説明

推進管およびトンネル施工方法

【課題】簡易な構成でその製作コストも安価であり、周辺地盤に与える影響が極めて少ない推進工法で使用される推進管と、この推進管を使用してなるトンネル施工方向を提供する。
【解決手段】推進管10は、本体管体1と、該本体管体1の推進方向前面11から突出して該本体管体1よりも相対的に小断面の先行推進管体2と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法で使用される先導管となる推進管と、この推進管を使用してトンネルを施工するトンネル施工方法に係り、特に、施工時の地盤変位を効果的に抑止しながら大小多様な規模のトンネルを施工することのできる推進管およびこれを使用してなるトンネル施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部における踏切や幹線道路の交差点などにおける交通渋滞を緩和もしくは解消することを目的として、アンダーパスによる立体交差化が都市部の各所で進められている。
【0003】
従来のアンダーパス施工は開削工法によっておこなわれていたが、開削工法では、供用道路内に作業帯を設置したり車線規制を強いることによって交通渋滞を招くこと、多様な施工環境規制のために往々にして工期が長期化すること、工期が長期化することでおのずと工費が高騰すること、などの課題が顕著となっていた。
【0004】
これらの課題に対し、シールド工法や推進工法を使用してアンダーパスを施工する方法が現在主流となっている。中でも、掘進機等を小型化(小断面化)することにより、マシンコストを低減させるとともに、小型の掘進機等を使用することによって地盤変位を極力抑え、小断面トンネルを順次隣接施工した後に小断面トンネル同士を連通させて大断面トンネル(からなるアンダーパス)を施工するといった技術も現在実施されている。
【0005】
ここで、トンネルを施工した際に地盤変位を招く影響範囲(もしくは地盤の緩み範囲)に関しては、図10に示すように、地盤の内部摩擦角をφ(度)、トンネルTもしくは掘進機等の外径をDとした場合に、この外径DのトンネルTの斜め上方に、π/4+φ/2の立ち角度で傾斜する2つの影響線Eが地表と交差する2点間距離Lにて求めることができる。同図において、地表面沈下量の最大値はトンネルTの中心直上であって、その沈下量をδで示している。図より、トンネルTの外径が大きくなるほど地盤変位を招く影響範囲は平面的に広範囲となること、地盤が軟質なほど最大沈下量δが大きくなることは理解に易い。
【0006】
上記する踏切や幹線道路の交差点においてはこの沈下量を最小限に抑止することが求められており、そのために許容沈下量も数mm〜数cm程度に設定されており、工事期間中は勿論のこと、供用開始後においても厳格な沈下量管理がおこなわれている。
【0007】
このような状況下で、施工されるアンダーパスの大断面化を図ろうとする場合に、上記のごとく、小断面トンネルを順次隣接施工しながら該トンネル間を連通させる施工方法を採用することにより、上記する地盤変位を極力抑えながら大断面トンネルを施工することができる。現在注目されているアンダーパス施工方法の一つとして、いわゆるハーモニカ工法と称される施工方法を挙げることができる。
【0008】
この工法は、大断面トンネルを3〜4m程度の箱型に等分し、たとえば泥土圧式で矩形断面を有し、複数の揺動カッタを前面に具備する掘進機にて小断面のトンネルを隣接施工する方法である。この掘進機の推力は元押しジャッキによるものであり、曲線区間には方向修正ジャッキを適宜使用しながら多様な線形のアンダーパスを構築することができる。なお、ハーモニカ工法とは、掘削後の坑口形状がハーモニカの口元のようであることからその名称が付けられている。
【0009】
ところで、トンネル施工に際し、周辺地盤変位を極力抑えることを目的として発案されたシールド掘進機に関する技術として、特許文献1を挙げることができる。このシールド掘進機は、上下に2基を重ねて構成したものであり、上方には前面開放型の掘進機を、下方には前面密閉型でたとえば揺動カッタを具備する掘進機を配置し、双方をスライド自在とし、上部先行で下部追従の掘進形態とするものである。このシールド掘進機を使用することにより、全断面を一度に掘進する一般のシールド掘進機に比して、周辺地盤に与える影響を可及的に少なくすることができ、地盤変位を抑止しながらトンネルの施工をおこなうことができる。
