説明

搬送装置及び記録装置

【課題】 フォワードフィード、バックフィードそれぞれの搬送負荷に応じた適切な搬送を行なうこと。
【解決手段】 ロールシートを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されたロールシートを繰り出す第1の方向と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ロールシートと前記搬送手段とのスリップによって生ずる搬送距離の誤差を搬送手段の単位搬送距離あたりの回転量を、理論値に対して増加させることによって補正し、補正による回転量の増加は第2の方向に搬送する場合よりも第1の方向に搬送する場合の方が大きくなるように制御することを特徴とする搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に用いられる搬送装置、特に記録媒体を搬送する際の搬送量を補正する手段を備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一度画像記録が行われた記録媒体(以下、シート)の同じ領域に再度画像記録を行う場合、シートを記録時の搬送方向である正方向とは逆方向に搬送し、再度正方向に搬送する必要がある。ところが正方向の搬送と逆方向の搬送で、シートと搬送ローラとの滑り量が異なるので2回目の画像書き出し位置が1回目の画像とずれてしまう。このズレ量の補正に関しては、1回目の画像記録前と2回目の画像記録前に特定のパターンを印刷し、パターン同士のずれ量に基づいて2回目の画像の書き出し位置を補正する技術がある。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が示す発明は、シートに検出パターンを印刷する必要があり、そのためにシート、及びインクを余分に消費するという問題があった。さらに、ズレ量の入力等、ユーザーに対して煩雑な動作を要求するものである。
【0005】
本発明の目的は、フォワードフィード、バックフィードそれぞれの搬送負荷に応じて適切な搬送を行なうことができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明は、ロールシートを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたロールシートを繰り出す第1の方向と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段の駆動を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記ロールシートと前記搬送手段とのスリップによって生ずる搬送距離の誤差を搬送手段の単位搬送距離あたりの回転量を、理論値に対して増加させることによって補正し、補正による回転量の増加は第2の方向に搬送する場合よりも第1の方向に搬送する場合の方が大きくなるように制御することを特徴とする搬送装置である。クレーム1に合わせる
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、フォワードフィード、バックフィードそれぞれの搬送負荷に応じた適切な搬送を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る記録装置の概略構成図である。
【図2】記録装置の概略構成図(横)である。
【図3】記録装置の制御ブロック図である。
【図4】記録装置のロールシートの正逆搬送の様子を示す図である。
【図5】押し出し動作のフローチャートである。
【図6】押し出し動作を示す図。
【図7】バックフィード時の補正係数を算出するフローチャートである。
【図8】バックラッシュを考慮して補正係数を算出するフローチャートである。
【図9】ロールシートが消費したときの記録装置。
【図10】第2の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態であるインクジェット方式の記録装置について図1、図2を参照して説明する。17は記録手段である複数のインクジェット方式の記録ヘッド、15は記録ヘッド17が搭載されているキャリッジである。複数の記録ヘッド17は記録媒体であるシート19にインクを吐出する吐出口をそれぞれ有している。シート19は中空の芯19aにロール状に巻き取られたロールシートである。中空芯19aは保持手段である軸19bによって回転可能に支持されている。
【0010】
