説明

携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置

【課題】より確実に非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置を提供する。
【解決手段】携帯可能電子装置(2)と携帯可能電子装置を処理する処理装置(1)とを備える携帯可能電子装置の処理システム(10)であって、前記処理装置は、携帯可能電子装置にコマンドを送信し、携帯可能電子装置から発せられるノイズを検知し、ノイズを検知した場合、第1の時間の間、受信拒否状態に移行するように制御する。携帯可能電子装置は、受信するコマンドに基づいて演算処理を行い、レスポンスデータを生成し、演算処理が完了してから第2の時間の間、処理を行わない無処理区間を設定し、無処理区間を設定してから第2の時間が経過した後に、生成したレスポンスデータを処理装置に送信するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コマンドを送受信することにより種々の処理を実現する携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、フラッシュROMなどの不揮発性メモリ、RAMなどの揮発性メモリ、及び種々の演算を実行するCPUを有する。
【0003】
ICカードは、例えば、国際標準規格ISO/IEC7816に準拠したICカードである。ICカードは、携帯性に優れる。また、ICカードは、外部装置との通信処理と、複雑な演算処理とを行う事ができる。ICカードは、偽造が難しい。この為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納することができる。ICカードは、例えば、セキュリティシステム、免許証、社員証、会員証、保険証などのIDカード、クレジットカード、旅券、または電子商取引などに用いられる。
【0004】
近年、様々な機能を備えたICカードが登場している。例えば、特許文献1には、電波を送受信するためのアンテナ等を有する非接触インターフェースを備えるICカードが記載されている。
【0005】
非接触インターフェースを備えるICカード(非接触ICカード)は、非接触通信により外部機器とデータの送受信を行うことができる。非接触ICカードは、リーダライタから発せられる磁界を受ける。非接触ICカードは、磁界によるアンテナへの電磁誘導により起電力を生成し、動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−100263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、ISO/IEC14443のTypeBに準拠するICカードは、カードリーダライタからコマンドを受信する場合、受信したコマンドに応じる処理を内部のICにより実行する。ICカードは、実行した処理に応じてレスポンスを作成し、カードリーダライタに送信する。なお、従来のカードリーダライタは、ICカードにコマンドを送信した後、ICカードからのレスポンスを待つ受信待ちモードに切り替わる。
【0008】
ICチップが演算処理を行う場合、ICチップ内の回路を流れる電流のノイズ(例えばスイッチングノイズなど)により磁界が発生する可能性がある。カードリーダライタは、ICカードにおけるノイズにより発生した磁界を、ICカードから送信されたレスポンスデータであると誤検知する可能性がある。この場合、通信エラーとなり、通信が終了してしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、より確実に非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態としての携帯可能電子装置の処理システムは、携帯可能電子装置と前記携帯可能電子装置を処理する処理装置とを備える携帯可能電子装置の処理システムであって、前記処理装置は、前記携帯可能電子装置とデータの送受信を行う第1の送受信部と、前記第1の送受信部により前記携帯可能電子装置にコマンドを送信するコマンド処理部と、前記携帯可能電子装置から発せられるノイズを検知するノイズ検知部と、前記ノイズ検知部によりノイズを検知した場合、第1の時間の間、受信拒否状態に移行するように制御する第1の制御部と、を具備し、前記携帯可能電子装置は、前記処理装置とデータの送受信を行う第2の送受信部と、前記第2の送受信部により受信するコマンドに基づいて演算処理を行い、レスポンスデータを生成する演算処理部と、前記演算処理部による処理が完了してから第2の時間の間、処理を行わない無処理区間を設定する無処理設定部と、前記無処理設定部により無処理区間を設定してから第2の時間が経過した後に前記演算処理部により生成したレスポンスデータを前記第2の送受信部により前記処理装置に送信するように制御する第2の制御部と、を具備する。
【0011】
