推力伝達材とそれを備える推進管
【課題】推進工法において推進管の間に介在させる推力伝達材であって、大きな応力、急激な応力集中、および複雑な応力が作用したときでも、推進管に破損が生じるのを効果的に回避できるようにした、よりクッション性能に優れた推力伝達材を得る。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂からなる発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材において、密度が0.17〜0.67g/cm3であり、平均気泡径が60μm以下とする。この推力伝達材は、応力−ひずみ曲線での弾塑性域が広い特性を有し、荷重の吸収性に優れる。それにより、大きな応力、急激な応力集中、および複雑な応力が作用したときでも、クッションとしての機能を発揮し、荷重を吸収して推進管の破損を防止する。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂からなる発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材において、密度が0.17〜0.67g/cm3であり、平均気泡径が60μm以下とする。この推力伝達材は、応力−ひずみ曲線での弾塑性域が広い特性を有し、荷重の吸収性に優れる。それにより、大きな応力、急激な応力集中、および複雑な応力が作用したときでも、クッションとしての機能を発揮し、荷重を吸収して推進管の破損を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法における推進管の間に使用する推力伝達材および該推力伝達材を備えた推進管に関する。
【背景技術】
【0002】
公共下水道工事など、地下に管を埋設する埋設工事の施工方法として、推進工法が広く採用されている。推進工法は、管を埋設する全体の範囲を開削せず、例えば、コンクリート製の管を順次地中に押し出していくことによって、管を地下に埋設する施工方法である。この管を以下、「推進管」という。
【0003】
推進工法による埋設工事の概要を、図20を参照して説明する。まず、推進管を埋設する始点と終点との位置に埋設する深さまでの立坑を掘削する。続いて、推進管の埋設を行う始点である発進立抗STHに設置された元押設備PFが、推進管の径に相当する掘進機DMを到達立抗ENHに向けて押し出すことによって、掘進機DMが地中を掘りながら推進する。このとき、元押設備PFによる押し出し量が最大の状態、例えば、元押設備PFによって掘進機DMが全て地中に押し込まれた状態となると、掘進機DMの後端に推進管HPpが押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPpを押し出すことによって、掘進機DMがさらに押し出される。その後、元押設備PFによる押し出し量が最大となると、推進管HPpの後端に次の推進管HPf1が押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPf1を押し出す。以降、元押設備PFによる押し出し量が最大となるたびに、推進管HPf1の後端に次の推進管HPf2以降が押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPf2以降を押し出すという工程を繰り返す。
【0004】
そして、掘進機DMが、推進管の埋設を行う終点である到達立抗ENHに到達したときには、掘進機DMの押し出しに使用していた推進管(図20においては推進管HPpおよび推進管HPf1〜3)が、掘進機DMの通った経路に残ることとなる。すなわち、推進管HPpおよび推進管HPf1〜3が掘進機DMの通った経路に埋設されたこととなる。最後に掘進機DMおよび元押設備PFを撤去し、発進立抗STHと到達立抗ENHとを埋め戻すことによって、推進管の埋設工事が完了する。
【0005】
この推進工法に使用される推進管には、材質としては、コンクリート製、レジンコンクリート製、陶製、鉄製のものが多く用いられる。そのため、元押設備が推進管を押し出す際に、推進管同士が接触すると、その接触している部分、例えば、図20における推進管HPpと推進管HPf1との端部に破損が起こる。この推進管の破損を防ぎ、かつ、推進管を推進するための推進力を伝達させるために、推力伝達材が推進管の端部に取り付けられている。
【0006】
また、図21に示すように、推進管の埋設工事においては、推進管を埋設する始点と終点とを直線では結べず、始点と終点との間に存在する障害物を回避しながら施工しなければならない状況があるため、始点と終点の全部または一部を曲線で結ぶ推進工法が採用されている。このような推進工法において、推進管に取り付けられた推力伝達材にかかる応力は、推進経路が直線である区間STでは全体に均一であるが、推進経路が曲線である区間CVでは全体に均一とはならず、推進経路が曲がる方向の応力がより強くなり、応力集中が生じてしまう。
【0007】
そのような推力伝達材としての好適な一例が、特許文献1に記載されている。この推力伝達材は、発泡ポリスチレン製であって0.3〜0.8の比重を有する板状の低倍発泡成形品である。この推力伝達材が好適である理由として、特許文献1には、一般に、推進管として使用されるヒューム管の限界圧縮応力は300〜1000kg/cm2(30〜100kN/m2)であり、推進工程で推力伝達材に加えられる応力は前記ヒューム管の限界圧縮応力の1/3が一般的であり、1/10〜1/3の範囲であることが好ましい。従って、推進管の推力伝達材としては限界圧縮応力が30〜300kg/cm2(3〜30kN/m2)であることが望ましく、そのような限界圧縮応力範囲の発泡ポリスチレンは比重が0.3〜0.8の範囲のものであると記載されている。また、このクッション材に押圧による応力がかかると初めは弾性変化し、その後の限界圧縮応力以上の力に対しては永久的な塑性変形をするので、推進施工の場合に生じる集中応力を自然に分散させることができると記載されている。
【0008】
また、このような板状体である低倍発泡成形品を成形するのに好適な発泡成形型が、特許文献2に記載されている。この発泡成形型は、図18に記載するように、平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが両マスターフレーム1a,1bの前面側にそれぞれ取り付けられている。片方のマスターフレーム1a側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟持されて成形品キャビティ4の側周を区画する成形開口3aを備えた、図19に示すようなアタッチメントプレート3が着脱可能に取り付けられる。そして、前記成形品キャビティ4は、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレート3に形成した成形開口3aの側周面3bとによって囲まれた空間として形成される。
【0009】
前記成形品キャビティ4には、一方のマスターフレーム1aに取り付けた蒸気吹き出しプレート2aの面内に原料吹き出し口を持つようにしてマスターフレーム1a側に配置した原料フィーダー5から、発泡性粒子が供給され、形締め後、蒸気吹き出しプレート2a,2bを通して成形品キャビティ4内に加熱蒸気を送り込む。それにより、発泡性粒子が発泡して低倍の発泡成形体が型内成形される。なお、図18において、6はエジェクターピン、8は補強サポートである。
【0010】
この発泡成形型では、形成品の形状や厚さに変更があっても、前記アタッチメントプレート3を交換するだけでそれに対処することができるので、変更に伴う経費および労力を軽減できると共に、交換部材であるアタッチメントプレート3の保管に要する手間およびスペースをも軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭61−8320号公報
【特許文献2】特開平8−25393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図22は、前記した特許文献1に記載されている、比重の異なる3種の推力伝達材の応力−変位(ひずみ)曲線であり、比重0.64および0.34のものは、限界圧縮応力が30〜300kg/cm2(3〜30kN/m2)であるので好ましく、比重0.13のものは限界圧縮応力が30kg/cm2(3kN/m2)以下に低下するので、推力伝達材自体の変形度合いが大きくなり、いわゆる底付き現象によってヒューム管を破損することが生じるので好ましくない、としている。
【0013】
従来、推進工法を用いて推進管を地中に埋設するにあたり、障害物を回避するために、埋設する経路が全体として大きく曲がっている場合には、推進管および推力伝達材にかかる応力および応力集中をなるべく緩和する目的で、経路に多数の立坑を掘削していた。立坑を多くすることで、立坑(発進立坑)と立坑(到達立坑)との距離を短くし、その間を直線または緩い曲線で結び、多数の立坑を略多角形の頂点として経路全体を大きく曲げることが行われていた。
【0014】
しかし、立坑を掘削する用地が限られていたり、掘削費用を抑えるために立坑を減らすことが要望されるようになり、推進工法は長距離化、急な曲線化が求められるようになっている。また、立坑を深く掘削することなく障害物を回避するために、推進方向に対して左右方向のみならず、上下方向にも曲線化することが要望されつつある。
【0015】
推進工法の長距離化は、推進管と周囲の土砂との摩擦抵抗が増えるので、推進させるためにより大きな力で押し出す必要があり、推進管および推力伝達材に大きな応力がかかる。また、急な曲線化は、推進管および推力伝達材に急激な応力集中を生じさせる。さらに、上下左右方向の曲線化は、推進管および推力伝達材に複雑な応力がかかることとなる。
【0016】
推進工法の長距離化、急な曲線化および上下左右方向の曲線化により、推進管に過剰な応力が作用し推進管を破壊する恐れがあり、解決することが求められている。
【0017】
本発明は、上記の要請に答えるものであり、大きな応力、急激な応力集中および複雑な応力が作用したときでも、推進管に破損が生じるのを効果的に回避できるようにした、よりクッション性能に優れた推力伝達材を提供することを第1の課題とする。また、推進工法の推進管であって、よりクッション性能に優れた推力伝達材を備えた推進管を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、発泡樹脂成形体の場合、図23に応力−ひずみ曲線を示すように、弾性域と塑性域との間に、弾塑性域があることに注目した。弾塑性域は、気泡の破壊が部分的に進行している段階であり、この領域では、一部塑性変形しながらも弾性体としての性質を依然として有している。上記した推力伝達材の場合、荷重域が塑性域に達すると、推力伝達材は弾性体としての機能を喪失しクッション性がなくなり、荷重が直接推進管に伝わるようになる。そのために、推進管に過剰な応力が作用し、推進管に破損が生じやすい。しかし、推力伝達材は、弾塑性域では、作用する荷重により一部は塑性変形しながら当該荷重を吸収するとともに、前記のように依然として弾性体としての性質も備えており、所望のクッション性能を有することから、それが弾塑性域内である限りは、推進管に破損が生じない。
【0019】
従って、同じ比重(密度)である発泡樹脂製の推力伝達材の場合であっても、弾塑性域の範囲が広い、換言すれば、図23における応力−ひずみ曲線での弾塑性域の傾きが小さいほど、推力伝達材として優れたクッション性能を発揮することができる。
【0020】
この観点から、特許文献1に記載されている、図22に示す比重0.64および0.34の推力伝達材を考察すると、応力−ひずみ曲線において、弾性域から塑性域までの間である弾塑性域の範囲が狭く、過剰な加重が作用した場合に、推力伝達材がそれを十分に吸収できないことが起こり得る。すなわち、より広い範囲で優れたクッション性能を得るという観点からは、なお改善すべき点が残っている。
【0021】
本発明者らは、上記の観点からさらに多くの実験と研究を行うことにより、発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材において、密度と平均気泡径とを特定の範囲とすることにより、前記した弾塑性域の広い発泡樹脂製の推力伝達材が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0022】
すなわち、本発明による推力伝達材は、発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材であって、密度が0.17〜0.67g/cm3、であり、平均気泡径が60μm以下である推力伝達材であることを特徴とする。
【0023】
なお、密度は、好ましくは、0.20〜0.60g/cm3の範囲であり、より好ましくは、0.33〜0.60g/cm3の範囲である。また、平均気泡径は、好ましくは、20〜60μmであり、より好ましくは、30〜50μmである。
【0024】
後に記載する実施例に示すように、本発明による推力伝達材において、密度が0.17g/cm3未満であると、弾塑性域の範囲が小さく、推力伝達材としてのクッション性能が劣る。また、密度が0.67g/cm3超えると、発泡倍率が小さすぎて弾性力が不足し、やはり推力伝達材としてのクッション性能が劣るようになる。また、平均気泡径が60μmを超えると、弾塑性域での応力−ひずみ曲線の傾きが大きく、範囲も狭くなるため、ひずみ量が増えると応力の上昇が大きくなり、すなわち荷重を吸収する能力が低下し、推力伝達材としてのクッション性能が低下する。平均気泡径の下限に制限はないが、あまりに小さな気泡径では連続気泡率が大きくなり推力伝達材の強度が低下する恐れがある。従って、平均気泡径の下限値は、好ましくは20μm以上である。
【0025】
本発明による推力伝達材において、好ましくは、融着率は70%以上、より好ましくは75%以上である。融着率は70%以上であると、発泡粒同士が強固に融着されているため、推力伝達材の強度が大きくなるので好ましい。融着率が70%未満の場合には、発泡粒同士の接合力が弱くなって、小さい応力で推力伝達材の破壊が生じやすくなるので好ましくない。
【0026】
本発明による推力伝達材において、成形型内で発泡させる発泡性粒子は、ポリスチレン系樹脂の発泡性粒子であることが望ましいが、他に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のような樹脂からなる発泡性粒子であってもよい。いずれの場合も、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子であることが望ましい。
【0027】
本発明による推力伝達材において、平均気泡径を所定の範囲とするには、予備発泡させる前の発泡性粒子の熟成期間を長くする、および/または、発泡性粒子を製造するときに気泡調整剤を適量添加することで行うことができる。気泡調整剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を例示することができる。
【0028】
本発明による推進管は、上記した推力伝達材を先端およびまたは後端に備えることを特徴とする。推進管としては、コンクリート製のヒューム管や、ボックスカルバート、樹脂コンクリート製または樹脂製の樹脂管、鉄製のダクタイル管などが挙げられる。代表的なものとしては、コンクリート製のヒューム管が挙げられる。
【0029】
本発明による推力伝達材は、任意の発泡成形型を用いて発泡成形することができる。一例として、前記特許文献2に記載される構成のアタッチメントプレートを備えた発泡成形型が挙げられる。
【0030】
さらに、前記発泡成形型を改良した第1形態の発泡成形型として、平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、前記両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレートに形成した前記成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、前記蒸気吹き出しプレートの少なくとも前記成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する補強サポートとして、前記蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備える発泡成形型を用いることができる。
【0031】
上記の発泡成形型の一態様では、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置している形態を持つ。また、他の態様では、前記板状の補強サポートは前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成されている形態を持つ。
【0032】
上記第1形態の発泡成形型は、蒸気吹き出しプレートの少なくとも成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する補強サポートとして、従来のように、円柱状または円筒状の補強サポートではなく、蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備える。それにより、円柱状または円筒状の補強サポートの場合と比較して、より広い面積で、蒸気吹き出しプレートの成形品キャビティに対向する領域を背面側を支持することができ、発泡圧の分散を図ることができる。それにより、蒸気吹き出しプレートの変形は抑制され、結果として発泡成形型の変形が抑制される。
【0033】
円柱状または円筒状の補強サポートの本数を増やすことによっても、接触面が線状をなす板状の補強サポートの場合と同じ支持面積を得ることができる。しかし、多数本の円柱状または円筒状の補強サポートを蒸気吹き出しプレートとマスターフレームの間に配置することは、型作成上きわめて困難である。上記第1形態の発泡成形型では、板状の補強サポートを配置するようにしており、比較して、型作成は容易である。
【0034】
前記第1形態の発泡成形型において、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置している場合には、発泡圧を一層分散した状態で背面から支持することが可能となる。
