説明

搬送装置

【課題】クリーンルーム床面上を搬送装置がコンテナ等を積載して走行した場合の塵埃等の巻上げを抑制する。
【解決手段】クリーンルームで床面に沿って移動して荷物の搬送を行う搬送装置Cであって、上記床面の近傍に搬送装置Cの移動により気圧の低い領域を形成する低圧形成部70、71を備える。このように構成することで、搬送装置が荷物を積載して移動することにより発生する気圧の低い領域である低圧部が、人為的に床面近傍であって低圧形成部の背後に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関するものであり、特にクリーンルーム内で床面上を走行するクレーン等の搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中における浮遊微小粒子、塵埃等が限定された清浄度レベル以下に管理されたクリーンルームで扱う工作物、特にガラスの液晶基板、半導体ウエハ等にとって塵埃等は大敵であり、塵埃等が付着し工作物が汚染されると製品の歩留まりを低下させる一因となっている。クリーンルーム床面上を走行する搬送装置において、搬送装置が工作物を搬送する際、空間を走行中に発生する空気圧により前記搬送物の背後に生じる低圧部に気流が流れ込むことによって、クリーンルーム床面上に積もっている塵埃等を巻上げてしまうという問題があった。
従来、クリーンルーム床面上の塵埃等を上方から気流をダウンフローとして与えることによって塵埃等を気流により上から押さえつけ、塵埃等の巻上がりを抑制する方法が取られている。また、搬送装置にユニット型空気清浄化装置を取り付け、クリーンルーム床面上の塵埃等を空気清浄フィルタと吸気ポンプにより吸入しながら走行することにより、塵埃等の巻上がりを抑制する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭63−133643号公報
【特許文献2】特開昭63−135738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、気流をダウンフローとして与えることにより塵埃等の巻上げを抑制する方法を用いても、クリーンルーム床面上を搬送装置がコンテナ等を積載して高速に走行した場合、コンテナ背後にできる低圧部に気流が流れ込むことにより床面から塵埃等が巻上げられ、コンテナ等および周囲のクリーン環境を汚染する問題があった。また、搬送装置にユニット型空気清浄化装置を取り付ける方法では、当該装置を作動させるための動力が搬送に要する動力と別に必要になり、搬送装置の重量が増加することで走行に要する電力も増加してコストがかかる問題がある。また搬送装置の走行速度により塵埃等の吸入率が変化するため適切な塵埃等の吸入力の制御が必要になるという技術的問題がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、クリーンルーム床面上を搬送装置がコンテナ等を積載して走行した場合でも塵埃等の巻上げを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、クリーンルームで床面に沿って移動して荷物の搬送を行う搬送装置であって、前記床面の近傍に前記搬送装置の移動により気圧の低い領域を形成する低圧形成部を備えるという構成を採用する。
このように構成することで、搬送装置が荷物を積載して移動することにより発生する気圧の低い領域である低圧部が、人為的に床面近傍であって低圧形成部の背後に形成することができる。
本発明によれば、搬送装置の低圧形成部の低圧部に気流が流れ込むことによって床面上に積もっている塵埃等の巻上がりが発生するが、塵埃等は床面近傍の低圧部に巻き込まれるため、荷物の背後に発生する低圧部に塵埃等を巻き込むことを抑制することができる。
【0006】
また、本発明は、前記低圧形成部は、前記搬送装置の移動方向の両側に設けるという構成を採用する。
このように構成することで、本発明の搬送装置が、移動方向に往復運動する場合であっても前記低圧部を形成することができる。また、荷物の背後に形成された低圧部により塵埃等が巻上がり始めても、すぐ後の低圧形成部が低圧部を形成することにより、そこに気流が流れ込むため、荷物の低圧部によって巻上がり始めた塵埃等を引き寄せることができる。
【0007】