【0010】
【特許文献1】特許第3684537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記する特許文献1に開示のシールド掘進機によれば、周辺地盤の地盤変位を極力抑えながらトンネル施工をおこなうことが可能となる。しかし、トンネルの大断面化に応じて上方の前面開放型掘進機の断面も大きくなることから、大断面トンネルの施工においては周辺地盤への影響が依然として懸念される。
【0012】
また、上方を前面開放型の掘進機、下方を密閉型で揺動カッタを具備する掘進機とし、双方をスライド自在な構成としたシールド掘進機であることより、マシン製作コストの高騰は避けられない。
【0013】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成であり、もってその製作コストを何等高騰させることなく、しかも、周辺地盤に与える影響が極めて少ない、推進工法で使用される推進管と、この推進管を使用することにより、周辺地盤変位を効果的に抑えながら、大小多様な規模のトンネルを施工することのできるトンネルの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による推進管は、本体管体と、該本体管体の推進方向前面から突出して該本体管体よりも相対的に小断面の先行推進管体と、からなるものである。
【0015】
本発明の構成からなる推進管によれば、本体管体の推進方向前面において、該推進方向に突出する先行推進管体が設けられたものであり、この先行推進管体の断面が本体管体のそれに比して小断面に形成されていることにより、該推進管が地盤内を推進した際に、相対的に小断面の先行推進管体が先行して地盤内を推進して地盤を切削しながらその上方地盤を支持して地盤変位を極力抑えることができる。本発明の推進管の構成により、先行推進管体の推進時における周辺地盤の緩み範囲と、これに遅れて推進する本体管体の推進時の地盤の緩み範囲を分離することができ、結果として、周辺地盤の地盤変位量(最大地盤変位量)を格段に低減することが可能となる。
【0016】
ここで、先行推進管体、本体管体ともに前面が開放型となっており、双方の前面には地盤切削用の刃口が取り付けられている。なお、先行推進管体の前面(刃口部)と本体管体の前面(刃口部)は、地盤性状に合わせて双方の刃口部における地盤の緩み範囲が干渉しない程度に離間しているのが好ましく、この観点から、本体管体の前面からの先行推進管体の突出長が設定されるのがよい。
【0017】
先行推進管体の推進に応じてその前面に設けられた開口から地盤をその内部に取り込み、推進管の内部から人力もしくはバックホー等の掘削機等で地盤を後方へ払い出し、ベルトコンベアや搬送車等の適宜の搬送手段にて坑口側へ切削地盤を送り出すことができる。
【0018】
推進管は一方の坑口側に設けられた元押しジャッキ等の押出し装置にて地盤内へ押出されるようになっており、ある地点まで先行推進管体が到達して切削地盤を推進管内へ取り込み、遅れて後方の本体管体が該地点に到達して切削地盤を推進管内へ取り込むとともに、トンネル形成用の管路(もしくは函体)が推進管と元押しジャッキの間に設置され、これとその前方の推進管が押出される。これらのステップが順次繰り返されて、地盤内に所定延長の管路(トンネル)が施工される。
【0019】
上記するように、本発明の推進管は極めて簡素な構成の推進管であることより、比較的安価に該推進管を製作することができる。加えて、推進管の推進に際して常に比較的小断面の先行推進管体が先行して地盤を切削しながらその上方地盤を支持し、この先行推進管体の推進のみによる地盤変位がまず齎され、次いで、遅れて、先行推進管体の支持領域を除いた本体管体の推進に起因する地盤変位が齎されることになる。このことは、先行推進管体による地盤変位と本体管体(から先行推進管体が支持する領域を除いた領域)による地盤変位とが分離されることを意味しており、たとえば、本体管体と同断面の従来一般の推進管の推進時における地盤変位に対して、地盤変位量を格段に低減させることができる。
【0020】
ここで、前記する推進管の一実施の形態として、前記本体管体および前記先行推進管体はいずれも正面視が方形であり、双方の上面が面一もしくは略面一となっている形態がある。
【0021】
正面視が方形とは、正面視が矩形、正方形をはじめとする四角形全般を包含する意味である。
