接触燃焼式ガスセンサ
【課題】接触燃焼式ガスセンサにおいて、ガス感度と応答速度を損なうことなく、低消費電力化を図る。
【解決手段】ヒーターを形成した絶縁体と基材がバンプを介して接続されており、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成される。ヒーターは基材から独立しているため、燃焼触媒上で検知対象ガスが燃焼したときに熱損失を抑えながらヒーターに熱を伝達できる。また、熱容量を低く抑えられるので低消費電力化することができる。また、絶縁体上のヒーター面と基材上の電極とが向かい合って構成されることにより、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。また基材上に溜まった結露にさらされることを防ぐことができる。
【解決手段】ヒーターを形成した絶縁体と基材がバンプを介して接続されており、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成される。ヒーターは基材から独立しているため、燃焼触媒上で検知対象ガスが燃焼したときに熱損失を抑えながらヒーターに熱を伝達できる。また、熱容量を低く抑えられるので低消費電力化することができる。また、絶縁体上のヒーター面と基材上の電極とが向かい合って構成されることにより、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。また基材上に溜まった結露にさらされることを防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスやメタンガス等を検知対象とする可燃性ガスセンサには接触燃焼式ガスセンサ、半導体式ガスセンサ等が有り、いずれも可燃性ガスの検知に利用する熱源を内蔵している。
例えば、接触燃焼式ガスセンサ素子には、ヒーター部を有し、それに装備された燃焼触媒上で生成した可燃性ガスの接触燃焼熱によるヒーター部の抵抗値変化を電圧変化として出力することにより可燃性ガスの存在を検知するものである。
【0003】
図12に示すように、従来より接触燃焼式ガスセンサには、検知対象ガスを燃焼させるために、燃焼触媒10と、ガスの燃焼熱を効率よくヒーターコイル9に伝える熱伝導層11から成る焼結体12と、ガスの燃焼熱により電気的特性値が変化するヒーターコイル9とからなり、ヒーターコイルが焼結体中に埋め込まれた構造となっている。ヒーターコイルの両端部は、それぞれ外部接続用の電極ピンに接続されて支持されている。
【0004】
また、半導体式ガスセンサ素子には、ヒーターを有し、それに装備された半導体層における可燃性ガスの吸着現象により発生する半導体層の電気伝導度変化を電圧変化として出力することにより可燃性ガスの存在を検知するものである。
【0005】
また、従来の接触燃焼式ガスセンサの構造と比べ、省電力化、小型化及び耐衝撃性の向上を目的として、例えば図13のように絶縁基板2にあたるシリコン基板上に検知素子18と補償素子19とが隣接して設けられ、またこのシリコン基板はセンサ台座20によって固定された構造をもち、検知素子18と補償素子19とで可燃性ガスを燃焼する際に発生する燃焼熱を検出することによって可燃性ガスを検出する接触燃焼式ガスセンサがある(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−9672号公報(4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接触燃焼式ガスセンサでは、同じガス濃度であれば、検知素子から出力される電圧の変化量は大きい方が良い。この出力電圧の変化量が大きいということは、ガス感度が高いということである。そのため、触媒表面で検知対象ガスが接触燃焼を起こし、その燃焼熱は出来るだけ損失を抑えながら効率よくヒーターへ伝達されなくてはならない。
【0008】
また、接触燃焼式ガスセンサでは、同じガス濃度であれば、検知素子から出力される電圧ができるだけ短時間で安定する方が好ましい。出力電圧の安定に要する時間が短いということは、応答速度が速いということである。応答速度を速くするには、焼結体内に熱源となるヒーター部が燃焼熱を効率よく受けて、抵抗値変化が効率よく起こるようにすればよい。
【0009】
しかし、上記特許文献1に開示されているガスセンサの場合、シリコン基板の同一面上に検知素子と補償素子があることから、全体の熱容量が大きくなり消費電力のロスが生じる。また、熱容量が大きいと触媒上で微量の検知対象ガスが燃焼したときに生じる燃焼熱がシリコン基板側に奪われてヒーターに伝達しにくくなるためガス感度の向上は望めない
。
【0010】