【0035】
前記第1形態の発泡成形型において、前記板状の補強サポートは、少なくとも蒸気吹き出しプレートが成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置するように設けられれば、所期の目的を達成することができる。蒸気吹き出しプレートの他の領域には、従来と同様の円柱状または円筒状の補強サポートを必要本数だけ配置するようにしてもよい。しかし、前記板状の補強サポートを、前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成することは、設計の容易性から好ましい。
【0036】
前記第1形態の発泡成形型において、前記アタッチメントプレートをマスターフレームに取り付けたときに該マスターフレームから外側に突出する突出領域を有した形状のアタッチメントプレートを用いることもできる。その態様では、前記突出領域にクレーンやジャッキ等のフックを引っ掛けて、アタッチメントプレートを吊り下げた状態とし、その状態で、アタッチメントプレートの運搬やマスターフレームへの取り付けを行うことができる利点がある。
【0037】
本発明による推力伝達材を発泡成形するのに好適な第2形態の発泡成形型は、平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、アタッチメントプレートに形成した成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、前記いずれか一方のマスターフレームには複数本の原料フィーダーが前記蒸気吹き出しプレート面内に原料吹き出し口を持つようにして取り付けられており、前記アタッチメントプレートは2枚以上の着脱可能なアタッチメントプレート群で構成されていて、そのうちの少なくとも1枚のアタッチメントプレートは面内に2個以上の成形開口を形成しており、かつ、前記アタッチメントプレート群のいずれを選択してマスターフレームに取り付けたときであっても、形成される前記成形品キャビティのすべてに前記いずれかの原料フィーダーから原料を供給されるように、蒸気吹き出しプレート面内での原料吹き出し口の位置決めがなされているか、または、各アタッチメントプレートの面内での前記成形開口の位置決めがされていることを特徴とする。
【0038】
上記第2形態の発泡成形型は、複数本の原料フィーダーを備えている。また、交換しながら用いるアタッチメントプレート群には、面内に2個以上の成形開口を形成したアタッチメントプレートが含まれる。そして、2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレートを選択したときでも、そこに形成される2個以上の成形品キャビティのすべてには、それぞれに対応する原料フィーダーから、発泡性粒子である原料が供給される。それにより、2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレーを選択した場合には、一回の成形処理で2個以上の発泡成形品を同時に得ることができる。それにより、生産性が向上する。
【0039】
2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレートを選択して使用するときに、前記成形開口の形成位置によっては、蒸気吹き出しプレート面内に形成された複数個ある原料吹き出し口のいずれかが、当該アタッチメントプレートの前記成形開口が形成されていない面内に位置することも起こり得る。その場合、その原料吹き出し口はアタッチメントプレートの成形開口でない領域でもって閉鎖されるので、格別の問題は生じない。しかし、成形処理の容易性と原料の無駄を無くす観点から、各原料フィーダーには、原料吹き出し口よりも上流の位置に原料の供給を停止できるシャッターのような閉鎖手段を設けることが好ましい。
【0040】
上記第2形態の発泡成形型の一態様では、前記アタッチメントプレート群を構成する各アタッチメントプレートに形成される成形開口は扇形をなしており、前記扇形をなす成形開口のほぼ中央に前記原料吹き出し口が位置するように、蒸気吹き出しプレート面内での原料吹き出し口の位置決めがなされているか、または、前記アタッチメントプレート面内での前記成形開口の位置決めがなされている。
【0041】
この態様では、1個の原料吹き出し口から吹き出す原料を、前記成形開口が形成する成形品キャビティの全域に、実質的に均一にかつ短時間で供給することが可能となる。従って、原料供給系を簡素化しながら、良品の推力伝達材を型内成形することができる。
【0042】
上記第2形態の発泡成形型の一態様では、発泡成形型は、さらに、複数本のエジェクターピンを有し、前記エジェクターピンは、前記アタッチメントプレート群のいずれを選択してマスターフレームに取り付けたときであっても、そこに形成される前記成形品キャビティ内にそのいずれかが入り込むことができるように、前記蒸気吹き出しプレート面内での位置決めがなされている。上記の形態において、さらに好ましくは、前記エジェクターピンは前記原料フィーダー内に備えられている。
【0043】
このようにしてエジェクターピンを設けることにより、いずれのアタッチメントプレートを選択した場合でも、アタッチメントプレートからの発泡成形品の脱型は容易となる。特に、エジェクターピンを前記原料フィーダー内に備えるようにする場合には、前記したマスターフレーム内に存在する部品数を少なくすることができ、成形品キャビティ内へ部分的に偏りのない状態で加熱蒸気を供給できるようになる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、推進工法における推進管の間に使用する推力伝達材において、同じ密度の推力伝達材であっても、従来の同種の推力伝達材と比較して、よりクッション性能に優れた推力伝達材が提供される。また、推進工法の推進管であって、よりクッション性能に優れた推力伝達材を備えた推進管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による推力伝達材(実施例)と比較例の推力伝達材とにおける応力−ひずみ曲線を示すグラフ。
【図2】実施例による推力伝達材の気泡を示す電子顕微鏡写真であり、図2(a)は実施例1,図2(b)は実施例2,図2(c)は実施例3,図2(d)は実施例4の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明による推力伝達材を製造するのに好適に発泡成形型である第1形態の発泡成形型の一実施の形態を示す断面図。
【図4】第1形態の発泡成形型におけるアタッチメントプレートの取り付け部付近の拡大断面図。
【図5】第1形態の発泡成形型におけるマスターフレームの一例を両蒸気吹き出しプレート取り付け側から見た平面図。
【図6】マスターフレームの他の例を示す図4に相当する図。
【図7】マスターフレームのさらに他の例を示す図3に相当する図。
【図8】アタッチメントプレートの幾つかの例を示す斜視図。
【図9】本発明による推力伝達材を製造するのに好適に発泡成形型である第2形態の発泡成形型の一実施の形態を示す断面図。
【図10】第2形態の発泡成形型におけるアタッチメントプレートの取り付け部付近の拡大断面図。
【図11】第2形態の発泡成形型における蒸気吹き出しプレートの一例を示す平面図。ただし、蒸気吹き出し口は図示を省略している。
【図12】アタッチメントプレートの一例を示す斜視図。
【図13】図12に示すアタッチメントプレートを図3に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図14】アタッチメントプレートの他の例を示す斜視図。
【図15】図14に示すアタッチメントプレートを図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図16】アタッチメントプレートのさらに他の例を図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図17】アタッチメントプレートのさらに他の例を図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図18】従来知られた発泡成形型を説明するための断面図。
【図19】図18に示す発泡成形型とともに用いられるアタッチメントプレートを説明するための斜視図。
【図20】推進工法による埋設工事の概要を説明する図。
【図21】推進工法における推進管の配置の一例を示す図。
【図22】特許文献1に記載されている比重の異なる3種の推力伝達材の応力−変位(ひずみ)曲線を示す図。
【図23】発泡樹脂成形体における応力−ひずみ曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[推力伝達材]
最初に、本発明による推力伝達材の具体例をその製造方法とともに説明する。発泡性粒子として、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を用い、適宜の発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し、密度が0.17〜0.67g/cm3の推力伝達材である推力伝達材を型内発泡成形する。
【0047】
一例として、前記低倍発泡粒子として、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものを用いる。
【0048】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のベースとなるポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でもよいし、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用してもよい。好ましいポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体である。
【0049】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
【0050】
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素などの1種または2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0051】
また分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウムなどの無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤が挙げられる。
前記発泡剤は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、300μm〜2500μmの範囲内であり、好ましくは650μm〜2500μmの範囲内であり、より好ましくは800μm〜2000μmの範囲内である。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲未満であると、該樹脂粒子を基に作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、あるいはそれを低倍予備発泡して得られた低倍発泡粒子を、成形機のキャビティ内に充填し、型内発泡成形して推力伝達材を製造する際に、粒子同士の間隔が狭くなって加熱用水蒸気が均一に行き渡らず、得られる発泡成形体の融着率が不均一となって、十分な強度を有する推力伝達材が得られなくなる恐れがある。一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲を超えると、一粒質量が大きくなって、該粒子をキャビティ内に搬送したり、均一に充填することが難しくなる。また、複雑形状の発泡成形体の製造には不向きとなる。
【0053】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、該樹脂粒子の発泡性や得られる発泡成形品の機械強度に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、気泡調整剤、発泡助剤、滑剤、収縮防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、無機気泡核剤、無機充填剤等の各種添加剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤が挙げられる。
【0054】
前記した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、従来周知の各種の発泡樹脂粒子製造方法を用いて製造することができる。それらの方法の中でも、懸濁重合法、押出-水中カット法が好ましい。
【0055】
前記低倍発泡粒子は、前記発泡性樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものである。嵩発泡倍数の範囲は2.0〜10倍が好ましく、2.0〜5倍がより好ましい。
【0056】
低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲未満であると、嵩発泡倍数のばらつきが大きくなり均一な粒子が得られない。一方、低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲を超えると、十分な強度と長期耐久性に優れた推力伝達材が得られない。
【0057】
前記低倍発泡粒子は、前記発泡性樹脂粒子を加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものなので、曲げ強度や圧縮強度に優れた推力伝達材を製造するために用いることができる。
【0058】
本発明に係る推力伝達材は、前記発泡性樹脂粒子(未発泡粒子)または前記低倍発泡粒子(嵩発泡倍数が2.0〜20倍)を、適宜の発泡成形型によって形成される所望の成形形状に合致した成形品キャビティ内に充填し、型内発泡成形して得られる密度が0.17〜0.67g/cm3、であり、平均気泡径が60μm以下のものである。
【0059】
本発明の推力伝達材は、前記発泡性樹脂粒子または低倍発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、発泡粒子同士の融着率と伸びが良好となり、曲げ強度や圧縮強度に優れており、高強度、長期耐久性が要求されるコンクリート推進管用推力伝達材のみでなく、他の土木用の分野、床下地材などの建材用の分野等に適用することもできる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例と比較例を示す。なお、実施例1〜4と比較例1〜5での各測定項目等は、以下のとおりである。また、実施例1〜4、比較例1〜5の各測定項目等および結果を表1に示すとともに、それらの応力−ひずみ曲線を図1に示した。さらに、実施例1〜4の発泡成形体の切断面による電子顕微鏡写真を図2(a)〜(d)に示した。
【0061】
<嵩密度>
予備発泡粒子の「嵩密度」は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、500cm3のメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に予備発泡粒子を500cm3の目盛りに水平になるように充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
【0062】
嵩密度(g/cm3)=W(g)/500(cm3)
【0063】
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の「嵩発泡倍数」は、前記嵩密度の逆数(1/嵩密度)であり、ポリスチレン系樹脂の場合には、嵩密度0.33g/cm3の予備発泡粒子は嵩発泡倍数3倍、嵩密度0.2g/cm3の予備発泡粒子は嵩発泡倍数5倍となる。
【0064】
<密度>
発泡成形体の「密度」は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。即ち、50cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量(g)を測定し、次式により算出する。
【0065】
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
【0066】
<発泡倍数>
発泡成形体の「発泡倍数」は、前記密度の逆数(1/密度)であり、ポリスチレン系樹脂の場合には、密度0.33g/cm3の発泡成形体は発泡倍数3倍、密度0.2g/cm3の発泡成形体は発泡倍数5倍となる。
【0067】
<平均気泡径>
平均気泡径(μm)はASTM D−2842−69に準拠して測定した。
【0068】
装置は、走査型電子顕微鏡 S−3000N((株)日立製作所製)を用いた。発泡成形体の切断面を電子顕微鏡にて写真撮影し、その写真の一直線(60mm)上にかかる気泡数から平均弦長tを測定し、この測定値を用いて平均気泡径を算出した。
【0069】
平均弦長t(μm)=1000×60/(気泡数×撮影倍数)
平均気泡径(μm)=t/0.616
【0070】
<融着率>
発泡成形体における任意の表面にカッターナイフを用いて深さ1mmの切込み線を形成し、この切込み線に沿って発泡成形体を手またはハンマーで二分割する。
【0071】
しかる後、発泡成形体の破断面に露出した任意の100〜150個の発泡粒子において、発泡粒子内において破断している粒子数(a)と、発泡粒子同士の熱融着界面において破断している粒子数(b)を数え、下記式に基づいて発泡成形体の融着率を算出する。
【0072】
発泡成形体の融着率(%)=100×粒子数(a)/(粒子数(a)+粒子数(b))
融着率は、70%以上を合格、70%未満を不合格とした。
【0073】
<応力−ひずみ曲線>
発泡成形体から厚さ10mm×幅50mm×長さ50mmの試験体を切断採取する。