そして、本発明は、前記低圧形成部は、先に記載した発明において、積載した前記荷物よりも低い位置に設けるという構成を採用する。
このように構成することで、本発明では、荷物の低圧部より低い位置に人為的に低圧形成部が低圧部を形成することにより、荷物よりも低い位置で塵埃等の巻き込みが発生し、荷物の背後に発生する低圧部に塵埃等を巻き込むことを抑制することができる。
【0008】
そして、本発明は、前記低圧形成部は、先に記載した発明において、前記荷物を収容する複数段の荷物収容部の最下段の高さよりも低い位置に設けるという構成を採用する。
このように構成することで、本発明では、荷物収容部の最下段の高さよりも低い位置に低圧部を形成することにより、荷物収容部よりも低い位置で塵埃等の巻き込みが発生し、最下段の荷物収容部に収容している荷物への塵埃等の汚染を抑制することができる。
【0009】
さらに、本発明は、先の発明において、前記床面に沿って移動するフレームと、前記フレームに沿って昇降する昇降フレームと、前記昇降フレームを駆動する駆動装置とを有し、前記低圧形成部は前記駆動装置を覆って筒状に設けられるという構成を採用する。
このように構成することで、本発明では、前記駆動装置を前記低圧形成部がカバーすることにより、前記駆動装置を外的要因から保護することができる。また、本発明では、別途低圧形成部を設置するスペースを確保する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、本発明の搬送装置が移動することにより、床面近傍に備えられた低圧形成部が低圧部を形成することで、床面近傍の低圧部に気流が流れ込み床面上の塵埃等を巻込むため、荷物により形成された低圧部への塵埃等の巻上げを抑制する効果がある。
また、本発明では、前記低圧形成部は移動により低圧部を形成するものであればよいため、ユニット型空気清浄化装置のように、別途動力が必要になることもなく、重さの軽い低圧形成部を採用すれば、搬送装置の重量増加による走行に要する電力コストも要しない。さらに、本発明では、搬送装置の移動の速度により低圧部の圧力が大きくなるため、速度による制御が必要になるという技術的問題も解消することができる。
つまり、本発明の搬送装置は、クリーンルーム床面上を搬送装置がコンテナ等を積載して走行した場合でも塵埃等の巻上げを抑制することができ、荷物の塵埃等による汚染を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の搬送装置であるスタッカクレーンCを備える、自動倉庫Sの平面図である。また、図2は、自動倉庫Sの側面図である。
これらの図に示すように、自動倉庫Sは、スタッカクレーンCと、当該スタッカクレーンCの軌道であるレールRを挟んで対向配置されているラックT1、T2とを備えており、ラックT1、T2にスタッカクレーンCよって荷物を搬送して保管するものである。また、自動倉庫Sは、荷物を入庫するための入庫用コンベヤ(不図示)と荷物を出庫するための出庫用コンベヤ(不図示)とを備えており、スタッカクレーンCによって、入庫用コンベヤ及び出庫用コンベヤとの間にて荷物の受け渡しを行うことが可能とされている。
なお、本実施形態において、荷物はガラス基盤を複数収納したカセットKであり、ラックT1、T2及びスタッカクレーンCは、例えばクリーン度10000レベルのクリーンルームCL1内に設置されている。
【0012】
ラックT1、T2は、水平方向に及び上下方向に複数配列された収納棚(荷物収容部)Tによって構成されており、各収納棚TにカセットKを保管可能とされている。すなわち、ラックT1、T2は、多段配置された収納棚Tによって構成されている。
なお、以下の説明において、収納棚Tの水平方向の配列方向をX方向(移動方向)とし、X方向と直行する水平方向をY方向、X−Y面と直行する垂直方向をZ方向として説明する場合がある。
【0013】
レールRは、X方向に延在して、すなわちラックT1、T2に沿って敷設されており、クリーンルームCL1の床に所定の間隔で平行に敷設されるレールR1、R2と、クリーンルームCL1の天井に敷設されるレールR3と、によって構成されている。すなわち、本実施形態のスタッカクレーンCが備えられる自動倉庫Sにおいては、レールRが上下にそれぞれ設けられている。
【0014】
