説明

揚水システム

【課題】水面下あるいは地下水の揚水、とくに高深度からの揚水を効率的でしかも省電力でおこなうようにする。
【解決手段】下端部が水面下又は地下水の所定の深度に達する揚水管と、該揚水管の長さ方向に一定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプと、上記揚水管の下端内部にエア送給管を介してエアを圧送する高圧コンプレッサとからなり、各揚水ポンプは揚水管内に回転自在に設置された揚水スクリューを有するとともに、高圧コンプレッサから圧送されるエアにより揚水管内に気泡を上昇させ、該上昇気泡により各揚水ポンプの揚水スクリューを回転させることにより揚水をおこなう。これにより地下水面下にある最下部に位置する1基の揚水ポンプを回転させる気泡エネルギーが、その上方に位置して設置された全ての揚水ポンプを稼動させて超効率的に揚水することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば超高層ビル屋上への揚水、あるいは深海や深層地下から深層水を揚水するための揚水システムに関し、超高度に効率的な揚水を可能にするとともに、更に揚水に要する電力の省電力化をはかることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
海洋深層水を揚水するための手段としては、一般的に電動の揚水ポンプが用いられるが、最近では風力を利用してコンプレッサを駆動させ、圧搾エアを湧昇管内に導入してエアレーションにより海洋深層水を汲み上げるようにしたもの(特開2001−123999号公報参照)、あるいは水を加熱して水蒸気を発生させることにより気泡を発生させ、これを揚水管路内に上昇させることによりエアレーションを利用して高深度の水域より揚水する手段も知られている(特開2004−346764号公報参照)。
【特許文献1】特開2001−123999号公報
【特許文献2】特開特開2004−346764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電動の揚水ポンプを用いる場合においては超深層より揚水するための駆動源として消費電力が膨大でコスト高となるのを免れない。また上記した引用文献1に開示された内容の発明にあっては、風力を利用するためにコンプレッサを駆動するための十分な電力を得難いばかりでなく、気象条件にも大きく左右されるところから実用性にかけるところがある。
【0004】
さらに引用文献2に開示された内容の発明にあっては超深度下における気泡発生のための加熱に膨大な電力を必要とするばかりでなく、超深度下への高温水蒸気発生のための加熱部の設置に多額の費用を要するところからきわめて高コストとなり現実的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、高効率でしかも低コストにて例えば深層水の揚水あるいは高層ビル屋上への揚水を可能にしたものであって、具体的には下端部が水面下又は地下水の所定の深度に達する揚水管と、該揚水管の長さ方向に一定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプと、上記揚水管の下端内部にエア送給管を介してエアを圧送する高圧コンプレッサとからなり、各揚水ポンプは揚水管内に回転自在に設置された揚水スクリューを有するとともに、高圧コンプレッサから圧送されるエアにより揚水管内に気泡を上昇させ、該上昇気泡により各揚水ポンプの揚水スクリューを回転させることにより揚水をおこなうようにしたことを特徴とする超深度超高度揚水システムに関する。
【0006】
また本発明は、下端部が水面下又は地下水の所定の深度に達する揚水管と、該揚水管の長さ方向に一定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプと、上記揚水管の下端内部にエア送給管を介してエアを圧送する高圧コンプレッサとからなり、各揚水ポンプには揚水管内に回転自在に設置された揚水スクリューと、該揚水スクリューの回転により発電する発電機とを備え、高圧コンプレッサから圧送されるエアにより揚水管内に気泡を上昇させ、該上昇気泡により各揚水ポンプの揚水スクリューを回転させることにより揚水をおこなうとともに、揚水スクリューの回転により発電した電力を高圧コンプレッサの駆動源に送電させるようにしたことを特徴とする超深度超高度揚水システムにも関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、稼動初期の高圧コンプレッサ駆動のための電力量は在来のものと変わらないが、ひとたび高圧コンプレッサから高圧エアを揚水管の下端部内に供給開始すると、高圧エアによる気泡が揚水管内を勢いよく上昇して各揚水ポンプの揚水スクリューを回転させることができ、しかも地下水面下にある最下部に位置する1基の揚水ポンプを回転させる気泡エネルギーが、その上方に位置して設置された全ての揚水ポンプを稼動させて超効率的に揚水することができる。
【0008】
また各揚水ポンプに発電機を備えている場合においては、上昇気泡により回転する揚水スクリューにより発電もでき、この発電力を高圧コンプレッサに還元させることにより、高圧コンプレッサの駆動開始初期の段階を除いて、それ以後の継続運転時の駆動電力が著しく軽減され、また高深層からの揚水効率が著しく向上する結果、超高度に揚水することが可能となり揚水コストの著しい低減化をはかることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において本発明の具体的な内容を図1〜4にあらわした超高層ビルBの屋上への揚水用として設置した発電機を備えた揚水システムについて説明をする。図において1は揚水管、2・3・4・5・6は揚水管1の長さ方向に所定間隔毎に設置された複数の揚水ポンプ、8は揚水管1の下端内部にエア送給管9を介してエアを圧送する高圧コンプレッサをあらわしている。