キャリッジ15はガイド15Aに沿って主走査方向に移動可能に支持されている。キャリッジ15の往復動作は、モータ11により回転駆動されるプーリ12に懸架されたベルト13により行われる。キャリッジ15には、シート19の端部を測定する光学式(フォト)センサユニット18が搭載されている。23はシート19を搬送する搬送手段である搬送ローラ、22はシートを搬送ローラ23に押し付けるピンチローラである。24はシート19を切断するカッター24aを備えたカッタユニットである。プラテン20にはカットシートがロードされた時にカットシートの後端を検出する光学式センサユニット21及びシート切断時にカッター24aの刃が通過するカッター溝25が設けられている。
【0011】
キャリッジ15の走査方向に沿ってリニアスケール14が配置されている。16はキャリッジ15に搭載され、リニアスケール14に形成されたスリットを検知するためのリニアスケールセンサであり、キャリッジ15の移動時に、リニアスケールセンサ16のスリットを検知することによりキャリッジの位置を検出する。インク吐出の位置(タイミング)は、主として、リニアスケール14およびリニアスケールセンサ16からなるリニアエンコーダの出力に基づいて管理される。例えば、キャリッジ15がリニアスケール14上のある地点のスリットを検知した時点で、インクの吐出制御を開始する。キャリッジ15がリニアスケール14の特定のスリットを検知するタイミングでインク吐出口17から各色インクの吐出を行う。リニアスケール14上のある地点のスリットを検知した時点で、インク吐出制御を終了する、といった制御を行っている。また、上記インクの吐出開始および終了位置は光学式センサ18、21によって検出されたシート位置および設定余白量等にて制限され、予め作成された画像データに基づいて設定される。
【0012】
図3は、記録装置の制御ブロック図である。制御手段である制御装置45は画像データ受信部31、ヘッド制御部35、キャリッジ制御部、シート搬送制御部39などを有している。画像データ受信部31は画像データ30等の外部入力データを受信し、受信した前記外部入力データは画像データ解析部32にて制御可能なデータ群へ解析処理を行う。具体的には、画像データ解析部32は画像データ30から画像データサイズ、シート種情報、マルチパス情報、搬送補正値等、印刷に付随する画像データ30の情報を抽出する。
【0013】
画像情報管理部33は、画像データ解析部32によって画像データ30から抽出されたデータ、及び印刷位置等を決定する為に必要な情報であるシート端部検出制御部43より取得したシート端部位置情報の管理を行う。
【0014】
記録制御部34は記録装置としての基本的な動作を制御する部分であり、画像情報管理部33にて解析されたデータに基づき、記録の為の信号処理及び記録動作機構の駆動処理などの制御を行う。ヘッド制御部35は記録装置にて使用される記録ヘッド36を制御する部分であり、記録制御部34の指令に基づくインク吐出処理、記録ヘッド36の温度管理等を行う。キャリッジ駆動制御部37は記録制御部34の指令に基づいて記録ヘッド36の位置を制御するキャリッジ駆動モータ38の位置制御を行う。
【0015】
搬送制御部39は記録制御部34の指令に基づきシートの搬送モータ41の位置制御を行う。搬送補正制御部40は搬送制御部39にて理論値を元に算出された搬送モータ41の駆動量(回転量)の補正値を算出する。搬送時のシートのスベリ、機械差等による搬送誤差を考慮に入れ、更に駆動量に応じて補正値を加算(若しくは減算)する処理を行う。又、シート端部検出制御部43の情報に基づいて搬送時の補正値の算出を行う。詳細は後述する。シート端部検出制御部43は、記録制御部34の指令に基づきシート端部の検出を行う光学式センサ44のオン/オフ処理を行う。又、光学式センサ44の検出値よりシート端部を検出し、搬送エンコーダ42によりシート端部検出時のシート位置を読み取り、画像情報管理部33、及び搬送制御部39に通知する。なお、図9における光学式センサ44と図1、図2における光学式センサ18とは、シート先端を検出する役割を持つセンサとして同等のものである。
【0016】
次に記録動作について説明する。図4(A)はシート19(以降、シート19は特に断りが無い限りロールシート19とする)を所定の搬送方向に搬送(フォワードフィード)した時のシートの挙動を示した装置の断面図である。図4(B)はロールシート19を搬送方向とは反対の方向に搬送(バックフィード)した時のシートの挙動を示した装置の断面図である。
【0017】
図4(A)において、ロールシート19をロール部から繰り出す方向である第1の方向にフォワードフィードする。搬送モータ41を駆動し、搬送ローラ23を図において時計回り方向に回転させてシートを排出方向に搬送させる。記録時には搬送と停止が繰り返され、停止時にはキャリッジモータ38によりキャリッジ15をロールシートの幅方向に走査させながら記録ヘッド17によるインクの吐出が行われる。ロールシート19のロール部は自ら回転する手段を持たず、搬送ローラ23の回転に応じて従動的に回転する事となる。よってロール部の回転による負荷はピンチローラ22と搬送ローラ23に挟持された部分にかかる事となる。
