説明

搬送装置及び搬送方法

【課題】スキューの発生を抑制することができる搬送装置及び搬送方法を提供すること。
【解決手段】被記録材を搬送する搬送機構と、被記録材の第1部分に接触して回転し、被記録材を搬送機構に供給する供給ローラとを備え、搬送機構は、供給ローラから供給される被記録材のうち第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように被記録材を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被記録材に対して記録動作を行う記録装置の1つとして、例えばプリンタなどが知られている。プリンタの構成として、例えば、被記録材である記録用紙を積層状態で給紙カセット内に設置され、セットされた記録用紙のうち最上位のものから1枚ずつ取り出して記録部に搬送する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−233505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録用紙を1枚ずつ搬送する方式では、搬送方向に対して記録用紙が斜めに送られる状態(スキュー)が生じる虞がある。用紙がスキューした状態で搬送されると紙詰まりが発生したり、記録用紙の予定位置に印刷が行われないなどの問題が生じる虞がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、スキューの発生を抑制することができる搬送装置及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送装置は、被記録材を搬送する搬送機構と、前記被記録材の第1部分に接触して回転し、前記被記録材を前記搬送機構に供給する供給ローラとを備え、前記搬送機構は、前記供給ローラから供給される前記被記録材のうち前記第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように前記被記録材を搬送する。
【0007】
本発明によれば、供給ローラから供給される被記録材のうち供給ローラに接触される第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように被記録材を搬送することとしたので、被記録材の第1部分と第2部分との間の搬送速度が揃うように調整しつつ被記録材を搬送することができる。これにより、搬送機構は、適正な姿勢を維持しつつ被記録材を搬送することができるため、スキューの発生を抑制することができる。
【0008】
上記の搬送装置は、前記第1部分は、前記被記録材のうち前記供給ローラの回転軸方向の一端側の部分であり、前記第2部分は、前記被記録材のうち前記回転軸方向の他端側の部分であることが好ましい。
本発明によれば、被記録材のうち供給ローラの回転方向の一端側において当該供給ローラに接触する場合において、被記録材のうち回転軸方向の他端側の第2部分と上記第1部分との間で搬送力を異なるようにしたので、被記録材の姿勢を効率的に調整することができる。
【0009】
上記の搬送装置は、前記搬送機構は、前記被記録材に接触して回転する搬送ローラを有し、前記搬送ローラは、前記被記録材のうち第1部分に対応する部分と前記第2部分に対応する部分とで、異なる搬送力を加えるように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、搬送機構が被記録材に接触して回転する搬送ローラを有し、搬送ローラが被記録材のうち第1部分に対応する部分と第2部分に対応する部分とで、異なる搬送力を加えるように形成されているため、被記録材に対して異なる搬送力を効率的に加えることができる。
【0010】
上記の搬送装置は、前記搬送機構は、前記搬送ローラとの間で前記被記録材のうち前記第2部分から外れた部分を挟む補助ローラを有することが好ましい。
本発明によれば、搬送機構が搬送ローラとの間で被記録材のうち第2部分から外れた部分を挟む補助ローラを有することとしたので、第2部分における搬送力を第1部分などの他の部分よりも弱めることができる。これにより、第2部分の搬送速度を抑えることができる。
【0011】
上記の搬送装置は、前記搬送ローラは、前記被記録材の前記第2部分に対応する部分の径が、前記被記録材の前記第1部分に対応する部分の径よりも小さく形成されていることが好ましい。
本発明によれば、搬送ローラにおいて、被記録材の第2部分に対応する部分の径が、被記録材の第1部分に対応する部分の径よりも小さく形成されていることとしたので、第2部分における搬送力を第1部分における搬送力よりも弱めることができる。これにより、第2部分の搬送速度を第1部分の搬送速度よりも小さくすることができる。
