説明

換気扇用フィルター及びその製造方法

【課題】樹脂バインダーを使用することなく嵩高性を保持し、油滴捕集性 ,油保有性に優れた換気扇用フィルターを提供する。
【解決手段】レーヨン,アクリル繊維の如き融点をもたない非溶融性短繊維とポリエステル,ポリプロピレン等の同種または異種の高融点成分と低融点成分からなるサイドバイサイドまたは芯鞘構造をもつ熱融着性短繊維とを、前者を20〜60質量%の範囲、後者を40〜80質量%の範囲で混繊した繊維層を互いに交絡する繊維による空気保有空間を保持させて、熱融着性繊維の融着により繊維間を接着せしめた不織布よりなる換気扇用フィルターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂バインダーを使用することなく、熱融着性繊維を用いてフィルター全体の嵩高性を保持し調理場や台所で発生する油滴を捕集し保持する能力を向上させた換気扇用フィルターならびにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台所や調理場等で用いられている換気扇は油汚れ等が付着し易く、これを放置しておくと不潔であるのみならず、換気扇が重くなって回転抵抗が大きくなるため一般に換気扇の吸気口側に換気扇用フィルターを取り付けることが行われている。
【0003】
この換気扇用フィルターとしては従来、フィルター材をフィルター枠に着脱自在に係止するものと、フィルター材をフィルター枠に接着したものなどが知られており、フィルター材にはポリオレフィン系繊維やポリエステル繊維などを積層し、繊維相互間をバインダー等で結合した不織布や不燃性の不織布あるいは金網にセラミックコーティングやフッ素コーティングしたものなどが用いられている。(例えば特許文献1,2参照)
ところで、上記不織布をフィルター材として用いるにあたっては、バインダーを液状とするため、これに浸漬するときはフィルター材を構成する繊維層の嵩高性を損なうため通常、スプレータイプが採用されるが、液状であるために表面層の嵩の低下は避けられない状況である。
【0004】
一方、近年、環境対策として液体のバインダー(接着剤)を使用する接着は、処理液の後処理や接着乾燥等の熱エネルギーの消費が環境の負荷となり好ましくないとしてノーバインダーの方向に進む傾向にある。
【特許文献1】特開2002−18215号公報
【特許文献2】特開2003−265911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノーバインダーを進めるには先ず熱融着性繊維の使用が当然に考えられるが、唯、単に熱融着性繊維を利用したというのでは斬新さに欠ける。そこで、本発明者は換気扇用フィルターに求められる性能に着目し、特に油ミスト(油滴)を捕集する能力(油保有性)と不織布特性である初期圧縮弾性率と、初期伸長弾性率との関係を探求することにより、樹脂バインダーを使用することなく、熱融着性繊維を使用してフィルター全体の嵩高性を保持しつつ油滴(油ミスト)を捕集する能力(油保有性)を向上せしめた換気扇用フィルターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、上記目的に適合する本発明換気扇用フィルターは、請求項1に記載する如く、融点をもたない非溶融性繊維と、熱融着性繊維との短繊維による混繊からなり、前記融点をもたない非溶融性繊維の混繊比率が20〜60質量%の範囲であり、かつ熱融着性繊維の混繊比率が40〜80質量%の範囲である繊維層を互いに交絡する繊維による空気保有空間を保持させて熱融着性繊維の融着により繊維間を接着してなる不織布よりなる換気扇用フィルターにある。
【0007】
請求項2は上記フィルターにおける非溶融性繊維がレーヨン繊維又はアクリル繊維あるいは両者の混合短繊維であることを特徴とする。請求項3は上記フィルターにおける繊維層が目付質量20〜250g/m2の範囲で、厚さが0.5〜20.0mmの範囲であることを特徴とする。請求項4は、上記における不織布の初期伸長弾性率が1.0〜20.0N/cm2*(g/cc)の範囲で初期圧縮弾性率が2.5〜6.0Pa*(g/cc)であることを特徴とする。請求項5は本発明フィルターに用いられる熱融着性短繊維が同種あるいは異種の高融点繊維成分と低融点繊維成分からなるサイドバイサイドあるいは芯鞘の構造を有し、低融点繊維成分がが100℃〜200℃の範囲の複合繊維であることを特徴とする。請求項6は上記換気扇用フィルター、特にフィルターを形成する不織布の製造方法に係り、融点をもたない短繊維の混繊比率が20〜60質量%の範囲で、かつ熱融着性繊維の短繊維の混繊比率が40〜80質量%の範囲で、両短繊維を均一に混繊し、カーディング加工を施し繊維層として、該繊維層を引き続き互いに交絡する繊維による空気保有空間を保持させて連続して熱風処理に付し、熱融着性繊維の融着により繊維間を接着せしめることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明換気扇用フィルターによれば、混繊短繊維層による不織布の初期伸長弾性率,初期圧縮弾性率を所定の範囲としたため油捕集性がよく、繊維のまとまりと接着性がよく、換気扇用フィルターとして優れた性能を発揮する。
