説明

揮発性成分揮散用装置、揮発性成分揮散用カートリッジおよび電子機器

【課題】押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができ、揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができ、不使用時に密閉梱包しなくても揮発性能が劣化しないこと。
【解決手段】加熱部110を有する装置本体とカートリッジ50とを備え、カートリッジ50が揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体60を備え、揮発性成分充填部が、内部に充填された揮発性成分含有部材とこれに接触する金属部材12と開口部22とを有し、揮発性成分含有部材が、揮発性成分を内包するマイクロカプセルを含み、カートリッジ50が装置本体に対して取り付けられた際に、加熱部10に金属部材12が接触・近接する位置に、金属部材12が配置される揮発性成分揮散用装置、当該装置に用いる揮発性成分揮散用カートリッジおよび当該装置を用いた電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性成分揮散用装置、揮発性成分揮散用カートリッジおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鎮静効果、入眠効果、覚醒効果、鎮痛効果、抗菌効果、消臭効果などを目的として、様々な芳香製品が提供されている。これらの芳香製品の中でも、いわゆる精油を用いたものとしては、精油(あるいはこれを含む溶液や当該溶液をしみ込ませたシートなど)を加熱して芳香を揮散させる加熱方式と、精油を加熱せずに自然に揮散させる非加熱方式がある。
【0003】
非加熱方式の芳香製品としては、芳香剤を溶解させた溶液を満たしたボトルと、ボトル中の溶液を吸い上げて外部に揮散する揮散部とを有するものが知られている。また、芳香剤を含有させたシート状の芳香製品(以下、「芳香シート」と称す場合がある)も知られている。芳香シートとしては、たとえば、基板に、芳香成分を入れたマイクロカプセルを付着させたものが知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される芳香シートでは、圧力を加えることでマイクロカプセルが破壊され、これにより芳香成分が芳香シートの外部へと揮散する。また、芳香シートに類似した機能や構成を有する製品としては、電気式の加温機による加熱によってシートにしみ込ませた揮発性の殺虫成分を揮散させるいわゆる蚊取りマットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−265353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される芳香シートでは、芳香シートを手で押さえたり、こすったりするなどして圧力を加えない限り、芳香成分を揮散させることができない。また、蚊取りマットのように揮発性の殺虫成分をしみ込ませたシートでは、使用する直前までは保管のためにアルミ袋等により密閉して梱包した状態で保管する必要がある。そして、一旦、梱包袋から取り出した後は、殺虫成分が自然と揮散するために、揮発性能が劣化する。さらに、使用時には、シート全体が加熱されるため、シートにしみ込ませた殺虫成分の全量を、所定量づつ分割して使用することが困難である。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、第一の本発明は、(1)押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができ、(2)揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができ、かつ(3)不使用時に密閉梱包しなくても揮発性能が劣化しない揮発性成分揮散用装置およびこれに用いる揮発性成分揮散用カートリッジを提供することを課題とする。また、第二の本発明は、(1)押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができると共に、(2)揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができる揮発性成分揮散用装置、当該装置に用いる揮発性成分揮散用カートリッジおよび当該装置を用いた電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
第一の本発明の揮発性成分揮散用装置は、2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備え、カートリッジが、互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、該揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部と、を有し、揮発性成分含有部材が、揮発性成分を含有する芯材および該芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを1つ以上含み、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0008】
第一の本発明の揮発性成分揮散用装置の一実施態様は、一の揮発性成分充填部内に充填された揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類と、他の揮発性成分充填部内に充填された揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類とが、異なることが好ましい。
【0009】
第二の本発明の揮発性成分揮散用装置は、2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備え、カートリッジが、互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分と、該揮発性成分に接触する金属部材と、開口部と、を有し、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0010】
第二の本発明の揮発性成分揮散用装置の一実施態様は、一の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類と、他の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類とが、異なることが好ましい。
【0011】
第一の揮発性成分揮散用装置および第二の本発明の揮発性成分揮散用装置の他の実施態様は、揮発性成分が、芳香成分、殺虫成分、抗菌成分および消臭成分から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
第一の揮発性成分揮散用装置および第二の本発明の揮発性成分揮散用装置の他の実施態様は、揮発性成分揮散用装置本体およびカートリッジが、可撓性を有する平板状の部材から構成されることが好ましい。
【0013】
第一の揮発性成分揮散用装置および第二の本発明の揮発性成分揮散用装置の他の実施態様は、加熱部が、発熱チップから構成されることが好ましい。
【0014】
第一の揮発性成分揮散用装置および第二の本発明の揮発性成分揮散用装置の他の実施態様は、カートリッジが、加熱部により金属部材を加熱する際の加熱情報を有し、揮発性成分揮散用装置本体が、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に取り付けられた状態において、加熱情報を読取る読取部を備えていることが好ましい。
【0015】
第一の本発明の揮発性成分揮散用カートリッジは2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備えた揮発性成分揮散用装置に用いられ、カートリッジが、互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、該揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部と、を有し、揮発性成分含有部材が、揮発性成分を含有する芯材および該芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを1つ以上含み、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0016】
第二の本発明の揮発性成分揮散用カートリッジは2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備えた揮発性成分揮散用装置に用いられ、カートリッジが、互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分と、該揮発性成分に接触する金属部材と、開口部と、を有し、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0017】
第一の揮発性成分揮散用カートリッジおよび第二の本発明の揮発性成分揮散用カートリッジの一実施態様は、カートリッジが加熱部により金属部材を加熱する際の加熱情報を有し、揮発性成分揮散用装置本体が、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に取り付けられた状態において、加熱情報を読取る読取部を備えていることを特徴とすることが好ましい。
【0018】
本発明の電子機器は、第一の本発明の揮発性成分揮散用装置または第二の本発明の揮発性成分揮散用装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第一の本発明によれば、(1)押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができ、(2)揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができ、かつ(3)不使用時に密閉梱包しなくても揮発性能が劣化しない揮発性成分揮散用装置、当該装置に用いる揮発性成分揮散用カートリッジおよび当該装置を用いた電子機器を提供することができる。また、第二の本発明によれば、(1)押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができると共に、(2)揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができる揮発性成分揮散用装置、当該装置に用いる揮発性成分揮散用カートリッジおよび当該装置を用いた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる金属部材の一例を示す模式断面図である。
【図2】図1に示す金属製容器内にマイクロカプセルが配置された状態を示す模式断面図である。
