説明

搬送用テーブルのレベル差検出方法および装置

【課題】自動的かつリアルタイムにパスラインのレベル差を検出する搬送用テーブルのレベル差検出方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】個別に駆動用電動機を有するローラー群で構成される搬送用テーブルのレベル差検出方法において、搬送物を搬送している時の各ローラーの前記電動機の負荷電流値に基づき、パスラインのレベル差を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台以上のローラーで構成され、各々のローラーに1対lで設置された電動機により各々のローラーを駆動する方式の搬送用テーブルの各々のローラーレベル差を検出する搬送用テーブルのレベル差検出方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼板などの物品の搬送に、ローラーテーブルが産業界で広く用いられてきている。この搬送用ローラーテーブルでは、各ローラーの水平レベルを一致させて平坦なパスラインを形成することが求められる。
【0003】
搬送用テーブルパスラインのレベル差は、電動機トルクが搬送物に伝達されないために他モータの負荷が増大し、場合によってはトルク不足で搬送 不可能となるといったトラブルや、搬送物が蛇行するといったトラブルの原因となるためである。
【0004】
しかしながら、ローラーテーブルを構成する各ローラーは、繰り返しの使用によって表面が摩耗する結果、ローラー間における水平レベルに較差が不可避的に生ずる。そこで、工場の定修日などを利用して、定期的にローラー径の測定、あるいは、パスラインレベルの測定を実施することでパスラインのレベル差を確認し、レベル差があればローラーを交換するなどの処置を実施している。
【0005】
ローラーテーブルにおけるローラーの水平レベルを検出する技術として、様々なものがこれまで提案されている。例えば、特許文献1には、「ローラーテーブルにおけるローラーレベルの測定方法およびその装置」と称する技術が開示されている。この技術は、ローラーの少なくとも3つのローラーに跨がる長さの滑動面を底部に有する台車を、ローラーテーブル上に載置し、該台車の滑動面の上方に滑動面と平行の測定基準面を設定し、この測定基準面から台車下のローラー周面までの最短距離を、台車下に位置する全てのローラーについて測定するとともに、台車滑動面の水平面に対する傾斜角度を測定し、これら測定結果に基いて、台車下のローラー群におけるローラー周面の相対的な水平レベル差を算出するものである。
【0006】
また、特許文献2には、「ローラーテーブルのパスライン測定システム」と称する技術が開示されている。この技術は、ローラーの位置を検出するローラー位置検出手段と、複数の非接触距離計と、装置本体の傾斜を計測する傾斜計と、ローラーの相対的高さを算出する傾斜補正手段と、ローラーの高さ補正データを算出する高さ補正手段とを備えたローラーテーブル上を移動可能なパスライン計測装置に関するものである。
【特許文献1】特開平10−132551号公報
【特許文献2】特開平9−210672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、ローラーに跨がる長さの滑動面を底部に有する台車ないしはローラーテーブル上を移動可能なパスライン計測装置などといった特定の装置を設けなければならない、しかも測定は搬送物がローラーテーブル上にないタイミングで行う必要があり、常時測定を行うことができないといった問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自動的かつリアルタイムにパスラインのレベル差を検出する搬送用テーブルのレベル差検出方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、個別に駆動用電動機を有するローラー群で構成される搬送用テーブルのレベル差検出方法において、搬送物を搬送している時の各ローラーの前記電動機の負荷電流値に基づき、パスラインのレベル差を検出することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出方法である。
【0010】
また本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の搬送用テーブルのレベル差検出方法において、前記負荷電流値が、零又は無負荷電流値である電動機があり、該電動機の前後に位置する電動機の負荷電流値が、零又は無負荷電流値を超える場合に、パスラインのレベル差があると判断することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出方法である。
【0011】
また本発明の請求項3に係る発明は、個別に駆動用電動機を有するローラー群で構成される搬送用テーブルのレベル差検出装置において、前記電動機の負荷電流を検出する電流検出器と、検出した負荷電流値を収集し、比較・演算する比較器とを備えることを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出装置である。
【0012】
さらに本発明の請求項4に係る発明は、請求項3に記載の搬送用テーブルのレベル差検出装置において、前記比較器は、前記負荷電流値が、零又は当該電動機の無負荷電流値であり、当該電動機の前後に位置する電動機の負荷電流値が、零又は無負荷電流値を超える場合に、パスラインのレベル差があると判断することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、搬送時の各ローラーの電動機負荷電流を検出し、他ローラーの電動機負荷電流と比較することで、ローラーの摩耗等により発生するパスラインのレベル差を検出するようにしたので、自動的かつリアルタイムにパスラインのレベル差を検出することができる。これにより、電動機トルク不足で搬送が不可能となるといったトラブルや、搬送物が蛇行するといったトラブルをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図面を参照して説明を行う。図4は、本発明の処理手順例を示すフローチャートである。
【0015】
先ず、搬送用テーブルローラーの各々のローラーに1対lで設置された各電動機の内、搬送物を搬送中のテーブルローラーを駆動する電動機の負荷電流値を電流検出器にて収集する(負荷電流値収集(Step01))。
