説明

損傷皮膚修復用貼付剤

膏体中に白糖50〜90重量%、ポビドンヨード0.5〜10重量%、水0.1〜15重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド1〜15重量%及びメチルセルロース0.1〜15重量%を含有することを特徴とする損傷皮膚修復用貼付剤。ヨウ素含量が経時的に安定に保持され、更に剥離性、柔軟性及び付着性に優れた白糖とポビドンヨードを含有する損傷皮膚修復用貼付剤の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ素含量が経時的に安定に保持され、更に剥離性、柔軟性及び付着性に優れた白糖及びポビドンヨードを含有する損傷皮膚修復用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白糖は創傷治癒作用、肉芽形成作用を有することから、Knutsonらの製剤(非特許文献1)や院内製剤(非特許文献2)として用いられている。
近年、白糖及びポビドンヨードを有効成分とする軟膏剤や散剤が開発され、褥瘡や皮膚潰瘍の治療剤として医療現場で汎用されている。しかし、軟膏剤は稠度が高いため、医療現場でガーゼ等の支持体の上に展延して使用する場合には、煩雑な手間と時間が必要であり、また、展延後しばらくすると製剤が乾燥して支持体から簡単に剥離してこぼれ落ちたりする。一方、散剤は、粉であるため患部への使用が困難であり、また、飛散して周囲の汚れを引き起こしたりする。
【0003】
そこで、これらの欠点を改善するため、白糖及びポビドンヨードを含有する膏体を支持体上に塗工した貼付剤の開発が求められ、種々の改善案が提案されている。
膏体に保形性を持たせ、支持体や患部への付着力を高める等の目的で、膏体中にポリアクリル酸等に代表される(メタ)アクリル酸重合物を配合することが一般的であるが、白糖及びポビドンヨードを含有する貼付剤の膏体に、これらの(メタ)アクリル酸重合物を配合すると、経時的にヨウ素含量が著しく低下するため好ましくない。また、高含量の白糖を配合するため貼付剤に必要な柔軟性がなく、患部への付着力も悪い等の問題がある。これらの点から、白糖及びポビドンヨードを含有する貼付剤は、未だ満足のいくものは得られていない。
【非特許文献1】R.A.Knutson et.al.;Southern Medical Journal,Vol.74,No.11,1329−1335(1981)
【非特許文献2】曽根清和ら;「病院薬学」,Vol.10,No.5,315−322(1984)
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、ヨウ素含量が経時的に安定に保持され、更に剥離性、柔軟性及び付着性に優れた白糖とポビドンヨードを含有する損傷皮膚修復用貼付剤を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、以上の点を考慮して鋭意検討を行った結果、白糖及びポビドンヨードを含有する貼付剤において、膏体の基剤成分として、メチルセルロース及び中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いることにより、膏体に必要な保形性、剥離性、柔軟性及び付着性を具備し、かつ高いヨウ素含量を経時的に安定に維持すること、更に膏体中に糖アルコールを加えるとヨウ素含量の安定性及び貼付剤の付着性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、膏体中に白糖50〜90重量%、ポビドンヨード0.5〜10重量%、水0.1〜15重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド1〜15重量%及びメチルセルロース0.1〜15重量%を含有することを特徴とする損傷皮膚修復用貼付剤を提供するものである。
また、本発明は、膏体中に白糖50〜90重量%、ポビドンヨード0.5〜10重量%、水0.1〜15重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド1〜15重量%、メチルセルロース0.1〜15重量%及び糖アルコール0.1〜20重量%を含有することを特徴とする損傷皮膚修復用貼付剤を提供するものである。
【0007】