また、上記特許文献1に開示されているガスセンサの場合、シリコン基板とセンサ台座から構成されるため、構造体が大型化してレイアウトの自由度が制約される。シリコン基板とセンサ台座を組み合わせた構造は熱容量が大きくなる一因となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる接触燃焼式ガスセンサは、焼結体に接触したガスの燃焼により発生した燃焼熱によってヒーターの電気的な特性値が変化し、その特性値の変化に基づいて可燃性ガスの存在を検知するガスセンサであって、ヒーターを形成した絶縁体と基材がバンプを介して接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、基材に貫通孔を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関わる接触燃焼式ガスセンサによれば、ヒーターを形成した絶縁体と基材とがバンプを介して接続されていることでヒーターは基材から独立しているため、燃焼触媒上で検知対象ガスが燃焼したときに生じる燃焼熱は熱損失を抑えながらヒーターに伝達できる。また、熱容量を低く抑えられるので低消費電力化することができる。
【0016】
また、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成されることにより、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。また基材上に溜まった結露にさらされることを防ぐことができる。
【0017】
また、ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することで、センサが防爆構造を形成でき、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。キャップは耐腐食性に優れた金属製の網、またはセラミックスで構成されることが好ましい。
【0018】
また、基材に貫通孔を設けることで、基材の両面から侵入する検知対象ガスを燃焼触媒が迅速に捉えることができる。また、ヒーターから発生する熱が基材を介して輻射熱として再度ヒーターに戻ることを防ぐことができる。これらは応答速度向上に貢献する。
【0019】
最終的に形成されるガスセンサは、熱容量を低く抑えられるため低消費電力化が可能となる。またガス感度と応答速度が向上する。また絶縁体を直接基材に実装できるので実装面積を小さくでき配線長を短くできるので電気特性がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明の接触燃焼式ガスセンサの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1の(a)は本発明の実施の形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの絶縁体の表面をあらわす。ここでは、ヒーター6と電極7が形成されている面を表面、その反対側の面を裏面として説明する。
【0022】
絶縁体1の表面側に、ヒーター6があり、抵抗長を稼ぐために蛇行した設計が好ましい。ヒーターの材料は温度特性が良好で経時変化が少ない白金もしくは白金合金が好ましい。
【0023】
ヒーター6の両端には電極7が形成されており、各々の電極7の上にはバンプ13が形成されている。バンプの材料は導電性の高い金や半田を選択するのが好ましい。
【0024】
図1の(a)におけるA−A'の断面図を(b)に示す。絶縁体1と絶縁基板2からなる構造体はダイヤフラム構造であり、熱容量を下げるためにヒーター6の下部は絶縁体1のみの薄膜構造で形成している。
【0025】
図1の(c)はヒーター6および燃焼触媒14を形成した絶縁体1と基材3とがバンプ13を介して接合したフリップチップ構造をあらわす。
【0026】
絶縁体1表面にある電極7と基材3表面にある電極15が向かい合わせとなっており、絶縁体の電極上にあったバンプ13が各々の電極に挟まれながら圧着、またはリフローによって接合されている。もしくは導電性接着剤を用いて接合してもよい。また、電極7と電極15とバンプ13を保護するためにこれらの周囲に樹脂接着剤であるアンダーフィル16が充填されている。
【0027】
図2は絶縁体の裏面をあらわしている。ダイヤフラム構造であるため絶縁基板2の中心部がくぼんだ形状をしており、絶縁体1が露出している。
【0028】
上記のフリップチップ構造の接触燃焼式ガスセンサ(実施例)および図13にあるような特許文献1の実施例を参照して組み立てた接触燃焼式ガスセンサ(比較例)において、検知対象ガスに対する応答性能を評価した。
【0029】
上記の実施例と比較例は、アルミナを主とした熱伝導層を形成した後、酸化スズおよび白金を主としたスラリー状の燃焼触媒材料を塗布して通電焼成を行い焼結体を形成して、接触燃焼式ガスセンサとして評価を行った。
【0030】
上記構成で検知対象ガスである水素、及びメタンガス4000ppmに対するガスセンサの出力信号の90%安定値への到達時間(以下、応答時間という)を評価した。
【0031】
応答時間評価の結果、検知対象ガスである水素、及びメタンに対して応答時間が短かったのは、実施例で、水素に対しては0.8秒、メタンに対しては1.6秒であった。比較例は、水素に対しては1.7秒、メタンに対しては2.7秒であった。実施例は水素とメタンにおいて比較例を上回る早い応答時間を示した。