【0016】
次に、収集した負荷電流値が、零又は無負荷電流値であるものがないかを調べる。なお、無負荷電流値については、予めそれぞれの電動機の無負荷電流値を測定しておき、この値と負荷電流値を比べる(判断1(Step02))。
【0017】
そして、Step02で負荷電流値が、零又は無負荷電流値である場合(Yesの場合)は、該当する電動機の前後の電動機の負荷電流値を調べることとなる。すなわち、前後の電動機が零又は無負荷電流値を超える負荷電流値であるかどうかを調べる(判断2(Step03))。
【0018】
図1は、パスラインにレベル差がない場合を模式的に示す図である。パスラインにレベル差がないため、ローラー2は全て、搬送物1に接している状態であり、この時、各ローラーを駆動するそれぞれの電動機には搬送物1の搬送に応じた負荷電流が均一に流れている。
【0019】
一方、図2は、パスラインにレベル差が生じた場合を模式的に示す図である。図1または図2中、1は搬送物、2はテーブルローラー、2aは摩耗したテーブルローラー、2bは摩耗したテーブルローラーの直前のローラー、2cは摩耗したテーブルローラーの直後のローラーをそれぞれ表す。この図2では、ローラー2aが摩耗した例を示しており、ローラー径が小さくなると、そのローラーだけ搬送物1に接していない状態となる。この時、ローラー2aの負荷電流値は零、もしくは、無負荷電流値のみとなる。これに対して、摩耗したローラー2a以外のローラーの電動機には当然、搬送物1の搬送に応じた負荷電流が流れる。
【0020】
前後の電動機の電流値が零、もしくは、無負荷電流値を超える場合、前後のローラー上に搬送物がある、すなわち、前後のローラーの間に位置する対象ローラー上にも当然に搬送物があると考えるものである。しかしそれにも関わらず、対象ローラーの負荷電流が零、もしくは、無負荷電流値であるということは、ローラーと搬送物が接触していない、すなわちローラーの摩耗等によりパスラインが下がっている(パスラインレベル差あり(Step04))と判断する。この判断は、例えば、レベル差ありの表示(Step05)のように操作者に通知するようにするとよい。なお、Step02またはStep03で、Noの判断の場合は、パスラインレベル差なし(Step06)と判断する。
【0021】
このように搬送中の電動機電流を用いて パスラインレベルの変動を判断するようにしたため、自動的、かつ、即座にレベル差を検出でき、これによって搬送トラベルが発生する前に適切な対処を迅速に行うことができる。
【実施例】
【0022】
本発明の実施例を以下に記す。図3は、本発明の一実施例であるシステムの構成を示す図である。図中、1は搬送物、2はテーブルローラー、3は電動機、4は電流検出器、5は比較器、および6は表示器をそれぞれ示す。
【0023】
テーブルローラー2の各電動機3の負荷電流を検出する電流検出器4を設置し、各々の検出器で検出した電流値を比較器5に取りこむ。比較器5では、前述の図4の処理フローにて処理・判断を行う。
【0024】
搬送物1を搬送中のローラー2を駆動する電動機の負荷電流値が、零、もしくは、無負荷電流のみであった場合、該当するローラーの前後に位置するローラーの電動機電流値と比較する。そのとき、前後ローラーの電動機の電流値が零、もしくは、無負荷電流値を超える場合には、前後ローラー上に搬送物1がある、すなわち、該当するローラーの上にも搬送物1があると考えられる。しかしそれにも関わらず、該当するローラーの負荷電流が零、もしくは、無負荷電流であるということは、ローラーと搬送物が 接触していない、すなわちローラーの摩耗等によりパスラインが下がっていると判定する。
【0025】
このようにして、パスラインが下がっていると判定した場合は、表示器6にレベル差ありと表示し、操作者に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】パスラインにレベル差がない場合を模式的に示す図である。
【図2】パスラインにレベル差が生じた場合を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施例であるシステムの構成を示す図である。
【図4】本発明の処理手順例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1 搬送物
2 テーブルローラー
2a 摩耗したテーブルローラー
2b 摩耗したテーブルローラーの直前のローラー
2c 摩耗したテーブルローラーの直後のローラー
3 電動機
4 電流検出器
5 比較器
6 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に駆動用電動機を有するローラー群で構成される搬送用テーブルのレベル差検出方法において、
搬送物を搬送している時の各ローラーの前記電動機の負荷電流値に基づき、パスラインのレベル差を検出することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送用テーブルのレベル差検出方法において、
前記負荷電流値が、零又は無負荷電流値である電動機があり、
該電動機の前後に位置する電動機の負荷電流値が、零又は無負荷電流値を超える場合に、パスラインのレベル差があると判断することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出方法。
【請求項3】
個別に駆動用電動機を有するローラー群で構成される搬送用テーブルのレベル差検出装置において、
前記電動機の負荷電流を検出する電流検出器と、
検出した負荷電流値を収集し、比較・演算する比較器とを備えることを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送用テーブルのレベル差検出装置において、
前記比較器は、前記負荷電流値が、零又は当該電動機の無負荷電流値であり、
当該電動機の前後に位置する電動機の負荷電流値が、零又は無負荷電流値を超える場合に、パスラインのレベル差があると判断することを特徴とする搬送用テーブルのレベル差検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192603(P2007−192603A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9420(P2006−9420)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】