揚水装置、軟弱地盤改良工法、地盤掘削工法、汚染土壌浄化工法、及び復水工法
【課題】地下水の井戸管内への流入を安定化するとともに流入効率を高める。
【解決手段】揚水装置は、井戸管3、閉塞蓋、減圧ポンプ、揚水ポンプ6、及びポンプ収納部7を有する。井戸管3は、下端部にストレーナー8が設けられており地盤に埋設される。閉塞蓋は、井戸管3の内側空間を気密状態で閉塞する。減圧ポンプは、吸気パイプを通じて井戸管3の内側空間を減圧する。ポンプ収納部7は、上端がストレーナー8の地下水流入部8cよりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材22、及び、側壁部材22の底面を区画する底部材21を備えている。揚水ポンプ6には、ポンプ収納部7の側壁部材22の上端22aよりも低い位置に吸込口が設置されている。
【解決手段】揚水装置は、井戸管3、閉塞蓋、減圧ポンプ、揚水ポンプ6、及びポンプ収納部7を有する。井戸管3は、下端部にストレーナー8が設けられており地盤に埋設される。閉塞蓋は、井戸管3の内側空間を気密状態で閉塞する。減圧ポンプは、吸気パイプを通じて井戸管3の内側空間を減圧する。ポンプ収納部7は、上端がストレーナー8の地下水流入部8cよりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材22、及び、側壁部材22の底面を区画する底部材21を備えている。揚水ポンプ6には、ポンプ収納部7の側壁部材22の上端22aよりも低い位置に吸込口が設置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸管内の下端部に設置された揚水ポンプ及び井戸管の内側空間を減圧する減圧部を備えた揚水装置、この揚水装置を用いた軟弱地盤改良工法及び地盤掘削工法、地盤中の地下水を汲み上げる揚水工程を行う汚染土壌浄化工法、並びに、注入時とは反対方向に地盤内の地下水を移動させることで、その後の水の注入を円滑にする回復工程を行う復水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位低下工法として、バキュームディープウェル工法が知られている。このバキュームディープウェル工法では、ストレーナーを有する井戸管を土中に埋設し、この井戸管にポンプ及び減圧装置を取り付けている。この減圧装置の運転によって井戸管内を減圧して水位面に負圧を作用させることで、自然水位と井戸管水位(井戸管内の仮想水位)との水頭差を大きくして排水する。
【0003】
このバキュームディープウェル工法では、図14に示すように、地下水位が、ストレーナー101における地下水が流入する上端よりも下に位置すると、ストレーナー101を通って地下水とともに空気が井戸管102内に流入するため減圧効果が低減してしまう。そこで、地下水流入部の上端よりも地下水位が下がった場合でも、高い集水性能を有するように改良された装置がある。
【0004】
例えば図15に示すように、特許文献1には、地下水を内部に流入させることが可能なストレーナー200を設けたストレーナー管201と、ストレーナー管201の内側に設けられ、このストレーナー管201の内壁から所定間隔離間して設けられ、下端部に通水孔202を有する内筒管203とを有する地下水位低下装置が提案されている。この装置では、周辺地盤の地下水位が、ストレーナー200における地下水が流入する上端より下がっても、内筒とストレーナー管201の間の水がシールとなるため、空気が流入しないで減圧効果を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−27170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置では、排水ポンプの稼働に応じて井戸管内の水位が変動する。例えば、排水ポンプが盛んに排水している間は水位が下がり、排水ポンプの吸入口よりも水位が下がって排水ポンプを一旦停止させると、井戸管内に地下水が流入して水位が上がる。特許文献1の装置で、内筒管203内の水位を一定の高さに保つようにバランスを取ることは、非常に困難である。このため、水位面204に作用する負圧を安定的な大きさで周辺地下水に及ぼすことができず、地下水の井戸管内への流入量が不安定になるという問題があった。
【0007】
また、井戸管の周囲において地下水位がストレーナー200の地下水流入部の上端よりも下がった場合、地下水流入部の上端から地下水位までの部分は地下水の吸引に関与できないので、その分だけ地下水の吸引効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、地下水の井戸管内への流入を安定化させること、及び、地下水の井戸管内への流入効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の揚水装置は、下端部にストレーナーが設けられ、地盤に埋設される井戸管と、前記井戸管の内側空間を気密状態で閉塞する閉塞蓋と、前記閉塞蓋で閉塞された前記井戸管の内側空間を減圧する減圧部と、上端が前記ストレーナーの地下水流入部よりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材、及び、前記側壁部材の底面を区画する底部材を備えたポンプ収納部と、前記ポンプ収納部の前記側壁部材の上端よりも低い位置に吸込口が設置された揚水ポンプと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、揚水ポンプの運転によって井戸管内の水位が側壁部材の上端の高さまで下がると、それ以降は、揚水ポンプが収納されている収納空間において水位が下がり、側壁部材よりも外周側については水位が一定になる。従って、側壁部材を越流した地下水が収納空間内に流入し、揚水ポンプによって汲み上げられる。このように、側壁部材よりも外周側については、水位が側壁部材の上端の高さで一定になり、それ以上低くならない。そして、側壁部材よりも外周側の水位面に、地下水を吸引するための負圧が作用するので、地下水の吸引力を一定にすることができ、地下水の井戸管内への流入を安定化させることができる。また、井戸管の周囲における地下水の水位は、ストレーナーの地下水流入部の上端よりも低くならないので、ストレーナーの全体から地下水を吸引することができ、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記ポンプ収納部が、前記底部材を前記井戸管の底面から浮かせた状態で支持する脚部材を有する場合には、井戸管の底を土砂溜めとして用いることで、ストレーナーを通過して流入してくる土砂により、井戸が機能不全になるまでの期間を長くすることができる。
【0012】
本発明において、前記ポンプ収納部が備える底部材は、前記井戸管の底面を構成する場合には、装置構成の簡素化が図れる。
【0013】
また、本発明は、地盤における改良対象箇所に設置された、請求項1〜3の何れか1項に記載の揚水装置によって地下水を汲み上げる揚水工程を含む軟弱地盤改良工法である。
【0014】
本発明によれば、軟弱な粘性地盤の性状改善において、揚水井戸に対する負圧の効果を高めることで、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。その結果、水の移動がし難い軟弱な粘性地盤であっても迅速に井戸管内に地下水を集めることができ、短い時間で地盤の性状を改善できる。
【0015】
また、本発明は、地盤における掘削箇所と非掘削箇所との境界に土留め壁を構築する土留め壁構築工程と、前記土留め壁の近傍に設置された請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置により、被圧地下水の地下水圧を低下させる水圧低下工程と、前記地下水圧の低下に伴って前記掘削箇所に下側から作用する揚力を緩和させた状態で、前記掘削箇所に対する掘削を行う地盤掘削工程とを含む地盤掘削工法である。
