説明

搭乗対象物傾動装置

【課題】搭乗者の体重や重心位置等の相違で体感ゲームの難易度等が異なってしまうのを防止することにある。
【解決手段】外力や搭乗者Hの動きに応じて椅子Sが傾動するとともに、その傾動に対しコイルスプリング4が反力を与える搭乗対象物傾動装置であって、設置ベース1と、椅子Sの搭載用の可動ベース2と、設置ベース1に設けられて可動ベース2を、搭乗者Hがいる状態での椅子Sと可動ベース2との組立体の初期姿勢での重心位置CGの下方を通る互いに直行する二本の傾動軸線PTA,RTA周りに傾動可能に支持する支持部材3と、可動ベース2と設置ベース1との間に介挿されて、前記傾動軸線周りの可動ベース2の傾動に対し可動ベース2に反力を与えるコイルスプリング4と、可動ベースに対するコイルスプリング4の反力の作用位置とそのコイルスプリング4に対応する前記傾動軸線との間の距離が変化するように前記作用位置を移動させる作用位置移動機構5と、を具えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体感ゲーム機やフィットネスマシン、リハビリ機器等に用いられ、外力や搭乗者の動きに応じて搭乗対象物が傾動するとともに、その傾動に対し弾性部材が反力を与える搭乗部傾動装置に関し、特には、搭乗者の体重や重心位置の変化にかかわりなく同様に搭乗対象物が傾動する搭乗対象物傾動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の体感ゲーム機の技術分野における搭乗対象物傾動装置としては、例えば本願出願人が先に特許文献1にて開示したモーションベースの如き、操作者によって操作されるジョイスティック等の操作機器からの入力信号やあらかじめ与えられたプログラムによって出力される信号等によりアクチュエータが搭乗対象物としての椅子を傾動させるものや、搭乗対象物としてのオートバイ等の車両や飛行機等の乗り物への搭乗者がその重心移動や身体の動き等の動作によってその乗り物を傾動させるとその動きを入力信号に変換して体感ゲーム機本体に入力するもの等が知られている。
【特許文献1】特開2004−24299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、搭乗対象物への搭乗者は、大人や子供、男性や女性等様々ゆえ、搭乗者の体重や重心位置は一定でなく搭乗者に応じて変化することになる。しかしながら、上記従来の搭乗対象物傾動装置は、設置ベースおよび可動ベースへの弾性部材の作用位置となる取付位置が固定されているため、その弾性部材が与える反力も搭乗者の体格等に関わらず可動ベースの傾動に対して一定の割合となっている。
【0004】
それゆえ、従来の搭乗対象物傾動装置では、搭乗者の体重が軽い場合(例えば女性搭乗者の場合)や重心位置が低い場合(例えば子供の搭乗者の場合)は、搭乗者の体重が重い場合(例えば男性搭乗者の場合)や重心位置が高い場合(例えば大人や高学年以上の少年・少女の搭乗者の場合)と比較して、傾動トルクが相対的に小さくなるため弾性部材の反力が相対的に過剰になって、同じような動作で搭乗対象物を傾けようとしてもほとんど傾かず、体感ゲームの難易度等が異なってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の搭乗対象物傾動装置は、外力と搭乗者の動きとの少なくとも一方に応じて搭乗対象物が傾動するとともに、その傾動に対し弾性部材が反力を与える搭乗対象物傾動装置において、設置ベースと、前記搭乗対象物の搭載用の可動ベースと、前記設置ベースに設けられて前記可動ベースを、搭乗者がいる状態での前記搭乗対象物と前記可動ベースとの組立体の初期姿勢での重心位置の下方を通る一本または互いに直行する二本の傾動軸線周りに傾動可能に支持する支持部材と、前記可動ベースと前記設置ベースとの間に介挿されて、前記傾動軸線周りの前記可動ベースの傾動に対し前記可動ベースに反力を与える前記弾性部材と、前記可動ベースに対する前記弾性部材の反力の作用位置とその弾性部材に対応する前記傾動軸線との間の距離が変化するように前記作用位置を移動させる作用位置移動手段と、を具えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
