説明

搬送容器

【課題】
物質を貯留する容器への着脱が容易であり、保温作業性に優れた搬送容器を提供する。
【解決手段】
貯留物3を貯留する容器2と、容器2の内部に脱着可能に挿入され、貯留物3の温度制御を行う温度制御装置4と、貯留物3を攪拌すべく軸体52に攪拌羽根53を設けた軸部材54及び軸部材54を回転させる駆動源51を備えた攪拌機5とを有する搬送容器において、温度制御装置4の挿入方向視における温度制御装置4の輪郭内に又は輪郭により軸体52の軸通部4cを形成するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
貯留物を貯留する容器と、当該容器内部に脱着可能に挿入され、前記貯留物の温度制御を行う温度制御装置と、前記貯留物を攪拌すべく軸体に攪拌羽根を設けた軸部材及び当該軸部材を回転させる駆動源を備えた攪拌機とを有する搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
耐水性の糊など、温度低下によりゲル化し、加熱することで元の状態に戻る物質を長時間搬送する場合、当該物質のゲル化防止のため、保温材等で容器周囲を覆った状態で搬送をする手段や、長時間搬送による温度低下のためゲル化した前記物質を、搬送後において、加熱装置等で容器周囲から再度加熱することにより元の状態に戻す手段などが採られている。
【0003】
一方、据え置き状態で用いるような一般的な容器に対しては、貯留物を加熱するため、容器内部に温度制御装置を取り付け、内部から加熱する手段がある。さらに、温度制御装置とともに攪拌機を容器内部に取り付け、加熱とともに攪拌をするより効果的な手段もある(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−209765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保温材等で搬送容器周囲を覆う手段は、保温材等のため容器を含めた全体が非常に重くなること、コンテナなど大型の容器には適用し難いことなどの問題がある。他方、搬送後に加熱する手段は、容器の外壁を通して前記物質を加熱するため加熱効率が低いなどの問題があった。
【0006】
これに対して、容器内部から加熱及び攪拌する手段を前記物質の搬送容器に用いれば、前記物質を搬送前に十分に加熱しておき、搬送中は保温材等で容器周囲を被覆しなくとも、搬送後に温度低下によりゲル化した前記物質を、容器内部に取り付けられた温度制御装置及び攪拌機で再び加熱及び攪拌すればよく、この場合、内部から直接加熱するため加熱効率が低いという問題は回避できる。また、大型容器に対してもこの手段を適用することは可能である。
【0007】
しかしながら、温度制御装置と攪拌機とをすべての搬送容器内部に取り付けたのではコストが高くなる。また、搬送先での貯留物の排出後、容器内部が空の状態では必要のない温度制御装置及び攪拌機が取り付けられたままでは非効率である。
【0008】
そこで、温度制御装置と攪拌機とを容器に対して夫々着脱可能にして、当該装置等を搬送元及び搬送先のみに備えておくことが考えられる。しかし、当該構成では、搬送時に当該装置等を夫々着脱しなければならず、着脱作業が煩雑なものとなるという問題が生じる。さらに、温度制御装置と攪拌機とを容器内部に夫々挿入する際に、温度制御装置と攪拌機の軸体とが離間して配置されると、軸体近傍の貯留物に十分熱が伝わるまで時間がかかる。したがって、容器内部のゲル化した前記物質が粘度の高い物質である場合には、貯留物が温度変化により攪拌機の軸体に絡み付き、回転を妨げることとなる。この結果、攪拌機の回転に対する抵抗が発生し、攪拌効率が低下するという問題が生じる。
【0009】
また、上述の問題を回避するため、容器内部に挿入される温度制御装置の挿入側端部に軸体を貫入して当該装置と攪拌機とを一体化させたとしても、前記物質が温度制御装置端部の貫入口の隙間から温度制御装置内部に浸入し、目詰まりを生じさせるなどの問題が発生する。
【0010】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、物質を貯留する容器への着脱が容易であり、保温作業性に優れた搬送容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、貯留物を貯留する容器と、当該容器内部に脱着可能に挿入され、前記貯留物の温度制御を行う温度制御装置と、前記貯留物を攪拌すべく軸体に攪拌羽根を設けた軸部材及び当該軸部材を回転させる駆動源を備えた攪拌機とを有する搬送容器において、前記温度制御装置の挿入方向視における前記温度制御装置の輪郭内に又は輪郭により前記軸体の軸通部が形成されている点にある。
