説明

搬送装置、記録装置及び搬送方法

【課題】軸部材に巻き重ねられた媒体の残量が少なくなった場合に、媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる搬送装置、記録装置及び搬送方法を提供する。
【解決手段】搬送制御部は、長尺状のシートを搬送方向における下流側に搬送させるべく第1のモーター及び第2のモーターが駆動する場合(ステップS11,S15)において、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間でのシートの撓み量が基準量以上とならない場合(ステップS12:NO)に、シートの撓み量が基準量以上となる場合の処理とは異なる規定処理を行う(ステップS18,S19,S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸部材にロール状に巻き重ねられた長尺状の媒体を、軸部材を回転させながら送り出すように搬送する搬送装置及び搬送方法と、該搬送装置を備える記録装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸部材にロール状に巻き重ねられた長尺状の媒体(一例として長尺状のシート)に対して記録を施す記録装置として、例えば特許文献1に記載の記録装置が提案されている。この記録装置に用いられるシートの終端は、軸部材に固定されている。
【0003】
記録装置においてシートを所定の搬送方向に搬送するための搬送装置は、ロール状に巻き重ねられたシートが収容される収容部よりも搬送方向における下流側に配置された送出しローラーと、該送出しローラーに駆動力を付与する駆動モーターとを備えている。また、収容部内には、シートが巻き重ねられた軸部材が移動したことを検出するための検出センサーが設けられている。
【0004】
そして、シートの搬送時には、送出しローラーの回転がシートを介して軸部材に伝達され、該軸部材が、送出しローラーの回転に連動して所定の回転方向に回転する。すると、収容部からシートが少しずつ送り出され、結果として、シートが搬送方向における下流側の記録領域に搬送される。このとき、軸部材に巻き重ねられたシートがほぼなくなると、シートの終端が固定されている軸部材は、送出しローラーの回転に基づく駆動力がシートを介して伝達されることにより、シートの搬送方向側に引きずられるようにして移動する。こうした軸部材の移動が検出センサーによって検出された場合に、シート切れになったと判断され、駆動モーターの駆動を停止させる規定処理が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−91658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シート切れを契機に軸部材を引きずるように移動させることは、シートの搬送に用いられる送出しローラーなどの各種部材及び送出しローラーの駆動源である駆動モーターにとって大きな負荷となる。このように大きな負荷が各種部材に付与されると、該部材の摩耗度合いが多くなり、メンテナンスの実行頻度や部品の交換頻度が高くなるおそれがあった。また、特許文献1におけるシート切れの検出方法は、軸部材にシートの終端が固定された場合に採用できる方法であって、軸部材にシートの終端が固定されない場合には採用できない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸部材に巻き重ねられた媒体の残量が少なくなった場合に、媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる搬送装置、記録装置及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の搬送装置は、長尺状の媒体がロール状に巻き重ねられた軸部材の回転によって、該媒体を搬送方向における下流側に送り出すように搬送する搬送装置であって、前記軸部材に対してロール状に巻き重ねられた媒体の収容部よりも前記搬送方向における下流側に配置され、媒体を前記搬送方向における下流側に送り出す送出しローラーと、前記軸部材及び前記送出しローラーを回転させるための駆動力を発生する駆動手段と、前記搬送方向において前記軸部材と前記送出しローラーとの間での媒体の撓み量を検出する検出手段と、媒体の前記搬送方向における下流側への搬送時には、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が予め設定された基準量以上となるように前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、媒体を前記搬送方向における下流側に搬送させるべく前記駆動手段が駆動する場合において、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上とならない場合に、撓み量が前記基準量以上となるときとは異なる規定処理を行う。
【0009】
なお、本発明では、軸部材には媒体の終端が固定されないものとする。
上記構成によれば、長尺状の媒体を搬送方向における下流側に搬送する場合には、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間での媒体の撓み量が基準量以上となるように、軸部材及び送出しローラーの回転が個別に調整される。そのため、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間で媒体を撓ませない場合と比較して、送出しローラーの回転に基づく応力が媒体を介して軸部材に伝達されにくい。その結果、媒体の搬送時において、該媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷の増大を抑制できる。
【0010】
また、長尺状の媒体を搬送方向における下流側に搬送させるべく駆動手段が駆動する場合において、媒体の撓み量が基準量以上とならなくなったときには、収容部内における媒体の残量が少なくなったと判断される。これは、媒体の終端が軸部材に固定されていないため、収容部内における媒体の残量が少なくなると該媒体の終端が軸部材から離間し、軸部材を回転させても媒体を送り出すことができなくなるためである。こうした場合には、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間での媒体の撓み量が基準量以上となるときの処理とは異なる規定処理が行われる。したがって、軸部材に巻き重ねられた媒体の残量が少なくなった場合に、媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる。
【0011】
本発明の搬送装置において、前記駆動手段は、媒体を前記搬送方向における下流側に搬送するべく前記送出しローラー及び前記軸部材を第1の回転方向に回転させる第1の駆動力と、媒体を前記軸部材に巻き取らせるべく前記送出しローラー及び前記軸部材を前記第1の回転方向とは逆方向である第2の回転方向に回転させる第2の駆動力とを発生可能であり、前記制御手段は、媒体を前記軸部材に巻き取らせる場合には、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以下となるように前記駆動手段を制御し、媒体を前記軸部材に巻き取らせるべく前記駆動手段が駆動する場合において、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以下にならないときには、撓み量が前記基準量以下となるときとは異なる前記規定処理を行う。