【0016】
本発明によれば、掘削工事における被圧地下水の水圧低下時において、揚水井戸に対する負圧の効果を高め、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。その結果、1台の揚水装置によって広い範囲の地下水を、流量を安定させた状態で汲み上げることができるため、少ない本数の井戸を設置するだけで盤ぶくれを防止しつつ、地盤を掘削できる。
【0017】
また、本発明は、汚染物質で汚染された汚染土壌に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を設置して、汚染物質を含む汚染土壌周辺部の地下水を揚水する揚水工程と、揚水した前記地下水中の汚染物質を地上で処理する汚染物質処理工程とを含む汚染土壌浄化工法である。
【0018】
本発明によれば、前記揚水工程において、揚水時の負圧の作用の効果を高めることができるので、1台の揚水装置によって広い範囲の地盤から地下水を汲み上げることができ、改良範囲を拡げることができる。また、地下水を汲み上げた後には、引き続き周囲の空気を吸引するので、揮発性の汚染物質が土壌内に残存していた場合の浄化にも適用できる。
【0019】
また、本発明は、地盤に設けられた復水井戸に水を注入し、前記地盤の中に水を戻す復水工程と、前記復水井戸における内側空間の水を揚水することで復水井戸周辺の目詰まりを改善する回復工程とを行う復水工法であって、前記復水井戸に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、前記回復工程において、揚水時の負圧の作用の効果を高めることができるので、広い範囲の地下水に影響を及ぼし、その位置で目詰まりの原因となっている土砂を復水井戸側へ移動させることができ、この移動で形成された流路を通じてその後の復水工程における水の地盤への注入を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地下水の井戸管内への流入を安定化させることができ、かつ、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】揚水装置を説明する断面図である。
【図2】井戸菅の下端部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】地下水の汲み上げ前の状態、及び、汲み上げ開始時の状態を説明する断面図である。
【図5】井戸管内に負圧をかけて、地下水を排出する状態を説明する断面図である。
【図6】井戸管内に負圧をかけた状態で排水を継続した後の状態を説明する断面図である。
【図7】井戸管の下端部における水の流れを説明する断面図である。
【図8】土質性状改善工法を説明する図である。
【図9】地盤掘削工法における地盤掘削前の状態を説明する図である。
【図10】地盤掘削工法における地盤掘削後の状態を説明する図である。
【図11】汚染土壌浄化工法を模式的に説明する図である。
【図12】リチャージウェル工法を模式的に説明する図である。
【図13】側壁部材の変形例を説明する図である。
【図14】従来技術を説明する図である。
【図15】改良された従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る揚水装置について説明する。
【0024】
図1に示すように、揚水装置2は、井戸管3と、閉塞蓋4と、減圧ポンプ5と、揚水ポンプ6と、ポンプ収納部7とを有する。
【0025】
井戸管3は、地盤Gに埋設される筒状の部材である。本実施形態では直径が40cmの円筒状であり、長さが30mの鋼管を用いている。例示した地盤Gでは、地下水Wが浸透しており、地下水面は自然水位になっている。
【0026】
図2に示すように、井戸管3の下端部周面にはストレーナー8が設けられている。ストレーナー8は、井戸管3の内側と外側とを連通する部分であり、井戸管3に設けたスリット8aを外側から囲むように巻回したワイヤー8bで構成されていて、後述するフィルターFLの材料が井戸管3の内部に入らないように、ワイヤー8bの間隔を詰めてある。従って、地盤G内の地下水Wは、ストレーナー8のスリット8aを通って井戸管3の内部に流入する。このため、スリット8aは地下水が流入する地下水流入部に相当する。また、井戸管3の底は、底板10によって液密状態に塞がれている。この底板10は、円形鋼板によって作成され、井戸管3の下端部に溶接される。
【0027】
図1に示すように、閉塞蓋4は、井戸管3の上端面を気密状態で塞ぐ部材である。本実施形態の閉塞蓋4は、井戸管3の外径と同じか一回り大きい円形鋼板によって構成され、井戸管3の上端に溶接されている。なお、閉塞蓋4は、地下水Wの自然水位よりも高い位置であれば、井戸管3の上端よりも低い位置に設けてもよい。
【0028】
減圧ポンプ5は、吸気パイプ11を通じて井戸管3の内側空間から空気を吸い出し、この内側空間を減圧する装置である。吸気パイプ11は、減圧ポンプ5の吸気口と井戸管3の内側空間とを連通する部材である。前述の閉塞蓋4には、吸気パイプ11を挿入するための挿入口が板厚方向を貫通して設けられており(図示せず)、挿入口における吸気パイプ11との隙間がシール材で埋められている。減圧ポンプ5を運転すると、井戸管3内の空気は吸気パイプ11を通じて吸い出されて外へ放出され、内側空間が減圧される。従って、減圧ポンプ5と吸気パイプ11の組は、井戸管3の内側空間を減圧する減圧部に相当する。
【0029】
揚水ポンプ6は、ストレーナー8を通じて井戸管3内に流入した地下水Wを汲み上げる装置である。本実施形態では、出力が3.7kwhのディープウェル用水中ポンプを用いている。図2及び図3に示すように、この揚水ポンプ6は、井戸管3の下端部に、ポンプ収納部7に収納された状態で設置されている。そして、揚水ポンプ6の周面下端部には、水を取り込むための取水口12が設けられている。この取水口12は地下水の吸込口に相当し、側壁部材22の上端22aよりも低い位置に配置されている。
【0030】
この揚水ポンプ6には排水パイプ13の下端が接続されている。この排水パイプ13は、井戸管3に沿って鉛直方向に取り付けられている。図1に示すように、この排水パイプ13の上部は、閉塞蓋4に設けられた挿入口を通って井戸管3の外部に至る。なお、挿入口と排水パイプ13との隙間は、吸気パイプ11と同様にシール材で埋められている。
【0031】
図2及び図3に示すように、ポンプ収納部7は、底部材21と、側壁部材22と、脚部材23とを有している。そして、底部材21と側壁部材22とが有底筒状に接合されることで、揚水ポンプ6が収納される収納空間7aが区画される。
【0032】
底部材21は、揚水ポンプ6が設置される円形板状の部材であり、収納空間7aの底部(側壁部材22の底面)を区画する。この底部材21の直径は、揚水ポンプ6よりも一回り大きく、井戸管3の内径よりも一回り小さくなるように定められる。本実施形態の底部材21は、直径が32cmとされた円形の鋼板によって作製される。また、本実施形態では、揚水ポンプ6を底部材21に固定しており、揚水によって収納空間7aが空になった際のポンプ収納部7の浮き上がりを防止している。
【0033】
側壁部材22は、収納空間7aの側面を区画する筒状部材であり、本実施形態では、直径が32cmの鋼製円筒管によって作製されている。側壁部材22の下端は、溶接によって底部材21の外周部分と液密状態で接合されている。これにより、側壁部材22と底部材21の接合部から収納空間7aへの水の浸入を防止している。そして、収納空間7aへの水の流入は、井戸管3と側壁部材22の隙間(便宜上、流入空間3aという)の水位が上昇して側壁部材22を越流することでなされる。
【0034】