【0022】
また、先行推進管体と本体管体双方の上面が面一もしくは略面一となっていることにより、先行推進管体によってできる造成坑範囲が本体管体によってできる造成坑範囲に包含されることとなり、先行推進管体と本体管体の双方が同一レベルで上方地盤を支持することができ、推進管の製作容易化を図ることができる。
【0023】
さらに、本発明による推進管の他の実施の形態として、以下の形態を挙げることができる。
【0024】
その一つは、前記先行推進管体が、上面視で前記本体管体の前面中央部に位置している形態である。
【0025】
他の一つは、前記先行推進管体が、上面視で前記本体管体の前面の左右いずれかにオフセットして位置している形態である。ここで、左右にオフセットとは、前面中央から左右いずれかに若干ずれた位置にある形態のほか、左右いずれかの側端に完全にずれた位置にある形態を含むものである。
【0026】
これらの形態は、本体管体の前面に一つの先行推進管体が設けられたものであるが、この先行推進管体の配置位置が、上面視で本体管体前面の中央にあるか、左右いずれかにオフセットされた位置にあるかは、トンネルの線形や地盤性状などに応じて適宜設定されるものである。
【0027】
また、本発明による推進管の他の実施の形態として、2以上の前記先行推進管体が間隔を置いて前記本体管体の前面に配設されている形態もある。
【0028】
たとえば上面視で、本体管体の前面の左右にそれぞれ先行推進管体が配置され、前面の中央に先行推進管体が存在しない形態などを挙げることができる。
【0029】
また、本発明による推進管のさらに他の実施の形態として、前記先行推進管体が、その推進方向先端から本体管体との接続端に亘って、上面視でその面積が可変となっている形態もある。
【0030】
ここで、上面視でその面積が可変とは、先行推進管体の平面積が一定でないことを意味しており、たとえば、推進方向に先鋭の三角形であったり、推進方向先端から本体管体接続端に向って多段状に面積が大きくなる形態などを挙げることができる。
【0031】
また、上記する各種形態の推進管において、前記先行推進管体の両側もしくは一方側に、側方に延びる翼材が配設されている形態もある。
【0032】
たとえば本体管体の前面中央に先行推進管体が位置する形態において、該先行推進管体の両側に、先行推進管体の推進方向先端側から本体管体接続端に向って平面積が大きくなる翼材を設けておくことにより、該先行推進管体両側の地盤をこの翼材で支持することができ、先行推進管体推進時の地盤変位をより効果的に抑止することが可能となる。
【0033】
さらに、本発明によるトンネル施工方法は、前記するいずれかの形態の推進管を元押し機にて地盤内に押出しながら、該推進管の後方で管路が該元押し機にて押出されてトンネルを構築するものである。
【0034】
この施工方法によれば、推進施工時の地盤変位を効果的に抑止することができる。なお、地下水位以深での施工の場合には、先行して止水用の地盤改良をおこなうなどの対策を講じておけばよい。
【0035】
さらに、本発明によるトンネル施工方法の他の実施の形態は、複数のトンネルを上下方向および/または左右方向に隣接した姿勢で構築し、トンネル同士を連通させて大断面のトンネルを構築するものである。
【0036】
たとえば、上記する本発明の推進管を使用し、既述するハーモニカ工法のごとく、小断面の箱型トンネルを上下、左右に隣接して施工し、次いで隣接するトンネル同士を連通させることにより、周辺地盤の地盤変位を極力抑えながら、しかも経済的に、大断面のトンネル(アンダーパス)を施工することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
以上の説明から理解できるように、本発明の推進管とこれを使用してなるトンネル施工方法によれば、安価な製作コストにて推進管を製作できることで全体工費を削減することができ、しかも、周辺地盤の地盤変位を従来の推進工法に比して格段に小さくしながら、小断面トンネルは勿論のこと、大断面トンネルを施工することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の推進管の一実施の形態を示した斜視図であり、図2aは図1のIIa矢視図であり、図2bは図1のIIb矢視図であり、図2cは図1のIIc矢視図である。また、図3は、図1の推進管がある地点を推進した際の周辺地盤の影響範囲を説明した図であり、図3aは先行推進管体が推進した際の影響範囲を示した断面図であり、図3bは続いて到達する本体管体が推進した際の影響範囲を示した断面図であり、図3cは先行推進管体および本体管体双方の影響範囲を平面図として示した図である。なお、図示する推進管においては、本体管体および先行推進管体それぞれの前面に設けられる刃口の図示を省略している。