JIS K7220:2006「発泡プラスチック−硬質材料の圧縮試験」により、10%変形時における荷重を求め、圧縮応力を算出するとともに、荷重100kNまで載荷を行い、圧縮応力−変形量曲線を求めた。なお、試験には、定速型万能試験機(ロードセル容量:100kN)を、変形量の測定には変位計(1000×10−6/mm、0.1%RO)を用い、載荷速度は0.2mm/minとした。
【0074】
[実施例1]
100リットルの反応器に純水44kg、第三リン酸カルシウム800g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7gを入れ撹拌を行いながら、スチレン42kgにベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート8gを溶解して加えた。反応器を密閉し90℃に昇温し、5時間反応を行なった後125℃に1時間かけて昇温し、1時間後に冷却を始め常温まで冷却した。得られたスラリーを脱水乾燥し、篩分けして平均粒子径1400μmのポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0075】
次に、5リットルの反応器に純水1.5kg、前記の方法により得たポリスチレン系樹脂粒子(平均粒子径1400μm、重量平均分子量が約30万、残存モノマーが約2000ppm)2.0kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2g、ピロリン酸マグネシウム7.0gを加えて撹拌し懸濁させた。次いであらかじめ用意した純水0.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1gにトルエン9.5gをホモミキサーで撹拌して懸濁液を調整し、反応器に仕込んだ。次に、常温で反応器内にペンタン25g、気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウム0.2g、ブタン18gを圧入し、120℃に昇温し、5時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0076】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0077】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、後に図9〜図17に基づき説明する発泡成形型(ただし、発泡成形型を図5に示すサポートで補強した)に、図15に示したアタッチメントプレート20bを取り付けて形成された4個の成形品キャビティ(下縁と上縁との間の距離260mm,扇型の開き角度90度、厚み15mm)に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.59g/cm3、発泡倍数1.7倍の4個の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0078】
[実施例2]
実施例1と同様にして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0079】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0080】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0081】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0082】
[実施例3]
実施例1と同様にして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0083】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0084】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.20g/cm3、嵩発泡倍数5倍に予備発泡した。
【0085】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.20g/cm3、発泡倍数5倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0086】
[実施例4]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0087】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、12℃の雰囲気温度で、7日間熟成させた。
【0088】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0089】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0090】
[比較例1]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0091】
実施例1と同様にして、密度0.59g/cm3、発泡倍数1.7倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0092】
[比較例2]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0093】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0094】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0095】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0096】
[比較例3]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0097】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0098】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.20g/cm3、嵩発泡倍数5倍に予備発泡した。
【0099】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.20g/cm3、発泡倍数5倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0100】
[比較例4]
実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0101】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0102】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.14g/cm3、嵩発泡倍数7倍に予備発泡した。
【0103】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.14g/cm3、発泡倍数7倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
[比較例5]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得、それを、15℃の雰囲気温度で、7日間熟成させた。
【0104】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0105】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
[評価]
(1)実施例1および比較例1で得られた発泡成形体は、双方とも密度が0.59g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が20kN/m2程度と高い値であって、双方とも、高負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。しかし、実施例1の発泡成形体は、比較例1に比べ弾塑性域の傾きが小さく、範囲も広い。すなわち、ひずみ量が増えても応力の上昇が少なく、大きな荷重が作用したときに、比較例1と比較して、より大きく荷重を吸収できることがわかる。この差異は、気泡調整材の添加量の違いによって生じた平均気泡径の違い(実施例1が34μmに対して、比較例1は75μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例1の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例1の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、推力伝達材としてのクッション性能に優れたものであるといえる。
【0108】
(2)実施例2と4および比較例2と5で得られた発泡成形体は、いずれも密度が0.33g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が10kN/m2前後の値であって、双方とも、中負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。この場合も、実施例2と4の発泡成形体は、比較例2と5に比べ弾塑性域の傾きが小さく、範囲も広い。従って、実施例2と4の発泡成形体は、比較例2と5と比較して、より大きく荷重を吸収できることがわかる。この差異は、やはり、気泡調整材の添加量の違いによって生じた、または養生日数の違いによって生じた、平均気泡径の違い(実施例2と4が38μmに対して、比較例2と5は79μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例2と4の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例2と5の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、中負荷推進管に用いる推力伝達材として優れたクッション性能に示しているものといえる。
【0109】
なお、実施例2は気泡調整材を0.2g添加することで38μmの平均気泡径を得ており、実施例4では、発泡性粒子の熟成期間を7日と2日と比較して長くすることで38μmの平均気泡径を得ている。このことは、本発明による推力伝達材において、平均気泡径が60μm以下とする手法は限定されないことを示している。
【0110】
(3)実施例3および比較例3で得られた発泡成形体は、いずれも密度が0.20g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が5kN/m2以下の値であって、双方とも、低負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。ここでは、実施例3の発泡成形体は、比較例3に比べ弾塑性域の範囲はほぼ同じであるが、その傾きが小さい。従って、実施例3の発泡成形体は、比較例3と比較して、より大きく荷重を吸収できる。この差異は、やはり、気泡調整材の添加量の違いによって生じた平均気泡径の違い(実施例3が50μmに対して、比較例3は61μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例3の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例3の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、低負荷推進管で使用する推力伝達材として優れたクッション性能を示しているといえる。
【0111】
(4)比較例4の発泡成形体は、密度が0.14g/cm3と小さく、また平均気泡径も61μmと大きい。そのことから、限界圧縮応力3kN/m2程度と低い値であり、推進管用と共に用いる推力伝達材の材料としては、適切でない。
【0112】
[発泡成形型]
次に、前記した推力伝達材を成形するのに好適な発泡成形型を、図面を参照しながら説明する。なお、先に、図18を参照して、従来知られた発泡成形型を説明したが、当該発泡成形型におけると同じ部材には、以下の説明でも、同じ符号を付している。
【0113】
[第1形態の発泡成形型]
図3〜図8を参照して、第1形態の発泡成形型1の一実施の形態を説明する。第1形態の発泡成形型1は、図3に示すように、固定側および移動側のマスターフレーム1a,1b、原料フィーダー5、エジェクターピン6、背面プレート7a,7b、シール材9を備える。そして、各マスターフレーム1a,1bの一側面には、蒸気供給口15が設けられ、そこからマスターフレーム1a,1b内の全域にわたり、過熱水蒸気が供給される。
【0114】
マスターフレーム1a,1bの前面側(成形品キャビティ4側)には、それぞれ平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが取り付けられている。この蒸気吹き出しプレート2a,2bは、従来のキャビティ金型やコア金型と同様に蒸気透過性を有するもので、図4に示されるように、コアベント10が打ち込まれたベント孔11を備えている。
【0115】
上記蒸気吹き出しプレート2a,2bは、各マスターフレーム1a,1bの前面側A,Bを覆うようにして、固定用ネジ12によって、マスターフレーム1a,1bに取り付けられており、これによって両蒸気吹き出しプレート2a,2bの前面側はそれぞれ一平面となっている。
【0116】
固定側のマスターフレーム1aには、アタッチメントプレート20が、固定用ネジ13によって、着脱可能に取り付けられる。このアタッチメントプレート20は、図8(a)に一例を示すように、全体として表裏面が平坦面である矩形状の板状材であり、一部に閉じた側周面21で区画される成形開口22を有している。後記するように、この成形開口22が成形品キャビティ4として機能する。なお、図8(a)において、25はマスターフレーム1aに取り付け時に利用されるネジ穴である。
【0117】
前記アタッチメントプレート20は、図3に示すように、マスターフレーム1aに取り付けられた後、図4に示すように型締めすることによって、両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟まれた姿勢となる。そして、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側A,Bと、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22の側周面21とによって区画された空間が、成形品キャビティ4を構成する。
【0118】
各マスターフレーム1a,1bには、前記蒸気吹き出しプレート2a,2bと背面プレート7a,7bとの間に位置するようにして、補強サポート40が設けられる。前記補強サポート40は、型締めしたときに、少なくとも、蒸気吹き出しプレート2a,2bが前記成形品キャビティ4に対向することとなる領域の背面側と接する部分の形状が、所定幅である線状をなす板状の補強サポートである。
【0119】
図3および図5に示す例において、前記補強サポート40は、幅20mm程度のアルミ合金等からなる板状部材であり、前記マスターフレーム1a,1bの全幅にわたるようにして、150〜200mm程度の間隔をおいて、複数枚(図示の例では5枚)が配置されている。なお、図5で、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22によって形成される成形品キャビティ4を点線で示しており、40aで示す部分が、補強サポート40における、蒸気吹き出しプレート2a,2bの成形品キャビティ4に対向する領域の背面側に位置する部分となる。
【0120】
図6は、前記補強サポート40の他の例を示しており、この例で、補強サポート40はマスターフレーム1a,1bの全幅にはわたってなく、蒸気吹き出しプレート2a,2bが成形品キャビティ1a,1bに対向する領域よりも少し長い長さの板状の補強サポートとされている。そして、蒸気吹き出しプレート2a,2bの他の領域と背面プレート7a,7bとの間には、従来の発泡成形型の場合と同様、円柱状または円筒状の補強サポート8が配置される。
【0121】
図7は、前記補強サポート40のさらに他の例を示しており、ここでは、図5に示した補強サポート40と同様であるが、適数の蒸気通過口42がさらに形成されている。
【0122】
必須の構成ではないが、前記したアタッチメントプレート20は、図3に示すように、マスターフレーム1aに固定した状態で、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23を有しており、前記突出領域23には、貫通孔24が形成されている。また、マスターフレーム1aの下端部には、前記アタッチメントプレート20の下端部を支持するための支持体13が形成されている。
【0123】
上記の第1形態に係る発泡成形型1では、図3に示すように、型を開いて、適宜形状の成形開口22を備えたアタッチメントプレート20をマスターフレーム1aに取り付け、図4に示すように型締めをする。それにより、成形品キャビティ4が形成される。原料フィーダー5から、発泡性樹脂粒子を成形品キャビティ4内に充填し、蒸気供給口15から過熱水蒸気を供給する。供給された過熱水蒸気は、マスターフレーム1a、1bから、蒸気吹き出しプレート2a,2bに形成したベント孔11を通って、成形品キャビティ4内に入り、発泡性樹脂粒子を所要に発泡させる。
【0124】
発泡により発泡圧が発生する。特に、前記した推力伝達材のような低倍発泡成形品を成形する場合には、大きな発泡圧が成形品キャビティ4内に形成される。しかし、上記したように、発泡成形型1では、蒸気吹き出しプレート2a,2bの少なくとも前記成形品キャビティ4に対向する領域の背面側と、背面プレート7a,7bとの間に、前記したように、蒸気吹き出しプレート2a,2bの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート40が設けられている。そのために、成形品キャビティ4内に形成される発泡圧を広い面積で受けることができ、それにより、蒸気吹き出しプレート2a,2bが変形するのを効果的に抑制することができる。結果として発泡成形型1の変形が抑制される。