本発明の損傷皮膚修復用貼付剤は、ヨウ素含量の安定性が経時的に保持され、貼付時に膏体が患部を圧迫することのない適度な硬さを有し、ライナーを膏体から剥がす際、膏体がライナーに付着せず剥離性が良く、また適度な柔軟性も有り、更に貼付時の皮膚に対する付着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、レオメーターで付着性を測定するときの概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において使用する白糖は、精製白糖が好ましい。白糖の含有量は、損傷皮膚修復作用の点から、膏体全量に対して50〜90重量%であるが、60〜80重量%、特に65〜75重量%であるのが好ましい。
【0010】
本発明において使用するポビドンヨード(Poly((2−oxopyrrolidin−1−yl)ethylene)iodine)の含有量は、損傷皮膚修復作用の点から、膏体全量に対して0.5〜10重量%であるが、1〜7重量%、特に2〜6重量%であるのが好ましい。
【0011】
本発明において使用する水の含有量は、ヨウ素の安定性、柔軟性、付着性の点から、膏体全量に対して0.1〜15重量%であるが、0.3〜12重量%、特に0.5〜10重量%であるのが好ましい。
【0012】
本発明において使用する中鎖脂肪酸トリグリセリドは、炭素数6〜12、好ましくは6〜10の飽和脂肪酸とグリセリンとがエステル結合したトリグリセリドである。ここで、炭素数6〜12の飽和脂肪酸としてはカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸等が挙げられる。中鎖脂肪酸トリグリセリドしては、特にカプリル酸又はカプリン酸とグリセリンとのトリグリセリドが好ましい。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドは2種以上を組合せて用いてもよい。市販の中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、ミリトール888、ミリトール325、ミリトール318、ミリトール318−R(コグニスジャパン株式会社)、パナセート800、パナセート810、パナセート875(日本油脂株式会社)、ミグリオール(ミツバ貿易株式会社)、ココナード(花王株式会社)、ODO(日清製油株式会社)T.C.G.(高級アルコール工業株式会社)、サンファットMCT−6(太陽化学株式会社)、アクター(理研ビタミン株式会社)等が挙げられる。本発明における中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量は、ヨウ素含量の経時的な安定性、付着性、柔軟性等の点から、膏体全量に対して1〜15重量%であるが、2〜12重量%、特に3〜10重量%であるのが好ましい。
【0013】
本発明において使用するメチルセルロースは、セルロースのメチル混合エーテルであって、市販品としてはメトローズSM−100、メトローズSM−400、メトローズSM−1500、メトローズSM−4000、メトローズSM−8000、(信越化学工業(株))、メトセルA(ダウ・ケミカル株式会社)、マーポローズM(松本油脂製薬株式会社)等が挙げられる。
メチルセルロースの粘度(日本薬局方一般試験法に記載の粘度測定法による)としては、80〜10000mPa・s、特に350〜10000mPa・sであるものが、剥離性、柔軟性及び付着性等の点で好ましい。
本発明におけるメチルセルロースの含有量は、ヨウ素含量の安定性、剥離性、柔軟性、付着性の点から、膏体全量に対して0.1〜15重量%であるが、好ましくは0.2〜10重量%で、特に0.3〜5重量%であるのが好ましい。
【0014】
本発明の損傷皮膚修復用貼付剤の膏体中に、更に糖アルコールを含有させると、ヨウ素含量の安定性及び付着性等が更に向上し好ましい。糖アルコールは、糖分子のカルボニル基を還元して得られるものであって、例えばソルビトール(D−ソルビトール等)、マンニトール(D−マンニトール等)、キシリトール、エリスリトール等が挙げられ、特にソルビトールが好ましい。市販品としてはソルビット、ソルビットD70(東和化成工業株式会社)、ソルビトール花王(花王株式会社)、ソルビットT(テルモ株式会社)、キシリトール(エーザイ株式会社)、キシリット(東和化成工業株式会社、協和発酵工業株式会社)、エリスリトール(日研化学株式会社、三菱化学フーズ株式会社)等が挙げられる。
本発明における糖アルコールの含有量は、ヨウ素含量の安定性及び付着性等の点から、膏体全量に対して0.1〜20重量%、更に1〜15重量%で、特に3〜10重量%であるのが好ましい。
【0015】