また、本発明の一実施形態としての携帯可能電子装置は、携帯可能電子装置の処理装置とデータの送受信を行う送受信部と、前記送受信部により受信するコマンドに基づいて演算処理を行い、レスポンスデータを生成する演算処理部と、前記演算処理部による処理が完了してから所定時間処理を行わない無処理区間を設定する無処理設定部と、前記無処理設定部により無処理区間を設定してから前記設定した所定時間が経過した後に前記演算処理部により生成したレスポンスデータを前記送受信部により前記処理装置に送信するように制御する制御部と、を具備する。
【0012】
また、本発明の一実施形態としての携帯可能電子装置の処理装置は、携帯可能電子装置とデータの送受信を行う送受信部と、前記送受信部により前記携帯可能電子装置にコマンドを送信するコマンド処理部と、前記携帯可能電子装置から発せられるノイズを検知するノイズ検知部と、前記ノイズ検知部によりノイズを検知した場合、所定時間受信拒否状態に移行するように制御する制御部と、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より確実に非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置の処理システムの構成の例について説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すカードリーダライタの構成例について説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、図1に示すICカードの構成例について説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、図3に示すICカードから送信されるデータのフレームの構成の一例について説明するための説明図である。
【図5】図5は、図4に示すキャラクタの構成の一例について説明するための説明図である。
【図6】図6は、図4に示すSOFの構成の一例について説明するための説明図である。
【図7】図7は、図4に示すEOFの構成の一例について説明するための説明図である。
【図8】図8は、図1に示す携帯可能電子装置の処理システムの各構成の動作について説明する為のタイミングチャートである。
【図9】図9は、図8に示す携帯可能電子装置の処理システムの各構成の動作について詳細に説明する為のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置について詳細に説明する。
【0016】
例えば、ISO/IEC14443のTypeBの通信方式に準拠する非接触ICカードと、非接触ICカードリーダライタとについて説明する。
【0017】
非接触ICカードリーダライタは、非接触ICカードに対してコマンドデータ(コマンド)を送信する。
【0018】
非接触ICカードは、コマンドを受信する場合、受信するコマンドに応じて処理を実行する。非接触ICカードは、処理結果に基づいてレスポンスデータ(レスポンス)を作成し、作成したレスポンスを非接触ICカードリーダライタに対して送信する。
【0019】
上記したようにコマンド及びレスポンスを送受信することにより、非接触ICカードリーダライタ及び非接触ICカードは、種々の処理を行う。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置の処理システム(ICカード処理システム)10の構成の例について説明するためのブロック図である。
図1に示すようにICカード処理システム10は、携帯可能電子装置の処理装置(端末装置)1と携帯可能電子装置(ICカード)2とを備えている。端末装置1は、制御部11、ディスプレイ12、キーボード13、及びカードリーダライタ14を備える。端末装置1とICカード2とは、無線通信により互いに種々のデータの送受信を行う。
【0021】
制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどを備える。制御部11は、端末装置1全体の動作を制御する。例えば、制御部11は、ISO/IEC14443のTypeA方式、ISO/IEC14443のTypeB方式、及びFeliCaなどの複数の通信方式と、複数のアプリケーションとをそれぞれ選択して実行する。なお、ここでは、ISO/IEC14443に規定されるTypeBの通信プロトコルによりデータの送受信が行われる事を想定して説明する。
【0022】
ディスプレイ12は、制御部11の制御により種々の情報を表示する。ディスプレイ12は、例えば、ICカード2との通信結果等を表示する。
【0023】
キーボード13は、端末装置1の操作者による操作を操作信号として受け取る。キーボード13は、受け取った操作信号を制御部11に対して入力する。
【0024】
カードリーダライタ14は、ICカード2と通信を行うためのインターフェースである。カードリーダライタ14は、ICカード2に対して、電源供給、クロック供給、リセット制御、及びデータの送受信を行う。即ち、カードリーダライタ14は、送受信部として機能する。
【0025】
制御部11は、カードリーダライタ14によりICカード2に対して種々のコマンドを入力する。即ち、制御部11は、コマンド処理部として機能する。