側壁部材22の高さは、側壁部材22の上端22aがスリット8aの上端8cよりも所定高さ以上高くなるように定められる。本実施形態では、側壁部材22の上端22aがスリット8aの上端8cよりも所定高さX1(本実施形態では10cm)だけ高くなるように、側壁部材22の高さが定められている。そして、側壁部材22の上端22aとスリット8aの上端8cとの間に高低差を設けることで、この範囲を満たす水が空気の浸入を抑制するシール機能を発揮する(詳細は後述する)。
【0035】
脚部材23は、底部材21の下面に設けられ、底部材21を井戸管3の底から浮かせた状態で支持する。この脚部材23もまた鋼材で作製されており、上端が底部材21の底面に溶接されている。脚部材23によって底部材21を井戸管3の底から浮かせると、井戸管3の底面から底部材21までの範囲X2を土砂溜めとして用いることができ、ストレーナー8を通過して流入する土砂によって、井戸管3内が閉塞し機能不全に至るまでの期間を長くすることができる。なお、図では圧縮しているが、範囲X2は、例えば1〜2m程度に定められる。
【0036】
また、図1に示すように、井戸管3の外周面と地盤Gとの間には、井戸管3を囲繞する状態でフィルターFLが設けられている。このフィルターFLは、例えば玉砂利を井戸管3と地盤Gとの隙間に充填することで形成される。このフィルターFLは透水性を備えており、地盤Gから井戸管3の周囲に染み出した地下水Wをろ過しつつ流下させる。フィルターFLを流下した地下水Wは、井戸管3の下端部からワイヤー8b同士の隙間やスリット8aを通って、井戸管3の内側空間に流入する。このフィルターFLを設けることで、井戸管3の周囲に存在する地下水Wをストレーナー8へ導きやすくなり、地下水Wの井戸管3への流入効率を高めることができる。
【0037】
次に、前述の揚水装置2の作用について説明する。
【0038】
図4(a)に示す揚水前の状態から揚水ポンプ6の運転を開始すると、図4(b)に示すように、井戸管3内の水位WL1は、揚水に伴って低くなる。また、地盤G内の水位WL2も低くなる。この水位WL2は、フィルターFLの位置が最も低く、破線で示すように、この位置から半径方向に遠ざかるにつれて高くなる。
【0039】
図5(a)に示すように、井戸管3内の水位WL1が側壁部材22の上端22a程度まで低くなったならば、減圧ポンプ5の運転を開始し、バキュームによって井戸管3の内側空間を減圧する。この減圧によって井戸管3内の仮想水位が下がる。このように井戸管3内の仮想水位を下げることで、井戸管3外の自然水位とのヘッド差が大きくなり、井戸管3内に地下水を流入させることができる。
【0040】
これにより、例えば図5(b)に示すように、地盤G内における水位WL2の傾斜が、スリット8aの上端8cを基点として図5(a)の水位WL2の傾斜よりも緩やかになり、広い範囲で地下水位を低下させることができる。さらに運転を継続すると、図6に示すように、地盤G内における水位WL2の傾斜が図5(b)の水位WL2の傾斜よりもさらに緩やかになり、水平に近付くこととなって、その結果、井戸管3外における水位低下の影響範囲を広くすることができる。
【0041】
図7は、本願発明における揚水部分の拡大図である。井戸管3内の水位WL1に関し、この水位WL1が側壁部材22の上端22aの高さまで低下すると、図7に示すように、それ以降は収納空間7aの水位面WL1aは下降するが、流入空間3a(井戸管3と側壁部材22の隙間)の水位面WL1bは下降しない。これは、側壁部材22によって、流入空間3aと収納空間7aとが仕切られていることによる。このことは、収納空間7aに溜められたほぼ全量の水が揚水ポンプ6で汲み上げられたとしても同様である。
【0042】
また、地盤Gの地下水が井戸管3内に流入してきたとしても、流入空間3aの水位面WL1bは、側壁部材22の上端22aの高さに維持される。これは、流入空間3aに入った地下水は、井戸管3内の負圧により吸い上げられ、側壁部材22を越流して収納空間7aに流れ込み、揚水ポンプ6で汲み上げられるからである。
【0043】
そして、地下水Wの吸引時には、流入空間3aの水位面WL1bに、地下水を吸引するための負圧が作用する。この水位面WL1bは高さが維持されるため、地下水Wの吸引力を安定化することができ、ひいては地下水Wの井戸管3内への流入を安定化させることができる。
【0044】
また、側壁部材22の上端22aは、スリット8aの上端8cよりも所定高さX1だけ高い位置に設けられている。このため、ストレーナー8付近における地下水Wの水位WL2が側壁部材22の上端22a以下になった場合であっても、側壁部材22の上端22aとスリット8aの上端8cの間に存在する水が、地盤Gからの空気を侵入し難くするシールの役目をする。
【0045】
すなわち、導水勾配のついた周囲の地下水が井戸管3内に流れ込んでくるため、この地下水が地盤G内の空気の浸入をブロックする。これにより、地下水Wの水位WL2がスリット8aの上端8cに達しても、井戸管3内の流入空間3aには、地盤G内の空気が時折気泡状になって浸入する程度で、多量の空気が連続して入り込むことがないのを、発明者らは実験により確認している。これにより、井戸管3内における急激な圧力変化を抑制でき、減圧状態を維持できる。これにより、地下水Wの井戸管3内への流入を安定的に行うことができる。
【0046】
さらに、井戸管3の周囲における地下水Wの水位WL2は、スリット8aの上端8cよりも低くならないので、ストレーナー8の全体から地下水Wを吸引することができる。これにより、地下水Wの井戸管3内への流入効率を高めることができ、広い範囲の地盤Gについて地下水Wの水位を低下させることができる。
【0047】
次に、前述の揚水装置2を用いた土質性状改善工法(軟弱地盤改良工法)について説明する。
【0048】
図8に示すように、この土質性状改善工法では、地盤Gに土留め壁1を構築して改善対象箇所G1を囲み(土留め壁構築工程)、改善対象箇所G1内に揚水装置2を設置する(装置設置工程)。揚水装置2を設置したならば、この揚水装置2の運転を開始して地下水位を低下させる(水位低下工程)。
【0049】
揚水装置2を運転すると、図4から図6で説明したように、揚水に伴って地盤G内の水位WL2が低くなる。その結果、1台の揚水装置2によって広い範囲の地盤Gから地下水Wを汲み上げることができ、従来の井戸を用いた場合よりも早期に、開削対象箇所G1の地下水Wを排出することができる。また、掘削地盤が軟弱な粘性地盤であった場合、自然水位では井戸まで移動しづらい地盤G中の余剰水も、バキュームの負圧によって短時間で集水できる。これにより、水を除去したドライワークの開始を早めることができ、工期の短縮が図れる。
【0050】
次に、前述の揚水装置2を用いた地盤掘削工法について説明する。
【0051】
図9に示すように、この地盤掘削工法でも、地盤Gに土留め壁1を構築して掘削箇所G1を囲む(土留め壁構築工程)。この構築工程では、地盤Gにおける掘削箇所G1と非掘削箇所G2との境界に、掘削箇所G1を囲む状態で土留め壁1を構築する。また、非掘削箇所G2における土留め壁1の近傍に、揚水装置2を設置する(装置設置工程)。揚水装置2を設置したならば、この揚水装置2の運転を開始して被圧地下水の地下水圧を低下させる(水圧低下工程)。
【0052】
揚水装置2の運転により、被圧帯水層G4内の水圧が低くなる。その結果、1台の揚水装置2によって広い範囲の帯水層G4から地下水Wを汲み上げることができ、掘削箇所G1に下側から作用する揚力を緩和させることができる。水圧を低下させたならば、図10に示すように、土留め壁1で囲まれた範囲の地盤Gを掘削する(地盤掘削工程)。このように、水圧を低下させた状態で地盤を掘削することで、盤ぶくれを防止しながら地盤Gの掘削を行える。
【0053】