【0009】
また、熱融着性繊維を所定量混繊することにより繊維間の接着性が確保されると共に、バインダーを使用する必要なく、かつ、繊維による空気保有空間を保持することにより嵩高性の保持力にすぐれ、しかも融点をもたない繊維を混繊することにより耐ドリップ効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的態様について順次説明する。
【0011】
先ず本発明換気扇用フィルターは前述した如く非溶融性短繊維と熱融着性短繊維の混繊からなる繊維層より構成された不織布よりなること、そして、構成短繊維が互いの交絡による空気保有空間を有してふっくらとした嵩高状態を保持していて、該状態を保持しつつ
熱融着性繊維の融着により繊維間が接着されていることをその基本構成とする。
【0012】
そして、本発明は上記の構成において、フィルターを構成する不織布の目付,厚さ,各繊維の組み合わせ、即ち、繊度,混繊比率等を換気扇用フィルターの特性である油保有性と油捕集性に注目して、これに対応させるベく、換気扇用フィルターの性能である上記油保有性能及び油捕集性能とフィルターとの関係を探求した結果、それらの性能がフィルターの初期圧縮弾性率と初期伸長弾性率に関係することを知見した。
【0013】
即ち、換気扇用フィルターに求められる性能に対応し、フィルターの不織布の初期伸長弾性率を追試したところ初期伸長弾性率は1.0〜20.0N/5cm2*(g/cc)の範囲で油捕集性ならびに繊維の絡まりと接着性が良いことが分かった。
【0014】
初期伸長弾性率が1.0N/5cm2*(g/cc)未満であると繊維間の絡まりが少なく接着も少ないためフィルターの表面の毛羽が多く取り扱い性に劣り、又油捕集性に劣るので好ましくない。
【0015】
一方、初期伸長弾性率が20.0N/5cm2*(g/cc)を越えると繊維間の絡まりがよく接着は良くなるが、結局網目が小さくなり油捕集性が劣るので好ましくない。
【0016】
また、初期圧縮弾性率は2.5〜6.0Pa*(g/cc)であれば油保有性が良いことが判明した。初期圧縮弾性率が2.5Pa*(g/cc)未満であると、
油保有性が劣ると共に、繊維の絡まりや接着が少なく、6.0Pa*(g/cc)を越えると繊維間の絡まりが密となって接着点が多く、その結果、油保有性が劣る結果となるので好ましくない。従って本発明フィルターの構成は以上のような換気扇用フィルターとしての性能をふまえてこれに適合するよう構成が加えられている。
【0017】
本発明で用いられる非溶融性繊維とは融点をもたない繊維であり、例えばレーヨン,アクリル繊維などが含まれ、これらは1種または2種混合して用いられる。また、熱融着繊維(接着性繊維)としては、例えば同種あるいは異種の高融点繊維と低融点繊維からなるサイドバイサイド型あるいは芯鞘型構造を有する熱融着性複合繊維が挙げられる。
【0018】
この複合繊維は、複合繊維を構成する高融点成分の融点が低融点成分の融点より50℃以上高いこと、また、低融点成分の融点が100℃〜200℃の範囲にあることが好ましい。高融点成分の融点が低融点成分の融点より50℃の高さ未満であると短繊維間の接着時に高融点繊維も軟化して所望のフィルターを得ることができない。
【0019】
低融点成分の融点が100℃未満であると繊維間の接着を実施する処理条件が難しく、耐熱性の点から好ましくない。低融点成分の融点が200℃を超えると高融点繊維の熱特性に影響し接着を実施することでフィルター特性が変動するので好ましくない。
【0020】
具体的には熱融着性繊維の構成ポリマーは芯鞘型,サイドバイサイド型構造で、例えば、ポリエステル系樹脂,ポリエチレン系樹脂,ポリプロピレン系樹脂,ポリアミド系樹脂の何れかの同種又は異種の熱可塑性樹脂の高融点成分と低融点成分が用いられる。例えばポリエステル繊維(融点250℃〜270℃程度)と低融点ポリエステル繊維(融点100℃〜200℃程度)の複合繊維、エステル/ナイロン複合繊維、ポリエステル/ポリエチレン複合繊維、ポリプロピレン/ポリエチレン複合繊維などが挙げられ、特に高融点ポリエステルと、低融点ポリエステルとの複合繊維は最も実用的である。なお、熱融着性複合繊維の繊度は2〜30デシテックスの範囲が望ましい。繊度が2デシテックス未満であると濾過性能を有する充分な嵩高性のあるフィルターを得ることができない。一方、繊度が30デシテックスを超えると繊維本数が減少し、繊維間接着点も減少して嵩高性は得られるが、所望の濾過性能を有するフィルターを得ることは出来ない。