【0012】
上記構成によれば、長尺状の媒体を軸部材に巻き取らせる場合には、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間での媒体の撓み量が基準量以下となるように、軸部材及び送出しローラーの第2の回転方向への回転が個別に調整される。そのため、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間で媒体を撓ませない場合と比較して、軸部材の回転に基づく応力が媒体を介して送出しローラーに伝達されにくい。その結果、媒体を軸部材に巻き取らせる場合において、該媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷の増大を抑制できる。
【0013】
また、長尺状の媒体を軸部材に巻き取らせるべく駆動手段が駆動する場合において、媒体の撓み量が基準量以下とならなくなったときには、収容部内における媒体の残量が少なくなったと判断される。これは、媒体の終端が軸部材に固定されていないため、収容部内における媒体の残量が少なくなると該媒体の終端が軸部材から離間し、軸部材を回転させても媒体を巻き取ることができなくなるためである。こうした場合には、搬送方向において軸部材と送出しローラーとの間での媒体の撓み量が基準量以下となるときの処理とは異なる規定処理が行われる。したがって、軸部材に巻き重ねられた媒体の残量が少なくなった場合に、媒体の搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる。
【0014】
本発明の搬送装置において、前記検出手段は、前記収容部内に配置される検出器を有し、前記検出器は、媒体が前記軸部材にロール状に巻き重ねられた未使用のロール状媒体が前記収容部内に設置された場合に、前記軸部材を中心とする径方向において前記ロール状媒体の外周面よりも外側に配置される。
【0015】
上記構成によれば、媒体の収容部内における撓み量が、該収容部内に配置される検出器を用いて検出される。
本発明の搬送装置において、前記駆動手段は、前記軸部材を回転させるための駆動力を発生する第1のモーターと、前記送出しローラーを回転させるための駆動力を発生する第2のモーターとを有する。
【0016】
一つのモーターで軸部材及び送出しローラーの回転を制御する場合、モーターから軸部材への駆動力の大きさを調整するための機構と、モーターから送出しローラーへの駆動力の大きさを調整するための機構とを設ける必要がある。そのため、駆動手段の構成及び制御が複雑化するおそれがある。この点、本発明では、軸部材用の第1のモーターと、送出しローラー用の第2のモーターとが別々に設けられている。そのため、一つのモーターで軸部材及び送出しローラーの回転を制御する場合と比較して、駆動手段の構成及び制御を簡略化することができる。
【0017】
本発明の記録装置は、上記搬送装置と、前記送出しローラーよりも前記搬送方向における下流側に配置され、媒体に対して流体を付着させる記録手段と、を備える。
上記構成によれば、記録装置に搬送装置を備えても、上記搬送装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【0018】
本発明の記録装置において、前記規定処理は、前記軸部材への動力伝達を遮断させる処理と、前記収容部内における媒体の残量が少なくなった旨を報知する処理と、新たな媒体への交換を促す処理と、記録処理可能な記録量を報知する処理と、のうち少なくとも一つの処理を含む。
【0019】
上記構成によれば、収容部内における媒体の残量が少なくなったと判断された場合には、軸部材への動力伝達を遮断させる処理と、収容部内における媒体の残量が少なくなった旨を報知する処理と、新たな媒体への交換を促す処理と、記録処理可能な記録量を報知する処理と、のうち少なくとも一つの処理が実行される。
【0020】
本発明の搬送方法は、長尺状の媒体がロール状に巻き重ねられた軸部材を回転させることにより、該媒体を搬送方向における下流側に送り出すように搬送する搬送方法であって、前記軸部材に対してロール状に巻き重ねられた媒体の収容部よりも前記搬送方向における下流側には、該収容部側から送り出された媒体を前記搬送方向における下流側に送り出すために回転する送出しローラーが配置されており、前記搬送方向において前記軸部材と前記送出しローラーとの間での媒体の撓み量が予め設定された基準量以上となるように、前記軸部材及び前記送出しローラーを回転させる回転制御ステップと、媒体を前記搬送方向における下流側に送り出すべく前記軸部材及び前記送出しローラーが回転する場合において、前記媒体の撓み量が前記基準量以上とならないときに、撓み量が前記基準値以上となるときの処理とは異なる規定処理を行う規定制御ステップと、を有する。
【0021】
上記構成によれば、上記搬送装置と同等の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の記録装置を模式的に示す側面図。
【図2】撓み検知センサーの配置態様を説明する模式図。
【図3】記録装置の電気的構成の要部を示すブロック図。
【図4】コントローラーの機能構成の要部を示すブロック図。
【図5】送り出し処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図6】別の実施形態の撓み検知センサーを説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の記録装置11は、シリアルタイプのインクジェット式のプリンターである。こうした記録装置11は、長尺状の媒体の一例としての長尺状のシートSLをロール状に巻き重ねたロール紙(ロール状媒体)RSの状態で収容する収容部12と、該収容部12内から長尺状のシートSLを少しずつ送り出すようにして搬送する搬送装置13とを備えている。また、長尺状のシートSLの搬送方向Y(「副走査方向」ともいう。)における中途位置には、長尺状のシートSLに対して記録を施す記録手段の一例としての記録ユニット14が設けられている。
【0024】
搬送装置13は、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける上流側(収容部12側)から下流側(記録ユニット14側)に向けて搬送する搬送ユニット15を備えている。また、搬送装置13には、記録ユニット14の搬送方向Yにおける下流側(図1では左側)の切断位置P1で長尺状のシートSLを切断する切断ユニット16が設けられている。この切断ユニット16は、長尺状のシートSLにおいて記録済みとなった記録済み部分SCを長尺状のシートSLから切り離す。また、切断位置P1の搬送方向Yにおける下流側には、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを搬送方向Yにおける最下流に位置する排出トレイ18に排出する排出ユニット17が設けられている。
【0025】
本実施形態のロール紙RSは、搬送方向Yに直交する走査方向(本実施形態では、紙面と直交する方向であって、「主走査方向」ともいう。)に延びる軸部材20に長尺状のシートSLを巻き重ねてなる。本実施形態において、長尺状のシートSLの終端は、軸部材20に固定されていない。そのため、軸部材20に巻き重ねられるシートSLの残量が少なくなった場合には、シートSLの終端が軸部材20から離間する。
【0026】