このように、揚水装置2を地盤掘削工法に用いると、広い範囲の地下水Wを汲み上げることができるので、従来の工法に比べて井戸(揚水装置)の本数を減らすことができる。また、地下水Wの汲み上げを短期間で行えるので、地盤Gの掘削を早期に開始できる。
【0054】
次に、本発明を汚染土壌浄化工法に適用した応用例について説明する。
【0055】
図11に示すように、この汚染土壌浄化工法では、前述の揚水装置2を、地盤Gにおける改良対象箇所G5に設置する。なお、汚染土壌浄化工法においては、改良対象箇所G5が地表から数m〜十数m程度の深さであるのが一般的である。このため、本実施形態の揚水装置2では、井戸管3の長さが改良対象箇所G5の深さに応じた深さ、すなわち数m〜十数m程度の深さになる。
【0056】
揚水装置2を設置したならば、改良対象箇所G5から地下水Wを汲み上げ、地上に設置した汚染物質浄化装置に導入する。この場合、汲み上げた地下水は、汚染物質を含有しているので、汲み上げた後に浄化装置によって汚染物質を除去する。
【0057】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、1台の揚水装置2によって広い範囲の地盤Gから地下水Wを汲み上げることができる。すなわち、広い範囲の地盤Gについて汚染浄化が行える。また、地下水Wを汲み上げた後においては、地盤G内の空気を吸引することにより、地中に残った揮発性汚染物質を除去し続けることができる。
【0058】
次に、本発明をリチャージウェル工法(復水工法)に適用した応用例について説明する。
【0059】
図12(a)〜(c)に示すように、本実施形態のリチャージウェル工法では、ディープウェル32(揚水井戸)とリチャージウェル33(復水井戸)とを用いる。そして、ディープウェル32で汲み上げた水を、リチャージウェル33によって地盤Gへ戻している(復水工程)。また、ディープウェル32及びリチャージウェル33のそれぞれを、第1実施形態の揚水装置2と同じ構造にしている。すなわち、ディープウェル32及びリチャージウェル33は、揚水装置2を備えている。
【0060】
図12(a)に示すように、ディープウェル32で汲み上げた水を、長期間にわたってリチャージウェル33を介して地盤Gへ戻し続けると、リチャージウェル33側で目詰まりが生じてしまい、水が地盤Gに注入され難くなってしまう。これは、地盤G中の細かな土砂が注入された水と共に移動し、水の流路を塞いだためと考えられる。その結果、リチャージウェル33の水位が上昇し、ディープウェル32で汲み上げた水を注入し難くなってしまう。
【0061】
そこで、図12(b)に示すように、リチャージウェル33に存在する水を汲み上げて、地盤Gの水及び土砂をリチャージウェル33側に移動させる回復工程を行う。この回復工程では、ディープウェル32において揚水ポンプ6の運転を停止し、リチャージウェル33の揚水ポンプ6を運転し、井戸管3内の水位が十分に下がったら減圧ポンプ5を運転する。これによって、第1実施形態で説明したように、広い範囲の地下水Wがリチャージウェル33側に移動する。
【0062】
地下水Wの移動によって目詰まりの原因となっていた土砂も移動する。例えば、リチャージウェル33内に流入した土砂は水と共に外部に排出される。また、リチャージウェル33から離れた位置の土砂は、リチャージウェル33側に多少移動する。このように、土砂が排出されたり移動したりすることで、土砂が原因の目詰まりが解消される。目詰まりが解消されたならば、図12(c)に示すように、復水工程を再開する。
【0063】
リチャージウェル33の回復工程では、目詰まりした位置とのヘッド差を大きくしてやることが重要である。このため自然水位の井戸では、井戸内水位の低下に限界があり、バキュームウェルで負圧をかけて、仮想水位を下げてやると効果がでる。
【0064】
また、この実施形態でも、先の実施形態と同様に、地下水Wの井戸管3内への流入効率を高めることができる。その結果、回復工程において、長期間に亘って広い範囲の地下水Wや土砂を復水井戸側へ移動させることができ、この移動で形成された流路を通じてその後の復水工程における水の地盤Gへの注入を円滑に行うことができる。
【0065】
以上、好適な実施形態について説明したが、この説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、次のように構成されていてもよい。
【0066】
例えば、ポンプ収納部7の側壁部材22に関し、流入空間3aと収納空間7aとを区画できれば、円筒状に限られない。例えば、図13(a)に示すように、六角筒状の側壁部材22´を用いてもよい。また、図13(b)に示すように、各頂点が井戸管3の内壁に接するように設けられ、かつ、揚水ポンプ6とは独立に設けられた星形筒状の側壁部材22″を用いてもよい。さらに、ポンプ収納部7の底部材21に関し、井戸管3の底板10と一体に構成してもよい。このようにすると、底部材21が井戸管3の底面を構成するので、構成の簡素化が図れる。
【0067】
また、井戸の直径や深さ、ポンプ収納部7の内径、揚水ポンプ6の出力や大きさは、あくまで一例であり、現場の状況に応じて適宜定められる。
【符号の説明】
【0068】
1 土留め壁
2 揚水装置
3 井戸管(3a 流入空間)
4 閉塞蓋
5 減圧ポンプ
6 揚水ポンプ
7 ポンプ収納部(7a 収納空間)
8 ストレーナー(8a スリット,8b ワイヤー,8c スリットの上端)
10 底板
11 吸気パイプ
12 取水口
13 排水パイプ
21 底部材
22,22´ 側壁部材(22a 側壁部材の上端)
23 脚部材
32 ディープウェル(揚水井戸)
33 リチャージウェル(復水井戸)
G 地盤
G1 掘削箇所
G2 非掘削箇所
G3 遮水層
G4 粘土層
G5 改良対象箇所
FL フィルター
W 地下水(WL1 井戸管内の水位,WL2 地盤内の水位)
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸管内の下端部に設置された揚水ポンプ及び井戸管の内側空間を減圧する減圧部を備えた揚水装置、この揚水装置を用いた軟弱地盤改良工法及び地盤掘削工法、地盤中の地下水を汲み上げる揚水工程を行う汚染土壌浄化工法、並びに、注入時とは反対方向に地盤内の地下水を移動させることで、その後の水の注入を円滑にする回復工程を行う復水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水位低下工法として、バキュームディープウェル工法が知られている。このバキュームディープウェル工法では、ストレーナーを有する井戸管を土中に埋設し、この井戸管にポンプ及び減圧装置を取り付けている。この減圧装置の運転によって井戸管内を減圧して水位面に負圧を作用させることで、自然水位と井戸管水位(井戸管内の仮想水位)との水頭差を大きくして排水する。
【0003】
このバキュームディープウェル工法では、図14に示すように、地下水位が、ストレーナー101における地下水が流入する上端よりも下に位置すると、ストレーナー101を通って地下水とともに空気が井戸管102内に流入するため減圧効果が低減してしまう。そこで、地下水流入部の上端よりも地下水位が下がった場合でも、高い集水性能を有するように改良された装置がある。
【0004】
