説明

推進装置およびこれを備える船舶

【課題】設置コストの低減が可能、かつ、信頼性に優れた推進装置およびこれを備える船舶を提供することを目的とする。
【解決手段】高圧タービン4および高圧タービン4に並列に接続される低圧タービン3と、を備える推進用蒸気タービン2と、高圧タービン4に接続される高圧タービン側軸発電機21と、高圧タービン4と低圧タービン3とを接続している減速機9と、減速機9に接続される推進軸15と、推進軸15に設けられる推進器16と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進装置およびこれを備える船舶について、特に、舶用の推進用蒸気タービンよって駆動される軸発電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、船内に設けられている推進用蒸気タービンによって駆動される軸発電機は、推進軸上に設けられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−92600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前進用低圧タービンと前進用高圧タービンとを有する推進用蒸気タービンの場合には、推進用蒸気タービンの出力が減速機を介して1つの出力になって推進軸に伝達される。推進軸は、推進軸に設けられているプロペラを駆動する。この際、プロペラの推進効率に適した回転数となるように推進軸の回転数は、減速機によって減速される。そのため、推進軸の回転数は、低回転数となり、推進軸上に設けられている軸発電機が大型化するという問題点があった。
また、特許文献1に記載の発明では、推進用蒸気タービンが部分負荷運転する場合には、推進用蒸気タービンに供給される蒸気量が減少して前進用低圧タービンと前進用高圧タービンとの間の出力差が大きくなる。そのため、前進用低圧タービンと前進用高圧タービンとを接続している減速機に片あたりが生じて減速機の歯車の摩耗が生じるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、設置コストの低減が可能、かつ、信頼性に優れた推進装置およびこれを備える船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の推進装置およびこれを備える船舶は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る推進装置によれば、高圧タービンおよび該高圧タービンに並列に接続される低圧タービンと、を備える推進用蒸気タービンと、前記高圧タービンに接続される高圧タービン側軸発電機と、前記高圧タービンと前記低圧タービンとを接続する減速機と、該減速機に接続される推進軸と、該推進軸に設けられる推進器と、を有することを特徴とする。
【0007】
推進用蒸気タービンの出力は、低圧タービンの出力と高圧タービンの出力とを減速機を介して1つの出力にして推進軸に伝達される。出力が伝達される推進軸は、推進軸に設けられる推進器の推進効率に適した回転数となるように駆動される。そのため、推進軸の回転数は、低圧タービンおよび高圧タービンの回転数よりも低くなる。したがって、推進軸に軸発電機を設けた場合には、軸発電機が大型化する。
【0008】
そこで、本発明では、高圧タービン側軸発電機を高圧タービンに接続することとした。これにより、回転数を高くして高圧タービン側軸発電機を駆動することができる。そのため、高圧タービン側軸発電機の大きさを小さくすることができる。したがって、高圧タービン側軸発電機を設置するスペースを小さくすることができるとともに、高圧タービン側軸発電機の設置コストを低減することができる。
【0009】
さらに、本発明に係る推進装置によれば、前記低圧タービンには、低圧タービン側軸発電機が接続され、前記高圧タービン側軸発電機と前記低圧タービン側軸発電機とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0010】
推進用蒸気タービンの部分負荷運転時には、推進用蒸気タービンの定格負荷運転時に比べて推進用蒸気タービンへと供給される蒸気量が減少する。推進用蒸気タービンに供給される蒸気量が減少するため、低圧タービンの出力が高圧タービンの出力に比べて大きく低下する。これにより、減速機に接続される低圧タービンと高圧タービンとの各々の出力のバランスに偏りが生じる。そのため、減速機の歯車に片あたりが生じて歯車の摩耗や折損等の損傷を生じる恐れがある。
【0011】
そこで、低圧タービンによって駆動される低圧タービン側軸発電機を設けることとした。また、低圧タービン側軸発電機と高圧タービン側軸発電機とは、電気的に接続することとした。これにより、推進用蒸気タービンの部分負荷運転時に高圧タービン側軸発電機において発生した電気を低圧タービン側軸発電機へと供給し、低圧タービンを加勢することができる。そのため、低圧タービンと高圧タービンとの各々の出力のバランスを図ることができる。したがって、減速機の歯車に生じる片あたりを防ぐことができ、減速機の信頼性を向上させることができる。