スタッカクレーンCは、レールR1、R2に下方から支持されるとともに、レールR1、R2上において回転可能とされる4つの車輪1が取り付けられている。そして、スタッカクレーンCの全体は、4つの車輪1によってレールR1、R2上を走行可能に支持されている。すなわち、スタッカクレーンCにおいては、4つの車輪1によって立っていることが可能とされており、また、4つの車輪1が同期して回転することによって車輪1の回転方向に走行可能とされている。
なお、各車輪1に対してモータ2が接続されており、モータ2の駆動によって車輪1が回転される。また、車輪1のうちレールR2上を回転する車輪1aには、レールR2の両側面に当接されるガイドローラ1bが設置されており、当該ガイドローラ1bによって車輪1aがレールR2上をガイドされる。
また、スタッカクレーンCは、昇降されるケージ40(昇降フレーム)を備えており、ケージ40上に設置された移載装置100(例えば、フォークリフト装置)によって、ケージ40と収納棚Tとの間、ケージ40と入庫用コンベヤとの間及びケージ40と出庫用コンベヤとの間にてカセットKの受け渡しを行う。
【0015】
図3は、スタッカクレーンCの斜視図である。また図4は、スタッカクレーンCの正面図である。なお、図3及び図4においては、図面の視認性を向上させるために、スタッカクレーンCが備える車輪1、モータ2、ガイドローラ1b及び移載装置100の図示を省略している。
これらの図に示すように、スタッカクレーンCは、下部フレーム10(マスト支持フレーム)と、マスト20と、上部フレーム30と、ケージ40と、昇降装置50と、制御装置60と、低圧形成部70と、低圧形成部71とを備えている。
【0016】
下部フレーム10は、上記車輪1が回転自在に設置される車輪取り付け部11を有する土台とされるものであり、X方向に延在するとともに平行に設置される2つのメインフレーム土台12と、2つのメインフレームの端部同士を接続する2つのサイドフレーム13とを備えている
【0017】
マスト20は、下部フレーム10に対して立設されるものであり、下部フレーム10の一方のサイドフレーム13aに立設されるマスト20aと、下部フレームの他方のサイドフレーム13bに立設されるマスト20bとを備えている。
また、マスト20は、下部フレーム10の下側まで突出して延在されている。すなわち、マスト20は、下部フレーム10より、レールR1、R2が敷設される敷設面(クリーンルームCL1の床面)寄りにまで延在されている。
なお、マスト20aとマスト20bとは、X方向に配列されている。すなわち、マスト20aとマスト20bとは、Y方向において同一位置に立設されている。
このマスト20は、角柱形状を有しており、各側面がX方向あるいはY方向と平行となるように立設されている。
【0018】
上部フレーム30は、マスト20aの上端部とマスト20bの上端部とを接続するものであり、X方向に延在して配置されている。
この上部フレーム30の略中央には、上記レールR3を把持することによって、スタッカクレーンCのY方向の傾動を抑止するためのガイド31が設置されている。
【0019】
ケージ40は、X方向に延在する2つのメインフレーム41を有している。メインフレーム41同士は、補強部材42によって接続されている。メインフレーム41の両端部の各々に対してはサイドフレーム43が接続されている。
サイドフレーム43は、Z方向に立設される略三角形形状を有しており、その底辺部にて2つのメインフレーム41を接続している。また、サイドフレーム43は、底辺部及び頂部からマスト20方向に突出するガイド部44を備えている。
ガイド部44には、マスト20の側面を摺動面とするガイドローラが複数設置されている。これらのガイドローラ46,47にガイドされることによってサイドフレーム43、さらにはケージ40がマスト20に沿って、上下方向(Z方向)に移動可能とされている。
また、サイドフレーム43の頂部から突出するガイド部44には、後述する昇降装置50が備える昇降ワイヤ51が接続される接続部48が設置されている。
【0020】
昇降装置50は、昇降ワイヤ51と、ドラム52と、モータ53と、減速器54とを備えている。
昇降ワイヤ51は、ケージ40のサイドフレーム43が備えるガイド部44の接続部48に一端が接続されるとともに、ドラム52に他端が巻回されている。また、昇降ワイヤ51としては、マスト20a側に位置するサイドフレーム43のガイド部44に接続される昇降ワイヤ51aと、マスト20b側に位置するサイドフレーム43のガイド部44に接続される昇降ワイヤ51bとが存在するが、いずれの昇降ワイヤ51a,51bも他端がドラム52に巻回されている。