【図3】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる金属製容器の他の例を示す模式断面図である。
【図4】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの一例を示す模式断面図である。
【図5】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの他の例を示す模式断面図である。
【図6】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの他の例を示す模式断面図である。
【図7】第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの他の例を示す模式断面図である。
【図8】本実施形態の揮発性成分揮散用装置の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一の実施形態の揮発性成分揮散用装置>
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備える。
【0022】
ここで、カートリッジ(第一の本実施形態の揮発性成分揮散用カートリッジ)は、 互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、該揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部と、を有し、揮発性成分含有部材が、揮発性成分を含有する芯材および該芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを1つ以上含み、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0023】
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置では、揮発性成分を含有する芯材および芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを用いている。このため、揮発性成分揮散用装置本体(以下、「装置本体」と略す場合がある)にカートリッジが取り付けられた状態で、加熱部に接触または近接する金属部材が、加熱部により加熱されると、金属部材と接触する揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルの外殻材が加熱破壊される。この際、揮発性成分がカートリッジの外部に揮散される。それゆえ、押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができる。また、揮発性成分は、2つ以上の揮発性成分充填部に分割して収納されているので、加熱部により個々の揮発性成分充填部毎に選択して加熱すれば、揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができる。さらに揮発性成分は、マイクロカプセルに内包されているため、マイクロカプセルが外部から加熱されない限りは、揮発性成分が自然に揮発して失われることもない。このため、不使用時に揮発性成分揮散用装置、あるいは、カートリッジ部分を密閉梱包しなくても揮発性能が劣化しない。
【0024】
以上に説明した第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、揮発性成分を有するカートリッジが脱着可能に構成されている。このため、カートリッジを交換することにより装置本体は何度でも再利用できる。これに加えて、カートリッジ交換に際して、異なる種類の揮発性成分を有するカートリッジを利用すれば、種々の揮発性成分を揮散させることもできる。さらに、使用を終えたカートリッジについても、洗浄処理の後に、再度、揮発性成分含有部材を補充することにより、リサイクルすることも可能である。以下に、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられるカートリッジの詳細について説明する。
【0025】
<第一の本実施形態のカートリッジ>
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる第一の本実施形態のカートリッジでは、当該カートリッジ内の一の揮発性成分充填部に充填される揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類と、当該カートリッジ内の他の揮発性成分充填部に充填される揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類とは、同一であっても異なっていてもよい。前者の場合であれば、たとえば、同じ種類の揮発性成分を何度も繰り返し揮散させることができる(第一の揮散態様)。また、後者の場合であれば、たとえば、多種類の揮発性成分のうちの1種類を選択して揮散させたり(第二の揮散態様)、多種類の揮発性成分のうちから選択された2種類以上組み合わせて略同時に揮散させることができる(第三の揮散態様)。
【0026】
また、第一の本実施形態のカートリッジが有する揮発性成分充填部の数は、2つ以上であればよく、具体的には、第一の本実施形態のカートリッジと組み合わせて用いる装置本体に設けられた加熱部の数に応じて適宜決定することができる。しかしながら、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、上記第一〜第三の揮散態様として例示したように、原理的に、揮発性成分を多様な形態で揮散させることが可能である。このような特性を十分に活用できるようにするためには、第一の本実施形態のカートリッジが有する揮発性成分充填部の数は、2個以上であることが好ましく、9個以上であることがより好ましく、16個以上であることがさらに好ましいい。なお、第一の本実施形態のカートリッジが有する揮発性成分充填部の数の上限は特に限定されるものではないが、実用上は25個以下とすることが好ましい。
【0027】
第一の本実施形態のカートリッジの形状は特に限定されず、基本的には、装置本体に脱着容易な形状とされる。なお、装置本体が可撓性を有する平板状の部材から構成される場合には、第一の本実施形態のカートリッジも、可撓性を有する平板状の部材から構成されることが好ましい。なお、装置本体や第一の本実施形態のカートリッジに可撓性を付与する方法は特に限定されないが、これら部材を構成する主材料として樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
−揮発性成分含有部材−
揮発性成分含有部材は、1つ以上のマイクロカプセルを含むものである。すなわち、揮発性成分含有部材は、1つのマイクロカプセルから構成されていてもよい。また、揮発性成分含有部材が、2つ以上のマイクロカプセルを含む場合は、これらマイクロカプセルの集合物から構成される。なお、通常、当該集合物中において、隣り合うマイクロカプセル同士は、外殻材同士の粘着作用により粘着する。但し、粘着作用が弱い場合には、マイクロカプセル同士を粘着させるために、揮発性成分含有部材には、マイクロカプセルの他に結着材が含まれていてもよい。揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルの数は特に限定されないが、通常は5個〜50個の範囲であることが好ましい。
【0029】
−揮発性成分−
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置およびそのカートリッジに用いられる揮発性成分とは、揮発性成分揮散用装置の利用が想定される一般的な温度環境(−10℃〜50℃前後)において、揮発性を有する成分であれば、その成分は特に限定されず、公知の物質が利用できる。しかしながら、揮発性成分は、芳香成分、覚醒成分、殺虫成分、抗菌成分および消臭成分から選択される少なくとも1種であることが好ましく、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、これら5種類の揮発性成分の中でも特に芳香成分を用いることが好適である。さらに、使用する揮発性成分が芳香機能と抗菌機能とを兼ね備えるなど、2種類以上の機能を有するものであってもよい。
【0030】
芳香成分としては、公知の芳香成分であれば特に制限なく利用できるが、たとえば、精油、合成香料、動物性香料、これらの有効成分や単体化合物などが好適なものとして挙げられ、精油または精油に含まれる有効成分が好ましい。
【0031】
精油としては、たとえば、イランイラン精油、ゼラニウム精油、ラベンダー精油、ジャスミン精油、カモミール精油、ラベンティン精油、ヒソップ精油、ローズ精油、ネロリ精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、ヒノキ精油、サンダルウッド精油、ジュニパー精油、ティートリー精油、パイン精油、パチュリ精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、レモングラス精油、レモン精油、シトロネラ精油、ベルガモット精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油、クラリセージ精油、クローブ精油、タイム精油、フェンネル精油、マジョラム精油、メリッサ精油、ローズウッド精油、バジル精油、バテ精油、シナモン精油等の天然の精油が挙げられる。このなかでも特に、イランイラン精油、ゼラニウム精油、シダーウッド精油、ユーカリ精油、サイプレス精油、オレンジ精油、グレープフルーツ精油、ライム精油、ペパーミント精油、ローズマリー精油が好ましい。また、これらの精油を複数組み合わせて用いてもよい。
【0032】
精油に含まれる有効成分としては、たとえば、リナロール、酢酸リナリル、1‐リモネン、1‐メントール、α‐ピネン、β‐ピネン、シトラール、シネオール、d‐カンファー、チモール、オイゲノール、ケイヒアルデヒド、カマズレン、ツヤノール‐4、ボルネオール、α‐テルピネオール、β‐テルピネオール、テルピネノール‐4、ゲラニオール、ネロール、α‐サンタロールβ‐サンタロール、カロトール、セドロール、ビリジフロロール、スクラレオール、サフロール、アピオール、ミリスチシン、メチルカビコール、アネトール、スクラレオールオキサイド、マノイルオキサイド、シトロネラールなどが挙げられる。また、これらの有効成分を複数組み合わせて用いてもよい。
【0033】
殺虫成分としては、その用途により公知の揮発性を有する殺虫剤を適宜選択することができる。具体例としては、フェルノトリン、フェンプロパトリン等のピレスロイド系殺虫剤や、フェニトロチオン等の有機リン系、ケルセン等のジフェニルカルニノール系、サリチル酸フェニル等、エンペントリン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル
3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートおよび2,3,5,6−テトラフルオロベンジル 3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、ピレスロイド類などが挙げられる。