【0026】
例えば、ICカード2は、カードリーダライタ14からデータの書き込みコマンドを受信した場合、受信したデータを内部の不揮発性メモリに書き込む処理を行う。また、制御部11は、ICカード2に読み取りコマンドを送信することにより、ICカード2からデータを読み出す。制御部11は、ICカード2から受信したデータに基づいて種々の処理を行う。
【0027】
図2は、図1に示すカードリーダライタ14の概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、カードリーダライタ14は、アンテナ141、通信I/F142、CPU143、データメモリ144、RAM145、及びROM146を備える。
【0028】
アンテナ141は、送信するデータに応じて磁界を発生させることにより、ICカード2に対してデータを送信する。また、アンテナ141は、電磁誘導により発生した誘導電流に基づいてICカード2から送信されるデータを認識する。
【0029】
通信I/F142は、ICカード2に対して送信するデータ、及びICカード2から受信するデータの入出力を制御する。CPU143は、ICカード2との通信を制御する。データメモリ144は、EEPROM、FRAMなどの不揮発性メモリである。RAM145は、例えばICカード2から送信されるデータを一時的に記憶するワークメモリである。ROM146は、制御プログラム等を記憶するメモリである。
【0030】
CPU143は、ICカード2との間で送受信するデータに対して信号処理を施す。即ち、CPU143は、符号化、復号、変調、及び復調を行なう。なお、CPU143は、TypeBの通信プロトコルの規格に基づいて上記の信号処理を行う。
【0031】
即ち、CPU143は、送受信を行うデータに基づいて、Amplitude Shift Keying(ASK)10%変調方式による変調処理、及びNon Return to Zero(NRZ)による符号化処理を行う。また、CPU143は、変調したデータ、及び、アンテナにより受信したデータを増幅する。
【0032】
この場合、CPU143は、周波数が13.56MHzの搬送波の振幅を10%程度変調し、NRZ符号化されたデータをICカード2へ送信する。ICカード2は、周波数が搬送波の1/16である847.5KHzの副搬送波を用いて位相を変調し、NRZ符号化されたレスポンスをカードリーダライタ14に対して送信する。
【0033】
なお、TypeBの通信プロトコルに準拠する近接型非接触ICカードは、通信可能な距離が10cm程度である。カードリーダライタ14は、この通信可能距離(通信可能範囲)内に存在するICカード2を検知し、処理を行う。
【0034】
図3は、図1に示すICカード2の構成例について説明するためのブロック図である。
図3に示すように、ICカード2は、カード状の本体と、本体内に内蔵されるICモジュール22とを備えている。ICモジュール22は、1つ又は複数のICチップ20と、送受信アンテナ部(アンテナ)21とを備える。ICチップ20とアンテナ21とは、互いに接続された状態でICモジュール22に形成される。
【0035】
ICチップ20は、変調復調部201、CPU202、コプロセッサ(co−processor)203、メモリ204、及び電力生成部205などを備えている。
【0036】
変調復調部201は、アンテナ21に接続されている。変調復調部201及びアンテナ21は、端末装置1のカードリーダライタ14と非接触通信を行うためのインターフェースである。変調復調部201及びアンテナ21は、送受信部として機能する。
【0037】
また、変調復調部201は、送受信データの増幅を行う送受信回路を備える。即ち、変調復調部201は、送受信するデータに応じて、搬送波に対してASK10%変調を行う。
【0038】
CPU202は、ICカード2全体の制御を司る制御部として機能する。CPU202は、メモリ204に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、カードリーダライタ14から受信するコマンドに応じて種々の処理を行う。CPU202は、処理結果に基づいてレスポンスなどのデータを生成する。即ち、CPU202は、レスポンス処理部として機能する。
【0039】
コプロセッサ203は、TypeBの通信プロトコルに対応する信号処理を施す。即ち、コプロセッサ203は、CPU202から受け取るデータに対してNRZ方式により符号化及び復号を行う。
【0040】
メモリ204は、例えば、ROM、RAM、及び不揮発性メモリなどのモジュールである。
ROMは、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROMは、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICカード2内に組み込まれる。即ち、ROMに記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICカード2の仕様に応じて組み込まれる。