また、軸部材20には、ロール紙RSが収容部12内にセットされた場合、図2に示すように、第1のモーター21がクラッチ機構部45を介して動力伝達可能な状態で連結される。このクラッチ機構部45は、制御装置60からの制御指令に基づき、第1のモーター21から軸部材20への動力伝達を許可する係合状態又は動力伝達を遮断する解放状態となるように構成されている。なお、クラッチ機構部45は、一例として、電磁式のクラッチが挙げられる。
【0027】
そして、第1のモーター21で発生した第1の駆動力が軸部材20に伝達されると、軸部材20が第1の回転方向R1に回転し、ロール紙RSは、長尺状のシートSLとして収容部12から収容部12外に送り出される。一方、第1のモーター21で発生した第2の駆動力が軸部材20に伝達されると、軸部材20が第1の回転方向R1とは逆方向の第2の回転方向R2に回転し、長尺状のシートSLは、軸部材20に巻き取られる。なお、シートSLの終端が軸部材20から離間した状態で軸部材20を回転させても、該軸部材20は空回りするだけである。具体的には、軸部材20を第1の回転方向R1に回転させても、シートSLは収容部12内から外部に送り出されない。また、軸部材20を第2の回転方向R2に回転させても、シートSLは軸部材20に巻き取られない。
【0028】
また、収容部12内には、該収容部12内でのシートSLが撓んでいることを検知するための検出器の一例としての接触式の撓み検知センサーSE2が設けられている。この撓み検知センサーSE2と軸部材20との間の第1距離L1は、収容部12内にセットされた未使用のロール紙RSの外周面RSaと軸部材20との間の第2距離L2よりも長い。すなわち、撓み検知センサーSE2は、軸部材20を中心とする径方向において未使用のロール紙RSの外周面RSaよりも軸部材20から離間した位置に配置されている。本実施形態では、撓み検知センサーSE2は、軸部材20の重力方向における下方側に配置されている。そして、撓み検知センサーSE2からは、該撓み検知センサーSE2にシートSLが接触した場合にはそれに応じた検知信号が制御装置60に出力される一方、該撓み検知センサーSE2にシートSLが接触しない場合にはそれに応じた検知信号が制御装置60に出力される。
【0029】
次に、搬送ユニット15について説明する。
図1に示すように、搬送ユニット15は、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に少しずつ送り出すための送出し部22と、該送出し部22の搬送方向Yにおける下流側に配置される搬送ローラー対23とを備えている。送出し部22は、長尺状のシートSLの裏面側に配置される送出しローラー22aと、長尺状のシートSLの表面側に配置される従動ローラー22bとを有している。すなわち、従動ローラー22bは、長尺状のシートSLを挟んで送出しローラー22aに対向配置されている。また、送出しローラー22aには、第2のモーター24が動力伝達可能な状態で連結されている。
【0030】
そして、第2のモーター24で発生した第1の駆動力が送出しローラー22aに伝達された場合、送出しローラー22aが第1の回転方向R1に回転すると共に、従動ローラー22bが送出しローラー22aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、送出し部22によって搬送方向Yにおける下流側に送り出される。一方、第2のモーター24で発生した第2の駆動力が送出しローラー22aに伝達された場合、送出しローラー22aが第2の回転方向R2に回転すると共に、従動ローラー22bが送出しローラー22aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、送出し部22によって搬送方向Yにおける上流側の収容部12内に戻される。したがって、本実施形態では、第1のモーター21、第2のモーター24及びクラッチ機構部45により、軸部材20及び送出しローラー22aを回転させるための駆動力を発生する駆動手段が構成される。
【0031】
搬送ローラー対23は、長尺状のシートSLを挟んで対向配置される搬送ローラー23a及び従動ローラー23bを有している。一例として、搬送ローラー23aは、長尺状のシートSLの裏面側に配置されると共に、従動ローラー23bは、長尺状のシートSLの表面側に配置されている。搬送ローラー23aには、搬送モーター25が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、搬送モーター25で発生した第1の駆動力が搬送ローラー23aに伝達された場合、搬送ローラー23aが第1の回転方向に回転すると共に、従動ローラー23bが搬送ローラー23aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、搬送ローラー対23によって搬送方向Yにおける下流側に搬送される。一方、搬送モーター25で発生した第2の駆動力が搬送ローラー23aに伝達された場合、搬送ローラー23aが第1の回転方向とは逆方向の第2の回転方向に回転すると共に、従動ローラー23bが搬送ローラー23aの回転に追随して従動回転する。その結果、長尺状のシートSLが、搬送ローラー対23によって搬送方向Yにおける上流側に戻される。
【0032】
搬送ローラー対23よりも搬送方向Yにおける上流側には、長尺状のシートSLの搬送方向Yにおける下流端(以下、「先端」ともいう。)を検出するための先端検出センサーSE1が設けられている。この先端検出センサーSE1からの検出信号は、記録装置11を制御する制御装置60に出力される。
【0033】
次に、切断ユニット16について説明する。
図1に示すように、切断ユニット16は、長尺状のシートSLから切断位置P1よりも搬送方向における下流側に位置する部分を切り離すカッター30を備えている。このカッター30には、切断用モーター32が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、切断用モーター32からの駆動力がカッター30に伝達された場合には、該カッター30が長尺状のシートSLを切断する。
【0034】
次に、排出ユニット17について説明する。
図1に示すように、排出ユニット17は、搬送方向Yに沿って配置される複数(本実施形態では2つ)の排出ローラー対35,36を備えている。各排出ローラー対35,36は、記録済み部分SCを挟持する駆動ローラー35a,36a及び従動ローラー35b,36bをそれぞれ有している。一例として、駆動ローラー35a,36aは、記録済み部分SCの裏面側に配置されると共に、従動ローラー35b,36bは、記録済み部分SCの表面側に配置されている。また、記録済み部分SCの裏面側に位置する駆動ローラー35a,36aには、排出用モーター38が動力伝達可能な状態で連結されている。そして、排出用モーター38からの駆動力が駆動ローラー35a,36aに伝達されると、各排出ローラー対35,36によって、記録済み部分SCが搬送方向Yにおける下流側に排出される。
【0035】
次に、記録ユニット14について説明する。
図1及び図3に示すように、記録ユニット14は、搬送方向Yに直交する走査方向X(図1では紙面と直交する方向)に延びるガイド軸40を備えている。このガイド軸40は、その長手方向における両端が記録装置11の図示しない本体ケースに支持されると共に、長尺状のシートSLの表面側(図1では上側)に配置されている。こうしたガイド軸40には、該ガイド軸40の長手方向(即ち、走査方向X)に沿って往復移動可能な状態でキャリッジ41が連結されている。このキャリッジ41は、キャリッジモーター43から伝達される駆動力に基づき走査方向Xに沿って移動する。