なお、高圧タービン側軸発電機および低圧タービン側軸発電機は、駆動されることによって電力を供給する場合には発電機として作動し、電力を供給された場合には電動機(モータ)として作動する。
【0012】
さらに、本発明に係る船舶によれば、上記のいずれかに記載の推進装置を備えることを特徴とする。
【0013】
高圧タービンに高圧タービン側軸発電機を接続することによって、高圧タービン側軸発電機を小型化することができる。そのため、船内配置の自由度が高まると共に、高圧タービン側軸発電機の設置コストを抑えることができる。したがって、船舶の建造コストを抑えることができる。
また、低圧タービン側軸発電機と高圧タービン側軸発電機とを設けた場合には、低圧タービンと高圧タービンとの間の各々の出力のバランスを図ることができる。そのため、減速機の信頼性が向上し、推進装置の故障を低減することができる。したがって、船舶の航行に対する信頼性が高まる。
【発明の効果】
【0014】
高圧タービン側軸発電機を高圧タービンに接続することとした。これにより、回転数を高くして高圧タービン側軸発電機を駆動することができる。そのため、高圧タービン側軸発電機の大きさを小さくすることができる。したがって、高圧タービン側軸発電機を設置するスペースを小さくすることができるとともに、高圧タービン側軸発電機の設置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る推進装置を備えた船舶の概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る推進装置を備えた船舶の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係る推進装置を備えた船舶の概略構成図が示されている。
本実施形態に係る船舶は、蒸気タービン船であり、甲板下の機関室(図示せず)内に推進装置1を備えている。
推進装置1は、推進用蒸気タービン2と、船尾用減速機(減速機)9と、推進軸15と、高圧タービン側軸発電機21とを備えている。
【0017】
推進用蒸気タービン2は、再熱タービンであり、前進用低圧タービン(低圧タービン)3と、前進用高圧タービン(高圧タービン)4と、前進用中圧タービン5と、後進用タービン6とを備えている。
前進用低圧タービン3と、前進用高圧タービン4と、前進用中圧タービン5と、後進用タービン6は、1機の主機を構成している。前進用低圧タービン3と後進用タービン6とが一本の低圧タービン側軸7を介して連結されている。前進用高圧タービン4と前進用中圧タービン5とは、一本の高圧タービン側軸8を介して連結されている。
【0018】
船尾用減速機9は、高圧タービン側第1減速機10と、低圧タービン側第1減速機11と、第2減速機12とを備えている。高圧タービン側第1減速機10と、低圧タービン側第1減速機11と、第2減速機12とは、推進用蒸気タービン2の船尾側に備えられている。
【0019】
高圧タービン側第1減速機10には、前進用中圧タービン5に設けられている高圧タービン側軸8が接続されている。低圧タービン側第1減速機11には、前進用低圧タービン3に設けられている低圧タービン側軸7が接続されている。高圧タービン側第1減速機10および低圧タービン側第1減速機11の他端には、第2減速機12が接続されている。
【0020】
推進軸15は、中間軸16と、プロペラ軸17と、カップリング18とを有している。中間軸16は、第2減速機12に接続されている。さらに、中間軸16の他端には、カップリング18を介してプロペラ軸17が接続されている。
【0021】
前進用高圧タービン4の船首用には、高圧タービン側軸8上に設けられている船首用高圧タービン側減速歯車20を介して高圧タービン側軸発電機21が接続されている。
高圧タービン側軸発電機21は、電力を供給する場合には発電機として作動し、電力を供給された場合には電動機(モータ)として作動する。
【0022】
次に、推進用蒸気タービンの定格負荷運転時における推進装置および高圧タービン側軸発電機の運転方法について説明する。
図示しない主ボイラにおいて発生した主蒸気は、前進用高圧タービン4に供給される。前進用高圧タービン4に流入した主蒸気は、タービン翼(図示せず)に作用して前進用高圧タービン4に接続されている高圧タービン側軸8を回転駆動させる。
【0023】
前進用高圧タービン4を通過した蒸気は、図示しない再熱器へと導かれる。再熱器に導かれた蒸気は、再過熱され飽和温度以上に熱せられて過熱蒸気にされる。過熱蒸気は、前進用中圧タービン5に供給される。前進用中圧タービン5に供給された過熱蒸気は、タービン翼(図示せず)に作用して前進用高圧タービン5に接続されている高圧タービン側軸8をさらに回転駆動する。
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5によって回転駆動された高圧タービン側軸8の回転数は、例えば、6000rpmとなる。