【0039】
図1,2で示す推進管10は、貫通孔を有する本体管体1と、この前面11から推進方向前方へ突出した貫通孔を有する先行推進管体2とから構成されており、図示例では、双方の上面13,23が面一に繋がれている。
【0040】
先行推進管体2の前面21、本体管体1の前面11はともに、それらの上面23,13からそれぞれの下面に傾斜したテーパー面となっており、各前面21,11の端部フレームに不図示の刃口が装着されている。各前面21,11がテーパー面を呈していることにより、切削時に緩んだ地盤を双方の前全面開口22,12内に取り込み易くできる。
【0041】
この推進管10が地盤内を推進した際に、それぞれの前面開口22,12を介して切削地盤が先行推進管体2、本体管体1のそれぞれの内部に取り込まれ、たとえば、先行推進管体2から取り込まれた切削地盤はその後方から本体管体1の内部に落としこまれる。本体管体1の内部には、推進管10の後方に位置する坑口側に延設するベルトコンベア等の搬送手段が設けてあり、切削地盤を本体管体1の内部で人力やバックホー等でベルトコンベアに移載して坑口側へ送り出すようになっている。
【0042】
また、図2cで示すように、図示例では、上面視において、先行推進管体2の幅t1が本体管体1の幅の1/3程度に設定されており、かつ、本体管体1の中央に配設されている。
【0043】
図3a,bは、ある任意の推進地点に先行推進管体2の前面21が到達した際の周辺地盤の影響範囲A1(図3a)と、次いで、この同地点に本体管体1の前面11が到達した際の周辺地盤の影響範囲A2(図3b)を模式的に示している。
【0044】
まず、図3aで示すように、小断面の先行推進管体2が到達した際に、図示のごとく先行推進管体2の側面下端から上方に延びる地盤の緩み範囲(影響範囲A1)が形成され、先行推進管体2の中央直上では地表面沈下量δ1が生じ得る。
【0045】
次いで、図3bで示すように、この地点に本体管体1が到達すると、先行推進管体2に比して大断面の本体管体1の側面下端から上方に延びる地盤の緩み範囲(影響範囲A2)が形成される。
【0046】
しかし、中央の先行推進管体2が存在する領域では、該先行推進管体2にて上方地盤が支持されており、地表面沈下量はその側方に形成される2つの影響範囲A2,A2におけるδ2となる。すなわち、先行推進管体2が先行推進して推進管10の中央領域上方の地盤を支持することにより、推進管10の推進時に形成される影響範囲はA1とA2に分断され、結果として、地表面における最大沈下量は大幅に低減される。
【0047】
仮に、従来一般の推進管(たとえば推進管10の本体管体1のみからなる推進管)を使用した場合には、その中央直上の地表面において図3aで示すδ1よりもはるかに大きな沈下量を呈することは理解に易く、推進管の断面が大きくなるにつれ、さらには、地盤性状が軟化するにつれて、双方の相違は顕著となる。
【0048】
図3cは、先行推進管体2の前面21周辺に形成される影響領域A1と本体管体1の前面11周辺に形成される影響領域A2を平面的に見た図である。
【0049】
図示するように、各影響範囲A1,A2が干渉しないように先行推進管体2の突出長t2が設定されるのが好ましい。
【0050】
図4は推進管の他の実施の形態を示しており、図5aは図4のVa矢視図であり、図5bは図4のVb矢視図である。
【0051】
この推進管10Aは、本体管体1Aの前面を推進方向に段状に形成し、上方の段部の中央に先行推進管体2Aを繋いだ構成となっている。すなわち、本体管体1Aの前面は、下方に位置する前面11aとこれよりも推進方向に突出した上方の前面11bとから構成され、各前面11a,11bには前面開口12a,12bが開設されており、上方の前面11bの中央に先行推進管体2Aが位置決めされている。先行推進管体2Aの前面21aに開設された前面開口22a、上記する本体管体1Aの前面開口12a,12bを介して、双方の刃口で切削された地盤が推進管10A内部に取り込まれる。
【0052】