【0032】
実施例の応答時間が比較例より短いのは、絶縁体の熱容量が小さく、微量の検知対象ガスが燃焼触媒表面に吸着したときに発生する燃焼熱が途中の熱損失を抑えながらヒーターに迅速に伝わるためである。
【0033】
製造方法について図1の(a)に示すA-A'の断面を基に説明する。
【0034】
図3に示すように、絶縁基板2にあたるシリコン基板の表面にシリコンの酸化膜、もしくはシリコンの窒化膜、もしくはこれらを組み合わせて多層化した絶縁体1を積層させる。
【0035】
図4に示すように、絶縁体1上にスパッタ法によって白金膜8を形成する。
【0036】
次に図5に示すように、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンをマスクとしてドライエッチングによって白金膜の一部を取り除きヒーター6と電極7を形成する。
【0037】
次に図6に示すように、電極7上にバンプ13を形成する。バンプは金または半田材料のような、電極7と接合性のよい材料を選択することが好ましい。
【0038】
図7に示すように、絶縁基板2の裏面からドライエッチングにより絶縁基板2の一部を、絶縁体1が露出するまでエッチングをおこなう。絶縁基板2をエッチングして、絶縁体1のみを残すことによって、ガスセンサ全体の熱容量を下げることができるため低消費電力化に貢献する。
【0039】
図8に示すように、ヒーター6を覆うようにスラリー状にした燃焼触媒14を塗布して焼結させる。このとき、触媒材料の選択によって、検知素子と補償素子を自由に使い分けることができる。
【0040】
図9に示すように、あらかじめ貫通孔5を設けた基材3にあたるエポキシ基板上にある電極15と絶縁体上にある電極7が向かい合うように位置合わせを行い、バンプ13が電極7と電極15に挟まれる構成にする。このとき、圧接工法、または超音波接合、またはシリコンを含まない導電性樹脂接着工法により電極7と電極15はバンプ13を介して完全に接合される。また、基材3に貫通孔5が無くても本発明はガスセンサとして機能することができる。
【0041】
図10に示すように、バンプ13、電極7および電極15からなる接合部を保護するためにアンダーフィル16とよばれるシリコンを含まない樹脂接着剤を充填する。
【0042】
図11に示すように、検知素子18と補償素子19の2種類の素子を覆うように金属製の網または通気性のあるセラミックスからなるキャップ4とキャップ17を基材3の両面にかしめるか、シリコンを含まない樹脂接着剤で固定する。基材3に貫通孔5がない場合はキャップ4のみを設置すればよく、キャップ17を設ける必要はない。
【0043】
本実施例にある検知素子と補償素子とを直列に接続した第1の直列回路と、同じ抵抗値の2個の固定抵抗を直列に接続した第2の直列回路とを並列に接続してホイートストンブリッジ回路を構成し、その第1の直列回路と第2の直列回路の接続点間に直流電圧を印加し、検知素子と補償素子との接続点と2個の固定抵抗の接続点との間の電圧を検出信号として出力させる。固定抵抗を絶縁体表面に形成し、ワンチップ化したセンサの構成でもよく、または基材上に固定抵抗を接続しても良い。以上の製造工程により接触燃焼式ガスセンサが完成する。
【0044】
以上に於いて、本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、ヒーター部の線幅、厚さ、長さ、絶縁体上のレイアウト等は適宜変更可能である。
【0045】
また、検知素子および補償素子の基材上のレイアウト等は適宜変更可能である。
【0046】
また、基材上の貫通孔の有無、形状、数量またはレイアウト等は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの表側から見た平面図および断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサを示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図12】従来の接触燃焼式ガスセンサを示す断面図である。
【図13】従来の接触燃焼式ガスセンサ素子の斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 絶縁体
2 絶縁基板
3 基材
4 キャップ
5 貫通孔
6 ヒーター
7 電極
8 白金膜
9 ヒーターコイル
10 燃焼触媒
11 熱伝導層
12 焼結体
13 バンプ
14 燃焼触媒
15 電極
16 アンダーフィル
17 キャップ
18 検知素子
19 補償素子
20 センサ台座
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスやメタンガス等を検知対象とする可燃性ガスセンサには接触燃焼式ガスセンサ、半導体式ガスセンサ等が有り、いずれも可燃性ガスの検知に利用する熱源を内蔵している。
