説明

搬送装置

【課題】 簡単な構造で浮き上がりを防止でき、搬送レールRを敷設した搬送台車下部が煩雑にならない昇降可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】
進行方向左右側縁には摺動ガイド32を溝状に穿設してなる基台3を備え、パンタグラフ構造の1つのジョイント部が固定回動軸5cとして基台3に係止され、固定回動軸5cと対向する摺動回動軸5dが基台3の摺動ガイド32に案内されて摺動可能に形成され、下部にはガイドレール6に案内されるガイドローラ51が設けられるリンク部5を備え、基台3の上部にリンク部5の昇降によって昇降される昇降台車4を備える搬送台車1と、
軌道Rを設け、所定位置にガイドローラ51の案内溝62を穿設し軌道Rから上方へ突出させるガイドレール6とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被搬送物を搬送可能な搬送台車において、搬送台車の載置台を上下方へ移動させ被搬送物を移動して位置させるためのリフトアップ機構を備える搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工場等では、自動工程によって自動車の製造を行う製造ラインには、自動車ボディー等の被搬送物を自走させて搬送させる搬送台車を用いている。
そして、この製造ラインでは、所定の工程箇所では上方へリフトアップさせて組み立てや組み付けの作業を行う場合がある。
【0003】
図4は、従来のリフトアップ機構を備える搬送台車の例である。以後、図4に表す例を従来例1という。図4は従来例1の側面説明図であり、図中左方向から右方向へ被搬送物を搬送する場合の説明図であり、図5は動作を説明する図4の中央横断面説明図であり、図6はリフトアップした状態を表す平面説明図である。
従来例1は、自動車製造ラインに敷設した搬送レールRの上を走行可能な搬送台車100であり、平面視四角形等の形状を成す基台101と、基台101の下部に取り付けられて搬送レールR上を走行可能とする駆動車輪102とを備える。駆動車輪102は、車輪部に直接駆動力を伝達させて搬送移動させる場合や、他の駆動手段によって移動される場合等種々の形態が考えられるが、適宜選択すれば足りる。
【0004】
基台101には、基台101の上部となるように、基台101に対して上下動可能に昇降台車103を設ける。昇降台車103には、下面に脚部104を四方に4箇設け、それぞれの下端にガイドローラ105を回動自在に備える。この脚部104は、基台101に設ける貫通孔106を貫通して設置し、貫通孔内を摺動可能である。そして、脚部104には、所定高さから下には移動しないようにストッパー(図示せず)を設けてある。
そして、ガイドローラ105は、搬送方向側となる前方側に設けた一組のガイドローラ105fの幅と、搬送方向と異なる側である後方側に設けた一組のガイドローラ105rの幅とを異ならせると共に、搬送台車100を搬送した際に、前方側ガイドローラ105fの軌道と後方側ガイドローラ105rの軌道とが重ならないように設置してある。
このように形成する搬送台車100は、昇降台車103に被搬送物を載置し、搬送台車100が移動することで昇降台車103上の被搬送物も搬送されることとなる。
【0005】
一方、搬送台車100を搬送させる床面には、前記駆動車輪102を案内する搬送レールRを、搬送台車100が所望の軌道を通るように設置してある。
また、ガイドローラ105の軌道上には、4つのガイドローラ105それぞれがガイドされるように昇降レールR2を敷設する。そして、昇降レールR2は、予め定める所望の箇所、即ち、昇降台車103を昇降させたい位置で上方へ隆起するよう、搬送レールRより上方となるように敷設する。この時、前方側ガイドローラ105fが隆起状態に設置する箇所と、後方側ガイドローラ105rが隆起状態に設置する箇所とを前方側ガイドローラ105fと後方側ガイドローラ105rとの間隔と同間隔となるようにそれぞれの昇降レールR2を敷設することで昇降台車103は水平に上方へ案内されて上昇する。
【0006】