本発明の貼付剤に使用する膏体のpHは、白糖及びヨウ素含量の経時的安定性の点から3.5〜6の範囲であるのが好ましい。pHの測定は、支持体上の膏体2gをかき取り、水18gに加えてよく振り混ぜた後、25℃で、pHメーター(例えば、株式会社堀場製作所:F−24)を用いて行う。pHの調整に使用するpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
【0016】
本発明の貼付剤には、本発明の効果を妨げない限り、他の薬剤や医薬品の添加物として許容される各種任意成分を、例えば可溶化剤、界面活性剤、増粘剤、吸着剤、吸収促進剤、安定化剤、湿潤剤、充填剤等を所望に応じて、適宜その必要量を添加することが可能である。
他の薬剤としては、bFGF、EGF、HGF、IGF等の成長因子や絹フィブロイン等のタンパク等が挙げられる。
【0017】
可溶化剤としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、濃グリセリン、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。可溶化剤は、膏体全量に対して1〜25重量%、更に5〜20重量%含有するのが好ましい。
【0018】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(平均付加モル数4〜250、好ましくは120〜200)ポリオキシプロピレン(平均付加モル数2〜100、好ましくは30〜70)グリコール、ポリオキシエチレン(平均付加モル数2〜200、好ましくは40〜120)硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、膏体全量に対して0.5〜10重量%、更に1〜8重量%含有するのが、膏体中の油分の分離を抑制する点で好ましい。
【0019】
増粘剤としては、プルラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、寒天、ゼラチン等が挙げられる。増粘剤は、膏体全量に対して0.1〜10重量%、更に1〜5重量%含有するのが好ましい。
【0020】
吸着剤としては、ベントナイト、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、薬用炭、カオリン等が挙げられる。吸着剤は、膏体全量に対して0.1〜10重量%、更に0.5〜8重量%含有するのが好ましい。
【0021】
膏体は各成分を練合して製造してもよいが、予め水相、油相を分けて調製し、次いで両者を練合して製造してもよい。予備調製する水相は、ポビドンヨード、メチルセルロース、水及び必要により糖アルコール、更に任意成分のpH調整剤、濃グリセリン、ヨウ化カリウム等の可溶化剤、増粘剤等を添加して製造する。油相は、中鎖脂肪酸トリグリセリド及び任意成分のポリエチレングリコール等の可溶化剤、吸着剤、界面活性剤等を添加して製造する。次いで、水相に油相を添加して練合し、更に白糖を加えて製造するのが好ましい。
【0022】
本発明の損傷皮膚修復用貼付剤は、上記の原料を通常の方法で練合して膏体を製造し、次いで支持体上に展延して塗工した後、所望の大きさに裁断して製造する。
【0023】
本発明の貼付剤に用いられる膏体の支持体としては、例えば紙、織布、不織布、編布、プラスティックフィルム、透湿性フィルム等が挙げられる。紙以外の材質としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン、ポリウレタン、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリアミド、レイヨン、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエーテルポリアミドブロックポリマー等の合成樹脂が挙げられる。
これら支持体の厚さは特に制限ないが、使い易さ、製造上の利便性等の点で0.5〜2.5mm、特に0.5〜2mmであるのが好ましい。また、支持体の目付量は、80〜150g/m、更に90〜130g/m、特に100〜120g/mであるのが、製造上の利便性の点で好ましい。
【0024】
膏体を支持体に塗工するには、通常の製造方法が使用できる。例えば、転写法、ナイフ塗工法等が挙げられる。
【0025】
膏体層の厚みは膏体組成により変化するが、1〜4mm、更に2〜4mm、特に2〜3mmであるのが、損傷部からの滲出液を十分に吸収する効果の点で好ましい。
【0026】