【0018】
記録が終了すると図6(A)のように、シート上の画像の後端部がカット位置まで搬送され、カッター24aによる切断が行われる。カッター24aが作動したら、次にカット済みのシートの押し出し動作をおこなう。図6(B)に示すように、搬送ローラ23によりシート先端がカット位置27から押し出し位置28に移動するまでシートを搬送する。このとき移動するシートの先端によりカット済みシートは押し出され、排出部に落とされる。次に図6(D)に示すようにシート先端が記録ヘッド17の上流側の待機位置29に位置するまで搬送ローラ23によりシートを第1の方向とは反対の方向にバックフィードする。
【0019】
図4において、ロールシート19をバックフィードする際は搬送モータ41をフォワードフィード時とは逆方向に駆動し、搬送ローラ23を反時計回り方向に回転させてシートを排出方向とは逆方向に搬送させる。その際セットされたロールシート19のロール部は自ら回転する手段を持たない為、ロールシート搬送系路上に弛みが生じる。若しくはロールシート経路上の弛みを防止する為、図示しない巻き戻し機構によりロール部もバックフィードさせ常にロール部はロールシート19が巻き取られた状態となる。この為、バックフィード時にピンチローラ22と搬送ローラ23には主にシートの搬送ローラ23の下流側にある部分の重量による負荷がかかる。
【0020】
搬送ローラ23による搬送量(搬送距離)はシートとの間に滑りが無ければ搬送ローラの直径と回転量(回転角)によって計算できる。ところが、実際にはロールシート19は搬送ローラ23との摩擦力により搬送されるので搬送負荷に応じて、ロールシート19とピンチローラ22の周面との間にスリップ(以降、シートスベリ)が生じる。よって、実際の搬送量(搬送距離)は搬送ローラの直径と回転量(回転角)から算出した理論値より短い。搬送ローラ23による搬送量をより正確に制御するためには、理論値に対し、シートスベリによる補正量を加算、または搬送補正係数を掛けることによって計算による回転量を補正する必要がある。補正により搬送ローラ23による単位搬送距離当りの回転量を理論値に対して増加させる。
【0021】
図4(A)におけるロールシートのフォワードフィード、及び前記図4(B)におけるロールシートのバックフィードではロールシート19の搬送負荷に大きな差があり、搬送時のシートスベリ量も異なる。本実施形態では、ロールシートカット後のシートの押し出し動作を行うため、長距離のバックフィードを行うことによりロールシート先端を待機位置に搬送する。このときに大きくスループットを落とさないためには、途中で停止や減速することなくバックフィードによりロールシート先端を一気に待機位置に搬送することが望ましい。バックフィード途中でセンサなどでロールシート先端位置を確認したり、位置情報を補正するためには減速や停止が必要になるからである。そこで、本実施形態ではバックフィード固有の補正係数や補正値を用いて、バックフィード搬送時の搬送ローラの回転量を補正する処理を行う。
【0022】
図5は押し出し動作のフローチャートである。フォワードフィード時の補正係数KFおよびバックフィード時の補正係数KBはあらかじめメモリに記憶されている。ステップS1では、現在の補正係数の採用を開始してからの搬送ローラ23による搬送距離の累計が第2の所定の距離であるXm以上になったかを判断する。搬送距離がXm以上の場合は、ロールシートの消費、搬送ローラ23の磨耗や劣化によって補正係数KBの変更が必要であると推定されるため、ステップS4に移行して補正係数を新たに算出する処理が行われる。詳細については後述する。
【0023】
搬送距離がXm以上でない場合は、ステップS2に移行し、搬送ローラ23によりシート先端がカット位置27から押し出し位置28に移動するまでシートを搬送する。搬送に必要な搬送ローラ23の回転量は、フォワードフィード用の補正係数KFを用いて算出する。ステップ3ではロールシート先端が待機位置29に位置するまで搬送ローラ23によりロールシートをバックフィードする。このときはバックフィード用の補正係数KBを用いて算出した回転量の搬送ローラ23の回転が停止や減速することなく実行される。
【0024】
次に、ステップS4の内容について詳細に説明する。シートカット直後のシート先端位置が図6(A)である。シートカット位置27から光学式センサ18によるシート先端検出位置までの距離Aを、本実施形態では50mmとする。カット位置27から図6(B)のシート押し出し位置28までの距離Bを300mmとする。さらに押し出し位置28から図6(C)のセンサ18による先端検出位置26までの距離Cを350mmとする。