なお、図5bから明らかなように、本体管体1Aの前面11a,11b,先行推進管体2Aの前面21aはともにテーパー面となっており、既述するように、切削時に緩んだ地盤を各開口内に取り込み易くなっている。
【0053】
図6a、bは、図4で示す推進管10Aの先行推進管体2Aの両側に推進方向から本体管体1Aに向って末広がりの翼材3,3が装着された推進管10B、10B’を示している。具体的には、図6aで示す推進管10Bは、翼材3が先行推進管体2Aの途中から本体管体1Aの前面端部に向って広がる形態であり、図6bで示す推進管10B’は、翼材3Aが先行推進管体2Aの先端から本体管体1Aの前面端部に向って広がる形態である。
【0054】
翼材3,3Aは、たとえば鉄板や鋼製プレートからなるものであり、図示する翼材3,3Aを設けることにより、先行推進管体2Aが推進した際に支持し得る上方地盤範囲をより広範囲に広げることができ、推進時の周辺地盤への影響、特に地表面沈下量を低減することに繋がる。
【0055】
図7a、b、cは、推進管のさらに他の実施の形態を平面図として示したものであり、いずれも、図4で示す推進管10Aの変形例である。
【0056】
図7aで示す推進管10Cは、先行推進管体2Aが本体管体1Aの上段の前面11bにおいて、該本体管体1Aの中心線から左右(図では上下)いずれかの方向に若干セットバックした形態を示している。図7bで示す推進管10C’は、先行推進管体2Aが、左右いずれかの端部に完全にセットバックした形態を示している。図7cで示す推進管10Dは、2基の先行推進管体2A,2Aが左右端にそれぞれ配設された形態を示している。
【0057】
図示する各種推進管は、造成するトンネルの線形や地盤性状などに応じて適宜使い分けることができる。たとえば、比較的延長の長いトンネルの造成に際して、地盤性状が複雑に変化したり、もしくは曲線区間(蛇行区間を含む)と直線区間からなる線形のトンネルを造成する等の場合には、施工区間ごとに図示する推進管を使い分けることができる。
【0058】
図8a、bは、推進管のさらに他の実施の形態を平面図として示したものであり、図7と同様に、いずれも図4で示す推進管10Aの変形例である。
【0059】
図8aで示す推進管10Eは、その平面視が推進方向に突の三角形状の先行推進管体2Bを具備する推進管であり、図8bで示す推進管10Fは、その平面視が推進方向に突で本体管体1Aに向って多段状に末広がりの先行推進管体2Cを具備する推進管である。
【0060】
図示例のごとく、先行推進管体の平面形状も多様な形状を選定することができ、図示例以外にも、平面形状が半円形、半楕円形などの先行推進管体を本体管体1Aに繋いだ構成とすることができる。
【0061】
図9は、上記で説明した各種推進管のうち、推進管10Aを使用して大断面トンネルを施工する方法を図9a〜図9cの順にステップ図として説明したものである。
【0062】
具体的には、大断面トンネルを複数の小断面トンネルから構築するものであり、小断面トンネルを隣接施工した後に隣接する小断面トンネル間を連通させ、トンネル構造躯体を施工して大断面トンネルとするものである。
【0063】
図示例では、水平方向に3基の小断面トンネルを隣接姿勢で構築した後に、その上段に同様に3基の小断面トンネルを構築するものである。
【0064】
図9aで示すように、小断面トンネル100に対応する断面寸法および断面形状の推進管10Aを発進立坑内に装備された元押しジャッキにて地盤内に押出し、小断面トンネル用の複数の管路を該推進管10A後方で逐次継ぎ足しながら、所定延長の小断面トンネル100を構築する。なお、図示を省略するが、各管路の側面や上下面には、上下左右に隣接する管路の推進を案内するための係合溝条もしくは係合突条が装着されており、一方の管路の係合溝条に他方の管路の係合突条が係合しながら推進することにより、推進精度の確保が図られることが好ましい。
【0065】
なお、複数の推進管10Aを用意し、たとえば、1基目の推進管10Aが下段の2基目の小断面トンネルを施工しているのに並行して、下段の1基目の小断面トンネル上に位置する小断面トンネルを2基目の推進管10Aが施工することにより、工期を一層短縮することができる。図からも明らかなように、推進管10Aはその構成が極めて簡素であり、その製作コストは安価となることから、複数の推進管10Aを用意したとしても工費を大幅に増大させることにはならない。
【0066】