【0041】
RAMは、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAMは、CPUの処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAMは、アンテナ21を介して端末装置1から受信したデータを一時的に格納する。また、RAMは、CPU202が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0042】
不揮発性メモリは、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリにより構成される。不揮発性メモリは、ICカード2の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0043】
たとえば、不揮発性メモリでは、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU202は、不揮発性メモリ、または、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0044】
電力生成部205は、カードリーダライタ14から電波を受信し、受信した電力波を整流回路にて整流、及び平滑する。これにより、電力生成部205は、安定化された直流電圧を生成する。電力生成部205は、生成した電圧をICカード2の各部に供給する。ICカード2の各部は、電圧の供給を受けた場合、動作可能な状態(活性化状態)になる。
【0045】
図1に示す端末装置1の制御部11は、カードリーダライタ14によりICカード2に初期設定コマンドを送信することにより、ICカード2との通信に関する設定を行う。即ち、制御部11は、初期設定処理部として機能する。初期設定コマンドは、例えば、起動コマンド及び媒体選択コマンドなどである。
【0046】
ICカード2の検知を行なう為に、カードリーダライタ14は、上記のTypeBの通信プロトコルの規定に準ずる起動コマンドを繰り返し通信可能範囲に送信する。カードリーダライタ14は、例えば、Request Command TypeB(REQB)、またはWake Up Command TypeB(WUPB)などを通信可能範囲に送信する。
【0047】
ICカード2は、カードリーダライタ14の通信可能範囲内に進入する場合、5ms以内に活性化されてアイドル状態になる。この場合、ICカード2のCPU202は、起動コマンドに対するレスポンスであるAnswer To Request command TypeB(ATQB)をカードリーダライタ14に送信する。
【0048】
カードリーダライタ14は、ATQBを受信する場合、通信可能範囲内にICカード2が存在する事を検知する。ICカード2を検知する場合、カードリーダライタ14は、所望のICカード2を選択するための媒体選択コマンド(ATTRIB)を送信する。これにより、カードリーダライタ14は、選択したICカード2との間で通信を行う事ができる。なお、カードリーダライタ14は、選択しないICカード2に対してHALTコマンドを送信する。
【0049】
ICカード2のCPU202は、カードリーダライタ14からATTRIBを受信する場合、この場合、ICカード2は、ATTRIBに対するレスポンスであるAnswer To ATTRIB(ATA)をカードリーダライタ14に送信する。このあと、端末装置1及びICカード2は、通常のコマンドの処理に移行する。
【0050】
ICカード2及びカードリーダライタ14は、コマンド処理を行う場合、送信するデータを所定数のビット(例えば、8ビット)毎に区切る。ICカード2及びカードリーダライタ14は、区切った所定数のビットに、論理「0」のビットであるスタートビットと、論理「1」のビットであるストップビットとを付加し、キャラクタを生成する。ICカード2及びカードリーダライタ14は、生成したキャラクタにStart of Frame(SOF)及びEnd of Frame(EOF)を付加し、フレームを生成する。
【0051】
なお、複数のキャラクタを1つのフレームで送信する場合、キャラクタとキャラクタとの間は、特別保護時間(EGT)により分けられる。
【0052】
また、ICカード2及びカードリーダライタ14は、必要に応じて、生成したフレーム内の全てのデータビットからCRCを計算し、キャラクタとEOFの間に挿入する。
【0053】
図4は、図3に示すICカード2及びカードリーダライタ14から送信されるデータのフレームの構成の一例について説明するための説明図である。ここでは、ICカード2からカードリーダライタ14にデータを送信する例について説明する。なお、カードリーダライタ14からICカード2にデータを送信する場合であっても、同様の処理を行う。
【0054】
ICカード2のCPU202は、カードリーダライタ14からコマンドを受信する場合、受信したコマンドに応じた演算処理をICチップ20内部で行う。即ち、CPU202は、演算処理部として機能する。
