推進函体構造
【課題】隣接する推進函体どうしの推進伝達効率の向上を図るようにした。
【解決手段】推進函体構造は、横壁部11、12と縦壁部13、14とから矩形枠状に形成した複数の推進函体1、1を直列に配置し、推進函体1の接合端面1a、1bどうしを当接させて推進させるものであり、推進函体1には、その前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10を設け、後方接合端面1bの全体の範囲で弾性を有するとともに、雄側推力伝達部材10に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材20を設けている。雄側推力伝達部材10は横壁部11、12において横方向中央部を突出させた横壁凸状部10Aを形成してなり、雌側推力伝達部材20は横壁部11、12において横壁凸状部10Aに係合する横壁凹状部20Aを形成してなり、横壁凸状部10Aと横壁凹状部20Aとが係合した状態で雌側推力伝達部材20が圧縮及び復元可能となるようにした。
【解決手段】推進函体構造は、横壁部11、12と縦壁部13、14とから矩形枠状に形成した複数の推進函体1、1を直列に配置し、推進函体1の接合端面1a、1bどうしを当接させて推進させるものであり、推進函体1には、その前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10を設け、後方接合端面1bの全体の範囲で弾性を有するとともに、雄側推力伝達部材10に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材20を設けている。雄側推力伝達部材10は横壁部11、12において横方向中央部を突出させた横壁凸状部10Aを形成してなり、雌側推力伝達部材20は横壁部11、12において横壁凸状部10Aに係合する横壁凹状部20Aを形成してなり、横壁凸状部10Aと横壁凹状部20Aとが係合した状態で雌側推力伝達部材20が圧縮及び復元可能となるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法によって推進される推進函体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道や道路の地下立体交差を非開削工法で施工する場合、シールド工法によって大断面トンネルを小断面トンネルに分割して、これら小断面トンネルを小断面のシールド掘削機で施工し、最後に大断面トンネルの外殻をなす壁を一体化させるとともに、その壁の内部を撤去することで大断面トンネルを構築する方法がある。このような小断面を施工する方法として、推進工法により推進函体を推進させる方法があり、正面視で矩形枠状をなす推進函体の先頭にカッタを備えたシールド掘削機を備え、シールド掘削機の前進と共にシールド掘削機とこれを推進させるための推進ジャッキとの間に推進函体を順次継ぎ足しながら推進させる推進施工である。
【0003】
このような推進函体では、トンネル直線部においては前後の推進函体の接合端面どうしが均等に当接するので、推進力も接合端面において均等に伝達されることになる。ところが、トンネル曲線部では、その曲率半径方向で内側の接合端面どうしの間隔が小さくなって当接し、外側の接合端面どうしの間に隙間が生じることになり、その内側の接合端面に推進力が集中することになるため、推進函体の内側の接合端面が破損するおそれがあった。そこで、トンネル曲線部の内側の接合端面どうしが当接して破損しないようにした構造の推進函体が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1は、推進函体の一端側の接合端面に円弧面を有する凹部が形成され、他端側の接合端面に凹部に係合する凸部が形成され、トンネル曲線部において凹部と凸部とが係合した状態で、その凹凸部の両脇の一部に一方の推進函体の端面から突出した推力伝達部材が配置されている。つまり、凹凸部の係合面が円弧状をなしているので、トンネル曲線部において前後の推進函体が異なる方向を向いても、前記係合面は常に接触して係合した状態となり、この凹凸部と推力伝達部材とを介して推進力を伝達する構成について開示したものである。
【特許文献1】特開2007−70938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の推進函体構造では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1では、とくにトンネル曲線部において凹凸部と接合端面の一部に設けられた推力伝達部材とが、トンネル軸方向(推進方向)に隣接配置される推進函体どうしで推進力を伝達する箇所となり、両接合端面の接触面積が部分的な範囲となるので、推進函体どうしの間で確実に推進力を伝達することができないという欠点があった。そのため、推進力を確実に伝達できる推進函体の構造が求められており、その点で改良の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、隣接する推進函体どうしの推進伝達効率の向上を図るようにした推進函体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る推進函体構造では、上下一対の横壁部と、左右一対の縦壁部とを矩形の四辺に配置して矩形枠状に形成した複数の推進函体を直列に配置し、推進函体の接合端面どうしを当接させて推進させる推進函体構造であって、推進函体には、一端側の接合端面に雄側推力伝達部材が設けられ、他端側の接合端面全体の範囲に弾性を有するとともに雄側推力伝達部材に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材が設けられ、雄側推力伝達部材には、横壁部において横方向中央部を突出させた横壁凸状部が形成され、雌側推力伝達部材には、横壁部において横壁凸状部に係合する横壁凹状部が形成され、横壁凸状部と横壁凹状部とが係合した状態で、雌側推力伝達部材が圧縮及び復元可能となっていることを特徴としている。