例えば、接触燃焼式ガスセンサ素子には、ヒーター部を有し、それに装備された燃焼触媒上で生成した可燃性ガスの接触燃焼熱によるヒーター部の抵抗値変化を電圧変化として出力することにより可燃性ガスの存在を検知するものである。
【0003】
図12に示すように、従来より接触燃焼式ガスセンサには、検知対象ガスを燃焼させるために、燃焼触媒10と、ガスの燃焼熱を効率よくヒーターコイル9に伝える熱伝導層11から成る焼結体12と、ガスの燃焼熱により電気的特性値が変化するヒーターコイル9とからなり、ヒーターコイルが焼結体中に埋め込まれた構造となっている。ヒーターコイルの両端部は、それぞれ外部接続用の電極ピンに接続されて支持されている。
【0004】
また、半導体式ガスセンサ素子には、ヒーターを有し、それに装備された半導体層における可燃性ガスの吸着現象により発生する半導体層の電気伝導度変化を電圧変化として出力することにより可燃性ガスの存在を検知するものである。
【0005】
また、従来の接触燃焼式ガスセンサの構造と比べ、省電力化、小型化及び耐衝撃性の向上を目的として、例えば図13のように絶縁基板2にあたるシリコン基板上に検知素子18と補償素子19とが隣接して設けられ、またこのシリコン基板はセンサ台座20によって固定された構造をもち、検知素子18と補償素子19とで可燃性ガスを燃焼する際に発生する燃焼熱を検出することによって可燃性ガスを検出する接触燃焼式ガスセンサがある(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−9672号公報(4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接触燃焼式ガスセンサでは、同じガス濃度であれば、検知素子から出力される電圧の変化量は大きい方が良い。この出力電圧の変化量が大きいということは、ガス感度が高いということである。そのため、触媒表面で検知対象ガスが接触燃焼を起こし、その燃焼熱は出来るだけ損失を抑えながら効率よくヒーターへ伝達されなくてはならない。
【0008】
また、接触燃焼式ガスセンサでは、同じガス濃度であれば、検知素子から出力される電圧ができるだけ短時間で安定する方が好ましい。出力電圧の安定に要する時間が短いということは、応答速度が速いということである。応答速度を速くするには、焼結体内に熱源となるヒーター部が燃焼熱を効率よく受けて、抵抗値変化が効率よく起こるようにすればよい。
【0009】
しかし、上記特許文献1に開示されているガスセンサの場合、シリコン基板の同一面上に検知素子と補償素子があることから、全体の熱容量が大きくなり消費電力のロスが生じる。また、熱容量が大きいと触媒上で微量の検知対象ガスが燃焼したときに生じる燃焼熱がシリコン基板側に奪われてヒーターに伝達しにくくなるためガス感度の向上は望めない
。
【0010】
また、上記特許文献1に開示されているガスセンサの場合、シリコン基板とセンサ台座から構成されるため、構造体が大型化してレイアウトの自由度が制約される。シリコン基板とセンサ台座を組み合わせた構造は熱容量が大きくなる一因となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる接触燃焼式ガスセンサは、焼結体に接触したガスの燃焼により発生した燃焼熱によってヒーターの電気的な特性値が変化し、その特性値の変化に基づいて可燃性ガスの存在を検知するガスセンサであって、ヒーターを形成した絶縁体と基材がバンプを介して接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の接触燃焼式ガスセンサは、基材に貫通孔を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関わる接触燃焼式ガスセンサによれば、ヒーターを形成した絶縁体と基材とがバンプを介して接続されていることでヒーターは基材から独立しているため、燃焼触媒上で検知対象ガスが燃焼したときに生じる燃焼熱は熱損失を抑えながらヒーターに伝達できる。また、熱容量を低く抑えられるので低消費電力化することができる。
【0016】
また、絶縁体上の電極と基材上の電極とが向かい合って構成されることにより、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。また基材上に溜まった結露にさらされることを防ぐことができる。
【0017】
また、ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することで、センサが防爆構造を形成でき、触媒活性面にゴミや油分の付着を防ぐことができる。キャップは耐腐食性に優れた金属製の網、またはセラミックスで構成されることが好ましい。
【0018】
また、基材に貫通孔を設けることで、基材の両面から侵入する検知対象ガスを燃焼触媒が迅速に捉えることができる。また、ヒーターから発生する熱が基材を介して輻射熱として再度ヒーターに戻ることを防ぐことができる。これらは応答速度向上に貢献する。
【0019】