【0021】
そして、前記融点を持たない非溶融性繊維と、熱融着性繊維の各種短繊維は混繊されて均一混繊の繊維層として形成されるが、混繊比率としては非溶融性繊維が20〜60質量%の範囲、熱融着性繊維が40〜80質量%の範囲であることが肝要である。
【0022】
融点をもたない繊維は、耐ドリップ性の効果があり、そのためにはその添加量は混繊比率で20質量%以上が必要である。20質量%未満では耐ドリップの効果は充分に得られない。
【0023】
一方、従来のようにバインダーを使用することなく全体の短繊維間の接着を均一にするためには、熱融着性繊維の混繊比率は前述のように40〜80質量%が良好である。熱融着性繊維(接着性繊維)が40質量%未満であると繊維間の接着が不充分となり、繊維の交絡による空気保有空間が余り得られず十分な嵩高性を得ることができないので好ましくない。また接着点は繊度が小さいと多くなるので混繊量比は少ない方向でよいが、逆にフィルターに求められる初期圧縮弾性率は小さくなり、油保有性が小さくなるので前述した初期圧縮弾性率の範囲に設定する必要がある。
【0024】
そこで、熱融着性繊維の混繊範囲は40〜60質量%が推奨される。また繊度が大きくなると接着点が少なくなるので熱融着性複合繊維の量は多くする必要があるので、混繊範囲は50〜80質量%が推奨され、全体として40〜80質量%が推奨される。なお、熱融着性繊維が80質量%を越えても、特に問題はないが、換気扇用フィルターの耐ドリップ効果を得るために融点を持たない繊維の存在が20質量%以上必要なので当然、制約される。ポリエステル繊維100%では耐ドリップ性に問題があり好ましくない。
【0025】
かくして上記のように混繊された両短繊維は次にカーディング加工により均一に混繊された繊維層に形成される。均一に混繊された上記繊維層は引き続きフィルターとして好ましい態様を得るため互いに交絡する短繊維の繊維間に空気保有空間を保持し、ふっくらとした嵩高性が与えられるよう加工に付される。
【0026】
加工技術としてはフィルターの厚さ確保の手段としてウエッブの均一化をするランダマイザーや嵩高付与としてニードルパンチ処理が有効である。ランダマイザーはウエブの繊維配向が縦方向や横方向に片寄っている場合に繊維配向をランダムに均一化する。そのためにウエブの斑が改善されて嵩高の保持に寄与する。これは繊維層中の短繊維が繊維間の圧縮や伸張に繊維厚さ方向に寄与する量が増すためと考えている。従って、初期圧縮弾性率や初期伸張弾性率が改善される。
【0027】
一方、ニードルパンチ加工としては、ニードルパンチ処理は針深さとペネによるが、標準としては針深さが8mmでペネは60である針深さやペネ数を多くすると初期圧縮弾性率や初期伸張弾性率は大きい値となるが油保有性と油捕集性は逆に低下する。従って初期圧縮弾性率や初期伸張弾性率には最適値が存在する。
【0028】
これは繊維層中の短繊維がニードル加工でよく絡まり、繊維間の圧縮や伸張に繊維厚さ方向に寄与する量が増加するためと思われる。
【0029】
かくして、加工により前記嵩高性が付与された繊維層は、引き続き連続してその嵩高性を保持しつつ熱風処理に付され熱融着性繊維の低融点成分の融着により繊維間の接着が行なわれ、厚さが確保された不織布となる。
【0030】
この不織布はフィルターに好適であるためには、目付質量が20〜250g/m2であることが好ましく、20g/m2未満であるとフィルターの濾過性能が劣り、油保有量も低下するので好ましくないし、250g/m2を越えるとフィルターの濾過性能は十分にあるが油捕集量が低下する。また厚さは0.5〜20.0mmであることが好適である。0.5mm未満であるとフィルターの目付と関係するが、(密度が0.03〜0.1g/ccの範囲で)濾過性能が劣り油保有量も低下するので好ましくない。また20.0mmを越えるとフィルターの濾過性能は十分にあるが、油捕集量が低下するので好ましくない。
【0031】
本発明は以上のように液体バインダーによる繊維間の接着をせずに熱融着繊維による繊維間接着によりフィルター全体の嵩高性を保持するものであり、そのためには熱融着性繊維の繊度と混繊率が関係し、前記したように繊度2.0〜30.0デシテックス、混繊率40〜80質量%が選定される。ポリエステル100%では耐ドリップ性に問題があり、嵩を確保することが難しいが上記範囲によりこれらが解消され、良好な接着が達成される。
【0032】
かくして非溶融性繊維により耐ドリップ効果を有し、熱融着性繊維の繊維間接着により嵩高性が保持され、しかもポリエステル繊維を増量材として、油捕集性と油保有性に優れた換気扇用フィルターを得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
(実施例1)