【0025】
また、搬送ローラ23にてシートを搬送する場合、搬送ローラ23の回転量は搬送エンコーダ42によってカウントされる。すなわち搬送エンコーダ42は搬送ローラ23の回転軸、または搬送モータ41から搬送ローラ23に駆動を伝達するギアに設けられたディスクを備えている。このディスクの外周に沿って等間隔に設けられたマークやスリットをセンサで読み取り、センサを通過したマークをカウントする。ディスクの回転量は搬送ローラ23の回転量に比例している。よって、ディスクのマークをカウントすることによって間接的に搬送ローラ23の回転量を検知することができる。本実施形態ではエンコーダカウントによる搬送の分解能を9600dpiとする。
【0026】
これらの条件より、シートスベリを考慮しない、理論値としてのシートを350mm引き戻すために要する搬送ローラの回転量(回転角)を搬送エンコーダのカウント数(Lとする)に換算すると
L=350/25.4×9600≒132283・・・(式1)
となる。
【0027】
実際に、シート押し出し位置28よりシート先端検知位置26まで搬送した場合のエンコーダカウント数は次のように求められる。図6(B)の状態の搬送エンコーダ42のカウント値をa、センサ18がシート先端を検知したときのエンコーダ42のカウント値bとすると(a−b)の絶対値が搬送に要するカウント数である。
【0028】
シート先端検出時に搬送エンコーダのカウント値を取得する手段としては光学式センサ18を周期的に監視し、先端を検出した時点で搬送エンコーダ取得する手段。若しくはシート先端検出時に割り込みハンドラが立ち上がり、その内部処理にて搬送エンコーダの値を取得する手段等、シート先端検出時の搬送エンコーダの値を取得するものであれば手段は問わないものとする。
【0029】
バックフィード時のシートスベリによる搬送補正値(係数)Kは次の式で求められる。
K=|(a−b)|/L・・・(式2)
一例として、a=3365626、b=3233125とすると、
K=|(3365626−3233125)|/132283=1.001647・・・≒1.00165 ・・・(式3)
となる。
【0030】
以降のロールシートのバックフィードにおいては前記搬送補正値Kにて搬送ローラの搬送量を補正する事によりバックフィード時のシートスベリを考慮した搬送制御を行う事が可能となる。ステップS4ではこの方法で、搬送補正係数Kを求めている。
【0031】
具体的には図7のフローチャートに示す。ステップS11ではシートカット直後に、シート先端をシート押し出し位置28までフォワードフィード(正方向搬送)する。ステップS12ではシート押し出し位置28におけるエンコーダ42のカウント値aを取得しメモリに読み込む。ステップS13ではシート先端検出の為、光学式センサ44をONにし、シート先端を検出可能な状態にする。
【0032】
ステップS14ではシートのバックフィードを行う。光学式センサ44にてシート先端の検出を行うため、このときの搬送速度はステップS3におけるバックフィードよりも低速である。
【0033】
ステップS15では、光学式センサ44によってシート先端が検出出来たかどうかを判断する。シート先端が検出できた場合に次の処理へ移行する。ステップS16では、シート先端検出直後のエンコーダ42のカウント値bを取得する。
【0034】
ステップS17ではシート先端検出の為にバックフィードしていた搬送動作の停止処理を行っている。ステップS18ではシート先端検出の終了処理として、光学式センサ44をOFFにする。
【0035】
ステップS19ではバックフィード時の搬送補正値(K)を算出する為、搬送エンコーダ42のカウンタ値(a)及び(b)を搬送検出部43より搬送補正制御部40が取得する。このカウンタ値a、bとシート先端を検出するまでに必要な搬送量の理論値Lから、前記(式2)を用いて搬送補正値を算出(K)を算出する。
【0036】
ステップS19において搬送補正値(K)を算出したら、図5のフローチャートS3に戻る。ステップS13において、搬送補正値(K)を利用して、押し出し位置28からシート待機位置29までの搬送量を算出し、シート先端をシート待機位置29まで戻す。
【0037】
具体的には図6(D)中の光学式センサ18からシート待機位置までの距離Dを20mmとした場合、距離は370mmとなる。この為バックフィードを行う場合の搬送ローラの搬送量(エンコーダカウント値)は
370/25.4×9600×1.00165=140073.259・・・≒140073 ・・・(式4)
