説明

搬送トレイ

【課題】荷物の横ずれを従来より確実に防止することが可能であると共に、荷物の取り出し作業を効率良く行うことができる搬送トレイを提供する。
【解決手段】本発明に係る搬送トレイ10は、トレイ底壁11にその縦横方向と斜めに交差する方向に延びた複数の係合溝21を設けると共に、各係合溝21を長手方向で分割して複数の長孔22を形成し、任意の長孔22にズレ防止具30を着脱可能に取り付け可能とした。この構成により、荷物50の大きさに拘わらずズレ防止具30を荷物50の側面に隣接又は当接させることができ、荷物50の横ずれを従来より確実に防止することが可能になる。また、何れかの長孔22に指又は工具を通して、搬送トレイ10からの荷物50を取り出す作業を効率良く行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物が載置されるトレイ底壁に荷物の横ずれを防止するための複数のズレ防止具が取り付けられた搬送トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の搬送トレイとして、図14に示すように、トレイ底壁1に複数の係合孔2を升目状に形成し、荷物のサイズに合わせて何れかの係合孔2にズレ防止具3を取り付け、荷物9の横ずれを防止可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、別の従来の搬送トレイとして、図15に示すように、トレイ底壁1に設定した荷物9を四方から囲むように複数の長孔4を形成し、各長孔4の長手方向における任意の位置にズレ防止具3を取り付けて、荷物9のサイズの相違に対応可能としたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−193246号公報(段落[0069]、第23図)
【特許文献2】特開2002−145461号公報(段落[0033],[0034]、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如く升目状の係合孔2を備えた従来の搬送トレイでは、ズレ防止具3が係合孔2の升目単位で移動するため、升目の途中に荷物9が位置すると荷物9とズレ防止具3との間にガタが生じると共に(問題点1)、平板状の荷物9を載置した場合に、係合孔2,2同士の境界線上に平板状の荷物9の縁部が位置すると荷物9の縁部に指を掛け難くなり、荷物9を搬送トレイから取り出す作業性が困難になる(問題点2)。また、上記の如く複数の長孔4を備えた従来の搬送トレイは、長孔4が短いために対応可能な荷物のサイズの自由度が低い(問題点3)。そこで、図16に示すように升目状の係合孔2を備えた搬送トレイにおいて、横方向で複数の係合孔2を連続させて長孔2Aにする構成が考えられるが、この場合も上記した問題点1,2は残る。具体的には、例えば、板状の荷物9A(又は9B)の一角部を搬送トレイの一角部に押し付け、ズレ防止具3でズレ防止を図った場合に、同図の符号9Aで示した荷物のように搬送トレイの縦方向で升目の途中に荷物9Aが位置すると、荷物9Aとズレ防止具3との間にガタδが生じる(問題点1)。また、符号9Bに示した荷物のように、升目の境界線上に荷物9Bの外縁部が位置すると、荷物9Bを搬送トレイから取り出す作業性が困難になる(問題点2)。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、荷物の横ずれを従来より確実に防止することが可能であると共に、荷物の取り出し作業を効率良く行うことができる搬送トレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る搬送トレイは、荷物が載置される四角形のトレイ底壁と、トレイ底壁の外縁部から起立したトレイ側壁と、トレイ底壁に形成されて、トレイ側壁同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びかつ互いに平行になった複数の係合溝と、任意の係合溝に着脱可能に取り付けられて、荷物の側面に宛がわれる複数のズレ防止具と、係合溝の長手方向における任意の位置にズレ防止具を固定可能とするための固定手段とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の搬送トレイにおいて、係