【0034】
抗菌成分としては、その用途により公知の揮発性を有する抗菌剤を適宜選択することができる。具体例としては、ヒノキチオール、キサトン、フィトンなどが挙げられる。
【0035】
消臭成分としては、揮発性を有し、かつ、消臭効果を有する物質であれば公知の物質が利用でき、たとえば、生物的消臭機能、感覚的消臭機能、または、化学的消臭機能を有する揮発性の物質が利用できる。生ゴミなどのバクテリアの繁殖に起因する悪臭を消臭する生物的消臭機能を有する物質としては、上述した抗菌成分を消臭成分として利用できる。また、芳香成分を強くして悪臭をごまかすマスキング方式の感覚的消臭機能を有する物質としては、上述した芳香成分が利用できる。悪臭の元となる成分と化学反応し、無臭の成分に変化させてしまう化学的消臭機能を有する物質としては、たとえば、植物の葉、葉柄、実、茎、根、樹皮等の各部位から抽出された植物性消臭成分や、乳酸、グルコン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸等の有機酸、各種アミノ酸およびこれら塩、グリオキサール、酸化剤、フラボノイド類、カテキン類、ポリフェノール類などを用いることができる。なお、植物性消臭成分を得るための植物の種類としては、特に限定されないが、たとえば、カタバミ、ドクダミ、ツガ、イチョウ、クロマツ、カラマツ、アカマツ、キリ、ヒイラギモクセイ、ライラック、キンモクセイ、フキ、ツワブキ、茶またはレンギョウ等が好ましい。また、これらの他も、植物性消臭成分を得るための植物として、モクセイ科、マツ科植物、ツバキ科植物、または、これらの植物から誘導培養された植物細胞培養系等も使用することができる。
【0036】
−マイクロカプセル−
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置およびそのカートリッジに用いられるマイクロカプセルは、公知のマイクロカプセル製造方法を利用して作製することができる。マイクロカプセル製造方法としては、大別すると化学的方法、物理化学的方法、および機械的方法が挙げられる。そして、(1)化学的方法としては、たとえば、懸濁重合法、ミニエマルション重合法、エマルション(乳化)重合法、析出重合法、分散重合法、界面重合法、液中硬化法が挙げられ、(2)物理化学的方法としては、たとえば、液中乾燥法、転相乳化法、コアセルベーション法が挙げられ、(3)機械的方法としては、たとえば、スプレードライ法、ヘテロ凝集法が挙げられる(たとえば、「ナノ・マイクロカプセル調整のキーポイント」、田中眞人、株式会社テクノシステム参照)。
【0037】
これらのマイクロカプセル化の方法の中でも、通常の場合、界面重合法や、コアセルベーション法等が好ましい。マイクロカプセルの製造は、界面重合法を利用した場合、たとえば、以下のように実施することができる。まず、マイクロカプセルの芯材を構成する原料として揮発性成分を、疎水性の有機溶媒に溶解または分散させて調製した油相を準備する。次に、この油相を水溶性高分子を溶解した水相中に投入し、ホモジナイザー等の攪拌手段により乳化分散する。そして得られた乳化液を、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こさせる。これにより、揮発性成分を含む芯材が外殻材で被覆されたマイクロカプセルを得ることができる。
【0038】
なお、マイクロカプセルを構成する外殻材としては、加熱によって溶解したり熱分解により破壊される材料が利用される。このような材料としては、融点が85℃〜135℃前後ぐらいの有機材料を利用することが好ましい。なお、融点は、85℃〜105℃の範囲がより好ましい。融点が85℃未満では、第一の本実施形態のカートリッジや、第一の本実施形態のカートリッジが取り付けられた状態の揮発性成分揮散用装置が高温環境下に放置された場合に、マイクロカプセルの外殻材が自発的に溶解し、揮発性成分が外部へと揮散してしまう場合がある。また、融点が135℃を超える場合には加熱部で加熱しても、マイクロカプセルの外殻材が溶解せず、揮発性成分が外部へと揮散されない場合がある。
【0039】
外殻材の具体例としては、たとえば、ゼラチン、ロジン、アラビアゴム、シェラック、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、エポキシ、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリアミド、ウレア等が挙げられる。また、芯材として、揮発性成分と共に併用可能な疎水性の有機溶媒としては、沸点300℃以下の有機溶媒が好ましく、たとえば、エステル類の他、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1−メチル−1−ジメチルフェニル−2−フェニルメタン、1−エチル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、1−プロピル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、トリアリルメタン(たとえば、トリトルイルメタン、トルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(たとえば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(たとえば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(たとえば、ヘキサヒドロターフェニル)、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0040】
マイクロカプセルの平均粒径としては、特に限定されないが、10μm〜3000μmの範囲内が好ましく、150μm〜2000μmの範囲内がより好ましく、250μm〜550μmの範囲内がさらに好ましい。平均粒径が10μm未満の場合、マイクロカプセルの全質量に占める揮発性成分の含有割合が小さくなり過ぎるために、十分な濃度で揮発性成分を揮散させることが困難となる場合がある。また、平均粒径が3000μmを超える場合、マイクロカプセルの機械的強度が低下する場合がある。このため、第一の本実施形態のカートリッジや、第一の本実施形態のカートリッジが取り付けられた状態の揮発性成分揮散用装置を折り曲げたり押さえつけたりするなどにより、マイクロカプセルに圧力が加わった際に、マイクロカプセルが容易に破壊され、意図しないタイミングで揮発性成分が外部に揮散され易くなる。
【0041】
−金属部材および揮発性成分保持体−
次に、第一の本実施形態のカートリッジを構成する主要部材である金属部材および揮発性成分保持体について説明する。第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置およびこれら装置の第一の本実施形態のカートリッジに用いられる金属部材は、セラミックスや樹脂などの他の材料と比べて、熱伝導性に優れる金属材料から構成される。このため、金属部材は、加熱部により発せられた熱を効率的に吸収すると共に、吸収した熱を揮発性成分含有部材へと効率的に伝達することができる。金属部材を構成する金属材料としては、公知の金属材料が利用できるが、熱伝導性、加工・成形性、入手容易性などを考慮すると、アルミニウム、鉄、銅や、ステンレス等の合金を用いることが好ましい。
【0042】
金属部材の形状は、加熱部の発する熱を揮発性成分含有部材へと効率的に伝達する伝熱部材としての機能が確保できるのであれば特に限定されないが、たとえば、容器状、筒状、板状、膜状とすることができる。なお、金属部材の形状が容器状である場合は、当該容器には開口部が設けられる。また、膜状の金属部材を用いる場合には、無電解メッキ法などの公知の金属膜成膜方法により、揮発性成分保持体表面に金属膜が形成される。また、1つの揮発性成分含有部材に接触して配置される金属部材の数は、通常、1つまたは2つであるが、3つ以上であってもよい。また、金属部材が、揮発性成分含有部材の周囲を囲うように配置される場合、揮発性成分含有部材は、金属部材のみを介して間接的に揮発性成分保持体により保持されていてもよい。
【0043】
揮発性成分含有部材を効率的に加熱するという観点からは、揮発性成分含有部材に接触して配置される金属部材の形状は、容器状、または、容器状に相当する形状であることが好ましい。なお、「容器状に相当する形状」とは、容器状と略同様に、揮発性成分含有部材を囲むように、金属部材が揮発性成分含有部材の周囲に接触できる形状を意味する。容器状に相当する形状の具体例としては、たとえば、i)筒状の金属部材、および、この筒状の金属部材の一方の開口部を封止するように配置された板状の金属部材の組み合わせにより形成される形状や、ii)揮発性成分保持体に設けられた貫通孔の内壁面全面を被覆する膜状の金属部材と、貫通孔の一方の開口部を封止するように配置された板状の金属部材との組み合わせにより形成される形状、などを挙げることができる。
【0044】
また、揮発性成分含有部材を効率的に加熱するという観点からは、金属部材の形状を容器状や、容器状に相当する形状とする以外にも、揮発性成分含有部材が金属部材を内包するように金属部材を揮発性成分含有部材に接触させることも有効である。この場合の金属部材の形状としては、たとえば、1つの金属部材の一部分または全体の形状を、棒状や、板状とすることができる。また、この他にも、揮発性成分含有部材を効率的に加熱するために、金属部材の揮発性成分含有部材と接触する面に粗面化処理を施したり、周期的な凹凸を設けることも好ましい。
【0045】
また、第一の本実施形態のカートリッジを装置本体に取り付けた際に、金属部材が加熱部と接触する場合、金属部材が加熱部と対向して接触する面(対向面)には凸部を設けることが好ましい。対向面に凸部を設けることにより、第一の本実施形態のカートリッジを装置本体に取り付けた際に、金属部材と加熱部との接触不良が発生するのを抑制し易くなる。また、加熱部が、セラミックス製の板状の発熱体と、この板状の発熱体の両端に設けられた1対の電極と、を有する1個の加熱素子から構成される場合において、対向面に対して加熱素子のサイズが小さいときは、ショートしてしまう可能性がある。金属部材と加熱素子とが接触すると、1組の電極も金属部材に接触するためである。したがって、この場合、ショートを防止するために、1対の電極間の距離よりも、接触面の幅の狭い凸部を対向面に設けることが好ましい。
【0046】
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置およびそのカートリッジに用いられる揮発性成分保持体は、2つ以上の揮発性成分充填部を有するものであれば、その形状、構造および構成材料は特に限定されるものではない。また、揮発性成分充填部は、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部とを有するのであればその構成は特に限定されない。しかし、通常、揮発性成分充填部は、揮発性成分保持体に設けられた貫通孔と、少なくとも一部が揮発性成分含有部材に接触するように揮発性成分保持体に固定配置された金属部材と、貫通孔の内壁および/または金属部材により形成される内部空間に充填された揮発性成分含有部材と、開口部;すなわち、揮発性成分含有部材表面が、貫通孔の内壁および/または金属部材と接触せずに露出している部分とを有する。