かかる搭乗対象物傾動装置にあっては、設置ベースに設けられた支持部材が、搭乗対象物の搭載用の可動ベースを、搭乗者がいる状態での搭乗対象物と可動ベースとの組立体の初期姿勢での重心位置の下方を通る一本または互いに直行する二本の傾動軸線周りに傾動可能に支持し、可動ベースと設置ベースとの間に介挿された弾性部材が、傾動軸線周りの可動ベースの傾動に対し可動ベースに反力を与え、そして作用位置移動手段が、可動ベースに対する弾性部材の反力の作用位置とその弾性部材に対応する傾動軸線との間の距離が変化するようにその作用位置を移動させる。
【0007】
従って、この発明の搭乗対象物傾動装置によれば、搭乗者の体重が軽い場合(例えば女性搭乗者の場合)や重心位置が低い場合(例えば子供の搭乗者の場合)は、作用位置移動手段が、可動ベースに対する弾性部材の反力の作用位置と傾動軸線との間の距離が通常位置より減少するようにその作用位置を移動させれば、傾動トルクに対抗する反力トルクが減少するので、搭乗者の体重が重い場合(例えば男性搭乗者の場合)や重心位置が高い場合(例えば大人や高学年以上の少年・少女の搭乗者の場合)と比較して傾動トルクが相対的に小さくなっても、弾性部材の反力が相対的に過剰になることがなくなって、同じような動作で搭乗対象物が同じように傾くことになり、搭乗者の体重や重心位置等の相違で体感ゲームの難易度等が異なってしまう不都合を防止することができる。
【0008】
なお、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記作用位置移動手段は、例えばハンドルでネジ軸を回すネジ式移動機構の如く人力によって駆動されるものであっても良く、このようにすれば、作用位置移動手段を安価に構成できるとともに、動力源のない場合でも搭乗者の体格等に応じて反力トルクを調節することができる。
【0009】
また、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記作用位置移動手段は、例えばモータ駆動式移動機構の如くモータで駆動されるものであっても良く、このようにすれば、作用位置移動手段で、搭乗者の体格等に応じて反力トルクを自動的に調節することができる。
【0010】
さらに、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記作用位置移動手段は、前記傾動軸線を間に挟んでその傾動軸線の両側にそれぞれ存在する前記弾性部材の前記作用位置を、リンク機構を介して互いに連動させるものであっても良く、このようにすれば、弾性部材の反力で可動ベースの平衡をとる場合に、反力が不揃いになって平衡が崩れるのを防止することができる。
【0011】
さらに、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記可動ベースの傾動位置を検出する位置センサを具えていても良く、このようにすれば、当該搭乗対象物傾動装置の搭乗対象物を搭乗者が傾動させることで、ジョイスティックのように操作信号を例えば体感ゲーム機本体等に入力することができる。
【0012】
さらに、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記搭乗対象物の搭乗者の重量を検出する搭乗者重量検出手段を具えていても良く、このようにすれば、例えばその搭乗者重量検出手段が検出した搭乗者重量に基づき、その搭乗者重量が所定の基準より軽いほど、作用位置移動手段が可動ベースに対する弾性部材の反力の作用位置と傾動軸線との間の距離が通常位置より減少し、その搭乗者重量が所定の基準より重いほど、作用位置移動手段が可動ベースに対する弾性部材の反力の作用位置と傾動軸線との間の距離が通常位置より増加するようにその作用位置を移動させることで、より正確に反力トルクを調節することができ、作用位置移動手段がモータ駆動の場合は、その正確な反力トルク調節を自動的に行うことができる。
【0013】
そして、この発明の搭乗対象物傾動装置においては、前記可動ベースを傾動させる外力を加えるアクチュエータを具えていても良く、このようにすれば、搭乗者の体重や重心位置等の相違にかかわらず常に、アクチュエータの小さな出力で可動ベースを大きく傾動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の搭乗対象物傾動装置の一実施例を示す側面図、図2は、その実施例の搭乗対象物傾動装置を示す正面図、図3は、上記実施例の搭乗対象物傾動装置の作用位置移動手段としての作用位置移動機構の構成を示す平面図、そして図4は、上記実施例の搭乗対象物傾動装置において椅子が前方へ傾動した状態を示す側面図である。