【0036】
また、キャリッジ41は、記録ヘッド44を支持している。この記録ヘッド44には、記録装置11の図示しないホルダー部に着脱自在な状態で装着された図示しないインクカートリッジから流体の一例としてのインクが供給される。こうした記録ヘッド44には、複数のノズル(図示略)と、該各ノズルに対応付けられた駆動素子とが設けられている。そして、ノズルからは、対応する駆動素子が駆動することによりインクが長尺状のシートSLの表面(図1では上面)に向けて噴射される。なお、搬送方向Yにおいて記録ヘッド44と同一位置であって且つ長尺状のシートSLの裏面側には、該シートSLを支持する図示しない支持部材が設けられている。
【0037】
次に、記録装置11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、記録装置11は、該記録装置11全体を制御する制御装置60を備えている。この制御装置60は、インターフェイス61を介してホスト装置HCのプリンタードライバーPDとの間で印刷データなどの各種情報を送受信可能とされている。
【0038】
制御装置60は、CPU62、ASIC63((Application Specific IC(特定用途向けIC))、ROM64、不揮発性メモリー65及びRAM66を有するコントローラー67を備えている。このコントローラー67は、バス68を介して各種ドライバー69,70,71,72,73,74,76に電気的に接続されている。そして、コントローラー67は、モータードライバー69〜74を介してモーター21,24,25,32,38,43を制御すると共に、ヘッド用ドライバー76を介して記録ヘッド44内の各駆動素子を個別に制御する。また、コントローラー67は、クラッチ機構部45の駆動を制御する。
【0039】
ROM64には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー65には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM66には、ホスト装置HCから受信した印刷データ、該印刷データの処理途中のデータ及び処理後のデータが格納される画像領域66aが設けられている。
【0040】
次に、本実施形態のコントローラー67について説明する。なお、図4では、明細書の説明理解の便宜上、各種ドライバー69〜74,76の図示を省略している。
図4に示すように、コントローラー67は、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部分として、データ処理部80、記録制御部81、切断制御部82及び制御手段としての搬送制御部84を備えている。
【0041】
データ処理部80は、インターフェイス61を介して受信した印刷データのうちコマンドを除いたデータを、印刷ドットが階調値で示されたビットマップデータに変換し、該ビットマップデータを展開する。そして、データ処理部80は、展開したデータに基づき、1パス分のビットマップデータを生成し、該1パス分のビットマップデータを記録制御部81に出力する。なお、「1パス」とは、インク噴射を伴う記録ヘッド44(即ち、キャリッジ41)の一回の走査方向Xへの移動のことを示している。
【0042】
また、データ処理部80は、インターフェイス61を介して受信した印刷データに含まれるコマンドを解析し、記録モード及び記録処理時における長尺状のシートSLの単位搬送量を取得する。そして、データ処理部80は、取得した記録モードに関する情報を記録制御部81に出力すると共に、取得した単位搬送量に関する情報を搬送制御部84に出力する。なお、記録モードとしては、一例として、印刷速度を重視したドラフト印刷モード及び印刷精度を重視した高詳細印刷モードが挙げられる。
【0043】
記録制御部81は、キャリッジ制御部85及びヘッド制御部86を有している。キャリッジ制御部85は、データ処理部80から入力された記録モードに基づき、記録処理時におけるキャリッジ41の移動速度、移動開始位置及び停止位置などの移動制御情報を設定する。そして、キャリッジ制御部85は、設定した移動制御情報に基づきキャリッジモーター43の駆動を制御する。
【0044】
ヘッド制御部86は、入力された1パス分のビットマップデータに基づき、記録ヘッド44に搭載される各駆動素子(図示略)の駆動を個別に制御する。すなわち、本実施形態では、記録制御部81は、キャリッジ41の走査方向Xへの移動と記録ヘッド44の駆動とを連動させることにより、長尺状のシートSLに記録を施す。そして、記録制御部81は、1パス分の記録が完了すると、その旨を搬送制御部84に出力する。
【0045】
切断制御部82は、搬送制御部84からシートSLの切断指令が入力された場合に、長尺状のシートSLを切断させるべく切断用モーター32の駆動を制御する。そして、切断制御部82は、シートSLの切断が完了した場合には、切断用モーター32の駆動を停止させると共に、切断が完了した旨を搬送制御部84に出力する。
【0046】
搬送制御部84には、データ処理部80から単位搬送量に関する情報が入力されると共に、先端検出センサーSE1及び撓み検知センサーSE2からの信号が入力される。こうした搬送制御部84は、紙送り制御部87及び排出制御部88を有している。紙送り制御部87は、先端検出センサーSE1からの検出信号に基づき長尺状のシートSLの先端を検知した場合、該検知結果に基づき、搬送モーター25の駆動、即ち長尺状のシートSLの搬送量を制御する。また、紙送り制御部87は、撓み検知センサーSE2からの検知信号に基づき、第1のモーター21及び第2のモーター24の駆動を制御する。なお、撓み検知センサーSE2からの検知信号に基づいた第1のモーター21及び第2のモーター24の制御方法については、後述する。
【0047】
また、紙送り制御部87は、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったことを検知した場合には、その旨をホスト装置HCにインターフェイス61を介して報知させる。そして、紙送り制御部87は、クラッチ機構部45を解放状態にし、新たなロール紙RSが収容部12内にセットされるまではクラッチ機構部45の解放状態を維持させる。その一方で、紙送り制御部87は、収容部12内に新たなロール紙RSがセットされたことを検知した場合にはクラッチ機構部45を係合状態とする。
【0048】
また、紙送り制御部87は、記録処理時に、記録制御部81から1パス分の記録が完了した旨が入力されると、単位搬送量だけ長尺状のシートSLが搬送されるように搬送モーター25の駆動を制御する。そして、紙送り制御部87は、長尺状のシートSLの搬送が完了すると、その旨を記録制御部81に出力する。すなわち、本実施形態では、長尺状のシートSLの搬送と記録ヘッド44によるインク噴射とが交互に行われることにより、長尺状のシートSLに画像が記録される。
【0049】
排出制御部88は、長尺状のシートSLから切り離された記録済み部分SCを排出するために排出用モーター38の駆動を制御する。
次に、本実施形態のコントローラー67が実行する各種制御処理ルーチンのうち送り出し処理ルーチンについて、図5に示すフローチャートに基づき説明する。この送り出し処理ルーチンは、撓み検知センサーSE2からの検知信号に基づき第1のモーター21及び第2のモーター24を駆動させるための処理ルーチンである。また、送り出し処理ルーチンは、搬送指令及び巻き戻し指令が入力された場合に、予め設定された所定周期毎に実行される。