【0047】
なお、装置本体に対する第一の本実施形態のカートリッジの脱着性等の実用性を考慮すれば、揮発性成分保持体は、厚み方向に貫通する2つ以上の貫通孔を有する平板状部材から構成されていることが好ましい(以下、当該揮発性成分保持体を用いたカートリッジを、「平板状カートリッジ」と称す場合がある)。この場合、貫通孔内および/またはその近傍に、揮発性成分含有部材および金属部材が配置される。また、第一の本実施形態の平板状カートリッジを装置本体に取り付けた際には、加熱部は、第一の本実施形態の平板状カートリッジの一方の側の面にのみ位置することが好ましい。この場合、第一の本実施形態の平板状カートリッジの他方の側の面、すなわち、加熱部が位置しない面の貫通孔開口部から揮発性成分を揮散させることにより、加熱部が揮発性成分により汚染されるのを防ぐことができる。
【0048】
揮発性成分保持体の構造および揮発性成分保持体を構成する材料は、特に限定されないが、隣合う位置に保持される2つの揮発性成分充填部間での熱伝導を阻害し易いものであることが特に好ましい。隣合う位置に保持される2つの揮発性成分充填部間での熱伝導を阻害するという観点からは、揮発性成分保持体中において、隣合う位置に保持される2つの揮発性成分充填部の最短距離は、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることが好ましい。なお、当該最短距離の上限は特に限定されないが、実用上は1000μm以下であることが好ましい。また、揮発性成分保持体を構成する材料、特に、個々の揮発性成分充填部の周囲に配置される材料、および、隣合う位置に保持される2つの揮発性成分充填部間に配置される材料としては、i)ABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの樹脂や、セラミックスやガラスなど金属酸化物などのように、金属と比べて熱伝導性の低い固体材料、ii)多孔質体や、繊維状物質または中空粒子の集合体などのような空隙を有する固体材料、および、iii)上記i)およびii)に示す材料から選択した2種類以上の材料を組み合わせた複合材料、から選択される材料を用いることが特に好ましい。さらに、個々の揮発性成分充填部の周囲の空間、および/または、隣合う位置に保持される2つの揮発性成分充填部間の空間には、上述した材料のみが配置されていてもよいが、第一の本実施形態のカートリッジの機械的強度が阻害されない範囲で、部分的に単なる空間(空気層)が設けられていてもよい。なお、空隙を有する固体材料の空隙率としては、25%〜45%の範囲内が好ましく、20%〜30%の範囲内がより好ましい。空隙率を上記範囲内とすることにより、熱伝導を阻害する効果と、揮発性成分保持体の機械的強度とをバランスよく両立させることが容易となる。
【0049】
揮発性成分充填部の配列態様は特に限定されないが、基本的に、装置本体に設けられる加熱部の配列態様に合わせた形で決定される。たとえば、装置本体に設けられる2つ以上の加熱部が平面方向に配列され、揮発性成分充填部が平面方向に配列され、かつ、第一の本実施形態のカートリッジが装置本体に取り付けられた際に、1つの加熱部により1つの揮発性成分充填部を加熱する場合、加熱部の配列が三角配列であれば、揮発性成分充填部の配列も三角配列とされ、加熱部の配列が四角配列であれば、揮発性成分充填部の配列も四角配列とされ、加熱部の配列が千鳥配列であれば、揮発性成分充填部の配列も千鳥配列とされる。
【0050】
なお、揮発性成分充填部を構成する金属部材を加熱する加熱部は、個々の揮発性成分充填部に対応して1つずつ設けられると共に、少なくとも1つの加熱素子から構成される。なお、加熱効率の更なる向上等のために、加熱部は2つ以上の加熱素子から構成されていてもよい。この場合、1つの揮発性成分充填部を構成する金属部材を加熱するために用いられる2つ以上の加熱素子が1組を成すように装置本体に設けられる。
【0051】
−金属部材、揮発性成分保持体およびカートリッジの具体例−
図1は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる金属部材の一例を示す模式断面図である。図1に示す金属製容器(容器状の金属部材)10は、側壁部20Aおよび底面部20Bから構成される底付き円筒体20からなり、円筒体20の軸方向に対して底面部20Bの反対側には開口部22が設けられている。
【0052】
図2は、図1に示す金属製容器10内にマイクロカプセルが配置された状態を示す模式断面図であり、図中、図1に示すものと同様の機能・構成を有する部分については同一の符号が付してある。図2に示す例では、円筒体20の内部24に、複数個のマイクロカプセル30の集合体からなる揮発性成分含有部材が配置されている。このマイクロカプセル30は、揮発性成分を含有する芯材32と、芯材32を被覆する外殻材34とから構成されている。ここで、2つ以上の金属製容器10を有するカートリッジが装置本体に取り付けられた状態において、不図示の加熱素子により円筒体20が加熱されると、円筒体20の側壁部20Aおよび底面部20Bの内壁面を介して、マイクロカプセル30が加熱される。そして、マイクロカプセル30が加熱されると、外殻材34が加熱破壊されると共に、芯材32中に含まれる揮発性成分が、開口部22を経て金属製容器10の外部へと揮散される。
【0053】
図3は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる金属製容器の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、図1に示す金属製容器10の変形例について示したものである。なお、図中、図1に示すものと同様の機能・構成を有する部分については同一の符号を付してある。図3に示す金属製容器12は、図1に示す金属製容器10に対して、さらに、側壁部20Aの開口部22側の端部に沿って鍔部20Cが設けられると共に、底面部20Bの外側面に凸部20Dが設けられた構造を有する。また、金属製容器12の底面部20Bの内側面には、この内側面に対して垂直に伸びる棒状または板状の金属部材20E(図中、点線で示される部分)がさらに設けられていてもよい。
【0054】
図4は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの一例を示す模式断面図であり、具体的には、図3に示す金属製容器12を用いた平板状カートリッジが、装置本体に取り付けられた状態の一例を示す模式断面図である。なお、図4中、金属製容器12内の揮発性成分含有部材については記載を省略してある。
【0055】
図4に示す平板状カートリッジ50は、平板状の揮発性成分保持体60と、揮発性成分保持体60の厚み方向に貫通するように設けられた円柱状の貫通孔70内に配置された金属製容器12と、金属製容器12内に充填された不図示の揮発性成分含有部材とを有している。ここで、貫通孔70と、金属製容器12と、この金属製容器の開口部22と、金属製容器12内に充填された不図示の揮発性成分含有部材とにより、揮発性成分充填部が構成される。なお、図4中、1つの金属製容器12のみが示されているが、平板状カートリッジ50は、2つ以上の貫通孔70と、これらの貫通孔70内に配置された2つ以上の金属製容器12を有するものである。また、この点は後述する図5〜図7においても同様である。
【0056】
揮発性成分保持体60の厚みは、金属製容器12の軸方向長さと略同じ厚みを有し、貫通孔70の直径と金属製容器12の直径とは略同一である。そして貫通孔70の一方の開口部近傍は、金属製容器12の鍔部20Cと嵌合するように、貫通孔70の中央部よりも若干直径を大きくした直径拡大部70Aが設けられている。このように、金属製容器12を、貫通孔70内に配置する際に、鍔部20Cと貫通孔70の開口部近傍に設けられた直径拡大部70Aとを嵌合させることで、平板状カートリッジ50を組み立てる際に、貫通孔70の軸方向に対する金属製容器12の位置ずれを確実に防止することができる。なお、平板状カートリッジ50を組み立てる際に、たとえば、治具などを用いることにより、貫通孔70の軸方向に対する金属製容器12の位置ずれを防止できる場合、鍔部20Cおよび直径拡大部70Aを設けなくてもよい。
【0057】
また、金属製容器12の底面部20Bの外側面と、揮発性成分保持体60の取り付け面80(図4中、揮発性成分保持体60の下側の面)とは略面一となるように、貫通孔70中に金属製容器12が配置されている。なお、金属製容器12は、貫通孔70内に嵌め込むように配置して固定してもよいし、接着剤を用いて貫通孔70内に固定してもよい。
【0058】
平板状カートリッジ50は、使用に際しては、装置本体の一部を構成する基板100の表面に配置された加熱素子110を有する装置本体に取り付けられる。図4に示す例では、加熱素子110は、セラミックス製の平板状発熱体112Aと、その両端面に設けられた1対の電極112Bと、から構成されている。そして、加熱素子110は、平板状発熱体112Aの厚み方向と、基板100の厚み方向とが一致するように、基板100の表面に配置されている。なお、図4中、基板100や加熱素子110以外のその他の装置本体を構成する部材については記載を省略してある。
【0059】
ここで、図4に示すように、金属製容器12と加熱素子110とは、底面部20Bの外側面に設けられた円形状の凸部20Dと、加熱素子110の平板状発熱体112Aの基板100が設けられた側と反対側の面とにより接触する。これに加えて、平板状カートリッジ50は、通常、基板100側に押しつけられるような力が作用するように装置本体に取り付けられる。このため、揮発性成分保持体60や、基板100に多少の反りや歪みがあったとしても、金属製容器12と加熱素子110との間で、接触不良が発生するのを抑制することができる。なお、凸部20Dの平面形状は、円形状ではなく、四角形状の多角形状や、楕円形状等としてもよい。
【0060】
また、金属製容器12の凸部20Dの幅は、平板状発熱体112Aの幅より十分に狭いものとされている。このため、平板状カートリッジ50を装置本体に取り付けた場合、取り付け位置が正常であれば凸部20Dを介して加熱素子110の平板状発熱体112A部分のみに接触する。また、装置本体に対する平板状カートリッジ50の取り付け位置が取り付け面80と並行な方向に多少ずれたとしても、凸部20Dが、平板状発熱体112Aの両端に設けられた1対の電極112Bと接触するのを防止できる。このため、加熱素子110のショートの発生を防ぐことができる。
【0061】