【0015】
この実施例の搭乗対象物傾動装置は、図1および図4に示すように、搭乗対象物としての、フットレストF付きのバケットシート型の椅子Sに座った搭乗者Hがその重心移動や身体の動き等の動作によって、ゲーム機のジョイスティックの代わりにその椅子Sを前後あるいは左右あるいは斜め前後方向に傾動させると、その椅子Sの傾動を入力信号に変換して図示しない体感ゲーム機本体に入力するものであって、搭乗者Hの動きで椅子Sが傾動するとともに、その椅子Sの傾動に対し弾性部材としての引っ張りばね型コイルスプリング4が反力を与えるものである。
【0016】
具体的には、この実施例の搭乗対象物傾動装置は、図1、図2に示すように、設置ベース1と、上記椅子Sの搭載用の可動ベース2と、上記設置ベース1に設けられて可動ベース2を、搭乗者Hがいる状態での椅子Sと可動ベース2との組立体の初期姿勢(図1および図2に示す水平姿勢)での重心位置CGの下方を通る、椅子Sの左右方向へ延在するピッチ傾動軸線PTAと椅子Sの前後方向へ延在するロール傾動軸線RTAとの互いに直行する二本の傾動軸線周りに傾動可能に支持する円柱状の支持部材3と、可動ベース2と設置ベース1との間に張り渡されてピッチ傾動軸線PTAとロール傾動軸線RTAとの少なくとも一方周りの可動ベース2の傾動に対し可動ベース2に反力を与える合計八本の上記コイルスプリング4と、可動ベース2に対する各コイルスプリング4の反力の作用位置とそのコイルスプリング4に対応する傾動軸線PTAまたはRTAとの間の距離が変化するように上記作用位置を移動させる、作用位置移動手段としての作用位置移動機構5とを具えている。
【0017】
ここにおける可動ベース2は、図1〜図3に示すように、支持部材3の上端部に互いに直交する二本の枢軸を介して上記ピッチ傾動軸線PTAとロール傾動軸線RTAとの二本の傾動軸線周りに傾動可能に支持された基部2aと、その基部2aを中心に椅子Sの前後左右方向へ延在するよう十字状に配置されて各々内方端部を基部2aの下部に結合されるとともに上面にリニアガイド5aを固設された四本のフレーム2bと、それらのフレーム2bの外方端部にリニアガイド5aを介して支持された図では平面形状八角形の台座2cとを有し、台座2cの下面は周囲の外周枠を残して引っ込んでおり、台座2cの上面には上記椅子Sが固定されている。
【0018】
また、ここにおける作用位置移動機構5は、図3に示すように、上記四本のリニアガイド5aと、それらのリニアガイド5aに摺動可能に嵌め合わされてそれらのリニアガイド5a上に位置する四つのボール循環式スライダ5bと、一端部をそれらのスライダ5bにそれぞれ連結された四本の連結ロッド5cと、中央孔を基部2aの上部に回動可能に嵌め合わされるとともに周辺部に四本の連結ロッド5cの他端部を周方向に90度間隔に連結されかつ外周に外歯を形成された連動用ディスク5dと、その連動用ディスク5dの外歯に噛合した駆動用歯車5eと、その駆動用歯車5eを回動駆動するウォーム式減速機付きのモータ5fとを有しており、各スライダ5bには二本ずつ、コイルスプリング4の上端部が掛止されている。
【0019】
これにより、モータ5fが駆動用歯車5eを回動させて、連動用ディスク5dを図3に示すように回動させることで、四本の連結ロッド5cの上記他端部を角度εの範囲内で基部2aの中心周りに旋回させると、それらの連結ロッド5cが互いに同期しつつ上記一端部でそれぞれスライダ5bを押し引きして、四つのスライダ5bを同時に、かつピッチ傾動軸線PTAまたはロール傾動軸線RTAを間に挟んで両側に位置するもの同士が互いに反対方向へ移動するようにリニアガイド5a上で移動させ、この結果、図1に前方のコイルスプリング4のみについて例示するように、可動ベース2に対するコイルスプリング4の引っ張り力の作用位置としての、四つのスライダ5bへの八本のコイルスプリング4の上端部の掛止位置(バネ支点)が互いに同期してそれぞれ、そのコイルスプリング4に対応する傾動軸線すなわち、ピッチ傾動軸線PTAおよびロール傾動軸線RTAのうちコイルスプリング4が掛止されたスライダ5bが嵌まり合ったリニアガイド5aの延在方向と直行する方向に延在する傾動軸線に対するそのコイルスプリング4の上端部の掛止位置の距離がその傾動軸線を挟んで両側に二本ずつ位置するコイルスプリング4同士で同じだけ変化するように移動する。