【0050】
さて、送り出し処理ルーチンにおいて、搬送制御部84は、入力された指令を解析し、収容部12内からシートSLを送り出すのか否か(即ち、シートSLを軸部材20に巻き取らせるのか)を判定する(ステップS10)。この判定結果が肯定である場合、搬送制御部84は、収容部12内からシートSLを送り出すために、送出しローラー22aを第1の回転方向R1に回転させる(ステップS11)。すなわち、搬送制御部84は、第1の駆動力を発生させるべく第2のモーター24を制御する。
【0051】
続いて、搬送制御部84は、撓み検知センサーSE2からの検知信号に基づき、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触しているか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、撓み検知センサーSE2からの検知信号は、該撓み検知センサーSE2にシートSLが接触する場合と接触していない場合とでは異なる。そこで、本実施形態では、シートSLにおいて軸部材20から最も離間した部分が、軸部材20を中心とした径方向において撓み検知センサーSE2と同一位置若しくは該位置よりも離間した位置に位置する場合に、シートSLの撓み量が予め設定された基準量以上になったと判定される。したがって、本実施形態では、撓み検知センサーSE2及び搬送制御部84により、シートSLにおいて重力方向における最下端に位置する部分が、撓み検知センサーSE2と重力方向で同一位置又は該位置よりも下方に位置する場合に、シートSLの撓み量が予め設定された基準量以上になったと判定する検出手段が構成される。
【0052】
ステップS12の判定結果が肯定である場合、搬送制御部84は、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以上であると判断し、第1のモーター21を停止させる(ステップS13)。すなわち、搬送制御部84は、軸部材20を回転させない。続いて、搬送制御部84は、カウント値CTを「0(零)」にリセットさせ(ステップS14)、その後、送り出し処理ルーチンを一旦終了する。
【0053】
一方、ステップS12の判定結果が否定である場合、搬送制御部84は、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量未満であると判断し、軸部材20を第1の回転方向R1に回転させるべく第1のモーター21を駆動させる(ステップS15)。すなわち、搬送制御部84は、第1のモーター21から第1の駆動力を発生させる。なお、第1の駆動力は、収容部12内におけるシートSLの残量がほとんどない状態で送出しローラー22aが第1の回転方向R1に回転に回転する場合であっても、収容部12から外部へのシートSLの送出し量が、送出し部22による搬送ローラー対23側への送出し量よりも多くなるように設定されている。
【0054】
つまり、本実施形態では、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する場合、軸部材20は、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触しなくなったタイミングで第1の回転方向R1に回転し始め、撓み検知センサーSE2に接触したタイミングでシートSLの回転が停止される。
【0055】
続いて、搬送制御部84は、カウント値CTを「1」だけインクリメントする(ステップS16)。送り出し処理ルーチンは、一定周期毎に実行される処理であるため、カウント値CTは、第1のモーター21からの駆動力(第1の駆動力又は第2の駆動力)によって軸部材20が回転し始めてからの経過時間といってもよい。
【0056】
そして、搬送制御部84は、ステップS16で更新したカウント値CTが予め設定された基準カウント値CTth以上であるか否かを判定する(ステップS17)。この基準カウント値CTthは、一定回転速度で回転する軸部材20が2周回転するのに要する時間又は該時間よりも長時間に予め設定されている。ステップS17の判定結果が否定(CT<CTth)である場合、搬送制御部84は、送り出し処理ルーチンを一旦終了する。すなわち、カウント値CTが基準カウント値CTth未満となる間は、送出しローラー22aよりも搬送方向Yにおける上流側でのシートSLの撓み量が基準量以上となるように、軸部材20及び送出しローラー22aの回転が個別に制御される。この点で、本実施形態では、ステップS11,S12,S13,S14,S15により、回転制御ステップが構成される。
【0057】
一方、ステップS17の判定結果が肯定(CT≧CTth)である場合、搬送制御部84は、収容部12内に収容されるシートSLの残量が少なくなったと判断する。上述したように、長尺状のシートSLの終端は、軸部材20に固定されていない。そのため、収容部12内に収容されるシートSLの残量が少なくなると、シートSLの終端が軸部材20から自然に離間する。すると、軸部材20を第1の回転方向R1に回転させても、収容部12内からはシートSLを外部に送り出すことができなくなる。すなわち、軸部材20が空回りする。そこで、本実施形態では、軸部材20を2回転以上回転させても、撓み検知センサーSE2によってシートSLを検知できない場合には、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったことに起因して、該シートSLの終端が軸部材20から離間したと判断される。
【0058】
そして、搬送制御部84は、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったと判定される前(即ち、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以上である場合)の処理とは異なる規定処理を行う。具体的には、搬送制御部84は、第1のモーター21及び第2のモーター24を停止させ(ステップS18)、クラッチ機構部45を解放状態にする(ステップS19)。つまり、搬送制御部84は、第1のモーター21から軸部材20への動力伝達を遮断する。続いて、搬送制御部84は、ロール紙RSの交換を促す旨の交換報知処理を行う(ステップS20)。したがって、本実施形態では、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったと判定されてから実行されるステップS18,S19,S20により、規定制御ステップが構成される。その後、搬送制御部84は、送り出し処理ルーチンを一旦終了する。このように規定処理が実行されると、ロール紙RSの交換が検知されるまで送り出し処理ルーチンが実行されない。
【0059】
その一方で、ステップS10の判定結果が否定である場合、搬送制御部84は、シートSLを軸部材20に巻き取らせるために、送出しローラー22aを第2の回転方向R2に回転させる(ステップS21)。すなわち、搬送制御部84は、第2の駆動力を発生させるべく第2のモーター24を制御する。続いて、搬送制御部84は、上記ステップS12の判定処理と同様に、撓み検知センサーSE2からの検知信号に基づき、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触しているか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果が否定である場合、搬送制御部84は、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量未満であると判断し、その処理を前述したステップS13に移行する。
