揮発性化合物の分解方法
【課題】本発明は、酸化チタンの光触媒能によらずに揮発性化合物特に揮発性有機化合物を効率よく分解する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】揮発性化合物を、加熱した酸化チタンと接触させて処理することによる。具体的には、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させ、揮発性化合物を該加熱した酸化チタンに接触させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法による。本発明の分解方法によると、このような揮発性化合物の分解能を向上させることができる。また揮発性有機化合物消去とあわせて脱臭効果も有する。
【解決手段】揮発性化合物を、加熱した酸化チタンと接触させて処理することによる。具体的には、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させ、揮発性化合物を該加熱した酸化チタンに接触させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法による。本発明の分解方法によると、このような揮発性化合物の分解能を向上させることができる。また揮発性有機化合物消去とあわせて脱臭効果も有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野や社会の中で広範囲に使用されている揮発性化合物特に揮発性有機化合物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境や人体への影響が懸念される有害汚染物質としてトルエンなどの揮発性有機化合物(Volatile organic compounds:以下「VOC」と記載する場合がある)が挙げられる。近年、大気中へのVOC排出が問題視されており、トルエンやホルムアルデヒドはシックハウス症候群との関連も指摘されている。また、医療廃棄物処理の分解でも多くのVOCが発生する。医療廃棄物は産業廃棄物であると共に生物学的な危険性を並存しているため、その対策は急務であると考えられる。
【0003】
現在VOC処理技術としては燃焼酸化法、吸着法、活性汚泥法、プラズマ分解法などがあり、酸化チタンなどの光触媒作用による分解、及び貴金属触媒などによる触媒燃焼は最終的に二酸化炭素と水までVOCを分解することから有効な処理方法に挙げられる(非特許文献1)。
【0004】
例えば、事務所ビルやマンションなどの新築工事、及び外壁等の改修工事などの建設現場において、多くの有害なVOC(アセトアルデヒド、トルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、キシレンなどの様々な揮発性有機化合物)を含有する塗料、接着剤、防水材などの建材が使用されており、このような建材からVOCが周辺環境に発散するという問題が生じている。特に室内環境の高気密化により、建材から発生するVOC汚染は、シックハウス症候群などの居住者の健康に障害を及ぼすことにより、社会問題として捉えられている。このような、建築現場におけるVOCの発散抑制方法として、光触媒(例えば二酸化チタン)を含有したVOC処理機能膜が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、電子写真プロセスを利用して、トナー像の新たな樹脂コート紙に対する熱定着処理に関し、樹脂コート紙から微量のVOCが、人体に影響はない量ではあるが、発生することが判明しており、このVOCを除去する手段として、光触媒である酸化チタンを用いることが開示されている(特許文献2)。
【0006】
近年、光触媒としてアナターゼ型酸化チタン(TiO2)が多く用いられ、空気中の有機ガスを強い酸化作用で分解することができる。アナターゼ型酸化チタンは化学的に安定な化合物であり、光触媒作用が半永久的に持続されること、吸光係数が大きく近紫外線による光活性が高いこと、硬度が高く、耐摩耗性があること、薄膜状では無色透明にできること、人体や環境に対して無害であること、粉末やゾルが比較的安価に入手できることなどの特徴がある(非特許文献2)。
【0007】
光触媒ではトルエン等、芳香族化合物によって被毒され、VOCは効率よく分解されない。上記のように酸化チタンの光触媒能を用いてVOCを分解させることは数多く報告されているが、酸化チタンの高温下における触媒機能に関する報告は少ない。
【特許文献1】特開2006−316440号公報
【特許文献2】特開2006−330480号公報
【非特許文献1】電力中央研究所報告、(通号03015)、1〜10、巻頭1〜4 2004/7
【非特許文献2】Fine chemical, 27(11) 5-12 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸化チタンの光触媒能によらずに揮発性化合物特に揮発性有機化合物を効率よく分解する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を該加熱した酸化チタンに接触させて処理する分解方法により、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下よりなる。
1.酸化チタンと揮発性化合物を接触させて揮発性化合物を分解する方法において、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法。
2.酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m2/gであることを特徴とする前項1に記載の分解方法。
3.顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである前項2に記載の分解方法。
4.酸化チタン1gに対して、揮発性化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
5.揮発性化合物が、揮発性有機化合物である前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
6.揮発性化合物が、揮発性無機化合物である前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
7.揮発性有機化合物が、芳香族炭化水素有機化合物を含む化合物である前項5に記載の分解方法。
8.揮発性有機化合物が、以下のいずれか1以上から選択される前項5に記載の分解方法。
1)メタノール、2)エタノール、3)イソブチルアルコール、4)トルエン、5)アセトアルデヒド、6)ホルムアルデヒド、7)フェノール、8)酢酸エチル、9)スチレン、10)トリメチルアミン、11)ピリジン、12)メタン、13)エタン、14)ブタン、15)メチルメルカプタン、16)プロピレン、17)ジメチルスルホキシド、18)メチルイソブチルケトン、19)プロピオン酸、20)酢酸エステル、21)ブタノール
9.揮発性無機化合物が、アンモニア又は硫化水素である前項6に記載の分解方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分解方法によれば、高効率で揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解することができる。例えば医療廃棄物(ポリマー)、電気製品、建材等の処理における分解時には、VOCが発生することが考えられる。さらに、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野でも多くのVOCが発生する。本発明の分解方法によると、このようなVOCの分解能を向上させることができる。またVOC消去とあわせて脱臭効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の分解方法に使用する酸化チタンの製造方法は特に限定されるものではない。なお、使用する酸化チタンは、好適にはアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)である。種々の製法による酸化チタンのなかでも、例えば、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成して得られる酸化チタンがVOCの分解触媒としてすぐれた性能を有する。
【0013】
本発明において、酸化チタンは顆粒体としたものを使用するのが好適である。顆粒体を形成するために酸化チタンのみならず、アルミナとシリカから選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物とすることができる。本発明における酸化チタンは、上記混合物を含むものとする。
【0014】
本発明の分解方法において、酸化チタンは150〜600℃の範囲で加熱することができる。好ましくは250〜600℃であり、より好ましくは、450〜500℃であり、さらに好ましくは480〜500℃であり、最も好ましくは約500℃である。
なお、加熱温度とは、酸化チタンと揮発性化合物特に揮発性有機化合物を反応させるための反応装置内の酸化チタン温度であり、その酸化チタンの設定温度を保つための装置の設定温度を指す。すなわち、設定温度を500℃としても、反応装置内の酸化チタン顆粒体温度の振れ範囲は設定温度からプラス・マイナス約30℃となる。
【0015】
既に知られているように、酸化チタンは光触媒としての機能も有しているので、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解するに際して、酸化チタンを紫外線等の光照射の下で加熱し、触媒能を発揮させてもよい。しかしながら、本発明の揮発性化合物特に揮発性有機化合物の分解方法では、光照射を必要とすることなく、加熱により酸化チタンの触媒能を発揮させて揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解しうる点が、最大の特徴点である。
【0016】
本発明の分解方法において、加熱した酸化チタン1gに対して、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることができる。使用する酸化チタンの量は、処理装置の大きさにより異なり、適宜決定することができる。例えば、小規模の施設で使用する場合は、小規模の処理装置でよく、大規模の施設で処理する場合は、大規模の処理装置が必要となる。したがって、使用する酸化チタンと処理する揮発性化合物特に揮発性有機化合物の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。具体的には、例えば加熱した酸化チタン200〜300gに対して、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を含む気体体積を125〜5000ml/分、好ましくは250〜1000ml/分、より好ましくは250〜500ml/分で接触させて処理することができる。