【0055】
ICカード2は、この演算処理を、TR0の間に行う。TR0は、カードリーダライタ14から受信するコマンドのEOFの最後のビットからサブキャリアを発生させるまでの応答遅延時間である。ICカード2は、TR0の間にカードリーダライタ14に送信するレスポンスのフレームを生成する。
【0056】
フレームは、SOF、キャラクタ列、CRC、及びEOFを備える。なお、フレームに含まれるCRCは、送信前と送信後のデータの整合性を確認するための情報であり、データ自体の正当性を確認するための正当性確認情報とは異なる。
【0057】
図5は、図4に示すSOFの構成の一例について説明するための説明図である。
SOFは、フレームの先頭を示す情報である。SOFは、立下りのエッジで始まり、論理「0」の状態と論理「1」の状態がそれぞれ所定時間継続される信号である。ICカード2は、フレーム内で最初のキャラクタを送信する前に上記のSOFをカードリーダライタ14に送信する。
【0058】
なお、ICカード2は、SOFを送信する前に、ICカード2と端末装置1とで同期を取るためのサブキャリアをカードリーダライタ14に送信する。ここで送信するサブキャリアfsは、847.5KHzの連続した無変調波形である。ICカード2は、SOFを送信する前にプリアンブルとしてのサブキャリアをTR1(80/fs=94.395μs〜200/fs=235.988μs)の間送信する。
【0059】
この為に、ICカード2は、副搬送波を発生させてから、TR1の間変調を行わないように制御する。即ち、TR1は、ICカード2が副搬送波を発生させてから変調を開始するまでの時間である。
ICカード2は、SOFに続けて、キャラクタ列をカードリーダライタ14に送信する。
【0060】
図6は、図4に示すキャラクタ列の構成の一例について説明するための説明図である。
キャラクタ列は、ICカード2から端末装置1に送信されるデータの本体である。キャラクタ列は、複数のキャラクタを備える。キャラクタは、所定数のデータビット、スタートビット、及びストップビットを備える。また、キャラクタとキャラクタの間には所定の長さの論理「1」のビットであるEGTが配置される。
【0061】
図7は、図4に示すEOFの構成の一例について説明するための説明図である。
EOFは、フレームの最後尾を示す情報である。EOFは、立下りのエッジで始まり、論理「0」の状態が所定時間継続される信号である。ICカード2は、フレーム内で最後のキャラクタを送信した後に上記のEOFをカードリーダライタ14に送信する。
【0062】
図8は、図1に示す携帯可能電子装置の処理システムの各構成の動作について説明する為のタイミングチャートである。
【0063】
カードリーダライタ14は、ICカード2に実行させる処理を指示する為のコマンドデータを生成し、ICカード2に送信する。
【0064】
ICカード2は、カードリーダライタ14から受信するコマンドデータのEOFの最後のビットを受信するタイミングt1からTR0後のタイミングt2までの間に、受信したコマンドデータに応じた演算処理を行う。ここで、ICカード2は、レスポンスデータを生成する。
【0065】
ICカード2は、レスポンスデータを送信する前に、TR1の間、無変調のサブキャリアをカードリーダライタ14に送信する。ICカード2は、サブキャリアの送信を開始したタイミングt2からTR1後のタイミングt3から、SOFをカードリーダライタ14に送信する。
【0066】
カードリーダライタ14は、連続したサブキャリアに位相変調がかかったタイミングt3でSOFを検知し、レスポンスデータの受信待ちの状態に移行する。なお、位相変調は、データ伝送速度に応じて位相が180度反転する必要がある。例えば、ISO/IEC14443TypeBでは、106Kbps、212Kbps、424Kbps、及び847.5Kbpsがサポートされている。
【0067】
図9は、図8に示す携帯可能電子装置の処理システムの各構成の動作について詳細に説明する為のタイミングチャートである。
【0068】
図9に示すように、カードリーダライタ14は、ICカード2に実行させる処理を指示する為のコマンドデータを生成し、ICカード2に送信する。この場合、カードリーダライタ14は、時間L1を示す情報をコマンドに付加してICカード2に送信する。
【0069】
ICカード2は、カードリーダライタ14から受信するコマンドデータのEOFの最後のビットを受信するタイミングt1からTR0後のタイミングt2までの間に、受信したコマンドデータに応じた演算処理を行う。
【0070】
この場合、ICカード2のICチップ20において行われる演算処理のノイズにより、磁界が発生する。ノイズにより発生した磁界をレスポンスデータと誤検知する場合、カードリーダライタ14は、誤検知であるレスポンスデータに対する処理を開始する。このタイミングでICカード2からプリアンブルが送信される場合、カードリーダライタ14は、プリアンブルを検出することができない。
【0071】
この為、本実施形態に係るカードリーダライタ14は、受信した波形がICカード2のICチップ20におけるノイズによるものである事を検知する必要がある。
