説明

揚げ物用打ち粉組成物

【課題】 揚げ物における衣の結着性の向上や良い食感の発現といった機能性を有する打ち粉並びにこれを使用した揚げ物素材及び揚げ物の提供を目的とする。
【解決手段】 油脂加工リン酸架橋澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物並びにこれを使用した揚げ物素材及び揚げ物である。
好ましくはさらに蛋白粉末を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物である。【効果】 本発明の打ち粉を使用した揚げ物は衣の結着性及び食感が良好である。 特に従来衣の結着性が悪く、衣を使用した揚げ物の具材として使用が困難であったスチーム処理された豚肉、鶏肉又はイカに使用することにより衣の結着性を向上させ良好な食感の揚げ物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物用打ち粉組成物並びにこれを使用した揚げ物素材及び揚げ物に関する。
詳しくは、油脂加工リン酸架橋澱粉及び好ましくはさらに蛋白粉末を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉並びにこれを使用した揚げ物素材及び揚げ物に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷらやトンカツ等、具材にバッタリングしてフライする揚げ物には、衣の結着性等を改善するためにバッタリングの前処理として具材に小麦粉等の打ち粉をまぶしてからフライすることが行われている。
この打ち粉の機能性向上のため様々な改良が行われており、例えば、衣の結着性や揚げ種のジューシーな食感の発現を目的とした、油脂加工アセチル化澱粉を含む打ち粉が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−291431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、揚げ物における衣の結着性の向上や素材の水分の保持による良い食感の発現といった機能性を有する打ち粉を提供することである。
特に豚肉や鶏肉に関しては家畜伝染病の発生地域で加工食品を生産する場合に、衛生上の問題から肉をスチーム処理することが行われているが、スチーム処理した肉と衣の結着性は生肉と比べて著しく劣るため、スチーム処理した肉を使用した場合でも結着性のよい打ち粉が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、油脂加工リン酸架橋澱粉を含有する打ち粉を使用することにより、揚げ物における衣の結着性の向上や素材の水分の保持による良好な食感の発現が達成でき、蛋白粉末を併用することで、さらにこれらの効果が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、油脂加工リン酸架橋澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物である。
また、本発明は、油脂加工リン酸架橋澱粉及び蛋白粉末を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物である。
さらに、前記揚げ物用打ち粉組成物を使用した揚げ物用素材及び揚げ物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の打ち粉を使用した揚げ物は衣の結着性及び食感が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する油脂加工リン酸架橋澱粉とは未加工の澱粉をポリリン酸水溶液と共に反応させて得られる澱粉エステル誘導体の一種であるリン酸架橋澱粉に油脂を添加して加熱した加工澱粉をいう。
【0008】
油脂加工リン酸架橋澱粉に使用される原料の澱粉は特に限定されず、例えば、小麦澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉等を挙げることができる。
【0009】
またリン酸架橋澱粉に添加する油脂としては食用油であればいずれのものでも使用できる。
例えば、パーム油、大豆油、なたね油、コーン油、ひまわり種子油、綿実油、落花生油、米糠油、オリーブ油、ヤシ油等の植物性油脂や牛脂、豚脂、鯨油、魚油等の動物性油脂が使用できる。
本発明において使用する油脂加工リン酸架橋澱粉は市販品も使用することができる。
【0010】
本発明の打ち粉は油脂加工リン酸架橋澱粉のみでもよいが、蛋白粉末を配合することが好ましい。
