説明

搬送台車、搬送ライン及び搬送方法

【課題】複数のポストに対してベース部品を位置決めを行って載置したまま複数の組付作業工程を移動させることができ、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にできる搬送台車、搬送ライン及び搬送方法を提供すること。
【解決手段】搬送台車3は、ベース部品8を載置するための複数のポスト44を立設してなるベース台車部4と、複数のポスト44に対して昇降可能に支持されると共に作業者の足場を形成する作業台車部5とを備えている。搬送台車3は、ベース台車部4が床下ピット21との間で転がり接触すると共に作業台車部5が床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第1移動状態301と、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4が床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第2移動状態302とを切り替えて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の組付ラインのワーク搬送を行う搬送台車、搬送ライン及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組付ラインにおいては、ベース部品となるメインボディを搬送台車上に載置し、搬送台車を移動させながらメインボディに対して種々の組付部品の組付を行っている。例えば、特許文献1の自動車などの組立て用搬送装置においては、搬送台車の走行経路内の部品組付け作業を行う特定区間の下側に、この特定区間の始端位置から終端位置まで搬送台車と同期して走行可能な同期走行台車を設け、この同期走行台車上に移載装置を搭載し、移載装置によってエンジン等の組付け部品を、搬送台車上の車体に対して組付け容易な高さまで持ち上げることが開示されている。
また、例えば、特許文献2の車体位置補正搬送システムにおいては、搬送台車に載置した車体を複数の工程へ搬送する際に、搬送台車にリフト機構を搭載しておき、リフト機構によって搬送台車上の車体の高さを変更できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248657号公報
【特許文献2】特開平9−309473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動車のメインボディ(車体)等においては、種々の組付部品を組み付ける組付高さが異なるため、各組付工程において、工場の床面に対するメインボディの搬送高さを変更する必要が生じる。例えば、内装部品を組み付けるトリム工程においては、メインボディを床面付近で搬送する一方、足回りの部品、燃料タンク等を組み付けるシャシー工程においては、メインボディを高い位置に持ち上げて搬送する必要がある。
【0005】
そのため、特許文献1等の搬送台車においては、工程間において異なる搬送台車を用いており、特にシャシー工程においては、メインボディを吊り下げて搬送するリフト搬送装置等を用いている。このことより、メインボディは、搬送台車間へ移載したり、搬送台車とリフト搬送装置との間で移載しており、搬送ライン全体の構造が複雑になる。
また、特許文献2等の搬送台車においては、搬送台車にリフト機構を搭載しているため、搬送台車自体の構造が複雑になる。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、複数のポストに対してベース部品を位置決めを行って載置したまま複数の組付作業工程を移動させることができ、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる搬送台車、搬送ライン及び搬送方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、上記複数のポストに対して昇降可能に支持すると共に上記ベース台車部の上側において作業者の足場を形成する作業台車部とを備えており、
上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、
上記複数のポストに上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送台車にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、上記搬送台車を用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、
該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ラインにある(請求項6)。
【0009】
第3の発明は、上記搬送台車を用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、
上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法にある(請求項7)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明の搬送台車は、ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、ベース部品に対する作業者の作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程へ連続して移動させることができるものである。
具体的には、本発明の搬送台車は、複数のポストを立設してなるベース台車部と、複数のポストに対して昇降可能に支持される作業台車部とを備えている。そして、作業者がベース部品の上方、側方から作業する工程においては、搬送台車は、第1移動状態を形成し、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させると共に作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の上方、側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0011】
ここで、床下ピットは、工場の床面から掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドにデッキ(高台)を設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させる状態は、ベース台車部又は床下ピットのいずれかにコロを設けて形成することができる。これと同様に、作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、作業台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0012】
一方、作業者がベース部品の下方から作業する工程においては、搬送台車は、第2移動状態を形成し、作業台車部を上側に載置した状態でベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0013】
ここで、床面直下は、工場の床面から若干掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドに高さが低めのデッキを設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、ベース台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0014】