繊度7.8デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20質量%と繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維(ダイワボウ製)30質量%と繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)50質量%を均一に混繊して引き続きカーディングして目付質量約50g/m2のウエブを得て、次に、表面に深さ8mm、打ち込み本数60本/cm2のニードルパンチ処理を施し短繊維層を得た。得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施し本発明の換気扇用フィルターを得た。
(実施例2)
繊度7.8デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20質量%と繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのアクリル繊維(日本エクスラン製)30質量%と繊度17.0デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)50質量%を均一に混繊して引き続きカーディングして目付質量約50g/m2のウエブを得て、次に、表面に深さ8mm、打ち込み本数60本/cm2のニードルパンチ処理を施し短繊維層を得た。得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施し本発明の換気扇用フィルターを得た。
(実施例3)
繊度7.8デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20質量%と繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維(ダイワボウ製)30質量%と繊度20.0デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)50質量%を均一に混繊して引き続きカーディングして目付質量約50g/m2のウエブを得て、次に表面に深さ8mm、打ち込み本数60本/cm2のニードルパンチ処理を施し短繊維層を得た。得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施し本発明の換気扇用フィルターを得た。
(実施例4)
繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのアクリル繊維(日本エクスラン製)30質量%と繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)70質量%を均一に混繊して引き続きカーディング
し更にウエブ層を均一化するためにランダマイザーに通して目付質量約35g/m2の短繊維層を得て、引き続き、得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施して嵩高が保持された本発明換気扇用フィルターを得た。
(比較例1)
繊度7.8デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維(融点:260℃)70質量%と、繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維(ダイワボウ製)10質量%と繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)20質量%を均一に混繊して引き続きカーデイングして目付質量約37g/m2のウエブを得た。引き続き得られたウエブにアクリル酸エステル50%とリン酸グアニジン系50%からなるバインダーをスプレーし、乾燥して樹脂量として13g/m2を付与し比較換気扇用フィルターを得た。
(比較例2)
繊度7.8デシテックス、繊維長64mmのポリエステル繊維(融点:260℃)20質量%と繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのレーヨン繊維(ダイワボウ製)30質量%と繊度17.0デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)50質量%を均一に混繊して引き続きカーディングして目付質量約50g/m2のウエブを得て、次に表面に深さ3mm、打ち込み本数20本/cm2のニードルパンチ処理を施し短繊維層を得た。得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施し比較換気扇用フィルターを得た。
(比較例3)
繊度7.8デシテックス、繊維長51mmのアクリル繊維(日本エクスラン製)30質量%と繊度4.4デシテックス、繊維長51mmのポリエステル複合繊維(芯鞘繊維、高融点:260℃、低融点:110℃)70質量%を均一に混繊して引き続きカーディングして目付質量約35g/m2の短繊維層を得て、次に、得られた短繊維層を熱接着装置で繊維間の接着を施し比較換気扇用フィルターを得た。