最終的に形成されるガスセンサは、熱容量を低く抑えられるため低消費電力化が可能となる。またガス感度と応答速度が向上する。また絶縁体を直接基材に実装できるので実装面積を小さくでき配線長を短くできるので電気特性がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明の接触燃焼式ガスセンサの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
図1の(a)は本発明の実施の形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの絶縁体の表面をあらわす。ここでは、ヒーター6と電極7が形成されている面を表面、その反対側の面を裏面として説明する。
【0022】
絶縁体1の表面側に、ヒーター6があり、抵抗長を稼ぐために蛇行した設計が好ましい。ヒーターの材料は温度特性が良好で経時変化が少ない白金もしくは白金合金が好ましい。
【0023】
ヒーター6の両端には電極7が形成されており、各々の電極7の上にはバンプ13が形成されている。バンプの材料は導電性の高い金や半田を選択するのが好ましい。
【0024】
図1の(a)におけるA−A'の断面図を(b)に示す。絶縁体1と絶縁基板2からなる構造体はダイヤフラム構造であり、熱容量を下げるためにヒーター6の下部は絶縁体1のみの薄膜構造で形成している。
【0025】
図1の(c)はヒーター6および燃焼触媒14を形成した絶縁体1と基材3とがバンプ13を介して接合したフリップチップ構造をあらわす。
【0026】
絶縁体1表面にある電極7と基材3表面にある電極15が向かい合わせとなっており、絶縁体の電極上にあったバンプ13が各々の電極に挟まれながら圧着、またはリフローによって接合されている。もしくは導電性接着剤を用いて接合してもよい。また、電極7と電極15とバンプ13を保護するためにこれらの周囲に樹脂接着剤であるアンダーフィル16が充填されている。
【0027】
図2は絶縁体の裏面をあらわしている。ダイヤフラム構造であるため絶縁基板2の中心部がくぼんだ形状をしており、絶縁体1が露出している。
【0028】
上記のフリップチップ構造の接触燃焼式ガスセンサ(実施例)および図13にあるような特許文献1の実施例を参照して組み立てた接触燃焼式ガスセンサ(比較例)において、検知対象ガスに対する応答性能を評価した。
【0029】
上記の実施例と比較例は、アルミナを主とした熱伝導層を形成した後、酸化スズおよび白金を主としたスラリー状の燃焼触媒材料を塗布して通電焼成を行い焼結体を形成して、接触燃焼式ガスセンサとして評価を行った。
【0030】
上記構成で検知対象ガスである水素、及びメタンガス4000ppmに対するガスセンサの出力信号の90%安定値への到達時間(以下、応答時間という)を評価した。
【0031】
応答時間評価の結果、検知対象ガスである水素、及びメタンに対して応答時間が短かったのは、実施例で、水素に対しては0.8秒、メタンに対しては1.6秒であった。比較例は、水素に対しては1.7秒、メタンに対しては2.7秒であった。実施例は水素とメタンにおいて比較例を上回る早い応答時間を示した。
【0032】
実施例の応答時間が比較例より短いのは、絶縁体の熱容量が小さく、微量の検知対象ガスが燃焼触媒表面に吸着したときに発生する燃焼熱が途中の熱損失を抑えながらヒーターに迅速に伝わるためである。
【0033】
製造方法について図1の(a)に示すA-A'の断面を基に説明する。
【0034】
図3に示すように、絶縁基板2にあたるシリコン基板の表面にシリコンの酸化膜、もしくはシリコンの窒化膜、もしくはこれらを組み合わせて多層化した絶縁体1を積層させる。
【0035】
図4に示すように、絶縁体1上にスパッタ法によって白金膜8を形成する。
【0036】
次に図5に示すように、フォトリソグラフィー法によりレジストパターンをマスクとしてドライエッチングによって白金膜の一部を取り除きヒーター6と電極7を形成する。
【0037】
次に図6に示すように、電極7上にバンプ13を形成する。バンプは金または半田材料のような、電極7と接合性のよい材料を選択することが好ましい。
【0038】
図7に示すように、絶縁基板2の裏面からドライエッチングにより絶縁基板2の一部を、絶縁体1が露出するまでエッチングをおこなう。絶縁基板2をエッチングして、絶縁体1のみを残すことによって、ガスセンサ全体の熱容量を下げることができるため低消費電力化に貢献する。
【0039】
図8に示すように、ヒーター6を覆うようにスラリー状にした燃焼触媒14を塗布して焼結させる。このとき、触媒材料の選択によって、検知素子と補償素子を自由に使い分けることができる。
【0040】
図9に示すように、あらかじめ貫通孔5を設けた基材3にあたるエポキシ基板上にある電極15と絶縁体上にある電極7が向かい合うように位置合わせを行い、バンプ13が電極7と電極15に挟まれる構成にする。このとき、圧接工法、または超音波接合、またはシリコンを含まない導電性樹脂接着工法により電極7と電極15はバンプ13を介して完全に接合される。また、基材3に貫通孔5が無くても本発明はガスセンサとして機能することができる。