こうして、本発明の搬送台車は、ベース台車部と作業台車部との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポストにベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者の組付作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車間でのベース部品の移載、搬送台車とリフト搬送装置等との間でのベース部品の移載等を不要にすることができ、各組付作業工程におけるベース部品の搬送管理を簡単にすることができる。
【0015】
また、搬送台車自体に、作業台車部を設けて作業者の足場を形成していることにより、搬送台車を移動させる如何なる組付作業工程においても、作業者の足場を適切に確保することができる。
さらに、搬送台車には、作業台車部を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の組付作業工程において、同じ搬送台車を使用することができ、搬送台車を移動させる搬送ライン全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0016】
それ故、第1の発明の搬送台車によれば、複数のポストに対してベース部品を位置決めを行って載置したまま複数の組付作業工程を移動させることができ、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【0017】
第2の発明の搬送ラインは、ピットラインと床面ラインとに対し、第1移動状態又は第2移動状態を形成して搬送台車を移動させて、ベース部品に対する種々の組付部品の組付等の作業を行うようにしたものである。そして、本発明の搬送ラインにおいては、搬送台車は、移載装置によって持ち上げてピットラインと床面ラインとの間を移動させることができる。これにより、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。
それ故、第2の発明の搬送ラインによれば、複数のポストに対してベース部品を位置決めを行って載置したまま、搬送台車を複数の組付作業工程の間を連続して移動させることができ、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【0018】
第3の発明の搬送方法においては、第2の発明と同様に、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。
それ故、第3の発明の搬送方法によれば、複数のポストに対してベース部品を位置決めを行って載置したまま、搬送台車を複数の組付作業工程の間を連続して移動させることができ、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例における、第1移動状態と第2移動状態とを形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例における、第1移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例における、第1移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例における、第2移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例における、第2移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例における、搬送台車における作業台車部を、上方から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例における、搬送台車におけるベース台車部を、下方から見た状態で示す説明図。
【図8】実施例における、第1移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図9】実施例における、第1移動状態を形成した搬送台車の一部を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図10】実施例における、第2移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図11】実施例における、第2移動状態を形成した搬送台車の一部を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図12】実施例における、搬送台車によって自動車生産ライン用の搬送ラインを構成したときの配置関係を示す説明図。
【図13】実施例における、他の第2移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述した第1〜第3の発明における好ましい実施の形態につき説明する。
上記第1〜第3の発明において、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして、上記搬送台車を移動させるよう構成することが好ましい(請求項2)。
この場合には、作業台車部の作業床面と、工場の床面又はデッキとの間に段差が形成されず、作業者がこれらの間を円滑に歩くことができる。そのため、作業者による作業性を向上させることができる。
【0021】
また、上記ベース部品は、自動車のメインボディであり、上記複数のポストは、上記メインボディを位置決めを行って載置するよう上記ベース台車部から上方へ4本立設されており、該4本のポストのうちの前側2本のポストと後側2本のポストとは、上記ベース台車部に対していずれか2本が前後方向にスライドして、前後方向への長さが異なる複数種類の上記メインボディを位置決めを行って載置するよう構成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、4本のポストのうちの前側2本のポストと後側2本のポストとのいずれか2本のポストがベース台車部に対して前後方向にスライドすることにより、前後方向への長さが異なる複数種類のメインボディを、4本のポストに対して位置決めを行って載置した状態を安定して維持することができる。
【0022】
また、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態は、該ベース台車部又は該床下ピットのいずれかに複数のコロを設けて形成し、上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、該作業台車部と該床面又は該床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成し、上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、該ベース台車部と該床面又は該床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成することが好ましい(請求項4)。
この場合には、ベース台車部に対して作業台車部を容易に昇降させることができ、複数のコロによって、ベース台車部及び作業台車部を安定して転がり接触させることができる。上記コロは、車輪、ローラ、ボール等の転がり部材によって構成することができる。
【0023】
また、上記搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されて、複数台が連なって移動するよう構成することが好ましい(請求項5)。