なお、マスト20aの頂部及びマスト20bの頂部には、昇降ワイヤ51を案内するためのシーブ55が設置されている。マスト20aの頂部に設置されたシーブ55aは、X−Z平面内にて回転自在とされており、昇降ワイヤ51aをサイドフレーム43マスト20a側のサイドフレーム43に案内するとともに、昇降ワイヤ51bをマスト20bの頂部に設置されたシーブ55bに案内するものである。マスト20bの頂部に設置されたシーブ55bは、X−Z平面内にて回転自在とされており、昇降ワイヤ51bをサイドフレーム43、マスト20b側のサイドフレーム43に案内するものである。
【0021】
ドラム52は、下部フレーム10のサイドフレーム13a上に、Y方向を向く回転軸を中心として回転可能に設置されている。
モータ53は、減速器54を介してドラム52と接続されており、減速器54を介してドラム52を回転する。なお、モータ53及び減速器54は、ドラム52の両端に各々設置されている。
【0022】
制御装置60は、スタッカクレーンC全体の動作を制御するものであり、下部フレーム10のサイドフレーム13b上に設置されている。
なお、制御装置60は、ケーブル61によって、自動倉庫S全体の制御を行う外部の制御装置と電気的に接続されている。
【0023】
低圧形成部70は、低圧形成部70aと、低圧形成部70bを備えている(図3及び図4では、低圧形成部70b図示せず)。低圧形成部70aは、ドラム52の両端に各々設置されている駆動装置(モータ53及び減速機54)55の一方(+Y側)を覆って設置されている。低圧形成部70bは、ドラム52の両端に各々設置されている駆動装置55の他方(−Y側)を覆って設置されている。より詳しくは、各々、その駆動装置55の外周を覆って、Y方向に延在して設置されている。当該低圧形成部の一実施例として円筒状のカバーがある。
【0024】
低圧形成部71は、スタッカクレーンCの−X方向外側にむけて、かつ、床面近傍に突出されている。より詳しくは、スタッカクレーンCの−X方向外側に設けられた制御装置60の−X方向側の側面にY方向に延在して設置されている。当該低圧形成部の一実施例として円柱形状の棒がある。
【0025】
続いて、上記構成のスタッカクレーンCの動作について説明する。
スタッカクレーンCは、ガイドローラ1bによってレールR2上に沿ってX方向にガイドされた状態で、レールR1、R2上に立っていることが可能であり、また、モータ2の駆動によって車輪1が同期して回転することにより、レールR1、R2上を走行する。
また、スタッカクレーンCは、モータ53を制御してドラム52の回転量を調整することによって昇降ワイヤ51の巻回量を変化させ、これによって昇降ワイヤ51に接続されたケージ40のサイドフレーム43の高さが調整される。すなわち、昇降装置50の駆動によって、ケージ40の高さが制御される。そして、スタッカクレーンCの走行位置及びケージ40の高さが調整されることによって、ケージ40に搭載された移載装置100によって、カセットKの受け渡しが収納棚Tとの間で行われる。
【0026】
ここで、低圧形成部71は、スタッカクレーンCが、モータ2によって車輪1が回転されレールR1、R2上を+X方向に走行することにより、クリーンルームCL1空間内を移動した時に、床面近傍に設置されている低圧形成部71の背後であって移動方向と逆方向(−X方向)側に、低圧部を形成する。その低圧部に気流が流れ込むことによって、クリーンルームCL1床面上に積もっている塵埃等が巻上げられる。
また、スタッカクレーンCが往復移動し、−X方向に走行した場合には、床面近傍に設置されている低圧形成部70(70a、70b)の背後であって移動方向と逆方向(+X方向)側に低圧部を形成する。その低圧部に気流が流れ込むことによって、クリーンルームCL1床面上に積もっている塵埃等が巻上げられる。
【0027】
次に、低圧形成部を取り付けた場合の塵埃等の巻上げ抑制の効果について、図5、図6に基づいて説明する。
図5は、シミュレーションでスタッカクレーンCが床面上を移動した場合の、埃の巻上げの様子を表した図である。図6は、前記シミュレーションの計算結果を折れ線グラフで示した図である。