上記従来例1は、昇降台車103の昇降をガイドローラ105を直接的に上方へ移動させることで行った例であるが、以下に説明する従来例2は、従来例1とは異なり昇降台車を、パンタグラフ構造を有するリンク機構によって昇降させる例である。
【0007】
従来例2の搬送台車200は、図7及び図8に表すように、従来例1同様に基台201を備え、基台201の下部に、四方となるように駆動車輪202を備える。そして、基台201の略中央には、被搬送物を載置可能な昇降台車203を上部に備える。
また、従来例2の搬送台車200は、昇降台車203の昇降を行うために、昇降台車203の下部にリンク機構204を備える。リンク機構204は、X字状にリンクを組み合わせたパンタグラフ構造であり、X字状の一方のリンク204aの下部から下方へ支持部205を延設してその下端にガイドローラ206を備える。そして、基台201の昇降台車203下部には、リンク機構204が入り込む開口部207を穿設してある。尚、リンク204aの他端である上側の端部は、昇降台車203の下面に回動自在且つ摺動自在に係止されている。
そして、開口部207の一端にリンク機構204のX字状リンク機構の一方のリンク204aの下方となる端部が回動固定軸208に回動自在に固定される。このリンク機構204は、台車203進行方向左右にそれぞれ一対ずつ設けてある。従って、ガイドローラ206も、それぞれのリンク204aに設けてあるので、左右一対設ける。
【0008】
また、このリンク204aと回動自在にクロスするリンク204bの下方端となる、前記回動固定軸208と回動自在に係止されるリンク204aの端部と対向する端部に摺動ガイドローラ209を設け、この摺動ガイドローラ209が、開口部207の搬送方向に対する幅方向側の縁部に設ける摺動ガイド207a内に、摺動ガイド207aによって摺動ガイドされるよう摺動可能に係止されている。
【0009】
一方、搬送台車200を搬送させる床面には、駆動車輪202を案内する搬送レールRを、搬送台車200が所望の軌道を通るように設置してある。
また、ガイドローラ206の軌道上には、2つのガイドローラ206それぞれがガイドされるように昇降レールR2を敷設する。そして、昇降レールR2は、予め定める所望の箇所、即ち、昇降台車203を昇降させたい位置で上方へ隆起するよう、搬送レールRより上方となるように、左右のガイドローラ206それぞれを案内するように一対を敷設する。
【0010】
このように構成する従来例2は、ガイドローラ206が昇降レールR2の隆起した箇所に到達すると、ガイドローラ206が昇降レールR2に案内されて上昇する。すると、リンク204aは、回動固定軸208を中心に自由端が上方へ回動されることとなり、摺動ガイドローラ209が摺動ガイド207aに案内されて進行方向と並行に摺動するので、自由端側に設けられる昇降台車203は上方へと移動されることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来例1及び従来例2では、水平方向の動きを上下方向の動きに変換して昇降台車103あるは昇降台車203を上下動させることが可能となる。
しかしながら、従来例1では、昇降台車103を上下動させるために、搬送レールRの他に、上下動させるためのガイドローラ105用に4本の昇降レールR2が必須であり、敷設するフロアが煩雑になると共に余分な起伏が生じてしまい、搬送台車100の下部との緩衝を避けるために、搬送台車100の下部構造を変更しなければならないことや、該緩衝を避けるために上昇させられる幅が充分に取れないという問題点を有した。また、余分なレールを複数必要としてしまうと言う問題点を有した。そして、昇降レールR2も、昇降台車103の水平を保ったまま上下動させるためには、敷設位置を正確に設置しなければならないので、敷設に手間がかかってしまうと言う問題点を有した。
【0012】
また、従来例2でも、やはり2本の昇降レールR2が必須であり、また、従来例1と同様、敷設するフロアが煩雑になると共に余分な起伏が生じてしまい、搬送台車200の下部との緩衝を避けるために、搬送台車200の下部構造を変更しなければならないことや、該緩衝を避けるために上昇させられる幅が充分に取れないという問題点を有した。
更に従来例2では、リンク204に過大な力が加わると、基台201自体が浮き上がり持ち上がってしまうという問題点を有した。