【0012】
上記の搬送装置は、前記搬送ローラは、前記被記録材の前記第2部分に対応する部分が、前記被記録材の第1部分に対応する部分よりも、前記被記録剤との間に生じる摩擦力が小さくなるように形成されていることが好ましい。
本発明によれば、搬送ローラのうち、被記録材の第2部分に対応する部分が、被記録材の第1部分に対応する部分よりも、被記録剤との間に生じる摩擦力が小さくなるように形成されていることとしたので、第2部分における搬送力を第1部分における搬送力よりも弱めることができる。これにより、第2部分の搬送速度を第1部分の搬送速度よりも小さくすることができる。
【0013】
上記の搬送装置は、前記供給ローラと前記搬送機構との間に設けられ、前記被記録材を支持する支持面を有する支持部材を更に備え、前記支持面は、前記被記録材の被支持面側から当該被支持面とは反対面側へ傾斜して形成されていることが好ましい。
本発明によれば、支持面が被記録材の被支持面側から当該被支持面とは反対面側へ傾斜して形成されているため、被記録材の搬送経路を所定のスペース内に抑えることができる。また、支持面が被記録材の被支持面側から当該被支持面とは反対面側へ傾斜して形成されている場合、被記録材の姿勢の変化が生じやすく、例えば第2部分側が第1部分側に対して先行しやすくなる可能性があるが、本発明では上記作用部が設けられているため、かかる被記録材の姿勢の変化を抑制することができる。このため、被記録材の姿勢変化を抑制しつつ搬送経路に要するスペースをコンパクト化することができる。
【0014】
本発明に係る搬送方法は、被記録材の第1部分に接触して回転する供給ローラにより、前記被記録材を前記搬送機構に供給する供給工程と、前記搬送機構により、前記供給ローラから供給される前記被記録材のうち前記第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように前記被記録材を搬送する搬送工程とを含む。
【0015】
本発明によれば、供給ローラから供給される被記録材のうち供給ローラに接触される第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力を加えつつ被記録材を搬送することとしたので、供給工程では、被記録材の第1部分と第2部分との間の移動速度が揃うように調整することができ、搬送機構に適正な姿勢で被記録材を供給することができる。これにより、搬送工程では、適正な姿勢で供給された被記録材を搬送することができるため、スキューの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェットプリンタの内部構造を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図である。
【図3】揺動アーム及び給紙カセットの構成を示す斜視図である。
【図4】揺動アームの要部を説明するための図である。
【図5】給紙カセットの斜視構成を示す図である。
【図6】第1中間送り部の構成を示す図である。
【図7】記録用紙の挙動を説明するための図である。
【図8】記録用紙の挙動を説明するための図である。
【図9】第1中間送り部の他の構成を示す図である。
【図10】第1中間送り部の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る搬送装置を備えた記録装置について説明する。最初に記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ1を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1はインクジェットプリンタの内部構造を示す斜視図、図2はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図である。
【0019】