【0010】
揚水ポンプ2・3・4・5・6を途中に介在させた揚水管1は超高層ビルBに、その高さ方向に沿って超高層ビルBの屋上から、下部先端である下端1aが該ビルの基礎部より地下の水脈W内に達するべく例えば長さが30m程度から300m程度あるいはそれ以上の長さに設置され、しかもその上端は超高層ビルBの屋上に設置された大型貯蓄水槽P内に向けて先端が開口されている。
【0011】
この場合の揚水管1は一般的には所定の長さ(通常は4m)程度の長さを有する多数のパイプを繋ぎ合わせて目的の長さに形成するものとする。また高圧コンプレッサ8も超高層ビルBの屋上に設置されており、該高圧コンプレッサ8より供給される高圧エアは一端エアタンクATに蓄えられ、該エアタンクATより前記揚水管1に沿わせて設置したエア送給管9により揚水管1の下端1aであって、水面下の所定深度、すなわち地下水位W1より低い位置において揚水管1内に接続されている。なおこの場合の接続は、単に一方向から接続するだけでもよいが、好ましくは揚水管1の下端1aにおいて揚水管1の放射方向から接続してエアを供給するようにする。
【0012】
さらに揚水ポンプ2・3・4・5・6は、図4にもあらわしたようにそれぞれ内部に回転自在の揚水翼7を備えており、それ自体の構造については既知のポンプと比べて大きな違いはないが、既知のものとの大きな違いは、揚水スクリュー7に対して水ではなく寧ろ揚水管1内を上昇する多数の気泡の浮力による上昇衝突により揚水スクリュー7を回転させ、これによって揚水をおこなうようにしたところに大きな特徴を有するものである。
【0013】
また各揚水ポンプ2・3・4・5・6には、この場合上記した揚水スクリュー7の回転軸に接続された発電機Eがそれぞれ内臓されており、揚水スクリュー7の回転力によって揚水と同時に発電機Eが発電をする構造となっている。図1の実施例では、揚水管1の長さ方向に所定間隔毎に設置される揚水ポンプとして、説明の便宜上から揚水ポンプ2・3・4・5・6の5箇所をあらわしているが、実際のシステムとしては揚水パイプ1の長さ、すなわち深度高度如何に応じて揚水ポンプ3と揚水ポンプ4との間には、所定間隔毎にさらに別の多くの揚水ポンプが介在されている。
【0014】
また、各揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・は、揚水管1の長さ方向に繋ぎ合わされるパイプの繋ぎ合わせ部分、すなわち揚水管1の接続部分を利用して所定間隔毎に介在される。この場合に、揚水管先端1aの位置、すなわち水面下深さが比較的深い場合には高水圧となるために、揚水ポンプ2と3、あるいは4とのそれぞれの間隔は比較的長くできるなど、揚水ポンプ間の間隔については必ずしも一定でなくてもよい。揚水ポンプの下側から揚水される水を受け入れて各揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・内を浮力により勢いよく上昇する気泡が揚水翼7の放射状に配置された各羽根の傾斜面に衝突して揚水翼7を回転させることにより、揚水管1および揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・内の地下水を超高層ビルBの屋上に向けて揚水することができる。
【0015】
また揚水翼7が上昇気泡により回転すると、地下水の揚水をおこなうことができるばかりでなく、同時に内臓された発電機Eにより発電し、各揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・により発電した電力はケーブル10および制御器11を介して高圧コンプレッサ8に送電され、あるいは高圧コンプレッサ8に付属する蓄電池(図示省略)に蓄電される。
【0016】
さらに高圧コンプレッサ8は、揚水管1の下端1a内部にエア送給管9を介してエアを圧送することにより揚水管1内の地下水中に気泡Fを発生させる。なおこの場合の高圧コンプレッサ8の出力は揚水する深度如何によって圧送気圧を調整するものとする。
【0017】
上記の構成において、揚水管1の接続部分を利用して一定間隔毎に揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・を介在させた揚水管1を、その下端部1aが地下水脈における水面下一定の深さに達するように設置するとともに、高圧コンプレッサ8および揚水管1の下端1a内部にエアを圧送するエア送給管9を設置し、さらに各揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・の各内臓発電機Eと高圧コンプレッサ8とを制御器11を介して接続するケーブル10を敷設して電力補助を可能にした地下水の揚水をおこなう。
【0018】
なおこの場合に、揚水ポンプの揚水能力が高ければ、揚水能力の範囲内において上部の揚水ポンプの取り付け位置をより高くすることができるので、下部に位置する揚水ポンプの揚水能力如何によっては、上方に位置する揚水ポンプの取り付け位置を適宜変えることが可能となり、各揚水ポンプの取り付け間隔については必ずしも一定である必要がない。
【0019】
具体的には、高圧コンプレッサ8を商用電力により起動させて高圧のエアを発生させ、これをエアタンクATを介してエア送給管9により揚水管1の下端1a内部にエアを圧送供給する。この場合のエアの供給は、必ずしも継続的でなくともよく、通常例えば0.5秒〜3秒程度の範囲内での間歇的供給で足りる。圧送されたエアは水面下の揚水管1の下端1aより気泡Fとなって揚水管1内を浮力により勢いよく上昇し、揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・のそれぞれの揚水翼7に順次衝突して揚水翼7を回転させ、これによって揚水管1内の地下水を上方に向けて上昇させることにより揚水されて高層ビルBの屋上に取水することができる。