この場合には、簡単な方法により、搬送ラインにおいて複数の搬送台車を同時に連続して移動させることができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の搬送台車、搬送ライン及び搬送方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の搬送台車3は、図1に示すごとく、ベース部品8を位置決めを行って載置するための複数のポスト44を立設してなるベース台車部4と、複数のポスト44に対して昇降可能に支持されると共にベース台車部4の上側において作業者の足場を形成する作業台車部5とを備えている。
搬送台車3は、図2、図3に示すごとく、ベース台車部4が床下ピット21との間で転がり接触すると共に作業台車部5が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第1移動状態301と、図4、図5に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第2移動状態302とのいずれかを形成する。搬送台車3は、複数のポスト44にベース部品8を位置決めを行って載置した状態を維持して、第1移動状態301と第2移動状態302とを切り替えて形成し、いずれの移動状態301、302を形成する際にも、ベース台車部4及び作業台車部5を床面2内に収容して移動させるよう構成してある。
【0025】
以下に、本例の搬送台車3、搬送ライン1及び搬送方法につき、図1〜図13を参照して詳説する。
本例のベース部品8は、自動車のメインボディ8であり、本例の搬送台車3は、自動車生産ラインに用いるものである。搬送台車3が搬送するメインボディ8には、前後方向の長さが異なる種々の車種のものがある。
図6、図9、図11に示すごとく、本例のベース台車部4からは、前後左右に2本ずつ並んで上方へ向けて4本のポスト44が立設してある。4本のポスト44のうちの前側2本のポスト44Aは、ベース台車部4に固定してあり、4本のポスト44のうちの後側2本のポスト44Bは、ベース台車部4に対して前後方向Lにスライドするよう構成してある。後側2本のポスト44Bは、それぞれ左右に配置したスライド機構42によって前後方向Lへスライド可能である。本例のスライド機構42は、前後方向Lに配設した2本のリニヤガイドを用いて構成されており、リニヤガイドは、ベース台車部4に取り付けたレールと、レールに対して転がり接触するスライダーとからなる。
【0026】
図8〜図11に示すごとく、作業台車部5は、4本のポスト44に対して転がり接触して昇降可能である。各ポスト44には、作業台車部5に配設したローラ53が接触しており、作業台車部5は、ローラ53によって昇降可能である。
作業台車部5には、4本のポスト44を挿通配置する貫通穴52が形成されている。前後方向Lにスライドする後側2本のポスト44Bを挿通配置する貫通穴52は、前後方向Lに長く形成されている(図6参照)。
【0027】
前方2本のポスト44の上端部には、メインボディ8の位置決めを行うための位置決めピン45及びメインボディ8の下部を受ける加重受け46がそれぞれ設けてある。すべての車種のメインボディ8の下部には、位置決めピン45を差し込むための位置決め穴が形成されている。また、後側2本のポスト44Bの上端部には、メインボディ8の下部を受ける加重受け46が設けてある。
後側2本のポスト44Bは、載置するメインボディ8の車種に応じて、スライド機構42によって前後方向Lのスライド位置を変更し、ロック機構43によってスライド位置が固定される。
【0028】
図6、図7に示すごとく、本例のメインボディ8は、その前後方向を搬送台車3の前後方向Lに合わせて、搬送台車3の4本のポスト44に載置する。搬送台車3は、その前後方向L及び左右方向Wへ移動可能である。搬送台車3は、4本のポスト44に載置するメインボディ8の前後方向に平行な第1進行方向D1と、4本のポスト44に載置するメインボディ8の左右方向に平行な第2進行方向D2とに切り替えて移動可能である。
【0029】
本例の搬送台車3の第1移動状態301は、図2、図3に示すごとく、ベース台車部4に設けた複数のローラ41が床下ピット21に設けたレール211上を転がり接触すると共に作業台車部5に設けた複数のローラ51が床面直下22に設けたレール221上を転がり接触する状態に形成される。また、搬送台車3の第2移動状態302は、図4、図5に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4に設けた複数のローラ41が床面直下22に設けたレール221上を転がり接触する状態に形成される。
【0030】
図8〜図11に示すごとく、ベース台車部4及び作業台車部5の下面には、各台車部4、5をレール211、221に転がり接触させるための複数のローラ41、51が突出している。ベース台車部4には、その下面の左右において前後方向Lに向けて複数のローラ41Aが配列してあり、その下面の前後、中間部位において左右方向Wに向けて複数のローラ41Bが配列してある。作業台車部5には、その下面の左右において前後方向Lに向けて複数のローラ51が配列してある。
【0031】
本例の搬送台車3は、メインボディ8に対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ラインに適用して、搬送ライン1を構成している。
図12に示すごとく、この自動車生産ラインは、メインボディ8に対して種々の内装部品の組付を行うトリム工程101と、メインボディ8に対して種々の足回り部品、エンジン、燃料タンク、タイヤ等の主要部品の組付を行うシャシー工程102と、メインボディ8に対して種々の電装部品の組付、オイル・ガスの注入等を行うファイナル工程103とを有している。搬送台車3は、メインボディ8を保持してすべての工程に一巡して移動し、組付が終わったメインボディ8である完成車を送り出した後、再び始めのトリム工程101に循環して移動するよう構成されている。
【0032】
トリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103の各工程において、搬送台車3は、各工程におけるラインの上流側に配設したドライブローラ23によって駆動されて、複数台が連なってレール211、221上を移動するよう構成してある。ドライブローラ23は、各工程のラインの最も上流側に位置する搬送台車3におけるベース台車部4の左右に回転接触して、ベース台車部4を挟み込んで送り出すよう構成されている。
【0033】
搬送ライン1には、図2、図3に示すごとく、第1移動状態301を形成して搬送台車3を移動させるピットライン11と、図4、図5に示すごとく、第2移動状態302を形成して搬送台車3を移動させる床面ライン12とがある。
図12に示すごとく、トリム工程101及びファイナル工程103は、ピットライン11によって形成してあり、シャシー工程102は、床面ライン12によって形成してある。搬送台車3は、トリム工程101及びファイナル工程103においては、ピットライン11を第1進行方向D1に移動し、シャシー工程102においては、床面ライン12を第2進行方向D2に移動する。
【0034】
なお、図2、図3、図8、図9においては、搬送台車3がピットライン11を第1進行方向D1に移動する場合を示し、図4、図5、図10、図11においては、搬送台車3が床面ライン12を第1進行方向D1に移動する場合を示す。これに対し、本例のシャシー工程102においては、搬送台車3は、床面ライン12を第2進行方向D2に移動する。