【0060】
一方、ステップS22の判定結果が肯定である場合、搬送制御部84は、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以上であると判断し、軸部材20を第2の回転方向R2に回転させるべく第1のモーター21を駆動させる(ステップS23)。すなわち、搬送制御部84は、第1のモーター21から第2の駆動力を発生させる。そして、搬送制御部84は、その処理を前述したステップS16に移行する。
【0061】
シートSLを軸部材20に巻き取らせる場合には、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以下となるように、軸部材20及び送出しローラー22aの回転が個別に制御される。具体的には、軸部材20は、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触したタイミングで第2の回転方向R2に回転し始め、撓み検知センサーSE2に接触しなくなったタイミングでシートSLの回転が停止される。ところで、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなって該シートSLの終端が軸部材20から離間した場合には、軸部材20を第2の回転方向R2に回転させても、シートSLを軸部材20に巻き取らせることができない。すなわち、軸部材20が空回りする。
【0062】
そこで、本実施形態では、シートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する場合と同様に、軸部材20を第2の回転方向R2に2回転以上回転させても、撓み検知センサーSE2にシートSLが接触し続ける場合には、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなって該シートSLの終端が軸部材20から離間したと判定される。その結果、ステップS18〜S20の処理が実行される。
【0063】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する場合には、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以上となるように、軸部材20及び送出しローラー22aの第1の回転方向R1への回転が個別に調整される。そのため、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でシートSLを撓ませない場合と比較して、送出しローラー22aの回転に基づく応力がシートSLを介して軸部材20に伝達されにくい。また、長尺状のシートSLを軸部材20に巻き取らせる場合には、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以下となるように、軸部材20及び送出しローラー22aの第2の回転方向R2への回転が個別に調整される。そのため、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でシートSLを撓ませない場合と比較して、軸部材20の回転に基づく応力がシートSLを介して送出しローラー22aに伝達されにくい。その結果、シートSLの搬送時において、該シートSLの搬送に必要な各種部材に加わる負荷の増大を抑制できる。
【0064】
(2)また、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送させるべく第1のモーター21及び第2のモーター24が駆動する場合において、シートSLの撓み量が基準量以上とならなくなったときには、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったと判断される。これは、シートSLの終端が軸部材20に固定されていないため、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなると該シートSLの終端が軸部材20から離間し、軸部材20を回転させてもシートSLを外部に送り出すことができなくなるためである。こうした場合には、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以上となるときの処理とは異なる規定処理が行われる。したがって、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなった場合に、シートSLの搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる。
【0065】
(3)また、長尺状のシートSLを軸部材20に巻き取らせるべく第1のモーター21及び第2のモーター24が駆動する場合において、シートSLの撓み量が基準量以下とならなくなったときには、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったと判断される。こうした場合には、搬送方向Yにおいて軸部材20と送出しローラー22aとの間でのシートSLの撓み量が基準量以下となるときの処理とは異なる規定処理が行われる。したがって、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなった場合に、シートSLの搬送に必要な各種部材に加わる負荷を増大させることなく、残量が十分にある場合の処理とは異なる規定処理を行うことができる。
【0066】
(4)シートSLの撓み量を、収容部12内に設けられた撓み検知センサーSE2を用いることにより容易に検出することができる。
(5)例えば、撓み検知センサーSE2を軸部材20の側方(例えば、図2における左側)に配置した場合には、シートSLを図2における左方側に撓ませるための機構を新たに設ける必要がある。この場合、収容部12内の構成が複雑化したり、収容部12の形状が複雑化したりする必要がある。この点、本実施形態では、撓み検知センサーSE2は、収容部12内において軸部材20の重力方向における下方側に配置されている。シートSLは、自重によって重力方向における下方側に撓む。そのため、撓み検知センサーSE2が設置される方向にシートSLを撓ませるための構成を特別に設ける必要がない分、収容部12内における構成を簡略化させることができる。
【0067】
(6)一つのモーターで軸部材20及び送出しローラー22aの回転を制御する場合、モーターから軸部材20への駆動力の大きさを調整するための機構と、モーターから送出しローラー22aへの駆動力の大きさを調整するための機構とを設ける必要がある。そのため、駆動手段の構成及び制御が複雑化するおそれがある。この点、本実施形態では、軸部材20用の第1のモーター21と、送出しローラー22a用の第2のモーター24とが別々に設けられている。そのため、一つのモーターで軸部材20及び送出しローラー22aの回転を制御する場合と比較して、駆動手段の構成及び制御を簡略化することができる。
【0068】
(7)本実施形態では、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったと判定された場合には、第1のモーター21から軸部材20への動力伝達が遮断される。そのため、軸部材20を無駄に回転させることを回避できる。また、記録装置11に接続されるホスト装置HCに、ロール紙RSの交換を促せることができる。そのため、ロール紙RSの交換の時期を、ユーザーに適切なタイミングで報知することができる。