【0013】
更に、従来例1及び従来例2では、単に昇降レールR2を設けるだけなので、昇降台車103または昇降台車203の昇降終了時や昇降状態から下降開始時に、昇降台車103または昇降台車203が浮き上がってしまう場合が生じ、昇降可能な搬送装置としては不十分な構造となってしまうという問題点を有した。そしてこの浮き上がりを回避するためには、搬送速度をゆっくりするか、浮き上がり防止策を別途とる必要があり、浮き上がり防止策を別途とると、搬送台車100の下方が更に煩雑になってしまうと言う問題点を有した。
【0014】
そこでこの発明は、上記問題点に鑑み、簡単な構造で浮き上がりを防止でき、搬送レールRを敷設した搬送台車下部が煩雑にならず、昇降距離を充分に稼げるリフトアップ可能な搬送台車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、シンプルなガイド構造で上下動可能であり、且つ浮き上がりが起こらない搬送装置として、
【0016】
軌道上を走行して載置した被搬送物を搬送可能な搬送装置であって、
下部に車輪を備え軌道上を走行可能であり、中央にリンク設置開口部を穿設し、リンク設置開口部の進行方向左右側縁には摺動ガイドを溝状に穿設してなる基台を備え、パンタグラフ構造を有するリンク機構でありパンタグラフ構造の1つのジョイント部が固定回動軸として基台と回動自在に係止され、固定回動軸と対向するジョイント部が基台と摺動可能な摺動回動軸を形成して基台の摺動ガイドに案内されて摺動可能に形成され、下部には進行方向左右外方へ突出しガイドレールに案内されるガイドローラが設けられるリンク部を備え、基台の上部に設置されリンク部と接続されてリンク部の昇降によって昇降される昇降台車を備える搬送台車と、
基台の車輪を案内する軌道を設け、所定位置の軌道側部には、リンク部のガイドローラを案内可能な案内溝を穿設して軌道から上方へ突出させるガイドレールとからなり、
ガイドレールは、搬送台車が走行して所定位置に到達した時に搬送台車のガイドローラが入り込めるように溝状に設けられており、昇降台車は走行が進むにつれガイドローラがガイドレールに案内され昇降されることを特等とする昇降可能な搬送装置、
【0017】
を提供する。この搬送装置は、搬送台車が軌道上を走行すると、やがてガイドローラがガイドレール内に入り込みガイドレールに案内されることとなる。この時、ガイドレールは、リンク部を上方へ伸ばすことが可能なように傾斜して設けられている。
すると、ガイドローラはガイドレールに例えば下方へ案内されることで、リンク部の各ジョイント部が回動する。そして固定回動軸では、基台に回動自在に係止されるので回動のみが行われ、摺動回動軸では基台の摺動ガイドに案内されて固定回動軸に近付く方向に摺動されることとなる。従って、リンク部は固定回動軸及び摺動回動軸の位置を基準に上方へ伸びることとなり、リンク部上部に係止される昇降台車は上方へ移動する。
【発明の効果】
【0018】
従ってこの発明によれば、リンク部の摺動回動軸が摺動ガイドに案内されることで走行方向に摺動可能であって固定回動軸が回動のみを行うことでリンク部が上下方向へ移動可能であり、このリンク部の移動をリンク部に設けるガイドローラが軌道の所定位置に設けるガイドレールに入り込み案内されることで行え、ガイドレールは軌道の外方側部に立設するだけなので、走行する基台の下部となる軌道上には昇降台車を昇降させる装置を必要とせず、しかも軌道とガイドレールとを一体化できるので、シンプルな構造にできると共に省スペースで昇降機能を実現できるという効果を有する。
また、ガイドレールを溝状に形成して該レール内にガイドローラが入り込み案内されるので、走行時に昇降台車が浮き上がる問題点を解決し、スムーズで安全な昇降が可能であるという効果を有する。勿論、別途浮き上がり防止機能を設ける必要もない。
【0019】
更にまた、昇降台車が最も下方に位置された基準位置では、リンク機構が折り畳まれガイドローラが最も上方側へ移動された状態となるので、昇降台車を昇降させない軌道上の位置では、基台の下方には特に邪魔となるような装置が無く、ラック等との干渉を考慮することなく製造ラインを設計できるので、製造ラインの設計自由度が増すという効果を有する。