貼付剤は、必要に応じ、水分の揮散を防止して膏体を保護する目的で、支持体に塗工した膏体の表面を剥離用ライナーで覆ってもよい。剥離用ライナーの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の合成樹脂フィルム、合成樹脂フィルムや紙等の表面をシリコン処理したもの、アルミ箔、ラミネート紙等が挙げられる。
【0027】
本発明の損傷皮膚修復用貼付剤は、ヨウ素含量が安定に保持され、更に剥離性、柔軟性及び付着性に優れている。ここで、剥離性とは剥離用ライナーを剥離したとき剥離用ライナーへの膏体付着の有無、柔軟性とは剥離ライナーを剥離した貼付剤を折り曲げた際に膏体が崩れるか否か、付着性とは患部への貼付剤の付着力を意味する。
【0028】
更に本発明の損傷皮膚修復用貼付剤は、剥離用ライナーを剥がすだけで患部に貼り付けることが可能なため、従来の軟膏製剤に比べて手間がかからない。また患部の広さに応じて貼付剤をハサミ等で切り分けることも可能である。また付着力に優れているため特別に固定具を必要とせず、あえて補助的に患部に固定する場合も簡易な物でよく、患部を圧迫せず血行循環も良好になる等の優れた効果も有する。
【0029】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【実施例1】
【0030】
水相として精製水60gにクエン酸2.4g及び水酸化ナトリウム1.6gを溶かし、ヨウ化カリウム14g、濃グリセリン120g、ポビドンヨード60g、メチルセルロース(メトローズSM−4000:信越化学工業株式会社)10gを加えて分散させ、次いでこれとは別に油相としてポリエチレングリコール400 100gを50℃に加温し、ポリエチレングリコール4000 60g、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ミリトール325:コグニスジャパン株式会社)90gを加え、ショ糖脂肪酸エステル42gを加え均一に分散させた。この油相にベントナイト40gを分散させた後、水相に添加し練合し、次いで白糖1400gを加え練合して貼付剤用の膏体を得た。得られた膏体を不織布(EW6090:日本バイリーン株式会社)、剥離用ライナー(ポリプロピレンTS−30:大倉工業株式会社)を用いて、展膏機(形式C−140 池田機械産業株式会社)で大きさ14×10cmに展延し、膏体層厚さ2.2mmの貼付剤を製造した。膏体のpH(25℃)は5.3であった。
【実施例2】
【0031】
水相として精製水20gにクエン酸2.4g及び水酸化ナトリウム1.6gを溶かし、ヨウ化カリウム14g、濃グリセリン80g、D−ソルビトール液(70重量%D−ソルビトール水溶液、ソルビットD70:東亜化成工業株式会社)を140g、ポビドンヨード60g及びメチルセルロース(メトローズSM−4000)10gを加えて分散した。これとは別に油相としてポリエチレングリコール400 60gを50℃に加温しポリエチレングリコール4000 40g、中鎖脂肪酸トリグリセリド(ミリトール325)90gを加え、ショ糖脂肪酸エステル42gを加え均一に分散した。この油相にベントナイト40gを分散させた後、水相に添加し練合し、次いで白糖1400gを加え練合して貼付剤用膏体を得た。得られた膏体を使用して、実施例1と同様に貼付剤を製造した。膏体のpH(25℃)は5.2であった。
比較例1
【0032】
水相として精製水60gにクエン酸2.4g及び水酸化ナトリウム1.6gを溶かし、ヨウ化カリウム14g、濃グリセリン160g、ポビドンヨード60g及びメチルセルロース(メトローズSM4000)10gを加えて分散した。これとは別に油相としてポリエチレングリコール400 120gを50℃に加温し、ポリエチレングリコール4000 90g、ショ糖脂肪酸エステル42gを加え均一に分散した。この油相にベントナイト40gを分散させた後、水相に添加し練合し、次いで白糖1400gを加え練合して貼付剤用の膏体を得た。得られた膏体を使用して、実施例1と同様に貼付剤を製造した。膏体のpH(25℃)は5.2であった。
比較例2
【0033】
水相として精製水62gにクエン酸2.4g及び水酸化ナトリウム1.6gを溶かし、ヨウ化カリウム14g、濃グリセリン160g及びポビドンヨード60gを加えて分散した。これとは別に油相としてポリエチレングリコール400 120gを50℃に加温し、ポリエチレングリコール4000 77gを溶かし、ショ糖脂肪酸エステル42gを加え均一に分散した。この油相にポリアクリル酸部分中和物20gを加え分散させ、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート1g及びベントナイト40gを加え分散した後、水相に添加し練合し、次いで白糖1400gを加え練合して貼付剤用の膏体を得た。得られた膏体を使用して、実施例1と同様に製造した。膏体のpH(25℃)は5.5であった。
