説明

搬送装置

【課題】 ワークの搬送に際して、ワークを回転させて所定の向きに向かせた状態で所定の位置に停止させることができ、さらに、ワークを所定の向きに向かせるための調整が容易である搬送装置を提供すること。
【解決手段】 ワークを保持した状態で軸まわりに回転可能である方向転換機1と、この方向転換機1を移動させる推進部5と、前記方向転換機1の移動経路に沿って張設され移動中の方向転換機1に接触して方向転換機1の推進力の一部を方向転換機1の軸まわりの回転力に変換するほぼ線状またはロープ状または帯状の変換部材9と、前記方向転換機1の軸まわりの回転角度を規制するストッパ11,12とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用エンジン等のワークを、向きを変えつつ搬送するために用いられる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用エンジン等のワークの搬送に、ワークを保持した状態で軸まわりに回転可能である方向転換機と、この方向転換機を移動させる推進部(シリンダ・モータ等)とを備えたトラバーサ搬送装置が用いられている。
【0003】
そして、方向転換機を回転させるには、方向転換機の移動方向にラックを配置すると共に、方向転換機に前記ラックと噛み合うピニオンを設ける構成を採用することが考えられる。すなわち、前記ラックと噛み合うピニオンを有する方向転換機は、移動すると自動的に回転もすることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記搬送装置では、前記ラックとピニオンの歯車ピッチに起因して、方向転換機の停止時の向きあるいは位置がずれるおそれがある。また、方向転換機により搬送されるワークが方向転換機の停止時に所望の向きに向くようにするためには、方向転換機の移動距離や前記ラックの配置等を適切に調整する必要があるが、そのような調整を行うには労力や時間が非常にかかるという問題もある。そして、これらのことは、前記方向転換機を回転させるために、上述のラックとピニオンを組み合わせる構成に代えて、チェーンとスプロケットを組み合わせる構成を採用した場合でも同様である。
【0005】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワークの搬送に際して、ワークを回転させて所定の向きに向かせた状態で所定の位置に停止させることができ、さらに、ワークを所定の向きに向かせるための調整が容易である搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送装置は、ワークを保持した状態で軸まわりに回転可能である方向転換機と、この方向転換機を移動させる推進部と、前記方向転換機の移動経路に沿って張設され移動中の方向転換機に接触して方向転換機の推進力の一部を方向転換機の軸まわりの回転力に変換するほぼ線状またはロープ状または帯状の変換部材と、前記方向転換機の軸まわりの回転角度を規制するストッパとを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、前記搬送装置において、前記方向転換機が、ワークを保持する保持部と、この保持部に軸体を介して固定される回転ドラムとを有し、この回転ドラムに前記変換部材が巻かれていてもよい(請求項2)。
【0008】
具体的には、前記搬送装置において、前記回転ドラムにおいて変換部材が巻かれる部分の直径が変更可能となるように構成されていてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、ストッパによって方向転換機の軸まわりの回転角度を規制することができるので、ワークの搬送に際して、ワークを回転させて所定の向きに向かせた状態で所定の位置に停止させることができ、さらに、ワークを所定の向きに向かせるための調整が容易である搬送装置が得られる。
【0010】
請求項2に係る発明では、シンプルな構造で上記の効果を奏する搬送装置が得られる。さらに、請求項3に係る発明では、上記の効果に加えて、方向転換機の角度変更を簡単に行えるという効果を奏する搬送装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る搬送装置の構成を概略的に示す説明図である。この実施形態に係る搬送装置は、例えば自動車用エンジン等のワークを搬送し、その搬送中にワークが方向転換(回転)するように構成されたものである。そして、ワークを回転させるために、前記搬送装置は、ワークを保持した状態で上下方向の軸まわりに回転可能である方向転換機1(図1参照)を備えている。
【0012】
すなわち、前記方向転換機1は、図1に示すように、ワークを保持するほぼ直方体形状の保持部2と、この保持部2のほぼ中央から垂下する軸体3と、前記保持部2に軸体3を介して固定される回転ドラム4とを有し、保持部2、軸体3および回転ドラム4は一体的に回転するように構成されている。
【0013】