合溝を長手方向で複数の長孔に分割したところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の搬送トレイにおいて、ズレ防止具に形成されて、係合溝における幅方向の内側面に押し付けられて弾性変形し、その弾発力により係合溝の内側面に摩擦係合した1対の弾性係合片を固定手段として備え、弾性係合片の先端部から側方に突出した抜止突部と、ズレ防止具のうちトレイ底壁の上面に当接した底面当接部との間で係合溝の開口縁を挟持したところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の搬送トレイにおいて、搬送トレイを上下に複数積み上げた状態で、下側の搬送トレイのズレ防止具とトレイ側壁とが協働して、上側の搬送トレイの下面を支持するように構成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の搬送トレイにおいて、ズレ防止具には、トレイ側壁と平行になって対向した側方対向壁が備えられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載の搬送トレイにおいて、側方対向壁の下縁部は、トレイ底壁の上面に突き当てられ、側方対向壁の下縁部から下方に突出して係合溝に突入した突入壁を備えたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の搬送トレイにおいて、隣り合ったトレイ側壁の間の内側角部に、トレイ側壁の内側面を陥没させて角部凹所を形成したところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の搬送トレイにて直方体状の荷物を搬送する場合の1つの方法として、その荷物をトレイ底壁上に載置し、搬送トレイの一角部を挟んだ1対のトレイ側壁に荷物の1対の側面を宛がう。そして、トレイ底壁に形成された複数の係合溝のなかから荷物の残り1対の側面を横切る係合溝を選択してズレ防止具をそれぞれ取り付け、それら係合溝の長手方向における任意の位置にズレ防止具を移動して、荷物の残り1対の側面に隣接又は当接させる。ここで、本発明では、係合溝がトレイ側壁同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びているので、従来の搬送トレイのように、平板状の荷物の外縁部全体が係合溝の区画部分と重なる事態が防がれ、荷物の大きさに拘わらず、ズレ防止具を荷物の側面に確実に隣接又は当接させることができ、荷物の横ずれを従来より確実に防止することが可能になる。また、何れかの係合溝に指又は工具を通して、搬送トレイから荷物を取り出す作業を効率良く行うこともできる。
【0013】
なお、荷物をトレイ底壁のうちトレイ側壁から内側に離した位置に配置した場合は、その荷物の4つの側面のそれぞれに対応して少なくとも4つのズレ防止具を所定の係合溝に取り付ければよい。この場合も同様に、ズレ防止具を荷物の側面に確実に隣接又は当接させて荷物の横ずれを防止することができかつ、何れかの係合溝に指又は工具を通して荷物を取り出す作業を効率良く行うことができる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の構成によれば、複数の係合溝は、トレイ側壁同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びて互いに平行になり、それら各係合溝を長手方向で分割して複数の長孔が構成されているので、各係合溝における長孔同士の区画部分と荷物の外縁部との位置関係が、各係合溝毎に異なる。そこで、長孔同士の区画部分がズレ防止具の取り付けの障害にならない係合溝の長孔を選択してズレ防止具を取り付けることができる。これにより、各ズレ防止具を長孔の長手方向における任意の位置に移動して、荷物の残り1対の側面に隣接又は当接させることができる。なお、荷物をトレイ底壁のうちトレイ側壁から内側に離した位置に配置した場合も同様に、ズレ防止具を荷物の側面に確実に隣接又は当接させることで荷物の横ずれを防止することができる。