なお、加熱素子110を構成する平板状発熱体112Aの幅が、金属製容器12の底面部20Bの直径よりも十分に大きく、かつ、底面部20Bの外側面が取り付け面80よりも突出している場合には、凸部20Dを設けなくてもよい。加熱素子110を構成する1対の電極112Bが、基板100側に設けられる場合も、凸部20Dを設けなくてもよい。また、平板状カートリッジ50を装置本体に取り付けた場合、加熱素子110と、金属製容器12とは、非接触かつ近接するように配置されてもよい。
【0062】
図5は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの他の例を示す模式断面図であり、具体的には、カートリッジを装置本体に取り付けた場合に、1つの金属製容器に対して2つの加熱素子が接触するタイプのカートリッジについて示したものである。図5中、揮発性成分含有部材や、加熱素子やこの加熱素子をその表面に固定する基板以外のその他の装置本体の構成については記載を省略してある。また、図5中、図4に示すものと実質的に同一の部材については同じ符号を付してある。
【0063】
図5に示す平板状カートリッジ52は、揮発性成分保持体62と、この揮発性成分保持体62に設けられた貫通孔72により保持される金属製容器14と、円錐状の金属製容器14内に充填された不図示の揮発性成分含有部材とを有する。ここで、貫通孔72と、金属製容器14と、この金属製容器の開口部26と、金属製容器14内に充填された不図示の揮発性成分含有部材とにより、揮発性成分充填部が構成される。
【0064】
揮発性成分保持体62は、その厚み方向に貫通するように設けられた貫通孔72を有し、この貫通孔72の直径は、揮発性成分保持体62の厚み方向に対して取り付け面82側に近づくに従い小さくなっている。また、金属製容器14は、略円錐形の容器形状を成す筐体から構成され、円錐形の底面部に相当する部分に円形の開口部26が設けられている。そして、金属製容器14は、開口部26側が、貫通孔72の直径が最大となる側の開口部側となるように貫通孔72内に配置され、金属製容器14の開口部26が設けられた側と反対側の部分(先端側部分28)は、揮発性成分保持体62の取り付け面82の外側に飛び出すように位置している。さらに、先端側部分28の外側面には、凸部28Aが設けられている。
【0065】
一方、平板状カートリッジ52と組み合わせて用いられる装置本体は、基板102と、この基板102表面に設けられかつ断面形状が逆台形状の四角錐台形状の凹部102Aの左側壁面および右側壁面に各々配置された2つの加熱素子110L、110Rと、を有する。
【0066】
ここで、図5に示すように、金属製容器14と加熱素子110L、110Rとは、平板状カートリッジ52を、装置本体に取り付ける際に、取り付け面82に対して突出している金属製容器14の先端側部分28が、基板102表面に設けられた凹部102A内に貫入することにより接触する。なお、金属製容器14と加熱素子110L、110Rとの接触は、具体的には、金属製容器14の先端側部分28の外側面に設けられた凸部28Aと、加熱素子110L、110Rの平板状発熱体112A部分のみとが接触する。なお、凸部28Aの幅は、平板状発熱体112Aの幅より十分に狭いものとされている。このため、平板状カートリッジ52を装置本体に取り付けた場合、取り付け位置が正常であれば凸部28Aを介して加熱素子110L、110Rの平板状発熱体112A部分のみに接触する。また、取り付け位置が多少ずれたとしても、凸部28Aが平板状発熱体112Aの両端に設けられた1対の電極112Bと接触するのを防止できるため、ショートの発生を防ぐことができる。
【0067】
さらに、図5においては、金属製容器14の先端側部分28が基板102の凹部102Aに貫入するように平板状カートリッジ52が装置本体に取り付けられる。このため、図5に示すカートリッジ取り付け方式は、図4に示すカートリッジ取り付け方式と比べて、平板状カートリッジ52を装置本体に取り付けた際に、取り付け面82と並行な方向に対する平板状カートリッジ52の位置ずれをより確実に防止できる。これに加えて、図5に示すカートリッジ取り付け方式では、1つの金属製容器14に対して2つの加熱素子110L、110Rが接触するため、図4に示すカートリッジ取り付け方式よりも、加熱効率が高い。なお、図5に示すケースでは、基板102の凹部102Aの側壁面に、平板状の加熱素子110L、110Rの代わりに、巻回させたニクロム線などのような発熱線からなる線状の加熱素子を配置してもよい。また、図5に示す例において、金属製容器14の先端側部分28の外周面に、凸部28Aを円輪状に設けると共に、円輪状に設けられた凸部28Aに対応させて、加熱素子110を円輪状に設けてもよい。
【0068】
図6は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの一例を示す模式断面図であり、金属部材として非容器形状のものを用い、加熱素子による金属部材の加熱が非接触で行われるタイプのカートリッジについえ示したものである。図6中、揮発性成分含有部材や、加熱素子やこの加熱素子をその表面に固定する基板以外のその他の装置本体の構成については記載を省略してある。また、図6中、図4に示すものと実質的に同一の部材については同じ符号を付してある。
【0069】
図6に示す平板状カートリッジ54は、揮発性成分保持体64と、この揮発性成分保持体64に設けられた貫通孔74により保持される円筒状金属部材40と、を有する。ここで、貫通孔74と、円筒状金属部材40と、この円筒状金属部材40の両側に設けられた開口部と、円筒状金属部材40内の空間(図中、円筒状金属部材40および点線で囲まれた空間)に充填された不図示の揮発性成分含有部材とにより、揮発性成分充填部が構成される。
【0070】
揮発性成分保持体64は、その厚み方向に貫通するように設けられた貫通孔74を有し、この貫通孔74の直径は、円筒状金属部材40の外径と略一致する。そして、円筒状金属部材40は、貫通孔74内に嵌め込むようにして固定されている。また、揮発性成分含有部材(図中、不図示)は、円筒状金属部材40内の空間に収まるように円筒状金属部材40を介して保持される。なお、符号40で示される金属部材は、無電解メッキ法等により成膜された金属膜から構成されるものであってもよい。
【0071】
平板状カートリッジ54は、使用に際しては、装置本体の一部を構成する基板100の表面に配置された加熱素子110Wを有する装置本体に取り付けられる。図6に示す加熱素子110Wは、基本的には図4に示す加熱素子110と同様の構成を有するものであるが、図4に示す加熱素子110と比べて、平板状発熱体112Aの幅が、貫通孔74の直径より長いタイプのものである。なお、図6中、基板100や加熱素子110W以外のその他の装置本体を構成する部材については記載を省略してある。
【0072】
カートリッジ54を装置本体に取り付けた際には、円筒状金属部材40と、加熱素子110Wとは非接触かつ近接する位置に配置される。また、加熱素子110Wを構成する平板状発熱体112Aの幅が、貫通孔74の直径よりも長いため、平板状発熱体112Aの真上に円筒状金属部材40が配置されることになる。それゆえ、加熱素子110Wから発せられる放射熱は、まず、熱伝導性の良い円筒状金属部材40に効率的に吸収され、続いて、加熱された円筒状金属部材40の熱が円筒状金属部材40と接触する揮発性成分含有部材(図中、不図示)に伝達される。
【0073】
なお、加熱により揮発した揮発性成分によって加熱素子110W等の装置本体側が汚染されるのを防止したり、揮発性成分の揮散する方向を、取り付け面84と反対側のみに制御するために、貫通孔74の取り付け面84側の開口部と、加熱素子110Wとの間を遮蔽するようにポリイミドフィルムなどの耐熱性フィルムを配置してもよい。
【0074】
図7は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成するカートリッジの一例を示す模式断面図であり、金属部材として筒状金属部材と、板状金属部材とを組み合わせて用いるタイプのカートリッジについえ示したものである。図7中、揮発性成分含有部材や、加熱素子やこの加熱素子をその表面に固定する基板以外のその他の装置本体の構成については記載を省略してある。また、図7中、図4に示すものと実質的に同一の部材については同じ符号を付してある。
【0075】
図7に示す平板状カートリッジ56は、揮発性成分保持体66と、この揮発性成分保持体66の厚み方向に貫通するように設けられた貫通孔76内に保持される円筒状金属部材42と、貫通孔76の取り付け面86側の開口部に蓋をするように貫通孔76内に保持される円板状金属部材44と、円筒状金属部材42および円板状金属部材44により形成される内部空間に充填された不図示の揮発性成分含有部材と、を有する。ここで、貫通孔76と、円筒状金属部材42および円板状金属部材44と、円筒状金属部材42の円板状金属部材44が配置されていない側の開口部と、円筒状金属部材42および円板状金属部材44により形成された内部空間内に充填された不図示の揮発性成分含有部材とにより、揮発性成分充填部が構成される。
【0076】
円板状金属部材44の直径は、円筒状金属部材42の外径よりも大きいものとされている。また、貫通孔76の直径は、取り付け面86側近傍部分を除き、円筒状金属部材42の外径と略一致する。また、貫通孔76の取り付け面86側近傍部分は、貫通孔76の開口部に蓋をするように円板状金属部材44の直径と略一致するように、貫通孔70の中央部よりも若干直径を大きくした直径拡大部76Aが設けられている。そして、貫通孔76内において、円筒状金属部材42の取り付け面86側の開口部を封止するように円板状金属部材44が配置されることにより、これら2つの金属部材42、44は、容器形状を成している。ここで、揮発性成分含有部材は、これら2つの金属部材42、44により形成される容器形状の内部空間に配置される。
【0077】
平板状カートリッジ56は、使用に際しては、図4に示すものと同様の装置本体に取り付けられる。図7中、基板100や加熱素子110以外のその他の装置本体を構成する部材については記載を省略してある。
【0078】
ここで、図7に示すように、円板状金属部材44と加熱素子110とは、円板状金属部材44の加熱素子110と対向する面(底面)に設けられた凸部44Aと、加熱素子110の平板状発熱体112Aの基板100が設けられた側と反対側の面とにより接触する。これに加えて、平板状カートリッジ50は、通常、基板100側に押しつけられるような力が作用するように装置本体に取り付けられる。このため、揮発性成分保持体66や、基板100に多少の反りや歪みがあったとしても、円板状金属部材44と加熱素子110との間で、接触不良が発生するのを抑制することができる。また、円板状金属部材44は、円筒状金属部材42と接触しているため、加熱素子110の熱は、円板状金属部材44を介して円筒状金属部材42へと速やかに伝達される。それゆえ、加熱素子110による加熱を行った場合、揮発性成分含有部材は、円筒状金属部材42および円板状金属部材44の双方を介して加熱される。
【0079】