使用できる蛋白粉末としては、大豆蛋白、小麦蛋白、トウモロコシ蛋白、米蛋白等植物性蛋白や卵蛋白、ホエー等の動物性蛋白を挙げることができる。
【0011】
前記蛋白粉末の使用量は打ち粉中10〜99質量%が好ましい。
10質量%未満では、蛋白粉末添加による品質改善効果がみられず、99質量%を超えると衣の食感が重くなる傾向がある。
【0012】
本発明の打ち粉には、必要に応じて、従来打ち粉に使用されてきた副資材を配合することができる。
例えば、穀粉類、油脂加工リン酸架橋澱粉を除く澱粉類、調味料、食塩、香辛料、糖類、カルシウム、増粘剤、油脂、分散剤等を挙げることができる。
前記穀粉類としては、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末などを挙げることができる。
前記油脂加工リン酸架橋澱粉を除く澱粉類としては、未加工の小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉等や、前記生澱粉をアルファ化、エーテル化、アセチル化、酢酸エステル化、架橋、酸化等の処理をした加工澱粉を挙げることができる。
前記調味料としては、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の化学調味料、野菜、魚介類の粉末エキス、粉末醤油、粉末味噌等の天然調味料を挙げることができる。
前記香辛料としては、胡椒、唐辛子、ナツメグ、ガーリック、バジル、クミン等を挙げることができる。
前記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、キシロース、キシリトール等を挙げることができる。
前記増粘剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等を挙げることができる。
前記油脂は打ち粉の飛散防止の効果もあり、前記油脂としては、例えば、大豆、菜種、コーン、綿実、パーム、ゴマ、ラード、魚油等を挙げることができ、これらを加工した粉末油脂も使用することができる。
前記分散剤としては二酸化珪素粉末等を挙げることができる。
【0013】
本発明の打ち粉は油脂加工リン酸架橋澱粉のみでもよいが、蛋白粉末等を配合する場合には、公知の方法でほぼ均一になるように混合する。
混合の方法は特に限定されず、手混ぜによる方法や、リボンミキサー、ナウターミキサー、カスケードミキサー、ドラムミキサー、V型ミキサー等の混合機を使用する方法が挙げられる。
【0014】
本発明の打ち粉の使用方法は、特に限定されず通常の打ち粉と同様に使用することができる。
本発明の打ち粉が使用できる揚げ物は、天ぷらやトンカツ等のように衣を有するものであり、素揚げや小麦粉やシーズニングをまぶして揚げたから揚げ等は除かれる。
【0015】
本発明の打ち粉が使用できる具材は、特に限定されず、鶏肉、豚肉、牛肉等の肉類、魚、えび、たこ、イカ、かき等の魚介類、しいたけ、まつたけ等のきのこ類、ソラマメ等の豆類、たまねぎ、ニンジン、ごぼう、かぼちゃ、山菜等の野菜類を挙げることができる。
具材は、生でも加熱処理されていてもよく、特に従来衣の結着性が悪く、衣を使用した揚げ物の具材として使用が困難であったスチーム処理された豚肉、鶏肉又はイカに使用することにより衣の結着性を向上させ良好な食感の揚げ物を得ることができる。
【実施例】
【0016】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜7、比較例1〜4]
厚さ9mmのトンカツ用豚ロース肉55gをスチーマーに入れて、100℃で3分間スチーム処理した後、品温30℃になるまで空気冷却した。
前記スチーム処理した肉に表1に示す配合のあらかじめよく混ぜた打ち粉をまぶした後、表2に示す配合のバッターミックス100gに水190gを加えて調製したバッターにくぐらせ、生パン粉を付けて、−40℃の急速凍結庫で30分間凍結し冷凍トンカツ素材を得た。
前記冷凍トンカツ素材100gを170℃で4分間フライしてトンカツを得た。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
実施例1〜7及び比較例1〜4により得られたトンカツを、フライ直後及び2時間後にパネラー10名により、表3〜表6に示す評価基準により評価した。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
得られた結果(平均点)を表7に示す。
総合評価は各項目の合計点である。
【表7】