本発明では、推進函体がトンネル直線部を推進するとき、横壁凸状部と横壁凹状部とが係合した状態で、雌側推力伝達部材が雄側推力伝達部材に対して全面にわたって均等に圧縮した状態で当接するため、接合端面全体を介して推進力を伝達することができる。そして、トンネル曲線部では、接合端面の曲率半径方向内側で推進方向に隣接する推進函体の接合端面どうしの離間が小さくなるため、雌側推力伝達部材の横壁凹状部がその弾性変形により圧縮する。一方、曲率半径方向の外側では同じく接合端面どうしの離間が大きくなるので、雌側推力伝達部材の横壁凹状部がその弾性変形により復元した状態となる。つまり、接合端面全体の範囲で雄側推力伝達部材と雌側推力伝達部材とが当接しているため、推進力を隣接する互いの接合端面全体で均等に伝達することができる。また、雌側推力伝達部材が隣接する推進函体どうしの間で緩衝材の役割を果たすことになることから、従来のようにトンネル曲線部で曲率半径方向内側に位置する接合端面に推進力が集中することによって生じる推進函体の破損を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明に係る推進函体構造では、横壁凹状部は、横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されていることが好ましい。
本発明では、横壁凹状部における個々の段差部が横壁凸状部の形状に対応して弾性変形することから、横壁凹状部と横壁凸状部との接触面積を増大させることができ、推進力の伝達効率をより一層向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る推進函体構造では、縦壁部には、雄側推力伝達部材に縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部が形成され、雌側推力伝達部材に縦壁凸状部に係合する縦側凹状部が形成されていることが好ましい。
本発明では、先行する推進函体が後続する推進函体に対して上向き又は下向きに傾斜した状態で推進する場合であっても、その推進函体の位置に応じて縦壁凹状部が弾性変形によって圧縮又は復元して縦壁凸状部に対して隙間無く当接した状態を保持することができるので、その接合端面全体で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の推進函体構造によれば、トンネル曲線部において、雌側推力伝達部材が推進方向に隣接する推進函体どうしの間隔に応じて弾性変形によって圧縮又は復元し、隣接する接合端面どうしが面全体の範囲で隙間無く当接した状態を保持することができ、接合端面どうしの接触面積を低下させることがなく、その接合端面全体の範囲で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができることから、推進伝達効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施の形態による推進函体構造について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による推進函体を設置しながら大断面トンネルを施工する概要を示す斜視図、図2は図1に示す推進函体どうしの接合構造を示す斜視図、図3は図2に示す推進函体の接合構造の平面図、図4は推進函体の接合構造の側面図、図5はトンネル直線部推進時の推進函体の状態を示す平面図、図6はトンネル曲線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、本第一の実施の形態による推進函体構造は、シールド工法によって大断面トンネルを小断面トンネルに分割して、これら小断面トンネルを小断面のシールド掘削機2で掘削し、推進函体1をシールド掘削機2によって掘削されたトンネルの軸方向に沿って順次継ぎ足して直列に配置させる推進工法に採用され、その推進函体1、1どうしの接合端面の構造に適用されるものである。なお、大断面トンネルは、小断面トンネルを形成する推進函体1を正面視で適宜上下左右に隣接させた状態で配置され、大断面トンネルの外殻部を残してその内部を撤去することにより構築されるが、詳細な説明については省略する。
【0013】
本推進函体1は、周知の推進工法と同様の施工手順によって構築される。つまり、推進先端に位置する推進函体1に、その推進函体1の外形より少し大きな外形をなすシールド掘削機2を備え、推進方向に連結された推進函体1の後尾に位置する推進函体1をトンネル基端部(発進部)に備えた推進ジャッキ(図示省略)によって推進させる。つまり、推進ジャッキの推進力を後方から先端のシールド掘削機2に伝達させることによって、すべての推進函体1を効率的に押し進めて推進を行うものである。
なお、以下の説明では、推進方向の進行側を「前方」とし、その反対側を「後方」として以下統一して用いる。
【0014】
図2に示すように、推進函体1は、RCコンクリート製をなし、上下一対の横壁部11、12と左右一対の縦壁部13、14とを矩形の四辺に配置して正面視で矩形枠体状に形成されている。そして、トンネル軸方向(推進方向)に配置される推進函体1、1同士の間には、周方向全周にわたって推力伝達部材10、20が設けられている。すなわち、推進函体1の前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10が設けられ、同じく後方接合端面1bに雄側推力伝達部材10に対向して雌側推力伝達部材20が設けられ、雄側推力伝達部材10と雌側推力伝達部材20とが当接した状態で係合されるようになっている。
【0015】
図2及び図3に示すように、雄側推力伝達部材10には、横壁部11、12において横方向中央部を突出させた横壁凸状部10Aが形成されている。一方、雌側推力伝達部材20には、横壁部11、12において横壁凸状部10Aに係合する横壁凹状部20Aが形成されている。
さらに具体的には、雄側推力伝達部材10は、横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されており、横方向の長さの異なる3枚の鋼板を前方側に短い長さのものが配置されるように重ね合わせて、それぞれを固着して形成されている。そして、雄側推力伝達部材10の段差形状は、幅方向(横方向)で左右対称となっている。
【0016】
雌側推力伝達部材20は、雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aとほぼ同形状に形成され、平面視で両側面が最も突出するように横方向中央部から両端部に向けて段差状となるように形成されている。雌側推力伝達部材20は、例えば発泡スチロールやゴムなどの弾性を有する材料から一体形成されている。
【0017】
また、図2及び図4に示すように、雄側推力伝達部材10は、縦壁部13、14において縦方向に均一な厚さ寸法をなす縦壁平板部10Bが形成されている。一方、雌側推力伝達部材20には、横壁部11、12において縦壁平板部10Bに当接する縦壁平板部20Bが形成されている。縦壁平板部10B、20Bは、横壁部11、12の横方向両端部に位置する雄側、雌側推力伝達部材10、20と面一となるようにほぼ同じ厚さ寸法となっている。
【0018】