【0017】
本発明における酸化チタンの顆粒体の形状は、酸化チタンと温度との関係において揮発性化合物を分解しうる形状であればよく、特に限定されないが、より効果的に揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解するためには、比表面積が35〜100m2/g、好ましくは35〜80m2/gである。これは、比表面積が大きいほど、揮発性化合物との接触面が大きくなり、分解効率を上げることができる。しかし、比表面積が大きすぎると耐熱性が弱くなり、かつ顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる。また、粉末化することにより、揮発性化合物処理の際、装置内での目詰まりが生じる可能性もある。
【0018】
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明ではBET法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。該BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。例えば、比表面積測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を使用することができる。
【0019】
揮発性化合物特に揮発性有機化合物処理の際の装置内での目詰まりが生じることを回避することを考慮して、酸化チタンの大きさは、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmであることが好ましい。該酸化チタンの大きさは、2mmから10mmの間である大きさの粒子を使用しても良いし、又この範囲で粒度を分布させても良いし、適宜任意に選択して使用すれば良い。ここで、最も長辺部の大きさで顆粒体の大きさを特定したのは、顆粒体の形状は、一辺の大きさのみで特定できる球形や立方形の形状ではないからである。長辺部が、上記の範囲から選択される大きさの顆粒体であれば、装置内での目詰まりを可能な限り回避しながら分解処理することが可能と考えられる。顆粒体の大きさは、使用する酸化チタンと処理する揮発性化合物特に揮発性有機化合物の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。
【0020】
本発明において、酸化チタンは、気体である揮発性化合物特に揮発性有機化合物と接触させるのであるから、プラスチック等の固形物を処理する場合とは異なり、酸化チタンゲルの焼成物の磨耗率は低いと考えられる。しかし、さらに磨耗率を低下させるために、予めエッジ処理を行っても良い。このような酸化チタンを用いることにより、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を高効率で分解することができるのみならず、望ましい形状を保って、その高い触媒効率を長時間にわたって維持することができる。ただし、本発明において、処理を継続することにより、酸化チタンの顆粒体の粒子が磨耗し、粉末状の酸化チタンが生じ、上記の範囲外の大きさの酸化チタンが生じることを否定するものではない。
【0021】
なお、本発明の酸化チタンまたは酸化チタン混合物の顆粒体の摩耗率は自体公知の測定方法により行うことができる。例えば摩耗率測定装置を用いて以下の方法で測定をすることができる。200mLメスシリンダーで酸化チタンの顆粒体150mLを計量し、重量を記録した後、試料容器に全量を投入し、300rpmで30分間上記攪拌機を用いて攪拌した後、試料容器から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の重量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の重量をWとし、測定に供した試料の重量をW0 とするとき、A=(W/W0)×100(%)である。
【0022】
従って、本発明によれば、上述したような加熱酸化チタンの触媒を用いることによって、長時間にわたって揮発性化合物特に揮発性有機化合物を高効率にて分解することができる。
【0023】
本発明において揮発性化合物とは、揮発性有機化合物及び揮発性無機化合物を含む。なお、揮発性無機化合物としては、アンモニア、硫化水素等が例示される。
さらに、VOCとは、上述の如く揮発性有機化合物であり、一般的に用いられるすべての揮発性有機化合物をいう。すなわち、気体として排出され、または飛散する有機化合物であり、一部の化合物{クロロジフルオロメタン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン等のVOC年間排出量に占める割合が極めて少ない物質(0.01 %以下)又は生産中止になっている物質、あるいは光化学オキシダントの生成能が低い物質として政令で定められたもの}を除きすべてVOCという。
【0024】
VOCとして例示される物質としては、メタン、エタン、酢酸エステル、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、酢酸エチル、デカン、メタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、n-ブタン、イソブタン、トリクロロエチレン、トリメチルアミン、ピリジン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、イソブチルアルコール、プロピオン酸、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、n-ヘキサン、n-ブタノール、n-ペンタン、cis-2-ブテン、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラクロロエチレン、シクロヘキサン、酢酸プロピル、trans-2-ブテン、エチルセロソルブ、ウンデカン、ノナン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-メチルペンタン、エチレングリコール、2-メチル-2-ブテン、エチルシクロヘキサン、テトラリン、メチルアミルケトン、メチルn-ブチルケトン、クロロメタン、ベンジルアルコール、シクロペンタノン、2-メチル-1-ブテン、n-ヘプタン、ビシクロヘキシル、N,N-ジメチルホルムアミド、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、スチレン、N-メチル-2-ピロリドン、エチルセロソルブアセテート、ベンゼン、イソホロン、シクロヘキサノン、エタノール、メチルシクロペンタン、酢酸ビニル、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルセロソルブ、1 ,2-ジクロロエタン、塩化ビニル、テトラフルオロエチレン、エチルベンゼン、クメン、クロロエタン、トリクロロエタン、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、n-プロピルブロマイド、メタクリル酸メチル、1 ,3-ブタジエン、1 ,1-ジクロロエチレン、2 ,4-ジメチルペンタン、酸化プロピレン、クロロホルム、臭化メチル、ジペンテン、1-ヘプテン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、塩化アリル、アクリル酸、イソプレン、アセトアルデヒド、1 ,2-ジクロロプロパン、メチルセロソルブアセテート、エチレンオキシド、o-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ギ酸メチル、トリエチルアミン、3-メチルヘプタン、フェノール、ナフタレン、アクリル酸メチル、シクロヘキシルアミン、ホルムアルデヒド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。
本発明のVOCとして、好ましくは上記化合物のうち、芳香族炭化水素有機化合物を含むことが好ましく、芳香族炭化水素有機化合物としては、トルエンがより好適である。
さらに、本発明の好適な分解対象のVOCとして、メタノール、エタノール、イソブチルアルコール、トルエン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、フェノール、酢酸エチル、スチレン、トリメチルアミン、ピリジン、メタン、エタン、ブタン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸、酢酸エステル、ブタノールが挙げられる。
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
トルエンの分解
(実験方法)
トルエン(C7H8)を空気流入下で気化加熱し、以下に述べる高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。使用した装置(図1参照)及び設定実験条件は以下の通りである。
【0027】
(処理装置)
触媒層は固定床方式を採用し、触媒容器の容量は240ml(φ29・4×355)であった。TiO2の触媒量は約288g(崇比重約1.2)であり、空隙容量154ml(空隙率約64%)であった。以下の方法で調製した処理化合物(トルエン)を、試料導入部にポンプを用いて一定の流速で導入した。
【0028】
(酸化チタン触媒)
酸化チタン触媒として、アナターゼ型酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108)を用いた。
【0029】
(処理化合物)
トルエン(和光純薬工業(株)試薬特級 純度99%以上 Lot. CEL1609)を用いて、一定量を気化させることで均一濃度のトルエンを調製した。
【0030】
(処理条件)
トルエンの燃焼最適温度は480℃であり、250〜500℃の間で、設定条件を50℃ずつ変更した。エアー流量は空気ポンプを用いて0.125L/分、0.25L/分、0.5L/分、1L/分で行った。実験開始後、条件が一定になった後(約10分間)、サンプリングを行った。サンプルを回収した後、温度、流速などの条件を変更し、定常状態になった後、再度サンプリングを行った。実験終了時に最初に生成したガスのサンプリングを行った。触媒反応条件(設定温度、気体流速、試料トルエンの濃度)を変化させ、各々の条件下で触媒通過後の気体を回収し、その気体のトルエン濃度、CO2濃度、CO濃度の測定を行った。
【0031】
2)実験結果・考察
光触媒として知られている酸化チタン(以下、TiO2)は、古くから強い酸化活性を持つ触媒として知られている。しかし、TiO2を加熱することにより生じる酸化力について検討を行った報告は少ない。そこで、光触媒で分解困難な芳香族化合物であるトルエン本実施例ではTiO2粒子を加熱することで生じる酸化力と特異的な効果について検討する実験を行った。TiO2の触媒能力を評価するにあたり、その強さを特徴づける因子として考えられるのは、TiO2触媒の「温度」、及び処理化合物(トルエン)とTiO2との「接触時間」(=トルエンガスの流速)である。この二つをパラメーターとして、各々の転化率、選択率を求め、TiO2の触媒としての評価を行った。