【0069】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・実施形態において、送り出し処理ルーチンでは、ステップS17の判定結果が肯定になった場合、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったことを報知させてもよい。また、記録可能な記録量(例えば、写真などの印刷を行う場合には、印刷可能な枚数)を報知させてもよい。すなわち、規定処理は、軸部材20への駆動伝達を遮断させる処理、収容部12内におけるシートSLの残量が少なくなったことを報知させる処理、新たなロール紙RSへの交換を促す処理及び記録可能な記録量を報知させる処理のうち、少なくとも一つの処理を含んでいればよい。ただし、規定処理は、軸部材20への駆動力の伝達を遮断させる処理を含むことが好ましい。
【0070】
・実施形態において、収容部12内には、光学式の撓み検知センサー(検出器)を設けてもよい。図6に示すように、撓み検知センサーSE2Aは、検出光を発光する発光部50と、該発光部50からの検出光を受光する受光部51とを備えている。こうした撓み検知センサーSE2Aを軸部材20の重力方向における下方側に配置した場合、シートSLの撓み量が少ないと、受光部51は、発光部50からの検出光を受光できる。その一方で、シートSLの撓み量が多いと、発光部50からの検出光の少なくとも一部がシートSLによって遮光され、受光部51による受光量が少なくなる。すなわち、受光部51による受光量の変化に基づき、シートSLの撓み量が基準量以上であるか否かを検出してもよい。
【0071】
また、撓み検知センサーとして、磁気式のセンサーを用いてもよい。
・実施形態において、収容部12内においてシートSLを、軸部材20の側方に撓ませてもよい。この場合、撓み検知センサーSE2は、軸部材20の側方に配置される。
【0072】
・実施形態において、軸部材20及び送出しローラー22aを回転させるためのモーターを共通化させてもよい。この場合、モーターと送出しローラー22aとの間の動力伝達経路及びモーターと軸部材20との間の動力伝達経路には、動力の接・断を行うためのクラッチ機構部をそれぞれ設け、必要に応じて各クラッチ機構部を制御してもよい。
【0073】
・実施形態において、軸部材20の回転量を検知するためのセンサー(例えば、ロータリーエンコーダー)を設けてもよい。そして、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する場合において、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触しないときには、ロータリーエンコーダーからの検出信号に基づき軸部材20の回転量を取得してもよい。そして、軸部材20が2回転以上回転したことを検出した場合に、規定処理を実行してもよい。
【0074】
同様に、長尺状のシートSLを軸部材20に巻き取らせる場合において、シートSLが撓み検知センサーSE2に接触し続けるときには、ロータリーエンコーダーからの検出信号に基づき軸部材20の回転量を取得してもよい。そして、軸部材20が2回転以上回転したことを検出した場合に、規定処理を実行してもよい。
【0075】
・実施形態において、軸部材20を第1の回転方向R1又は第2の回転方向R2に回転させる場合には、該軸部材20の回転に基づくシートSLの送出し量のほうが送出しローラー22aの回転に基づくシートSLの送出し量よりも多くなるような速度であれば、軸部材20の回転速度を任意の速度に設定してもよい。
【0076】
例えば、軸部材20の回転速度を、そのときの記録モード(ドラフト印刷モード又は高詳細印刷モード)に応じた速度に設定してもよい。一般的に、ドラフト印刷モードでのシートSLの搬送速度は、高詳細印刷モードでのシートSLの搬送速度よりも高速となる。そのため、ドラフト印刷モードでの軸部材20の回転速度は、高詳細印刷モードでの軸部材20の回転速度よりも高速に設定されることになる。
【0077】
また、軸部材20の回転速度を、記録モードに関係なく設定してもよい。この場合、ドラフト印刷モード時における送出しローラー22aの回転に基づくシートSLの送出し量よりも軸部材20の回転に基づくシートSLの送出し量のほうが多くなるように、該軸部材20の回転速度を設定することが好ましい。
【0078】
・実施形態において、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する際においてシートSLが撓み検知センサーSE2に接触した場合には、軸部材20の第1の回転方向R1への回転速度が遅くなるように第1のモーター21の駆動を制御してもよい。また、長尺状のシートSLを搬送方向Yにおける下流側に搬送する際においてシートSLが撓み検知センサーSE2に接触しなくなった場合には、軸部材20の第1の回転方向R1への回転速度が速くなるように第1のモーター21の駆動を制御してもよい。
【0079】
同様に、長尺状のシートSLを軸部材20に巻き取らせる際においてシートSLが撓み検知センサーSE2に接触しなくなった場合には、軸部材20の第2の回転方向R2への回転速度が遅くなるように第1のモーター21の駆動を制御してもよい。また、長尺状のシートSLを軸部材20に巻き取らせる際においてシートSLが撓み検知センサーSE2に接触した場合には、軸部材20の第2の回転方向R2への回転速度が速くなるように第1のモーター21の駆動を制御してもよい。
【0080】
・実施形態において、記録ユニット14を、キャリッジ41を搬送方向Yに移動させつつ記録ヘッド44からインクを噴射させる所謂ラテラルタイプの記録ユニットに具体化してもよい。また、記録ユニット14を、記録処理中に記録ヘッド44が移動しない所謂ラインヘッドタイプの記録ユニットに具体化してもよい。
【0081】
・実施形態において、媒体は、カッター30などの刃部によって切断可能な媒体であれば、布や樹脂フィルム、樹脂シート、金属シートなどの任意の媒体であってもよい。
・実施形態において、記録装置11を、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化してもよい。また、記録装置11を、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に具体化してもよい。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、液体噴射装置は、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。
【0082】
なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。また、本明細書でいう記録は、用紙などのシートへの印刷であることに限定されず、例えば電気回路を製造する際に、素子や配線用の材料で調製されたインク(又はペースト)を基板(記録媒体)上に付着させて回路を記録によって形成することも含んだ概念である。
【0083】
・実施形態において、記録装置11は、ドットインパクト方式、レーザー方式などの他の記録方式で媒体に記録を施す記録装置でもよい。
次に、上記実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0084】
(イ)前記制御手段は、
媒体を前記搬送方向における下流側に搬送する場合において、