図5に示すように、本推進函体1では、先行する推進函体1(符号1Aとする)の雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aに、後続する推進函体1(符号1Bとする)の雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aを係合させたとき、雌側推力伝達部材20がその弾性力で圧縮して雄側推力伝達部材10に当接した状態となるように構成されている。
そして、横壁凹状部20Aにおける個々の段差部が横壁凸状部10Aの形状に対応して弾性変形することから、横壁凹状部20Aと横壁凸状部10Aとの接触面積を増大させることができ、推進力の伝達効率をより一層向上させることが可能な構成となっている。
【0019】
次に、このように構成される推進函体1の作用について、図面に基づいて説明する。
図5に示すように、推進函体1がトンネル直線部を推進するとき、横壁凸状部10Aと横壁凹状部20Aとが係合した状態で、雌側推力伝達部材20がその弾性変形によって雄側推力伝達部材10に対して接合端面全体で均等に圧縮された状態で当接する。つまり、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしは、雄側推力伝達部材10および雌側推力伝達部材20を介して後続の推進函体1Bから先行する推進函体1Aへトンネル軸方向(推進方向)に推進力が伝達されることになる。ここで、図5に示すように示す符号Oは、推進函体1A、1Bの推進軸方向を示している。
【0020】
また、図6に示すように、推進函体1がトンネル曲線部を推進するとき、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしが所定の角度(図6に示す符号θ)をもって折り曲げられた状態で推進されることになる。ここで、図6において、符号Oは後続する推進函体1Bの推進軸線を示し、符号O´は先行する推進函体1Aの推進軸線を示している。
トンネル曲線部では、接合端面1a、1bの曲率半径方向内側S(曲率半径の中心側)で接合端面1a、1b同士の離間が小さくなるため、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aが弾性変形により圧縮する。一方、外側T(曲率半径の中心側と反対側)では接合端面1a、1b同士の離間が大きくなるので、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aがその弾性変形により復元(膨張)して雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aに当接した状態となる。
つまり、トンネル曲線部であっても、上述したトンネル直線部と同様に接合端面全体の範囲で雄側推力伝達部材10と雌側推力伝達部材20とが当接しているため、推進力を隣接する互いの接合端面全体で均等に伝達することができる。
【0021】
また、雌側推力伝達部材20は、隣接する推進函体1A、1Bどうしの間で緩衝材の役割を果たすことになることから、従来のようにトンネル曲線部で曲率半径方向内側に位置する接合端面に推進力が集中することによって生じる推進函体の破損を防ぐことができる。
【0022】
上述のように本第一の実施の形態による推進函体構造では、トンネル曲線部において、雌側推力伝達部材20が推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしの間隔に応じて弾性変形によって圧縮又は復元し、隣接する接合端面1a、1bどうしが面全体の範囲で隙間無く当接した状態で保持することができ、接合端面1a、1bどうしの接触面積を低下させることがなく、その接合端面全体の範囲で均等に伝達して先端部のシールド掘削機2へ確実に伝達することができることから、推進伝達効率を向上させることができる。
【0023】
次に、本発明の第一の実施の形態の変形例と、第二乃至第五の実施の形態について、図7乃至図12に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図7は本第一の実施の形態の第1変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図7に示すように、第1変形例は、雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aと雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aとの段差数を上述した第一の実施の形態の段差数(図3に示すように3段)よりさらに増加して6段としたものである。
【0024】
また、図8は本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図8に示すように、第2変形例は、上述した第一の実施の形態及び第1変形例では推進函体1の前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10(横壁凸状部10A)を設け、後方接合端面1bに雌側推力伝達部材20(横壁凹状部20A)を設けているが、これに代えて、前方接合端面1aに雌側推力伝達部材20を設け、後方接合端面1bに雄側推力伝達部材10を設けた構成となっている。
本第2変形例では、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bの位置に応じて、雌側推力伝達部材20がその弾性力によって圧縮又は復元し、雄側推力伝達部材10に対して接合端面全体で当接する構成であるので、第一の実施の形態及び第1変形例と同様に推進伝達効率を向上させる効果を奏する。
【0025】
また、図9は本発明の第二の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図、図10は本発明の第三の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図、図11は本発明の第四の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図9に示すように、第二の実施の形態は、第一の実施の形態では雄側推力伝達部材10において段差状をなす横壁凸状部10A(図3参照)を形成しているが、これに代えて平面視で台形状をなす横壁凸状部10Cを設けた構成となっている。そして、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aは、第一の実施の形態と同様に段差形状をなしている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aとが係合した状態で、台形状の横壁凸状部10Aが横壁凹状部20Aの段差部を圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0026】