【0032】
(TiO2触媒下での転化率)
トルエンの転化率について検討した結果を図2に示した。トルエンの転化率は、残存トルエンガス濃度を燃焼前トルエン濃度で除したものであり、以下の式により求められる。
【0033】
転化率(%)=100−[(残存トルエン濃度(ppm))/(燃焼前のトルエン濃度(ppm))]×100
【0034】
トルエンガスの流速が1L/分では触媒温度が400℃以上、0.5L/分では300℃以上、0.25L/分では250℃以上で各々の転化率が90%以上を示した。つまり、触媒温度が高いほど、触媒の酸化力が向上するため、転化率が上昇していると考えられる。また、転化率90%以上となる温度を、TiO2触媒至適温度と定義すると、トルエンガス流速1L/分の際、350℃であった至適温度を、流速0.25L/分では250℃に下げることが可能であった。これは、トルエンガスの流速を下げることにより、TiO2触媒との接触時間が長くなり、トルエンの分解が促進されることで、TiO2触媒至適温度を低く保つことができたためと考えられた。
【0035】
(TiO2触媒下での選択率)
選択率は、残存トルエンガス濃度、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)濃度を燃焼前トルエンガス濃度で除したものである。CO又はCO2については、CO又はCO2の炭素数は1であり、トルエンの炭素数は7であるため、以下の式により求められる。
【0036】
CO又はCO2の選択率(%)=[(CO又はCO2の濃度(ppm))/7×(燃焼前のトルエン濃度(ppm))]×100
【0037】
others(その他)の選択率(%)=100−(COの選択率(%)+CO2の選択率(%)+残存トルエンの選択率(%))
【0038】
選択率について検討した結果を図3A〜Cに示した。
選択率では、いずれのトルエンガス流速においても、TiO2触媒の温度が上昇するに従って、残存トルエンの比率は低下しており、さらに、トルエンの分解産物である、CO2比率の上昇及び中間生成物であるその他の生成物の比率の低下を認めた。これは、TiO2触媒の温度を上げることで、TiO2触媒の酸化力が向上し、トルエンの分解が促進されること、さらには酸化反応が促進され、CO2の生成量が増加し、その結果中間生成物である、その他の生成物の比率の低下を認めたと考えられた。
【0039】
(TiO2触媒下での選択率におけるCO2、COの変化)
選択率におけるCO2及びCOの変化について検討した結果を図4A、Bに示した。トルエンガス流量が1L/分、0.5L/分で及び0.25L/分の場合において、各流速の場合とも燃焼温度が上昇するに従ってCO2の割合の上昇を認めた。それに対し、COの割合は450℃(26.1%)、400℃(26.5%)、350℃(27.3%)をピークとした一峰性の山を形成した。これは、COがトルエン及びその分解産物の不完全燃焼を示す指標と考えられ、触媒温度が低く、触媒との接触時間が短時間であるほど不完全燃焼となり、ある一定の条件(温度、触媒接触時間)以上で、COが減少に転じると考えられた。トルエンガスの流速を下げるに従って、CO比率のピークに至る触媒温度が低くなることから、トルエンガスとTiO2触媒との接触時間を十分保つことにより、TiO2触媒温度がより低い条件で、トルエンの分解が促進されていると考えられた。しかし、最も条件が良い、TiO2触媒温度500℃、トルエンガス流速0.25L/分においても、その他の生成物の比率は、いずれも30%前後と高値であった。その他の生成物が高い比率を占めている原因としては、固形物(スス)としてTiO2触媒表面に沈着し、被毒化することで、触媒作用が低下することがその一因であると考えられた。
【0040】
(比較例1)
TiO2触媒を含まない空筒の温度を500℃とした他は、実施例1と同様の方法により、トルエンガスの各流速の転化率について調べ、TiO2触媒を用いた場合と比較した。その結果を図5に示した。
【0041】
(転化率)
500℃における空筒下のトルエンの転化率の最低値及び最高値は、最低値トルエンガス流速1L/分の場合で37.6%、最高値トルエンガス流速0.125L/分の場合では55.8%であった。これにより、TiO2触媒を含む場合と同様に、トルエンガスの流速が遅いほど、転化率は上昇傾向を示すことが確認された。しかし、実施例1に示したTiO2触媒下での同温度条件での転化率と比較すると、TiO2触媒では転化率96%以上を示したに対し、空筒下では、55.8%以下の転化率であった。空筒下及びTiO2触媒下の各々の転化率の比較では、トルエンの自然発火温度(480℃)を越える500℃においても、空筒下のトルエンの転化率は60%以下となり、TiO2触媒下における転化率96%以上(TiO2触媒温度500℃、トルエンガス流速1L/分)に比してはるかに劣り、TiO2触媒の有用性が示された。
【実施例2】
【0042】
(各種類の揮発性有機化合物の分解)
上記トルエン以外の揮発性有機化合物である、(1)アセトアルデヒド、(2)ホルムアルデヒド、(3)フェノール、(4)ピリジン、(5)メタン、(6)エタン、(7)ブタン、(8)メチルメルカプタン、(9)プロピレン、(10)ジメチルスルホキシド、(11)複数の揮発性有機化合物(メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレン)、(12)酢酸エチル、(13)スチレン、(14)トリメチルアミンの分解を検討した。詳細は、以下の通りである。
【0043】
(実験方法)
各種類の揮発性有機化合物を空気流入下で気化加熱し、実施例1と同様な高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。
【0044】
(処理条件)
エアー流量は空気ポンプを用いて1.8〜1.9L/分で行った。
【0045】
(1)アセトアルデヒドの分解
アセトアルデヒド(90%)25μl(0.4mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、アセトアルデヒドを気化器(120℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを30秒間第1サンプリングバック(1L)に捕集し、次の30秒間第2サンプリングバック(1L)に捕集し、次の10分間第3サンプリングバックに捕集した。各サンプリングバックの反応ガスをアセトアルデヒドガス検知管(測定範囲:10〜300ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、アセトアルデヒドは検知されなかった。すなわち、アセトアルデヒドは完全に分解された。
【0046】
(2)ホルムアルデヒドの分解
ホルムアルデヒド(37%水溶液)160μl(0.20mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、ホルムアルデヒドを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。サンプリングバックの反応ガスをホルムアルデヒドガス検知管(測定範囲:0.1〜5ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、ホルムアルデヒドは検知されなかった。すなわち、ホルムアルデヒドは完全に分解された。
【0047】
(3)フェノールの分解
フェノール(5%水溶液)100μl(50μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、フェノールを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。サンプリングバックの反応ガスをフェノールガス検知管(測定範囲:1〜25ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、フェノールは検知されなかった。すなわち、フェノールは完全に分解された。
【0048】
(4)ピリジンの分解
ピリジン10μlをマイクロシリンジで計量した。そして、ピリジンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、微量のNOmax(20ppm)が検出された。また、この測定時の炭酸ガス濃度は1.3%であった。これにより、ピリジンは分解されたと考えられる。
【0049】
(5)メタンの分解
メタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、メタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが37ppm、CO2が0.1%、亜硫酸ガスが120ppm検出された。なお、流出した反応ガスを硫化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、硫化水素ガスは検出されなかった。よって、亜硫酸ガスと同様のIR吸収域を持つガス成分が検知された。これにより、メタンは分解されたと考えられる。
【0050】
(6)エタンの分解
エタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、エタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが120ppm、CO2が0.2%検出された。なお、亜硫酸ガスは検出されなかった。次に、流出した反応ガスを低級炭化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、低級炭化水素ガスは検出されなかった。これにより、エタンは分解されたと考えられる。
【0051】
(7)ブタンの分解
ブタンガス(硫黄臭気成分含有カセットコンロ用)を2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、ブタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが450ppm、CO2が0.6〜0.7%検出された。なお、亜硫酸ガスは10ppm以下であった。なお、流出した反応ガスを低級炭化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、低級炭化水素ガスは検出されなかった。さらに、流出した反応ガスには、硫黄臭はなかった。これにより、ブタンは分解されたと考えられる。
【0052】
(8)メチルメルカプタンの分解
メチルメルカプタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、メチルメルカプタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、CO2が0.23%検出された。なお、亜硫酸ガスは40〜60ppmであった。なお、流出した反応ガスをメチルメルカプタン検知管(測定範囲:50〜1000ppm)で測定したが、メチルメルカプタンは検出されなかった。これにより、メチルメルカプタンは完全に分解されたと考えられる。