【0012】
本構成のごとく、温度制御装置の挿入方向視における当該装置の輪郭内に又は輪郭により軸体の軸通部が形成されることにより、温度制御装置と攪拌機とがコンパクトに構成され、当該装置等の容器への着脱が容易になる。また、攪拌機の軸体を覆うように温度制御装置が形成されることにより、軸体近傍の貯留物が優先的に加熱される。したがって、貯留物が温度変化により攪拌機の軸体に絡み付き、回転を妨げる性質を有する物質であっても、軸体近傍の絡み付く当該貯留物をかかる加熱で元の状態に戻すことにより、攪拌機の回転に対する抵抗を低減することができ、効率的な攪拌が可能になる。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、前記温度制御装置の外周面上に、前記軸体の表面が接することなく軸通する溝部が形成されている点にある。
【0014】
本構成のごとく、前記温度制御装置の外周面上に溝部が形成されることで、前記軸体を覆うように温度制御装置が形成されるとともに、溝部が外部にあることから洗浄作業も容易になる。特に、温度制御装置に付着した貯留物が粘度の高い物質の場合、その除去作業が容易になる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、前記温度制御装置は、熱源と当該熱源の周囲を満たす熱媒とを内部に設けている点にある。
【0016】
本構成のごとく、熱源の周囲に熱媒を設けることで、貯留物が直接熱源に触れることがなく、貯留物の焦げ付きを回避することができる。また、装置内部の一部分に熱源を配置し、熱媒により熱を装置全体に伝えることで、装置全体に熱源を配置する必要がなくなる一方、効率的な加熱が可能になる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、前記温度制御装置と前記攪拌機とを一体のユニットに構成してあり、当該ユニットを前記容器に装着及び脱着するための把持手段を前記ユニットに設けている点にある。
【0018】
前記温度制御装置及び攪拌機は、前記容器と装着及び脱着可能に形成されている。本構成のごとく、前記温度制御装置と前記攪拌機とを一体のユニットに構成し、当該ユニットを前記容器に装着及び脱着するための把持手段を前記ユニットに設けることで、清掃や搬送時などにおける前記容器に対する装着及び脱着作業が容易になる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、前記容器の底部は、下方に尖形で、その先端部に前記貯留物を排出する排出口が形成されており、かつ、前記攪拌羽根が当該排出口に近設されている点にある。
【0020】
容器の底部を下方に尖形にし、その先端部に排出口を設けることで、容器内部の貯留物の排出が容易になる。また、排出口近傍に攪拌羽根を設けることにより、貯留物が混合物の場合、前記攪拌羽根が位置する容器内部下層に沈殿した一部の構成物質が効果的に攪拌されるとともに、排出直前で貯留物が十分に攪拌され、排出される貯留物の均質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る搬送容器の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に本発明に係る搬送容器1の断面図を示す。容器2は、四角柱状で、その上面中央に円形の挿入口2aが設けられている。底部は下方に尖形で、その端部には排出口2bが設けられており、排出バルブ6が連結されている。前記容器2の内部には、温度低下によりゲル化し、加熱することで元の状態に戻る性質を有する、例えば耐水性の糊などの貯留物3がある。
【0022】
図1、図2、図4及び図5に示すように、温度制御装置4は、円柱状で、その本体の径は前記挿入口2aの内径より若干小さく、当該挿入口2aから前記容器2の内部へ挿入可能である。一方、前記温度制御装置4の上面4aの径は、前記挿入口2aの外径よりも大きく形成されており、これにより前記温度制御装置4が係止される。前記温度制御装置4の外周面上には、軸心に平行にU字状の溝部4cが形成されている。前記溝部4cの前記温度制御装置4の上面4a側の溝口上には、軸部材54を回転させるための駆動源51が設けられている。前記上面4a上には貯留物の温度制御をするための操作部41も設けられている。なお、前記温度制御装置4の下面4b側には、当該装置が脱着したときに平面上に直立するよう支持足44が設けられている。図5に示すように、前記支持足44は、前記温度制御装置4の下面4bの外周上から下方に延びる等長の3本の支柱部とそれらの端部を連結する前記下面4bと同径のリング状の底部から構成される。
