配置することができる。したがって、前述の専用の放電端子およびその放電端子を支持する部材を設ける場合よりも安価に作製することができる。
【0015】
リーダライタ1の前後二列の複数の接触端子のうち、ICカード2の挿入時にカード本体2aが先に接触することとなる前列側の接触端子(特定接触端子)を接地用スイッチング素子で接地する構成にした場合には、ICカード2のカード本体2aの静電気を、ICカード2を本体ケース3内に挿入する際の早い段階で除去でき、ICカード2の静電気がリーダライタ1内の基板9の配線や部品等に放電されることをより確実に防止できる。
【0016】
ICカード2の電極端子がこれに対応するリーダライタ1側の接触端子と接触する装着位置にICカード2が挿入されたことを検出するカード検出スイッチ7を本体ケース3内に配置すると、制御部8は、ICカード2の各電極端子とリーダライタ1の各接触端子とが接触したことを正確に判別して接触端子の接地状態を解除できる。
【0017】
ICカード2が装着位置まで挿入されたことをカード検出スイッチ7が検出してから所定時間が経過したときに、電源電圧供給用の接触端子11に電源電圧Vccを供給すると、チャタリング等が収拾してICカード2の各電極端子とリーダライタ1の各接触端子との接触状態が安定したのちに、ICカード2に電源電圧Vccを供給することができる。これによって、突入電流が流れることの回避と、ICカード2への正常な給電を行なうこととを確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る接触式ICカード用のリーダライタのブロック構成図である。
【図2】リーダライタに接触式ICカードを挿入した状態を示す平面図である。
【図3】リーダライタおよび接触式ICカードの斜視図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】リーダライタの動作を示すタイミングチャートである。
【図7】リーダライタに接触式ICカードを挿入する状態を示す要部拡大図である。
【図8】リーダライタに接触式ICカードを装着した状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図8に、本実施形態に係る接触式ICカード用のリーダライタを示す。このリーダライタ1は、図2および図3に示すように、ICカード2が本体ケース3内に挿入されることで、ICカード2とデータ通信を行なうようになっている。本体ケース3には、その一端側(図3では右端側)にICカード2を挿入するための開口4が形成されており、この開口4からICカード2が挿入されるようになっている。
【0020】
ICカード2は、図3に示すように、プラスチック製のカード本体2aの表面であってカード本体2aの周縁よりも内側となる所定位置(図示例では、カード本体2aのカード挿入端2bから一定距離だけカード本体2aの内側に寄った位置)に、リーダライタ1に設けた後述の端子ブロック6と電気的に接触するコンタクト部5を有する。コンタクト部5には、八個の電極端子P1〜P8が配置されており、各電極端子P1〜P8が、ICカード2のカード本体2a内に配置したICチップ(不図示)に電気的に接続されている。
【0021】
ICカード2の各電極端子P1〜P8は、図7に示すカード挿入方向Cに向かって前後に二列に分かれて配置されている。具体的には、図3の一部に拡大して示すように、八個の電極端子P1〜P8のうち、電極端子P1〜P4の四個が、コンタクト部5の前側に左右方向に並べて配置され、電極端子P5〜P8の四個が、コンタクト部5の後ろ側に左右方向に並べて配置されている。このうち、電極端子P1はVcc(電源電圧)、電極端子P2はRST(リセット信号)、電極端子P3はCLK(クロック信号)、電極端子P5はGND(接地)、電極端子P6はVpp(データ書込時の供給電圧)および電極端子P7はI/O(データ入出力)用の端子とされている。電極端子P4と電極端子P8とは予備端子である。
【0022】
リーダライタ1の本体ケース3内には、ICカード2を所定位置まで挿入したときに当該ICカード2における各電極端子P5〜P8と電気的に接触する八個の接触端子11〜18を備えた端子ブロック6と、ICカード2を検出するカード検出スイッチ7と、制御部8(図1)とが設けられている。端子ブロック6、カード検出スイッチ7および制御部8は、本体ケース3内に配置した基板9に固定されている。端子ブロック6の各接触端子11〜18は、ICカード2の前後二列の各電極端子P1〜P8にそれぞれ対応して前後二列に設けられている。具体的には、各接触端子11〜18のうち、接触端子11〜14の四個は、本体ケース3の奥側(後列側)に左右方向に並べて配置され、接触端子15〜18の四個が、本体ケース3の開口4側(前列側)に左右方向に並べて配置されている。