【0053】
(9)プロピレンの分解
プロピレンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、プロピレンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが500ppm、CO2が0.5%検出された。なお、亜硫酸ガスは5ppmであった。なお、流出した反応ガスを亜硫酸ガス検知管(測定範囲:0.2〜5ppm)で測定したが、2.2ppm検出された。しかし、該亜硫酸ガスは前回の実験での残存成分であると考えられる。これにより、プロピレンは分解されたと考えられる。
【0054】
(10)ジメチルスルホキシドの分解
ジメチルスルホキシド(DMSO)を2分間間隔で10μlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、ジメチルスルホキシドを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが2400ppm、CO2が1.2%、O2が17%検出された。なお、亜硫酸ガスは400ppmであった。なお、亜硫酸ガスは少量であるので吸着現象であると考えられる。これにより、ジメチルスルホキシドは分解されたと考えられる。
【0055】
(11)複数の揮発性有機化合物の連続分解
複数の揮発性有機化合物(メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレン)を連続して分解できるかを検討した。詳細は、以下の通りである。
メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレンを2分間間隔で各10μlをマイクロシリンジで計量した。そして、各揮発性有機化合物を気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、480℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果を図6に示す。図6から明らかなように、メタノール(図6:A)、エタノール(図6:B)、酢酸エチル(図6:C)、イソブチルアルコール(図6:D)、メチルイソブチルケトン(図6:E)、トルエン(図6:F)、プロピオン酸(図6:G)、スチレン(図6:H)が連続して分解されていることを確認した。さらに、本発明の分解方法は、単一の揮発性有機化合物の分解だけでなく、複数の揮発性有機化合物の連続及び/又は同時分解が可能である。
【0056】
以下の(12)酢酸エチル、(13)スチレン、(14)トリメチルアミンでは、以下の固定床分解装置を使用した。
(処理装置)
触媒層は固定床方式を採用し、触媒容器の容量は170ml(φ29・4×250)であった。TiO2の触媒量は約244g(崇比重約1.2)であり、空隙容量109ml(空隙率約64%)であった。
【0057】
(12)酢酸エチルの分解
酢酸エチル25μl(0.23mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、酢酸エチルを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスを酢酸エチルガス検知管(測定範囲:0.1〜1.5%)を用いて測定した。
上記測定結果では、1.5%以上の酢酸エチルが検出された。しかし、該反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ酢酸エチル以外の分解生成物であることを確認した。すなわち、酢酸エチルは分解された。
【0058】
(13)スチレンの分解
スチレン10μl(87μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、スチレンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスをスチレンガス検知管(測定範囲:0.2〜4.0ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、スチレンが検出されなかった。さらに、該反応ガスをポケッタブルガス検知器にて測定したことをCOが検知された。すなわち、スチレンは完全に分解された。
【0059】
(14)トリメチルアミンの分解
トリメチルアミン(0.1%エタノール溶液)10μl(17μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、トリメチルアミンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスをトリメチルアミンガス検知管(測定範囲:0.25〜5.0ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、トリメチルアミンが検出されなかった。さらに、該反応ガスをポケッタブルガス検知器にて測定したことをCOが検知された。すなわち、トリメチルアミンは完全に分解された。
【0060】
なお、イソブチルアルコール、酢酸エステル、ブタノールも上記同様な方法で分解できたことを確認した。
【0061】
以上の結果、本発明では、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、フェノール、ピリジン、メタン、エタン、ブタン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸、スチレン、スチレン、トリメチルアミン、イソブチルアルコール、酢酸エステル、ブタノールを分解することができる。
【実施例3】
【0062】
(揮発性無機化合物の分解)
揮発性無機化合物の分解を検討した。詳細は、以下の通りである。
【0063】
(実験方法)
各種類の揮発性無機化合物を空気流入下で気化加熱し、実施例1と同様な高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。
【0064】
(処理条件)
エアー流量は空気ポンプを用いて1.8〜1.9L/分で行った。
【0065】
(アンモニア)
アンモニア(28%水溶液)11μl(0.16mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、アンモニアを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該反応ガスをイオンクロマト用溶離液25mlでバブリングして吸収させた後に、イオンクロマトグラフィーでアニオン濃度を測定した。
上記測定結果では、NO2、NO3は検出されなかった。すなわち、アンモニアは分解された。
【0066】
(硫化水素)
硫化水素ガスを2分間間隔で1mlを4回マイクロシリンジで計量した。そして、硫化水素を気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが30ppm、CO2が0.02%検出された。なお、亜硫酸ガスは40ppmであった。亜硫酸ガスは少量であるので吸着現象であると考えられる。これにより、硫化水素は分解されたと考えられる。
【0067】
以上の結果、本発明では、アンモニア、硫化水素を分解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上詳述したように、本発明の分解方法によれば、高効率で揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解することができる。例えば医療廃棄物(ポリマー)、電気製品、建材等の処理における分解時には、揮発性有機化合物が発生することが考えられる。さらに、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野でも多くの揮発性有機化合物が発生する。本発明の分解方法によると、このような揮発性有機化合物の分解能を向上させることができる。また揮発性有機化合物消去とあわせて脱臭効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の分解方法に使用する装置の概略図である。(実施例1)
【図2】各トルエンガス流速での温度別トルエンの転化率を示す図である。(実施例1)
【図3A】トルエンガス流速(1L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図3B】トルエンガス流速(0.5L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図3C】トルエンガス流速(0.25L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図4A】トルエン分解時の選択率におけるCO2濃度の変化を示す図である。(実施例1)
【図4B】トルエン分解時の選択率におけるCO濃度の変化を示す図である。(実施例1)
【図5】TiO2の有無によるトルエン分解時の転化率を示す図である。(比較例1)
【図6】複数の揮発性有機化合物の連続分解結果を示す図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0070】
1 下段ヒータつなぎパイプ
2 シーズヒーター
3 パージ流量計
4 スポットヒーター
5 真空ポンプコンプレッサー(ダイアグラム式)
6 温調コントローラ ポンプ用
7 温調コントローラ チタンユニット用
8 トランス
a 気化トルエン
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野や社会の中で広範囲に使用されている揮発性化合物特に揮発性有機化合物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境や人体への影響が懸念される有害汚染物質としてトルエンなどの揮発性有機化合物(Volatile organic compounds:以下「VOC」と記載する場合がある)が挙げられる。近年、大気中へのVOC排出が問題視されており、トルエンやホルムアルデヒドはシックハウス症候群との関連も指摘されている。また、医療廃棄物処理の分解でも多くのVOCが発生する。医療廃棄物は産業廃棄物であると共に生物学的な危険性を並存しているため、その対策は急務であると考えられる。
【0003】
現在VOC処理技術としては燃焼酸化法、吸着法、活性汚泥法、プラズマ分解法などがあり、酸化チタンなどの光触媒作用による分解、及び貴金属触媒などによる触媒燃焼は最終的に二酸化炭素と水までVOCを分解することから有効な処理方法に挙げられる(非特許文献1)。
【0004】