【0125】
なお、上記した本発明による低倍発泡成形体である推力伝達材を成形するに当たっては、例えば特公平5−87364号公報に記載されるような、定量加圧充填方式を採用することは好ましい。それにより、発泡性粒子あるいは予備発泡粒子の均一な充填が可能となり、製品の部位による応力バラツキをなくすことができる。さらに、型締めの後に、発泡成形が終わるまで型締め圧力を継続することで型の開きをなくすことができ、均一な厚みの製品を得ることができる。
【0126】
また、上記の発泡成形型1では、アタッチメントプレート20を交換するだけで、異なる形状または厚みの成形品を成形することができる。すなわち、アタッチメントプレート20を、図8(a)(b)(c)に示すように、その成形開口22の形や形状の異なるもの、あるいは厚みの異なるものと交換することで、形状や厚みの異なる成形品を成形することができる。なお、図8(b)(c)に示すアタッチメントプレート20は、全体形状は図8(a)に示したアタッチメントプレート20と同じであるが、図8(b)に示す例では、比較して小型の成形開口22aが4個形成されており、図8(c)に示す例では比較して幅は狭いがほぼ180度まで広がった扇型の成形開口22bが2個形成されている。
【0127】
また、図示のアタッチメントプレート20のように、マスターフレーム1aに取り付けたときに、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23をアタッチメントプレート20が有する場合には、そこを利用し、そこに、クレーン(不図示)等の作業機器に接続するフック30を引っ掛けておくことにより、アタッチメントプレート20を移動運搬が容易になり、また、マスターフレーム1aに対する着脱操作も容易となる。
【0128】
なお、上記の例では、アタッチメントプレート20は固定側のマスターフレーム1a側に取り付けられているが、エジェクターピン7が移動側から固定側へ突き出される場合には、移動側のマスターフレーム1bに取り付けることもできる。
【0129】
[第2形態の発泡成形型]
次に図9〜図17を参照して、第2形態の発泡成形型100の一実施の形態を説明する。第2形態の発泡成形型100は、先に図18に基づき説明した発泡成形型とほぼ同じものであるが、一方のマスターフレームに、図示のものでは固定側のマスターフレーム1aに、複数本(以下に説明するものでは、9本)の原料フィーダー5が取り付けられている点で、基本的に構成上の違いがある。
【0130】
図9および図10に示すように、発泡成形型100は、第1形態の発泡成形型1と同様に、固定側および移動側のマスターフレーム1a,1bを有し、それぞれの前面側(成形品キャビティ4側)に平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが取り付けられている。この蒸気吹き出しプレート2a,2bは、従来のキャビティ金型やコア金型と同様に蒸気透過性を有するもので、図10に示されるように、コアベント10が打ち込まれたベント孔11を備えている。なお、図9において、6はエジェクターピン、8は補強サポートである。後に説明するように、前記エジェクターピン6は、マスターフレーム1aに複数本取り付けられるが、図示の複雑さを回避する目的で、図9には1本のエジェクターピン6のみを示している。なお、特に図示しないが、第2形態の発泡成形型100においても、円柱状または円筒状の補強サポートの補強サポート8に代えて、第1形態の発泡成形型1で用いた、蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート40を用いることもできる。
【0131】
図10に示すように、上記蒸気吹き出しプレート2a,2bは、マスターフレーム1a,1bの前面側A,Bを覆うようにして、固定用ネジ12によって、マスターフレーム1a,1bに取り付けられており、これによって両蒸気吹き出しプレート2a,2bの前面側はそれぞれ一平面となっている。なお、図10において、9は、各部材間をシールするためのパッキン材である。
【0132】
固定側のマスターフレーム1aには、9本の原料フィーダー5a〜5iが、その原料吹き出し口を前記蒸気吹き出しプレート2aの面内に位置するようにして取り付けてある。図9には、その中の3本の原料フィーダー5d〜5fが示されており、図11は、蒸気吹き出しプレート2aの面内において、9本の原料フィーダー5a〜5iのそれぞれの原料吹き出し口が位置する状態を示している。図示のように、9本の原料フィーダー5a〜5iは、縦方向および横方向に所定の距離を置くようにして、固定側のマスターフレーム1a側に取り付けられている。
【0133】
なお、図11において、14は、蒸気吹き出しプレート2aを固定側マスターフレーム1a側に取り付けるときに、前記固定用ネジ12が通過する開口である。また、図11では、蒸気吹き出しプレート2aにおける図10に示したコアベント10およびベント孔11は、図示が省略されている。
【0134】
固定側のマスターフレーム1aには、アタッチメントプレート20が、固定用ネジ13によって、着脱可能に取り付けられる。第2形態の発泡成形型100においては、アタッチメントプレート20には、異なる数および形状の成形開口22を備えた複数枚のアタッチメントプレート20a〜20dが群として用いられ、群を構成する各アタッチメントプレート20a〜20dは、固定側のマスターフレーム1aに対して、選択的に取り付け可能となっている。また、すべてのアタッチメントプレート20a〜20dは、全体として表裏面が平坦面である矩形状の板状材である。
【0135】
図12に示すアタッチメントプレート20aは、閉じた側周面21で区画される1個の成形開口22を有しており、この成形開口22が成形品キャビティ4として機能する。なお、図12において、25は、アタッチメントプレート20aをマスターフレーム1aに取り付け時に固定用ネジ13が通過する開口であり、30は、クレーン(不図示)等の作業機器に接続するフックであって、アタッチメントプレート20aを着脱する時あるいは移動する時に、アタッチメントプレート20aに形成した開口26にフック30を取り付けるようにして利用される。
【0136】
図9および図10は、図12に示すアタッチメントプレート20aを固定側のマスターフレーム1aに取り付けた状態を示しており、アタッチメントプレート20aは、固定側のマスターフレーム1aの蒸気吹き出しプレート2aの面に重ね合わせた状態で、固定用ネジ13によって取り付けられる。
【0137】
図13は、その状態をアタッチメントプレート20a側から見て示す平面図である。図示されるように、この例では、アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22内には、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aの面内での9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、横中列である3個の原料フィーダー5b,5e,5hの原料吹き出し口が位置しており、図で下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと、上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iは、アタッチメントプレート20aによって、その原料吹き出し口は閉鎖されている。
【0138】
そのようにして、アタッチメントプレート20aを固定側のマスターフレーム1aに取り付けた後、可動側のマスターフレーム1bを移動して、図10に示すように型締めをする。それにより、アタッチメントプレート20aは、両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟まれた姿勢となる。そして、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側A,Bと、アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22の側周面21とによって区画された空間が、成形品キャビティ4を構成する。
【0139】
型締め後、成形品キャビティ4内に、一例として、原料である未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に予備発泡させてなる低倍発泡粒子を、原料フィーダー5b,5e,5hから充填し、また加熱蒸気を供給することで、発泡倍数が1.5〜5倍程度の低倍発泡成形体が型内発泡成形される。
【0140】
なお、この例において、原料供給は、所定の原料供給源からすべての原料フィーダー5a〜5iに対して行ってもよい。その場合でも、下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20aによって閉鎖されているので、格別の支障は生じない。しかし、成形処理の容易性と原料の無駄を無くす観点から、各原料フィーダー5a〜5iには、原料吹き出し口よりも上流の位置に原料の供給を停止できる図示しないシャッターのような閉鎖手段を設けることが好ましく、その場合には、下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iに設けたシャッターは閉じておき、中横列の3個の原料フィーダー5b,5e,5hに設けたシャッターは開いた状態で、原料供給を行うようにする。
【0141】
その場合において、左右の原料フィーダー5bと5hのシャッターを閉じ、扇形をなす成形開口22のほぼ中央に位置する原料フィーダー5eのみから、計量済みの原料を加圧供給することにより、品質に偏りのない低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。従って、成形開口22の中央またはその近傍に、原料フィーダー5a〜5iのいずれか1つの吹き出し口が位置できるように、蒸気吹き出しプレート20a面内での原料吹き出し口の位置決めをするか、または、前記アタッチメントプレート2a面内での成形開口22の位置決めをすることは、好ましい態様となる。
【0142】
前記したように、固定側のマスターフレーム1aには、複数本のエジェクターピン6が取り付けてある。そして、各エジェクターピン6は、前記アタッチメントプレート20a〜20dのいずれを選択してマスターフレーム1aに取り付けたときであっても、そこに形成される成形品キャビティ4内にそのいずれかが入り込むことができるように、蒸気吹き出しプレート2aの面内で位置決めされている。
【0143】
上記の例では、型を開いた後、蒸気吹き出しプレート2aの面内における、前記アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22に対向する箇所に位置する1個または複数個のエジェクターピン6を作動させることにより、成形品の脱型が行われる。図示しないが、各原料フィーダー5a〜5iの供給管内にエジェクターピン6を配置することもできる。その場合には、型を開いた後、原料供給に関与した原料フィーダー5のいずれかまたはすべてに取り付けたエジェクターピン6を作動させることにより、成形品の脱型が行われる。
【0144】
図14は、アタッチメントプレート20の他の形態を示す。このアタッチメントプレート20bは、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の4個の成形開口22bが、左右に2個ずつ形成されている。図15は、上記アタッチメントプレート20bを、図11に示した固定側のマスターフレーム1aの蒸気吹き出しプレート2aの面に重ね合わせた状態をアタッチメントプレート20b側から見て示している。
【0145】
図からわかるように、アタッチメントプレート20bでは、4つの成形開口22bは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、左上の原料フィーダー5cと、左下の原料フィーダー5aと、右上の原料フィーダー5iと、右下の原料フィーダー5gの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22bのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20bの面内にそれぞれ形成されている。そして、他の5個の原料フィーダー5b、5d、5e、5f、5hの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20bによって閉鎖されている。
【0146】
上記のアタッチメントプレート20bを、アタッチメントプレート20aに代えて固定側のマスターフレーム1aに取り付け、以下、アタッチメントプレート20aの場合と同様にして成形処理を行う。この場合には、4個の成形開口22bで形成される4個の成形品キャビティ4内に、同時に原料が供給されるので、1回の処理で、4個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。なお、成形品の脱型には、各成形品キャビティに対応し定置するエジェクターピン6を利用する。
【0147】
図16は、アタッチメントプレート20のさらに他の形態を、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aに重ね合わせた状態を、アタッチメントプレート側から見て示している。このアタッチメントプレート20cは、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の3個の成形開口22cが、中央部に3段に形成されている。図からわかるように、このアタッチメントプレート20cでは、3つの成形開口22cは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、中央に位置する原料フィーダー5d、5e、5fの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22cのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20cの面内にそれぞれ形成されている。そして、他の6個の原料フィーダー5a〜5cと5g〜5iの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20cによって閉鎖されている。
【0148】
上記のアタッチメントプレート20cを用いる場合には、3個の成形開口22cで形成される3個の成形品キャビティ4内に同時に原料が供給されるので、1回の処理で、3個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。
【0149】
図16は、アタッチメントプレート20のさらに他の形態を、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aに重ね合わせた状態を、アタッチメントプレート側から見て示している。このアタッチメントプレート20dも、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の6個の成形開口22dが、左右に3個ずつ形成されている。図からわかるように、このアタッチメントプレート20dでは、6つの成形開口22dは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、左縦列5a〜5cと、右縦列5g〜5iの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22dのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20dの面内にそれぞれ形成されている。縦中央列の3個の原料フィーダー5d〜5fの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20dによって閉鎖されている。
【0150】
上記のアタッチメントプレート20dを用いる場合には、6個の成形開口22dで形成される6個の成形品キャビティ4内に同時に原料が供給されるので、1回の処理で、6個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。
【0151】
以上の説明からわかるよう、第2形態の発泡成形型100では、アタッチメントプレート群を構成するいずれかのアタッチメントプレート、例えば、上記したアタッチメントプレート20a〜20dのいずれかを選択して用いることにより、一回の成形処理で1個または形や厚さの異なる2個以上の発泡成形品を同時に発泡成形することが可能であり、高い生産性を得ることができる。
【0152】
なお、上記の例では、1枚のアタッチメントプレート20a〜20dでもって成形品キャビティ4を構成するようにしたが、固定側と移動側のマスターフレーム1a,1bの両者に同じ形状のアタッチメントプレート20a〜20dを取り付け、この2枚のアタッチメントプレートを型締時に合わせることで1つの成形品キャビティ4を構成させることもできる。
【符号の説明】
【0153】
1…第1形態の発泡成形型、
100…第2形態の発泡成形型、
1a,1b…マスターフレーム、
2a,2b…蒸気吹き出しプレート、
4…成形品キャビティ、
5(5a〜5i)…原料フィーダー、
6…エジェクターピン、
8…円柱状または円筒状の補強サポート、
15…蒸気供給口、
20(20a〜20a)…アタッチメントプレート、
21…閉じた側周面、
22、22b、22c、22d…成形開口(成形品キャビティ)
23…アタッチメントプレートのマスターフレームから突出する領域、
40…蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート、
42…補強サポートに形成した蒸気通過口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法における推進管の間に使用する推力伝達材および該推力伝達材を備えた推進管に関する。