【0020】
ここで、八本のコイルスプリング4は、所定のバネ定数k(二本当たり)を持つとともに、各々所定の初期引っ張り量Xで可動ベース2と設置ベース1との間に取り付けられ、可動ベース2の全傾動範囲で弛んだり引っ張り過ぎたりしないように設定されている。
【0021】
この実施例の搭乗対象物傾動装置において、図4に示すように椅子Sに搭乗者Hが座った状態で、ピッチ傾動軸線PTAまたはロール傾動軸線RTA周りのモーメントが常に釣り合うための条件式は、椅子Sと搭乗者Hとを合わせた質量をm、重力加速度をgとし、傾動軸線PTAおよびロール傾動軸線RTAから椅子Sと搭乗者Hとを一体にした重心CGまでの距離をLa、傾動軸線PTAまたはロール傾動軸線RTAから対応するコイルスプリング4の上端部の掛止位置(バネ支点)までの距離をLb、可動ベース2の傾動角をθ、コイルスプリング4の伸縮量をΔxとすると、
mg*La・sinθ=(−(x−Δx)k*Lb+(x+Δx)k*Lb)
=2Δx*k*Lb ・・・(1)
Δx=Lb・sinθ ・・・(2)
(1)、(2)から、mg*La・sinθ=2k*Lb・sinθ ・・・(3)
従って、k=mg・La/2Lb ・・・(4)
となる。
【0022】
また、質量mとコイルスプリング4の上端部の掛止位置(バネ支点)の距離Lbとの関係は、
Lb=(mg*La/2k)1/2 ・・・(5)
となり、これを、フットレストF付きの椅子Sの重量を除いて搭乗者Hについてグラフに表すと例えば図5に示すようになる。
従って、コイルスプリング4の上端部の掛止位置(バネ支点)の僅かな移動で、大きな範囲の質量変化に対応し得ることがわかる。
なお、可動ベース2はそれ自体で傾動軸線PTA,RTA周りのバランスがとれているので、上記の式には入らない。
【0023】
さらに、この実施例の搭乗対象物傾動装置は、台座2cの側部と設置ベース1との間および台座2cの後部と設置ベース1との間にそれぞれ介挿されて設置ベース1に対する台座2cの側部と後部の位置ひいては可動ベース2の傾き量を検出する、例えばリニアセンサからなる二本の位置センサ6を具えており、これにより、搭乗者Hが体重移動等で椅子Sを傾動させるとその椅子Sの傾き量および傾き方向に対応する位置センサ6の出力信号を入力信号として図示しない体感ゲーム機本体に入力することができる。
【0024】
加えて、この実施例の搭乗対象物傾動装置は、図1〜図4では図示しないが、図6(a)に示すように、基部2aに設けられて搭乗者Hの重量を検出する(可動ベース2とフットレストF付きの椅子Sの重量も同時に検出するがそれらはあらかじめ判明しているのでキャリブレートで除かれる)、搭乗者重量検出手段としての重量センサ11と、キーボード等の通常の入力装置12と、それら重量センサ11と入力装置12とを接続された通常のマイクロコンピュータ(マイコン)13とを有する作用位置移動制御装置を具えており、そのマイコン13からの例えばPWM制御信号により上記作用位置移動機構5のモータ5fがオープン制御で駆動される。
【0025】
なお、作用位置移動制御装置は、図6(b)に示すように、マイコン13が位置センサ6の出力信号も入力し、上記作用位置移動機構5のモータ5fが、位置センサ6の出力信号に基づき可動ベース2の傾動角度および傾動方向を検出するマイコン13により、通常のモータドライバ14を介してフィードバック制御で駆動されるようにしても良く、このようにすれば、より高精度の制御が可能になる。
【0026】
図7(a)は、上記作用位置移動制御装置のマイコン13の作動の一例を示すフローチャートであり、この例ではマイコン13は、先ずステップS1で、上記重量センサ11により搭乗者Hの体重測定を行ってその結果を入力し、次いでステップS2で、その体重測定結果から上記の式(5)を用いてバネ支点の位置を決定し、次いでステップS3でモータ5fを動作させてバネ支点の位置を上記決定した位置に変更し、最後にステップS4で、搭乗者Hが上記入力装置11を使用して指示したデータ(例えば身長ひいては重心CGの位置が高い、低い等)を入力してそのデータに基づきバネ支点の位置を微調整する。