【実施例1】
【0020】
以下にこの発明の実施例を図面に基づき説明する。図1はこの発明の実施例を表す側面説明図であり、図2はこの発明の実施例を表し(a)は正面説明図であり(b)は平面説明図であり、図3はこの発明の動作を説明する側面説明図である。
【0021】
1はこの発明の実施例である搬送装置である。搬送装置1は、この実施例では自動車製造工場の製造ラインに設置され、製造ラインで組み立てられる自動車ボディーを被搬送物Wとして搬送可能な走行台車であり、製造ラインに敷設された軌道(レール)Rの上を走行可能な車輪2を備える。
車輪2は、基台3の下部に4箇所設けられており、2本の軌道R上を走行する。基台3は、四角形状等搬送する被搬送物Wによって適宜決められた形状を成し、中央にリンク設置開口部31を開口してなる。また、搬送装置1には基台3に対し上下動可能な昇降台車4を備える。この昇降台車4は、昇降装置であるリンク部5によって昇降される。
また、昇降台車4を昇降させるリンク部5は、パンタグラフ構造を成し、リンクの一部にガイドローラ51を備えて、昇降所望箇所の軌道R側部に設けるガイドレール6に案内されて昇降可能である。
以下、実施例の説明において、搬送装置1の進行方向を単に前方といい、進行方向に対する後方を単に後方といい、進行方向に対する左右方向を単に左右という。
【0022】
以下に、実施例の詳細を説明する。
リンク部5は、図1や図3に表すようなパンタグラフ構造を成しており、最上部に位置するジョイント部の一方である固定ジョイント5aが、昇降台車4の下部で回動自在に係止される。この固定ジョイント5aは、左右にそれぞれ備わっており、昇降台車4を支持している。また、固定ジョイント5aと対向する走行方向の前方となる左右に備わる昇降台摺動ジョイント5bは、昇降台車4の固定ジョイント5aが係止している端部と対向する端部に係止される。昇降台摺動ジョイント5bと昇降台車4との係止は、昇降台車4に対して昇降台摺動ジョイント5bが摺動可能に係止される。
即ち、昇降台摺動ジョイント5bが係止される昇降台車4下部には、昇降台摺動ジョイント5bが摺動可能に摺動ガイド部41を設けてあり、摺動ガイド部41は、突出する昇降台摺動ジョイント5bが入り込んで搬送方向に摺動可能に摺動溝41aを設けてある。従って、リンク部5の昇降時には、昇降台摺動ジョイント5bが摺動溝41aに沿って摺動することでリンク部5の昇降を自在にしている。
【0023】
また、リンク部5は、基台3に係止されることで、基台3に対して昇降台車4を昇降しているが、この基台3との係止は、リンク部5のジョイントのうち、固定ジョイント5aの下部に位置する固定回動軸となる固定回動ジョイント5cが基台3に設けたリンク設置開口部31の進行方向後方側端部に回動自在に行われる。そして、固定回動ジョイント5cも、左右方向にそれぞれ備わり基台3によって回動自在に支持されている。
そして、固定回動ジョイント5cと前後方向で対向するジョイントは摺動回動軸となる摺動回動ジョイント5dである。摺動回動ジョイント5dは、リンク設置開口部31の固定回動ジョイント5cが係止される端部と対向する端部側に位置される。そして、摺動回動ジョイント5dには摺動可能に案内されるための摺動ガイドローラが設けてあり、リンク設置開口部31の左右側縁に設ける摺動ガイド32に案内されて摺動可能である。
リンク設置開口部31に設ける摺動ガイド32は、リンク設置開口部31の端縁の左右側部溝状に穿設されており、この溝状穿設部に摺動回動ジョイント5dが入り込んで案内される構造となっている。
【0024】
リンク部5は、リンク52とリンク53とをX字状にクロスさせ、リンク52の下方端には上記固定回動ジョイント5cを設けて基台3と回動自在に固定させ、リンク52の上方端は昇降台車4の下部にて回動自在且つ摺動自在に係止する昇降台摺動ジョイント5bを設ける。また、リンク53の下方端には上記摺動回動ジョイント5dを設け、基台3と摺動自在に係止し、リンク53の上方端は昇降台車4の下部にて回動自在に係止固定される固定ジョイント5aを設ける。従って、リンク52及びリンク53の後方側に位置するリンク端は固定回動ジョイント5c及び固定ジョイント5aであって、基台3及び昇降台車4と回動自在に係止されており、同前方側に位置するリンク端は昇降台摺動ジョイント5b及び摺動回動ジョイント5dであって、基台3及び昇降台車4と回動自在且つ摺動自在に係止されている。これによりリンク部5はX字状の幅を狭めて昇降台車4を上昇させたり、広げて下降したりと自在にパンタグラフ構造を移動可能である。