【0023】
また、図3及び図4に示すように、前記温度制御装置4の内部下方には、熱源42が前記温度制御装置4の上面4a位置から吊設されている。前記熱源42の周囲には、前記温度制御装置4の内部全体にわたり熱媒43が充填されている。前記熱媒43としては、例えば、水やグリセリンなどを用いる。特に、引火性もなく、かつ、すぐに蒸発することもないグリセリンを用いることが好ましい。前記熱媒43内部には図示しない温度センサがある。これにより前記熱媒43の温度を検知し、当該熱媒43の温度を制御することにより、間接的に前記貯留物3の温度を制御する。前記熱媒43を覆う前記温度制御装置4の本体外層には熱伝導性の高い素材が用いられる。そして、前記温度制御装置4の本体表面と前記貯留物3との間で熱交換が行われる。
【0024】
図1及び図5に示すように、攪拌機5は前記駆動源51及び前記軸部材54から構成される。前記攪拌機5は、前記温度制御装置4に対して、一体的に取り付けられ、一つのユニットを構成する。前記軸部材54は、軸体52及び攪拌羽根53からなる。前記軸体52の一端は前記駆動源51に連結され、その本体は前記溝部4cと接することなく当該溝部4cに沿って延出し、他端には攪拌羽根53が設けられている。前記攪拌羽根53は、前記温度制御装置4の下面4bの近傍に位置している。なお、前記駆動源51の回転数及び攪拌羽根53は、前記貯留物3の粘度等により変更可能に設計されている。
【0025】
本構成のように、温度制御装置4の外周面上には、軸心に平行にU字状の溝部4cが形成され、当該溝部に沿って前記軸体52が配置されることにより、温度制御装置4と攪拌機5とがコンパクトに構成され、容器2への着脱が容易になる。また、前記溝部4cは前記軸体52を覆うように形成してあるので、温度低下によりゲル化した前記貯留物3を前記温度制御装置4及び攪拌機5により加熱及び攪拌すると、当該溝部により前記軸体52周辺が効果的に加熱される。さらに、前記攪拌羽根53も前記温度制御装置4の下面4bの近傍にあるため、同様に当該攪拌羽根53周辺が効果的に加熱される。したがって、温度低下によりゲル化した前記貯留物3の粘度が高い場合でも、前記軸部材54の近傍の前記貯留物3を元の状態に戻すことにより、前記軸部材54に対する絡み付きを回避し、前記攪拌機5の回転に対する抵抗を低減して、加熱当初であっても効率的な攪拌が可能になる。
【0026】
また、前記温度制御装置4において、前記溝部4cは外部にあるため、洗浄作業も容易である。例えば、前記温度制御装置4に付着した前記貯留物3が糊などの場合、乾燥させた後、軸方向に沿って切れ目を入れることにより、簡単に剥がすことができ、その除去作業が容易になる。前記温度制御装置4の表面上にあらかじめ付着防止剤を塗布しておけば、より一層効果的である。
【0027】
温度制御装置の加熱手段が直に貯留物と接触する構造である場合、貯留物の性質によっては、加熱手段の表面で貯留物が焦げ付くという問題が発生する。本構成のように、前記熱源42の周囲を水やグリセリンなどの熱媒43で満たし、間接的に加熱を行うことで、こうした焦げ付きを起こす貯留物を加熱する場合にも適用することが可能である。また、本構成によれば、装置内部の一部分に配置された前記熱源42から、前記熱媒43により装置全体に効率良く熱を伝導することができる。
【0028】
前記温度制御装置4及び攪拌機5は前記容器2に対して着脱可能に形成されている。したがって、例えば、搬送元及び搬送先にて前記温度制御装置4及び攪拌機5を備えておけば、搬送元で当該温度制御装置4及び攪拌機5を脱着し、搬送先において再びこれらを装着することにより、搬送中における搬送容器の軽量化を図ることができる。そして、図1及び図6に示すように、前記ユニットに把持手段7を設けておけば、当該ユニットの前記容器2への装着及び脱着作業がより容易になる。ここでは、例えば、前記温度制御装置4の上面4a位置に把持手段7を設ける例を示した。前記把持手段7には、一対の四角筒体71が設けられている。前記四角筒体71は、フォークリフトのフォークが挿入可能に形成されている。フォークリフトのフォークを前記四角筒体71に挿入することにより、フォークリフトを用いて前記ユニットを移動させることができ、当該ユニットの前記容器2への装着及び脱着作業がより容易になる。
【0029】