【0024】
前進用中圧タービン5を通過した蒸気は、前進用低圧タービン3に導かれる。前進用低圧タービン3に導かれた蒸気は、タービン翼(図示せず)に作用して前進用低圧タービン3に接続されている低圧タービン側軸7を回転駆動する。
前進用低圧タービン3によって回転駆動された低圧タービン側軸7の回転数は、例えば、3000rpmとなる。
【0025】
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5によって回転駆動された高圧タービン側軸8の回転数は、高圧タービン側第1減速機10によって減速される。前進用低圧タービン3に接続されている低圧タービン側軸7の回転数は、低圧タービン側第1減速機11によって減速される。
【0026】
高圧タービン側第1減速機10および低圧タービン側第1減速機11に伝達された高圧タービン側軸8および低圧タービン側軸7の出力は、第2減速機12に伝達される。第2減速機12により、高圧タービン側第1減速機10および低圧タービン側第1減速機11の回転数および出力は、合成されて1つの回転数および1つの出力となる。1つになった回転数は、第2減速機12においてさらに減速され、例えば、80rpmとなる。
【0027】
船尾用減速機9によって1つに合成された出力は、中間軸16に伝達される。中間軸16に伝達された出力は、カップリング18を介してプロペラ軸17に伝達される。中間軸16からプロペラ軸17へと出力が伝達されることによりプロペラ19が回転駆動されて推力が発生する。これにより船舶は、推進する。
【0028】
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5によって高圧タービン側軸8が回転駆動されることにより、船首用高圧タービン側減速歯車20が駆動される。船首用高圧タービン側減速歯車20が駆動されることによって、高圧タービン側軸8の回転数は、減速されて高圧タービン側軸発電機21に伝達される。これによって、船首用高圧タービン側減速歯車20に接続されている高圧タービン側軸発電機21は、例えば、1800rpmの回転数によって駆動される。高圧タービン側軸発電機21は、船首用高圧タービン側減速歯車20が回転駆動されることによって電力を発生する発電機として作動する。
【0029】
高圧タービン側軸発電機21および機関室内に設けられている発電機(図示せず)によって発生された電力は、図示しない電力制御システム(PMS:Power Management System)によって監視、制御、保護が行われている。そのため、高圧タービン側軸発電機21において発生した電力は、電力制御システムによって機関室内に設置されている補機類(図示せず)の駆動電源や船内照明等の船内電力へと振り分けられる。
【0030】
以上の通り、本実施形態に係る推進装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
高圧タービン側軸発電機21は、船首用高圧タービン側減速歯車20を介して前進用高圧タービン(高圧タービン)4に接続することとした。これにより、高圧タービン側軸発電機21を推進軸15に接続した場合に比べて、高圧タービン側軸発電機21の回転数を高くして駆動することができる。そのため、高圧タービン側軸発電機21の大きさを小さくすることができる。したがって、高圧タービン側軸発電機21を設置するスペースを小さくすることができるとともに、高圧タービン側軸発電機21の設置コストを低減することができる。
【0031】
また、高圧タービン側軸発電機21を小型化することができる。そのため、船内配置の自由度が高まると共に、高圧タービン側軸発電機21の設置コストを抑えることができる。したがって、船舶の建造コストを抑えることができる。
【0032】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の推進装置の構成と、推進装置およびこれを備えた船舶は、低圧タービンの船首側に低圧タービン側軸発電機を有している点で第1実施形態と相違し、その他は同様である。したがって、同一の構成および運転方法については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図2には、本発明の第2実施形態に係る推進装置を備えた船舶の概略構成図が示されている。
前進用低圧タービン3の船首側には、低圧タービン側軸7上に設けられている船首用低圧タービン側減速歯車22を介して低圧タービン側軸発電機23が接続されている。
低圧タービン側軸発電機23は、電力を供給する場合には発電機として作動し、電力を供給された場合には電動機(モータ)として作動する。高圧タービン側軸発電機21と低圧タービン側軸発電機23との間は、電力制御システム24によって電気的に接続されている。
【0034】