しかも本発明によれば、トレイ底壁のうち係合溝を複数の長孔に分割する区画部分によって強度も高くなる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の搬送トレイによれば、ズレ防止具に備えた1対の弾性係合片が、その弾発力によって係合溝の内側面に押し付けられて摩擦係合しているので、ズレ防止具を係合溝の長手方向に押して任意の位置に容易に移動することができる。一方、ズレ防止具が荷物から受ける力の方向とズレ防止具が係合溝に沿って移動可能な方向とは斜めに交差しているので、荷物からズレ防止具にかかる力ではズレ防止具は容易に移動しない。また、本発明の構成によれば、弾性係合片の先端部に備えた抜止突部とズレ防止具の底面当接部とが係合溝の開口縁を挟持することで、ズレ防止具が係合溝に抜け止めされる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、搬送トレイを上下に複数積み上げた状態で、下側の搬送トレイのズレ防止具とトレイ側壁とが協働して上側の搬送トレイの下面を支持することにより、トレイ底壁の反りを抑えることができる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の構成によれば、トレイ側壁とズレ防止具に備えた側方対向壁との間に荷物を挟んで横ずれを防ぐことができる。また、それら側方対向壁とトレイ側壁とは平行になって対向しているので、荷物の側面における応力集中を緩和し、荷物の変形を防ぐことができる。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6の構成によれば、例えば、複数の薄板を重ねてなる荷物を搬送する場合に、側方対向壁の下縁部から係合溝内に突入した突入壁により、最下層の薄板が側方対向壁の下縁部とトレイ底壁上との間に進入することを防止することができる。これにより、荷物の変形や傷つきを防止することができると共に、薄板が取り出し難くなることもない。
【0019】
[請求項7の発明]
請求項7の搬送トレイでは、内側角部に角部凹所を形成したので、直方体状の荷物における一角部と搬送トレイの内側角部との当接を避けた状態で、荷物の1対の側面を、搬送トレイの1対のトレイ側壁に密着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本実施形態の搬送トレイ10は、矩形のトレイ底壁11の外縁部からトレイ側壁12を起立して備えている。トレイ底壁11は、縦横比が例えば、1:2程度になっている。そして、図9に示すように主として薄板51を複数枚重ねた荷物50を搬送するために用いられる。
【0021】
図2に示すように、トレイ側壁12は、全体として下面が開放した溝形構造をなし、そのトレイ側壁12の下面開放領域には、長手方向に沿って複数の側壁補強リブ13が間隔を開けて形成されている。また、図1に示すように隣り合ったトレイ側壁12,12が直交してなる搬送トレイ10の4つの内側角部には、それらトレイ側壁12,12の内側面を陥没させて角部凹所14が形成されている。さらに、トレイ側壁12には複数の側壁ズレ防止突部12Aと複数の指係止凹部12Bとが設けられている。
【0022】
図2に示すように、指係止凹部12Bは、搬送トレイ10の短辺方向の中央部と、長辺方向の両端部とに配置されている。そして、各指係止凹部12Bは、トレイ側壁12のうちトレイ底壁11から離れた外面構成部分の一部と側壁補強リブ13の一部とを切除してなり、トレイ側壁12の側方に開放し、ここに手を挿入して搬送トレイ10を持ち上げることができる。
【0023】
図1に示すように側壁ズレ防止突部12Aは、搬送トレイ10の長辺のトレイ側壁12における長手方向の中央部分と、短辺のトレイ側壁12のうち指係止凹部12Bを挟んだ2位置とに配置され、図3に示すようにトレイ側壁12の上面壁を上方に膨出させてなる。そして、搬送トレイ10の上に他の搬送トレイ10を重ねた場合には、下側の搬送トレイ10における側壁ズレ防止突部12Aが、上側の搬送トレイ10における所定の側壁補強リブ13,13の間に嵌合し、これにより上下の搬送トレイ10,10同士の横ずれが防止される。また、この状態で、上側の搬送トレイ10における複数の側壁補強リブ13の下縁部が、下側の搬送トレイ10におけるトレイ側壁12の上面に当接して支持される。
【0024】