シミュレーションは、クリーンルーム内の清浄度をクリーンレベルクラス10に設定し、スタッカクレーンCを3メートル毎秒の速度でクリーンルーム内を移動させるものとして行った。
図5(a)から図5(c)まで、床面上の埃80は、図中に示す多数の点として表している。図5(a)は、シミュレーションでスタッカクレーンC(低圧形成部無し)が、カセットKを積載しない状態で+X側に移動した場合の、埃80の巻上げを表した図である(パターンA)。図5(b)は、シミュレーションでスタッカクレーンC(低圧形成部無し)が、カセットKを積載した状態で+X側に移動した場合の、埃80の巻上げを表した図である(パターンB)。図5(c)は、シミュレーションでスタッカクレーンC(低圧形成部在り)がカセットKを積載した状態で+X側に移動した場合の、埃80の巻上げを表した図である(パターンC)。
図6に示されるグラフにおいて、縦軸は埃80の巻上がり高さを示し、横軸はスタッカクレーンCの走行時間を示す。図6で示されるグラフ上の、一点鎖線はパターンAのシミュレーションの計算結果を表し、点線はパターンBのシミュレーションの計算結果を表し、実線はパターンCのシミュレーションの計算結果を表す。また、図6に示されるグラフは、走行時間を往路、一時停止、復路の三つの時間で点線により仕切ることによって視認性を向上させている。
【0028】
続いて、パターンAからCについて説明する。
パターンAの場合、巻上がる埃80は、スタッカクレーンCが往路、復路移動中は一時停止時と比べ多少高く巻上がるが、往路、一時停止、復路の一連の動作を通して埃80はほとんど巻上がらないことが観察される(図5(a)、図6参照)。
パターンBの場合、スタッカクレーンCがカセットKを積載したことによりパターンAの場合と比べ、埃80が、非常に高く巻上がっていることが観察できる(図5(b)、図6参照)。また、図5(b)より、埃80が、積載したカセットKの高さまで巻上がっていることが観察できる。これでは積載したカセットKに埃80が付着し、汚染される可能性がある。
パターンCの場合、スタッカクレーンCがカセットKを積載し、低圧形成部70、71を移動方向の両側に備えているため、低圧形成部無しのパターンBに比べて、埃80が巻上がる高さが約三分の一以下に抑えられていることが観察される(図5(c)、図6参照)。また、図5(c)より、埃80が、低圧形成部71が設置されている高さ以下に巻き上がりが抑えられていることが観察される。したがって、スタッカクレーンCが該低圧形成部70、71を備えることにより、積載したカセットKの高さまで埃80が巻上がらないため、埃80が付着することによりカセットKが汚染されることを抑制する効果が観察される。
これらは、本実施形態の低圧形成部70、71により塵埃等の巻上げを抑制するという効果が存在することを示すものである。
【0029】
したがって、上述の実施の形態によれば、スタッカクレーンCが、カセットKを積載してクリーンルームCL1床面上をX方向に移動した際、カセットKの背後に気圧の低い低圧部が形成されるものの、低圧形成部71が、床面近傍に人為的に低圧部を形成することにより、巻き上がり始めた塵埃等は床面近傍のその低圧部に巻き込まれるため、塵埃等の巻上げを低圧形成部71の高さ以下まで抑制することができる。また、上述の実施の形態によれば、低圧形成部がスタッカクレーンCの移動方向両側に設けられているため、スタッカクレーンCが、往復移動した場合でも、進行方向後方側の低圧形成部により前記同様の効果が得られる。
【0030】
すなわち、スタッカクレーンCは、移動による塵埃等の巻上げを低圧形成部70、71より低い高さまでに抑制することができ、その結果、積載した荷物や荷物収容部に収容された荷物の塵埃等からの汚染を抑制することができる。
また、本実施形態では、前記低圧形成部は移動により低圧部を形成するものであればよいため、ユニット型空気清浄化装置のように、別途動力が必要になることもなく、体積や容積が大きく重さの軽い、例えば中空形状の低圧形成部を採用すれば、搬送装置の重量増加による走行に要する電力コストも要しない。さらに、本発明では、搬送装置の移動の速度により低圧部の圧力が大きくなるため、速度による制御が必要になるという技術的問題も解消することができる。そして、本実施形態では、低圧形成部をモータ等から成る駆動装置等をカバーするように設置することで、駆動装置等を外的要因、例えば衝突による衝撃等から保護することができ、かつ、別途低圧形成部を設置するスペースを確保する必要がなくなる。