また、前記保持部2に載置(保持)されたワークを搬送するために、前記搬送装置は、ワークを方向転換機1ごと移動させる推進部5を備え、この推進部5は、台車によって構成されている。具体的に説明すると、推進部5は、前記保持部2の下方に配置され平面視ほぼ円形状の台車本体6と、この台車本体6の下部に設けられた複数(例えば四つ)の車輪7と、これら車輪7のうち少なくとも一つの車輪を駆動回転させる例えばモータ等の駆動源(図示していない)とを備えている。そして、台車本体6において前記軸体3に挿通される部分には、軸体3をその軸まわりの回転が可能な状態で保持するベアリング部8が設けられており、台車本体6が方向転換機1と共回りしないように構成されている。
【0014】
さらに、前記方向転換機1を回転させるために、前記搬送装置は、前記方向転換機1の移動経路に沿って張設され移動中の方向転換機1に接触して方向転換機1の推進力の一部を方向転換機1の軸まわりの回転力に変換するほぼ線状またはロープ状または帯状の変換部材9を備えている。この実施の形態の変換部材9はワイヤーにより構成されている。そして、変換部材9は、前記回転ドラム4に一重に巻かれた状態で、前記推進部5を構成する台車が走行する走行台10の下方に張設されている。
【0015】
なお、前記走行台10には、前記方向変換機1の軸体3を挿通させるための溝(図示していない)が方向変換機1の移動経路に沿って設けられている。ここで、推進部5は、図1に示す走行台10の左端(始点)から右端(終点)までの間を往復走行するのであり、この実施の形態では、以下、符号Aで示す方向に走行することを前進、符号Bで示す方向にすることを後退という。
【0016】
また、図2(A)および(B)は、始点および終点に位置するときの前記搬送装置の構成を概略的に示す平面図であり、図1および図2に示すように、搬送装置は、前記方向転換機1の軸まわりの回転角度を規制する二つのストッパ11,12を備えている。これらのストッパ11,12は、上下方向の軸まわりに回転する保持部2の側面に当接して保持部2の回転を方向転換機1ごと停止させるように構成されており、前記台車本体6の上面の適宜の位置に設けられている。そして、これに対して、前記保持部2の左右側面における前記ストッパ11,12が当接する位置に、ストッパ11,12が当接しても傷がつかないあるいは傷がつきにくい材料からなるストッパ受け部13が設けられている。なお、図2(A)および(B)において、Xは保持部2の回転軸である。
【0017】
次に、上記の構成からなる搬送装置の作動について説明する。なお、図3および図4は、前進時および後退時の搬送装置に保持されたワークWの状態を概略的に示す平面図であり、図3および図4において、方向転換機1および推進部5はワークWに隠れて見えておらず、また、軸体3を挿通させるために走行台10に設けられている前記溝の図示は省略してある。まず、図3(A)に示すように、始点にある搬送装置の保持部2にワークWが載置(保持)される。そして、この状態から、前記推進部5の走行により搬送装置が前進すると、方向転換機1の回転ドラム4に変換部材9が巻かれているため、方向転換機1の推進力の一部が方向転換機1の軸まわりの回転力に変換され、方向転換機1は軸まわりに回転することになる。
【0018】
その後、搬送装置により搬送されるワークWは、図3(B)に示す状態を経て、図3(C)に示すように、搬送装置が始点にあったときの状態から平面視において約90°だけ反時計まわり(左まわり)に回転した状態となる。すなわち、ワークWは、図3(A)に示すように、始点にある搬送装置の保持部2に載置された状態では、その前部Fが図中下側、後部Rが図中上側に位置する場合、図3(C)に示す状態では、前部Fは図中右側、後部Rは図中左側に位置することとなる。そして、このとき、図2(B)に示すように、保持部2のストッパ受け部13にストッパ12が当接し、保持部2を有する方向転換機1の回転が停止する。従って、この後は、方向転換機1の回転ドラム4と変換部材9とはスリップし、方向転換機1は回転せずに終点まで前進するのであり、ワークWは最終的に図3(D)に示す状態となる。なお、図3(D)において、Sは方向転換機1が回転せずにスリップ移動した区間を示している。
【0019】
また、終点にある搬送装置の保持部2にワークWを載置して、搬送装置を始点へと後退させてもよい。この場合、具体的には、図4(A)に示すように、終点にある搬送装置の保持部2にワークWが載置(保持)される。そして、この状態から、前記推進部5の走行により搬送装置は後退し、この後退とともに方向転換機1は軸まわりに回転することになる。
【0020】
その後、搬送装置により搬送されるワークWは、図4(B)に示す状態を経て、図4(C)に示すように、搬送装置が終点にあったときの状態から平面視において約90°だけ時計まわり(右まわり)に回転した状態となる。すなわち、ワークWは、図4(A)に示すように、終点にある搬送装置の保持部2に載置された状態では、その前部Fが図中右側、後部Rが図中左側に位置する場合、図4(C)に示す状態では、前部Fは図中下側、後部Rは図中上側に位置することとなる。そして、このとき、図2(A)に示すように、保持部2のストッパ受け部13にストッパ11が当接し、保持部2を有する方向転換機1の回転が停止する。従って、この後は、方向転換機1の回転ドラム4と変換部材9とはスリップし、方向転換機1は回転せずに始点まで前進するのであり、ワークWは最終的に図4(D)に示す状態となる。なお、図4(D)において、Tは方向転換機1が回転せずにスリップ移動した区間を示し、この実施の形態では、区間Sと区間Tとはほぼ同じ距離である。