図10に示すように、第三の実施の形態は、第一の実施の形態では雄側推力伝達部材10において段差状をなす横壁凸状部10A(図3参照)を形成し、第二の実施の形態では台形状をなす横壁凸状部10Cを形成しているが、これらに代えて平面視で円弧面を形成した横壁凸状部10Dを設けた構成となっている。そして、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aは、第一及び第二の実施の形態と同様に段差形状をなしている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Dとが係合した状態で、円弧状の横壁凸状部10Dが横壁凹状部20Aの段差部を圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0027】
また、図11に示すように、第四の実施の形態は、第三の実施の形態における段差形状の雌側推力伝達部材20A(図10参照)に代えて、円弧状をなす横壁凸状部10Dとほぼ同形状の円弧面を有する横壁凹状部20Cを設けた構成となっている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Cと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Dとが係合した状態で、横壁凸状部10Dが横壁凹状部20Cを圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0028】
また、図12は本発明の第五の実施の形態による推進函体構造を示す側面図であって、図4に対応する図である。
図12に示すように、第五の実施の形態は、第一の実施の形態の縦壁部13、14における縦壁平板部10B、20B(図4参照)に代えて段差部を形成させたものである。すなわち、雄側推力伝達部材10には、縦壁部13、14において縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部10Eが形成されている。縦壁凸状部10Eは、縦方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されており、長さの異なる鋼板を重ね合わせて固着した構成となっている。また、雌側推力伝達部材20は、雄側推力伝達部材10の縦壁凸状部10Eとほぼ同形状に形成され、平面視で両側面が最も突出するように縦方向中央部から両端部に向けて段差状に形成されている。そして、雌側推力伝達部材20は、弾性を有する材料によって形成されている。
【0029】
第五の実施の形態では、第一の実施の形態と同様にトンネル曲線部に対応可能であり、さらにこれに加えて、先行する推進函体1Aが後続する推進函体1Bに対して上向き又は下向きに傾斜した状態で推進する場合であっても、その推進函体の位置に応じて縦壁凹状部20Dが弾性変形によって圧縮又は復元(膨張)して縦壁凸状部10Eに対して隙間無く当接した状態を保持することができるので、その接合端面全体で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができる。
【0030】
以上、本発明による推進函体構造の第一乃至第五の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第一の実施の形態では、雄側推力伝達部材10は鋼板を積層させて形成したものであるが、このような形態に限定されることはなく、一体形成したものであってもかまわない。また、雄側推力伝達部材10の材料も鋼板であることに制限されることはなく、雌側推力伝達部材20と同様に弾性を有する材料であってもよい。
さらに、雄側推力伝達部材10、雌側推力伝達部材20の形状、厚さなどは、推進函体の大きさ、トンネル曲線部の曲率半径などの条件に応じて適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施の形態による推進函体を設置しながら大断面トンネルを施工する概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す推進函体どうしの接合構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示す推進函体の接合構造の平面図である。
【図4】推進函体の接合構造の側面図である。
【図5】トンネル直線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【図6】トンネル曲線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【図7】本第一の実施の形態の第1変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図8】本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図9】本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図10】本発明の第三の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図11】図11は本発明の第四の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図12】本発明の第五の実施の形態による推進函体構造を示す側面図であって、図4に対応する図である。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B 推進函体
1a 前方接合端面
1b 後方接合端面
10 雄側推力伝達部材
10A、10C、10D 横壁凸状部
10E 縦壁凸状部
11、12 横壁部
13、14 縦壁部
20 雌側推力伝達部材
20A、20C 横壁凹状部
20D 縦壁凹状部
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法によって推進される推進函体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道や道路の地下立体交差を非開削工法で施工する場合、シールド工法によって大断面トンネルを小断面トンネルに分割して、これら小断面トンネルを小断面のシールド掘削機で施工し、最後に大断面トンネルの外殻をなす壁を一体化させるとともに、その壁の内部を撤去することで大断面トンネルを構築する方法がある。このような小断面を施工する方法として、推進工法により推進函体を推進させる方法があり、正面視で矩形枠状をなす推進函体の先頭にカッタを備えたシールド掘削機を備え、シールド掘削機の前進と共にシールド掘削機とこれを推進させるための推進ジャッキとの間に推進函体を順次継ぎ足しながら推進させる推進施工である。