なお、図示のインクジェットプリンタ1は、上部に図示を省略した画像読取り装置(スキャナ)を搭載した複合型のインクジェットプリンタであり、用紙やフィルム等の軟質の被記録媒体の他に、不図示のCD−RやDVD−R等を含む光ディスク等の硬質の被記録媒体に対しても記録を実行することができるタイプのインクジェットプリンタである。また、図示のインクジェットプリンタ1は、被記録媒体の記録実行領域での搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動し得るキャリッジ40の下面に記録ヘッド42を搭載したシリアルプリンタである。 このインクジェットプリンタ1は、外観が比較的フラットな面によって構成されている矩形筐体状の記録装置本体であるプリンタ本体2を備えている。そして、プリンタ本体2の前面2aの中央下部に多数枚の記録用紙(被記録媒体)Pを積層状態で収容し得る給紙カセット11が着脱可能に装着されている。また、この給紙カセット11の装着面の上方には記録実行後の記録用紙Pを積層状態でスタックするための排出用スタッカー47が設けられている。この他、プリンタ本体2の前面2aには各種の操作指令を実行するための図示しない操作ボタンと、各種のインクカートリッジを収容するための図示しないカートリッジホルダー等が設けられている。
【0020】
給紙カセット11は、記録用紙Pの搬送経路の始発位置に設けられる部材で、給紙カセット11内に収容された記録用紙Pは、自動給送装置(搬送装置)3によって最上位のものから順番に1枚ずつ繰り出されて後述するU字反転経路50に向けて搬送されるようになっている。自動給送装置3は、上記給紙カセット11内の上位の記録用紙Pを後方に引き出すピックアップローラ16と、後方に引き出された上位の記録用紙Pを予備分離しながらU字反転経路50に導く分離斜面12と、該分離斜面12の後部斜め上方において自由回転可能な状態で設けられる第1ガイドローラ20と、該第1ガイドローラ20の後部斜め上方に設けられる分離ローラ部21と、後述する第1中間送り部25と、第2中間送り部31と、搬送用ローラ部34とを含むものである。
【0021】
また、ピックアップローラ16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動アーム17の先端部に設けられており、搬送時に記録用紙Pの上面に圧接されて搬送方向Aへの回転によって給紙カセット11内の上位の記録用紙Pを後方に引き出すことができるようになっている。ピックアップローラ16は、その表面16aにゴム材が取付けられ、記録用紙Pをその表面に巻回させて搬送し易いように構成されている。
【0022】
分離ローラ部21は、トルクリミッタが接続された分離従動ローラ22と、分離駆動ローラ23との一対のニップローラによって構成されており、分離斜面12による予備分離では分離できなかった後続の記録用紙Pを最上位の記録用紙Pから完全に分離させる本分離作用を担っている。
【0023】
自動給送装置3によって搬送された記録用紙Pは、U字反転経路50内を搬送されて記録ポジション51に導かれる。記録ポジション51の下方には搬送されてきた記録用紙Pの下面を支持して記録ヘッド42下面との間のギャップPGを規定するプラテン38が設けられている。なお、プラテン38は、支持部材である搬送案内部39と、搬送案内部39の上面に形成されているプラテンリブ38aと、記録の実行に使用されなかった余剰のインクを回収するためのインク回収溝39aとを備えている。プラテンリブ38aは記録用紙Pの搬送姿勢を規定することに主眼が置かれるものである。
【0024】
一方、記録ポジション51の上方には記録実行装置4の主要な構成部材である記録ヘッド42と、該記録ヘッド42を下面に搭載した状態で幅方向Bにキャリッジガイド軸41に案内されて往復移動し得るキャリッジ40とが設けられている。さらに、記録実行装置4には記録ヘッド42に各色のインクを供給する図示しない複数本のインクチューブ及びインク供給ポンプと、キャリッジ40のホームポジションに設けられる図示しないキャッピング装置と、記録用紙Pと硬質被記録材(不図示)との切替え時等に使用される図示しない自動ギャップ調整機構等とが備えられている。
【0025】
また、記録ポジション51の搬送方向Aにおける下流位置には、被記録材の排出装置6が設けられている。被記録材の排出装置6は、排出駆動ローラ44と排出従動ローラ45との一対のニップローラによって構成される排出用ローラ43と、上述した排出用スタッカー47とを備えることによって構成されている。また、排出用スタッカー47には入れ子状にその内部に収容される延長スタッカー48が引出し、格納自在に設けられている。
【0026】
次に、記録用紙P用の搬送経路を構成するU字反転経路50について説明する。U字反転経路50は、プリンタ本体2内部の後部スペースを利用して設けられており、U字反転経路50の外側案内面50aを形成する一例として2分割された上方に位置する上部ハウジング83、84及び上搬送案内37と、下方に位置する下部ハウジング85と、U字反転経路50の内側案内面50bを形成する上部経路構成部材57とを備えることによってU字反転経路50は構成されている。このU字反転経路50は、記録用紙Pの先端を搬送方向下流側へ案内するためのガイドをなすものである。
