説明

搬送方法

【課題】 被搬送物を搬送経路上で分散させるに際し、被搬送物に衝撃的外力を加えず、被搬送物に損傷を与えないようにすること。
【解決手段】 投入コンベア10と分散コンベア20を交差配置し、投入コンベア10が投入する被搬送物1を分散コンベア20の搬送直交方向に区画して定めた複数のレーン21〜23のそれぞれに分散させる搬送方法であって、分散コンベア20の各レーン21〜23の摩擦抵抗の分布を変化させるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投入コンベアから分散コンベアに投入される被搬送物を、分散コンベアに定めた各レーンのそれぞれに分散する搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を分散コンベア上で分散する搬送装置として、特許文献1に記載の如く、分散コンベアの搬送面に沿って左右に揺動するスイングアームを有し、スイングアームの揺動タイミングの制御によって被搬送物を分散コンベアの搬送面上で左右に分散するものがある。
【特許文献1】特開平11-139544
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の搬送装置は、スイングアームが被搬送物に衝撃的外力を与えて被搬送物を左右に分散させるものであり、被搬送物に損傷を与えるおそれがある。特に、被搬送物がPETボトルの如くの薄肉容器であったり、加熱飲料を充填した高温軟質容器であるとき、容器のへこみやキズつきを生じ易い。
【0004】
本発明の課題は、被搬送物を搬送経路上で分散させるに際し、被搬送物に衝撃的外力を加えず、被搬送物に損傷を与えないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、投入コンベアと分散コンベアを交差配置し、投入コンベアが投入する被搬送物を分散コンベアの搬送直交方向に区画して定めた複数のレーンのそれぞれに分散させる搬送方法であって、分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させるようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1、図2の搬送装置100は、投入コンベア10と分散コンベア20をそれらの搬送方向が互いに直交するように交差配置し、投入コンベア10が1列状(多列状でも可)にて投入する、加熱液体を充填されていて高温軟質状をなすPETボトル等の被搬送物1を、分散コンベア20の搬送直交方向(幅方向)に区画して定めた複数のレーン、本実施例では3列をなす第1〜第3のレーン21〜23のそれぞれに分散させるものである。
【0007】
尚、本実施例において模式的に示す投入コンベア10と分散コンベア20は、無端周回状のベルトコンベアの他、トップチェーンコンベアを採用できる。
【0008】
搬送装置100は、分散コンベア20の各レーン21〜23の搬送面自体の摩擦抵抗の分布を変化させる。本実施例の分散コンベア20は、各レーン21〜23のそれぞれをそれらの長手方向で一定間隔に分割した複数のゾーンZの連設帯からなるものとし、投入コンベア10寄りの各レーン21、22の各ゾーンを、それらの搬送面が投入コンベア10から投入された被搬送物1を素通り等させて止めない低摩擦抵抗部分にて形成される低摩擦抵抗ゾーンZ1と、被搬送物1を止める高摩擦部分にて形成される高摩擦抵抗ゾーンZ2の組合せからなるものとした。投入コンベア10から最も遠いレーン23は、全ゾーンを高摩擦抵抗ゾーンZ2からなるものとした。
【0009】
分散コンベア20は、各レーン21、22の低摩擦抵抗ゾーンZ1では潤滑剤を供給され、高摩擦抵抗ゾーンZ2では潤滑剤が供給されない。低摩擦抵抗ゾーンZ1に好適に用い得る潤滑剤としては、界面活性剤を主成分とし、水で希釈して用いる「スライダー」を用いることができる。「スライダー」は、例えばルボクラーHN(エコラボ株式会社の商品名)、スライダーC430(大三工業株式会社の商品名)を採用でき、各レーン21、22の低摩擦抵抗ゾーンZ1の表面に滴下され、被搬送物1との摩擦抵抗を小にする。
【0010】
搬送装置100は、分散コンベア20の各レーン21〜23の摩擦抵抗の分布を変化させる手段として、制御手段30、検知手段PH1〜PH3、潤滑剤供給ノズルN1、N2を有する。検知手段PH1〜PH3は、光電管(透過式又は反射式)等からなり、分散コンベア20の各レーン21〜23に対する被搬送物1の分散結果、具体的には当該レーン21〜23への被搬送物1の分散個数を検知する。潤滑剤供給ノズルN1、N2は、各レーン21、22において投入コンベア10から投入される被搬送物1のそれらレーン21、22への合流部より上流側で、それらレーン21、22の上部に配置され、各レーン21、22の低摩擦ゾーンZ1になるべきゾーンへ潤滑剤を供給する。制御手段30は、分散コンベア20の各レーン21〜23について、検知手段PH1〜PH3が検知した被搬送物1の分散結果に応じて、各潤滑剤供給ノズルN1、N2を供給制御し、各レーン21〜23の摩擦抵抗の分布(低摩擦抵抗ゾーンZ1と高摩擦抵抗ゾーンZ2の分布)を変化させ、各レーン21〜23に対する被搬送物1の分散状態を制御する。