【0025】
リンク部5には、更にリンク54及びリンク55を設ける。リンク54及びリンク55は、それぞれ一方の端部同士を回動自在に係止して昇降ジョイント5eを形成し、リンク54の他方の端部は、固定回動ジョイント5cと回動自在に係止させ、リンク55の他方の端部は摺動回動ジョイント5dと回動自在に係止させ、基台3の下方に位置させる。従ってリンク部5では、ジョイント5a乃至5dは四角形を形成してリンク52及びリンク53がX字状にクロスした状態であり、ジョイント5c及びジョイント5dとジョイント5eが下向きの二等辺三角形を形成してリンク54及びリンク55が二等辺を形成している状態である。
リンク部5は、最下部となるリンク54及びリンク55を図3(a)に表すように、摺動回動ジョイント5dを設ける側のリンク55を固定回動ジョイント5cを設けた側のリンク54より長く設けると、昇降台車4を所定量上昇させるためのガイドレール6に案内されるリンク54の移動量を少なくでき基台3下側スペースを小さくすることができるが、これに伴い少ないリンク54の移動量で昇降台車4を大きな移動量とさせなければならないので、上昇させるためにジョイント5eとガイドレール6との間に加わる荷重は大きくなる。
これに対し、図3(b)に表すように、摺動回動ジョイント5dを設ける側のリンク55を固定回動ジョイント5cを設けた側のリンク54より短く設けると、昇降台車4を所定量上昇させるためのガイドレール6に案内されるリンク54の移動量は大きくなり基台3下側スペースもこれに伴い大きくなってしまうが、リンク54を大きく移動させることで昇降台車4を所定量移動させることとなるので、上昇させるためにジョイント5eとガイドレール6との間に加わる荷重を小さくすることができる。
そして、図3(c)に表すように、摺動回動ジョイント5dを設ける側のリンク55と固定回動ジョイント5cを設けた側のリンク54とを同じ長さにすると、昇降台車4を所定量上昇させるためのガイドレール6に案内されるリンク54の移動量と昇降台車4の上昇移動量とは同じとなり、基台3下側スペースは、図3(a)と図3(b)との間の量となる。そして、昇降台車4を上昇させるためにジョイント5eとガイドレール6との間に加わる荷重も、図3(a)と図3(b)との間の荷重となる。
従って、設計時に、基台3下側スペースや昇降台車4に載置する被搬送物Wの重量を考慮してリンク54及びリンク55の長さを適宜選択すればよい。
【0026】
そして、昇降ジョイント5eには、ガイドローラ51を設けてある。ガイドローラ51は、パンタグラフ構造の左右外方へ突出して回動自在に設けてある。このガイドローラ51が、被搬送物Wを昇降させたい位置の軌道Rに設けたガイドレール6に入り込み案内される。
【0027】
ガイドレール6は、軌道Rの外方に軌道Rから強固なプレート状のガイド本体61を立設させ、ガイド本体61にはガイドローラ51が入り込める案内溝62を、開口が相互に対向するように軌道Rの左右両側に穿設する。案内溝62は、進行方向後方側及び思考方向前方側も開口されており、上下にガイドローラ51を案内可能な壁部を有している。そして、案内溝62の進行方向後方側はリンク部5が最も下がった状態、即ち、昇降台車4が最も下がった基準位置にある時のガイドローラ51の高さに開口させ、ガイドローラ51が入り込んだ案内溝62は進行方向前方側に行くに従い徐々に下方となるように設け、更に最下部に到達して後、案内溝62の前方側端部(図示せず)に至るまでは徐々に上方へ移動し、最終的に前方側端部は後方側端部と同じリンク部5の初期位置におけるガイドローラ51の高さとなるように設けてある。
【0028】
このように案内溝62を設けると、搬送装置1が軌道R上を搬送移動してやがてガイドローラ51が案内溝62の後方側へ到達すると、ガイドローラ51が案内溝62の後方側から案内溝62内部へと入り込む。
