説明

推進装置の搭載方法

水密の巻上室内に配置され、船舶のハルの開口を閉じるユニットの整備方法が開示される。ユニットは、船舶の下方の水内へと延在するように構成される。本方法は、クランプ手段により前記ユニットをその搭載位置にクランプすることを含み、これにより、ユニットの固定手段は、クランプされた状態でユニットを保持しつつ、取り外されることができる。巻上室を所望のレベルまで冠水させた後、ユニットのクランプは、完全に解放され、ユニットの意図しない動きは起こらないだろう。ガイド手段は、装置と共に設けられてよく、クランプ手段の自動的な設計を設けることもできる。特に、かかる要素を使用すると、ユニットの搭載が簡単になり、ユニットがその搭載位置へと水より下方に下降されたとき、そこでクランプ手段によりクランプされ、開口を密に閉じ、巻上室から水を除去した後、固定手段は、乾いた環境で適用することができる。好ましくは、クランプ手段は、ユニットをその搭載位置に押す流体圧シリンダである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻上室内に配置され、船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶の下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備方法に関する。
【0002】
また、本発明は、船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶のハルの下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備用の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、水につかる船舶の開口からプロペラ組立体を取り外す方法及び装置を開示し、この場合、プロペラ組立体は、プロペラ組立体がその搭載位置にあるときに、船舶のハルの開口を閉じるように設計される。この先行技術によれば、水密な巻上室が、プロペラ組立体まわりに設けられ、その巻上室内に駆動シャフトが設けられ、これは、巻上室の外部で船舶内に配置される駆動モータをもたらす。既知のプロペラ組立体が取り外されるべきとき、駆動シャフトが先ず取り外され、次いで、巻上室を通るその通路が水密な態様で閉じられ、その後、プロペラ組立体は、巻上手段に接続され、次いで、プロペラ組立体のフランジが緩められる。その後、プロペラ組立体は、巻上室から上昇されることができる。プロペラ組立体は、推進装置としても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO97/27102パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術による方法は、水より下方で実行される必要がある組立/分解作業を必要とする。更に、大型船舶は、水面レベルの下方の20mまでの喫水を有することができる。この場合、船舶の内部の空気圧と外部の水圧との間の圧力差に起因して、相当な力が作用して、推進装置を上方へと船舶の内部に押す。大型の推進装置を用いる場合、推進装置の重量により補償されない推進装置を上方に押す力は、2.000kNに達しうる。フランジの固定ネジが取り外されるとき、プロペラ組立体ないし推進装置は、制御されない態様で、これらの力により上昇される。制御されない態様で動く、かかる重い質量物を有することは、危険である。更に、これらの力の元でフランジの固定を緩めることは困難である。
【0006】
先行技術を鑑み、本発明の目的は、船舶がつかっている間における船舶のハルの開口を通過して閉じるユニットの整備のための改善された方法及び装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
方法に関しては、この目的は、請求項1による方法により解決され、装置に関しては、この目的は、請求項8による装置により解決される。
【0008】
特に、本発明は、水密の巻上室内に配置され、船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶の下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備方法を提供する。本発明による方法は、クランプ手段によりユニットをその搭載位置にクランプし、クランプされた状態でユニットを保持しつつ、ユニットをその搭載位置に固定する固定手段を解放し、巻上室を少なくとも部分的に冠水させ、ユニットのクランプを解放し、ユニットをその搭載位置から離れる方向に巻き上げることを含む。
【0009】
本発明によれば、ユニットをその搭載位置に搭載するために通常的に使用される固定手段が取り外される前に、クランプ手段は、ユニットをその搭載位置にクランプするために使用される。このようにして、開口は、閉じたまま維持されることができ、ユニットは、所定位置に保持され、従って、固定手段を解放する作業は、巻上室内が依然として乾いている間に実行することができる。固定具が取り外された後、巻上室は、室を冠水するための追加のバルブの設置若しくはユニットのクランプの制御された開放により、少なくとも部分的に冠水される。クランプが解放される時、少なくとも部分的に冠水された巻上室内の水は、船舶の内部からユニットにいくらかの圧力を与え、従って、船舶の内部と外部の間のユニットでの圧力差が低減される。それ故に、ユニットを上方に押す力を低減することができる。