【0011】
制御手段30は、各検知手段PH1〜PH3の検知結果に応じて、各レーン21、22に対する各潤滑剤供給ノズルN1、N2を供給制御して各潤滑剤供給ノズルN1、N2によるレーン21、22への潤滑剤供給タイミング(t:潤滑剤供給期間、a:潤滑剤供給量)を図3(A)、(B)のそれぞれに示す如くに制御することにより、投入コンベア10から投入される被搬送物1を分散コンベア20の各レーン21〜23に対し所望の目標分散状態に分散でき、例えば図2に示す如くに交互に均等分散できる。
【0012】
尚、投入コンベア10による被搬送物1の搬送速度をv0、分散コンベア20による被搬送物1の搬送速度をvaとするとき、v0は投入コンベア10から出る被搬送物1が第1と第2のレーン21、22の低摩擦抵抗ゾーンZ1を素通りして第3レーン23にまで到達できる初速度を当該被搬送物1に与え得る速度とし、投入コンベア10から出る被搬送物1が分散コンベア20の各レーン21〜23上の被搬送物1に追突しないようにするためにv0<vaとする。
【0013】
以下、搬送装置100における被搬送物1の具体的分散制御動作について説明する(図4、図5)。図4において、投入コンベア10はモータM1により駆動され、分散コンベア20はモータM2により駆動され、潤滑剤はタンク40からポンプPにより吐出され、制御手段30により開閉制御される開閉弁V1、V2を介して潤滑剤供給ノズルN1、N2から供給される。図5において、V1OFF、V2OFFは開閉弁V1、V2が閉弁し、V1ON、V2ONは開閉弁V1、V2が開弁し、M1OFF、M2OFFはモータM1、M2が停止し、M1ON、M2ONはモータM1、M2が駆動し、PH1ON、PH2ON、PH3ONは各レーン21〜23への被搬送物1の分散個数が規定個数に達したことを検知手段PH1、PH2、PH3が検知したことを意味する。
【0014】
(1)搬送装置100の運転開始時には、開閉弁V1、V2を閉弁した状態で、投入コンベア10のモータM1、分散コンベア20のモータM2を駆動し、投入コンベア10から分散コンベア20へ被搬送物1を投入する。投入コンベア10から出た被搬送物1は分散コンベア20の第1レーン21に最初に入るものの、当該第1レーン21は開閉弁V1の閉弁により全ゾーンを高摩擦抵抗ゾーンZ2とされており、被搬送物1は第1レーン21に止められ、当該第1レーン21に集中的に分散することがくり返される。
【0015】
(2)検知手段PH1が第1レーン21に分散された被搬送物1の個数が規定個数に達したことを検知すると、検知手段PH1のカウントをリセットするとともに、開閉弁V1を開き、開閉弁V2を閉弁し、投入コンベア10のモータM1、分散コンベア20のM2を駆動し、投入コンベア10から分散コンベア20へ被搬送物1を投入する。投入コンベア10から出た被搬送物1は、分散コンベア20の第1レーン21が開閉弁V1の開弁により全ゾーンを低摩擦抵抗ゾーンZ1とされており、分散コンベア20の第2レーン22が開閉弁V2の閉弁により全ゾーンを高摩擦抵抗ゾーンZ2とされているため、第1レーン21を素通りし、第2レーン22に止められ、当該第2レーン22に集中的に分散することがくり返される。
【0016】
(3)検知手段PH2が第2レーン22に分散された被搬送物1の個数が規定個数に達したことを検知すると、検知手段PH2のカウントをリセットするとともに、開閉弁V1、V2を開弁し、投入コンベア10のモータM1、分散コンベア20のモータM2を駆動し、投入コンベア10から分散コンベア20へ被搬送物1を投入する。投入コンベア10から出た被搬送物1は、分散コンベア20の第1と第2のレーン21、22が開閉弁V1、V2の開弁によりそれらの全ゾーンを低摩擦抵抗ゾーンZ1とされているため、それらのレーン21、22を素通りし、第3レーン23に入り、当該第3レーン23に集中的に分散することがくり返される。
【0017】
(4)検知手段PH3が第3レーン23に分散された被搬送物1の個数が規定個数に達したことを検知すると、検知手段PH3のカウントをリセットする。
搬送装置100が運転停止せしめられるまで、上述(1)〜(4)をくり返す。
【0018】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(請求項1、5)
(a)分散コンベア20の各レーン21〜23の摩擦抵抗の分布を変化させることにより、被搬送物1の各レーン21〜23への分散状態を調整できる。即ち、各レーン21〜23が低摩擦抵抗部分と高摩擦抵抗部分をもち、投入コンベア10から当該レーン21〜23に入った被搬送物1のうち、低摩擦抵抗部分に入った被搬送物1は滑って隣りのレーンに移り、高摩擦抵抗部分に入った被搬送物1は滑らずにそのレーンに止まる。被搬送物1に衝撃的外力を加えずに、被搬送物1を分散コンベア20上の各レーン21〜23に分散でき、被搬送物1に損傷を与えない。