【0027】
また、上記U字反転経路50には、図2に示すように、第1送り駆動ローラ(搬送ローラ)26と第1送り従動ローラ(補助ローラ)27との一対のニップローラによって構成されている第1中間送り部(搬送機構)25と、自由回転可能な第2ガイドローラ29と、第2送り駆動ローラ32と第2送り従動ローラ33との一対のニップローラによって構成されている第2中間送り部31とが設けられている。
【0028】
第1中間送り部25は、ピックアップローラ16と搬送ローラ35との間に設定される記録用紙Pの搬送経路の上流側(ピックアップローラ16側)に配置されている。また、第2中間送り部31は、上記記録用紙Pの搬送経路の下流側(搬送ローラ35側)に配置されている。
【0029】
そして、これら第1中間送り部25、第2ガイドローラ29、及び第2中間送り部31の送り及び案内作用によってU字反転経路50に供給された記録用紙Pは、このU字反転経路50を通って、U字反転経路50の下流近傍位置に設けられる搬送用ローラ部34のニップ点に供給されるようになっている。
【0030】
上記搬送用ローラ部34は、ローラ駆動軸35aによって支持された搬送ローラ35と、上搬送案内37の先端において自由回転可能な状態で設けられている搬送従動ローラ36との一対のニップローラによって構成されている。また、搬送従動ローラ36の搬送方向Aの位置は、搬送ローラ35の搬送方向Aの位置よりも幾分下流にずれた位置、所謂「逆ぞり構造」に設定されている。そして、このような「逆ぞり構造」の搬送用ローラ部34を採用することによって、供給された記録用紙Pの先端を下方のプラテンリブ38aに押し付けてヘッド擦れを防止し、記録品質の向上を図っている。
【0031】
また、ローラ駆動軸35aには、図示しない駆動モーターからの動力が伝達されて、記録用紙P及び保持トレイ55の各搬送を実行できるようになっている。また、ローラ駆動軸35aには、図示しないクラッチ装置が設けられており、クラッチ装置の係合位置を適宜可変することによって、上述した図示しないインク供給ポンプ、キャッピング装置、自動ギャップ調整機構及び自動給送装置3に対して選択的にローラ駆動軸35aの動力を伝えることができるようになっている。
【0032】
なお、保持トレイ55にセットできる硬質被記録材としては、12cm直径あるいは8cm直径のCD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RWあるいは次世代の光ディスクとして注目されているブルーレイディスクや今後開発されるものを含めた種々の光ディスク等が適用可能である。
【0033】
次に、揺動アーム17の周辺部の構成について説明する。図3は揺動アーム17及び給紙カセット11の構成を示す斜視図であり、図4は揺動アーム17の要部を説明するための図であり、給紙カセットの斜視構成を示す図である。なお、図3、図5においては、図を見易くするため、記録用紙Pの図示を省略している。
【0034】
図3に示されるように、ピックアップローラ16は、給紙カセット11の底面における一端部側に偏倚した状態となるように揺動アーム17に取付けられている。これは、異なるサイズの記録用紙の搬送に対応するためである。そのため、比較的大きなサイズ(例えば、A4サイズ)の記録用紙Pに対しては、ピックアップローラ16が一端側に偏倚した状態で当接することとなる。
【0035】
本実施形態に係る揺動アーム17は、ピックアップローラ16が一端側に偏倚した状態で当接する比較的大きいサイズの記録用紙Pの他端側の浮き上がりを押さえる押さえ部70を備えている。押さえ部70は、その先端70aの断面形状が略蒲鉾状の曲面となっている。また、図4に示されるように、ピックアップローラ16と押さえ部70とは同軸上に配置されており、ピックアップローラ16に比較して、押さえ部70の先端70aの径が僅かに小さく設定されている。このように押さえ部70の先端70aの径をピックアップローラ16よりも小さく設定することで、搬送時に記録用紙Pがピックアップローラ16よりも先に押さえ部70に接触することで負荷が生じるのを防止している。
【0036】
また、給紙カセット11には、該給紙カセット11内に収容される記録用紙Pの幅方向に沿って移動可能なエッジガイド60が設けられている。エッジガイド60は、カセット内にセットされる記録用紙Pの大きさに応じて適宜移動される。
【0037】