【0003】
このような推進函体では、トンネル直線部においては前後の推進函体の接合端面どうしが均等に当接するので、推進力も接合端面において均等に伝達されることになる。ところが、トンネル曲線部では、その曲率半径方向で内側の接合端面どうしの間隔が小さくなって当接し、外側の接合端面どうしの間に隙間が生じることになり、その内側の接合端面に推進力が集中することになるため、推進函体の内側の接合端面が破損するおそれがあった。そこで、トンネル曲線部の内側の接合端面どうしが当接して破損しないようにした構造の推進函体が、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1は、推進函体の一端側の接合端面に円弧面を有する凹部が形成され、他端側の接合端面に凹部に係合する凸部が形成され、トンネル曲線部において凹部と凸部とが係合した状態で、その凹凸部の両脇の一部に一方の推進函体の端面から突出した推力伝達部材が配置されている。つまり、凹凸部の係合面が円弧状をなしているので、トンネル曲線部において前後の推進函体が異なる方向を向いても、前記係合面は常に接触して係合した状態となり、この凹凸部と推力伝達部材とを介して推進力を伝達する構成について開示したものである。
【特許文献1】特開2007−70938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の推進函体構造では以下のような問題がある。
すなわち、特許文献1では、とくにトンネル曲線部において凹凸部と接合端面の一部に設けられた推力伝達部材とが、トンネル軸方向(推進方向)に隣接配置される推進函体どうしで推進力を伝達する箇所となり、両接合端面の接触面積が部分的な範囲となるので、推進函体どうしの間で確実に推進力を伝達することができないという欠点があった。そのため、推進力を確実に伝達できる推進函体の構造が求められており、その点で改良の余地が残されていた。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、隣接する推進函体どうしの推進伝達効率の向上を図るようにした推進函体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る推進函体構造では、上下一対の横壁部と、左右一対の縦壁部とを矩形の四辺に配置して矩形枠状に形成した複数の推進函体を直列に配置し、推進函体の接合端面どうしを当接させて推進させる推進函体構造であって、推進函体には、一端側の接合端面に雄側推力伝達部材が設けられ、他端側の接合端面全体の範囲に弾性を有するとともに雄側推力伝達部材に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材が設けられ、雄側推力伝達部材には、横壁部において横方向中央部を突出させた横壁凸状部が形成され、雌側推力伝達部材には、横壁部において横壁凸状部に係合する横壁凹状部が形成され、横壁凸状部と横壁凹状部とが係合した状態で、雌側推力伝達部材が圧縮及び復元可能となっていることを特徴としている。
本発明では、推進函体がトンネル直線部を推進するとき、横壁凸状部と横壁凹状部とが係合した状態で、雌側推力伝達部材が雄側推力伝達部材に対して全面にわたって均等に圧縮した状態で当接するため、接合端面全体を介して推進力を伝達することができる。そして、トンネル曲線部では、接合端面の曲率半径方向内側で推進方向に隣接する推進函体の接合端面どうしの離間が小さくなるため、雌側推力伝達部材の横壁凹状部がその弾性変形により圧縮する。一方、曲率半径方向の外側では同じく接合端面どうしの離間が大きくなるので、雌側推力伝達部材の横壁凹状部がその弾性変形により復元した状態となる。つまり、接合端面全体の範囲で雄側推力伝達部材と雌側推力伝達部材とが当接しているため、推進力を隣接する互いの接合端面全体で均等に伝達することができる。また、雌側推力伝達部材が隣接する推進函体どうしの間で緩衝材の役割を果たすことになることから、従来のようにトンネル曲線部で曲率半径方向内側に位置する接合端面に推進力が集中することによって生じる推進函体の破損を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明に係る推進函体構造では、横壁凹状部は、横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されていることが好ましい。
本発明では、横壁凹状部における個々の段差部が横壁凸状部の形状に対応して弾性変形することから、横壁凹状部と横壁凸状部との接触面積を増大させることができ、推進力の伝達効率をより一層向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る推進函体構造では、縦壁部には、雄側推力伝達部材に縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部が形成され、雌側推力伝達部材に縦壁凸状部に係合する縦側凹状部が形成されていることが好ましい。
本発明では、先行する推進函体が後続する推進函体に対して上向き又は下向きに傾斜した状態で推進する場合であっても、その推進函体の位置に応じて縦壁凹状部が弾性変形によって圧縮又は復元して縦壁凸状部に対して隙間無く当接した状態を保持することができるので、その接合端面全体で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の推進函体構造によれば、トンネル曲線部において、雌側推力伝達部材が推進方向に隣接する推進函体どうしの間隔に応じて弾性変形によって圧縮又は復元し、隣接する接合端面どうしが面全体の範囲で隙間無く当接した状態を保持することができ、接合端面どうしの接触面積を低下させることがなく、その接合端面全体の範囲で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができることから、推進伝達効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第一の実施の形態による推進函体構造について、図1乃至図6に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態による推進函体を設置しながら大断面トンネルを施工する概要を示す斜視図、図2は図1に示す推進函体どうしの接合構造を示す斜視図、図3は図2に示す推進函体の接合構造の平面図、図4は推進函体の接合構造の側面図、図5はトンネル直線部推進時の推進函体の状態を示す平面図、図6はトンネル曲線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、本第一の実施の形態による推進函体構造は、シールド工法によって大断面トンネルを小断面トンネルに分割して、これら小断面トンネルを小断面のシールド掘削機2で掘削し、推進函体1をシールド掘削機2によって掘削されたトンネルの軸方向に沿って順次継ぎ足して直列に配置させる推進工法に採用され、その推進函体1、1どうしの接合端面の構造に適用されるものである。