搬送台車3は、ピットライン11、床面ライン12のいずれにおいても、第1進行方向D1、第2進行方向D2のいずれの方向に移動することもできる。
【0035】
また、搬送台車3は、いずれの工程101、102、103においても、ドライブローラ23によって駆動され、各進行方向D1、D2に連なって移動する。そして、本例の搬送ライン1は、4本のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車3をピットライン11、床面ライン12及びこれらの間を連続して移動させるよう構成してある。
また、図2〜図5に示すごとく、搬送台車3は、第1移動状態301と第2移動状態302とのいずれの移動状態301、302を形成する際にも、作業台車部5の作業床面50を工場の床面2と略同一面にして移動する。
【0036】
図12に示すごとく、搬送台車3は、各工程101、102、103間を移動する際には、移載装置61、62、64によって持ち上げられて運搬される。移載装置61、62、64は、搬送台車3のベース台車部4と作業台車部5とをそれぞれ持ち上げ、ベース台車部4と作業台車部5との相対高さ関係が異なる第1移動状態301又は第2移動状態302を形成して、搬送台車3をピットライン11又は床面ライン12に載置するよう構成されている。
本例の搬送ライン1は、トリム工程101、シャシー工程102、ファイナル工程103の各工程において搬送台車3を往復移動させるよう構成されている。
【0037】
トリム工程101に搬入する搬送台車3には、種々の組付部品を組み付ける前のメインボディ8を位置決めを行って載置する。搬送台車3は、移載装置の1つである搬入側昇降装置61によって持ち上げられ、トリム工程101を形成する一方のピットライン11Aに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Aを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Bへ送り出すよう構成されている。
【0038】
次いで、搬送台車3は、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、トラバース装置63によって第2進行方向D2へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cに載置される。次いで、搬送台車3は、メインボディ8を保持した状態を維持して、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cの一方側へ第2進行方向D2に移動する。次いで、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cを一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ運搬された後、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動する。このトラバース装置63は、一方の床面ライン12Cを第2進行方向D2に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第1進行方向D1に移動させた後、他方の床面ライン12Dへ送り出すよう構成されている。
【0039】
次いで、搬送台車3は、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動したときには、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Eを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Fへ送り出すよう構成されている。
【0040】
次いで、搬送台車3が、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、種々の組付部品の組付が完了したメインボディ8を搬送台車3から取り出す。また、搬送台車3は、移載装置の1つである搬出側昇降装置62によって持ち上げられ、循環ライン65に載置される。そして、循環ライン65においてメインボディ8を保持しない空の搬送台車3を第2進行方向D2へ移動させ、再び種々の組付部品の組付前のメインボディ8を搬送台車3に保持させて、トリム工程101へ搬入させる。
その後、複数の搬送台車3は、何度もトリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103を循環させることができる。
【0041】
本例の搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、メインボディ8に対する作業者の作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程へ連続して移動させることができるものである。
作業者がメインボディ8の上方、側方から作業するトリム工程101及びファイナル工程103においては、搬送台車3は、図2、図3に示したように、第1移動状態301を形成し、ベース台車部4における複数のローラ41を、工場の床面2から掘り下げた床下ピット21のレール211上を転がり接触させると共に、作業台車部5における複数のローラ51を、床面直下22に設けたレール221上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
【0042】
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50を床面2と略同一面にして、複数のポスト44のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者の足場に障害物がほとんど存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部5を足場としてメインボディ8の上方、側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0043】
一方、作業者がメインボディ8の下方から作業する工程においては、搬送台車3は、図4、図5に示したように、第2移動状態302を形成し、作業台車部5を上側に載置した状態で、ベース台車部4における複数のローラ41を、床面直下22に設けたレール221上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50を床面2と略同一面にして、複数のポスト44のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者の足場にほとんど障害物が存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部5を足場としてメインボディ8の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0044】
こうして、本例の搬送台車3は、ベース台車部4と作業台車部5との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者の組付作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車3の間でのメインボディ8の移載、搬送台車3とリフト搬送装置等との間でのメインボディ8の移載等を不要にすることができ、各組付作業工程におけるメインボディ8の搬送管理を簡単にすることができる。
【0045】