前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量未満となったときには、前記軸部材に第1の駆動力が付与されるように前記駆動手段を制御し、
前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上になったときには、前記軸部材に第1の駆動力が付与されないように前記駆動手段を制御することを特徴とする搬送装置。
【0085】
(ロ)前記制御手段は、
媒体を前記軸部材に巻き取らせる場合において、
前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上となったときには、前記軸部材に第2の駆動力が付与されるように前記駆動手段を制御し、
前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量未満になったときには、前記軸部材に第2の駆動力が付与されないように前記駆動手段を制御することを特徴とする搬送装置。
【0086】
(ハ)前記検出器は、前記軸部材の重力方向における下方側に配置されることを特徴とする搬送装置。
(ニ)前記制御手段は、媒体の前記搬送方向における下流側への搬送時において、前記軸部材が回転し始めてからの経過時間が予め設定された基準時間以上になっても、記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上とならない場合に、前記規定処理を行うことを特徴とする搬送装置。
【0087】
(ホ)前記制御手段は、媒体の前記搬送方向における下流側への搬送時において、前記軸部材の回転量が予め設定された規定回転量以上になっても、記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上とならない場合に、前記規定処理を行うことを特徴とする搬送装置。
【0088】
(ヘ)前記制御手段は、前記規定処理後において媒体の交換を検知した場合に、前記駆動手段から前記送出しローラーへの動力伝達を許可することを特徴とする搬送装置。
【符号の説明】
【0089】
11…記録装置、12…収容部、13…搬送装置、14…記録手段としての記録ユニット、20…軸部材、21…駆動手段を構成する第1のモーター、22a…送出しローラー、24…駆動手段を構成する第2のモーター、45…駆動手段を構成するクラッチ機構部、84…検出手段を構成する搬送制御部(制御手段)、SE2,SE2A…検出手段を構成する撓み検知センサー(検出器)、R1…第1の回転方向、R2…第2の回転方向、RS…ロール状媒体の一例としてのロール紙、RSa…外周面、SL…長尺状の媒体の一例としての長尺状のシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の媒体がロール状に巻き重ねられた軸部材の回転によって、該媒体を搬送方向における下流側に送り出すように搬送する搬送装置であって、
前記軸部材に対してロール状に巻き重ねられた媒体の収容部よりも前記搬送方向における下流側に配置され、媒体を前記搬送方向における下流側に送り出す送出しローラーと、
前記軸部材及び前記送出しローラーを回転させるための駆動力を発生する駆動手段と、
前記搬送方向において前記軸部材と前記送出しローラーとの間での媒体の撓み量を検出する検出手段と、
媒体の前記搬送方向における下流側への搬送時には、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が予め設定された基準量以上となるように前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、媒体を前記搬送方向における下流側に搬送させるべく前記駆動手段が駆動する場合において、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以上とならない場合に、撓み量が前記基準量以上となるときとは異なる規定処理を行うことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、媒体を前記搬送方向における下流側に搬送するべく前記送出しローラー及び前記軸部材を第1の回転方向に回転させる第1の駆動力と、媒体を前記軸部材に巻き取らせるべく前記送出しローラー及び前記軸部材を前記第1の回転方向とは逆方向である第2の回転方向に回転させる第2の駆動力とを発生可能であり、
前記制御手段は、
媒体を前記軸部材に巻き取らせる場合には、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以下となるように前記駆動手段を制御し、
媒体を前記軸部材に巻き取らせるべく前記駆動手段が駆動する場合において、前記検出手段によって検出される媒体の撓み量が前記基準量以下にならないときには、撓み量が前記基準量以下となるときとは異なる前記規定処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記収容部内に配置される検出器を有し、
前記検出器は、媒体が前記軸部材にロール状に巻き重ねられた未使用のロール状媒体が前記収容部内に設置された場合に、前記軸部材を中心とする径方向において前記ロール状媒体の外周面よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記軸部材を回転させるための駆動力を発生する第1のモーターと、前記送出しローラーを回転させるための駆動力を発生する第2のモーターとを有すること特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の搬送装置と、
前記送出しローラーよりも前記搬送方向における下流側に配置され、媒体に対して流体を付着させる記録手段と、を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記規定処理は、
前記軸部材への動力伝達を遮断させる処理と、
前記収容部内における媒体の残量が少なくなった旨を報知する処理と、
新たな媒体への交換を促す処理と、
記録処理可能な記録量を報知する処理と、のうち少なくとも一つの処理を含むことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
長尺状の媒体がロール状に巻き重ねられた軸部材を回転させることにより、該媒体を搬送方向における下流側に送り出すように搬送する搬送方法であって、
前記軸部材に対してロール状に巻き重ねられた媒体の収容部よりも前記搬送方向における下流側には、該収容部側から送り出された媒体を前記搬送方向における下流側に送り出すために回転する送出しローラーが配置されており、
前記搬送方向において前記軸部材と前記送出しローラーとの間での媒体の撓み量が予め設定された基準量以上となるように、前記軸部材及び前記送出しローラーを回転させる回転制御ステップと、
媒体を前記搬送方向における下流側に送り出すべく前記軸部材及び前記送出しローラーが回転する場合において、前記媒体の撓み量が前記基準量以上とならないときに、撓み量が前記基準値以上となるときの処理とは異なる規定処理を行う規定制御ステップと、を有することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−41182(P2012−41182A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186569(P2010−186569)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】