なお、大断面トンネルは、小断面トンネルを形成する推進函体1を正面視で適宜上下左右に隣接させた状態で配置され、大断面トンネルの外殻部を残してその内部を撤去することにより構築されるが、詳細な説明については省略する。
【0013】
本推進函体1は、周知の推進工法と同様の施工手順によって構築される。つまり、推進先端に位置する推進函体1に、その推進函体1の外形より少し大きな外形をなすシールド掘削機2を備え、推進方向に連結された推進函体1の後尾に位置する推進函体1をトンネル基端部(発進部)に備えた推進ジャッキ(図示省略)によって推進させる。つまり、推進ジャッキの推進力を後方から先端のシールド掘削機2に伝達させることによって、すべての推進函体1を効率的に押し進めて推進を行うものである。
なお、以下の説明では、推進方向の進行側を「前方」とし、その反対側を「後方」として以下統一して用いる。
【0014】
図2に示すように、推進函体1は、RCコンクリート製をなし、上下一対の横壁部11、12と左右一対の縦壁部13、14とを矩形の四辺に配置して正面視で矩形枠体状に形成されている。そして、トンネル軸方向(推進方向)に配置される推進函体1、1同士の間には、周方向全周にわたって推力伝達部材10、20が設けられている。すなわち、推進函体1の前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10が設けられ、同じく後方接合端面1bに雄側推力伝達部材10に対向して雌側推力伝達部材20が設けられ、雄側推力伝達部材10と雌側推力伝達部材20とが当接した状態で係合されるようになっている。
【0015】
図2及び図3に示すように、雄側推力伝達部材10には、横壁部11、12において横方向中央部を突出させた横壁凸状部10Aが形成されている。一方、雌側推力伝達部材20には、横壁部11、12において横壁凸状部10Aに係合する横壁凹状部20Aが形成されている。
さらに具体的には、雄側推力伝達部材10は、横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されており、横方向の長さの異なる3枚の鋼板を前方側に短い長さのものが配置されるように重ね合わせて、それぞれを固着して形成されている。そして、雄側推力伝達部材10の段差形状は、幅方向(横方向)で左右対称となっている。
【0016】
雌側推力伝達部材20は、雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aとほぼ同形状に形成され、平面視で両側面が最も突出するように横方向中央部から両端部に向けて段差状となるように形成されている。雌側推力伝達部材20は、例えば発泡スチロールやゴムなどの弾性を有する材料から一体形成されている。
【0017】
また、図2及び図4に示すように、雄側推力伝達部材10は、縦壁部13、14において縦方向に均一な厚さ寸法をなす縦壁平板部10Bが形成されている。一方、雌側推力伝達部材20には、横壁部11、12において縦壁平板部10Bに当接する縦壁平板部20Bが形成されている。縦壁平板部10B、20Bは、横壁部11、12の横方向両端部に位置する雄側、雌側推力伝達部材10、20と面一となるようにほぼ同じ厚さ寸法となっている。
【0018】
図5に示すように、本推進函体1では、先行する推進函体1(符号1Aとする)の雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aに、後続する推進函体1(符号1Bとする)の雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aを係合させたとき、雌側推力伝達部材20がその弾性力で圧縮して雄側推力伝達部材10に当接した状態となるように構成されている。
そして、横壁凹状部20Aにおける個々の段差部が横壁凸状部10Aの形状に対応して弾性変形することから、横壁凹状部20Aと横壁凸状部10Aとの接触面積を増大させることができ、推進力の伝達効率をより一層向上させることが可能な構成となっている。
【0019】
次に、このように構成される推進函体1の作用について、図面に基づいて説明する。
図5に示すように、推進函体1がトンネル直線部を推進するとき、横壁凸状部10Aと横壁凹状部20Aとが係合した状態で、雌側推力伝達部材20がその弾性変形によって雄側推力伝達部材10に対して接合端面全体で均等に圧縮された状態で当接する。つまり、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしは、雄側推力伝達部材10および雌側推力伝達部材20を介して後続の推進函体1Bから先行する推進函体1Aへトンネル軸方向(推進方向)に推進力が伝達されることになる。ここで、図5に示すように示す符号Oは、推進函体1A、1Bの推進軸方向を示している。
【0020】
また、図6に示すように、推進函体1がトンネル曲線部を推進するとき、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしが所定の角度(図6に示す符号θ)をもって折り曲げられた状態で推進されることになる。ここで、図6において、符号Oは後続する推進函体1Bの推進軸線を示し、符号O´は先行する推進函体1Aの推進軸線を示している。
トンネル曲線部では、接合端面1a、1bの曲率半径方向内側S(曲率半径の中心側)で接合端面1a、1b同士の離間が小さくなるため、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aが弾性変形により圧縮する。一方、外側T(曲率半径の中心側と反対側)では接合端面1a、1b同士の離間が大きくなるので、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aがその弾性変形により復元(膨張)して雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aに当接した状態となる。