図1に示すようにトレイ底壁11には、複数の係合溝21が形成されている。これら複数の係合溝21は、トレイ側壁12,12同士の対向方向(搬送トレイ10の縦横の方向)と斜めに交差する方向に延びかつ互いに平行になっている。具体的には、係合溝21が延びた方向は、搬送トレイ10の縦横の方向に対して45度の角度になっている。また、複数の係合溝21は1対ずつ隣り合わせに配置され、それら隣り合わせの係合溝21,21よりなる係合溝ペア21Pが間隔を開けて配置されている。さらに、トレイ底壁11のうち係合溝21を除いた部分には、係合溝21と平行な列を有した升目状に複数の底面孔20が形成されている。各底面孔20は、例えば、1辺が係合溝21の幅と同じ正方形になっている。そして、係合溝21には、その長手方向で底面孔20を3つおきに区切る位置毎に区分壁21Kが形成され、これら区分壁21Kにより各係合溝21が複数の長孔22に分割されている。また、複数の係合溝21の間で区分壁21Kは一直線上に並んでいる。
【0025】
図2に示すように、搬送トレイ10の下面には、底面孔20、係合溝21に対応して略格子状の底壁リブ15が形成されている。その底壁リブ15は、図4に示すようにトレイ底壁11のうち隣り合った長孔22、底面孔20を区画する壁部(区分壁21Kを含む)における幅方向の中央に配置されている。この結果、後述する長孔22の開口縁16は、底壁リブ15から内側に張り出している。
【0026】
図1に示すようにトレイ底壁11には、複数のズレ防止具30が任意の長孔22に着脱可能に取り付けられている。図4に示すように各ズレ防止具30は、トレイ底壁11と平行な上面壁31を有し、その上面壁31の外縁部から略筒状の囲壁39を垂下して備えている。また、ズレ防止具30は、長孔22の長手方向と幅方向の両方向で線対称形状になっており、長孔22の幅方向より長手方向に若干長くなっている。
【0027】
ズレ防止具30の上面壁31は、長手方向の両端部に矢尻形状部31A,31Aを備えると共に、それら矢尻形状部31A,31Aの基端部より段付き状に幅狭になった幅狭部31Bを長手方向の中間部に備えている。各矢尻形状部31Aにおける1対の斜辺は、搬送トレイ10の縦横の方向と平行になっており、囲壁39のうち前記1対の斜辺から垂下した部分が本発明に係る1対の側方対向壁32になっている。従って、ズレ防止具30をトレイ底壁11に取り付けた状態で、各側方対向壁32は何れかのトレイ側壁12と平行になる。
【0028】
各側方対向壁32の下縁部からは本発明に係る突入壁33が下方に突出している。突入壁33は図6(A)に示すように外面が側方対向壁32と略面一になった突片構造をなしている。そして、図4に示すようにズレ防止具30がトレイ底壁11に取り付けられて、側方対向壁32の下端部がトレイ底壁11に当接した状態で長孔22に突入する。この状態で各突入壁33が長孔22の内側面に隣接し、ズレ防止具30の旋回を規制すると共に、後述するように薄板51を複数枚重ねた荷物50を搬送した際に、一部の薄板51が側方対向壁32の下端部とトレイ底壁11との間に挟まることを防止する。
【0029】
図6(B)に示すように囲壁39のうち上面壁31の幅狭部31Bにおける両側縁部から垂下した部分は1対の中間壁35,35をなし、それら各中間壁35には上下方向に延びた1対のスリット36,36がそれぞれ形成されている。各スリット36は、中間壁35の下端部から上下方向の中間位置まで延びかつ下方に開放している。そして、中間壁35のうちスリット36,36に挟まれた部分が、囲壁39全体より下方に突出して本発明に係る弾性係合片34になっている。また、囲壁39のうち弾性係合片34をの除いた部分の下端部は、トレイ底壁11に当接可能な本発明に係る底面当接部39Tになっている。
【0030】
図5に示すように各弾性係合片34の下端部には、外方(両弾性係合片34,34の間で相反する方向)に向けて抜止突部34Tが突出形成されている。抜止突部34Tは、弾性係合片34の下端位置から上側に向かうに従って徐々に迫り出し、上端部に略水平な係止面34Kを備えている。そして、両弾性係合片34,34を長孔22の内部に押し込むと、抜止突部34Tの斜面が長孔22の開口縁16の摺接して弾性係合片34,34が互いに接近する側に撓み、囲壁39の下端の底面当接部39Tがトレイ底壁11に当接したときに、抜止突部34Tが長孔22の開口縁16を乗り越えて弾性係合片34が復帰する。そして、抜止突部34Tの係止面34Kと囲壁39の下端の底面当接部39Tとの間で長孔22の開口縁16を挟持してズレ防止具30の上下方向に固定する(図7参照)。この状態で両弾性係合片34,34は、長孔22における幅方向の内側面(図5の符号22N参照)に押し付けられて僅かに撓んだ状態に保持され、その弾発力によって弾性係合片34と長孔22の内側面とが摩擦係合して、ズレ防止具30が長孔22の長手方向の任意の位置に固定される。