【0034】
一般的に貼付剤は製造直後の物性が安定せず、剥離性が悪く、柔軟性及び付着性にばらつきがでるので、14日間の熟成を行ってから、剥離性、柔軟性及び付着性を測定をした。なお、保存は、貼付剤をアルミ袋(東海アルミ箔株式会社:A 7836)に入れ、脱気シーラー(富士IMPULSE株式会社:脱気シーラーV−300)にて密封して行った。
【0035】
ヨウ素含量試験法
貼付剤を60℃、14日間保存した後、貼付剤の膏体中のヨウ素含量を測定した。製造直後のヨウ素含量に対するヨウ素残存率(%)を算出した。測定は、貼付剤から膏体3gをかき取り精製水35mLを加え60分間振とうし、更に精製水65mLを加え、0.01Nチオ硫酸ナトリウム液にて滴定(平沼自動滴定装置:COMTITE−900平沼産業株式会社)した。
【0036】
剥離性試験法
貼付剤を、25℃の条件下で14日間保存し、貼付剤から剥離用ライナーを剥がした時、剥離用ライナーに膏体が付着しないかを目視観察した。付着せずきれいに剥がれたものを○、僅かに付着するが剥がれたものを△、付着して剥がれなかったものを×とする3段階で評価した。
【0037】
柔軟性試験法
貼付剤を、25℃の条件下で14日間保存し、剥離用ライナーを剥がして折り曲げた時の膏体の崩れを目視観察した。崩れなかったものを○、僅かに崩れたものを△、崩れたものを×とする3段階で評価した。
【0038】
付着性試験法
貼付剤を、25℃の条件下で14日間保存し、35×80mmに裁断し、剥離用ライナーを剥がしてレオメーターの治具に付着させた。貼付剤の35×30mmの付着部面に2kgの荷重を30秒掛け、レオメーター(NRM−3002D−L不動工業株式会社)に取り付け、貼付剤の35×10mmの挟み部面を治具で挟み固定した(図1)。なお、図1中の数字は長さ(mm)を示す。
測定条件は、試料台を6cm/分の速度で下げ、付着部から剥がれ落ちる時の最大の負荷を測定した。
【0039】
実施例及び比較例で製造した貼付剤について測定した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
本発明のメチルセルロースと中鎖脂肪酸トリグリセリドを配合した実施例1は、ヨウ素含量の安定性が経時的に保持され、適度な柔軟性を有し、付着力も良く、ライナーの剥離性において優れた結果が得られた。更に、ソルビトールを配合した実施例2は、ヨウ素含量の安定性が経時的に保時され、適度な柔軟性を有し、優れたライナーの剥離性を損なうことなく、付着性が更に向上した製剤であった。これに対し、比較例1は、ヨウ素含量の安定性が経時的に保持されていたが、ライナーに膏体が付着してライナーの剥離性が悪く、柔軟性もなく、付着性についても悪かった。また、通常、貼付剤の膏体基剤成分として用いられるポリアクリル酸部分中和物を配合した比較例2は、ポリアクリル酸部分中和物の配合量が1重量%であるのにも係らず、ヨウ素の残存率が著しく低下しヨウ素含量の安定性が経時的に保持されず、柔軟性もなく、付着性も悪く、ライナーの剥離性においても膏体がライナーに付着した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体中に白糖50〜90重量%、ポビドンヨード0.5〜10重量%、水0.1〜15重量%、中鎖脂肪酸トリグリセリド1〜15重量%及びメチルセルロース0.1〜15重量%を含有することを特徴とする損傷皮膚修復用貼付剤。
【請求項2】
更に、膏体中に糖アルコール0.1〜20重量%を含有する請求項1記載の損傷皮膚修復用貼付剤。
【請求項3】
糖アルコールがソルビトールである請求項2記載の損傷皮膚修復用貼付剤。
【請求項4】
膏体のpHが3.5〜6である請求項1〜3のいずれか1項記載の損傷皮膚修復用貼付剤。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/027940
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514097(P2005−514097)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013784
【国際出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(390031093)テイカ製薬株式会社 (38)
【Fターム(参考)】