電力制御システム24は、機関制御室(図示せず)内に設けられている。電力制御システム24は、高圧タービン側軸発電機21と低圧タービン側軸発電機23および機関室内に設けられている発電機(図示せず)とによって発生された電力の監視、制御、保護を行っている。電力制御システム24は、機関室内に設置されている補機類(図示せず)の駆動電源や船内照明等の船内電力へと電力を振り分けている。
【0035】
次に、推進用蒸気タービンの定格負荷運転時における低圧タービン側軸発電機の運転方法について説明する。
前進用低圧タービン3に接続されている低圧タービン側軸7が回転駆動されることによって船首用低圧タービン側減速歯車22が駆動される。船首用低圧タービン側減速歯車22が駆動されることによって、低圧タービン側軸7の回転数は、減速されて低圧タービン側軸発電機23に伝達される。これによって、船首用低圧タービン側減速歯車22に接続されている低圧タービン側軸発電機23は、例えば、1800rpmの回転数によって駆動される。低圧タービン側軸発電機23は、船首用低圧タービン側減速歯車22が駆動されることによって電力を発生する発電機として作動する。
【0036】
高圧タービン側軸発電機21、低圧タービン側軸発電機23および機関室内に設けられている発電機によって発生された電力は、電力制御システム24によって機関室内に設置されている補機類の駆動電源や船内照明等の船内電力へと電力を振り分けられる。
【0037】
次に、推進用蒸気タービンの部分負荷運転時における推進装置、高圧タービン側軸発電機および低圧タービン側軸発電機の運転方法について説明する。
推進用蒸気タービン2の部分負荷運転時には、推進用蒸気タービン2に供給される蒸気量が減少する。
【0038】
推進用蒸気タービン2は、供給された蒸気によって前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5が回転駆動される。前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5が回転駆動されることによって高圧タービン側軸8が回転駆動される。推進用蒸気タービン2には、定格負荷運転時に比べて減少した蒸気量が供給されるため、高圧タービン側軸8の回転数は、推進用蒸気タービン2の定格負荷運転時の回転数、例えば、6000rpmよりも低くなる。
【0039】
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5を通過した蒸気は、前進用低圧タービン3に供給される。推進用蒸気タービン2全体に供給される蒸気量が少ないことと、前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5を回転駆動することとによって、前進用低圧タービン3に導かれる蒸気のエネルギーが低下する。前進用低圧タービン3に供給される蒸気のエネルギーが低下するため、前進用低圧タービン3の出力が低下する。
そのため、低圧タービン側軸7の回転数は、推進用蒸気タービン2の定格負荷運転時の回転数、例えば、3000rpmよりも大きく低下する。
【0040】
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5によって回転駆動された高圧タービン側軸8の出力は、高圧タービン側第1減速機10に伝達される。前進用低圧タービン3に接続されている低圧タービン側軸7の出力は、低圧タービン側第1減速機11に伝達される。
【0041】
高圧タービン側第1減速機10および低圧タービン側第1減速機11に伝達された高圧タービン側軸8および低圧タービン側軸7の出力は、第2減速機12に伝達される。第2減速機12により、高圧タービン側第1減速機10および低圧タービン側第1減速機11の回転数および出力は、合成されて1つの回転数および1つの出力となって推進軸15に伝達される。
【0042】
推進軸15に伝達された出力は、低圧タービン側軸7および高圧タービン側軸8の各々の出力が低下しているため推進用蒸気タービン2の定格負荷運転時に比べて低下している。そのため、推進軸15からプロペラ19に伝達される回転駆動力も低下する。プロペラ19の回転駆動力が低下するため、推力が低下し、船舶の速力が低下する。
【0043】
前進用高圧タービン4および前進用中圧タービン5によって高圧タービン側軸8が回転駆動されることにより、船首用高圧タービン側減速歯車20が駆動される。推進用蒸気タービン2の定格負荷運転時に比べて高圧タービン側軸8から船首用高圧タービン側減速歯車20を介して、高圧タービン側軸発電機21には、低下した出力が伝達される。船首用高圧タービン側減速歯車20によって伝達された出力により、高圧タービン側軸発電機21が駆動される。これによって、高圧タービン側軸発電機21は、電力を発生する。
【0044】
前進用低圧タービン3によって低圧タービン側軸7が回転駆動されることにより、船首用低圧タービン側減速歯車22が駆動される。推進用蒸気タービン2の部分負荷運転時には、前進用低圧タービン3に接続されている低圧タービン側軸7の出力が低下するため船首用低圧タービン側減速歯車22を介して船首用低圧タービン側発電機23に伝達される出力も低下する。そのため、船首用低圧タービン側発電機23によって発生する電力量が低下する。