例えば図15に示すように、特許文献1には、地下水を内部に流入させることが可能なストレーナー200を設けたストレーナー管201と、ストレーナー管201の内側に設けられ、このストレーナー管201の内壁から所定間隔離間して設けられ、下端部に通水孔202を有する内筒管203とを有する地下水位低下装置が提案されている。この装置では、周辺地盤の地下水位が、ストレーナー200における地下水が流入する上端より下がっても、内筒とストレーナー管201の間の水がシールとなるため、空気が流入しないで減圧効果を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−27170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置では、排水ポンプの稼働に応じて井戸管内の水位が変動する。例えば、排水ポンプが盛んに排水している間は水位が下がり、排水ポンプの吸入口よりも水位が下がって排水ポンプを一旦停止させると、井戸管内に地下水が流入して水位が上がる。特許文献1の装置で、内筒管203内の水位を一定の高さに保つようにバランスを取ることは、非常に困難である。このため、水位面204に作用する負圧を安定的な大きさで周辺地下水に及ぼすことができず、地下水の井戸管内への流入量が不安定になるという問題があった。
【0007】
また、井戸管の周囲において地下水位がストレーナー200の地下水流入部の上端よりも下がった場合、地下水流入部の上端から地下水位までの部分は地下水の吸引に関与できないので、その分だけ地下水の吸引効率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、地下水の井戸管内への流入を安定化させること、及び、地下水の井戸管内への流入効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の揚水装置は、下端部にストレーナーが設けられ、地盤に埋設される井戸管と、前記井戸管の内側空間を気密状態で閉塞する閉塞蓋と、前記閉塞蓋で閉塞された前記井戸管の内側空間を減圧する減圧部と、上端が前記ストレーナーの地下水流入部よりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材、及び、前記側壁部材の底面を区画する底部材を備えたポンプ収納部と、前記ポンプ収納部の前記側壁部材の上端よりも低い位置に吸込口が設置された揚水ポンプと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、揚水ポンプの運転によって井戸管内の水位が側壁部材の上端の高さまで下がると、それ以降は、揚水ポンプが収納されている収納空間において水位が下がり、側壁部材よりも外周側については水位が一定になる。従って、側壁部材を越流した地下水が収納空間内に流入し、揚水ポンプによって汲み上げられる。このように、側壁部材よりも外周側については、水位が側壁部材の上端の高さで一定になり、それ以上低くならない。そして、側壁部材よりも外周側の水位面に、地下水を吸引するための負圧が作用するので、地下水の吸引力を一定にすることができ、地下水の井戸管内への流入を安定化させることができる。また、井戸管の周囲における地下水の水位は、ストレーナーの地下水流入部の上端よりも低くならないので、ストレーナーの全体から地下水を吸引することができ、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。
【0011】
本発明において、前記ポンプ収納部が、前記底部材を前記井戸管の底面から浮かせた状態で支持する脚部材を有する場合には、井戸管の底を土砂溜めとして用いることで、ストレーナーを通過して流入してくる土砂により、井戸が機能不全になるまでの期間を長くすることができる。
【0012】
本発明において、前記ポンプ収納部が備える底部材は、前記井戸管の底面を構成する場合には、装置構成の簡素化が図れる。
【0013】
また、本発明は、地盤における改良対象箇所に設置された、請求項1〜3の何れか1項に記載の揚水装置によって地下水を汲み上げる揚水工程を含む軟弱地盤改良工法である。
【0014】
本発明によれば、軟弱な粘性地盤の性状改善において、揚水井戸に対する負圧の効果を高めることで、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。その結果、水の移動がし難い軟弱な粘性地盤であっても迅速に井戸管内に地下水を集めることができ、短い時間で地盤の性状を改善できる。
【0015】
また、本発明は、地盤における掘削箇所と非掘削箇所との境界に土留め壁を構築する土留め壁構築工程と、前記土留め壁の近傍に設置された請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置により、被圧地下水の地下水圧を低下させる水圧低下工程と、前記地下水圧の低下に伴って前記掘削箇所に下側から作用する揚力を緩和させた状態で、前記掘削箇所に対する掘削を行う地盤掘削工程とを含む地盤掘削工法である。
【0016】
本発明によれば、掘削工事における被圧地下水の水圧低下時において、揚水井戸に対する負圧の効果を高め、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。その結果、1台の揚水装置によって広い範囲の地下水を、流量を安定させた状態で汲み上げることができるため、少ない本数の井戸を設置するだけで盤ぶくれを防止しつつ、地盤を掘削できる。
【0017】
また、本発明は、汚染物質で汚染された汚染土壌に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を設置して、汚染物質を含む汚染土壌周辺部の地下水を揚水する揚水工程と、揚水した前記地下水中の汚染物質を地上で処理する汚染物質処理工程とを含む汚染土壌浄化工法である。
【0018】
本発明によれば、前記揚水工程において、揚水時の負圧の作用の効果を高めることができるので、1台の揚水装置によって広い範囲の地盤から地下水を汲み上げることができ、改良範囲を拡げることができる。また、地下水を汲み上げた後には、引き続き周囲の空気を吸引するので、揮発性の汚染物質が土壌内に残存していた場合の浄化にも適用できる。
【0019】
また、本発明は、地盤に設けられた復水井戸に水を注入し、前記地盤の中に水を戻す復水工程と、前記復水井戸における内側空間の水を揚水することで復水井戸周辺の目詰まりを改善する回復工程とを行う復水工法であって、前記復水井戸に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、前記回復工程において、揚水時の負圧の作用の効果を高めることができるので、広い範囲の地下水に影響を及ぼし、その位置で目詰まりの原因となっている土砂を復水井戸側へ移動させることができ、この移動で形成された流路を通じてその後の復水工程における水の地盤への注入を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、地下水の井戸管内への流入を安定化させることができ、かつ、地下水の井戸管内への流入効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】揚水装置を説明する断面図である。
【図2】井戸菅の下端部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2におけるA矢視図である。
【図4】地下水の汲み上げ前の状態、及び、汲み上げ開始時の状態を説明する断面図である。
【図5】井戸管内に負圧をかけて、地下水を排出する状態を説明する断面図である。
【図6】井戸管内に負圧をかけた状態で排水を継続した後の状態を説明する断面図である。
【図7】井戸管の下端部における水の流れを説明する断面図である。
【図8】土質性状改善工法を説明する図である。
【図9】地盤掘削工法における地盤掘削前の状態を説明する図である。
【図10】地盤掘削工法における地盤掘削後の状態を説明する図である。
【図11】汚染土壌浄化工法を模式的に説明する図である。
【図12】リチャージウェル工法を模式的に説明する図である。
【図13】側壁部材の変形例を説明する図である。
【図14】従来技術を説明する図である。
【図15】改良された従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る揚水装置について説明する。
【0024】