【背景技術】
【0002】
公共下水道工事など、地下に管を埋設する埋設工事の施工方法として、推進工法が広く採用されている。推進工法は、管を埋設する全体の範囲を開削せず、例えば、コンクリート製の管を順次地中に押し出していくことによって、管を地下に埋設する施工方法である。この管を以下、「推進管」という。
【0003】
推進工法による埋設工事の概要を、図20を参照して説明する。まず、推進管を埋設する始点と終点との位置に埋設する深さまでの立坑を掘削する。続いて、推進管の埋設を行う始点である発進立抗STHに設置された元押設備PFが、推進管の径に相当する掘進機DMを到達立抗ENHに向けて押し出すことによって、掘進機DMが地中を掘りながら推進する。このとき、元押設備PFによる押し出し量が最大の状態、例えば、元押設備PFによって掘進機DMが全て地中に押し込まれた状態となると、掘進機DMの後端に推進管HPpが押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPpを押し出すことによって、掘進機DMがさらに押し出される。その後、元押設備PFによる押し出し量が最大となると、推進管HPpの後端に次の推進管HPf1が押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPf1を押し出す。以降、元押設備PFによる押し出し量が最大となるたびに、推進管HPf1の後端に次の推進管HPf2以降が押しあてられ、元押設備PFがこの推進管HPf2以降を押し出すという工程を繰り返す。
【0004】
そして、掘進機DMが、推進管の埋設を行う終点である到達立抗ENHに到達したときには、掘進機DMの押し出しに使用していた推進管(図20においては推進管HPpおよび推進管HPf1〜3)が、掘進機DMの通った経路に残ることとなる。すなわち、推進管HPpおよび推進管HPf1〜3が掘進機DMの通った経路に埋設されたこととなる。最後に掘進機DMおよび元押設備PFを撤去し、発進立抗STHと到達立抗ENHとを埋め戻すことによって、推進管の埋設工事が完了する。
【0005】
この推進工法に使用される推進管には、材質としては、コンクリート製、レジンコンクリート製、陶製、鉄製のものが多く用いられる。そのため、元押設備が推進管を押し出す際に、推進管同士が接触すると、その接触している部分、例えば、図20における推進管HPpと推進管HPf1との端部に破損が起こる。この推進管の破損を防ぎ、かつ、推進管を推進するための推進力を伝達させるために、推力伝達材が推進管の端部に取り付けられている。
【0006】
また、図21に示すように、推進管の埋設工事においては、推進管を埋設する始点と終点とを直線では結べず、始点と終点との間に存在する障害物を回避しながら施工しなければならない状況があるため、始点と終点の全部または一部を曲線で結ぶ推進工法が採用されている。このような推進工法において、推進管に取り付けられた推力伝達材にかかる応力は、推進経路が直線である区間STでは全体に均一であるが、推進経路が曲線である区間CVでは全体に均一とはならず、推進経路が曲がる方向の応力がより強くなり、応力集中が生じてしまう。
【0007】
そのような推力伝達材としての好適な一例が、特許文献1に記載されている。この推力伝達材は、発泡ポリスチレン製であって0.3〜0.8の比重を有する板状の低倍発泡成形品である。この推力伝達材が好適である理由として、特許文献1には、一般に、推進管として使用されるヒューム管の限界圧縮応力は300〜1000kg/cm2(30〜100kN/m2)であり、推進工程で推力伝達材に加えられる応力は前記ヒューム管の限界圧縮応力の1/3が一般的であり、1/10〜1/3の範囲であることが好ましい。従って、推進管の推力伝達材としては限界圧縮応力が30〜300kg/cm2(3〜30kN/m2)であることが望ましく、そのような限界圧縮応力範囲の発泡ポリスチレンは比重が0.3〜0.8の範囲のものであると記載されている。また、このクッション材に押圧による応力がかかると初めは弾性変化し、その後の限界圧縮応力以上の力に対しては永久的な塑性変形をするので、推進施工の場合に生じる集中応力を自然に分散させることができると記載されている。
【0008】
また、このような板状体である低倍発泡成形品を成形するのに好適な発泡成形型が、特許文献2に記載されている。この発泡成形型は、図18に記載するように、平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが両マスターフレーム1a,1bの前面側にそれぞれ取り付けられている。片方のマスターフレーム1a側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟持されて成形品キャビティ4の側周を区画する成形開口3aを備えた、図19に示すようなアタッチメントプレート3が着脱可能に取り付けられる。そして、前記成形品キャビティ4は、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレート3に形成した成形開口3aの側周面3bとによって囲まれた空間として形成される。
【0009】
前記成形品キャビティ4には、一方のマスターフレーム1aに取り付けた蒸気吹き出しプレート2aの面内に原料吹き出し口を持つようにしてマスターフレーム1a側に配置した原料フィーダー5から、発泡性粒子が供給され、形締め後、蒸気吹き出しプレート2a,2bを通して成形品キャビティ4内に加熱蒸気を送り込む。それにより、発泡性粒子が発泡して低倍の発泡成形体が型内成形される。なお、図18において、6はエジェクターピン、8は補強サポートである。
【0010】
この発泡成形型では、形成品の形状や厚さに変更があっても、前記アタッチメントプレート3を交換するだけでそれに対処することができるので、変更に伴う経費および労力を軽減できると共に、交換部材であるアタッチメントプレート3の保管に要する手間およびスペースをも軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭61−8320号公報
【特許文献2】特開平8−25393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図22は、前記した特許文献1に記載されている、比重の異なる3種の推力伝達材の応力−変位(ひずみ)曲線であり、比重0.64および0.34のものは、限界圧縮応力が30〜300kg/cm2(3〜30kN/m2)であるので好ましく、比重0.13のものは限界圧縮応力が30kg/cm2(3kN/m2)以下に低下するので、推力伝達材自体の変形度合いが大きくなり、いわゆる底付き現象によってヒューム管を破損することが生じるので好ましくない、としている。
【0013】
従来、推進工法を用いて推進管を地中に埋設するにあたり、障害物を回避するために、埋設する経路が全体として大きく曲がっている場合には、推進管および推力伝達材にかかる応力および応力集中をなるべく緩和する目的で、経路に多数の立坑を掘削していた。立坑を多くすることで、立坑(発進立坑)と立坑(到達立坑)との距離を短くし、その間を直線または緩い曲線で結び、多数の立坑を略多角形の頂点として経路全体を大きく曲げることが行われていた。
【0014】
しかし、立坑を掘削する用地が限られていたり、掘削費用を抑えるために立坑を減らすことが要望されるようになり、推進工法は長距離化、急な曲線化が求められるようになっている。また、立坑を深く掘削することなく障害物を回避するために、推進方向に対して左右方向のみならず、上下方向にも曲線化することが要望されつつある。
【0015】
推進工法の長距離化は、推進管と周囲の土砂との摩擦抵抗が増えるので、推進させるためにより大きな力で押し出す必要があり、推進管および推力伝達材に大きな応力がかかる。また、急な曲線化は、推進管および推力伝達材に急激な応力集中を生じさせる。さらに、上下左右方向の曲線化は、推進管および推力伝達材に複雑な応力がかかることとなる。
【0016】
推進工法の長距離化、急な曲線化および上下左右方向の曲線化により、推進管に過剰な応力が作用し推進管を破壊する恐れがあり、解決することが求められている。
【0017】
本発明は、上記の要請に答えるものであり、大きな応力、急激な応力集中および複雑な応力が作用したときでも、推進管に破損が生じるのを効果的に回避できるようにした、よりクッション性能に優れた推力伝達材を提供することを第1の課題とする。また、推進工法の推進管であって、よりクッション性能に優れた推力伝達材を備えた推進管を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、発泡樹脂成形体の場合、図23に応力−ひずみ曲線を示すように、弾性域と塑性域との間に、弾塑性域があることに注目した。弾塑性域は、気泡の破壊が部分的に進行している段階であり、この領域では、一部塑性変形しながらも弾性体としての性質を依然として有している。上記した推力伝達材の場合、荷重域が塑性域に達すると、推力伝達材は弾性体としての機能を喪失しクッション性がなくなり、荷重が直接推進管に伝わるようになる。そのために、推進管に過剰な応力が作用し、推進管に破損が生じやすい。しかし、推力伝達材は、弾塑性域では、作用する荷重により一部は塑性変形しながら当該荷重を吸収するとともに、前記のように依然として弾性体としての性質も備えており、所望のクッション性能を有することから、それが弾塑性域内である限りは、推進管に破損が生じない。
【0019】
従って、同じ比重(密度)である発泡樹脂製の推力伝達材の場合であっても、弾塑性域の範囲が広い、換言すれば、図23における応力−ひずみ曲線での弾塑性域の傾きが小さいほど、推力伝達材として優れたクッション性能を発揮することができる。
【0020】
この観点から、特許文献1に記載されている、図22に示す比重0.64および0.34の推力伝達材を考察すると、応力−ひずみ曲線において、弾性域から塑性域までの間である弾塑性域の範囲が狭く、過剰な加重が作用した場合に、推力伝達材がそれを十分に吸収できないことが起こり得る。すなわち、より広い範囲で優れたクッション性能を得るという観点からは、なお改善すべき点が残っている。
【0021】
本発明者らは、上記の観点からさらに多くの実験と研究を行うことにより、発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材において、密度と平均気泡径とを特定の範囲とすることにより、前記した弾塑性域の広い発泡樹脂製の推力伝達材が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0022】
すなわち、本発明による推力伝達材は、発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材であって、密度が0.17〜0.67g/cm3、であり、平均気泡径が60μm以下である推力伝達材であることを特徴とする。
【0023】
なお、密度は、好ましくは、0.20〜0.60g/cm3の範囲であり、より好ましくは、0.33〜0.60g/cm3の範囲である。また、平均気泡径は、好ましくは、20〜60μmであり、より好ましくは、30〜50μmである。
【0024】
後に記載する実施例に示すように、本発明による推力伝達材において、密度が0.17g/cm3未満であると、弾塑性域の範囲が小さく、推力伝達材としてのクッション性能が劣る。また、密度が0.67g/cm3超えると、発泡倍率が小さすぎて弾性力が不足し、やはり推力伝達材としてのクッション性能が劣るようになる。また、平均気泡径が60μmを超えると、弾塑性域での応力−ひずみ曲線の傾きが大きく、範囲も狭くなるため、ひずみ量が増えると応力の上昇が大きくなり、すなわち荷重を吸収する能力が低下し、推力伝達材としてのクッション性能が低下する。平均気泡径の下限に制限はないが、あまりに小さな気泡径では連続気泡率が大きくなり推力伝達材の強度が低下する恐れがある。従って、平均気泡径の下限値は、好ましくは20μm以上である。
【0025】
本発明による推力伝達材において、好ましくは、融着率は70%以上、より好ましくは75%以上である。融着率は70%以上であると、発泡粒同士が強固に融着されているため、推力伝達材の強度が大きくなるので好ましい。融着率が70%未満の場合には、発泡粒同士の接合力が弱くなって、小さい応力で推力伝達材の破壊が生じやすくなるので好ましくない。
【0026】
本発明による推力伝達材において、成形型内で発泡させる発泡性粒子は、ポリスチレン系樹脂の発泡性粒子であることが望ましいが、他に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂のような樹脂からなる発泡性粒子であってもよい。いずれの場合も、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子であることが望ましい。
【0027】
本発明による推力伝達材において、平均気泡径を所定の範囲とするには、予備発泡させる前の発泡性粒子の熟成期間を長くする、および/または、発泡性粒子を製造するときに気泡調整剤を適量添加することで行うことができる。気泡調整剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、およびノニオン系界面活性剤を例示することができる。
【0028】
本発明による推進管は、上記した推力伝達材を先端およびまたは後端に備えることを特徴とする。推進管としては、コンクリート製のヒューム管や、ボックスカルバート、樹脂コンクリート製または樹脂製の樹脂管、鉄製のダクタイル管などが挙げられる。代表的なものとしては、コンクリート製のヒューム管が挙げられる。
【0029】
本発明による推力伝達材は、任意の発泡成形型を用いて発泡成形することができる。一例として、前記特許文献2に記載される構成のアタッチメントプレートを備えた発泡成形型が挙げられる。
【0030】
さらに、前記発泡成形型を改良した第1形態の発泡成形型として、平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、前記両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、前記アタッチメントプレートに形成した前記成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、前記蒸気吹き出しプレートの少なくとも前記成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する補強サポートとして、前記蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備える発泡成形型を用いることができる。
【0031】
上記の発泡成形型の一態様では、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置している形態を持つ。また、他の態様では、前記板状の補強サポートは前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成されている形態を持つ。
【0032】
上記第1形態の発泡成形型は、蒸気吹き出しプレートの少なくとも成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置する補強サポートとして、従来のように、円柱状または円筒状の補強サポートではなく、蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポートを備える。それにより、円柱状または円筒状の補強サポートの場合と比較して、より広い面積で、蒸気吹き出しプレートの成形品キャビティに対向する領域を背面側を支持することができ、発泡圧の分散を図ることができる。それにより、蒸気吹き出しプレートの変形は抑制され、結果として発泡成形型の変形が抑制される。
【0033】
円柱状または円筒状の補強サポートの本数を増やすことによっても、接触面が線状をなす板状の補強サポートの場合と同じ支持面積を得ることができる。しかし、多数本の円柱状または円筒状の補強サポートを蒸気吹き出しプレートとマスターフレームの間に配置することは、型作成上きわめて困難である。上記第1形態の発泡成形型では、板状の補強サポートを配置するようにしており、比較して、型作成は容易である。
【0034】
前記第1形態の発泡成形型において、前記板状の補強サポートの複数枚が、前記成形品キャビティに対向する前記蒸気吹き出しプレートの背面側に間隔をおいて位置している場合には、発泡圧を一層分散した状態で背面から支持することが可能となる。
【0035】
前記第1形態の発泡成形型において、前記板状の補強サポートは、少なくとも蒸気吹き出しプレートが成形品キャビティに対向する領域の背面側に位置するように設けられれば、所期の目的を達成することができる。蒸気吹き出しプレートの他の領域には、従来と同様の円柱状または円筒状の補強サポートを必要本数だけ配置するようにしてもよい。しかし、前記板状の補強サポートを、前記マスターフレームの全幅にわたるようにして形成することは、設計の容易性から好ましい。
【0036】
前記第1形態の発泡成形型において、前記アタッチメントプレートをマスターフレームに取り付けたときに該マスターフレームから外側に突出する突出領域を有した形状のアタッチメントプレートを用いることもできる。その態様では、前記突出領域にクレーンやジャッキ等のフックを引っ掛けて、アタッチメントプレートを吊り下げた状態とし、その状態で、アタッチメントプレートの運搬やマスターフレームへの取り付けを行うことができる利点がある。
【0037】