となる。
【0038】
次回以降のシート押し出し処理では、算出した搬送補正値Kを利用してステップS1からステップS2、S3に移行して一気にシート先端を待機位置に戻す。引き戻し時のシート先端検知動作を行う必要がなくなる為、途中で一旦搬送を止めずに通常のシート引き戻し速度にて図6(D)のシート待機位置へ搬送する事が可能となる。
【0039】
図6(B)から先端検知を行い図6(C)の位置までシートを搬送した場合、シート先端を検出するまでの距離(300mm)における搬送速度はシート先端検出を伴わない通常の引き戻しより遅い速度となる。一例として、本実施形態における図5のフローチャートでのシーケンスの場合、ステップS4で先端検知を行う場合の搬送速度は50mm/secであり、300mmのバックフィードに要する時間は約6秒である。それに対しステップS2、S3に移行する場合の通常の引き戻し速度を120mm/secとすると、300mmのバックフィードにかかる時間は約2.5秒となる。
【0040】
また、先端検出を行う場合、先端検出時点で搬送を一旦停止し、その後、再度シート待機位置へ搬送させる為、更に1秒程度のタイムロスが生じる。つまり、押し出し動作の引き戻しにて先端検出動作が省略されると、およそ4.5秒(6+1−2.5)のスループットの向上が見込まれる。
【0041】
また、バックフィード時には常に搬送量の補正処理を行う為、印刷後の出力物に対して搬送ローラをバックフィードし、同じ場所に重ねて印刷する場合にも有効である。また、補正値の算出のために、印刷データとは関係無いテストパターン等を印字する必要がなく、余分なインクを消費する事がない。又、ユーザーによる操作も必要が無い。
【0042】
ところで、搬送モータ41の駆動は搬送ローラ23にギア列によって伝達されているが、ギア列には通常バックラッシュがある。バックラッシュは製品の個体差、若しくは経年変化により、前記シート先端検出時において無視出来ない場合も存在する。バックラッシュを考慮して先端検出を行う場合、先端検出時の搬送の方向をバックフィードでなくフォワードフィードで行う必要がある。具体的には、押し出し動作時のバックフィードにおいてシート先端を検出し、搬送を停止した後、更にフォワードフィードにてシート先端検出を行う。このフォワードフィードにて検出した時の搬送エンコーダ値を(b)として搬送補正値を算出する事により、フォワードフォードからバックフィードを行う事により発生するバックラッシュをキャンセルする事が可能となる。バックラッシュを考慮したバックフィード固有の搬送補正値の算出方法に関するフローチャートを図8に示す。ステップS21からステップS25までは図7のステップS11からステップS15までと同じである。ステップS26ではバックフィードを停止する。ステップS27ではシートのフォワードフィードを行いながら、再度、光学式センサ44にてシート先端の検出を行う。ステップS28ではシート先端が検出出来たかどうかを判断し、検出できた場合にステップS29で、シート先端検出直後のシート位置(b)をシート端部検出制御部43が搬送エンコーダ42より取得する。ステップS30ではシート先端検出の為にフォワードフィードしていた搬送動作の停止処理を行っている。
【0043】
ステップS31、S32は図7のステップS18、S19と同じである。本実施形態におけるバックフィード時の搬送補正値(係数)の算出はロールシートをセット後、一度実施すれば、それ以降、ロールシートが交換されるまで実施する必要が無い訳ではない。ロールシートの交換が為されない場合においても定期的に実施する必要がある。これは図9にあるようにロールシートが消費されるにつれロールシート19のロール部の重量が減少し、それに伴いフォワードフィード時における搬送ローラの単位駆動当たりの紙スベリ量が減少する為である。この為、フォワードフィードとバックフィードでの搬送ローラの単位駆動当たりにおけるシートスベリ量の差分が補正値算出時より減少する。これによりシートカット後の押し出し動作においてもシート待機位置へシートを搬送する際にも誤差が生じてしまう。この誤差は使用するシートの種類によって顕著に表れる場合とそうでない場合がある。
【0044】
前記誤差による不具合に対して、本実施形態での先端検出による搬送補正値の算出以降、所定量(Xm)以上、シートを搬送した後のシートカットにて、再度搬送補正値の算出を行う必要がある場合が発生する。
【0045】
図10は第2の実施形態を示す。本実施形態では搬送手段として搬送ローラ23を搬送ベルトに置き換えたものである。搬送ベルト23cは駆動ローラ23aと従動ローラ23bに巻き掛けられて支持されている。
【0046】