図1に示すように、揚水装置2は、井戸管3と、閉塞蓋4と、減圧ポンプ5と、揚水ポンプ6と、ポンプ収納部7とを有する。
【0025】
井戸管3は、地盤Gに埋設される筒状の部材である。本実施形態では直径が40cmの円筒状であり、長さが30mの鋼管を用いている。例示した地盤Gでは、地下水Wが浸透しており、地下水面は自然水位になっている。
【0026】
図2に示すように、井戸管3の下端部周面にはストレーナー8が設けられている。ストレーナー8は、井戸管3の内側と外側とを連通する部分であり、井戸管3に設けたスリット8aを外側から囲むように巻回したワイヤー8bで構成されていて、後述するフィルターFLの材料が井戸管3の内部に入らないように、ワイヤー8bの間隔を詰めてある。従って、地盤G内の地下水Wは、ストレーナー8のスリット8aを通って井戸管3の内部に流入する。このため、スリット8aは地下水が流入する地下水流入部に相当する。また、井戸管3の底は、底板10によって液密状態に塞がれている。この底板10は、円形鋼板によって作成され、井戸管3の下端部に溶接される。
【0027】
図1に示すように、閉塞蓋4は、井戸管3の上端面を気密状態で塞ぐ部材である。本実施形態の閉塞蓋4は、井戸管3の外径と同じか一回り大きい円形鋼板によって構成され、井戸管3の上端に溶接されている。なお、閉塞蓋4は、地下水Wの自然水位よりも高い位置であれば、井戸管3の上端よりも低い位置に設けてもよい。
【0028】
減圧ポンプ5は、吸気パイプ11を通じて井戸管3の内側空間から空気を吸い出し、この内側空間を減圧する装置である。吸気パイプ11は、減圧ポンプ5の吸気口と井戸管3の内側空間とを連通する部材である。前述の閉塞蓋4には、吸気パイプ11を挿入するための挿入口が板厚方向を貫通して設けられており(図示せず)、挿入口における吸気パイプ11との隙間がシール材で埋められている。減圧ポンプ5を運転すると、井戸管3内の空気は吸気パイプ11を通じて吸い出されて外へ放出され、内側空間が減圧される。従って、減圧ポンプ5と吸気パイプ11の組は、井戸管3の内側空間を減圧する減圧部に相当する。
【0029】
揚水ポンプ6は、ストレーナー8を通じて井戸管3内に流入した地下水Wを汲み上げる装置である。本実施形態では、出力が3.7kwhのディープウェル用水中ポンプを用いている。図2及び図3に示すように、この揚水ポンプ6は、井戸管3の下端部に、ポンプ収納部7に収納された状態で設置されている。そして、揚水ポンプ6の周面下端部には、水を取り込むための取水口12が設けられている。この取水口12は地下水の吸込口に相当し、側壁部材22の上端22aよりも低い位置に配置されている。
【0030】
この揚水ポンプ6には排水パイプ13の下端が接続されている。この排水パイプ13は、井戸管3に沿って鉛直方向に取り付けられている。図1に示すように、この排水パイプ13の上部は、閉塞蓋4に設けられた挿入口を通って井戸管3の外部に至る。なお、挿入口と排水パイプ13との隙間は、吸気パイプ11と同様にシール材で埋められている。
【0031】
図2及び図3に示すように、ポンプ収納部7は、底部材21と、側壁部材22と、脚部材23とを有している。そして、底部材21と側壁部材22とが有底筒状に接合されることで、揚水ポンプ6が収納される収納空間7aが区画される。
【0032】
底部材21は、揚水ポンプ6が設置される円形板状の部材であり、収納空間7aの底部(側壁部材22の底面)を区画する。この底部材21の直径は、揚水ポンプ6よりも一回り大きく、井戸管3の内径よりも一回り小さくなるように定められる。本実施形態の底部材21は、直径が32cmとされた円形の鋼板によって作製される。また、本実施形態では、揚水ポンプ6を底部材21に固定しており、揚水によって収納空間7aが空になった際のポンプ収納部7の浮き上がりを防止している。
【0033】
側壁部材22は、収納空間7aの側面を区画する筒状部材であり、本実施形態では、直径が32cmの鋼製円筒管によって作製されている。側壁部材22の下端は、溶接によって底部材21の外周部分と液密状態で接合されている。これにより、側壁部材22と底部材21の接合部から収納空間7aへの水の浸入を防止している。そして、収納空間7aへの水の流入は、井戸管3と側壁部材22の隙間(便宜上、流入空間3aという)の水位が上昇して側壁部材22を越流することでなされる。
【0034】
側壁部材22の高さは、側壁部材22の上端22aがスリット8aの上端8cよりも所定高さ以上高くなるように定められる。本実施形態では、側壁部材22の上端22aがスリット8aの上端8cよりも所定高さX1(本実施形態では10cm)だけ高くなるように、側壁部材22の高さが定められている。そして、側壁部材22の上端22aとスリット8aの上端8cとの間に高低差を設けることで、この範囲を満たす水が空気の浸入を抑制するシール機能を発揮する(詳細は後述する)。
【0035】
脚部材23は、底部材21の下面に設けられ、底部材21を井戸管3の底から浮かせた状態で支持する。この脚部材23もまた鋼材で作製されており、上端が底部材21の底面に溶接されている。脚部材23によって底部材21を井戸管3の底から浮かせると、井戸管3の底面から底部材21までの範囲X2を土砂溜めとして用いることができ、ストレーナー8を通過して流入する土砂によって、井戸管3内が閉塞し機能不全に至るまでの期間を長くすることができる。なお、図では圧縮しているが、範囲X2は、例えば1〜2m程度に定められる。
【0036】
また、図1に示すように、井戸管3の外周面と地盤Gとの間には、井戸管3を囲繞する状態でフィルターFLが設けられている。このフィルターFLは、例えば玉砂利を井戸管3と地盤Gとの隙間に充填することで形成される。このフィルターFLは透水性を備えており、地盤Gから井戸管3の周囲に染み出した地下水Wをろ過しつつ流下させる。フィルターFLを流下した地下水Wは、井戸管3の下端部からワイヤー8b同士の隙間やスリット8aを通って、井戸管3の内側空間に流入する。このフィルターFLを設けることで、井戸管3の周囲に存在する地下水Wをストレーナー8へ導きやすくなり、地下水Wの井戸管3への流入効率を高めることができる。
【0037】
次に、前述の揚水装置2の作用について説明する。
【0038】
図4(a)に示す揚水前の状態から揚水ポンプ6の運転を開始すると、図4(b)に示すように、井戸管3内の水位WL1は、揚水に伴って低くなる。また、地盤G内の水位WL2も低くなる。この水位WL2は、フィルターFLの位置が最も低く、破線で示すように、この位置から半径方向に遠ざかるにつれて高くなる。
【0039】
図5(a)に示すように、井戸管3内の水位WL1が側壁部材22の上端22a程度まで低くなったならば、減圧ポンプ5の運転を開始し、バキュームによって井戸管3の内側空間を減圧する。この減圧によって井戸管3内の仮想水位が下がる。このように井戸管3内の仮想水位を下げることで、井戸管3外の自然水位とのヘッド差が大きくなり、井戸管3内に地下水を流入させることができる。
【0040】
これにより、例えば図5(b)に示すように、地盤G内における水位WL2の傾斜が、スリット8aの上端8cを基点として図5(a)の水位WL2の傾斜よりも緩やかになり、広い範囲で地下水位を低下させることができる。さらに運転を継続すると、図6に示すように、地盤G内における水位WL2の傾斜が図5(b)の水位WL2の傾斜よりもさらに緩やかになり、水平に近付くこととなって、その結果、井戸管3外における水位低下の影響範囲を広くすることができる。
【0041】
図7は、本願発明における揚水部分の拡大図である。井戸管3内の水位WL1に関し、この水位WL1が側壁部材22の上端22aの高さまで低下すると、図7に示すように、それ以降は収納空間7aの水位面WL1aは下降するが、流入空間3a(井戸管3と側壁部材22の隙間)の水位面WL1bは下降しない。これは、側壁部材22によって、流入空間3aと収納空間7aとが仕切られていることによる。このことは、収納空間7aに溜められたほぼ全量の水が揚水ポンプ6で汲み上げられたとしても同様である。