図9bで示すように、6基の小断面トンネル100,…が相互に隣接姿勢で構築された後に、隣接する小断面トンネル100,100間の隔壁を適宜撤去し、図9cで示すように、RC造、S造、もしくはSRC造の構造躯体(側壁、底版、上版など)からなる大断面トンネル200を構築する。
【0067】
推進管10Aを使用することにより、周辺地盤に与える影響を可及的に抑えながら、しかも効率的かつ少ない工費で、大断面のトンネルを施工することが可能となる。
【0068】
このような効果を有する本発明の推進管とこれを使用してなるトンネル施工方法は、特に、渋滞緩和が急務の課題となっている都市部での幹線道路や踏切におけるアンダーパスの施工に好適である。
【0069】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の推進管の一実施の形態を示した斜視図である。
【図2】(a)は図1のIIa矢視図であり、(b)は図1のIIb矢視図であり、(c)は図1のIIc矢視図である。
【図3】図1の推進管がある地点を推進した際の周辺地盤の影響範囲を説明した図であり、(a)は先行推進管体が推進した際の影響範囲を示した断面図であり、(b)は続いて到達する本体管体が推進した際の影響範囲を示した断面図であり、(c)は先行推進管体および本体管体双方の影響範囲を平面図として示した図である。
【図4】本発明の推進管の他の実施の形態を示した斜視図である。
【図5】(a)は図4のVa矢視図であり、(b)は図4のVb矢視図である。
【図6】(a)、(b)はいずれも本発明の推進管のさらに他の実施の形態を部分的に示した斜視図である。
【図7】(a)、(b)、(c)はいずれも本発明の推進管のさらに他の実施の形態を平面図として示した図である。
【図8】(a)、(b)はいずれも本発明の推進管のさらに他の実施の形態を平面図として示した図である。
【図9】(a)、(b)、(c)の順に、大断面トンネルからなるアンダーパスの施工方法を説明するステップ図である。
【図10】トンネル施工時に地盤変位が生じ得る影響範囲を説明した図である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…本体管体、11,11a,11b…前面、12…前面開口、12a…前面下側開口、12b…前面上側開口、3…上面、2,2A,2B,2C…先行推進管体、21,21a…前面、22,22a…前面開口、23…上面、3,3A…翼材、10,10A,10B,10B’,10C,10C’,10D,10E,10F…推進管、100…小断面トンネル、200…大断面トンネル、G…地盤、A1…先行推進管体による影響範囲、A2…本体管体による影響範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体管体と、
該本体管体の推進方向前面から突出して該本体管体よりも相対的に小断面の先行推進管体と、からなる推進管。
【請求項2】
前記本体管体および前記先行推進管体はいずれも正面視が方形であり、双方の上面が面一もしくは略面一となっている、請求項1に記載の推進管。
【請求項3】
前記先行推進管体は、上面視で前記本体管体の前面中央部に位置している、もしくは、前記本体管体の前面の左右いずれかにオフセットして位置している、請求項1または2に記載の推進管。
【請求項4】
2以上の前記先行推進管体が間隔を置いて前記本体管体の前面に配設されている、請求項1または2に記載の推進管。
【請求項5】
前記先行推進管体が、その推進方向先端から本体管体との接続端に亘って、上面視でその面積が可変となっている、請求項1〜4のいずれかに記載の推進管。
【請求項6】
前記先行推進管体の両側もしくは一方側に、側方に延びる翼材が配設されている、請求項1〜5のいずれかに記載の推進管。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の推進管を元押し機にて地盤内に押出しながら、該推進管の後方で管路が該元押し機にて押出されてトンネルを構築する、トンネル施工方法。
【請求項8】
複数のトンネルを上下方向および/または左右方向に隣接した姿勢で構築し、トンネル同士を連通させて大断面のトンネルを構築する、請求項7に記載のトンネル施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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