【0031】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態においては、搬送装置は、スタッカクレーンとして説明した。しかしながら、本発明の搬送装置は、クリーンルーム床面上を移動し荷物を積載可能な構成である搬送装置に広く適用可能である。
【0033】
また、上記実施形態においては、低圧形成部は、円筒状、円柱状の構成として説明した。しかしながら、本発明にかかる低圧形成部は、移動により背後に低圧部を形成するという構成であればよく、例えば角筒状、角柱状、球状等各種の形状を採用できる。したがって、上記形状である必要は無く、また上記実施形態においては、低圧形成部を移動方向の両側に設置し、計二個の低圧形成部を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、移動方向が一方側であれば進行方向後方側に一個、もしくは複数個の低圧形成部を備えるものであってもよい。
【0034】
また、低圧形成部は移動方向と略直交する方向についてゲージよりも突出する構成を有することが好ましい。これにより、低圧形成部は、移動によりゲージの背後に移動方向と直交する方向で、ゲージの幅分の低圧部が形成され塵埃等が巻上がるものの、ゲージよりも突出した構成を有することから、その低圧部よりゲージの幅を越える範囲に低圧部を形成することができ、したがって、その低圧部に塵埃等を効果的、より確実に引き寄せることができる。
さらに、荷物が移動方向と略直交する方向でゲージよりも長い場合には、低圧形成部は荷物よりも突出することが好ましい。
【0035】
更に、上記実施形態においては、スタッカクレーンCの搬送対象物である荷物がガラス基盤を収納するカセットである構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンを備える自動倉庫の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンを備える自動倉庫の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンの埃巻上げ抑制のシミュレーションの図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるスタッカクレーンの埃巻上げ抑制のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
C…スタッカクレーン(搬送装置)、CL1…クリーンルーム、K…カセット(荷物)、T…収納棚(荷物収容部)、40…ケージ(昇降フレーム)、55…駆動装置、
70(70a,70b),71…低圧形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームで床面に沿って移動して荷物の搬送を行う搬送装置であって、
前記床面の近傍に前記搬送装置の移動により気圧の低い領域を形成する低圧形成部を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記低圧形成部は、前記搬送装置の移動方向の両側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記低圧形成部は、積載した前記荷物よりも低い位置に設けられることを特徴とする請求項1、または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記低圧形成部は、前記荷物を収容する複数段の荷物収容部の最下段の高さよりも低い位置に設けられることを特徴とする請求項1、または2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記床面に沿って移動するフレームと、前記フレームに沿って昇降する昇降フレームと、前記昇降フレームを駆動する駆動装置とを有し、前記低圧形成部は前記駆動装置を覆って筒状に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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