【0010】
本発明によるユニットの整備方法は、更に、ユニットを巻上室内のその搭載位置へと下降させ、ユニットを、船舶のハルの開口を閉じるその搭載位置でクランプし、これにより、船舶のハルの開口を閉じ、巻上室から水を少なくとも部分的に除去し、ユニットをその搭載位置に固定する固定手段を適用することを含んでよい。その後、クランプが解放されてよい。
【0011】
上記の効果的な方法によれば、ユニットは、その搭載位置にセットされ、そこで固定手段により固定される。ユニットのクランプが提供されてよく、これにより、ユニットをその搭載位置にセットしクランプすることにより船舶室の底部の水密なシールを確立する。水が巻上室から除去された後、ユニットの固定手段を適用する固定作業は、乾いたスペース若しくは環境内で実行することができる。
【0012】
従って、上述の如く、固定手段の取り外し若しくは解放及び固定手段の適用の双方は、乾いた環境で実行することができ、水中の作業は必要とされない。
【0013】
本方法は、ユニットの上に、開いた上端を備えた巻上室組立体を配置して、整備を必要とするユニットをその中に配置することを含んでよい。室組立体は、船舶のハルに対して水密な態様で船舶のハルに固定されてもよく、この場合、巻上室の高さ及び/又はハルの外部の水位は、室の開いた上端が水位よりも上に延在するように設定される。これは、巻上室が冠水されたときに船舶のハルに水が入るのを防止する。尚、移動可能な巻上室組立体は、使用されてもよく、これは、必要な時に船舶のハル内に搭載され、若しくは、船舶に最初から組み込まれた室であってもよい。後者の場合、船舶のハルへの巻上室組立体の固定は、好ましくは、溶接によりなされる。巻上室は、船舶のハル構造の一部を形成してもよい。
【0014】
巻上室を冠水させることは、ハルの開口を通って水が巻上室に入るまで、クランプ手段を徐々に解放することが可能とされる態様で実行されてもよい。開口が水の進入を許すとき、水は、外部の水位と同じレベルまで巻上室内に満たされることができる。
【0015】
本発明による方法では、クランプは、クランプのための流体力を使用してなされてもよい。
【0016】
好ましくは、巻上手段は、巻上室を冠水させる前に、ユニットに固定される。これは、この作業を乾いた環境で実行することができる利点を有する。また、ユニットがクランプ手段により保持されるとき、固定手段は、取り外されることができる。また、ユニットがクランプ手段により保持されるとき、巻上手段は、固定手段が取り外された後に、ユニットに固定されてもよい。従って、固定手段での作業用に利用可能なスペースがより大きくなる。
【0017】
本発明は、更に、船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶の下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備用の装置に関する。この装置は、水密なシールを形成するようにハルに固定されるように構成される巻上室と、ユニットをその搭載位置から離れる方向に及びその搭載位置へと巻き上げる巻上手段と、ユニットをその搭載位置でクランプするクランプ手段とを含む。
【0018】
好ましくは、装置は、ハルに固定されるクランプ手段を有し、クランプ手段として少なくとも1つの流体圧シリンダを含む。流体圧シリンダは、強力で、制御しやすく、非常に信頼性のある技術である。それ故に、船舶のハルに既にその場にクランプ手段を設けることは、ユニットの整備が必要とされたときに所定の場所に装置をセット若しくは搭載するための労力を低減する。
【0019】
好ましくは、クランプ手段は、少なくとも1つのガイド表面と、ユニットに設けられる少なくとも1つのクランプパッドと協動するように構成された少なくとも1つのクランプ部材ないしクランプとを含む。ガイド表面は、少なくとも1つの流体圧シリンダが伸びたときにクランプパッドに自動的にクランプ部材をガイドするように構成される。このクランプ部材とクランプパッドの協動は、流体圧シリンダの伸び方向の動きを制御することにより開始することができる。
【0020】
特に、ユニットが巻上手段によりその搭載位置へと下降されたとき、流体圧シリンダの作動は、ユニットのクランプパッドへとガイド表面によりガイドされるクランプ部材を駆動する。このようにして、ユニットは、その搭載位置へとクランプされることができ、これは、船舶のハルの開口がユニットにより閉じられることを意味する。次いで、水は、巻上室から除去されることができ、従って、固定手段は、乾いた環境で適用されることができる。同じように、ユニットを取り外すとき、クランプ手段は、ユニットを確実にその搭載位置で保持するために、それらのクランプ位置へと駆動される。次いで、固定手段が取り外された後、クランプ手段の流体圧シリンダはドレインされ若しくは引き戻されてもよく、ユニットは、水が巻上室に入るまで僅かに上方に押される。このようにして、ユニットが予測可能な位置に安定して保持されたまま、巻上室を冠水させることができる。巻上室の水位が十分になったとき、クランプ手段は、流体圧シリンダを完全に縮ませることにより解放されてもよい。その後、ユニットは、巻上室から外へと上昇されることができる。