【0041】
図10に示すように、バンプ13、電極7および電極15からなる接合部を保護するためにアンダーフィル16とよばれるシリコンを含まない樹脂接着剤を充填する。
【0042】
図11に示すように、検知素子18と補償素子19の2種類の素子を覆うように金属製の網または通気性のあるセラミックスからなるキャップ4とキャップ17を基材3の両面にかしめるか、シリコンを含まない樹脂接着剤で固定する。基材3に貫通孔5がない場合はキャップ4のみを設置すればよく、キャップ17を設ける必要はない。
【0043】
本実施例にある検知素子と補償素子とを直列に接続した第1の直列回路と、同じ抵抗値の2個の固定抵抗を直列に接続した第2の直列回路とを並列に接続してホイートストンブリッジ回路を構成し、その第1の直列回路と第2の直列回路の接続点間に直流電圧を印加し、検知素子と補償素子との接続点と2個の固定抵抗の接続点との間の電圧を検出信号として出力させる。固定抵抗を絶縁体表面に形成し、ワンチップ化したセンサの構成でもよく、または基材上に固定抵抗を接続しても良い。以上の製造工程により接触燃焼式ガスセンサが完成する。
【0044】
以上に於いて、本発明は、上述した実施の形態に限らず、種々変更可能である。例えば、ヒーター部の線幅、厚さ、長さ、絶縁体上のレイアウト等は適宜変更可能である。
【0045】
また、検知素子および補償素子の基材上のレイアウト等は適宜変更可能である。
【0046】
また、基材上の貫通孔の有無、形状、数量またはレイアウト等は適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの表側から見た平面図および断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサを示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる接触燃焼式ガスセンサの製造工程における断面図である。
【図12】従来の接触燃焼式ガスセンサを示す断面図である。
【図13】従来の接触燃焼式ガスセンサ素子の斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 絶縁体
2 絶縁基板
3 基材
4 キャップ
5 貫通孔
6 ヒーター
7 電極
8 白金膜
9 ヒーターコイル
10 燃焼触媒
11 熱伝導層
12 焼結体
13 バンプ
14 燃焼触媒
15 電極
16 アンダーフィル
17 キャップ
18 検知素子
19 補償素子
20 センサ台座
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体に接触したガスの燃焼により発生した燃焼熱によってヒーターの電気的な特性値が変化し、その特性値の変化に基づいて可燃性ガスの存在を検知する接触燃焼式ガスセンサであって、
前記ヒーターを形成した絶縁体と基材とがバンプを介して接続されている接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記絶縁体上の電極と前記基材上の電極とが向かい合って構成されることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項3】
前記ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項4】
前記基材に貫通孔を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項1】
焼結体に接触したガスの燃焼により発生した燃焼熱によってヒーターの電気的な特性値が変化し、その特性値の変化に基づいて可燃性ガスの存在を検知する接触燃焼式ガスセンサであって、
前記ヒーターを形成した絶縁体と基材とがバンプを介して接続されている接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記絶縁体上の電極と前記基材上の電極とが向かい合って構成されることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項3】
前記ヒーター全体を密封できる通気性をもったキャップを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項4】
前記基材に貫通孔を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−216543(P2009−216543A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60620(P2008−60620)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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