例えば、事務所ビルやマンションなどの新築工事、及び外壁等の改修工事などの建設現場において、多くの有害なVOC(アセトアルデヒド、トルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、キシレンなどの様々な揮発性有機化合物)を含有する塗料、接着剤、防水材などの建材が使用されており、このような建材からVOCが周辺環境に発散するという問題が生じている。特に室内環境の高気密化により、建材から発生するVOC汚染は、シックハウス症候群などの居住者の健康に障害を及ぼすことにより、社会問題として捉えられている。このような、建築現場におけるVOCの発散抑制方法として、光触媒(例えば二酸化チタン)を含有したVOC処理機能膜が開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、電子写真プロセスを利用して、トナー像の新たな樹脂コート紙に対する熱定着処理に関し、樹脂コート紙から微量のVOCが、人体に影響はない量ではあるが、発生することが判明しており、このVOCを除去する手段として、光触媒である酸化チタンを用いることが開示されている(特許文献2)。
【0006】
近年、光触媒としてアナターゼ型酸化チタン(TiO2)が多く用いられ、空気中の有機ガスを強い酸化作用で分解することができる。アナターゼ型酸化チタンは化学的に安定な化合物であり、光触媒作用が半永久的に持続されること、吸光係数が大きく近紫外線による光活性が高いこと、硬度が高く、耐摩耗性があること、薄膜状では無色透明にできること、人体や環境に対して無害であること、粉末やゾルが比較的安価に入手できることなどの特徴がある(非特許文献2)。
【0007】
光触媒ではトルエン等、芳香族化合物によって被毒され、VOCは効率よく分解されない。上記のように酸化チタンの光触媒能を用いてVOCを分解させることは数多く報告されているが、酸化チタンの高温下における触媒機能に関する報告は少ない。
【特許文献1】特開2006−316440号公報
【特許文献2】特開2006−330480号公報
【非特許文献1】電力中央研究所報告、(通号03015)、1〜10、巻頭1〜4 2004/7
【非特許文献2】Fine chemical, 27(11) 5-12 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸化チタンの光触媒能によらずに揮発性化合物特に揮発性有機化合物を効率よく分解する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を該加熱した酸化チタンに接触させて処理する分解方法により、上記課題を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下よりなる。
1.酸化チタンと揮発性化合物を接触させて揮発性化合物を分解する方法において、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法。
2.酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m2/gであることを特徴とする前項1に記載の分解方法。
3.顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである前項2に記載の分解方法。
4.酸化チタン1gに対して、揮発性化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする前項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
5.揮発性化合物が、揮発性有機化合物である前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
6.揮発性化合物が、揮発性無機化合物である前項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
7.揮発性有機化合物が、芳香族炭化水素有機化合物を含む化合物である前項5に記載の分解方法。
8.揮発性有機化合物が、以下のいずれか1以上から選択される前項5に記載の分解方法。
1)メタノール、2)エタノール、3)イソブチルアルコール、4)トルエン、5)アセトアルデヒド、6)ホルムアルデヒド、7)フェノール、8)酢酸エチル、9)スチレン、10)トリメチルアミン、11)ピリジン、12)メタン、13)エタン、14)ブタン、15)メチルメルカプタン、16)プロピレン、17)ジメチルスルホキシド、18)メチルイソブチルケトン、19)プロピオン酸、20)酢酸エステル、21)ブタノール
9.揮発性無機化合物が、アンモニア又は硫化水素である前項6に記載の分解方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分解方法によれば、高効率で揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解することができる。例えば医療廃棄物(ポリマー)、電気製品、建材等の処理における分解時には、VOCが発生することが考えられる。さらに、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野でも多くのVOCが発生する。本発明の分解方法によると、このようなVOCの分解能を向上させることができる。またVOC消去とあわせて脱臭効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の分解方法に使用する酸化チタンの製造方法は特に限定されるものではない。なお、使用する酸化チタンは、好適にはアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)である。種々の製法による酸化チタンのなかでも、例えば、チタン酸化物のゾルを乾燥して酸化チタンゲルとし、この酸化チタンゲルを450〜850℃の範囲の温度で焼成して得られる酸化チタンがVOCの分解触媒としてすぐれた性能を有する。
【0013】
本発明において、酸化チタンは顆粒体としたものを使用するのが好適である。顆粒体を形成するために酸化チタンのみならず、アルミナとシリカから選ばれる少なくとも1種と酸化チタンとの混合物とすることができる。本発明における酸化チタンは、上記混合物を含むものとする。
【0014】
本発明の分解方法において、酸化チタンは150〜600℃の範囲で加熱することができる。好ましくは250〜600℃であり、より好ましくは、450〜500℃であり、さらに好ましくは480〜500℃であり、最も好ましくは約500℃である。
なお、加熱温度とは、酸化チタンと揮発性化合物特に揮発性有機化合物を反応させるための反応装置内の酸化チタン温度であり、その酸化チタンの設定温度を保つための装置の設定温度を指す。すなわち、設定温度を500℃としても、反応装置内の酸化チタン顆粒体温度の振れ範囲は設定温度からプラス・マイナス約30℃となる。
【0015】
既に知られているように、酸化チタンは光触媒としての機能も有しているので、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解するに際して、酸化チタンを紫外線等の光照射の下で加熱し、触媒能を発揮させてもよい。しかしながら、本発明の揮発性化合物特に揮発性有機化合物の分解方法では、光照射を必要とすることなく、加熱により酸化チタンの触媒能を発揮させて揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解しうる点が、最大の特徴点である。
【0016】
本発明の分解方法において、加熱した酸化チタン1gに対して、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることができる。使用する酸化チタンの量は、処理装置の大きさにより異なり、適宜決定することができる。例えば、小規模の施設で使用する場合は、小規模の処理装置でよく、大規模の施設で処理する場合は、大規模の処理装置が必要となる。したがって、使用する酸化チタンと処理する揮発性化合物特に揮発性有機化合物の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。具体的には、例えば加熱した酸化チタン200〜300gに対して、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を含む気体体積を125〜5000ml/分、好ましくは250〜1000ml/分、より好ましくは250〜500ml/分で接触させて処理することができる。
【0017】
本発明における酸化チタンの顆粒体の形状は、酸化チタンと温度との関係において揮発性化合物を分解しうる形状であればよく、特に限定されないが、より効果的に揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解するためには、比表面積が35〜100m2/g、好ましくは35〜80m2/gである。これは、比表面積が大きいほど、揮発性化合物との接触面が大きくなり、分解効率を上げることができる。しかし、比表面積が大きすぎると耐熱性が弱くなり、かつ顆粒体が崩れやすく粉末化しやすくなる。また、粉末化することにより、揮発性化合物処理の際、装置内での目詰まりが生じる可能性もある。
【0018】
なお、酸化チタンの顆粒体からなる触媒の比表面積の測定方法は、自体公知の方法を利用することができるが、本発明ではBET法を使用して測定する。詳しくは、以下の通りである。該BET法は,粉体粒子表面に吸着占有面積の判った分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法である。例えば、比表面積測定装置は、2300形 自動測定装置(島津製作所(株)製造元)を使用することができる。
【0019】
揮発性化合物特に揮発性有機化合物処理の際の装置内での目詰まりが生じることを回避することを考慮して、酸化チタンの大きさは、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmであることが好ましい。該酸化チタンの大きさは、2mmから10mmの間である大きさの粒子を使用しても良いし、又この範囲で粒度を分布させても良いし、適宜任意に選択して使用すれば良い。ここで、最も長辺部の大きさで顆粒体の大きさを特定したのは、顆粒体の形状は、一辺の大きさのみで特定できる球形や立方形の形状ではないからである。長辺部が、上記の範囲から選択される大きさの顆粒体であれば、装置内での目詰まりを可能な限り回避しながら分解処理することが可能と考えられる。顆粒体の大きさは、使用する酸化チタンと処理する揮発性化合物特に揮発性有機化合物の体積は、装置の規模により適宜選択することができる。
【0020】
本発明において、酸化チタンは、気体である揮発性化合物特に揮発性有機化合物と接触させるのであるから、プラスチック等の固形物を処理する場合とは異なり、酸化チタンゲルの焼成物の磨耗率は低いと考えられる。しかし、さらに磨耗率を低下させるために、予めエッジ処理を行っても良い。このような酸化チタンを用いることにより、揮発性化合物特に揮発性有機化合物を高効率で分解することができるのみならず、望ましい形状を保って、その高い触媒効率を長時間にわたって維持することができる。ただし、本発明において、処理を継続することにより、酸化チタンの顆粒体の粒子が磨耗し、粉末状の酸化チタンが生じ、上記の範囲外の大きさの酸化チタンが生じることを否定するものではない。