【0042】
また、地盤Gの地下水が井戸管3内に流入してきたとしても、流入空間3aの水位面WL1bは、側壁部材22の上端22aの高さに維持される。これは、流入空間3aに入った地下水は、井戸管3内の負圧により吸い上げられ、側壁部材22を越流して収納空間7aに流れ込み、揚水ポンプ6で汲み上げられるからである。
【0043】
そして、地下水Wの吸引時には、流入空間3aの水位面WL1bに、地下水を吸引するための負圧が作用する。この水位面WL1bは高さが維持されるため、地下水Wの吸引力を安定化することができ、ひいては地下水Wの井戸管3内への流入を安定化させることができる。
【0044】
また、側壁部材22の上端22aは、スリット8aの上端8cよりも所定高さX1だけ高い位置に設けられている。このため、ストレーナー8付近における地下水Wの水位WL2が側壁部材22の上端22a以下になった場合であっても、側壁部材22の上端22aとスリット8aの上端8cの間に存在する水が、地盤Gからの空気を侵入し難くするシールの役目をする。
【0045】
すなわち、導水勾配のついた周囲の地下水が井戸管3内に流れ込んでくるため、この地下水が地盤G内の空気の浸入をブロックする。これにより、地下水Wの水位WL2がスリット8aの上端8cに達しても、井戸管3内の流入空間3aには、地盤G内の空気が時折気泡状になって浸入する程度で、多量の空気が連続して入り込むことがないのを、発明者らは実験により確認している。これにより、井戸管3内における急激な圧力変化を抑制でき、減圧状態を維持できる。これにより、地下水Wの井戸管3内への流入を安定的に行うことができる。
【0046】
さらに、井戸管3の周囲における地下水Wの水位WL2は、スリット8aの上端8cよりも低くならないので、ストレーナー8の全体から地下水Wを吸引することができる。これにより、地下水Wの井戸管3内への流入効率を高めることができ、広い範囲の地盤Gについて地下水Wの水位を低下させることができる。
【0047】
次に、前述の揚水装置2を用いた土質性状改善工法(軟弱地盤改良工法)について説明する。
【0048】
図8に示すように、この土質性状改善工法では、地盤Gに土留め壁1を構築して改善対象箇所G1を囲み(土留め壁構築工程)、改善対象箇所G1内に揚水装置2を設置する(装置設置工程)。揚水装置2を設置したならば、この揚水装置2の運転を開始して地下水位を低下させる(水位低下工程)。
【0049】
揚水装置2を運転すると、図4から図6で説明したように、揚水に伴って地盤G内の水位WL2が低くなる。その結果、1台の揚水装置2によって広い範囲の地盤Gから地下水Wを汲み上げることができ、従来の井戸を用いた場合よりも早期に、開削対象箇所G1の地下水Wを排出することができる。また、掘削地盤が軟弱な粘性地盤であった場合、自然水位では井戸まで移動しづらい地盤G中の余剰水も、バキュームの負圧によって短時間で集水できる。これにより、水を除去したドライワークの開始を早めることができ、工期の短縮が図れる。
【0050】
次に、前述の揚水装置2を用いた地盤掘削工法について説明する。
【0051】
図9に示すように、この地盤掘削工法でも、地盤Gに土留め壁1を構築して掘削箇所G1を囲む(土留め壁構築工程)。この構築工程では、地盤Gにおける掘削箇所G1と非掘削箇所G2との境界に、掘削箇所G1を囲む状態で土留め壁1を構築する。また、非掘削箇所G2における土留め壁1の近傍に、揚水装置2を設置する(装置設置工程)。揚水装置2を設置したならば、この揚水装置2の運転を開始して被圧地下水の地下水圧を低下させる(水圧低下工程)。
【0052】
揚水装置2の運転により、被圧帯水層G4内の水圧が低くなる。その結果、1台の揚水装置2によって広い範囲の帯水層G4から地下水Wを汲み上げることができ、掘削箇所G1に下側から作用する揚力を緩和させることができる。水圧を低下させたならば、図10に示すように、土留め壁1で囲まれた範囲の地盤Gを掘削する(地盤掘削工程)。このように、水圧を低下させた状態で地盤を掘削することで、盤ぶくれを防止しながら地盤Gの掘削を行える。
【0053】
このように、揚水装置2を地盤掘削工法に用いると、広い範囲の地下水Wを汲み上げることができるので、従来の工法に比べて井戸(揚水装置)の本数を減らすことができる。また、地下水Wの汲み上げを短期間で行えるので、地盤Gの掘削を早期に開始できる。
【0054】
次に、本発明を汚染土壌浄化工法に適用した応用例について説明する。
【0055】
図11に示すように、この汚染土壌浄化工法では、前述の揚水装置2を、地盤Gにおける改良対象箇所G5に設置する。なお、汚染土壌浄化工法においては、改良対象箇所G5が地表から数m〜十数m程度の深さであるのが一般的である。このため、本実施形態の揚水装置2では、井戸管3の長さが改良対象箇所G5の深さに応じた深さ、すなわち数m〜十数m程度の深さになる。
【0056】
揚水装置2を設置したならば、改良対象箇所G5から地下水Wを汲み上げ、地上に設置した汚染物質浄化装置に導入する。この場合、汲み上げた地下水は、汚染物質を含有しているので、汲み上げた後に浄化装置によって汚染物質を除去する。
【0057】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、1台の揚水装置2によって広い範囲の地盤Gから地下水Wを汲み上げることができる。すなわち、広い範囲の地盤Gについて汚染浄化が行える。また、地下水Wを汲み上げた後においては、地盤G内の空気を吸引することにより、地中に残った揮発性汚染物質を除去し続けることができる。
【0058】
次に、本発明をリチャージウェル工法(復水工法)に適用した応用例について説明する。
【0059】
図12(a)〜(c)に示すように、本実施形態のリチャージウェル工法では、ディープウェル32(揚水井戸)とリチャージウェル33(復水井戸)とを用いる。そして、ディープウェル32で汲み上げた水を、リチャージウェル33によって地盤Gへ戻している(復水工程)。また、ディープウェル32及びリチャージウェル33のそれぞれを、第1実施形態の揚水装置2と同じ構造にしている。すなわち、ディープウェル32及びリチャージウェル33は、揚水装置2を備えている。
【0060】
図12(a)に示すように、ディープウェル32で汲み上げた水を、長期間にわたってリチャージウェル33を介して地盤Gへ戻し続けると、リチャージウェル33側で目詰まりが生じてしまい、水が地盤Gに注入され難くなってしまう。これは、地盤G中の細かな土砂が注入された水と共に移動し、水の流路を塞いだためと考えられる。その結果、リチャージウェル33の水位が上昇し、ディープウェル32で汲み上げた水を注入し難くなってしまう。
【0061】
そこで、図12(b)に示すように、リチャージウェル33に存在する水を汲み上げて、地盤Gの水及び土砂をリチャージウェル33側に移動させる回復工程を行う。この回復工程では、ディープウェル32において揚水ポンプ6の運転を停止し、リチャージウェル33の揚水ポンプ6を運転し、井戸管3内の水位が十分に下がったら減圧ポンプ5を運転する。これによって、第1実施形態で説明したように、広い範囲の地下水Wがリチャージウェル33側に移動する。
【0062】
地下水Wの移動によって目詰まりの原因となっていた土砂も移動する。例えば、リチャージウェル33内に流入した土砂は水と共に外部に排出される。また、リチャージウェル33から離れた位置の土砂は、リチャージウェル33側に多少移動する。このように、土砂が排出されたり移動したりすることで、土砂が原因の目詰まりが解消される。目詰まりが解消されたならば、図12(c)に示すように、復水工程を再開する。
【0063】