つまり、トンネル曲線部であっても、上述したトンネル直線部と同様に接合端面全体の範囲で雄側推力伝達部材10と雌側推力伝達部材20とが当接しているため、推進力を隣接する互いの接合端面全体で均等に伝達することができる。
【0021】
また、雌側推力伝達部材20は、隣接する推進函体1A、1Bどうしの間で緩衝材の役割を果たすことになることから、従来のようにトンネル曲線部で曲率半径方向内側に位置する接合端面に推進力が集中することによって生じる推進函体の破損を防ぐことができる。
【0022】
上述のように本第一の実施の形態による推進函体構造では、トンネル曲線部において、雌側推力伝達部材20が推進方向に隣接する推進函体1A、1Bどうしの間隔に応じて弾性変形によって圧縮又は復元し、隣接する接合端面1a、1bどうしが面全体の範囲で隙間無く当接した状態で保持することができ、接合端面1a、1bどうしの接触面積を低下させることがなく、その接合端面全体の範囲で均等に伝達して先端部のシールド掘削機2へ確実に伝達することができることから、推進伝達効率を向上させることができる。
【0023】
次に、本発明の第一の実施の形態の変形例と、第二乃至第五の実施の形態について、図7乃至図12に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
図7は本第一の実施の形態の第1変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図7に示すように、第1変形例は、雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aと雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aとの段差数を上述した第一の実施の形態の段差数(図3に示すように3段)よりさらに増加して6段としたものである。
【0024】
また、図8は本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図8に示すように、第2変形例は、上述した第一の実施の形態及び第1変形例では推進函体1の前方接合端面1aに雄側推力伝達部材10(横壁凸状部10A)を設け、後方接合端面1bに雌側推力伝達部材20(横壁凹状部20A)を設けているが、これに代えて、前方接合端面1aに雌側推力伝達部材20を設け、後方接合端面1bに雄側推力伝達部材10を設けた構成となっている。
本第2変形例では、推進方向に隣接する推進函体1A、1Bの位置に応じて、雌側推力伝達部材20がその弾性力によって圧縮又は復元し、雄側推力伝達部材10に対して接合端面全体で当接する構成であるので、第一の実施の形態及び第1変形例と同様に推進伝達効率を向上させる効果を奏する。
【0025】
また、図9は本発明の第二の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図、図10は本発明の第三の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図、図11は本発明の第四の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
図9に示すように、第二の実施の形態は、第一の実施の形態では雄側推力伝達部材10において段差状をなす横壁凸状部10A(図3参照)を形成しているが、これに代えて平面視で台形状をなす横壁凸状部10Cを設けた構成となっている。そして、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aは、第一の実施の形態と同様に段差形状をなしている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Aとが係合した状態で、台形状の横壁凸状部10Aが横壁凹状部20Aの段差部を圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0026】
図10に示すように、第三の実施の形態は、第一の実施の形態では雄側推力伝達部材10において段差状をなす横壁凸状部10A(図3参照)を形成し、第二の実施の形態では台形状をなす横壁凸状部10Cを形成しているが、これらに代えて平面視で円弧面を形成した横壁凸状部10Dを設けた構成となっている。そして、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aは、第一及び第二の実施の形態と同様に段差形状をなしている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Aと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Dとが係合した状態で、円弧状の横壁凸状部10Dが横壁凹状部20Aの段差部を圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0027】
また、図11に示すように、第四の実施の形態は、第三の実施の形態における段差形状の雌側推力伝達部材20A(図10参照)に代えて、円弧状をなす横壁凸状部10Dとほぼ同形状の円弧面を有する横壁凹状部20Cを設けた構成となっている。すなわち、雌側推力伝達部材20の横壁凹状部20Cと雄側推力伝達部材10の横壁凸状部10Dとが係合した状態で、横壁凸状部10Dが横壁凹状部20Cを圧縮することで、両接合端面どうしがその接合端面全体にわたって当接する構成となっている。
【0028】
また、図12は本発明の第五の実施の形態による推進函体構造を示す側面図であって、図4に対応する図である。
図12に示すように、第五の実施の形態は、第一の実施の形態の縦壁部13、14における縦壁平板部10B、20B(図4参照)に代えて段差部を形成させたものである。すなわち、雄側推力伝達部材10には、縦壁部13、14において縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部10Eが形成されている。縦壁凸状部10Eは、縦方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されており、長さの異なる鋼板を重ね合わせて固着した構成となっている。また、雌側推力伝達部材20は、雄側推力伝達部材10の縦壁凸状部10Eとほぼ同形状に形成され、平面視で両側面が最も突出するように縦方向中央部から両端部に向けて段差状に形成されている。そして、雌側推力伝達部材20は、弾性を有する材料によって形成されている。
