説明

携帯型測定器

【課題】携帯型測定器はデジタル表示するものが主流となっている。しかし、電源として電池を使用しているため、頻繁に電池交換をする必要があり作業者に負担となっている。
【解決手段】測定部と、前記測定部で測定される測定値を検出する検出部と、前記測定値をデジタル値で表示する表示器と、前記検出部及び前記表示器と電気的に接続する電源部と、を備える携帯型測定器であって、前記電源部は、熱電素子で構成されることを特徴とする携帯型測定器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型測定器に関する。詳しくは、熱電素子により発電を行う携帯型測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型測定器はデジタル表示するものが主流となっている。しかし、電源として電池を使用しているため、頻繁に電池交換をする必要があり作業者に負担となっている。
【0003】
そこで、作業負荷低減のため、電池の替わりに太陽電池を使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−213604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、測定時に太陽電池部を手で覆ってしまったら測定が不可能になり、また十分な光量を得られない場所では測定が不可能になるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯型測定器は、測定部と、前記測定部で測定される測定値を検出する検出部と、前記測定値をデジタル値で表示する表示器と、前記検出部及び前記表示器と電気的に接続する電源部と、を備える携帯型測定器であって、前記電源部は、熱電素子で構成されることを特徴とする。
このような構成によれば、電池や太陽電池が無くても、測定時に通常の測定動作を行うだけで回路基板へ電力を供給する事が可能となり、光量や測定姿勢を気にすることなく測定を行う事が可能となる。また、本発明によれば、測定時に携帯型測定機器を握れば発電が可能となるため、光量や測定姿勢を気にする必要が無く測定を行う事が可能となる。また、電池を使用していないため、電池交換などの手間が不要となる。
【0007】
また、本発明に係る携帯型測定器は、本尺と、前記本尺に対して可動するスライダ部を有し、前記測定部は、前記本尺に設けられた固定部と、前記スライダ部に設けられた可動部とで構成されることを特徴とする。
本発明の構成により、形態型測定器のうちノギスに本発明を採用できる。ノギスは一般的に熱伝導率の良い金属で形成されるため、本発明のように熱電素子を用いると、測定に必要な発電を得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記熱電素子は、前記スライダ部に配置されていることを特徴とする。
熱電素子をこの位置に配置することにより、確実に熱源である手と接触するため、効率的に発電することができる。
【0009】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記スライダ部は金属で形成され、前記熱電素子は、放熱側の面が前記スライダ部に接していることを特徴とする。
これにより、放熱効率を向上することができる。そのため、熱電素子の収熱側と放熱側の温度差が大きくなり、発電効率を向上できる。
【0010】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記検出部及びスライダ部は、前記スライダ部とともに可動する検出部カバーで覆われており、前記検出部カバーは金属で形成されるとともに、前記熱電素子の収熱側の面と接していることを特徴とする。
これにより、収熱効率を向上することができる。そのため、熱電素子の収熱側と放熱側の温度差が大きくなり、発電効率を向上できる。
【0011】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記本尺は、取っ手カバーに収納され、前記取っ手カバーは、前記スライダ部と接続され、前記熱電素子は、前記本尺と前記取っ手カバーとの間に設けられるとともに、収熱側の面が前記取っ手カバーと接していることを特徴とする。
これにより、熱電素子をスライダ部ではなく、本尺等に配置することにより、熱の伝導効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記熱電素子は、複数設けられていることを特徴とする。
これにより、スライダ部ではなく、本尺等に熱電素子を設けるため、配置面積が広がり、複数の熱電素子を配置することができる。これにより、発電効率を向上することができる。
【0013】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記熱電素子は、本尺と取っ手カバーとの間に収納される放熱板上に配置されるとともに、放熱側の面が前記放熱板と接していることを特徴とする。
これにより、放熱効率を向上することができる。そのため、熱電素子の収熱側と放熱側の温度差が大きくなり、発電効率を向上できる。
【0014】
また、本発明に係る携帯型測定器は、前記スライダ部は、回転可能な円状のサムローラに接しており、前記サムローラの回転によって前記スライダ部が可動することを特徴とする。
これにより、確実にスライダ部を可動させることができ、測定時間を短縮できる。このとき、発電力が少なくても測定できる。そのため、サムローラがないときに比べ、熱電素子の収熱側と放熱側との温度差が小さくなる前に測定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、電池や太陽電池が無くても、測定時に通常の測定動作を行うだけで回路基板へ電力を供給する事が可能となり、光量や測定姿勢を気にすることなく測定を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による携帯型測定器の第一の実施形態の外観模式図である。
【図2】本発明による携帯型測定器の第一の実施形態の分解模式図である。
【図3】本発明による携帯型測定器の第一の実施形態の測定姿勢である。
【図4】本発明による携帯型測定器の第二の実施形態の外観模式図である。
【図5】本発明による携帯型測定器の第二の実施形態の分解模式図である。
【図6】本発明による携帯型測定器の第二の実施形態の測定姿勢である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本特許に係る発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態によるノギスの概観模式図であり、図2はその分解模式図である。