なお、円板状金属部材44の底面と反対側の面(上面)の中央部に、この面に対して垂直に伸びる棒状または板状の金属部材44B(図7中、点線で示される部分)が円板状金属部材44と一体となって設けられていてもよい。この場合は、加熱効率をさらに向上させることができる。また、円筒状金属部材42は、無電解メッキ法等により形成された金属膜でもよい。さらに、カートリッジ56の構造を簡素化するために、必要に応じて円筒状金属部材42を設けなくてもよい。
【0080】
<第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置>
第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備える。
【0081】
ここで、カートリッジ(第二の本実施形態の揮発性成分揮散用カートリッジ)は、互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分と、該揮発性成分に接触する金属部材と、開口部と、を有し、カートリッジが揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、加熱部に金属部材が接触または近接する位置に、金属部材が配置されることを特徴とする。
【0082】
第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置では、揮発性成分充填部内に揮発性成分が充填されている。このため、装置本体にカートリッジが取り付けられた状態で、揮発性成分と接触する金属部材が加熱部により加熱されると、金属部材を介して加熱された揮発性成分がカートリッジの外部に揮散される。それゆえ、押圧力などの機械的方法を用いることなく揮発性成分を揮散させることができる。また、揮発性成分は、2つ以上の揮発性成分充填部に分割して収納されているので、加熱部により個々の揮発性成分充填部毎に選択して加熱すれば、揮発性成分を所定量づつ必要に応じて揮散させることができる。
【0083】
なお、第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置では、開口部を、加熱により破壊される被膜により封止してもよい。この場合、加熱により開口部を封止する被膜が加熱破壊されない限りは、揮発性成分が自然に揮発して失われることもない。この場合、不使用時に揮発性成分揮散用装置、あるいは、カートリッジ部分を密閉梱包しなくても揮発性能が劣化するのを確実に防ぐことができる。
【0084】
以上に説明した第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、揮発性成分を有するカートリッジが脱着可能に構成されている。このため、カートリッジを交換することにより装置本体は何度でも再利用できる。これに加えて、カートリッジ交換に際して、異なる種類の揮発性成分を有するカートリッジを利用すれば、種々の揮発性成分を揮散させることもできる。さらに、使用を終えたカートリッジについても、洗浄処理の後に、再度、揮発性成分含有部材を補充することにより、リサイクルすることも可能である。以下に、第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられるカートリッジの詳細について説明する。
【0085】
<第二の本実施形態のカートリッジ>
第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる第二の本実施形態のカートリッジでは、当該カートリッジ内の一の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類と、当該カートリッジ内の他の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類とは、同一であっても異なっていてもよい。前者の場合であれば、たとえば、同じ種類の揮発性成分を何度も繰り返し揮散させることができる(第一の揮散態様)。また、後者の場合であれば、たとえば、多種類の揮発性成分のうちの1種類を選択して揮散させたり(第二の揮散態様)、多種類の揮発性成分のうちから選択された2種類以上組み合わせて略同時に揮散させることができる(第三の揮散態様)。
【0086】
また、カートリッジが有する揮発性成分充填部の数は、2つ以上であればよく、具体的には、カートリッジと組み合わせて用いる装置本体に設けられた加熱部の数に応じて適宜決定することができる。しかしながら、第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、上記第一〜第三の揮散態様として例示したように、原理的に、揮発性成分を多様な形態で揮散させることが可能である。このような特性を十分に活用できるようにするためには、カートリッジが有する揮発性成分充填部の数は、9個以上であることが好ましく、15個以上であることがより好ましく、16個以上であることがさらに好ましいい。なお、カートリッジが有する揮発性成分充填部の数の上限は特に限定されるものではないが、実用上は25個以下とすることが好ましい。
【0087】
カートリッジの形状は特に限定されず、基本的には、装置本体に脱着容易な形状とされる。なお、装置本体が可撓性を有する平板状の部材から構成される場合には、カートリッジも、可撓性を有する平板状の部材から構成されることが好ましい。なお、装置本体やカートリッジに可撓性を付与する方法は特に限定されないが、これら部材を構成する主材料として樹脂を用いることが好ましい。次に、第二の本実施形態のカートリッジの詳細について説明する。
【0088】
−揮発性成分−
揮発性成分としては、第一の本実施形態のカートリッジに用いられるものと同様のものが利用できる。但し、第二の本実施形態のカートリッジの使用環境温度(−20℃〜60℃程度)において、揮発性成分が揮発して失われるのを防ぐために、使用する揮発性成分は、好ましくは40℃以下の温度域、より好ましくは60℃以下の温度域において固体状態を示すものであることが好ましい。なお、揮発性成分充填部の開口部に、当該開口部を封止する被膜を設ける場合は、60℃以下の温度域において、液状状態を示す揮発性成分を用いてもよい。なお、当該被膜を構成する材料としては、第一の本実施形態のカートリッジに用いられるマイクロカプセルの外殻材と同様の材料を用いることができる。なお、被膜は、揮発性成分充填部に揮発性成分を充填した後に塗布等により形成したり、予めフィルム状としたものを開口部に貼りつけるなどにより形成できる。
【0089】
−金属部材および揮発性成分保持体−
第二の本実施形態のカートリッジを構成する主要部材である金属部材および揮発性成分保持体としては、第一の本実施形態のカートリッジと同様のものが利用できる。なお、第二の本実施形態のカートリッジにおける揮発性成分充填部は、揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分を用いる点を除けば、第一の本実施形態のカートリッジにおける揮発性成分充填部と同様の構成を有する。
【0090】
−金属部材、揮発性成分保持体およびカートリッジの具体例−
第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置に用いられる金属部材、揮発性成分保持体およびカートリッジの具体例としては、図1、図3〜図7に示すものが挙げられる。但し、図1に示す例においては、金属製容器10内に揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分自体が充填され、図3および図4に示す例においては、金属製容器12内に揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分自体が充填され、図5に示す例においては、金属製容器14内に揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分自体が充填される。また、図1、図3〜5に示す例において、揮発性成分が、使用環境温度(−20℃〜60℃程度)において液状を示す場合は、開口部22,26に被膜が設けられることが特に好ましい。
【0091】
また、図6に示す例においては、貫通孔74内の空間(図中、円筒状金属部材40および点線で囲まれた空間)に揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分が充填され、揮発性成分が、使用環境温度(−20℃〜60℃程度)において液状を示す場合は、貫通孔74の両側の開口部に被膜が設けられることが特に好ましい。
【0092】
また、図7に示す例においては、円筒状金属部材42および円板状金属部材44により形成される容器形状の内部空間に、揮発性成分含有部材の代わりに揮発性成分が充填される。そして、揮発性成分が、使用環境温度(−20℃〜60℃程度)において液状を示す場合は、円筒状金属部材42の円板状金属部材44により封止された開口部と反対側の開口部に被膜を設け、開口部が閉じられることが特に好ましい。
【0093】
<装置本体>
第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置および第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置を構成する装置本体には、2つ以上の加熱部が設けられる。この加熱部の数や配置は、装置本体と組み合わせて用いるカートリッジに応じて適宜選択できる。この加熱部は、カートリッジが装置本体に取り付けられた場合に、個々の揮発性成分充填部に対応するように装置本体に設けられる。なお、カートリッジとして平板状カートリッジを用いる場合、加熱部は、基板上に露出した状態で配置されることが好ましい。これにより、カートリッジを装置本体に取り付けた際に、揮発性成分充填部に接触する金属部材に接触または近接させることが容易となる。
【0094】
加熱部は、1つ以上の加熱素子から構成される。この加熱素子としては、i)セラミックス製の発熱体を用いた発熱チップを用いた加熱素子、ii)ニクロム線等の発熱線をコイル状に巻回させるなどにより1つの領域を選択的かつ集中的に加熱できるようにした加熱素子、iii)互いに離間しかつ絶縁された2本の導線を交差させた領域で電流を流した際に、この交差する領域近傍に高周波を発生させることで1つの領域を選択的かつ集中的に加熱できるようにした加熱素子などが利用できる。
【0095】
なお、加熱部の数が4つ以上である場合、以下に説明するように加熱部を配置して制御することが好適である。すなわち、加熱部を構成する加熱素子として上記i)やii)に示す加熱素子を用いる場合には、行方向と列方向との交差点上に加熱素子を配置することで、基板の平面方向にマトリックス状に加熱部を設けることができる。この場合、加熱素子は、たとえば、行方向の電流を制御する配線(行配線)、および、列方向の電流を制御する配線(列配線)に接続した状態で、電流のON/OFFを制御することで、特定の加熱部のみを加熱状態/非加熱状態とすることができる。
【0096】