【0029】
第五の実施の形態では、第一の実施の形態と同様にトンネル曲線部に対応可能であり、さらにこれに加えて、先行する推進函体1Aが後続する推進函体1Bに対して上向き又は下向きに傾斜した状態で推進する場合であっても、その推進函体の位置に応じて縦壁凹状部20Dが弾性変形によって圧縮又は復元(膨張)して縦壁凸状部10Eに対して隙間無く当接した状態を保持することができるので、その接合端面全体で均等に伝達して先端部の掘削機へ確実に伝達することができる。
【0030】
以上、本発明による推進函体構造の第一乃至第五の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本第一の実施の形態では、雄側推力伝達部材10は鋼板を積層させて形成したものであるが、このような形態に限定されることはなく、一体形成したものであってもかまわない。また、雄側推力伝達部材10の材料も鋼板であることに制限されることはなく、雌側推力伝達部材20と同様に弾性を有する材料であってもよい。
さらに、雄側推力伝達部材10、雌側推力伝達部材20の形状、厚さなどは、推進函体の大きさ、トンネル曲線部の曲率半径などの条件に応じて適宜設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施の形態による推進函体を設置しながら大断面トンネルを施工する概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示す推進函体どうしの接合構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示す推進函体の接合構造の平面図である。
【図4】推進函体の接合構造の側面図である。
【図5】トンネル直線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【図6】トンネル曲線部推進時の推進函体の状態を示す平面図である。
【図7】本第一の実施の形態の第1変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図8】本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図9】本第一の実施の形態の第2変形例による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図10】本発明の第三の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図11】図11は本発明の第四の実施の形態による推進函体構造を示す平面図であって、図3に対応する図である。
【図12】本発明の第五の実施の形態による推進函体構造を示す側面図であって、図4に対応する図である。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B 推進函体
1a 前方接合端面
1b 後方接合端面
10 雄側推力伝達部材
10A、10C、10D 横壁凸状部
10E 縦壁凸状部
11、12 横壁部
13、14 縦壁部
20 雌側推力伝達部材
20A、20C 横壁凹状部
20D 縦壁凹状部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対の横壁部と、左右一対の縦壁部とを矩形の四辺に配置して矩形枠状に形成した複数の推進函体を直列に配置し、前記推進函体の接合端面どうしを当接させて推進させる推進函体構造であって、
前記推進函体には、一端側の接合端面に雄側推力伝達部材が設けられ、他端側の接合端面全体の範囲に弾性を有するとともに前記雄側推力伝達部材に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材が設けられ、
前記雄側推力伝達部材には、前記横壁部において横方向中央部を突出させた横壁凸状部が形成され、
前記雌側推力伝達部材には、前記横壁部において前記横壁凸状部に係合する横壁凹状部が形成され、
前記横壁凸状部と前記横壁凹状部とが係合した状態で、前記雌側推力伝達部材が圧縮及び復元可能となっていることを特徴とする推進函体構造。
【請求項2】
前記横壁凹状部は、前記横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の推進函体構造。
【請求項3】
前記縦壁部には、前記雄側推力伝達部材に縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部が形成され、前記雌側推力伝達部材に前記縦壁凸状部に係合する縦側凹状部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の推進函体構造。
【請求項1】
上下一対の横壁部と、左右一対の縦壁部とを矩形の四辺に配置して矩形枠状に形成した複数の推進函体を直列に配置し、前記推進函体の接合端面どうしを当接させて推進させる推進函体構造であって、
前記推進函体には、一端側の接合端面に雄側推力伝達部材が設けられ、他端側の接合端面全体の範囲に弾性を有するとともに前記雄側推力伝達部材に当接した状態で係合する雌側推力伝達部材が設けられ、
前記雄側推力伝達部材には、前記横壁部において横方向中央部を突出させた横壁凸状部が形成され、
前記雌側推力伝達部材には、前記横壁部において前記横壁凸状部に係合する横壁凹状部が形成され、
前記横壁凸状部と前記横壁凹状部とが係合した状態で、前記雌側推力伝達部材が圧縮及び復元可能となっていることを特徴とする推進函体構造。
【請求項2】
前記横壁凹状部は、前記横方向両端部から中央部に向けて段差状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の推進函体構造。
【請求項3】
前記縦壁部には、前記雄側推力伝達部材に縦方向中央部を突出させた縦壁凸状部が形成され、前記雌側推力伝達部材に前記縦壁凸状部に係合する縦側凹状部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の推進函体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−114668(P2009−114668A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286483(P2007−286483)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】
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