【0019】
(請求項2、6)
(b)分散コンベア20の各レーン21〜23に低摩擦抵抗ゾーンZ1と高摩擦抵抗ゾーンZ2を設けることにより、被搬送物1を分散コンベア20上の各レーン21〜23の高摩擦抵抗ゾーンZ2に確実に止め、被搬送物1の各レーン21〜23への分散精度を向上できる。
【0020】
(請求項3、7)
(c)分散コンベア20の各レーン21〜23に設ける低摩擦抵抗ゾーンZ1と高摩擦抵抗ゾーンZ2を、潤滑剤の供給の有無により簡易かつ確実に形成できる。
【0021】
(請求項4、8)
(d)分散コンベア20の各レーン21〜23に対する被搬送物1の分散結果に応じて、各レーン21〜23の摩擦抵抗の分布を変化させることにより、各レーン21〜23に対する被搬送物1の分散状態を簡易かつ確実に調整できる。
【0022】
本発明において、分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布の変化は、潤滑剤の供給の有無による以外の他の手法によるものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は搬送装置を示す模式斜視図である。
【図2】図2は搬送装置を示す模式平面図である。
【図3】図3は分散コンベアの第1レーンと第2レーンの潤滑剤供給制御図である。
【図4】図4は搬送装置を示す制御系統図である。
【図5】図5は搬送装置の制御流れ図である。
【符号の説明】
【0024】
1 搬送物
10 投入コンベア
20 分散コンベア
21〜23 レーン
30 制御手段
100 搬送装置
Z1 低摩擦抵抗ゾーン
Z2 高摩擦抵抗ゾーン
PH1〜PH3 検知手段
N1、N2 潤滑剤供給ノズル
V1、V2 開閉弁
M1、M2 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入コンベアと分散コンベアを交差配置し、投入コンベアが投入する被搬送物を分散コンベアの搬送直交方向に区画して定めた複数のレーンのそれぞれに分散させる搬送方法であって、
分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させる搬送方法。
【請求項2】
前記分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布が、投入コンベアから投入された被搬送物を止めない低摩擦抵抗ゾーンと、被搬送物を止める高摩擦抵抗ゾーンの組合せからなる請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記分散コンベアの各レーンで、低摩擦抵抗ゾーンでは潤滑剤を供給し、高摩擦抵抗ゾーンでは潤滑剤を供給しない請求項2に記載の搬送方法。
【請求項4】
前記分散コンベアの各レーンに対する被搬送物の分散結果に応じて、各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させ、各レーンに対する被搬送物の分散状態を調整する請求項1〜3のいずれかに記載の搬送方法。
【請求項5】
投入コンベアと分散コンベアを交差配置し、投入コンベアが投入する被搬送物を分散コンベアの搬送直交方向に区画して定めた複数のレーンのそれぞれに分散させる搬送装置であって、
分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させる手段を有する搬送装置。
【請求項6】
前記分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布が、投入コンベアから投入された被搬送物を止めない低摩擦抵抗ゾーンと、被搬送物を止める高摩擦抵抗ゾーンの組合せからなる請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記分散コンベアの各レーンで、低摩擦抵抗ゾーンでは潤滑剤が供給され、高摩擦抵抗ゾーンでは潤滑剤が供給されない請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記分散コンベアの各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させる手段が、
分散コンベアの各レーンに対する被搬送物の分散結果を検知する検知手段と、
検知手段が検知した被搬送物の分散結果に応じて、各レーンの摩擦抵抗の分布を変化させ、各レーンに対する被搬送物の分散状態を制御する制御手段とを有してなる請求項5〜7のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−31021(P2007−31021A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213342(P2005−213342)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】