【0021】
なお、本発明の酸化チタンまたは酸化チタン混合物の顆粒体の摩耗率は自体公知の測定方法により行うことができる。例えば摩耗率測定装置を用いて以下の方法で測定をすることができる。200mLメスシリンダーで酸化チタンの顆粒体150mLを計量し、重量を記録した後、試料容器に全量を投入し、300rpmで30分間上記攪拌機を用いて攪拌した後、試料容器から試料を取り出し、全量を目開き0.5mmの篩に移し、この篩を通過した試料の重量を測定する。ここに、試料の摩耗率Aは、目開き0.5mmの篩を通過した試料の重量をWとし、測定に供した試料の重量をW0 とするとき、A=(W/W0)×100(%)である。
【0022】
従って、本発明によれば、上述したような加熱酸化チタンの触媒を用いることによって、長時間にわたって揮発性化合物特に揮発性有機化合物を高効率にて分解することができる。
【0023】
本発明において揮発性化合物とは、揮発性有機化合物及び揮発性無機化合物を含む。なお、揮発性無機化合物としては、アンモニア、硫化水素等が例示される。
さらに、VOCとは、上述の如く揮発性有機化合物であり、一般的に用いられるすべての揮発性有機化合物をいう。すなわち、気体として排出され、または飛散する有機化合物であり、一部の化合物{クロロジフルオロメタン、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン等のVOC年間排出量に占める割合が極めて少ない物質(0.01 %以下)又は生産中止になっている物質、あるいは光化学オキシダントの生成能が低い物質として政令で定められたもの}を除きすべてVOCという。
【0024】
VOCとして例示される物質としては、メタン、エタン、酢酸エステル、トルエン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、酢酸エチル、デカン、メタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、n-ブタン、イソブタン、トリクロロエチレン、トリメチルアミン、ピリジン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、イソブチルアルコール、プロピオン酸、イソプロピルアルコール、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、n-ヘキサン、n-ブタノール、n-ペンタン、cis-2-ブテン、イソブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラクロロエチレン、シクロヘキサン、酢酸プロピル、trans-2-ブテン、エチルセロソルブ、ウンデカン、ノナン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-メチルペンタン、エチレングリコール、2-メチル-2-ブテン、エチルシクロヘキサン、テトラリン、メチルアミルケトン、メチルn-ブチルケトン、クロロメタン、ベンジルアルコール、シクロペンタノン、2-メチル-1-ブテン、n-ヘプタン、ビシクロヘキシル、N,N-ジメチルホルムアミド、trans-2-ペンテン、cis-2-ペンテン、スチレン、N-メチル-2-ピロリドン、エチルセロソルブアセテート、ベンゼン、イソホロン、シクロヘキサノン、エタノール、メチルシクロペンタン、酢酸ビニル、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、イソプロピルセロソルブ、1 ,2-ジクロロエタン、塩化ビニル、テトラフルオロエチレン、エチルベンゼン、クメン、クロロエタン、トリクロロエタン、アクリロニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、n-プロピルブロマイド、メタクリル酸メチル、1 ,3-ブタジエン、1 ,1-ジクロロエチレン、2 ,4-ジメチルペンタン、酸化プロピレン、クロロホルム、臭化メチル、ジペンテン、1-ヘプテン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、塩化アリル、アクリル酸、イソプレン、アセトアルデヒド、1 ,2-ジクロロプロパン、メチルセロソルブアセテート、エチレンオキシド、o-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、ギ酸メチル、トリエチルアミン、3-メチルヘプタン、フェノール、ナフタレン、アクリル酸メチル、シクロヘキシルアミン、ホルムアルデヒド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。
本発明のVOCとして、好ましくは上記化合物のうち、芳香族炭化水素有機化合物を含むことが好ましく、芳香族炭化水素有機化合物としては、トルエンがより好適である。
さらに、本発明の好適な分解対象のVOCとして、メタノール、エタノール、イソブチルアルコール、トルエン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、フェノール、酢酸エチル、スチレン、トリメチルアミン、ピリジン、メタン、エタン、ブタン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸、酢酸エステル、ブタノールが挙げられる。
【0025】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
トルエンの分解
(実験方法)
トルエン(C7H8)を空気流入下で気化加熱し、以下に述べる高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。使用した装置(図1参照)及び設定実験条件は以下の通りである。
【0027】
(処理装置)
触媒層は固定床方式を採用し、触媒容器の容量は240ml(φ29・4×355)であった。TiO2の触媒量は約288g(崇比重約1.2)であり、空隙容量154ml(空隙率約64%)であった。以下の方法で調製した処理化合物(トルエン)を、試料導入部にポンプを用いて一定の流速で導入した。
【0028】
(酸化チタン触媒)
酸化チタン触媒として、アナターゼ型酸化チタン触媒(堺化学工業(株)SSP-G Lot.051108)を用いた。
【0029】
(処理化合物)
トルエン(和光純薬工業(株)試薬特級 純度99%以上 Lot. CEL1609)を用いて、一定量を気化させることで均一濃度のトルエンを調製した。
【0030】
(処理条件)
トルエンの燃焼最適温度は480℃であり、250〜500℃の間で、設定条件を50℃ずつ変更した。エアー流量は空気ポンプを用いて0.125L/分、0.25L/分、0.5L/分、1L/分で行った。実験開始後、条件が一定になった後(約10分間)、サンプリングを行った。サンプルを回収した後、温度、流速などの条件を変更し、定常状態になった後、再度サンプリングを行った。実験終了時に最初に生成したガスのサンプリングを行った。触媒反応条件(設定温度、気体流速、試料トルエンの濃度)を変化させ、各々の条件下で触媒通過後の気体を回収し、その気体のトルエン濃度、CO2濃度、CO濃度の測定を行った。
【0031】
2)実験結果・考察
光触媒として知られている酸化チタン(以下、TiO2)は、古くから強い酸化活性を持つ触媒として知られている。しかし、TiO2を加熱することにより生じる酸化力について検討を行った報告は少ない。そこで、光触媒で分解困難な芳香族化合物であるトルエン本実施例ではTiO2粒子を加熱することで生じる酸化力と特異的な効果について検討する実験を行った。TiO2の触媒能力を評価するにあたり、その強さを特徴づける因子として考えられるのは、TiO2触媒の「温度」、及び処理化合物(トルエン)とTiO2との「接触時間」(=トルエンガスの流速)である。この二つをパラメーターとして、各々の転化率、選択率を求め、TiO2の触媒としての評価を行った。
【0032】
(TiO2触媒下での転化率)
トルエンの転化率について検討した結果を図2に示した。トルエンの転化率は、残存トルエンガス濃度を燃焼前トルエン濃度で除したものであり、以下の式により求められる。
【0033】
転化率(%)=100−[(残存トルエン濃度(ppm))/(燃焼前のトルエン濃度(ppm))]×100
【0034】
トルエンガスの流速が1L/分では触媒温度が400℃以上、0.5L/分では300℃以上、0.25L/分では250℃以上で各々の転化率が90%以上を示した。つまり、触媒温度が高いほど、触媒の酸化力が向上するため、転化率が上昇していると考えられる。また、転化率90%以上となる温度を、TiO2触媒至適温度と定義すると、トルエンガス流速1L/分の際、350℃であった至適温度を、流速0.25L/分では250℃に下げることが可能であった。これは、トルエンガスの流速を下げることにより、TiO2触媒との接触時間が長くなり、トルエンの分解が促進されることで、TiO2触媒至適温度を低く保つことができたためと考えられた。
【0035】
(TiO2触媒下での選択率)
選択率は、残存トルエンガス濃度、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)濃度を燃焼前トルエンガス濃度で除したものである。CO又はCO2については、CO又はCO2の炭素数は1であり、トルエンの炭素数は7であるため、以下の式により求められる。
【0036】
CO又はCO2の選択率(%)=[(CO又はCO2の濃度(ppm))/7×(燃焼前のトルエン濃度(ppm))]×100
【0037】
others(その他)の選択率(%)=100−(COの選択率(%)+CO2の選択率(%)+残存トルエンの選択率(%))
【0038】
選択率について検討した結果を図3A〜Cに示した。
選択率では、いずれのトルエンガス流速においても、TiO2触媒の温度が上昇するに従って、残存トルエンの比率は低下しており、さらに、トルエンの分解産物である、CO2比率の上昇及び中間生成物であるその他の生成物の比率の低下を認めた。これは、TiO2触媒の温度を上げることで、TiO2触媒の酸化力が向上し、トルエンの分解が促進されること、さらには酸化反応が促進され、CO2の生成量が増加し、その結果中間生成物である、その他の生成物の比率の低下を認めたと考えられた。
【0039】
(TiO2触媒下での選択率におけるCO2、COの変化)