【0027】
図7(b)は、上記作用位置移動制御装置のマイコン13の作動の他の一例を示すフローチャートであり、この例ではマイコン13は、先ずステップS5で、搭乗者Hが上記入力装置11を使用して指示したデータ(例えば搭乗者Hの身長および体重等)を入力し、ステップS2で、それらのデータに基づき上記の式(5)を用いてバネ支点の位置を決定し、その後は図7(a)のフローチャートと同様の処理を行う。
【0028】
かかる実施例の搭乗対象物傾動装置にあっては、設置ベース1に設けられた支持部材3が、椅子Sの搭載用の可動ベース2を、搭乗者Hがいる状態での椅子Sと可動ベース2との組立体の初期姿勢での重心位置CGの下方を通る互いに直行する二本の傾動軸線PTA,RTA周りに傾動可能に支持し、可動ベース2と設置ベース1との間に介挿されたコイルスプリング4が、傾動軸線PTA,RTA周りの可動ベース2の傾動に対しその傾動で長さが増加した側はより大きな張力を、またその傾動で長さが減少した側はより小さな張力を可動ベース2に作用させることで可動ベース2に反力を与え、そして作用位置移動機構5が、可動ベース2に対するコイルスプリング4の反力の作用位置とそのコイルスプリング4に対応する傾動軸線PTAまたは傾動軸線RTAとの間の距離が変化するようにその作用位置を移動させる。
【0029】
従って、この実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、搭乗者Hの体重が軽い場合(例えば女性搭乗者の場合)や重心位置CGが低い場合(例えば子供の搭乗者の場合)は、作用位置移動機構5が、可動ベース2に対するコイルスプリング4の反力の作用位置と傾動軸線PTAまたは傾動軸線RTAとの間の距離が通常位置より減少するようにその作用位置を移動させて、傾動トルクに対抗する反力トルクを減少させるので、搭乗者Hの体重が重い場合(例えば男性搭乗者の場合)や重心位置CGが高い場合(例えば大人や高学年以上の少年・少女の搭乗者の場合)と比較して傾動トルクが相対的に小さくなっても、コイルスプリング4の反力が相対的に過剰になることがなくなって、同じような動作で椅子Sが同じように傾くことになり、搭乗者Hの体重や重心位置CG等の相違で体感ゲームの難易度等が異なってしまう不都合を防止し得て、搭乗者Hは常にフワフワした心地よい感覚で椅子Sを傾動させることができる。
【0030】
しかも、この実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、作用位置移動機構5は、作用位置移動制御装置で作動制御されるモータ5fで駆動されるスライダ5bをリニアガイド5a上に持った直線移動機構を構成しているので、作用位置移動機構5で、搭乗者Hの体格等に応じて反力トルクを自動的に調節することができる。
【0031】
さらに、この実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、作用位置移動機構5は、傾動軸線PTAまたは傾動軸線RTAを間に挟んでその傾動軸線の両側にそれぞれ存在するコイルスプリング4の作用位置を、連結ロッド5cと連動用ディスク5dとからなるリンク機構を介して互いに連動させるので、コイルスプリング4の反力で可動ベース2の平衡をとる際に反力が不揃いになって平衡が崩れるのを防止することができる。
【0032】
さらに、この実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、可動ベース2の傾動位置を検出する位置センサ6を具えているので、当該搭乗対象物傾動装置の椅子Sを搭乗者Hが傾動させることで、ジョイスティックのように操作信号を例えば体感ゲーム機本体等に入力することができる。
【0033】
さらに、この実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、椅子Sの搭乗者Hの重量を検出する重量センサ11を具えているので、その重量センサ11が検出した搭乗者重量に基づき作用位置移動制御装置が作用位置移動機構5を制御して、その搭乗者重量が所定の基準より軽いほど、作用位置移動機構5が可動ベース2に対するコイルスプリング4の反力の作用位置とそれに対応する傾動軸線PTAまたは傾動軸線RTAとの間の距離が通常位置より減少し、その搭乗者重量が所定の基準より重いほど、作用位置移動機構5が可動ベース2に対するコイルスプリング4の反力の作用位置と上記傾動軸線との間の距離が通常位置より増加するようにその作用位置を移動させることで、より正確にかつ自動的に反力トルクを調節することができる。