【0023】
各接触端子11〜18は、図4に示すように、端子ブロック6のプラスチック製のブロック本体19に配置された片持ち支持の板ばねからなり、リーダライタ1の前後方向に延びている。そして、前列側の接触端子15〜18および後列側の接触端子11〜14は、その各基端部がブロック本体19の前縁部19aおよび後縁部19bにそれぞれ固定されているとともに、各先端部が下向きの円弧状に湾曲しており、当該各先端部が図4の下側(ICカード2側)方向に付勢されている。また、接触端子11〜18の各先端部は、ブロック本体19の前後方向の中央部19c側に位置しており、それらの下方への揺動が、ブロック本体19の中央部19cへの当接によって所定位置(図4の仮想線の位置)で規制されるようになっている。
【0024】
そして、ICカード2が本体ケース3内に挿入されたときには、次のようにして各電極端子P1〜P8と各接触端子11〜18とが電気的に接続されるように構成されている。
【0025】
まずICカード2のカード本体2aの前端が前列側の接触端子15〜18に接触し、次いでICカード2が前列側の接触端子15〜18を押し上げて弾性変形させることで、その弾性復元力で各接触端子15〜18の先端部がICカード2のカード本体2aに押し付けられる(図4の実線参照)。続いてICカード2のカード本体2aが後列側の接触端子11〜14に接触し、ICカード2が後列側の接触端子11〜14を押し上げて弾性変形させることで、その弾性復元力で各接触端子11〜14の先端部がICカード2に押し付けられる。その後のICカード2挿入操作によって、各電極端子P1〜P8がこれに対応する各接触端子11〜18とそれぞれ接触して接続される。
【0026】
カード検出スイッチ7は、図5に示すように、基板9に固定されるプラスチック製のスイッチ本体20と、スイッチ本体20に片持ち支持された板ばねからなる固定片21と、スイッチ本体20に揺動可能に取り付けられてICカード2に接触可能な揺動片22とからなる。固定片21と揺動片22とは、それぞれリーダライタ1の前後方向に伸びており、図7に示すように左右に並べて配置されている。
【0027】
揺動片22は、その先端部22aが固定片21側へ折れ曲がって固定片21の先端の下側に位置しており、また図5示すように先端部22aの後ろ側に、下向きの円弧状に湾曲する中間部22bが形成されている。揺動片22は、常態で固定片21から離れており、中間部22bがICカード2によって押し上げられることで揺動片22の先端部22aが固定片21の先端側に接触するようになっている(図5の状態)。そして、カード検出スイッチ7は、ICカード2の各電極端子P1〜P8がこれに対応するリーダライタ1の各接触端子11〜18と接触する所定の装着位置(図2の位置)までICカード2が挿入されたときに、前述のように揺動片22が固定片21に接触することで、Cカード2が装着位置に挿入されたことを検出するようになっている。端子ブロック6のブロック本体19と、カード検出スイッチ7のスイッチ本体20とは一体形成されている。
【0028】
リーダライタ1の本体ケース3内には、図2に示すように、挿入されたICカード2を受け止めて所定の装着位置に位置決めする一対のカードストッパ23・23が設けられている。そして、ICカード2が前記装着位置でカードストッパ23・23に受け止められたときには、前述の要領でカード検出スイッチ7の揺動片22の先端部22aが固定片21に接触し、またICカード2の電極端子P1〜P8とリーダライタ1の接触端子11〜18とが接触するようになっている。
【0029】
端子ブロック6の各接触端子11〜18とカード検出スイッチ7の揺動片22とは、図1に示すように、制御部8に接続されている。端子ブロック6の各接触端子11〜18のうち、ICカード2の挿入時にカード本体2aが先に接触することとなる前列側の接触端子(特定接触端子)16〜18には、それぞれ放電抵抗R1〜R3と接地用スイッチング素子25〜27との直列回路からなる放電回路28〜30が接続されている。制御部8は、接地用スイッチング素子25〜27をオンオフ制御するためのゲート信号を各接地用スイッチング素子25〜27に出力するようになっている。各接地用スイッチング素子25〜27は、ゲート信号がハイになるとオンして接触端子16〜18を抵抗R1〜R3を介して接地状態にし、ゲート信号がローになるとオフして前記接地状態を解除するようになっている。
【0030】