さらに、貯留物が混合物の場合、その一部の構成物質が容器内部下層に沈殿してしまうという問題も発生する。本構成のように、前記排出口2bの近傍に前記攪拌羽根53を設けることで、前記容器2の内部下層に沈殿した一部の構成物質が効果的に攪拌されるとともに、排出直前で前記貯留物3が攪拌され、均質化された良好な状態の貯留物を提供することができる。また、本構成のごとく、前記容器2の底部を下方に尖形にすることで、前記容器2の内部の前記貯留物3を容易に排出することができる。そして、前記排出口2bに前記排出バルブ6を備えることで、例えば、搬送した容器を、容器内部の貯留物を使用する作業ラインにおける供給タンクとして、そのまま使用することも可能である。
【0030】
[別実施形態1]
上述の実施形態において、前記溝部4cはU字状に限らず、例えば、C字状など他の凹状の溝部で良い。
【0031】
[別実施形態2]
図7は本発明に係る搬送容器の別実施形態を示している。本実施形態における温度制御装置4は円柱状の3つのブロックに分割され、その一部が互い連結しており、各ブロックには軸体52が挿通する軸通路部4c’が軸心に沿って形成されている。そして、前記ブロック表面と貯留物3との間で熱交換が行われる。また、前記軸通路部4c’に挿通された前記軸体52の前記各ブロック間部及び先端部近傍に攪拌羽根53が設けられている。
【0032】
本実施形態によって、前記軸体52が温度制御装置4に設けられた軸通路部4c’に挿通することにより、温度制御装置4と攪拌機5とがコンパクトに構成され、温度制御装置4及び攪拌機5の容器2への着脱が容易であるとともに、前記軸体52周辺が効果的に加熱される。さらに、攪拌羽根53は温度制御装置の各ブロック近傍に位置しているので、同様に当該攪拌羽根53周辺も効果的に加熱される。したがって、温度低下によりゲル化した貯留物3の粘度が高い場合でも、軸部材54近傍の当該貯留物3を元の状態に戻すことにより、前記軸部材54に対する絡み付きを回避し、攪拌機の回転に対する抵抗を低減することができ、その結果、加熱当初であっても効率的な攪拌が可能になる。さらに、攪拌羽根53を複数設けることで、攪拌力を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る搬送容器の一実施形態を示す断面図
【図2】図1の温度制御装置の上面図
【図3】図1の温度制御装置の縦断面図
【図4】図1の温度制御装置のA−A線に沿った断面図
【図5】図1の温度制御装置及び攪拌機の斜視図
【図6】把持手段が設けられている図1の温度制御装置の上面図
【図7】本発明に係る搬送容器の別実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0034】
1 搬送容器
2 容器
2a 挿入口
2b 排出口
3 貯留物
4 温度制御装置
4a 温度制御装置上面
4b 温度制御装置下面
4c 溝部
4c’ 軸通路部
41 操作部
42 熱源
43 熱媒
44 支持足
5 攪拌機
51 駆動源
52 軸体
53 攪拌羽根
54 軸部材
6 排出バルブ
7 把持手段
71 四角筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留物を貯留する容器と、当該容器内部に脱着可能に挿入され、前記貯留物の温度制御を行う温度制御装置と、前記貯留物を攪拌すべく軸体に攪拌羽根を設けた軸部材及び当該軸部材を回転させる駆動源を備えた攪拌機とを有する搬送容器において、
前記温度制御装置の挿入方向視における前記温度制御装置の輪郭内に又は輪郭により前記軸体の軸通部が形成されている搬送容器。
【請求項2】
前記温度制御装置の外周面上に、前記軸体の表面が接することなく軸通する溝部が形成されている請求項1に記載の搬送容器。
【請求項3】
前記温度制御装置は、熱源と当該熱源の周囲を満たす熱媒とを内部に設けている請求項1又は2に記載の搬送容器。
【請求項4】
前記温度制御装置と前記攪拌機とを一体のユニットに構成してあり、当該ユニットを前記容器に装着及び脱着するための把持手段を前記ユニットに設けている請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送容器。
【請求項5】
前記容器の底部は、下方に尖形で、その先端部に前記貯留物を排出する排出口が形成されており、かつ、前記攪拌羽根が当該排出口に近設されている請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−315731(P2006−315731A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141278(P2005−141278)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(501233433)鈴木糊工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】