説明

推進管

【課題】溝を伝って滑材を管全周に案内し、かつ滑材の保持安定性も良好可能にして、推進管の安定した推力の低減を実現する。
【解決手段】管軸方向一方端の一方接合部1aには継手用カラー3を一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部1bには差込口2を設けた推進管1において、前記接合部1a、1bを除いた管外周部1cに、滑材だまりを構成する溝5を所定ピッチで設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の築造工事において、複数本の推進管を地中に押し込む推進工法に使用される推進管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術の推進工法においては、地山と推進管の摩擦抵抗が大きくなると、ジャッキ推力により管が破損し推進不能となる。そこで、地山と推進管の摩擦抵抗を減じるために、推進管外周面に滑材注入孔を設け、この注入孔から滑材を注入することが行なわれている。通常の注入は管に設けられた注入孔を利用して管内から地山に向かってピンポイントで滑材を注入するため、必ずしも管の外周に均等に滑材が行き渡らず、管外表面に滑材がまだら状に分布してしまい、滑材の効果が得られる個所と得られない個所とが管路の中で発生した。この滑材注入作業の良否は、推進速度や距離にかかわる事だけでなく、地盤沈下、偏土圧、蛇行にまで影響を及ぼすため、管外周面に均等に滑材を排出して、地山と推進管の摩擦抵抗を減少させる方法として、特開2000−45687号記載の発明が有効な手段として用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−45687号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の滑材注入工法により、推進時の摩擦抵抗を低減し、長距離の推進が可能となったが、
(1)カーブ推進や管が蛇行して地山と競り合いながら推進されるような場合において、滑材が管外周に満遍なく行き渡らせることが出来なくなる場合があり、これによって摩擦抵抗を増大させるという問題点がある。
【0005】
(2)粘性土などの場合、管外周との間に吸着作用が働き、著しく摩擦抵抗を増大させることがある、という問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて発明されたもので、溝を伝って滑材を管全周に案内し、かつ滑材の保持安定性も良好にして、推進管の安定した推力の低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の発明に係る推進管は、
管軸方向一方端の一方接合部には継手用カラーを一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部には差込口を設けた推進管において、
前記接合部を除いた管外周部に、滑材だまりを構成する溝を所定ピッチで設けたことを特徴としている。
【0008】
本発明の請求項2の発明に係る推進管は、請求項1に記載の推進管において、 溝は、所定ピッチで設けた連続的ならせん状溝に形成したことを特徴としている。
【0009】
本発明の請求項3の発明に係る推進管は、請求項1に記載の推進管において、接合部を除いた管外周部に、らせん状溝を複数本数設けたことを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項4の発明に係る推進管は、
管軸方向一方端の一方接合部には継手用カラーを一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部には差込口を設けた推進管において、
前記接合部を除いた管外周部に、滑材だまりを構成する溝を所定ピッチで設け、該らせん状溝に連通させて管軸方向に直線状溝を設けたことを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項5の発明に係る推進管は、請求項4に記載の推進管において、
直線状溝は、接合部を除いた管外周部の管軸方向全体に設けたことを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項6の発明に係る推進管は、請求項4に記載の推進管において、
直線状溝は、接合部を除いた管外周部の管軸方向一部に設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果を奏するものである。
(1) 本発明によれば、推進管は、接合部を除いた外周面に溝がらせん状に掘り込んで配設されているため、この連続したらせん状の溝により滑材が全周に行き渡り易くなるばかりでなく、溝部を形成しているために、推進時に地山と管外表面とが接触しながら移動した場合でも、溝を伝って滑材が管全周に案内され、かつ滑材の保持安定性も良好になるため、安定した推力の低減を図ることができる。図9の実験結果のように、溝の無い管(標準管)に比べて、押し込み力は、図9のようになり、当試験の結果からはおよそ20%の摩擦の低減効果がえられた。
【0014】
(2) 本発明によれば、管外周に滑材を案内する溝としてリング状の溝を形成する方法もあるが、らせん状溝とすることにより溝同士が連続的でないことや管が地山に入る際に通過するエントランスパッキンからの水の噴出が軽減される効果がある。
【0015】
(3)また、一定のピッチで溝が管外周に配設されているため、地山と管外表面との付着を細かく切ることができ、推進時に管と地山との付着により地山を巻き込んで管が推進されることを軽減することができる。
【0016】
(4)請求項4によれば、軸方向にも直線状溝を形成することにより、らせん状の溝形状場合ごく僅かに生ずるローリングの力を押さえることができる。その結果、ヒューム管を安定して推進できる。
【0017】
(5)また、請求項4によれば、当該溝がらせん溝とクロスして形成されるため、らせん溝への滑材の供給の役目を果たし、より滑材の効果を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における推進管の1実施例を図示した図1乃至図7を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施例における推進管の正面図、図2は、A―A断面図、図3は、本発明の第二実施例における推進管の正面図、図4は、本発明の第三実施例における推進管の正面図、図5は、B―B断面図、図6は、本発明の第四実施例における推進管の正面図、図7は、本発明の管外周部1cに形成された溝の断面図一実施例である。また、図8は、推進距離と推進荷重の関係説明図、図9は、摩擦の低減効果の試験結果である。