【0031】
本実施形態の搬送トレイ10の構成の説明は以上である。次に、薄板51(図9参照)を複数重ねてなる矩形の荷物50を、この搬送トレイ10を用いて搬送する場合について説明する。このように矩形の荷物50をトレイ底壁11上に載置する一例として、図8に示すように搬送トレイ10の一角部を挟んだ1対のトレイ側壁12,12に荷物50の1対の側面を宛がう。このとき、図12に示すように荷物50の縦横の少なくとも一方の寸法がトレイ底壁11における縦横の寸法の1/2以下の場合には、搬送トレイ10の対角位置にある2つの内側角部を使用して、トレイ底壁11における2箇所に分けて荷物50を載置してもよい。また、搬送トレイ10の各内側角部には角部凹所14がそれぞれ形成されているので、荷物50における一角部と搬送トレイ10の内側角部との当接を避けた状態で、荷物50の1対の側面を、搬送トレイ10の1対のトレイ側壁12,12に密着させることができる。
【0032】
そして、図8、図11及び図12に示すように、トレイ底壁11において、荷物50のうちトレイ側壁12,12に密着していない残り1対の側面との対向位置にズレ防止具30を取り付ける。そのために、トレイ底壁11に形成された複数の係合溝21のなかから荷物50の残りの1対の側面を横切る係合溝21を選択して、その係合溝21における所定の長孔22にズレ防止具30を取り付ける。ここで、複数の係合溝21はトレイ側壁12,12同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びて互いに平行になり、それら係合溝21を長手方向で分割して複数の長孔22が構成されているので、各係合溝21における長孔22同士の区画部分(即ち、区分壁21K)と荷物50の外縁部との位置関係が、各係合溝21毎に異なる。また、図8、図11及び図12に対比して示すように、荷物50の大きさによっても、各係合溝21における長孔22同士の区画部分と荷物50の外縁部との位置関係は異なる。そこで、各荷物50毎に、長孔22同士の区画部分(即ち、区画壁21K)がズレ防止具30の取り付けの障害にならない係合溝21の長孔22を選択してズレ防止具30を取り付ける。
【0033】
そして、各ズレ防止具30を長孔22の長手方向における任意の位置に移動して、荷物50の2つの側面に隣接又は当接させる。ここで、ズレ防止具30は、弾性係合片34,34の弾発力による弾性係合片34と長孔22の内側面との摩擦係合によって長孔22の長手方向で固定されているので、ズレ防止具30を両側方から指で摘んで弾性係合片34,34を内側に撓めることで、摩擦係合が解除されてスムーズに長孔22の任意の位置に移動することができる。また、弾性係合片34を撓めなくてもズレ防止具30を長孔22の長手方向に強く押せば、任意の位置に移動することができ、ズレ防止具30の位置変更作業も効率よく行うことができる。
【0034】
さて、荷物50を収容した搬送トレイ10は、図10に示すように、上下方向に複数積み上げることができる。そして、搬送トレイ10,10が積み上げられると下側の搬送トレイ10におけるトレイ側壁12が上側の搬送トレイ10における複数の側壁補強リブ13(図2参照)の下縁部に当接し、かつ、下側の搬送トレイ10に取り付けられたズレ防止具30の上面壁31が、図3及び図7に示すように上側の搬送トレイ10における底壁リブ15の下縁部に当接する。このようにトレイ側壁12とズレ防止具30とが協働して上側の搬送トレイ10を下方から支持することで、上側の搬送トレイ10におけるトレイ底壁11の反りを抑えることができる。また、下側の搬送トレイ10における側壁ズレ防止突部12Aが上側の搬送トレイ10における側壁補強リブ13,13の間に嵌合する。
【0035】