【0020】
この場合に、揚水ポンプを回転させる気泡エネルギーが揚水管に沿って設置される揚水ポンプの数に比例して倍増され、最下部に位置する揚水ポンプを始動させたエネルギーが、順次上方に設置された多数の全揚水ポンプを稼動させることが可能となる。
【0021】
さらにこの場合に、各揚水ポンプ2・3・4・5・6・・・の揚水翼7が回転すると、これらの揚水翼7の回転軸と同軸に取り付けられている内臓発電機6が発電し、ケーブル10および制御器11を介して高圧コンプレッサ8に付属する蓄電池(図示省略)に蓄電され、制御器11からの信号により、この蓄電力が随時高圧コンプレッサ8に送電され、以後における高圧コンプレッサ8の起動電源からの起動電力量は著しく軽減されるために、高圧コンプレッサ8の初期起動時以外における継続運転中においては駆動電力が著しく軽減される。
【0022】
なお上記した実施例においては地下水を高層ビルの屋上に向けた揚水に適用する場合について説明をしたが、このほかにも本発明は、例えば地下高深度の温泉水の揚水や、海洋深層水の取水用として、あるいは砂漠の地下数百から数千メートルの水脈より揚水して砂漠地帯に地下水を潤すことにより、植物の栽培を可能にし、あるいは環境温度の上昇を抑制して地球温暖化の防止に貢献することなどにも適用が可能である。
【0023】
本発明は各種の目的に応じた適用が可能であり、その揚水深度如何によって揚水管1の長さを水面下(温泉など地下水の揚水を行う場合においては地下水)の所定の深度に達する長さを有するものとする。
【0024】
一般的には所定の長さ(通常は4m)程度の長さを有する多数のパイプを繋ぎ合わせて、記述した実施例の高層ビルへの適用など比較的揚水距離が短い場合においては数百メートル、場合によっては100m以下での揚水を行い、あるいは砂漠での深層地下水の揚水、あるいは超深層海水など深層水の揚水を行う場合においては深度1000m〜1500m程度の長さに構成して用いられる。なお揚水管1の先端部1aに対するエア噴射位置が水中深度において深さを増すに従って水圧が上昇するために、供給するエアの圧力を高圧化する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を高層ビル屋上への地下水の揚水に適用した場合のシステムの一例の概略をあらわした説明図。
【図2】図1における一部を拡大してあらわした揚水管の断面図。
【図3】揚水ポンプの一部を断面であらわした部分拡大図。
【図4】図3におけるAーA線矢視方向の断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 揚水管
2 揚水ポンプ
3 揚水ポンプ
4 揚水ポンプ
5 揚水ポンプ
6 発電機
7 揚水翼
8 高圧コンプレッサ
9 エア送給管
10 ケーブル
11 制御器
E 発電機
B 高層ビル
W 地下水脈
W1 地下水位
P 大型貯蓄水槽
AT エアタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が水面下又は地下水の所定の深度に達する揚水管と、該揚水管の長さ方向に所定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプと、上記揚水管の下端内部にエア送給管を介してエアを圧送する高圧コンプレッサとからなり、各揚水ポンプは揚水管内に回転自在に設置された揚水翼を有するとともに、高圧コンプレッサから圧送されるエアにより揚水管内に気泡を上昇させ、該上昇気泡により各揚水ポンプの揚水翼を回転させることにより揚水をおこなうようにしたことを特徴とする揚水システム。
【請求項2】
下端部が水面下又は地下水の所定の深度に達する揚水管と、該揚水管の長さ方向に所定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプと、上記揚水管の下端内部にエア送給管を介してエアを圧送する高圧コンプレッサとからなり、各揚水ポンプには揚水管内に回転自在に設置された揚水翼と、該揚水翼の回転により発電する発電機を内臓し、高圧コンプレッサから圧送されるエアにより揚水管内に気泡を上昇させ、該上昇気泡により各揚水ポンプの揚水翼を回転させることにより揚水をおこなうとともに、該揚水翼の回転により発電した電力を高圧コンプレッサの駆動源に送電し、あるいは該駆動源に接続された蓄電池に蓄電するようにしたことを特徴とする揚水システム。
【請求項3】
揚水管の長さ方向に所定間隔毎に設置された複数又は多数の揚水ポンプが、揚水管の接続部分に介在され、揚水管内を上昇する気泡により揚水翼を回転させて揚水をおこなうとともに、該揚水翼の回転力を利用して発電機により発電した電力を高圧コンプレッサの駆動源に送電し、あるいは該駆動源に接続された蓄電池に蓄電するようにしたものであるところの請求項1又は請求項2に記載の超深度超高度超効率化させた揚水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−291651(P2008−291651A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134916(P2007−134916)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(500292840)
【Fターム(参考)】