【0072】
カードリーダライタ14は、ICカード2にコマンドデータを送信し終えると、受信待ちの状態に移行する。また、カードリーダライタ14は、ICカード2において演算処理が行われているTR0の区間であることを認識する。
【0073】
カードリーダライタ14のCPU143は、TR0区間においてプリアンブルではない波形を受信する場合、ノイズを検知したと判断する。カードリーダライタ14のCPU143は、TR0区間においてノイズ検知する場合、受信待ち状態から、時間L1の間データの受信を拒否する状態(受信拒否状態)に移行する。カードリーダライタ14は、受信拒否状態に移行してからL1経過後に受信待ち状態に移行する。
【0074】
即ち、CPU143は、ノイズを検知するノイズ検知部として機能する。また、CPU143は、ノイズを検知した場合に受信拒否状態に移行するようにカードリーダライタ14を制御する制御部として機能する。
【0075】
また、ICカード2のCPU202は、受信したコマンドに応じた演算処理を完了させてから、L2の間、演算処理を行わない無処理区間を設定する。この場合、CPU202は、無処理区間を設定する無処理設定部として機能する。
【0076】
ICカード2のCPU202は、演算処理を完了させてから時間L2(L2=L1+α)経過後にプリアンブルをカードリーダライタ14に送信するように各部を制御する。即ち、この場合、CPU202は、無処理区間を設定してから、設定した時間L2が経過した後にレスポンスデータをカードリーダライタ14に送信するように各部を制御する制御部として機能する。
【0077】
このようにICカード2及びカードリーダライタ14が動作することにより、カードリーダライタ14(受信側の装置)は、確実にプリアンブル(TR1)を検出することができる。
【0078】
図9に示す例によると、タイミングt1において、ICカード2は、演算処理を開始する。ICカード2のICチップ20は、タイミングt4においてノイズによる磁界を発生させる。
【0079】
カードリーダライタ14は、タイミングt1から受信待ち状態に移行する。カードリーダライタ14は、タイミングt4においてICカード2から発せられる磁界を検知する。即ち、カードリーダライタ14は、磁界を検知する場合、L1の間受信拒否状態に移行する。カードリーダライタ14は、タイミングt4からL1経過後のタイミングt5において受信待ち状態に移行する。即ち、カードリーダライタ14は、受信拒否状態中にICカードから発せられる磁界を検知しない状態となる。
【0080】
また、ICカード2のICチップ20は、タイミングt6においてノイズによる磁界を発生させる。
【0081】
カードリーダライタ14は、タイミングt6においてICカード2から発せられる磁界を検知する。カードリーダライタ14は、タイミングt6からL1の間、受信拒否状態に移行する。カードリーダライタ14は、タイミングt6からL1経過後のタイミングt7において受信待ち状態に移行する。
【0082】
また、ICカード2のICチップ20は、タイミングt8においてノイズによる磁界を発生させる。
【0083】
カードリーダライタ14は、タイミングt8においてICカード2から発せられる磁界を検知する。カードリーダライタ14は、タイミングt8からL1の間、受信拒否状態に移行する。カードリーダライタ14は、タイミングt8からL1経過後のタイミングt10において受信待ち状態に移行する。
【0084】
また、ICカード2は、カードリーダライタ14から時間L1を示す情報を受信する場合、受信したコマンドデータに応じた演算処理を完了したタイミングt9からL2の間、演算処理を行わない無処理状態に移行する。時間L2は、少なくともL1+α、即ち、L2>L1の関係を満たす時間である。
【0085】
ICカード2が無処理状態に移行している無処理区間では、演算処理が行われないため、必然的にノイズが発生しない。この為、カードリーダライタ14が受信拒否状態に移行しない。即ち、カードリーダライタ14は、タイミングt2において受信待ち状態に移行している。
【0086】
ICカード2は、タイミングt9からL2経過後のタイミングt2において、プリアンブルをカードリーダライタ14に送信する。これにより、カードリーダライタ14の状態が受信待ち状態であるタイミングでプリアンブルを送信することができる。
【0087】
上記したように、ICカード2は、カードリーダライタ14から時間L1を示す情報を受信する場合、演算処理を完了させてからL2の間の無処理区間を設定する。また、カードリーダライタ14は、TR0において波形を検出する場合、時間L1の間受信拒否状態に移行する。
【0088】
これにより、ICカード処理システム10は、ICカード2から発せられるノイズによる誤検知を防ぐと共に、プリアンブルの送受信を確実に行う事ができる。この結果、より確実に非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置の処理システム、携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の処理装置を提供することができる。