搬送トレイ10,10は、例えば搬送車両にて所定の目的地へと搬送される。このとき、横揺れを受けても前記した側壁ズレ防止突部12Aの側壁補強リブ13,13の間への嵌合によって上下の搬送トレイ10,10同士の横ずれが規制される。また、ズレ防止具30が荷物50から受ける力の方向とズレ防止具30が長孔22に沿って移動可能な方向とが斜めに交差しているので、薄板51からの力ではズレ防止具30は容易に動かない。さらに、荷物50からズレ防止具30にかかった力がズレ防止具30をトレイ底壁11に対して傾けるモーメント負荷として作用し、抜止突部34Tと囲壁39の下端の底面当接部39Tとが長孔22の開口縁16に押し付けられて摩擦係合し、この摩擦係合によってもズレ防止具30の移動が防がれる。
【0036】
しかも、ズレ防止具30のうち荷物50の側面に宛がわれる側方対向壁32は、それら荷物50の側面と平行になっているので、ズレ防止具30との当接による荷物50への応力集中が緩和され、荷物50の変形を防ぐことができる。その上、側方対向壁32の下縁部に備えた突入壁33が長孔22内に突入しているので、荷物50の最下層の薄板51がずれて側方対向壁32とトレイ底壁11との間に進入するような事態も防がれる。
【0037】
搬送先で荷物50を搬送トレイ10から取り出すには、何れかの長孔22に指又は工具を通して搬送トレイ10から荷物50の持ち上げればよい。ここで、係合溝21は、トレイ側壁12同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びているので、その係合溝21を分割してなる長孔22の何れかは、平板状の荷物50の外縁部と交差しており、従来のように荷物50の外縁部全体が係合溝21又は長孔22同士の区画部分に重なる事態が防がれる。これにより、何れかの長孔22に確実に指又は工具を通すことができ、搬送トレイ10からの荷物50の取り出し作業を効率良く行うことができる。また、各側方対向壁32の下縁部から長孔22に突入した突入壁33を設けたことで、荷物50の最下部の薄板51が側方対向壁32の下端部とトレイ底壁11との間に挟まることが防止され、薄板51(荷物50の一部)の変形や傷つきを防止することができると共に、その薄板51が取り出し難くなることもない。
【0038】
このように、本実施形態の搬送トレイ10によれば、荷物50の大きさに拘わらずズレ防止具30を荷物50の側面に隣接又は当接させて、荷物50の横ずれを従来より確実に防止することが可能になる。また、搬送トレイ10からの荷物50の取り出し作業を効率良く行うことができる。
【0039】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0040】
(1)前記実施形態では、矩形の荷物50の1対の側面を搬送トレイ10の1対のトレイ側壁12,12に宛がっていたが、矩形の荷物を搬送する場合の別の方法として、トレイ底壁において荷物をトレイ側壁から離して配置し、その荷物の4つの側面のそれぞれに対応して少なくとも4つのズレ防止具を取り付けてもよい。この場合も、各ズレ防止具を長孔の長手方向における任意の位置に移動して、荷物の各側面に隣接又は当接させた状態にすることができる。
【0041】
(2)前記実施形態のズレ防止具30は、トレイ側壁12と平行な1対の側方対向壁32,32を備えていたが、そのような側方対向壁を備えていなくてもよい。具体的には、例えばズレ防止具のうち荷物に宛がわれる部分を円弧形状にしてもよい。
【0042】
(3)前記実施形態では、複数の薄板51を重ねてなる荷物50を搬送する搬送トレイ10を例示したが、箱形の荷物を搬送する搬送トレイに本発明を適用してもよい。
【0043】
(4)前記実施形態の係合溝21は、搬送トレイ10の縦横の方向に対して角度45度傾いた方向に延びていたが、係合溝を搬送トレイの縦横の方向に対して45度以外の角度で傾けてもよい。
【0044】
(5)前記実施形態のズレ防止具30は、弾性係合片34の摩擦係合によって長孔22の長手方向に固定されていたが、例えば、ボルト又はナットの締め付けにより、ズレ防止具を長孔の長手方向の任意の位置に固定してもよい。
【0045】
(6)また、長孔の内側面に複数の凹部を形成しておき、弾性係合片に形成した突起を何れかの凹部に凹凸係合することで、搬送トレイを長孔の長手方向の任意の位置に固定してもよい。
【0046】
(7)前記実施形態の搬送トレイ10は、係合溝21を区画壁21Kによって複数の長孔22に分割した構成になっていたが、その区画壁21Kの数及び位置は、必要とされる搬送トレイ10の強度に応じて前記第1実施形態の構成以外の数及び位置に適宜変更してもよい。