カード検出スイッチ7の固定片21は、制御部8のスイッチ入力端子31に接続されており、また抵抗R4を介して電源(電圧Vcc)に接続されている。揺動片22は接地状態になっている。そして、揺動片22が固定片21に接触したときに、制御部8のスイッチ入力端子31への入力信号がハイ(オフ信号)からロー(オン信号)になる。また、リーダライタ1には、図1に示すケーブル32が接続されており、制御部8は、ケーブル32を介して外部管理装置33に接続されている。制御部8は、外部管理装置33との通信に基づいて、ICカード2のコンタクト部5の各電極端子P1〜P8を介してICカード2のICチップに記憶されているデータを読み出し、またはICチップにデータを書き込むようになっている。
【0031】
次に、本実施形態のリーダライタ1の動作を図6のタイミングチャート、図7および図8を用いて説明する。リーダライタ1の制御部8は、ICカード2がリーダライタ1の開口4に挿入される前の状態では、各接触端子11〜18を開放状態にしてある。具体的には、ICカード2の電源用の電極端子P1に接触するリーダライタ1の電源電圧供給用の接触端子11には電圧Vccを供給しておらず、電圧Vpp用の電極端子P6に接触するリーダライタ1の接触端子16には電圧Vppを供給していない。
【0032】
また、制御部8から接地用スイッチング素子25〜27へのゲート信号はハイになっており、接地用スイッチング素子25〜27はオンしている。これによって、端子ブロック6の接触端子16〜18が抵抗R1〜R3を介して接地されている。ICカード2の接地用の電極端子P5に接触するリーダライタ1の接触端子15は常時接地されている。
【0033】
この状態で、ICカード2が前側からリーダライタ1の開口4に挿入されると、前述のように本体ケース3の開口4側(前列側)の接触端子15および特定接触端子16〜18がICカード2のカード本体2aの表面に接触する。その際、接触端子15および特定接触端子16〜18が接地状態であることで、ICカード2のカード本体2aに帯電している静電気が接触端子15〜18を介してアースに流れて除去される。続いて図7に示すように本体ケース3の奥側(後列側)の接触端子11〜14がICカード2のカード本体2aの表面に接触する。
【0034】
そして、図8に示すように、ICカード2がリーダライタ1のカードストッパ23・23に受け止められる装着位置まで本体ケース3内に挿入されたときには(図6の時刻t1)、カード検出スイッチ7の揺動片22の先端部22aが固定片21に接触する。これによって制御部8のスイッチ入力端子31への入力信号がオフ信号からオン信号に切り換わり、制御部8は、カード検出スイッチ7によってICカード2が装着位置に挿入されたことを判別する。それに応じて制御部8は、接地用スイッチング素子25〜27へのゲート信号をハイからローへ切り換え、それに伴なって各接地用スイッチング素子25〜27がオフして、接触端子16〜18の接地状態が解除される。
【0035】
ICカード2が装着位置まで本体ケース3内に挿入されたときには、ICカード2の各電極端子P1〜P8が対応するリーダライタ1の各接触端子11〜18にそれぞれ接触しており(図8の状態)、制御部8は、前記時刻t1から所定時間が経過するのを待って(図6の時刻t2)、ICカード2の電源用の電極端子P1に対する電源電圧供給用の接触端子11に電源電圧Vccを供給する。これによって、ICカード2のICチップが作動し、そのICチップに記憶されているデータの読み出し等が可能になる。
【0036】
このように、リーダライタ1の前列側の接触端子(特定接触端子)16〜18がICカード2のカード本体2aに接触している間は特定接触端子16〜18を接地状態にするので、ICカード2のカード本体2aに帯電している静電気が接触端子15および接触端子16〜18によって除去される。これによって、ICカード2の静電気がリーダライタ1内の基板9の配線や部品等に放電されて、リーダライタ1またはICカード2の誤動作や破損等を招くことを確実に回避できる。
【0037】
そのうえで、ICカード接続用のリーダライタ1の接触端子11〜18のうちから特定した特定接触端子16〜18を静電気除去に使用するので、ICカード2の静電気を除去するための専用の放電端子およびその放電端子を支持する部材をリーダライタ1に別途設けなくても済む。
【0038】
また、ICカード2がリーダライタ1のカードストッパ23・23に受け止められるまで、すなわちICカード2が装着位置まで挿入されるまでは接触端子11に電源電圧Vccが供給されないので、チャタリング等が収拾して各電極端子P1〜P8と各接触端子11〜18との接触状態が安定したのちに、ICカード2に電源電圧Vccを供給することができる。これによって、突入電流が流れることの回避とICカード2への正常な給電を行なうこととができる。