【0021】
好ましくは、クランプ手段、特にシリンダは、船舶のハルにそれ自体が固定された巻上室に固定される。
【0022】
好ましくは、クランプ手段は、巻上室が搭載されるときにハルの開口まわりで巻上室内において等しい角度で配置される8つの流体圧シリンダを含む。巻上室は、船舶の建設段階中に、溶接によりハルに搭載されてもよい。しかし、水密なシール及び十分に強い接続を形成するために、船舶のハルに設けられる適切な部位に固定されることができる可動の巻上室を有することも可能である。
【0023】
また、好ましくは、巻上室壁は、室の高さ方向に延在する少なくとも1つのガイドレールを有する。ユニットは、ユニットが昇降される時にレールのガイドレールと協動する。特に、ユニットが下降されるとき、ユニットは、ガイドレールによりその搭載位置へと自動的にガイドされることになり、次いで、クランプパッドにクランプないしクランプ部材を自動的にガイドするガイド表面を有するクランプ手段によって、当該位置にクランプされることができる。
【0024】
また、好ましくは、巻上室は、当該室を水密に閉じるためにその上端に蓋ないしカバーを有する。カバーは、船舶の外部の水位が急激に上昇し、巻上室の水が、ユニットが取り外され開口を閉じないときに、同様に上昇する荒い海洋において、推奨される追加の安全特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】巻上室及び搭載されたユニットを備える船舶の断面図。
【図2】巻上室の一部及びユニットの一部が示される図1の部位の拡大概略図。
【図3】ユニットと協動するクランプ手段の詳細図。
【図4】船舶のハルから推進装置ユニットを取り外す手順を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、説明用の概略図面を参照して、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0027】
図1は、図1の破線で示されるような水につかる船舶のハル100を示す。船舶内には、船舶100に固定して搭載される固定構造である巻上室1が設けられる。
【0028】
巻上室1内には、船舶のハル100の底部を通過して外部まで延在するユニット2がある。これは、整備を必要とするユニットである。ここでは、ユニットは、いわゆる推進装置2である。推進装置2は、プロペラ21、ギアハウジング22、フランジ部24、及びプロペラ21を駆動する電気モータ23を有する。フランジ部24に対する他の用語は、マウンチングカンであり、以後、用語フランジ部が、当該部位に対して使用される。この推進装置2のプロペラ21及びギアハウジング22は、水に漬かる要素であり、フランジ部24は、ユニットが搭載されたときに船舶のハル100内の開口を閉じる。プロペラ21及びギアハウジング22は、プロペラ21の回転軸に略垂直な軸まわりに回転されてもよい。この種の推進装置は、しばしば、位置制御用に大型船舶に関連して使用される。フランジ部24は、また、発展され、推進装置をその略鉛直軸まわりに回転させるための駆動手段及びギアボックスを含んでもよい。
【0029】
図1は、更に、巻上室1が、室に沿ってその高さ方向に延在する壁に、ガイドレール12を有することを示す。ここでは、2つのガイドレール12が示される。また、クランプ手段11が示され、これは、他の図面を参照して以下でより詳細に説明される。尚、1対のクランプ手段11のみが図1には示されるが、典型的には、8つまでのクランプ手段が設けられ、これらは、フランジ部24のまわりに同じ角度間隔にて円状に配置される。
【0030】
更に、図1は、巻上室のカバー4を示し、このカバー4は、好ましくは、巻上室をその上端にて水密に閉じる。このカバーの機能の1つは、当然ながら、当該室への人が落ちるのを防止することであり(図示の例では、船舶の喫水は約18mである)、他方では、カバーは、何らかの理由で船舶の底部の開口が密に閉じられていないときの船舶内への水の進入に対する追加的な保護である。
【0031】
図2は、推進装置のフランジ部24に近い部位での推進装置2の構成の拡大図を示す。推進装置のフランジ部24は、更に、巻上アイ25と、フランジプレート部24とを含み、船舶のハル100の開口を水密に閉じるためにシール13と協動する。ネジ14は、固定手段を形成し、多数のネジは、ユニット2まわりに円状にフランジプレート部26に沿って設けられる。図2の左右には、巻上室壁の一部が示され、巻上室壁は、二本線で示される2つのガイドレール12を保持する。図示されないが、ユニット2、特にそのフランジ部24は、巻上室内部にユニットが移動されるときにガイドレールと協動するガイド手段を有する。2つのガイドレール12が図2に示されるが、任意の適切な数のガイドレールが設けられてもよい。また、クランプ手段11は、巻上室壁に固定されて示される。ユニット2のフランジ部24とのクランプ手段11の機能的な協動は、図3を参照して後述される。