また、加熱部を構成する加熱素子として、上記iii)に示す発熱チップを用いる場合には、2本以上の導線を行方向に配置すると共に、行方向に配置された導線に対して交差するように2本以上の導線を列方向に配置することで、基板の平面方向にマトリックス状に加熱素子を設けることができる。このような構成を採用した場合、行方向および列方向の導線の中から、特定の行方向および列方向の導線を選択して電流を流すことにより、特定の加熱部のみを加熱することができる。このように加熱部を構成する加熱素子は、電気的にON/OFF制御される。このため、特許文献1に開示されるよう揮発性成分揮散用装置に押圧力を加えなくても、加熱素子を所望のタイミングで電気的に制御することにより、揮発性成分を揮散させることができる。
【0097】
上記i)に示す加熱素子として用いられる発熱チップとしては、低純度の半導体材料など、通電により発熱する材料を用いたものが利用できる。このような発熱チップの電気的特性としては、抵抗加熱に利用可能なものであれば特に限定されるものではないが、加熱対象となる揮発性成分充填部を構成する金属部材のサイズなどを考慮すると、電圧3.3V〜5.0Vにおいて抵抗が15Ω〜33Ωであることが好ましい。発熱チップの形状としては特に限定されないが、通常は、円板状、角板状などの平板状のものが好ましく、表面実装性に加えて市販品の入手容易性等の観点からは角板状であることが好ましい。また、発熱チップのサイズとしては、加熱部の大きさに応じて選択されるが、たとえば、角板状の発熱チップであれば、縦0.4mm×横0.2mm〜縦3.2mm×横1.6mm程度のものを利用することが好ましい。また、発熱チップとしては、新たに作製したものも利用できるが、市販のチップ抵抗を利用してもよい。
【0098】
上記ii)に示す加熱素子として用いられる発熱線としては、電流を流すことにより発熱するものであれば公知の発熱線が利用できるが、タングステンワイヤー、ニクロム線、ステンレス線、ピアノ線などを用いることができる。発熱線の直径は特に限定されるものではないが、12μm〜200μmの範囲内が好ましく、20μm〜100μmの範囲内がより好ましい。直径が12μm未満では、十分な発熱量が得られなかつたり、断線を起こしやすくなる場合があり、直径が200μmを超えると、発熱制御が難しくなる場合がある。なお、発熱線の発熱量は、発熱線の電気抵抗、電流量、発熱線の直径などを適宜選択することにより調整できる。
【0099】
上記iii)に示す加熱素子は、互いに交差すると共に、電気的には絶縁されるように離間して配置された2本の導線から構成され、2本の導線が交差する領域近傍が高周波が発生する領域(加熱部)となる。このため、この領域内に揮発性成分充填部を配置した状態で、2本の導線に同時に電流を流せば、揮発性成分を揮散させることができる。たとえば、図4〜図7に示した例では、平板状カートリッジ50、52、54、56の貫通孔70、72、74、76の開口部の両側に、2本の導線が交差するように導線を表面に配置した基板を各々配置することができる。なお。導線の直径は特に限定されるものではないが、導線をシート状基材の内部に埋め込む場合には、30μm〜200μmの範囲内が好ましく、50μm〜100μmの範囲内がより好ましい。直径が30μm未満では、断線を起こしやすくなる場合があり、直径が200μmを超えると、装置本体の小型化が困難となる場合がある。
【0100】
加熱素子を構成する発熱線(または導線)や、発熱チップへの電流の供給は、揮発性成分揮散用装置の外部の電源(外部電源)が利用できる。外部電源は、コンセントであってもよいし、電池であってもよい。また、加熱部の加熱/非加熱制御は、手動で行ってもよいが、ICチップや電界効果トランジスタなどから構成された制御手段を利用することが好ましい。たとえば、制御手段は、個々の加熱素子の発熱を制御するために、個々の加熱素子に対応して設けられた電界効果トランジスタと、これら電界効果トランジスタを制御するICチップとを含むものとすることができる。そして、加熱部が揮発性成分揮散用装置の平面方向に対してマトリックス状に設けられている場合には、制御手段を利用して加熱部の加熱/非加熱制御を行うことが好ましい。なお、電源や制御手段は、装置本体の外部に設けられていてもよく、装置本体内に内蔵されていてもよい。
【0101】
<加熱情報を有するカートリッジおよびこれと組み合わせて用いる装置本体>
第一および第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、カートリッジを交換して利用することができる。このため、様々な揮発性成分を用いたカートリッジを利用することが可能である。しかしながら、カートリッジを構成する部材のうち、使用により消耗する消耗部材の種類;すなわち、第一の本実施形態のカートリッジおよび第二の本実施形態のカートリッジに用いる揮発性成分の種類や、第一の本実施形態のカートリッジに用いるマイクロカプセルを構成する外殻材の種類が異なると、これら材料の種類に応じて加熱条件を調整する必要がある。
【0102】
この理由は、たとえば、低温で揮発する揮発性成分を用いたカートリッジから、高温で揮発する揮発性成分を用いたカートリッジに交換した場合に、加熱条件が同じであれば、前者の揮発性成分の揮発が過剰となったり、あるいは、後者の揮発性成分の揮発が不十分となる可能性があるためである。このような問題に対応するためには、カートリッジを交換する度に、カートリッジに用いている消耗部材に応じて、加熱条件を手動で設定し直すことも可能である。しかしながら、このような対応は、手間を要する上に、加熱条件の設定を間違えた場合には、揮発性成分が過剰に揮散したり、あるいは、揮発性成分が殆ど揮発しないという問題を招く場合もある。
【0103】
上述した問題を解決するためには、カートリッジが、加熱部により金属部材を加熱する際の加熱情報を有し、装置本体が、カートリッジが装置本体に取り付けられた状態において、加熱情報を読取る読取部を備えていることが好ましい。
【0104】
ここで、「加熱情報」とは、揮発性成分の揮散量を所望の最適範囲とするための、金属部材を加熱する際の加熱温度や加熱時間などの加熱処理条件、または、これらに相当する情報を意味する。なお、「相当する情報」とは、たとえば、i)加熱素子に通電する電流量などを示す情報や、ii)読取部で読み取られた1次情報であって、当該1次情報を変換・解読することで、具体的な加熱温度や加熱時間などからなる加熱処理条件(2次情報)が得られる場合を意味する。なお、加熱情報として1次情報を用いる場合、たとえば、ジャスミンなら1番、ローズなら2番という具合に揮発性成分毎に割り当てられた番号を1次情報として用いることができる。この場合、読取部を介して読み取られた1次情報は、制御手段において、各々の揮発性成分を示す番号に応じて予め割り当てられた加熱素子を具体的に制御するための2次情報(電流量、通電時間など)に変換される。
【0105】
カートリッジは、加熱情報を無形情報および/または有形情報として保有することができる。ここで加熱情報が無形情報である場合、カートリッジは、電気的、磁気的および/または光学的な記録媒体;たとえば半導体メモリなどを備える。そして、加熱情報は、この記録媒体に、電気的、磁気的および/または光学的な信号として保存される。この場合、装置本体には、カートリッジが装置本体に取り付けられた場合に、記録媒体に記録された加熱情報を電気的、磁気的および/または光学的に読み取る読取部が少なくとも設けられる。
【0106】
一方、加熱情報が有形情報である場合、カートリッジは加熱情報を表す形状、構造またはこれらの組み合わせからなる有形部分を有する。ここで、加熱情報を表す有形部分としては、たとえば、ピンの数、形状またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。この場合、装置本体には、この有形情報の読み取りが可能なように、ピンと嵌合する嵌合部を備え、ピンと嵌合部との嵌合の有無を電気的信号に変換する読取部が少なくとも設けられる。なお、有形情報が横方向に一列に配置される0〜10本のピンの数で表され、読取部がこれらのピンと嵌合した際に、嵌合の有無を電気的信号に変換する機能を備えている場合、たとえば、左から1番目〜5番目までのピンの数に加熱温度を割り振り、左から6番目〜10番目までのピンの数に加熱時間を割り振ることができる。
【0107】
<揮発性成分揮散用装置の具体例>
図8は、第一の本実施形態の揮発性成分揮散用装置および第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置の一例を示す分解斜視図であり、具体的には、揮発性成分揮散用装置内の主要部について示したものである。図8に示す揮発性成分揮散用装置150は、装置本体120と、この装置本体120に対して脱着可能で、縦5個、横5個に正方配列された合計25個の揮発性成分充填部を有する平板状カートリッジ58とを有する。なお、平板状カートリッジ58としては、図4、図6または図7に例示した平板状カートリッジ50、54、56を用いることができる。
【0108】
装置本体120は、長方形状の基板104と、この基板104をその長手方向に2等分した際に、基板104の表面の図8で略右側半分の領域に配置された縦5個、横5個に正方配列された合計25個の加熱素子114と、これら25個の加熱素子が配置された領域を囲うように基板104の表面に配置されたカートリッジガイド板130と、基板104表面の略左側半分の領域に配置された制御用IC132(制御手段の一部)と、基板104の表面の図8で加熱素子が配置された領域の裏面側に配置されたアドレス制御ユニット134(制御手段の一部。なお、図8中では、説明の都合上、基板104と分離して表示してある)とを有する。なお、アドレス制御ユニット134は、個々の加熱素子114単位でON/OFF制御できる構造・機能を有するものであれば特に限定されない。たとえば、アドレス制御ユニット134は、個々の加熱素子114に対応して配置された25個のFETトランジスタと、これらFETトランジスタと制御用IC132とを接続する配線と、から構成することができる。
【0109】
ここで、図8に示すように平板状カートリッジ58は、カートリッジガイド板130内に嵌め込むようにして装置本体120に取り付け可能であり、平板状カートリッジ58を取り付けた場合、各々の揮発性成分充填部を構成する金属部材(図中、不図示)は、加熱素子114と接触または近接する。また、制御用IC132は、アドレス制御ユニット134を介して個々の加熱素子114毎のON/OFF制御を行うことができる。また、加熱素子114、アドレス制御ユニット134、制御用IC132へは、不図示の電源から電気が供給されるようになっている。
【0110】
<揮発性成分揮散用装置の利用態様>
第一および第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、所望の揮発性成分を、所望のタイミングで、所望の空間に揮散させる用途であれば、いかなる用途でも利用することができる。また、第一および第二の本実施形態の揮発性成分揮散用装置は電子機器と一体化して設けることができる。電子機器としては、公知の電子機器であれば特に限定されないが、たとえば、i)冷蔵庫、洗濯機などのいわゆる白物家電、ii)テレビ、オーディオなどのAV機器、iii)エアコンや調湿機、マイナスイオン発生装置などの空調機器、iv)パーソナルコンピューターなどのOA機器、v)携帯電話、ノートタイプのパーソナルコンピューター、ヘッドホン、PDA(personal digital assistant)、携帯型音楽再生機器などの携帯型電子機器などを挙げることができる。