【0021】
上記の構成からなる搬送装置では、ワークWの向きを任意の角度(この実施の形態では90°)だけ変えて搬送することができる。そして、始点と終点との間を往復する方向転換機1は、始点、終点に到着するまでに所定の角度の回転を終え、その後はスリップ移動するのであり、このようにいわゆる遊びを設けてあることから、搬送装置自体はシンプルな構造でありながら、方向転換機1に上記所定角度の回転を確実に行わせることができる。
【0022】
また、従来の搬送装置では、方向転換機の回転角度の調整に非常に時間がかかっていたが、この実施の形態の搬送装置では、前記ストッパ11,12の位置によって方向転換機1の回転角度が決定されるため、回転ドラム4に変換部材9を巻き付ける際等に微調整が不要であることから、短時間で簡単に組み立てることができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。例えば、保持部2は直方体形状に限られず、ワークを保持(載置)しやすい適宜の形状をしていればよい。
【0024】
また、推進部5は、車輪によって自動走行する台車に限られず、例えば、牽引等によって走行する台車でもよく、また、レールに沿って移動するように構成されていてもよい。その他、ロープに吊り下げられた状態で移動するいわゆるロープウエー構造や、いわゆるケーブルカー構造のものなどであってもよい。
【0025】
さらに、前記回転ドラム4において変換部材9が巻かれる部分の直径が変更可能となるように構成されていてもよく、この場合には、回転ドラム4を有する方向転換機1の回転角度を90°に限らず、例えば180°等に簡単に変更することができる。そのために、例えば、回転ドラム4に、変換部材9が巻かれる部分として径の異なる部分を複数設けてもよく、また、径の異なる回転ドラム4を複数用意し、回転ドラム4を交換可能としてもよい。
【0026】
また、変換部材9は、回転ドラム4に一重に巻かれている構成に限られず、二重以上に巻かれていてもよい。反対に、変換部材9が回転ドラム4に巻かれていなくてもよく、この場合には、張設された変換部材9に回転ドラム4が接触するように構成しておけばよい。すなわち、変換部材9が回転ドラム4に巻かれているか否かに拘わらず、方向転換機1の移動に伴って回転ドラム4が回転するように変換部材9が回転ドラム4に接触していればよい。
【0027】
また、前記ベアリング部8はなくてもよく、台車本体6にベアリング部8に代えて貫通孔を設けてこの貫通孔に軸体3を挿通させてあってもよい。
【0028】
また、前記ストッパ11,12を設ける位置が変更可能であるように構成しておくことが、方向転換機1が始点および終点に到着したときの保持部2の向きを簡単に調整することができる点で望ましい。
【0029】
また、例えば、方向転換機1の回転角度を90°より大きい180°等とする場合、保持部2の回転が、保持部2におけるストッパ受け部13以外の部分にストッパ11,12が当接することによって妨げられないように、保持部2の形状やストッパ11,12の配置・形状を適宜に設定しておかなければならないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る搬送装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】(A)および(B)は、始点および終点に位置するときの前記搬送装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】前進時の搬送装置に保持されたワークの状態を概略的に示す平面図である。
【図4】後退時の搬送装置に保持されたワークの状態を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 方向転換機
5 推進部
9 変換部材
11 ストッパ
12 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持した状態で軸まわりに回転可能である方向転換機と、この方向転換機を移動させる推進部と、前記方向転換機の移動経路に沿って張設され移動中の方向転換機に接触して方向転換機の推進力の一部を方向転換機の軸まわりの回転力に変換するほぼ線状またはロープ状または帯状の変換部材と、前記方向転換機の軸まわりの回転角度を規制するストッパとを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記方向転換機が、ワークを保持する保持部と、この保持部に軸体を介して固定される回転ドラムとを有し、この回転ドラムに前記変換部材が巻かれている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記回転ドラムにおいて変換部材が巻かれる部分の直径が変更可能となるように構成されている請求項2に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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