【0032】
また、図2は、ユニット2のプロペラ(図2には示されず)と駆動的に接続されるようにカップリングを有するギアボックスに固定される巨大な電気モータ23を示す。当然ながら、他のモータが使用されてもよい。
【0033】
図3を参照するに、図2の右手側に示されるようなクランプ手段11の詳細が、図3においてより詳細に示される。クランプ手段11は、シリンダロッド112を有する流体圧シリンダ111を有する。シリンダ111への及びシリンダ111からの作動流体の流れを制御することによって、ロッド112の動きは制御されることができる。ロッド112の端部には、クランプ114が示され、クランプ114は、ユニット2のフランジ部24上に設けられるクランプパッド115と協動するように構成される。また、図3は、固定手段として機能するネジ14と、ユニット2と船舶のハル100の間の接続を水密にシールするシール13を示す。尚、クランプパッド115は、ここでは、フランジ部24及びフランジプレート部26に固定されるプレート状の部材241に切られた浅い凹部の形態を有する。
【0034】
また、図3は、巻上室の高さが増加するにつれて外側に傾斜するガイド表面113を示す。ガイド表面113は、クランプ手段11のクランプ114と協動する。シリンダボルト117を用いて、流体圧シリンダ111は、巻上室壁に固定され、従って、シリンダ111は、このシリンダボルト117まわりに回転することができる。また、付勢手段116が設けられ、付勢手段11は、巻上室の外側に向けてクランプ手段11のシリンダ111を付勢して、クランプ114が常にガイド表面113によりガイドされるように保証する。
【0035】
ここで、シリンダ111が巻上室壁に略平行に延在しロッド112がシリンダ内に後退されている図3の点線で示されるシリンダ111の位置から開始して、クランプ手段の機能が説明される。フランジ部24は、その搭載位置に、それ(及びユニット2)を保持するためにクランプされるべきとき、流体圧シリンダ112は、ロッド112を伸ばすように制御される。クランプ114は、クランプパッド115に向けてガイド表面113によりガイドされて移動し、当該ガイドされた動きは、クランプ114に近傍に設けられガイド表面113と協動するガイドシュー118により支援される。シリンダ111が完全にそのロッド112を伸ばすと、クランプ114は、フランジ部24(即ちそのプレート状部材241)に設けられるクランプパッドとしての浅い凹部115内に着座する。流体圧シリンダは、ユニットをその搭載位置で確実に保持するのに十分なほど強力であり、従って、船舶のハルの開口に対するユニットの位置は、固定手段14がネジ外しされる間、確実に保持若しくは維持される。意図しないフランジ部24のクランプの解放が生じるのを確実に防止するために、シリンダ111は、シリンダをその実際の位置に維持するために、流体圧システムへの流体圧シリンダの連通を遮断するロックバルブを備えることが提案される。
【0036】
固定手段14が取り外され、巻上手段(図示せず)が上昇アイ25(図2)に固定されると、クランプは、徐々に解放されてもよい。特に、図3を見ると、シリンダ111は、ロッド112をゆっくりと退避させるように制御される。固定手段14が取り外されているので、巻上室1の内部と船舶100の底部での水圧との差圧に起因して、フランジ24は、シリンダロッド112の動きに従って上方に動きつつ、浅い凹部115とクランプ114との間の係合を維持する。シール13がその反対側表面から上昇されると、水は、巻上室1に一気に流入する。巻上室が必要なレベルまで冠水された後、シリンダ111は、ロッド112を更に引っ込めるように制御される。圧力差及び力がなくなるとき、ユニット24は、自身の重力に従い、そのフランジプレート部26でシール13上に再び着座する。
【0037】
シリンダが一旦縮まされると、付勢手段116の負勢力に従い、各シリンダ111は、再び、巻上室壁に対して平ら若しくは略平らになる。ユニット2は、次いで、巻上室から外へ取り出すために上昇されることができる。
【0038】
ユニットを再びその搭載位置に取り付けるとき、ユニットは、フランジプレート部26が適切にシート13上に着座するまで下降されることになる。尚、巻上室に設けられるガイドレール12は、下降するユニットを当該位置まで確実にガイドする。次いで、シリンダ111は、ロッド112を伸ばすように制御され、ガイド表面113によりガイドされ、クランプ14は、フランジ部24上の浅い凹部115と係合するまで移動することになる。これは、巻上室が水で満たされている間に生じる。クランプ手段がユニット2をその搭載位置にクランプしたとき、水は、巻上室から汲み出されることができ、そこでの作業スペースを乾燥させるようにする。尚、クランプ手段のシリンダは、また、安全性の理由から、ロック状態で維持される。
【0039】
水が汲み出されると、固定手段14を再度適用する人は、ネジをセットするために巻上室を下ることができる。ネジがセットされ固定された後、クランプ手段は、シリンダ111内にロッド112を退避させることにより引っ込めることができる。これは、シリンダロッド112がシリンダ111内に位置するときは、衝突から保護されるので、推奨される。