第1の実施形態の制御ブロック図である図3、および制御フローチャート図5、図7、図8の搬送ローラ23を駆動ローラ23aに置き換えればそのまま第2の実施形態に用いることができる。搬送モータ41によって駆動される駆動ローラ23aが搬送ベルト23cを駆動する。搬送ベルト23cは帯電手段によって表面が帯電され、シートは静電気によって搬送ベルト23cの表面に吸着される。
【0047】
シートは搬送ベルト23cに吸着された状態で、画像の記録がなされ、カッターユニット24によって切断され、押し出し動作によって切り離された部分は押し出される。また、第1の実施形態と同様にバックフィードの時に駆動量を補正するための補正係数が算出される。
【符号の説明】
【0048】
18 光学式(フォト)センサユニット
19 ロールシート
20 プラテン
21 光学式(フォト)センサユニット
22 ピンチローラ
23 搬送ローラ
41 搬送モータ
42 搬送エンコーダ
44 光学式センサ
45 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールシートを保持する保持手段と、
前記保持手段に保持されたロールシートを繰り出す第1の方向と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に前記ロールシートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記ロールシートと前記搬送手段とのスリップによって生ずる搬送距離の誤差を、前記搬送手段の単位搬送距離あたりの駆動量を理論値に対して増加させることによって補正し、該補正による前記駆動量の増加は前記第2の方向に搬送する場合よりも前記第1の方向に搬送する場合の方が大きくなるように制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段は搬送ローラと搬送モータを有し、前記駆動量は前記搬送ローラまたは前記搬送モータの回転量である請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送手段が前記ロールシートを前記第2の方向に搬送するときの駆動量を、駆動量の理論値に補正係数を掛けることによって補正する請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御手段は、ロールシートが前記搬送手段によって前記第2の方向に所定の距離だけ搬送されたときの前記搬送手段の駆動量を検知し、前記所定の距離と検知された駆動量から前記補正係数を算出する請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制御手段は補正係数を算出したら、その後に前記第2の方向に搬送するときは前記算出された補正係数に基づいて駆動量を補正することを特徴とする請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記搬送手段がロールシートを第2の所定の距離だけ搬送する毎に補正係数を算出する請求項4または請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送手段によって搬送されるロールシートに画像を記録する記録手段と、
前記ロールシートの、前記記録手段によって画像が記録された部分を切り離すカッターと、を有し、
前記制御手段は前記カッターが作動した後、ロールシートの先端がロールシートの切り離された部分を押し出す押し出し位置に来るまで前記第1の方向に搬送し、次に先端が前記記録手段の上流側の待機位置に来るまで前記第2の方向に搬送し、前記押し出し位置から前記待機位置まで搬送する際に補正係数を算出することを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記押し出し位置と待機位置との間にロールシートの先端を検知する検知手段を設け、前記搬送手段によってロールシートの先端が前記押し出し位置から前記センサによって検知されるまでの所定の距離だけ搬送されたときの前記搬送手段の駆動量を検知して前記補正係数を算出する請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録手段はインクジェット方式で記録を行う請求項7または8に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−201820(P2010−201820A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50920(P2009−50920)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】