選択率におけるCO2及びCOの変化について検討した結果を図4A、Bに示した。トルエンガス流量が1L/分、0.5L/分で及び0.25L/分の場合において、各流速の場合とも燃焼温度が上昇するに従ってCO2の割合の上昇を認めた。それに対し、COの割合は450℃(26.1%)、400℃(26.5%)、350℃(27.3%)をピークとした一峰性の山を形成した。これは、COがトルエン及びその分解産物の不完全燃焼を示す指標と考えられ、触媒温度が低く、触媒との接触時間が短時間であるほど不完全燃焼となり、ある一定の条件(温度、触媒接触時間)以上で、COが減少に転じると考えられた。トルエンガスの流速を下げるに従って、CO比率のピークに至る触媒温度が低くなることから、トルエンガスとTiO2触媒との接触時間を十分保つことにより、TiO2触媒温度がより低い条件で、トルエンの分解が促進されていると考えられた。しかし、最も条件が良い、TiO2触媒温度500℃、トルエンガス流速0.25L/分においても、その他の生成物の比率は、いずれも30%前後と高値であった。その他の生成物が高い比率を占めている原因としては、固形物(スス)としてTiO2触媒表面に沈着し、被毒化することで、触媒作用が低下することがその一因であると考えられた。
【0040】
(比較例1)
TiO2触媒を含まない空筒の温度を500℃とした他は、実施例1と同様の方法により、トルエンガスの各流速の転化率について調べ、TiO2触媒を用いた場合と比較した。その結果を図5に示した。
【0041】
(転化率)
500℃における空筒下のトルエンの転化率の最低値及び最高値は、最低値トルエンガス流速1L/分の場合で37.6%、最高値トルエンガス流速0.125L/分の場合では55.8%であった。これにより、TiO2触媒を含む場合と同様に、トルエンガスの流速が遅いほど、転化率は上昇傾向を示すことが確認された。しかし、実施例1に示したTiO2触媒下での同温度条件での転化率と比較すると、TiO2触媒では転化率96%以上を示したに対し、空筒下では、55.8%以下の転化率であった。空筒下及びTiO2触媒下の各々の転化率の比較では、トルエンの自然発火温度(480℃)を越える500℃においても、空筒下のトルエンの転化率は60%以下となり、TiO2触媒下における転化率96%以上(TiO2触媒温度500℃、トルエンガス流速1L/分)に比してはるかに劣り、TiO2触媒の有用性が示された。
【実施例2】
【0042】
(各種類の揮発性有機化合物の分解)
上記トルエン以外の揮発性有機化合物である、(1)アセトアルデヒド、(2)ホルムアルデヒド、(3)フェノール、(4)ピリジン、(5)メタン、(6)エタン、(7)ブタン、(8)メチルメルカプタン、(9)プロピレン、(10)ジメチルスルホキシド、(11)複数の揮発性有機化合物(メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレン)、(12)酢酸エチル、(13)スチレン、(14)トリメチルアミンの分解を検討した。詳細は、以下の通りである。
【0043】
(実験方法)
各種類の揮発性有機化合物を空気流入下で気化加熱し、実施例1と同様な高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。
【0044】
(処理条件)
エアー流量は空気ポンプを用いて1.8〜1.9L/分で行った。
【0045】
(1)アセトアルデヒドの分解
アセトアルデヒド(90%)25μl(0.4mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、アセトアルデヒドを気化器(120℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを30秒間第1サンプリングバック(1L)に捕集し、次の30秒間第2サンプリングバック(1L)に捕集し、次の10分間第3サンプリングバックに捕集した。各サンプリングバックの反応ガスをアセトアルデヒドガス検知管(測定範囲:10〜300ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、アセトアルデヒドは検知されなかった。すなわち、アセトアルデヒドは完全に分解された。
【0046】
(2)ホルムアルデヒドの分解
ホルムアルデヒド(37%水溶液)160μl(0.20mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、ホルムアルデヒドを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。サンプリングバックの反応ガスをホルムアルデヒドガス検知管(測定範囲:0.1〜5ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、ホルムアルデヒドは検知されなかった。すなわち、ホルムアルデヒドは完全に分解された。
【0047】
(3)フェノールの分解
フェノール(5%水溶液)100μl(50μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、フェノールを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。サンプリングバックの反応ガスをフェノールガス検知管(測定範囲:1〜25ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、フェノールは検知されなかった。すなわち、フェノールは完全に分解された。
【0048】
(4)ピリジンの分解
ピリジン10μlをマイクロシリンジで計量した。そして、ピリジンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、微量のNOmax(20ppm)が検出された。また、この測定時の炭酸ガス濃度は1.3%であった。これにより、ピリジンは分解されたと考えられる。
【0049】
(5)メタンの分解
メタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、メタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが37ppm、CO2が0.1%、亜硫酸ガスが120ppm検出された。なお、流出した反応ガスを硫化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、硫化水素ガスは検出されなかった。よって、亜硫酸ガスと同様のIR吸収域を持つガス成分が検知された。これにより、メタンは分解されたと考えられる。
【0050】
(6)エタンの分解
エタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、エタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが120ppm、CO2が0.2%検出された。なお、亜硫酸ガスは検出されなかった。次に、流出した反応ガスを低級炭化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、低級炭化水素ガスは検出されなかった。これにより、エタンは分解されたと考えられる。
【0051】
(7)ブタンの分解
ブタンガス(硫黄臭気成分含有カセットコンロ用)を2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、ブタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが450ppm、CO2が0.6〜0.7%検出された。なお、亜硫酸ガスは10ppm以下であった。なお、流出した反応ガスを低級炭化水素ガス検知管(測定範囲:0.05〜0.1%)で測定したが、低級炭化水素ガスは検出されなかった。さらに、流出した反応ガスには、硫黄臭はなかった。これにより、ブタンは分解されたと考えられる。
【0052】
(8)メチルメルカプタンの分解
メチルメルカプタンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、メチルメルカプタンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、CO2が0.23%検出された。なお、亜硫酸ガスは40〜60ppmであった。なお、流出した反応ガスをメチルメルカプタン検知管(測定範囲:50〜1000ppm)で測定したが、メチルメルカプタンは検出されなかった。これにより、メチルメルカプタンは完全に分解されたと考えられる。
【0053】
(9)プロピレンの分解
プロピレンガスを2分間間隔で1mlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、プロピレンガスを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが500ppm、CO2が0.5%検出された。なお、亜硫酸ガスは5ppmであった。なお、流出した反応ガスを亜硫酸ガス検知管(測定範囲:0.2〜5ppm)で測定したが、2.2ppm検出された。しかし、該亜硫酸ガスは前回の実験での残存成分であると考えられる。これにより、プロピレンは分解されたと考えられる。
【0054】
(10)ジメチルスルホキシドの分解
ジメチルスルホキシド(DMSO)を2分間間隔で10μlを5回マイクロシリンジで計量した。そして、ジメチルスルホキシドを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが2400ppm、CO2が1.2%、O2が17%検出された。なお、亜硫酸ガスは400ppmであった。なお、亜硫酸ガスは少量であるので吸着現象であると考えられる。これにより、ジメチルスルホキシドは分解されたと考えられる。
【0055】
(11)複数の揮発性有機化合物の連続分解
複数の揮発性有機化合物(メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレン)を連続して分解できるかを検討した。詳細は、以下の通りである。
メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピオン酸、スチレンを2分間間隔で各10μlをマイクロシリンジで計量した。そして、各揮発性有機化合物を気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、480℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果を図6に示す。図6から明らかなように、メタノール(図6:A)、エタノール(図6:B)、酢酸エチル(図6:C)、イソブチルアルコール(図6:D)、メチルイソブチルケトン(図6:E)、トルエン(図6:F)、プロピオン酸(図6:G)、スチレン(図6:H)が連続して分解されていることを確認した。さらに、本発明の分解方法は、単一の揮発性有機化合物の分解だけでなく、複数の揮発性有機化合物の連続及び/又は同時分解が可能である。
【0056】
以下の(12)酢酸エチル、(13)スチレン、(14)トリメチルアミンでは、以下の固定床分解装置を使用した。
(処理装置)
触媒層は固定床方式を採用し、触媒容器の容量は170ml(φ29・4×250)であった。TiO2の触媒量は約244g(崇比重約1.2)であり、空隙容量109ml(空隙率約64%)であった。
【0057】
(12)酢酸エチルの分解