リチャージウェル33の回復工程では、目詰まりした位置とのヘッド差を大きくしてやることが重要である。このため自然水位の井戸では、井戸内水位の低下に限界があり、バキュームウェルで負圧をかけて、仮想水位を下げてやると効果がでる。
【0064】
また、この実施形態でも、先の実施形態と同様に、地下水Wの井戸管3内への流入効率を高めることができる。その結果、回復工程において、長期間に亘って広い範囲の地下水Wや土砂を復水井戸側へ移動させることができ、この移動で形成された流路を通じてその後の復水工程における水の地盤Gへの注入を円滑に行うことができる。
【0065】
以上、好適な実施形態について説明したが、この説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、次のように構成されていてもよい。
【0066】
例えば、ポンプ収納部7の側壁部材22に関し、流入空間3aと収納空間7aとを区画できれば、円筒状に限られない。例えば、図13(a)に示すように、六角筒状の側壁部材22´を用いてもよい。また、図13(b)に示すように、各頂点が井戸管3の内壁に接するように設けられ、かつ、揚水ポンプ6とは独立に設けられた星形筒状の側壁部材22″を用いてもよい。さらに、ポンプ収納部7の底部材21に関し、井戸管3の底板10と一体に構成してもよい。このようにすると、底部材21が井戸管3の底面を構成するので、構成の簡素化が図れる。
【0067】
また、井戸の直径や深さ、ポンプ収納部7の内径、揚水ポンプ6の出力や大きさは、あくまで一例であり、現場の状況に応じて適宜定められる。
【符号の説明】
【0068】
1 土留め壁
2 揚水装置
3 井戸管(3a 流入空間)
4 閉塞蓋
5 減圧ポンプ
6 揚水ポンプ
7 ポンプ収納部(7a 収納空間)
8 ストレーナー(8a スリット,8b ワイヤー,8c スリットの上端)
10 底板
11 吸気パイプ
12 取水口
13 排水パイプ
21 底部材
22,22´ 側壁部材(22a 側壁部材の上端)
23 脚部材
32 ディープウェル(揚水井戸)
33 リチャージウェル(復水井戸)
G 地盤
G1 掘削箇所
G2 非掘削箇所
G3 遮水層
G4 粘土層
G5 改良対象箇所
FL フィルター
W 地下水(WL1 井戸管内の水位,WL2 地盤内の水位)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部にストレーナーが設けられ、地盤に埋設される井戸管と、
前記井戸管の内側空間を気密状態で閉塞する閉塞蓋と、
前記閉塞蓋で閉塞された前記井戸管の内側空間を減圧する減圧部と、
上端が前記ストレーナーの地下水流入部よりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材、及び、前記側壁部材の底面を区画する底部材を備えたポンプ収納部と、
前記ポンプ収納部の前記側壁部材の上端よりも低い位置に吸込口が設置された揚水ポンプと、
を有することを特徴とする揚水装置。
【請求項2】
前記ポンプ収納部は、前記底部材を前記井戸管の底面から浮かせた状態で支持する脚部材を有することを特徴とする請求項1に記載の揚水装置。
【請求項3】
前記ポンプ収納部が備える底部材は、前記井戸管の底面を構成することを特徴とする請求項1に記載の揚水装置。
【請求項4】
地盤における改良対象箇所に設置された、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置によって地下水を汲み上げる揚水工程を含むことを特徴とする軟弱地盤改良工法。
【請求項5】
地盤における掘削箇所と非掘削箇所との境界に土留め壁を構築する土留め壁構築工程と、
前記土留め壁の近傍に設置された請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置により、被圧地下水の地下水圧を低下させる水圧低下工程と、
前記地下水圧の低下に伴って前記掘削箇所に下側から作用する揚力を緩和させた状態で、前記掘削箇所に対する掘削を行う地盤掘削工程とを含むことを特徴とする地盤掘削工法。
【請求項6】
汚染物質で汚染された汚染土壌に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を設置して、汚染物質を含む汚染土壌周辺部の地下水を揚水する揚水工程と、
揚水した前記地下水中の汚染物質を地上で処理する汚染物質処理工程とを含むことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項7】
地盤に設けられた復水井戸に水を注入し、前記地盤の中に水を戻す復水工程と、
前記復水井戸における内側空間の水を揚水することで復水井戸周辺の目詰まりを改善する回復工程とを行う復水工法であって、
前記復水井戸に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を備えることを特徴とする復水工法。
【請求項1】
下端部にストレーナーが設けられ、地盤に埋設される井戸管と、
前記井戸管の内側空間を気密状態で閉塞する閉塞蓋と、
前記閉塞蓋で閉塞された前記井戸管の内側空間を減圧する減圧部と、
上端が前記ストレーナーの地下水流入部よりも上方に位置するように高さが定められた筒状の側壁部材、及び、前記側壁部材の底面を区画する底部材を備えたポンプ収納部と、
前記ポンプ収納部の前記側壁部材の上端よりも低い位置に吸込口が設置された揚水ポンプと、
を有することを特徴とする揚水装置。
【請求項2】
前記ポンプ収納部は、前記底部材を前記井戸管の底面から浮かせた状態で支持する脚部材を有することを特徴とする請求項1に記載の揚水装置。
【請求項3】
前記ポンプ収納部が備える底部材は、前記井戸管の底面を構成することを特徴とする請求項1に記載の揚水装置。
【請求項4】
地盤における改良対象箇所に設置された、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置によって地下水を汲み上げる揚水工程を含むことを特徴とする軟弱地盤改良工法。
【請求項5】
地盤における掘削箇所と非掘削箇所との境界に土留め壁を構築する土留め壁構築工程と、
前記土留め壁の近傍に設置された請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置により、被圧地下水の地下水圧を低下させる水圧低下工程と、
前記地下水圧の低下に伴って前記掘削箇所に下側から作用する揚力を緩和させた状態で、前記掘削箇所に対する掘削を行う地盤掘削工程とを含むことを特徴とする地盤掘削工法。
【請求項6】
汚染物質で汚染された汚染土壌に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を設置して、汚染物質を含む汚染土壌周辺部の地下水を揚水する揚水工程と、
揚水した前記地下水中の汚染物質を地上で処理する汚染物質処理工程とを含むことを特徴とする汚染土壌浄化工法。
【請求項7】
地盤に設けられた復水井戸に水を注入し、前記地盤の中に水を戻す復水工程と、
前記復水井戸における内側空間の水を揚水することで復水井戸周辺の目詰まりを改善する回復工程とを行う復水工法であって、
前記復水井戸に、請求項1から3の何れか1項に記載の揚水装置を備えることを特徴とする復水工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−256670(P2011−256670A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134210(P2010−134210)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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