本発明による推力伝達材を発泡成形するのに好適な第2形態の発泡成形型は、平坦な蒸気吹き出しプレートが、その前面側が一平面となるように、両マスターフレームの前面側にそれぞれ取り付けられており、少なくとも片方のマスターフレーム側に、型締時に両蒸気吹き出しプレート間に挟持されて成形品キャビティの側周を区画する成形開口を備えたアタッチメントプレートが着脱可能に取り付けられており、成形品キャビティが、両蒸気吹き出しプレートのそれぞれ一平面となっている前面側と、アタッチメントプレートに形成した成形開口の側周面とによって囲まれた空間として形成される発泡成形型であって、前記いずれか一方のマスターフレームには複数本の原料フィーダーが前記蒸気吹き出しプレート面内に原料吹き出し口を持つようにして取り付けられており、前記アタッチメントプレートは2枚以上の着脱可能なアタッチメントプレート群で構成されていて、そのうちの少なくとも1枚のアタッチメントプレートは面内に2個以上の成形開口を形成しており、かつ、前記アタッチメントプレート群のいずれを選択してマスターフレームに取り付けたときであっても、形成される前記成形品キャビティのすべてに前記いずれかの原料フィーダーから原料を供給されるように、蒸気吹き出しプレート面内での原料吹き出し口の位置決めがなされているか、または、各アタッチメントプレートの面内での前記成形開口の位置決めがされていることを特徴とする。
【0038】
上記第2形態の発泡成形型は、複数本の原料フィーダーを備えている。また、交換しながら用いるアタッチメントプレート群には、面内に2個以上の成形開口を形成したアタッチメントプレートが含まれる。そして、2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレートを選択したときでも、そこに形成される2個以上の成形品キャビティのすべてには、それぞれに対応する原料フィーダーから、発泡性粒子である原料が供給される。それにより、2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレーを選択した場合には、一回の成形処理で2個以上の発泡成形品を同時に得ることができる。それにより、生産性が向上する。
【0039】
2個以上の成形開口を有するアタッチメントプレートを選択して使用するときに、前記成形開口の形成位置によっては、蒸気吹き出しプレート面内に形成された複数個ある原料吹き出し口のいずれかが、当該アタッチメントプレートの前記成形開口が形成されていない面内に位置することも起こり得る。その場合、その原料吹き出し口はアタッチメントプレートの成形開口でない領域でもって閉鎖されるので、格別の問題は生じない。しかし、成形処理の容易性と原料の無駄を無くす観点から、各原料フィーダーには、原料吹き出し口よりも上流の位置に原料の供給を停止できるシャッターのような閉鎖手段を設けることが好ましい。
【0040】
上記第2形態の発泡成形型の一態様では、前記アタッチメントプレート群を構成する各アタッチメントプレートに形成される成形開口は扇形をなしており、前記扇形をなす成形開口のほぼ中央に前記原料吹き出し口が位置するように、蒸気吹き出しプレート面内での原料吹き出し口の位置決めがなされているか、または、前記アタッチメントプレート面内での前記成形開口の位置決めがなされている。
【0041】
この態様では、1個の原料吹き出し口から吹き出す原料を、前記成形開口が形成する成形品キャビティの全域に、実質的に均一にかつ短時間で供給することが可能となる。従って、原料供給系を簡素化しながら、良品の推力伝達材を型内成形することができる。
【0042】
上記第2形態の発泡成形型の一態様では、発泡成形型は、さらに、複数本のエジェクターピンを有し、前記エジェクターピンは、前記アタッチメントプレート群のいずれを選択してマスターフレームに取り付けたときであっても、そこに形成される前記成形品キャビティ内にそのいずれかが入り込むことができるように、前記蒸気吹き出しプレート面内での位置決めがなされている。上記の形態において、さらに好ましくは、前記エジェクターピンは前記原料フィーダー内に備えられている。
【0043】
このようにしてエジェクターピンを設けることにより、いずれのアタッチメントプレートを選択した場合でも、アタッチメントプレートからの発泡成形品の脱型は容易となる。特に、エジェクターピンを前記原料フィーダー内に備えるようにする場合には、前記したマスターフレーム内に存在する部品数を少なくすることができ、成形品キャビティ内へ部分的に偏りのない状態で加熱蒸気を供給できるようになる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、推進工法における推進管の間に使用する推力伝達材において、同じ密度の推力伝達材であっても、従来の同種の推力伝達材と比較して、よりクッション性能に優れた推力伝達材が提供される。また、推進工法の推進管であって、よりクッション性能に優れた推力伝達材を備えた推進管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による推力伝達材(実施例)と比較例の推力伝達材とにおける応力−ひずみ曲線を示すグラフ。
【図2】実施例による推力伝達材の気泡を示す電子顕微鏡写真であり、図2(a)は実施例1,図2(b)は実施例2,図2(c)は実施例3,図2(d)は実施例4の電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明による推力伝達材を製造するのに好適に発泡成形型である第1形態の発泡成形型の一実施の形態を示す断面図。
【図4】第1形態の発泡成形型におけるアタッチメントプレートの取り付け部付近の拡大断面図。
【図5】第1形態の発泡成形型におけるマスターフレームの一例を両蒸気吹き出しプレート取り付け側から見た平面図。
【図6】マスターフレームの他の例を示す図4に相当する図。
【図7】マスターフレームのさらに他の例を示す図3に相当する図。
【図8】アタッチメントプレートの幾つかの例を示す斜視図。
【図9】本発明による推力伝達材を製造するのに好適に発泡成形型である第2形態の発泡成形型の一実施の形態を示す断面図。
【図10】第2形態の発泡成形型におけるアタッチメントプレートの取り付け部付近の拡大断面図。
【図11】第2形態の発泡成形型における蒸気吹き出しプレートの一例を示す平面図。ただし、蒸気吹き出し口は図示を省略している。
【図12】アタッチメントプレートの一例を示す斜視図。
【図13】図12に示すアタッチメントプレートを図3に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図14】アタッチメントプレートの他の例を示す斜視図。
【図15】図14に示すアタッチメントプレートを図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図16】アタッチメントプレートのさらに他の例を図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図17】アタッチメントプレートのさらに他の例を図11に示す蒸気吹き出しプレートに重ね合わせた状態をアタッチメントプレート側から見て示す平面図。
【図18】従来知られた発泡成形型を説明するための断面図。
【図19】図18に示す発泡成形型とともに用いられるアタッチメントプレートを説明するための斜視図。
【図20】推進工法による埋設工事の概要を説明する図。
【図21】推進工法における推進管の配置の一例を示す図。
【図22】特許文献1に記載されている比重の異なる3種の推力伝達材の応力−変位(ひずみ)曲線を示す図。
【図23】発泡樹脂成形体における応力−ひずみ曲線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[推力伝達材]
最初に、本発明による推力伝達材の具体例をその製造方法とともに説明する。発泡性粒子として、未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなる低倍発泡粒子を用い、適宜の発泡成形型の成形品キャビティ内に充填し、密度が0.17〜0.67g/cm3の推力伝達材である推力伝達材を型内発泡成形する。
【0047】
一例として、前記低倍発泡粒子として、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものを用いる。
【0048】
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のベースとなるポリスチレン系樹脂は、ポリスチレンを主成分とするものであり、スチレンの単独重合体でもよいし、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸およびメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体との共重合体でもよい。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用してもよい。好ましいポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体である。
【0049】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含有させる発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
【0050】
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素などの1種または2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0051】
また分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウムなどの無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤が挙げられる。
前記発泡剤は、単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径は、300μm〜2500μmの範囲内であり、好ましくは650μm〜2500μmの範囲内であり、より好ましくは800μm〜2000μmの範囲内である。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲未満であると、該樹脂粒子を基に作製した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、あるいはそれを低倍予備発泡して得られた低倍発泡粒子を、成形機のキャビティ内に充填し、型内発泡成形して推力伝達材を製造する際に、粒子同士の間隔が狭くなって加熱用水蒸気が均一に行き渡らず、得られる発泡成形体の融着率が不均一となって、十分な強度を有する推力伝達材が得られなくなる恐れがある。一方、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒子径が前記範囲を超えると、一粒質量が大きくなって、該粒子をキャビティ内に搬送したり、均一に充填することが難しくなる。また、複雑形状の発泡成形体の製造には不向きとなる。
【0053】
この発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、該樹脂粒子の発泡性や得られる発泡成形品の機械強度に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、気泡調整剤、発泡助剤、滑剤、収縮防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、無機気泡核剤、無機充填剤等の各種添加剤を添加してもよい。気泡調整剤としては、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤が挙げられる。
【0054】
前記した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、従来周知の各種の発泡樹脂粒子製造方法を用いて製造することができる。それらの方法の中でも、懸濁重合法、押出-水中カット法が好ましい。
【0055】
前記低倍発泡粒子は、前記発泡性樹脂粒子を蒸気加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものである。嵩発泡倍数の範囲は2.0〜10倍が好ましく、2.0〜5倍がより好ましい。
【0056】
低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲未満であると、嵩発泡倍数のばらつきが大きくなり均一な粒子が得られない。一方、低倍発泡粒子の嵩発泡倍数が前記範囲を超えると、十分な強度と長期耐久性に優れた推力伝達材が得られない。
【0057】
前記低倍発泡粒子は、前記発泡性樹脂粒子を加熱し、嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に発泡させてなるものなので、曲げ強度や圧縮強度に優れた推力伝達材を製造するために用いることができる。
【0058】
本発明に係る推力伝達材は、前記発泡性樹脂粒子(未発泡粒子)または前記低倍発泡粒子(嵩発泡倍数が2.0〜20倍)を、適宜の発泡成形型によって形成される所望の成形形状に合致した成形品キャビティ内に充填し、型内発泡成形して得られる密度が0.17〜0.67g/cm3、であり、平均気泡径が60μm以下のものである。
【0059】
本発明の推力伝達材は、前記発泡性樹脂粒子または低倍発泡粒子を型内発泡成形して得られたものなので、発泡粒子同士の融着率と伸びが良好となり、曲げ強度や圧縮強度に優れており、高強度、長期耐久性が要求されるコンクリート推進管用推力伝達材のみでなく、他の土木用の分野、床下地材などの建材用の分野等に適用することもできる。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例と比較例を示す。なお、実施例1〜4と比較例1〜5での各測定項目等は、以下のとおりである。また、実施例1〜4、比較例1〜5の各測定項目等および結果を表1に示すとともに、それらの応力−ひずみ曲線を図1に示した。さらに、実施例1〜4の発泡成形体の切断面による電子顕微鏡写真を図2(a)〜(d)に示した。
【0061】
<嵩密度>
予備発泡粒子の「嵩密度」は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、500cm3のメスシリンダーを用意し、このメスシリンダー内に予備発泡粒子を500cm3の目盛りに水平になるように充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とする。そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
【0062】
嵩密度(g/cm3)=W(g)/500(cm3)
【0063】
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の「嵩発泡倍数」は、前記嵩密度の逆数(1/嵩密度)であり、ポリスチレン系樹脂の場合には、嵩密度0.33g/cm3の予備発泡粒子は嵩発泡倍数3倍、嵩密度0.2g/cm3の予備発泡粒子は嵩発泡倍数5倍となる。
【0064】
<密度>
発泡成形体の「密度」は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。即ち、50cm3以上(半硬質及び軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量(g)を測定し、次式により算出する。
【0065】
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
【0066】
<発泡倍数>
発泡成形体の「発泡倍数」は、前記密度の逆数(1/密度)であり、ポリスチレン系樹脂の場合には、密度0.33g/cm3の発泡成形体は発泡倍数3倍、密度0.2g/cm3の発泡成形体は発泡倍数5倍となる。
【0067】
<平均気泡径>
平均気泡径(μm)はASTM D−2842−69に準拠して測定した。
【0068】
装置は、走査型電子顕微鏡 S−3000N((株)日立製作所製)を用いた。発泡成形体の切断面を電子顕微鏡にて写真撮影し、その写真の一直線(60mm)上にかかる気泡数から平均弦長tを測定し、この測定値を用いて平均気泡径を算出した。
【0069】
平均弦長t(μm)=1000×60/(気泡数×撮影倍数)
平均気泡径(μm)=t/0.616
【0070】
<融着率>
発泡成形体における任意の表面にカッターナイフを用いて深さ1mmの切込み線を形成し、この切込み線に沿って発泡成形体を手またはハンマーで二分割する。
【0071】
しかる後、発泡成形体の破断面に露出した任意の100〜150個の発泡粒子において、発泡粒子内において破断している粒子数(a)と、発泡粒子同士の熱融着界面において破断している粒子数(b)を数え、下記式に基づいて発泡成形体の融着率を算出する。
【0072】
発泡成形体の融着率(%)=100×粒子数(a)/(粒子数(a)+粒子数(b))
融着率は、70%以上を合格、70%未満を不合格とした。
【0073】
<応力−ひずみ曲線>
発泡成形体から厚さ10mm×幅50mm×長さ50mmの試験体を切断採取する。
JIS K7220:2006「発泡プラスチック−硬質材料の圧縮試験」により、10%変形時における荷重を求め、圧縮応力を算出するとともに、荷重100kNまで載荷を行い、圧縮応力−変形量曲線を求めた。なお、試験には、定速型万能試験機(ロードセル容量:100kN)を、変形量の測定には変位計(1000×10−6/mm、0.1%RO)を用い、載荷速度は0.2mm/minとした。
【0074】
[実施例1]
100リットルの反応器に純水44kg、第三リン酸カルシウム800g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7gを入れ撹拌を行いながら、スチレン42kgにベンゾイルパーオキサイド110g、t−ブチルパーオキシベンゾエート8gを溶解して加えた。反応器を密閉し90℃に昇温し、5時間反応を行なった後125℃に1時間かけて昇温し、1時間後に冷却を始め常温まで冷却した。得られたスラリーを脱水乾燥し、篩分けして平均粒子径1400μmのポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0075】