【0019】
本発明の推進管1は、主に、下水道管渠、電設用管渠で用いられているとヒューム管に関するものであるが、塩ビ管、陶管、鋼管にも適用されるものである。
【0020】
推進管1には、図1、2に示した第一実施例のように、管軸方向一方端の一方接合部1aには継手用カラー3を一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部1bには差込口2が設けられ、かつ中間部所定位置には滑材8を管外周面1cに注入する注入孔9が数箇所設けられている。
【0021】
また、前記接合部1a、1bを除いた管外周部1cには、滑材だまりを構成する溝5が所定ピッチで設けられている。
【0022】
前記溝5は、図1、2の第一実施例のように、所定ピッチで設けた連続的ならせん状溝6に形成されている。
【0023】
また、接合部1a、1bを除いた管外周部1cに、図3のように、らせん状溝6を複数本数設けられている。
前記らせん状溝6は、管1の断面に対してほぼ20〜50度程度の角度を成していて、概ね幅5mm〜15mm、深さは2mm〜10mm程度とし、差込口2の断面より欠損することが無いようにし、管1の強度に微細な影響の範囲に留めるようにしてある。
【0024】
らせん状溝6の断面形状は、図7のように、矩形状の他、台形状、半円形状、三角形状等されている。
らせん状溝6の場合の注入孔9は、らせん状溝6付近あるいはらせん状溝6の直上に設け、滑材8がらせん状溝6に伝わりやすく形成されている。
このらせん溝6は、1本でも複数本でも良いが、概ね1〜4本程度とするのがよい。
【0025】
次に、図4,5、6に示した第三、四実施例のように、推進管1の管軸方向一方端の一方接合部1aには継手用カラー3を一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部1bには差込口2を設けた推進管に関するものである。
前記接合部1a、1bを除いた管外周部1cに、滑材だまりを構成する溝5を所定ピッチで設け、さらには該らせん状溝6に連通させて管軸方向に直線状溝7が設けられている。
【0026】
滑材8の供給をらせん溝6に行なうために、また、らせん溝6によって推進管1に発生する回転力を防止するために、軸方向には直線状溝7が1本もしくは複数本配設されている。また、該直線状溝7は、円周方向で等間隔に配設するのが良い。
【0027】
この直線状溝7の形状は、概ねらせん状の溝6と同じ構成にされている。
【0028】
また、前記直線状溝7の長さは、接合部1a、1bを除いた管外周部1cの管軸方向全体に設けるか、又は接合部1a、1bを除いた管外周部1cの管軸方向一部に設けられている。
前記直線状溝7の断面形状も、矩形状の他、台形状、半円形状、三角形状等とされている。
【0029】
また、推進管1には、中間部所定位置には滑材8を管外周面1cに注入する注入孔9が数箇所設けられている。第三、四実施例の場合の注入孔9は、らせん状溝6及び直線状溝7付近あるいはらせん状溝6及び直線状溝7の直上に設け、滑材8がらせん状溝6及び直線状溝7に伝わりやすく形成されている。
【0030】
以上のように構成された推進管1では、ジャッキ等推進手段で差込口2側から継手用カラー3側に推進される時に、滑材8が該推進管1の注入孔9より注入されると、らせん状の溝6によって管外周面1cに滑材8が行き渡る。また、進推管1が蛇行やカーブ推進などにより地山とせって推進されるような場合においても、溝部が地山に密着しないため、当該溝部を通って滑材が管外周1cに供給できるばかりでなく、溝部に滑材8が保持されるため、滑材8の効果、即ち滑材の保持安定性も良好にして、推進管の安定した推力の低減を確実に得ることができる。
【0031】
図8は、試験室にて、ヒューム管1の管外周にらせん溝6を形成した場合としない場合、らせん溝6の本数を1本、2本、4本とした場合についてモデルで作った地山への押し込み力を計測した結果である。
この結果、溝の無い管(標準管)に比べて、押し込み力は、図9のようになり、当試験の結果からはおよそ20%の摩擦の低減効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一実施例の推進管の正面図である。
【図2】A―A断面図である。
【図3】本発明の第二実施例の推進管の正面図である。
【図4】本発明の第三実施例の推進管の正面図である。
【図5】B―B断面図である。
【図6】本発明の第四実施例の推進管の正面図である。
【図7】本発明の管外周部に形成された溝の断面図である。
【図8】推進距離と推進荷重の関係説明図である。
【図9】摩擦の低減効果の試験結果である。
【符号の説明】
【0033】
1 推進管のヒューム管
1a 一方接合部
1b 他方接合部
1c 管外周部
2 差込口
3 継手用カラー
4 滑材注入孔
5 溝
6 らせん状溝
7 直線状溝
8 滑材
9 注入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向一方端の一方接合部には継手用カラーを一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部には差込口を設けた推進管において、
前記接合部を除いた管外周部に、滑材だまりを構成する溝を所定ピッチで設けたことを特徴とする推進管。
【請求項2】
溝は、所定ピッチで設けた連続的ならせん状溝に形成したことを特徴とする請求項1に記載の推進管。
【請求項3】
接合部を除いた管外周部に、らせん状溝を複数本数設けたことを特徴とする請求項1に記載の推進管。
【請求項4】
管軸方向一方端の一方接合部には継手用カラーを一体的に固着すると共に、他方端の他方接合部には差込口を設けた推進管において、
前記接合部を除いた管外周部に、滑材だまりを構成する溝を所定ピッチで設け、該らせん状溝に連通させて管軸方向に直線状溝を設けたことを特徴とする推進管。
【請求項5】
直線状溝は、接合部を除いた管外周部の管軸方向全体に設けたことを特徴とする請求項4に記載した推進管。
【請求項6】
直線状溝は、接合部を除いた管外周部の管軸方向一部に設けたことを特徴とする請求項4に記載した推進管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−2079(P2008−2079A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170061(P2006−170061)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000224215)藤村ヒューム管株式会社 (24)
【Fターム(参考)】