【0047】
(8)また、図13に示すように、係合溝21の途中に区画壁21Kを設けず、係合溝21が長孔22に分割されていない構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送トレイの斜視図
【図2】搬送トレイを下側から見た斜視図
【図3】搬送トレイの一部を拡大した斜視図
【図4】トレイ底壁に固定されたズレ防止具の斜視図
【図5】そのズレ防止具の一部を拡大した斜視図
【図6】(A)ズレ防止具の下側から見た斜視図、(B)そのズレ防止具の上側から見た斜視図、
【図7】上下に積み上げられた搬送トレイの一部を拡大した側断面図
【図8】荷物を収容した搬送トレイの斜視図
【図9】その搬送トレイの一部を拡大した斜視図
【図10】搬送トレイを上下に積み上げた状態の斜視図
【図11】荷物を収容した搬送トレイの斜視図
【図12】荷物を2箇所に分けて収容した搬送トレイの斜視図
【図13】変形例(8)の本発明に係る搬送トレイの斜視図
【図14】従来の搬送トレイの斜視図
【図15】従来の搬送トレイの斜視図
【図16】従来の問題点を説明するための搬送トレイの平面図
【符号の説明】
【0049】
10 搬送トレイ
11 トレイ底壁
12 トレイ側壁
14 角部凹所
15 底壁リブ
20 底面孔
21 係合溝
22 長孔
30 ズレ防止具
32 側方対向壁
33 突入壁
34 弾性係合片
34K 係止面
34T 抜止突部
39T 底面当接部
50 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物が載置される四角形のトレイ底壁と、
前記トレイ底壁の外縁部から起立したトレイ側壁と、
前記トレイ底壁に形成されて、前記トレイ側壁同士の対向方向と斜めに交差する方向に延びかつ互いに平行になった複数の係合溝と、
任意の前記係合溝に着脱可能に取り付けられて、前記荷物の側面に宛がわれる複数のズレ防止具と、
前記係合溝の長手方向における任意の位置に前記ズレ防止具を固定可能とするための固定手段とを備えたことを特徴とする搬送トレイ。
【請求項2】
前記係合溝を長手方向で複数の長孔に分割したことを特徴とする請求項1に記載の搬送トレイ。
【請求項3】
前記ズレ防止具に形成されて、前記係合溝における幅方向の内側面に押し付けられて弾性変形し、その弾発力により前記係合溝の内側面に摩擦係合した1対の弾性係合片を前記固定手段として備え、
前記弾性係合片の先端部から側方に突出した抜止突部と、前記ズレ防止具のうち前記トレイ底壁の上面に当接した底面当接部との間で前記係合溝の開口縁を挟持したことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送トレイ。
【請求項4】
前記搬送トレイを上下に複数積み上げた状態で、下側の前記搬送トレイの前記ズレ防止具と前記トレイ側壁とが協働して、上側の前記搬送トレイの下面を支持するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の搬送トレイ。
【請求項5】
前記ズレ防止具には、前記トレイ側壁と平行になって対向した側方対向壁が備えられたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の搬送トレイ。
【請求項6】
前記側方対向壁の下縁部は、前記トレイ底壁の上面に突き当てられ、
前記側方対向壁の下縁部から下方に突出して前記係合溝に突入した突入壁を備えたことを特徴とする請求項5に記載の搬送トレイ。
【請求項7】
隣り合った前記トレイ側壁の間の内側角部に、前記トレイ側壁の内側面を陥没させて角部凹所を形成したことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の搬送トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−261616(P2007−261616A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87422(P2006−87422)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】