なお、給紙カセット11には、エッジガイド60に対向配置される不図示の固定ガイドが設けられている。エッジガイド60は、固定ガイドとともに記録用紙Pの両側縁(エッジ)に当接することで、給紙カセット11内に収容された記録用紙Pは、カセット内の一端側(エッジガイド60と反対側の端部)に寄せられた状態となる。これにより、積層状態でカセット内にセットされる記録用紙Pを整列させるとともに、この記録用紙Pを円滑に搬送可能としている。
【0038】
具体的にエッジガイド60は、図5に示されるように、給紙カセット11に設けられたガイド溝61に沿って移動可能となっている。これにより、自動給送装置3は、給紙カセット11内にセットされる大きさの異なる記録用紙Pをエッジガイド60によって良好にガイドできるようになっている。なお、エッジガイド本体60aの底面には不図示の突部が設けられており、この突部が上記ガイド溝61に嵌合することでエッジガイド60がスライド可能となっている。
【0039】
図6は、第1中間送り部25(第1送り駆動ローラ26及び第1送り従動ローラ27)の構成を示す図である。図を判別しやすくするため、他の構成については一部省略している。
図6に示すように、第1送り駆動ローラ26は、搬送方向の直交方向(図中左右方向)に複数、例えば5つ設けられている。複数の第1送り駆動ローラ26は、ピックアップローラ16に接触される側(一端側)から、搬送方向の直交方向における記録用紙Pの反対側(他端側)にかけて、例えば互いに等間隔を空けて配置されている。
【0040】
第1送り従動ローラ27は、搬送方向の直交方向に複数設けられている。第1送り従動ローラ27は、5つの第1送り駆動ローラ26のうち一端側から4つの第1送り駆動ローラ26に対応する位置にはそれぞれ1つずつ設けられているが、最も他端側の第1送り駆動ローラ26Xについては対応する第1送り従動ローラ27が設けられていない構成になっている。このため、第1中間送り部25においては、記録用紙Pの他端側には搬送力が加わらない状態になっており、記録用紙Pの一端側と他端側とで搬送力が異なるようになっている。
【0041】
次に、記録用紙Pの搬送及びスキュー取り動作における記録用紙Pの挙動について説明する。なお、本説明においては、給紙カセット11内にセットされている記録用紙Pは、ピックアップローラ16により搬送される際、一端側が押さえ部70によって押さえられる大きさのものとする。
【0042】
インクジェットプリンタ1は、自動給送装置3(ピックアップローラ16)によって給紙カセット11内にセットされている複数枚の記録用紙Pのうち、最上位の記録用紙Pのみを搬送する(供給工程)。このとき、記録用紙Pはエッジガイド60によって側部が円滑にガイドされた状態で搬送される。
【0043】
記録用紙Pは、図7に示されるように、第1中間送り部25を経て、湾曲した状態で反転させられ、U字反転経路50内に搬送される(搬送工程)。そして、第2中間送り部31を通過して、搬送ローラ35と搬送従動ローラ36との間に挟入し、一定長L1まで頭出しされる。記録用紙Pを一定長L1分だけ頭出しした時点で、搬送ローラ35およびピックアップローラ16等の回動を中止する。
【0044】
記録用紙Pが例えば比較的強度の高い材質である場合、ピックアップローラ16によって記録用紙Pをピックアップする際に、例えば分離斜面12の傾斜に倣わず、ピックアップローラ16とは反対側(他端側)が分離斜面12に対して浮き上がってしまい、第1中間送り部25に対して記録用紙Pの他端側が先行しやすくなる可能性がある。
【0045】
これに対して、本実施形態では、図8に示すように、最も他端側の第1送り駆動ローラ26Xについて対応する第1送り従動ローラ27が設けられていない構成になっているため、記録用紙Pのうちピックアップローラ16に接触する第1部分P1と、当該第1部分P1とは異なる第2位置P2との間で異なる搬送力が加えられるように記録用紙Pが搬送されることになる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、当該第2位置P2側(他端側)においては、第1位置P1側(一端側)に比べて搬送力が弱くなるため、記録用紙Pの他端側が一端側に対して先行するのを抑えることができ、第1中間送り部25に対して記録用紙Pを適正な姿勢で供給することができる。第1中間送り部25は、適正な姿勢で供給される記録用紙Pを搬送するため、記録ポジション51に搬送される記録用紙Pについてスキューの発生を抑制することができる。特に本実施形態では、記録用紙Pが例えば比較的強度の高い材質である場合であっても上記効果を得ることができる。