【0040】
最後に、図4は、推進装置2の形態であるユニットが船舶のハル100から取り外されるステップa),b),c)のシーケンスを示す。図4の左側では、ステップa)が示され、ここでは、電気駆動モータ23は、推進装置2から取りはずされる。電気モータ23の取り外し後、駆動接続カバー61は、巻上室1が冠水されるべきときに水の浸入に対して全ての開口を閉じるために推進装置2に搭載される。推進装置2の駆動接続は、常に、フレキシブルカップリングからなるが、ギアボックスを追加的に含んでもよい。また、巻上手段7は、図4のステップa)で右の上昇アイで示すように、既に推進装置2のフランジ部24に固定される。また、クランプ手段は、フランジ部24を船舶のハル100内でそのシールに対してクランプするように作動される。クランプがセットされると、固定手段(ネジ)は取り外され、人が巻上室から出る。
【0041】
次いで、クランプ手段は、巻上室内に水が流入するように徐々に解放される。巻上室が、必要な水位まで満たされると、クランプ手段は解放されることができる。即ち、図3を参照して上述したように、シリンダのロッドが縮まされる。
【0042】
次いで、図4の中央のステップb)に続き、クレーン5の巻上手段7は、上昇アイにて推進装置2を上昇させることにより推進装置2を引き上げるために使用される。上昇中、推進装置2は、図4のステップb)において室壁上に幾つかの平行なラインで指示されたガイドレールにより巻上室内でガイドされる。
【0043】
推進装置2が完全に巻上室1から退避されたとき、図4のステップc)の状態が確立され、この状態では、予備的なカバー若しくは蓋6は、室の底部のフランジシートを使用して船舶のハルの開口を閉じるために巻上室内に挿入される。尚、クランプ手段によるクランプは、蓋6が、推進装置2のフランジ部24を備えるのと同じクランプパッドを有するので、可能である。巻上室がどれくらい長く閉じたままにされる必要があるかに依存して、蓋は、室から水が除去された後に固定手段により追加的に固定されてもよい。しかし、基本的には、クランプ手段により蓋を下方に押すだけで十分である。また、追加のカバー4は、上述のように安全上の理由から、巻上室の上部に置かれる。
【0044】
図4では、推進装置を取り外し、それを、船舶のデッキ上に置くことが説明されている。推進装置の整備後若しくは交換のための推進装置の搭載は、ステップの反対の順序でなされる。即ち、カバー4を取り外し、リッド6をクランプし、巻上手段7をリッド6に固定し、固定手段(もしあれば)を取り外し、そして、巻上室1を冠水させるためにクランプ力を徐々に解放する。必要な水位が巻上室1内で到達されると、リッド6は、クランプが解放された後、上昇される。リッド6は、巻上室から取り除かれる。
【0045】
次いで、ステップb)に戻り、巻上手段7に固定された推進装置2は、ガイドレール12によりガイドされつつ、巻上室1の下方へ導かれることになる。推進装置2がその搭載位置にセットされると、クランプ手段111,112,114,115が作動されて、推進装置2のフランジ部24,26を、巻上室1の底部をシールするために、そのシートに対して押す。巻上室1は、次いで、汲み上げられて空とされ、乾いた空間で、ネジのような固定手段がセットされ固定される。その後、クランプは解放されてもよい。巻上手段7は、推進装置の上昇アイから分離され、カバー61が取り外される。その後、電気モータ23は、所定位置へと下降され、動作のために固定されることができる。接続作業がなされた後、推進装置2は、再度使用できる状態となる。
【0046】
上述の例では、本発明は、船舶のハルを通過するユニットとして推進装置を使用して説明されている。しかし、それは、任意の船舶の任意のユニット、特に大きなユニットであってよく、その整備のために本発明を適用すればよい。特に、これらのユニットは、油若しくはガス坑井コネクタ、掘削装置、ポンプ装置等であってよい。ユニットをそのシールシートとシール接触状態で保持するために設けられるクランプ、及び、クランプ手段の自動的な係合が提供されることに起因して、水で満たされた巻上室に人が入る必要がないことを達成することができ、即ち、全てのステップは、潜水作業無しで乾いた環境で実行されることができる。当然ながら、クランプ手段を設定するため若しくは他の作業のために潜水者を使用する修正も考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水密の巻上室内に配置され、船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶の下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備方法であって、
クランプ手段により前記ユニットをその搭載位置にクランプし、
クランプされた状態で前記ユニットを保持しつつ、前記ユニットをその搭載位置に固定する固定手段を解放し、
前記巻上室を少なくとも部分的に冠水させ、
前記ユニットのクランプを解放し、