次に、5リットルの反応器に純水1.5kg、前記の方法により得たポリスチレン系樹脂粒子(平均粒子径1400μm、重量平均分子量が約30万、残存モノマーが約2000ppm)2.0kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2g、ピロリン酸マグネシウム7.0gを加えて撹拌し懸濁させた。次いであらかじめ用意した純水0.5kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1gにトルエン9.5gをホモミキサーで撹拌して懸濁液を調整し、反応器に仕込んだ。次に、常温で反応器内にペンタン25g、気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウム0.2g、ブタン18gを圧入し、120℃に昇温し、5時間保持した後、常温まで冷却して取り出し、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0076】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0077】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、後に図9〜図17に基づき説明する発泡成形型(ただし、発泡成形型を図5に示すサポートで補強した)に、図15に示したアタッチメントプレート20bを取り付けて形成された4個の成形品キャビティ(下縁と上縁との間の距離260mm,扇型の開き角度90度、厚み15mm)に充填し、0.08MPaの水蒸気で35秒加熱し、冷却して、密度0.59g/cm3、発泡倍数1.7倍の4個の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0078】
[実施例2]
実施例1と同様にして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0079】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0080】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0081】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0082】
[実施例3]
実施例1と同様にして、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0083】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0084】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.20g/cm3、嵩発泡倍数5倍に予備発泡した。
【0085】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.20g/cm3、発泡倍数5倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0086】
[実施例4]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0087】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、12℃の雰囲気温度で、7日間熟成させた。
【0088】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0089】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同じ方法で成形し、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0090】
[比較例1]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0091】
実施例1と同様にして、密度0.59g/cm3、発泡倍数1.7倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0092】
[比較例2]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0093】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0094】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0095】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0096】
[比較例3]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.1g添加した以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0097】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0098】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.20g/cm3、嵩発泡倍数5倍に予備発泡した。
【0099】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.20g/cm3、発泡倍数5倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0100】
[比較例4]
実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0101】
次に、前記の方法により得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、15℃の雰囲気温度で、2日間熟成させた。
【0102】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.14g/cm3、嵩発泡倍数7倍に予備発泡した。
【0103】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.14g/cm3、発泡倍数7倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
[比較例5]
気泡調整剤としてアルキル硫酸ナトリウムを添加しない以外は、実施例1と同様に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得、それを、15℃の雰囲気温度で、7日間熟成させた。
【0104】
熟成させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子をバッチ式発泡機によって、約95℃の水蒸気で加熱し、嵩密度0.33g/cm3、嵩発泡倍数3倍に予備発泡した。
【0105】
この予備発泡粒子を常温で約1日放置して、熟成させた後、予備発泡粒子を実施例1と同様にして、密度0.33g/cm3、発泡倍数3倍の扇形状の発泡成形体を4つ得た。そして、実施例1と同様にして、発泡成形体の平均気泡径(μm)と融着率(%)を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
[評価]
(1)実施例1および比較例1で得られた発泡成形体は、双方とも密度が0.59g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が20kN/m2程度と高い値であって、双方とも、高負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。しかし、実施例1の発泡成形体は、比較例1に比べ弾塑性域の傾きが小さく、範囲も広い。すなわち、ひずみ量が増えても応力の上昇が少なく、大きな荷重が作用したときに、比較例1と比較して、より大きく荷重を吸収できることがわかる。この差異は、気泡調整材の添加量の違いによって生じた平均気泡径の違い(実施例1が34μmに対して、比較例1は75μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例1の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例1の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、推力伝達材としてのクッション性能に優れたものであるといえる。
【0108】
(2)実施例2と4および比較例2と5で得られた発泡成形体は、いずれも密度が0.33g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が10kN/m2前後の値であって、双方とも、中負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。この場合も、実施例2と4の発泡成形体は、比較例2と5に比べ弾塑性域の傾きが小さく、範囲も広い。従って、実施例2と4の発泡成形体は、比較例2と5と比較して、より大きく荷重を吸収できることがわかる。この差異は、やはり、気泡調整材の添加量の違いによって生じた、または養生日数の違いによって生じた、平均気泡径の違い(実施例2と4が38μmに対して、比較例2と5は79μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例2と4の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例2と5の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、中負荷推進管に用いる推力伝達材として優れたクッション性能に示しているものといえる。
【0109】
なお、実施例2は気泡調整材を0.2g添加することで38μmの平均気泡径を得ており、実施例4では、発泡性粒子の熟成期間を7日と2日と比較して長くすることで38μmの平均気泡径を得ている。このことは、本発明による推力伝達材において、平均気泡径が60μm以下とする手法は限定されないことを示している。
【0110】
(3)実施例3および比較例3で得られた発泡成形体は、いずれも密度が0.20g/cm3であり、また、図1に示す応力−ひずみ曲線において限界圧縮応力が5kN/m2以下の値であって、双方とも、低負荷推進管とともに用いる推力伝達材として適している。ここでは、実施例3の発泡成形体は、比較例3に比べ弾塑性域の範囲はほぼ同じであるが、その傾きが小さい。従って、実施例3の発泡成形体は、比較例3と比較して、より大きく荷重を吸収できる。この差異は、やはり、気泡調整材の添加量の違いによって生じた平均気泡径の違い(実施例3が50μmに対して、比較例3は61μm)に起因していると考えられる。このことは、高い負荷が作用したときに、実施例3の発泡成形体からなる推力伝達材は、比較例3の発泡成形体からなる推力伝達材と比較して、推進管に与える影響を少なくできることを示しており、低負荷推進管で使用する推力伝達材として優れたクッション性能を示しているといえる。
【0111】
(4)比較例4の発泡成形体は、密度が0.14g/cm3と小さく、また平均気泡径も61μmと大きい。そのことから、限界圧縮応力3kN/m2程度と低い値であり、推進管用と共に用いる推力伝達材の材料としては、適切でない。
【0112】
[発泡成形型]
次に、前記した推力伝達材を成形するのに好適な発泡成形型を、図面を参照しながら説明する。なお、先に、図18を参照して、従来知られた発泡成形型を説明したが、当該発泡成形型におけると同じ部材には、以下の説明でも、同じ符号を付している。
【0113】
[第1形態の発泡成形型]
図3〜図8を参照して、第1形態の発泡成形型1の一実施の形態を説明する。第1形態の発泡成形型1は、図3に示すように、固定側および移動側のマスターフレーム1a,1b、原料フィーダー5、エジェクターピン6、背面プレート7a,7b、シール材9を備える。そして、各マスターフレーム1a,1bの一側面には、蒸気供給口15が設けられ、そこからマスターフレーム1a,1b内の全域にわたり、過熱水蒸気が供給される。
【0114】
マスターフレーム1a,1bの前面側(成形品キャビティ4側)には、それぞれ平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが取り付けられている。この蒸気吹き出しプレート2a,2bは、従来のキャビティ金型やコア金型と同様に蒸気透過性を有するもので、図4に示されるように、コアベント10が打ち込まれたベント孔11を備えている。
【0115】
上記蒸気吹き出しプレート2a,2bは、各マスターフレーム1a,1bの前面側A,Bを覆うようにして、固定用ネジ12によって、マスターフレーム1a,1bに取り付けられており、これによって両蒸気吹き出しプレート2a,2bの前面側はそれぞれ一平面となっている。
【0116】
固定側のマスターフレーム1aには、アタッチメントプレート20が、固定用ネジ13によって、着脱可能に取り付けられる。このアタッチメントプレート20は、図8(a)に一例を示すように、全体として表裏面が平坦面である矩形状の板状材であり、一部に閉じた側周面21で区画される成形開口22を有している。後記するように、この成形開口22が成形品キャビティ4として機能する。なお、図8(a)において、25はマスターフレーム1aに取り付け時に利用されるネジ穴である。
【0117】
前記アタッチメントプレート20は、図3に示すように、マスターフレーム1aに取り付けられた後、図4に示すように型締めすることによって、両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟まれた姿勢となる。そして、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側A,Bと、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22の側周面21とによって区画された空間が、成形品キャビティ4を構成する。
【0118】
各マスターフレーム1a,1bには、前記蒸気吹き出しプレート2a,2bと背面プレート7a,7bとの間に位置するようにして、補強サポート40が設けられる。前記補強サポート40は、型締めしたときに、少なくとも、蒸気吹き出しプレート2a,2bが前記成形品キャビティ4に対向することとなる領域の背面側と接する部分の形状が、所定幅である線状をなす板状の補強サポートである。
【0119】
図3および図5に示す例において、前記補強サポート40は、幅20mm程度のアルミ合金等からなる板状部材であり、前記マスターフレーム1a,1bの全幅にわたるようにして、150〜200mm程度の間隔をおいて、複数枚(図示の例では5枚)が配置されている。なお、図5で、アタッチメントプレート20に形成した成形開口22によって形成される成形品キャビティ4を点線で示しており、40aで示す部分が、補強サポート40における、蒸気吹き出しプレート2a,2bの成形品キャビティ4に対向する領域の背面側に位置する部分となる。
【0120】
図6は、前記補強サポート40の他の例を示しており、この例で、補強サポート40はマスターフレーム1a,1bの全幅にはわたってなく、蒸気吹き出しプレート2a,2bが成形品キャビティ1a,1bに対向する領域よりも少し長い長さの板状の補強サポートとされている。そして、蒸気吹き出しプレート2a,2bの他の領域と背面プレート7a,7bとの間には、従来の発泡成形型の場合と同様、円柱状または円筒状の補強サポート8が配置される。
【0121】
図7は、前記補強サポート40のさらに他の例を示しており、ここでは、図5に示した補強サポート40と同様であるが、適数の蒸気通過口42がさらに形成されている。
【0122】
必須の構成ではないが、前記したアタッチメントプレート20は、図3に示すように、マスターフレーム1aに固定した状態で、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23を有しており、前記突出領域23には、貫通孔24が形成されている。また、マスターフレーム1aの下端部には、前記アタッチメントプレート20の下端部を支持するための支持体13が形成されている。
【0123】
上記の第1形態に係る発泡成形型1では、図3に示すように、型を開いて、適宜形状の成形開口22を備えたアタッチメントプレート20をマスターフレーム1aに取り付け、図4に示すように型締めをする。それにより、成形品キャビティ4が形成される。原料フィーダー5から、発泡性樹脂粒子を成形品キャビティ4内に充填し、蒸気供給口15から過熱水蒸気を供給する。供給された過熱水蒸気は、マスターフレーム1a、1bから、蒸気吹き出しプレート2a,2bに形成したベント孔11を通って、成形品キャビティ4内に入り、発泡性樹脂粒子を所要に発泡させる。
【0124】
発泡により発泡圧が発生する。特に、前記した推力伝達材のような低倍発泡成形品を成形する場合には、大きな発泡圧が成形品キャビティ4内に形成される。しかし、上記したように、発泡成形型1では、蒸気吹き出しプレート2a,2bの少なくとも前記成形品キャビティ4に対向する領域の背面側と、背面プレート7a,7bとの間に、前記したように、蒸気吹き出しプレート2a,2bの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート40が設けられている。そのために、成形品キャビティ4内に形成される発泡圧を広い面積で受けることができ、それにより、蒸気吹き出しプレート2a,2bが変形するのを効果的に抑制することができる。結果として発泡成形型1の変形が抑制される。
【0125】
なお、上記した本発明による低倍発泡成形体である推力伝達材を成形するに当たっては、例えば特公平5−87364号公報に記載されるような、定量加圧充填方式を採用することは好ましい。それにより、発泡性粒子あるいは予備発泡粒子の均一な充填が可能となり、製品の部位による応力バラツキをなくすことができる。さらに、型締めの後に、発泡成形が終わるまで型締め圧力を継続することで型の開きをなくすことができ、均一な厚みの製品を得ることができる。
【0126】