【0034】
かくして上記実施例及び比較例より得られた各換気扇用フィルターについて夫々、目付量,厚さを測定し初期伸長弾性率,初期圧縮弾性率を算出して油を捕集し保有する保油量を測定すると共に、表面接着性を測定した。その結果を後記表1に示す。なお、表中の夫々の測定方法等は下記方法に従った。
(イ)目付量
JIS L1096の8.4.2に記載の方法に準拠して求めた。
(ロ)厚さ
JIS L1096の8.5.1に記載の方法に従って荷重2KPaで測定した。
(ハ)初期伸長弾性率
引張り試験は東洋ボールドイン社製50Kgテンシロンを用い、試料巾50mmで試料長100mm、引張り速度100mm/minで試料の強伸度を測定し強伸度曲線の初期勾配から算出し試料の見掛け密度を積して示した。
【0035】
N=3の平均で示す。単位は(N/5cm/100%)*(g/cc)である。
【0036】
見掛け密度(g/cc)=試料の目付質量(g/cm2)/試料の厚さ(cm)
(ニ)初期圧縮弾性率
圧縮試験は東洋ボールドイン社製50Kgテンシロンを用い、圧縮試料面積78.54cm2に対して圧縮速度2.0mm/minで試料を圧縮し、その5%圧縮変形時の圧縮応力から100%に換算しパスカル(Pa)(N/m2)で示した。その値に試料の見掛け密度を積して算出した。
【0037】
N=3で示す。単位はPa*(g/cc)である。
【0038】
見掛け密度(g/cc)=試料の目付質量(g/cm2)/試料の厚さ(cm)
(ホ)保油量
(a) サンプル寸法 10cm×10cm、 元の重量を測定しておく。
【0039】
(b) アルミ製バットにサラダ油を入れ、試料を浸した後、金網の上に置く。
【0040】
(c) 1時間油をきった後、試料の重量を測定する。
【0041】
(d) 重量増加分を保油量として1m2当たりに換算する(g/m2)。n=3の平均値で 表す。
【0042】
(e) 更に不織布の50g/m2当たりに換算して示した。
【0043】
【表1】

上記表より比較例1に示すバインダー,難燃剤使用のものは製品特性としては本発明のものと変わらないが、バインダー,難燃剤使用による環境問題が避けられず、また、比較例2,3に示されているように打ち込み本数を少なくしてニードルパンチ加工を施したもの及び全く施さないものは圧縮特性,伸長特性が換気扇用フィルターに好適な範囲を外れ、実用に難を有しているのに対し、本発明実施例による不織布からなるフィルターは平均して油捕集量,油保有量共に優れ、表面接着性も比較的良好であり、換気扇用フィルターとして極めて効果的であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点をもたない非溶融性繊維と、熱融着性繊維との短繊維による混繊からなり、前記融点をもたない非溶融性繊維の混繊比率が20〜60質量%の範囲であり、かつ熱融着性繊維の混繊比率が40〜80質量%の範囲である繊維層を互いに交絡する繊維による空気保有空間を保持させて熱融着性繊維の融着により繊維間を接着せしめた不織布により形成してなることを特徴とする換気扇用フィルター。
【請求項2】
非溶融性繊維がレーヨン繊維又は/及びアクリル繊維である請求項1に記載の換気扇用フィルター。
【請求項3】
不織布の目付質量が20〜250g/m2の範囲で厚さが0.5〜20.0mmの範囲である請求項1または2記載の換気扇用フィルター。
【請求項4】
不織布の初期伸長弾性率が1.0〜20.0N/5cm2*(g/cc)の
範囲で初期圧縮弾性率が2.5〜6.0Pa*(g/cc)である請求項1,2または3記載の換気扇用フィルター。
【請求項5】
熱融着性短繊維が同種あるいは異種の高融点繊維と低融点繊維からなるサイドバイサイドあるいは芯鞘の構造を有し、低融点繊維の融点が100℃〜200℃の範囲の複合繊維である請求項1,2,3または4記載の換気扇用フィルター。
【請求項6】
換気扇用フィルターを形成する不織布において、融点をもたない短繊維の混繊比率が20〜60質量%の範囲で、かつ熱融着性繊維の短繊維混繊比率が40〜80質量%の範囲で、両短繊維を均一に混繊し、カーディング加工を施して得た繊維層を互いに交絡する繊維による空気保有空間を有する嵩高状態を保持させて連続して熱風処理に付し、熱融着性繊維の融着により繊維間を接着せしめ不織布に形成することを特徴とする換気扇用フィルターの製造方法。

【公開番号】特開2006−281108(P2006−281108A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105566(P2005−105566)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】