【0045】
推進用蒸気タービン2の部分負荷運転時には、低圧タービン側軸7が低圧タービン第1減速機11を介して第2減速機12へと伝達する出力と、高圧タービン側軸8が高圧タービン第1減速機10を介して第2減速機12へと伝達する出力との差が大きくなる。そのため、第2減速機12において低圧タービン第1減速機11および高圧タービン第1減速機10の各々から伝達される出力に不均衡を生じる。第2減速機12に伝達される出力に不均衡が生じた際には、第2減速機12の歯車(図示せず)に片当たりを生じることがある。
【0046】
そこで、推進用蒸気タービン2の定格負荷運転時において前進用低圧タービン3に供給される蒸気の圧力と、推進用蒸気タービン2の部分負荷運転時において前進用低圧タービン3に供給される蒸気の圧力との差(以下「差圧」という。)を監視し、この差圧により部分負荷運転時の前進用低圧タービン3が発生する出力を算出する。差圧から算出された前進用低圧タービン3の出力が所定の出力以下になった場合には、電力制御システム24によって、船首用高圧タービン側発電機21において発生した電力の一部を船首用低圧タービン側発電機23へと供給するように制御する。
電力制御システム24によって電力が供給された船首用低圧タービン側発電機23は、加勢されて電動機(モータ)として作動する。
【0047】
船首用低圧タービン側発電機23が加勢されるので、船首用低圧タービン側発電機23に接続されている船首用低圧タービン側減速歯車22を介して低圧タービン側軸7が加勢される。低圧タービン側軸7が加勢されるため、前進用低圧タービン3が加勢される。また、低圧タービン側軸7が加勢されるので、低圧タービン側軸7に接続されている低圧タービン第1減速機11が加勢される。低圧タービン第1減速機11が加勢されることによって、低圧タービン第1減速機11から第2減速機12に伝達される出力が増加する。これにより、低圧タービン第1減速機11から第2減速機12へと伝達される出力と、高圧タービン第1減速機10を介して第2減速機12へと伝達される出力との不均衡が解消される。
【0048】
以上の通り、本実施形態に係る推進装置およびこれを備えた船舶によれば、以下の作用効果を奏する。
前進用低圧タービン(低圧タービン)3によって駆動される低圧タービン側軸発電機23を設けることとした。また、低圧タービン側軸発電機23と高圧タービン側軸発電機21とは、電気的に接続することとした。これにより、推進用蒸気タービン2の部分負荷運転時には、高圧タービン側軸発電機21において発生した電気を低圧タービン側軸発電機23へと供給し、前進用低圧タービン3を加勢することができる。そのため、前進用低圧タービン3と前進用高圧タービン(高圧タービン)4との間の出力のバランスを図ることができる。したがって、船尾用減速機(減速機)9の歯車に生じる片あたりを防ぐことができ、船尾用減速機9の信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、低圧タービン側軸発電機23と高圧タービン側軸発電機21とを設けた場合には、前進用低圧タービン3と前進用高圧タービン4との間の出力のバランスを図ることができ船尾用減速機9の信頼性が向上する。そのため、推進装置1の故障を低減することができる。したがって、船舶の航行に対する信頼性が高まる。
【符号の説明】
【0050】
2 推進用蒸気タービン
3 前進用低圧タービン(低圧タービン)
4 前進用高圧タービン(高圧タービン)
9 減速機(船尾用減速機)
15 推進軸
16 推進器(プロペラ)
21 高圧タービン側軸発電機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービンおよび該高圧タービンに並列に接続される低圧タービンと、を備える推進用蒸気タービンと、
前記高圧タービンに接続される高圧タービン側軸発電機と、
前記高圧タービンと前記低圧タービンとを接続する減速機と、
該減速機に接続される推進軸と、
該推進軸に設けられる推進器と、を有する推進装置。
【請求項2】
前記低圧タービンには、低圧タービン側軸発電機が接続され、前記高圧タービン側軸発電機と前記低圧タービン側軸発電機とが電気的に接続される請求項1に記載の推進装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の推進装置を備える船舶。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−132878(P2011−132878A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292601(P2009−292601)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)