【0039】
接地用スイッチング素子が接続される特定接触端子は、多いほうが好ましいが、接触端子16〜18のうちの少なくともひとつの接触端子に接地用スイッチング素子を接続すれば、ICカード2の静電気の除去を行なうことができる。リーダライタ1は、ICカード2に記憶されているデータの読み出しのみを行なうものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 リーダライタ
2 接触式ICカード
2a カード本体
3 本体ケース
4 開口
7 カード検出スイッチ
8 制御部
9 基板
11〜18 接触端子
25〜27 接地用スイッチング素子
P1〜P8 電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極端子を備えた接触式ICカードが挿入される本体ケースを有し、この本体ケース内には、前記ICカードにおける複数の電極端子にそれぞれ対応する複数の接触端子が設けられており、前記ICカードが本体ケース内に挿入されたときに、まず当該ICカードにおけるカード本体が前記接触端子に接触し、次いで前記各電極端子がこれに対応する前記本体ケース内の各接触端子と接触して電気的に接続される接触式ICカード用のリーダライタであって、
前記複数の接触端子のうちの少なくとも一個の接触端子(特定接触端子)を接地するための接地用スイッチング素子と、
このスイッチング素子のオンオフを制御する制御部とを有し、
この制御部は、前記特定接触端子が前記ICカードのカード本体に接触している間は前記スイッチング素子をオンして前記特定接触端子を接地状態にし、前記対応する前記各電極端子と前記各接触端子とがそれぞれ接触したときには前記スイッチング素子をオフして前記接地状態を解除することを特徴とする接触式ICカード用のリーダライタ。
【請求項2】
カード挿入方向に向かって前後二列に配置された複数の電極端子を備えた接触式ICカードが挿入される本体ケースを有し、前記ICカードにおける前後二列の複数の電極端子にそれぞれ対応する前後二列の複数の接触端子が設けられており、前記ICカードが本体ケース内に挿入されたときに、まず当該ICカードにおけるカード本体が前記接触端子に接触し、次いで前記各電極端子がこれに対応する前記本体ケース内の各接触端子と接触して電気的に接続される接触式ICカード用のリーダライタであって、
前記前後二列の複数の接触端子のうち、前記ICカードの挿入時に前記カード本体が先に接触することとなる前列側の少なくとも一個の接触端子(特定接触端子)を接地するための接地用スイッチング素子と、
このスイッチング素子のオンオフを制御する制御部とを有し、
この制御部は、前記特定接触端子が前記ICカードのカード本体に接触している間は前記スイッチング素子をオンして前記特定接触端子を接地状態にし、前記対応する前記各電極端子と前記各接触端子とがそれぞれ接触したときには前記スイッチング素子をオフして前記接地状態を解除することを特徴とする接触式ICカード用のリーダライタ。
【請求項3】
前記本体ケース内には、前記ICカード側の各電極端子がこれに対応するリーダライタ側の各接触端子と接触する所定の装着位置まで前記ICカードが挿入されたときに、これを検出するカード検出スイッチが設けられており、
前記制御部は、前記カード検出スイッチによって前記ICカードが前記装着位置に挿入されたことが検出されるまでは前記スイッチング素子をオンし、前記カード検出スイッチによって前記ICカードが前記装着位置に挿入されたことが検出されると前記スイッチング素子をオフする請求項1または2記載の接触式ICカード用のリーダライタ。
【請求項4】
複数の接触端子のうちの一つが接触式ICカードに対する電源電圧供給用の接触端子とされており、
前記制御部は、前記ICカードが前記装着位置まで挿入されたことを前記カード検出スイッチが検出してから所定時間が経過したときに、前記電源電圧供給用の接触端子に電源電圧を供給する請求項3記載の接触式ICカード用のリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−225059(P2010−225059A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73949(P2009−73949)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【Fターム(参考)】