【0034】
図8は、この発明の搭乗対象物傾動装置の他の一実施例における作用位置移動機構5の構成を示す平面図であり、この実施例の搭乗対象物傾動装置は、作用位置移動機構5がモータ5Fや作用位置移動制御装置を持たない手動操作式のものである点以外は先の実施例と同一の構成を具えており、それゆえ図中先の実施例と同様の部分はそれと同一の符号にて示す。
【0035】
すなわちこの実施例の搭乗対象物傾動装置では、作用位置移動機構5が、一つのリニアガイド5aに沿って延在する配置でその軸線周りに回動自在に可動ベース2に支持されたネジ軸5gと、そのネジ軸5gの外方端部に固設されたハンドル5hと、上記リニアガイド5aに嵌まり合ったスライダ5bに固定されるとともにネジ軸5gに螺合された図示しないナットとを有しており、一方、連動用ディスク5dは外歯が不要ゆえそれを有していない。
【0036】
かかる実施例の搭乗対象物傾動装置によっても、搭乗者Hの体重が軽い場合(例えば女性搭乗者の場合)や重心位置CGが低い場合(例えば子供の搭乗者の場合)は、作用位置移動機構5のハンドルHを手動操作することにより、先の実施例と同様、可動ベース2に対するコイルスプリング4の反力の作用位置と傾動軸線PTAまたは傾動軸線RTAとの間の距離が通常位置より減少するようにその作用位置を移動させることで傾動トルクに対抗する反力トルクを減少させ得るので、搭乗者Hの体重が重い場合(例えば男性搭乗者の場合)や重心位置CGが高い場合(例えば大人や高学年以上の少年・少女の搭乗者の場合)と比較して傾動トルクが相対的に小さくなっても、コイルスプリング4の反力が相対的に過剰になることがなくなって、同じような動作で椅子Sが同じように傾くことになり、搭乗者Hの体重や重心位置CG等の相違で体感ゲームの難易度等が異なってしまう不都合を防止し得て、搭乗者Hは常にフワフワした心地よい感覚で椅子Sを傾動させることができる。
【0037】
しかもこの実施例の搭乗対象物傾動装置によれば、作用位置移動機構5が、ハンドルHでネジ軸を回すネジ式移動機構であるので、作用位置移動機構5を安価に構成できるとともに、動力源のない場合でも搭乗者Hの体格等に応じて反力トルクを調節することができる。
【0038】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上記例に限定されるものでなく、例えば、体重センサは、椅子Sの座面に設けられた感圧センサでも良く、あるいは椅子Sと可動フレーム2との間に介挿されたロードセルでも良い。
【0039】
また、この発明の搭乗対象物傾動装置は、前記可動ベースを傾動させる外力を加えるアクチュエータを具えていても良く、このようにすれば、搭乗者の体重や重心位置等の相違にかかわらず可動ベースを同様にバランスさせ得て、アクチュエータの小さな出力で可動ベースを大きく傾動させることができる。
【0040】
そして、この発明の搭乗対象物傾動装置を適用する搭乗対象物は、例えば飛行機や、オートバイ、小型ボート等としても良いが、上記実施例のような椅子Sにすれば、多くの種類の乗り物を模擬することができる。また、この発明の搭乗対象物傾動装置は、搭乗者が積極的に重心を移動させるような搭乗対象物に適用すれば、フィットネスマシンや、体の不自由な人の入力装置としても適用することができる。
【0041】
さらに、工業や生活の分野では、この発明の搭乗対象物傾動装置において搭乗対象物と搭乗者の代わりに任意の物体を可動ベースに搭載するようにすれば、その物体(搭載物)が大きな質量を持っていても、少ない外力でその物体(搭載物)を任意の角度に傾けることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