また、搬送台車3自体に、作業台車部5を設けて作業者の足場を形成していることにより、搬送台車3を移動させる如何なる組付作業工程においても、作業者の足場を適切に確保することができる。また、本例の搬送台車3においては、スライド機構42を、後側2本のポスト44Bの上端部に設けておらず、後側2本のポスト44Bの下端部に設けている。これにより、作業台車部5よりも上側にスライド機構42が存在せず、作業者の足元に障害物が存在しないようにして、その作業性を向上させることができる。
さらに、搬送台車3には、作業台車部5を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車3の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の組付作業工程において、同じ搬送台車3を使用することができ、搬送台車3を移動させる搬送ライン1の全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0046】
それ故、本例の搬送台車3、搬送ライン1及び搬送方法によれば、複数のポスト44に対してメインボディ8を位置決めを行って載置したまま、搬送台車3を複数の組付作業工程の間を連続して移動させることができ、搬送台車3自体及び搬送台車3を使用する搬送ライン1の構造を極めて簡単にすることができる。
【0047】
図13に示すごとく、搬送台車3の第2移動状態302は、作業台車部5を上側に載置するベース台車部4が、床面2に設けたレール221上を複数のローラ41によって転がり接触して移動するよう構成することもできる。この場合には、作業台車部5の作業床面50を工場の床面2に設けたデッキ24の上面241と略同一面にして移動させることができる。
また、図示は省略するが、搬送台車3の第1移動状態301を形成する際には、作業台車部5が、床面2に設けたレール221上を複数のローラ51によって転がり接触して移動するよう構成することもできる。この場合には、作業台車部5の作業床面50を工場の床面2に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させることができる。
【0048】
また、ベース台車部4に複数のローラ41を設ける代わりに、ベース台車部4が転がり接触する床下ピット21、床面2又は床面直下22に搬送コンベヤ等の複数のローラを設けることもできる。また、作業台車部5に複数のローラ51を設ける代わりに、作業台車部5が転がり接触する床面2又は床面直下22に搬送コンベヤ等の複数のローラを設けることもできる。
【0049】
また、床下ピット21にレール211を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサをベース台車部4に設けると共に、床下ピット21と床面2又は床面直下22とに、ベース台車部4に設けたセンサによって検知されるセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
また、これと同様に、床面直下22にレール221を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサを作業台車部5に設けると共に、床面2又は床面直下22にセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 搬送ライン
101 トリム工程
102 シャシー工程
103 ファイナル工程
11 ピットライン
12 床面ライン
2 床面
21 床下ピット
211 レール
22 床面直下
221 レール
23 ドライブローラ
3 搬送台車
301 第1移動状態
302 第2移動状態
4 ベース台車部
41 ローラ
44 ポスト
5 作業台車部
50 作業床面
51 ローラ
8 ベース部品(メインボディ)
L 前後方向
W 左右方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、上記複数のポストに対して昇降可能に支持されると共に上記ベース台車部の上側において作業者の足場を形成する作業台車部とを備えており、
上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、
上記複数のポストに上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送台車において、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させるよう構成したことを特徴とする搬送台車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送台車において、上記ベース部品は、自動車のメインボディであり、
上記複数のポストは、上記メインボディを位置決めを行って載置するよう上記ベース台車部から上方へ4本立設されており、
該4本のポストのうちの前側2本のポストと後側2本のポストとは、上記ベース台車部に対していずれか2本が前後方向にスライドして、前後方向への長さが異なる複数種類の上記メインボディを位置決めを行って載置するよう構成してあることを特徴とする搬送台車。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送台車において、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、
上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態は、該ベース台車部又は該床下ピットのいずれかに複数のコロを設けて形成し、
上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、該作業台車部と該床面又は該床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成し、
上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、該ベース台車部と該床面又は該床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成したことを特徴とする搬送台車。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送台車において、該搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されて、複数台が連なって移動するよう構成したことを特徴とする搬送台車。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送台車を用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、
該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ライン。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送台車を用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、
上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−168245(P2011−168245A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36250(P2010−36250)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】