また、上記の発泡成形型1では、アタッチメントプレート20を交換するだけで、異なる形状または厚みの成形品を成形することができる。すなわち、アタッチメントプレート20を、図8(a)(b)(c)に示すように、その成形開口22の形や形状の異なるもの、あるいは厚みの異なるものと交換することで、形状や厚みの異なる成形品を成形することができる。なお、図8(b)(c)に示すアタッチメントプレート20は、全体形状は図8(a)に示したアタッチメントプレート20と同じであるが、図8(b)に示す例では、比較して小型の成形開口22aが4個形成されており、図8(c)に示す例では比較して幅は狭いがほぼ180度まで広がった扇型の成形開口22bが2個形成されている。
【0127】
また、図示のアタッチメントプレート20のように、マスターフレーム1aに取り付けたときに、マスターフレーム1aから上方に突出する突出領域23をアタッチメントプレート20が有する場合には、そこを利用し、そこに、クレーン(不図示)等の作業機器に接続するフック30を引っ掛けておくことにより、アタッチメントプレート20を移動運搬が容易になり、また、マスターフレーム1aに対する着脱操作も容易となる。
【0128】
なお、上記の例では、アタッチメントプレート20は固定側のマスターフレーム1a側に取り付けられているが、エジェクターピン7が移動側から固定側へ突き出される場合には、移動側のマスターフレーム1bに取り付けることもできる。
【0129】
[第2形態の発泡成形型]
次に図9〜図17を参照して、第2形態の発泡成形型100の一実施の形態を説明する。第2形態の発泡成形型100は、先に図18に基づき説明した発泡成形型とほぼ同じものであるが、一方のマスターフレームに、図示のものでは固定側のマスターフレーム1aに、複数本(以下に説明するものでは、9本)の原料フィーダー5が取り付けられている点で、基本的に構成上の違いがある。
【0130】
図9および図10に示すように、発泡成形型100は、第1形態の発泡成形型1と同様に、固定側および移動側のマスターフレーム1a,1bを有し、それぞれの前面側(成形品キャビティ4側)に平坦な蒸気吹き出しプレート2a,2bが取り付けられている。この蒸気吹き出しプレート2a,2bは、従来のキャビティ金型やコア金型と同様に蒸気透過性を有するもので、図10に示されるように、コアベント10が打ち込まれたベント孔11を備えている。なお、図9において、6はエジェクターピン、8は補強サポートである。後に説明するように、前記エジェクターピン6は、マスターフレーム1aに複数本取り付けられるが、図示の複雑さを回避する目的で、図9には1本のエジェクターピン6のみを示している。なお、特に図示しないが、第2形態の発泡成形型100においても、円柱状または円筒状の補強サポートの補強サポート8に代えて、第1形態の発泡成形型1で用いた、蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート40を用いることもできる。
【0131】
図10に示すように、上記蒸気吹き出しプレート2a,2bは、マスターフレーム1a,1bの前面側A,Bを覆うようにして、固定用ネジ12によって、マスターフレーム1a,1bに取り付けられており、これによって両蒸気吹き出しプレート2a,2bの前面側はそれぞれ一平面となっている。なお、図10において、9は、各部材間をシールするためのパッキン材である。
【0132】
固定側のマスターフレーム1aには、9本の原料フィーダー5a〜5iが、その原料吹き出し口を前記蒸気吹き出しプレート2aの面内に位置するようにして取り付けてある。図9には、その中の3本の原料フィーダー5d〜5fが示されており、図11は、蒸気吹き出しプレート2aの面内において、9本の原料フィーダー5a〜5iのそれぞれの原料吹き出し口が位置する状態を示している。図示のように、9本の原料フィーダー5a〜5iは、縦方向および横方向に所定の距離を置くようにして、固定側のマスターフレーム1a側に取り付けられている。
【0133】
なお、図11において、14は、蒸気吹き出しプレート2aを固定側マスターフレーム1a側に取り付けるときに、前記固定用ネジ12が通過する開口である。また、図11では、蒸気吹き出しプレート2aにおける図10に示したコアベント10およびベント孔11は、図示が省略されている。
【0134】
固定側のマスターフレーム1aには、アタッチメントプレート20が、固定用ネジ13によって、着脱可能に取り付けられる。第2形態の発泡成形型100においては、アタッチメントプレート20には、異なる数および形状の成形開口22を備えた複数枚のアタッチメントプレート20a〜20dが群として用いられ、群を構成する各アタッチメントプレート20a〜20dは、固定側のマスターフレーム1aに対して、選択的に取り付け可能となっている。また、すべてのアタッチメントプレート20a〜20dは、全体として表裏面が平坦面である矩形状の板状材である。
【0135】
図12に示すアタッチメントプレート20aは、閉じた側周面21で区画される1個の成形開口22を有しており、この成形開口22が成形品キャビティ4として機能する。なお、図12において、25は、アタッチメントプレート20aをマスターフレーム1aに取り付け時に固定用ネジ13が通過する開口であり、30は、クレーン(不図示)等の作業機器に接続するフックであって、アタッチメントプレート20aを着脱する時あるいは移動する時に、アタッチメントプレート20aに形成した開口26にフック30を取り付けるようにして利用される。
【0136】
図9および図10は、図12に示すアタッチメントプレート20aを固定側のマスターフレーム1aに取り付けた状態を示しており、アタッチメントプレート20aは、固定側のマスターフレーム1aの蒸気吹き出しプレート2aの面に重ね合わせた状態で、固定用ネジ13によって取り付けられる。
【0137】
図13は、その状態をアタッチメントプレート20a側から見て示す平面図である。図示されるように、この例では、アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22内には、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aの面内での9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、横中列である3個の原料フィーダー5b,5e,5hの原料吹き出し口が位置しており、図で下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと、上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iは、アタッチメントプレート20aによって、その原料吹き出し口は閉鎖されている。
【0138】
そのようにして、アタッチメントプレート20aを固定側のマスターフレーム1aに取り付けた後、可動側のマスターフレーム1bを移動して、図10に示すように型締めをする。それにより、アタッチメントプレート20aは、両蒸気吹き出しプレート2a,2b間に挟まれた姿勢となる。そして、両蒸気吹き出しプレート2a,2bのそれぞれ一平面となっている前面側A,Bと、アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22の側周面21とによって区画された空間が、成形品キャビティ4を構成する。
【0139】
型締め後、成形品キャビティ4内に、一例として、原料である未発泡粒子または嵩発泡倍数が2.0〜20倍の範囲内に予備発泡させてなる低倍発泡粒子を、原料フィーダー5b,5e,5hから充填し、また加熱蒸気を供給することで、発泡倍数が1.5〜5倍程度の低倍発泡成形体が型内発泡成形される。
【0140】
なお、この例において、原料供給は、所定の原料供給源からすべての原料フィーダー5a〜5iに対して行ってもよい。その場合でも、下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20aによって閉鎖されているので、格別の支障は生じない。しかし、成形処理の容易性と原料の無駄を無くす観点から、各原料フィーダー5a〜5iには、原料吹き出し口よりも上流の位置に原料の供給を停止できる図示しないシャッターのような閉鎖手段を設けることが好ましく、その場合には、下横列の3個の原料フィーダー5a,5d,5gと上横列の3個の原料フィーダー5c,5f,5iに設けたシャッターは閉じておき、中横列の3個の原料フィーダー5b,5e,5hに設けたシャッターは開いた状態で、原料供給を行うようにする。
【0141】
その場合において、左右の原料フィーダー5bと5hのシャッターを閉じ、扇形をなす成形開口22のほぼ中央に位置する原料フィーダー5eのみから、計量済みの原料を加圧供給することにより、品質に偏りのない低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。従って、成形開口22の中央またはその近傍に、原料フィーダー5a〜5iのいずれか1つの吹き出し口が位置できるように、蒸気吹き出しプレート20a面内での原料吹き出し口の位置決めをするか、または、前記アタッチメントプレート2a面内での成形開口22の位置決めをすることは、好ましい態様となる。
【0142】
前記したように、固定側のマスターフレーム1aには、複数本のエジェクターピン6が取り付けてある。そして、各エジェクターピン6は、前記アタッチメントプレート20a〜20dのいずれを選択してマスターフレーム1aに取り付けたときであっても、そこに形成される成形品キャビティ4内にそのいずれかが入り込むことができるように、蒸気吹き出しプレート2aの面内で位置決めされている。
【0143】
上記の例では、型を開いた後、蒸気吹き出しプレート2aの面内における、前記アタッチメントプレート20aに形成した成形開口22に対向する箇所に位置する1個または複数個のエジェクターピン6を作動させることにより、成形品の脱型が行われる。図示しないが、各原料フィーダー5a〜5iの供給管内にエジェクターピン6を配置することもできる。その場合には、型を開いた後、原料供給に関与した原料フィーダー5のいずれかまたはすべてに取り付けたエジェクターピン6を作動させることにより、成形品の脱型が行われる。
【0144】
図14は、アタッチメントプレート20の他の形態を示す。このアタッチメントプレート20bは、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の4個の成形開口22bが、左右に2個ずつ形成されている。図15は、上記アタッチメントプレート20bを、図11に示した固定側のマスターフレーム1aの蒸気吹き出しプレート2aの面に重ね合わせた状態をアタッチメントプレート20b側から見て示している。
【0145】
図からわかるように、アタッチメントプレート20bでは、4つの成形開口22bは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、左上の原料フィーダー5cと、左下の原料フィーダー5aと、右上の原料フィーダー5iと、右下の原料フィーダー5gの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22bのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20bの面内にそれぞれ形成されている。そして、他の5個の原料フィーダー5b、5d、5e、5f、5hの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20bによって閉鎖されている。
【0146】
上記のアタッチメントプレート20bを、アタッチメントプレート20aに代えて固定側のマスターフレーム1aに取り付け、以下、アタッチメントプレート20aの場合と同様にして成形処理を行う。この場合には、4個の成形開口22bで形成される4個の成形品キャビティ4内に、同時に原料が供給されるので、1回の処理で、4個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。なお、成形品の脱型には、各成形品キャビティに対応し定置するエジェクターピン6を利用する。
【0147】
図16は、アタッチメントプレート20のさらに他の形態を、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aに重ね合わせた状態を、アタッチメントプレート側から見て示している。このアタッチメントプレート20cは、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の3個の成形開口22cが、中央部に3段に形成されている。図からわかるように、このアタッチメントプレート20cでは、3つの成形開口22cは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、中央に位置する原料フィーダー5d、5e、5fの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22cのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20cの面内にそれぞれ形成されている。そして、他の6個の原料フィーダー5a〜5cと5g〜5iの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20cによって閉鎖されている。
【0148】
上記のアタッチメントプレート20cを用いる場合には、3個の成形開口22cで形成される3個の成形品キャビティ4内に同時に原料が供給されるので、1回の処理で、3個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。
【0149】
図16は、アタッチメントプレート20のさらに他の形態を、図11に示した蒸気吹き出しプレート2aに重ね合わせた状態を、アタッチメントプレート側から見て示している。このアタッチメントプレート20dも、全体形状は図12に示したアタッチメントプレート20aと同じであるが、成形開口22と比較して小型であるやはり扇形の6個の成形開口22dが、左右に3個ずつ形成されている。図からわかるように、このアタッチメントプレート20dでは、6つの成形開口22dは、前記した9本の原料フィーダー5a〜5iのうちの、左縦列5a〜5cと、右縦列5g〜5iの原料吹き出し口が、扇形をなす各成形開口22dのほぼ中央に位置することができるように、アタッチメントプレート20dの面内にそれぞれ形成されている。縦中央列の3個の原料フィーダー5d〜5fの原料吹き出し口は、アタッチメントプレート20dによって閉鎖されている。
【0150】
上記のアタッチメントプレート20dを用いる場合には、6個の成形開口22dで形成される6個の成形品キャビティ4内に同時に原料が供給されるので、1回の処理で、6個の低倍発泡成形体を型内発泡成形することができる。
【0151】
以上の説明からわかるよう、第2形態の発泡成形型100では、アタッチメントプレート群を構成するいずれかのアタッチメントプレート、例えば、上記したアタッチメントプレート20a〜20dのいずれかを選択して用いることにより、一回の成形処理で1個または形や厚さの異なる2個以上の発泡成形品を同時に発泡成形することが可能であり、高い生産性を得ることができる。
【0152】
なお、上記の例では、1枚のアタッチメントプレート20a〜20dでもって成形品キャビティ4を構成するようにしたが、固定側と移動側のマスターフレーム1a,1bの両者に同じ形状のアタッチメントプレート20a〜20dを取り付け、この2枚のアタッチメントプレートを型締時に合わせることで1つの成形品キャビティ4を構成させることもできる。
【符号の説明】
【0153】
1…第1形態の発泡成形型、
100…第2形態の発泡成形型、
1a,1b…マスターフレーム、
2a,2b…蒸気吹き出しプレート、
4…成形品キャビティ、
5(5a〜5i)…原料フィーダー、
6…エジェクターピン、
8…円柱状または円筒状の補強サポート、
15…蒸気供給口、
20(20a〜20a)…アタッチメントプレート、
21…閉じた側周面、
22、22b、22c、22d…成形開口(成形品キャビティ)
23…アタッチメントプレートのマスターフレームから突出する領域、
40…蒸気吹き出しプレートの背面と接する部分の形状が線状をなす板状の補強サポート、
42…補強サポートに形成した蒸気通過口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材であって、密度が0.17〜0.67g/cm3であり、平均気泡径が60μm以下であることを特徴とする推力伝達材。
【請求項2】
融着率が70%以上である請求項1に記載の推力伝達材。
【請求項3】
発泡性粒子がポリスチレン系樹脂からなる発泡性粒子である請求項1または2に記載の推力伝達材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の推力伝達材を先端およびまたは後端に備えることを特徴とする推進管。
【請求項1】
発泡性粒子を型内で発泡させて得られる推力伝達材であって、密度が0.17〜0.67g/cm3であり、平均気泡径が60μm以下であることを特徴とする推力伝達材。
【請求項2】
融着率が70%以上である請求項1に記載の推力伝達材。
【請求項3】
発泡性粒子がポリスチレン系樹脂からなる発泡性粒子である請求項1または2に記載の推力伝達材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の推力伝達材を先端およびまたは後端に備えることを特徴とする推進管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−74688(P2011−74688A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228356(P2009−228356)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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