前記ユニットをその搭載位置から離れる方向に巻き上げることを含む、方法。
【請求項2】
前記ユニットを前記巻上室内のその搭載位置へと下降させ、
前記ユニットを、船舶のハルの開口を閉じるその搭載位置でクランプし、
前記巻上室から前記水を少なくとも部分的に除去し、前記ユニットをその搭載位置に固定する固定手段を適用し、
前記ユニットのクランプを解放することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ユニットの上に、開いた上端を備えた巻上室組立体を配置して、整備を必要とするユニットをその中に配置し、船舶のハルに対して水密な態様で船舶のハルに前記巻上室組立体を固定することを含み、前記巻上室の高さ及び/又は前記ハルの外部の水位は、前記室の開いた上端が水位よりも上に延在するように設定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記巻上室を少なくとも部分的に冠水させることは、前記ハルの開口を通って水が入るまで、前記ユニットをその搭載位置にクランプする前記クランプ手段を徐々に解放することを含む、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記巻上室を冠水させる前に、前記ユニットに巻上手段を固定することを更に含む、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ユニットをクランプすることは、流体圧の力を用いる、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ユニットは、駆動モータ及びプロペラを有する推進装置組立体であり、前記推進装置組立体の駆動モータは、取り外され、一時的な水密なフランジは、前記巻上室を冠水させる前に、前記駆動モータの設置場所に搭載される、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
船舶のハルの開口を閉じるユニットであって、船舶の下方の水内へと延在するように構成されたユニットの整備用の装置であって、
水密なシールを形成するように前記ハルに固定されるように構成される巻上室と、
前記ユニットをその搭載位置から離れる方向に及びその搭載位置へと巻き上げる巻上手段と、
前記ユニットをその搭載位置でクランプするクランプ手段とを含み、
前記クランプ手段は、前記ハルに固定され、前記クランプ手段として少なくとも1つの流体圧シリンダを含む、装置。
【請求項9】
前記クランプ手段は、少なくとも1つのガイド表面と、前記ユニットに設けられる少なくとも1つのクランプパッドと協動するように構成された少なくとも1つのクランプ部材とを含み、前記ガイド表面は、前記少なくとも1つの流体圧シリンダが伸びたときに前記クランプパッドに自動的に前記クランプ部材をガイドするように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記流体圧シリンダは、前記ハルに回転可能に固定され、前記ガイド表面との係合位置へ前記クランプ部材を付勢する付勢部材が設けられる、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記クランプ手段は、前記ハルに固定された巻上室壁により前記ハルに固定される、請求項8から10のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記クランプ手段は、前記巻上室が搭載されるときに前記ハルの開口まわりで前記巻上室内において等しい角度で配置される、複数の、好ましくは8つの、流体圧シリンダを含む、請求項8から11のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記巻上室は、前記ハルに溶接され、前記ハルの一部を形成する、請求項8から12のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記巻上室壁は、上昇/下降移動中に前記搭載位置へ前記ユニットをガイドする前記室の高さ方向に延在する少なくとも1つのガイドレールを有する、請求項8から13のうちのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記巻上室は、その開いた上端に水密な蓋を有する、請求項8から14のうちのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−525301(P2012−525301A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510187(P2012−510187)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055065
【国際公開番号】WO2011/127987
【国際公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(503129903)ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア (73)