【0089】
なお、本実施形態では、端末装置1の制御部11が変調及び復調などの信号処理を行うとして説明したが、この構成に限定されない。例えば、カードリーダライタ14のCPU143により変調及び復調などの信号処理を行う構成であってもよい。
【0090】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0091】
また、上記した実施形態では、ICカード2が、非接触通信を行うICカードであるとして説明したが、この構成に限定されない。例えば、ICカード2は、接触通信と、非接触通信との両方の通信方式をサポートするコンビ型のカードであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…端末装置、2…ICカード、10…ICカード処理システム、11…制御部、12…ディスプレイ、13…キーボード、14…カードリーダライタ、20…ICチップ、21…アンテナ、141…アンテナ、143…CPU、144…データメモリ、145…RAM、146…ROM、201…変調復調部、202…CPU、203…コプロセッサ、204…メモリ、205…電力生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可能電子装置と前記携帯可能電子装置を処理する処理装置とを備える携帯可能電子装置の処理システムであって、
前記処理装置は、
前記携帯可能電子装置とデータの送受信を行う第1の送受信部と、
前記第1の送受信部により前記携帯可能電子装置にコマンドを送信するコマンド処理部と、
前記携帯可能電子装置から発せられるノイズを検知するノイズ検知部と、
前記ノイズ検知部によりノイズを検知した場合、第1の時間の間、受信拒否状態に移行するように制御する第1の制御部と、
を具備し、
前記携帯可能電子装置は、
前記処理装置とデータの送受信を行う第2の送受信部と、
前記第2の送受信部により受信するコマンドに基づいて演算処理を行い、レスポンスデータを生成する演算処理部と、
前記演算処理部による処理が完了してから第2の時間の間、処理を行わない無処理区間を設定する無処理設定部と、
前記無処理設定部により無処理区間を設定してから第2の時間が経過した後に前記演算処理部により生成したレスポンスデータを前記第2の送受信部により前記処理装置に送信するように制御する第2の制御部と、
を具備することを特徴とする携帯可能電子装置の処理システム。
【請求項2】
前記コマンド処理部は、前記携帯可能電子装置に送信するコマンドに前記第1の時間を示す情報を付加し、
前記無処理設定部は、前記処理装置から受信したコマンドに付加される前記第1の時間を示す情報に基づいて、前記第2の時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置の処理システム。
【請求項3】
前期無処理設定部は、前記第2の時間を前記第1の時間より長く設定することを特徴とする請求項2に記載の携帯可能電子装置の処理システム。
【請求項4】
前記第1の制御部は、受信拒否状態に移行してから前記第1の時間が経過した後に受信待ち状態に移行するように制御することを特徴とする請求項3に記載の携帯可能電子装置の処理システム。
【請求項5】
携帯可能電子装置の処理装置とデータの送受信を行う送受信部と、
前記送受信部により受信するコマンドに基づいて演算処理を行い、レスポンスデータを生成する演算処理部と、
前記演算処理部による処理が完了してから所定時間処理を行わない無処理区間を設定する無処理設定部と、
前記無処理設定部により無処理区間を設定してから前記設定した所定時間が経過した後に前記演算処理部により生成したレスポンスデータを前記送受信部により前記処理装置に送信するように制御する制御部と、
を具備することを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項6】
さらに、前記各部を備えるICモジュールと、
前記ICモジュールが設置される本体と、
を具備することを特徴する請求項5に記載の携帯可能電子装置。
【請求項7】
携帯可能電子装置とデータの送受信を行う送受信部と、
前記送受信部により前記携帯可能電子装置にコマンドを送信するコマンド処理部と、
前記携帯可能電子装置から発せられるノイズを検知するノイズ検知部と、
前記ノイズ検知部によりノイズを検知した場合、所定時間受信拒否状態に移行するように制御する制御部と、
を具備することを特徴とする携帯可能電子装置の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59875(P2011−59875A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207242(P2009−207242)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】