かくしてこの発明の搭乗対象物傾動装置によれば、搭乗者の体重が軽い場合(例えば女性搭乗者の場合)や重心位置が低い場合(例えば子供の搭乗者の場合)は、作用位置移動手段が、可動ベースに対する弾性部材の反力の作用位置と傾動軸線との間の距離が通常位置より減少するようにその作用位置を移動させれば、傾動トルクに対抗する反力トルクが減少するので、搭乗者の体重が重い場合(例えば男性搭乗者の場合)や重心位置が高い場合(例えば大人や高学年以上の少年・少女の搭乗者の場合)と比較して傾動トルクが相対的に小さくなっても、弾性部材の反力が相対的に過剰になることがなくなって、同じような動作で搭乗対象物が同じように傾くことになり、搭乗者の体重や重心位置等の相違で体感ゲームの難易度等が異なってしまう不都合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の搭乗対象物傾動装置の一実施例を示す側面図である。
【図2】上記実施例の搭乗対象物傾動装置を示す正面図である。
【図3】上記実施例の搭乗対象物傾動装置における作用位置移動機構の構成を示す平面図である。
【図4】上記実施例の搭乗対象物傾動装置において椅子が前方へ傾動した状態を示す側面図である。
【図5】上記実施例の搭乗対象物傾動装置における搭乗者の質量と傾動軸線からバネ支点までの距離との関係を示す関係線図である。
【図6】(a),(b)は、上記実施例の搭乗対象物傾動装置における作用位置移動制御装置の構成例をそれぞれ示すブロック線図である。
【図7】(a),(b)は、上記作用位置移動制御装置のマイコンの作動例をそれぞれ例示するフローチャートである。
【図8】この発明の搭乗対象物傾動装置の他の一実施例における作用位置移動機構の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 設置ベース
2 可動ベース
2a 基部
2b フレーム
2c 台座
3 支持部材
4 コイルスプリング
5 作用位置移動機構
5a リニアガイド
5b スライダ
5c 連結ロッド
5d 連動用ディスク
5e 駆動用歯車
5f モータ
5g ネジ軸
5h ハンドル
6 位置センサ
11 重量センサ
12 入力装置
13 マイクロコンピュータ(マイコン)
14 モータドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力と搭乗者の動きとの少なくとも一方に応じて搭乗対象物が傾動するとともに、その傾動に対し弾性部材が反力を与える搭乗対象物傾動装置において、
設置ベースと、
前記搭乗対象物の搭載用の可動ベースと、
前記設置ベースに設けられて前記可動ベースを、搭乗者がいる状態での前記搭乗対象物と前記可動ベースとの組立体の初期姿勢での重心位置の下方を通る一本または互いに直行する二本の傾動軸線周りに傾動可能に支持する支持部材と、
前記可動ベースと前記設置ベースとの間に介挿されて、前記傾動軸線周りの前記可動ベースの傾動に対し前記可動ベースに反力を与える前記弾性部材と、
前記可動ベースに対する前記弾性部材の反力の作用位置とその弾性部材に対応する前記傾動軸線との間の距離が変化するように前記作用位置を移動させる作用位置移動手段と、
を具えることを特徴とする、搭乗対象物傾動装置。
【請求項2】
前記作用位置移動手段は、人力によって駆動されるものであることを特徴とする、請求項1記載の搭乗対象物傾動装置。
【請求項3】
前記作用位置移動手段は、モータで駆動されるものであることを特徴とする、請求項1記載の搭乗対象物傾動装置。
【請求項4】
前記作用位置移動手段は、前記傾動軸線を間に挟んでその傾動軸線の両側にそれぞれ存在する前記弾性部材の前記作用位置を、リンク機構を介して互いに連動させるものであることを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載の搭乗対象物傾動装置。
【請求項5】
前記可動ベースの傾動位置を検出する位置センサを具えることを特徴とする、請求項1から4までの何れか記載の搭乗対象物傾動装置。
【請求項6】
前記搭乗対象物の搭乗者の重量を検出する搭乗者重量検出手段を具えることを特徴とする、請求項1から5までの何れか記載の搭乗対象物傾動装置。
【請求項7】
前記可動ベースを傾動させる外力を加えるアクチュエータを具えることを特徴とする、請求項1から6までの何れか記載の搭乗対象物傾動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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