【0025】
実施例1〜7により得られたトンカツはいずれも比較例1〜4により得られたトンカツより肉の食感、衣の結着性に優れ、衣の食感も良かった。
実施例1〜7の作業性は比較例1〜4と同等若しくは劣っていたが、肉の食感、衣の結着性、衣の食感にすぐれ総合評価としては、比較例よりも優れていた。
【0026】
[実施例8〜9、比較例5]
冷凍スルメイカを解凍して、皮をむき、頭、足、骨及び内臓を除去した胴部を輪切りにしてから、100℃で1分間スチーム処理して、すぐ水で冷却し、一個あたり約8gのイカリング素材を得た。
イカリング素材に表8に示すあらかじめよく混ぜた打ち粉をまぶし、実施例1で使用したものと同じバッターにくぐらせ、生パン粉を付けて急速凍結機により−40℃で30分間凍結処理をして、一個あたり約16gの冷凍イカリングフライ素材を得た。
前記冷凍イカリングフライ素材を170℃で3分間フライしてイカリングフライを得た。
実施例8〜9及び比較例5により得られたイカリングフライを、フライ直後及び2時間後にパネラー10名により、前記表3〜表6に示す評価基準により評価した。
【0027】
【表8】

【0028】
得られた結果(平均点)を表9に示す。
総合評価は各項目の合計点である。
【表9】

【0029】
実施例8及び実施例9により得られたイカリングフライはいずれも比較例5により得られたイカリングフライより肉の食感、衣の結着性及び衣の食感に優れていた。
実施例8及び実施例9は、作業性は比較例5よりも劣ったが、肉の食感、衣の結着性、衣の食感に優れていて総合評価としては、比較例よりも優れていた。
【0030】
[実施例10〜11、比較例6]
鶏もも正肉を20gに切り、表10に示す配合のあらかじめよく混ぜた打ち粉をまぶしたのち、表11に示す配合のバッターミックス100gに水190gを加えて調製したバッターにくぐらせて、170℃で3分30秒フライして鶏衣揚げを得た。
【0031】
【表10】

【0032】
【表11】

【0033】
実施例10〜11及び比較例6により得られた鶏衣揚げを、フライ直後及び2時間後にパネラー10名により、前記表3〜表6に示す評価基準により評価した。
【0034】
得られた結果(平均点)を表12に示す。
総合評価は各項目の合計点である。
【0035】
【表12】

【0036】
実施例10及び実施例11により得られた鶏衣揚げはいずれも比較例6により得られた鶏衣揚げより肉の食感、衣の結着性及び衣の食感に優れていた。
実施例10及び実施例11は、作業性は比較例6よりも劣ったが、肉の食感、衣の結着性、衣の食感に優れていて総合評価としては、比較例よりも優れていた。
【0037】
[実施例12〜13、比較例7]
冷凍豚ロースポーション肉100gに表13に示す配合の打ち粉をまぶし、実施例1で使用したのと同じ配合のバッターをつけた後、生パン粉を付けて、急速凍結機により−40℃で30分間凍結して、150gの冷凍トンカツ素材を得た。
前記冷凍トンカツ素材を170℃で6分間フライしてトンカツを得た。
【0038】
実施例12〜13及び比較例7により得られたトンカツを、フライ直後及び2時間後にパネラー10名により、前記表3〜表6に示す評価基準により評価した。
【0039】
【表13】

【0040】
得られた結果(平均点)を表14に示す。
総合評価は各項目の合計点である。
【0041】
【表14】

【0042】
実施例12及び実施例13により得られたトンカツはいずれも比較例7により得られたトンカツより肉の食感、衣の結着性及び衣の食感に優れていた。
実施例12及び実施例13は、作業性は比較例7よりも劣ったが、肉の食感、衣の結着性、衣の食感に優れていて総合評価としては、比較例よりも優れていた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂加工リン酸架橋澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物。
【請求項2】
油脂加工リン酸架橋澱粉及び蛋白粉末を含有することを特徴とする揚げ物用打ち粉組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の揚げ物用打ち粉組成物を使用した揚げ物用素材。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の揚げ物用打ち粉組成物を使用した揚げ物。


【公開番号】特開2007−28905(P2007−28905A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212018(P2005−212018)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】