【0111】
たとえば、電子機器の筐体表面に揮発性成分揮散用装置を配置し、この電子機器の所定の動作や操作に連動させて、揮発性成分を揮散させるようにしてもよい。たとえば、折り畳み式の携帯電話の場合、携帯電話を開く動作に連動させて芳香成分を揮散させることができる。これにより、携帯電話の使用者が、携帯電話の使用毎に快適な香りを楽しむことができる。
【0112】
また、揮発性成分揮散用装置を、壁や床、天井などに貼り付けて配置し、赤外線センサーと連動させて、芳香成分を揮散させるようにしてもよい。この場合、人間が赤外線センサーにより感知された場合に、芳香成分を揮散させることができる。これにより、揮発性成分揮散用装置が配置された部屋に入ってきた人間が、快適な香りを楽しむことができる。また、部屋に誰もいない場合は、芳香成分が揮散されないので、芳香成分の無駄な消費を防ぐこともできる。これに加えて、従来の室内芳香用の芳香製品は、スペースを取る安っぽいデザインのボトルタイプのものが主流であるが、本実施形態の揮発性成分揮散用装置は、板状の薄型形状とすることができるため目立たないところに配置することが容易である。また、床と絨毯の間に揮発性成分揮散用装置を配置したり、絨毯の床面側に揮発性成分揮散用装置を配置して、時間に連動させて(タイマー制御により)定期的にノミやダニ用の殺虫成分を揮散させるようにしてもよい。この場合、絨毯に発生するノミやダニの殺虫処理が自動的に行われるので、常に衛生的な環境を維持することができる。
【0113】
以上に説明した実施形態では、1つ加熱部に対応して1つの揮発性成分充填部が設けられた態様を示したが、1つの加熱部により2つ以上の揮発性成分充填部の金属部材を同時に加熱するようにしてもよい。すなわち、カートリッジが有する2つ以上の揮発性成分充填部のうちの少なくとも1つ以上については、1つの加熱部と1つの揮発性成分充填部とが対応するように設けられ、残余については、1つの加熱部に対して2つ以上の揮発性成分充填部が対応するように設けることができる。たとえば、図8に示す例において、縦方向に5個、横方向に5個配置された合計25個の加熱素子114のうち、縦横に正方形を形成するように配置された4個の加熱素子114を、4つの揮発性成分充填部を同時に加熱できるより大きいサイズの加熱素子に置き換えることができる。
【0114】
また、上述した実施形態では、カートリッジの有する揮発性成分充填部は2つ以上であるが、カートリッジの有する揮発性成分充填部を1つとしてもよい。後者の場合、揮発性成分充填部は、2つ以上のマイクロカプセルを有することが好ましい。この場合、マイクロカプセルの数や、加熱条件等を選択することで、1回の加熱処理により揮発性成分充填部内のマイクロカプセルの一部を選択的に加熱破壊するようにしてもよい。これにより、複数回に分けて加熱する度に、揮発性成分を揮散させることができる。
【符号の説明】
【0115】
10、12、14 金属製容器(金属部材)
20 円筒体
20A 側壁部
20B 底面部
20C 鍔部
20D 凸部
20E 棒状または板状の金属部材
22 開口部
24 円筒体20の内部
26 開口部
28 先端側部分
28A 凸部
30 マイクロカプセル
32 芯材
34 外殻材
40、42 円筒状金属部材
44 円板状金属部材
44A 凸部
44B 棒状または板状の金属部材
50、52、54、56、58 平板状カートリッジ
60、62、64、66 揮発性成分保持体
70、72、74、76 貫通孔
70A 直径拡大部
76A 直径拡大部
80、82、84、86 取り付け面
100、102、104 基板102A 凹部
110、110L、110R、110W 加熱素子
112A 平板状発熱体
112B 電極
114 加熱素子
120 装置本体
130 カートリッジガイド板
132 制御用IC
134 アドレス制御ユニット
150 揮発性成分揮散用装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、
該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備え、
上記カートリッジが、
互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、
上記揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、該揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部と、を有し、
上記揮発性成分含有部材が、揮発性成分を含有する芯材および該芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを1つ以上含み、
上記カートリッジが上記揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、上記加熱部に上記金属部材が接触または近接する位置に、上記金属部材が配置されることを特徴とする揮発性成分揮散用装置。
【請求項2】
一の揮発性成分充填部内に充填された揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類と、他の揮発性成分充填部内に充填された揮発性成分含有部材に含まれるマイクロカプセルに内包される揮発性成分の種類とが、異なることを特徴する請求項1に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項3】
2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、
該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備え、
上記カートリッジが、
互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、
上記揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分と、該揮発性成分に接触する金属部材と、開口部と、を有し、
上記カートリッジが上記揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、上記加熱部に上記金属部材が接触または近接する位置に、上記金属部材が配置されることを特徴とする揮発性成分揮散用装置。
【請求項4】
一の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類と、他の揮発性成分充填部内に充填される揮発性成分の種類とが、異なることを特徴する請求項3に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項5】
前記揮発性成分が、芳香成分、殺虫成分、抗菌成分および消臭成分から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項6】
前記揮発性成分揮散用装置本体および前記カートリッジが、可撓性を有する平板状の部材から構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項7】
前記加熱部が、発熱チップから構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項8】
前記カートリッジが、前記加熱部により前記金属部材を加熱する際の加熱情報を有し、
前記揮発性成分揮散用装置本体が、前記カートリッジが前記揮発性成分揮散用装置本体に取り付けられた状態において、上記加熱情報を読取る読取部を備えていることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の揮発性成分揮散用装置。
【請求項9】
2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、
該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備えた揮発性成分揮散用装置に用いられ、
上記カートリッジが、
互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、
上記揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分含有部材と、該揮発性成分含有部材に接触する金属部材と、開口部と、を有し、
上記揮発性成分含有部材が、揮発性成分を含有する芯材および該芯材を被覆すると共に加熱により破壊される外殻材を含むマイクロカプセルを1つ以上含み、
上記カートリッジが上記揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、上記加熱部に上記金属部材が接触または近接する位置に、上記金属部材が配置されることを特徴とする揮発性成分揮散用カートリッジ。
【請求項10】
2つ以上の加熱部を有する揮発性成分揮散用装置本体と、
該揮発性成分揮散用装置本体に対して脱着可能なカートリッジと、を少なくとも備えた揮発性成分揮散用装置に用いられ、
上記カートリッジが、
互いに離間して配置された2つ以上の揮発性成分充填部を有する揮発性成分保持体を少なくとも備え、
上記揮発性成分充填部が、その内部に充填された揮発性成分と、該揮発性成分に接触する金属部材と、開口部と、を有し、
上記カートリッジが上記揮発性成分揮散用装置本体に対して取り付けられている場合において、上記加熱部に上記金属部材が接触または近接する位置に、上記金属部材が配置されることを特徴とする揮発性成分揮散用カートリッジ。
【請求項11】
請求項10または11に記載の揮発性成分揮散用カートリッジにおいて、
前記カートリッジが、前記加熱部により前記金属部材を加熱する際の加熱情報を有し、
前記揮発性成分揮散用装置本体が、前記カートリッジが前記揮発性成分揮散用装置本体に取り付けられた状態において、上記加熱情報を読取る読取部を備えていることを特徴とすることを特徴とする揮発性成分揮散用カートリッジ。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の揮発性成分揮散用カートリッジを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142999(P2011−142999A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4910(P2010−4910)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(595128455)大栄工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】