酢酸エチル25μl(0.23mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、酢酸エチルを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスを酢酸エチルガス検知管(測定範囲:0.1〜1.5%)を用いて測定した。
上記測定結果では、1.5%以上の酢酸エチルが検出された。しかし、該反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ酢酸エチル以外の分解生成物であることを確認した。すなわち、酢酸エチルは分解された。
【0058】
(13)スチレンの分解
スチレン10μl(87μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、スチレンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスをスチレンガス検知管(測定範囲:0.2〜4.0ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、スチレンが検出されなかった。さらに、該反応ガスをポケッタブルガス検知器にて測定したことをCOが検知された。すなわち、スチレンは完全に分解された。
【0059】
(14)トリメチルアミンの分解
トリメチルアミン(0.1%エタノール溶液)10μl(17μM)をマイクロシリンジで計量した。そして、トリメチルアミンを気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該サンプリングバックの反応ガスをトリメチルアミンガス検知管(測定範囲:0.25〜5.0ppm)を用いて測定した。
上記測定結果では、トリメチルアミンが検出されなかった。さらに、該反応ガスをポケッタブルガス検知器にて測定したことをCOが検知された。すなわち、トリメチルアミンは完全に分解された。
【0060】
なお、イソブチルアルコール、酢酸エステル、ブタノールも上記同様な方法で分解できたことを確認した。
【0061】
以上の結果、本発明では、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、フェノール、ピリジン、メタン、エタン、ブタン、メチルメルカプタン、プロピレン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、酢酸エチル、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピオン酸、スチレン、スチレン、トリメチルアミン、イソブチルアルコール、酢酸エステル、ブタノールを分解することができる。
【実施例3】
【0062】
(揮発性無機化合物の分解)
揮発性無機化合物の分解を検討した。詳細は、以下の通りである。
【0063】
(実験方法)
各種類の揮発性無機化合物を空気流入下で気化加熱し、実施例1と同様な高温下酸化チタン触媒を充填した固定床分解装置で分解反応を実施した。
【0064】
(処理条件)
エアー流量は空気ポンプを用いて1.8〜1.9L/分で行った。
【0065】
(アンモニア)
アンモニア(28%水溶液)11μl(0.16mM)をマイクロシリンジで計量した。そして、アンモニアを気化器(170℃)に注入して気化させ、続いて、460℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスを1分間サンプリングバック(1L)に捕集した。該反応ガスをイオンクロマト用溶離液25mlでバブリングして吸収させた後に、イオンクロマトグラフィーでアニオン濃度を測定した。
上記測定結果では、NO2、NO3は検出されなかった。すなわち、アンモニアは分解された。
【0066】
(硫化水素)
硫化水素ガスを2分間間隔で1mlを4回マイクロシリンジで計量した。そして、硫化水素を気化器(150℃)に注入して気化させ、続いて、470℃の触媒層に導入した。流出した反応ガスをPG-250で連続測定した。
上記測定結果では、COが30ppm、CO2が0.02%検出された。なお、亜硫酸ガスは40ppmであった。亜硫酸ガスは少量であるので吸着現象であると考えられる。これにより、硫化水素は分解されたと考えられる。
【0067】
以上の結果、本発明では、アンモニア、硫化水素を分解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上詳述したように、本発明の分解方法によれば、高効率で揮発性化合物特に揮発性有機化合物を分解することができる。例えば医療廃棄物(ポリマー)、電気製品、建材等の処理における分解時には、揮発性有機化合物が発生することが考えられる。さらに、吹付塗装施設、塗装の乾燥又は焼付け施設、化学製品製造の乾燥施設、工場の洗浄施設、グラビア印刷の乾燥施設、オフセット印刷の乾燥または焼付け施設、接着の乾燥施設、クリーニング工場等、様々な分野でも多くの揮発性有機化合物が発生する。本発明の分解方法によると、このような揮発性有機化合物の分解能を向上させることができる。また揮発性有機化合物消去とあわせて脱臭効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の分解方法に使用する装置の概略図である。(実施例1)
【図2】各トルエンガス流速での温度別トルエンの転化率を示す図である。(実施例1)
【図3A】トルエンガス流速(1L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図3B】トルエンガス流速(0.5L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図3C】トルエンガス流速(0.25L/分)での選択率を示す図である。(実施例1)
【図4A】トルエン分解時の選択率におけるCO2濃度の変化を示す図である。(実施例1)
【図4B】トルエン分解時の選択率におけるCO濃度の変化を示す図である。(実施例1)
【図5】TiO2の有無によるトルエン分解時の転化率を示す図である。(比較例1)
【図6】複数の揮発性有機化合物の連続分解結果を示す図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0070】
1 下段ヒータつなぎパイプ
2 シーズヒーター
3 パージ流量計
4 スポットヒーター
5 真空ポンプコンプレッサー(ダイアグラム式)
6 温調コントローラ ポンプ用
7 温調コントローラ チタンユニット用
8 トランス
a 気化トルエン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンと揮発性化合物を接触させて揮発性化合物を分解する方法において、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法。
【請求項2】
酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである請求項2に記載の分解方法。
【請求項4】
酸化チタン1gに対して、揮発性化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項5】
揮発性化合物が、揮発性有機化合物である請求項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項6】
揮発性化合物が、揮発性無機化合物である請求項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項7】
揮発性有機化合物が、芳香族炭化水素有機化合物を含む化合物である請求項5に記載の分解方法。
【請求項8】
揮発性有機化合物が、以下のいずれか1以上から選択される請求項5に記載の分解方法。
1)メタノール、2)エタノール、3)イソブチルアルコール、4)トルエン、5)アセトアルデヒド、6)ホルムアルデヒド、7)フェノール、8)酢酸エチル、9)スチレン、10)トリメチルアミン、11)ピリジン、12)メタン、13)エタン、14)ブタン、15)メチルメルカプタン、16)プロピレン、17)ジメチルスルホキシド、18)メチルイソブチルケトン、19)プロピオン酸、20)酢酸エステル、21)ブタノール
【請求項9】
揮発性無機化合物が、アンモニア又は硫化水素である請求項6に記載の分解方法。
【請求項1】
酸化チタンと揮発性化合物を接触させて揮発性化合物を分解する方法において、酸化チタンを150〜600℃の範囲で加熱させて処理することを特徴とする揮発性化合物の分解方法。
【請求項2】
酸化チタンが顆粒体であり、比表面積が35〜100m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
顆粒体の酸化チタンの大きさが、顆粒体における粒子径の最も長辺部の長さが、2〜10mmである請求項2に記載の分解方法。
【請求項4】
酸化チタン1gに対して、揮発性化合物を含む気体体積が0.3〜25ml/分の割合で接触させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項5】
揮発性化合物が、揮発性有機化合物である請求項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項6】
揮発性化合物が、揮発性無機化合物である請求項1〜4のいずれか1に記載の分解方法。
【請求項7】
揮発性有機化合物が、芳香族炭化水素有機化合物を含む化合物である請求項5に記載の分解方法。
【請求項8】
揮発性有機化合物が、以下のいずれか1以上から選択される請求項5に記載の分解方法。
1)メタノール、2)エタノール、3)イソブチルアルコール、4)トルエン、5)アセトアルデヒド、6)ホルムアルデヒド、7)フェノール、8)酢酸エチル、9)スチレン、10)トリメチルアミン、11)ピリジン、12)メタン、13)エタン、14)ブタン、15)メチルメルカプタン、16)プロピレン、17)ジメチルスルホキシド、18)メチルイソブチルケトン、19)プロピオン酸、20)酢酸エステル、21)ブタノール
【請求項9】
揮発性無機化合物が、アンモニア又は硫化水素である請求項6に記載の分解方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−194683(P2008−194683A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9869(P2008−9869)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(000202420)草津電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(504177284)国立大学法人滋賀医科大学 (41)
【出願人】(000202420)草津電機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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