案内溝62に入り込んだガイドローラ51は、案内溝62に案内されてその位置を徐々に下方へと変移していく。ガイドローラ51が下方へ移動すると、昇降ジョイント5eも下方へ移動するので、リンク部5のパンタグラフ構造は固定ジョイント5a及び昇降台摺動ジョイント5b間、固定回動ジョイント5c及び摺動回動ジョイント5d間、それぞれを狭め昇降台車4を上方へと移動させることとなる。
やがて、ガイドローラ51が案内溝62の最下部に到達した後は、前方側端部に至るまでガイドローラ51は上方へと案内溝62に案内され、案内溝62から抜け出すときには、リンク部5の初期位置、即ち、昇降台車4が最も下がって安定した位置となる。
【0029】
尚、案内溝62は、昇降台車4を徐々に上方へと移動させ、最上部に到達してから後は徐々に下方へ移動し、最終的に元の高さとなってから案内を終了するように設けたが、ガイドローラ51が入り込む側である後方側端部とガイドローラ51が抜け出す前方側端部との間で何度か上下するように形成しても良く、昇降台車4が所望の上下動を行えるように設ければ足りる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、自動車工場や電化製品向上などの製造ラインにおいて、部品、半製品、完成製品等様々な被搬送物Wを搬送する搬送装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例を表す側面説明図
【図2】(a)実施例を表す正面説明図、(b)実施例を表す平面説明図
【図3】この発明の動作を説明する側面説明図
【図4】従来例1を表す側面説明図
【図5】従来例1の動作状態を表す側面説明図
【図6】従来例1を表す一部切欠平面説明図
【図7】従来例2を表す側面説明図
【図8】従来例2の作動状態を表す側面説明図
【符号の説明】
【0032】
R 軌道(レール)
W 被搬送物
1 搬送装置
2 車輪
3 基台
31 リンク設置開口部
32 摺動ガイド
4 昇降台車
41 摺動ガイド部
41a 摺動溝
5 リンク部
5a 固定ジョイント
5b 昇降台摺動ジョイント
5c 固定回動ジョイント
5d 摺動回動ジョイント
5e ジョイント
51 ガイドローラ
52 リンク
53 リンク
54 リンク
55 リンク
6 ガイドレール
61 ガイド本体
62 案内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上を走行して載置した被搬送物を搬送可能な搬送装置であって、
下部に車輪を備え軌道上を走行可能であり、中央にリンク設置開口部を穿設し、リンク設置開口部の進行方向左右側縁には摺動ガイドを溝状に穿設してなる基台を備え、パンタグラフ構造を有するリンク機構でありパンタグラフ構造の1つのジョイント部が固定回動軸として基台と回動自在に係止され、固定回動軸と対向するジョイント部が基台と摺動可能な摺動回動軸を形成して基台の摺動ガイドに案内されて摺動可能に形成され、下部には進行方向左右外方へ突出しガイドレールに案内されるガイドローラが設けられるリンク部を備え、基台の上部に設置されリンク部と接続されてリンク部の昇降によって昇降される昇降台車を備える搬送台車と、
基台の車輪を案内する軌道を設け、所定位置の軌道側部には、リンク部のガイドローラを案内可能な案内溝を穿設して軌道から上方へ突出させるガイドレールとからなり、
ガイドレールは、搬送台車が走行して所定位置に到達した時に搬送台車のガイドローラが入り込めるように溝状に設けられており、昇降台車は走行が進むにつれガイドローラがガイドレールに案内され昇降されることを特徴とする昇降可能な搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−120596(P2010−120596A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298353(P2008−298353)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000108188)セントラル自動車株式会社 (66)
【Fターム(参考)】