【0047】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、第1送り従動ローラ27の一部を省略することで記録用紙Pに異なる搬送力が加えられる構成としたが、これに限られることは無く、例えば図9に示すように、記録用紙Pの最も他端側に配置される第1送り駆動ローラ26Xの径t1を他の第1送り駆動ローラ26の径t2に比べて小さく形成する構成としても構わない。この場合、第1送り駆動ローラ26Xと第1送り従動ローラ27Xとによる搬送力は、他の第1送り駆動ローラ26と第1送り従動ローラ27とによる搬送力に比べて小さくなる。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
また、図10に示すように、記録用紙Pの最も他端側に配置される第1送り駆動ローラ26Xの表面の摩擦係数μ1が他の第1送り駆動ローラ26の表面の摩擦係数μ0よりも小さくなるように形成された構成としても構わない。この場合、図9に示す場合と同様に、第1送り駆動ローラ26Xと第1送り従動ローラ27Xとによる搬送力は、他の第1送り駆動ローラ26と第1送り従動ローラ27とによる搬送力に比べて小さくなる。このため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
P…記録用紙(被記録材)、P1…第1部分、P2…第2部分、3…搬送装置、16…ピックアップローラ(供給ローラ)、25…第1中間送り部(搬送機構)、26…第1送り駆動ローラ(搬送ローラ)、27…第1送り従動ローラ(補助ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を搬送する搬送機構と、
前記被記録材の第1部分に接触して回転し、前記被記録材を前記搬送機構に供給する供給ローラと
を備え、
前記搬送機構は、前記供給ローラから供給される前記被記録材のうち前記第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように前記被記録材を搬送する
搬送装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記被記録材のうち前記供給ローラの回転軸方向の一端側の部分であり、
前記第2部分は、前記被記録材のうち前記回転軸方向の他端側の部分である
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送機構は、前記被記録材に接触して回転する搬送ローラを有し、
前記搬送ローラは、前記被記録材のうち第1部分に対応する部分と前記第2部分に対応する部分とで、異なる搬送力を加えるように形成されている
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、前記搬送ローラとの間で前記被記録材のうち前記第2部分から外れた部分を挟む補助ローラを有する
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ローラは、前記被記録材の前記第2部分に対応する部分の径が、前記被記録材の前記第1部分に対応する部分の径よりも小さく形成されている
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ローラは、前記被記録材の前記第2部分に対応する部分が、前記被記録材の第1部分に対応する部分よりも、前記被記録剤との間に生じる摩擦力が小さくなるように形成されている
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記供給ローラと前記搬送機構との間に設けられ、前記被記録材を支持する支持面を有する支持部材
を更に備え、
前記支持面は、前記被記録材の被支持面側から当該被支持面とは反対面側へ傾斜して形成されている
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
被記録材の第1部分に接触して回転する供給ローラにより、前記被記録材を前記搬送機構に供給する供給工程と、
前記搬送機構により、前記供給ローラから供給される前記被記録材のうち前記第1部分と当該第1部分とは異なる第2部分とに対してそれぞれ異なる搬送力が加えられるように前記被記録材を搬送する搬送工程と
を含む搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−57355(P2011−57355A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207841(P2009−207841)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】