【0018】
ノギス100は、例えばステンレスのような金属からなる本尺1と、本尺1の長手方向に対して可動するスライダ部2とから構成されている。図2に示すように、本尺1及びスライダ部2の端部は、測定部を構成している。すなわち、測定部は、本尺1に設けられた固定部と、スライダ部に設けられた可動部で構成されている。また固定部と可動部とは、互いに対向して配置されている。また、固定部は本尺1の端部に設けられている。
【0019】
スライダ部2には、測定部で測定される測定値を検出する検出部と、検出された測定値をデジタル値で表示する表示器6とが備え付けられている。また、検出部は、スライダ部2に取り付けられた回路基板5と、回路基板5上に設けられた測定回路IC7で構成されている。本実施形態において、検出部は測定部で測定した測定値を測定回路IC7により電気信号として検出し、表示器6は検出した測定値を表示するものである。
【0020】
回路基板5は、スライダ部2と共にスライドする検出部カバー、例えばステンレスのような金属からなる回路カバー4が取り付けられている。回路カバー4には、表示器6の表示面を露出するための窓9が設けられている。
【0021】
スライダ部2の側面には、測定回路IC7及び表示器6と電気的に接続し、測定回路IC7及び表示器6を起動させる電源部として熱電素子8が備え付けられている。また、熱電素子8は、可動部と異なる位置に配置されている。
【0022】
また、熱電素子8は、一方の面が放熱のためスライダ部2と、スライダ部2と接していないもう一方の面は収熱のため回路カバー4と接するように配置されている。なお、熱電素子8において、スライダ部2と接していないもう一方の面は、回路カバーと接することなく、露出していても良い。なお、熱電素子は、配置可能であれば複数設けてもよい。
【0023】
また、ノギス100は、本尺1の固定部が設けられた端部と反対側の端部に、デプスバー3が配置されている。
【0024】
図3は、第一の実施例によるノギスの測定姿勢の模式図である。
測定時、親指が回路カバー4の熱電素子18と接触している面10に位置するため、熱電素子8のスライダ部2と回路カバー4と接している面との間に温度勾配が生じる。そのため、発電を行う事が可能となる。
【0025】
また、ステンレスのような金属などの熱伝導性のよいものでスライダ部及び回路カバーを形成している場合、回路カバー4から熱電素子8への収熱、及び熱電素子8からスライダ部への放熱が効率的に行うことができる。そのため、熱電素子8による発電を向上させることができる。
【0026】
図4は、本発明の第二の実施形態によるノギスの概観模式図であり、図5はその分解模式図である。
【0027】
ノギス110は、例えばステンレスのような金属からなる本尺11とスライダ部12とから構成されている。
【0028】
スライダ部12には、測定部で測定される測定値を検出する検出部と、検出された測定値をデジタル値で表示する表示器16とが備え付けられている。また、検出部は、スライダ部12に取り付けられた回路基板14と、回路基板14上に設けられた測定回路IC15で構成されている。本実施形態において、検出部は測定部で測定した測定値を測定回路IC15により電気信号として検出し、表示器16は検出した測定値を表示するものである。
【0029】
また、スライダ部12には、スライダ部12と共にスライドして本尺11を収納可能な例えばステンレスのような金属からなる取っ手カバー13が取り付けられている。
【0030】
取っ手カバー13は、本尺11を挟むように上部取っ手カバー131と底部取っ手カバー132とから構成されている。上部取っ手カバー131と底部取っ手カバー132の隙間に、測定回路IC15と表示器16とが配置されスライド部12に取り付けらた状態で回路基板14が挿入されている。また、上部取っ手カバー131には、表示器16の表示面を露出するための窓17が設けられている。
【0031】
熱電素子18は、図5に示すような状態で配置されている。すなわち、熱電素子18は、上部取っ手カバー131に取り付けられた放熱板19上に配置されている。図5では、5列2行の状態で配置されているが、必要に応じて数を変える事が出来る。また、熱電素子18は、放熱板19と接触した面と反対の面が上部取っ手カバー131と接触する様に配置されている。また、熱伝導性を良くするため、熱電素子18の上部取っ手カバーと接する面には、シリコングリス等を塗ると良い。
【0032】
放熱板19上の熱電素子18と回路基板14上の各回路との間は、例えばフレキシブル基板を用いた接続回路20により接続されている。また、放熱板19は、アルミや銅といった熱伝導性の良い金属を用いる事が望ましい。なお、放熱板は必ずしも必要なく、本尺11上に設けられていてもよい。この場合においても、本尺がステンレス等の熱デンセイの良い金属で構成されていれば、放熱が効率的に行うことができる。
【0033】
本尺11は取っ手カバー13で覆われているため、測定動作を円滑に行う事が出来ない。そこで、取っ手カバー13に切り欠き部133をもうけ、切り欠き部133にスライダ部12に取り付けられてローラ外周が本尺11に接する状態でサムローラ21が配置されている。これによって、取っ手カバー13を握った状態でも測定動作を円滑に行う事が可能となる。なお、スライダ部12の一部、本実施形態においては側部が取っ手カバーに覆われず、露出していれば、サムローラ21を設けなくてもよい。この場合、露出部分によって可動させることができる。
【0034】
本実施形態において、第一の実施形態とは異なり、熱電素子18が、配置部分がスライダ部ではなく、放熱板19上であるため、複数の熱電素子を配置しやすい。そのため、発電効率をさらに向上させることができる。また、熱電素子18を放熱板19又は本尺12に配置することにより、第一の実施形態より、熱の伝導効率を向上させることができる。
【0035】
図6は、第二の実施例によるノギスの測定姿勢の模式図である。測定時、図6に示すように手のひらが熱電素子18と接している取っ手カバー13の面に位置するため、測定時に取っ手カバー13を握れば、体温が熱電素子18に伝わり、熱電素子18の取っ手カバー13と接している面と回路基板14と接している面とで温度勾配が生じるため、発電する事が可能となる。
【0036】
なお、本実施例は、ノギスであるが、これに限定されるものではなく、携帯型測定器であればよい。例えば、マイクロメータ等の携帯型測定器にも採用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・本尺、2・・・スライダ部、3・・・デプスバー、4・・・回路基板カバー、5・・・回路基板、6・・・表示器、7・・・測定回路IC、8・・・熱電素子、9・・・窓、11・・・本尺、12・・・スライダ部、13・・・取っ手カバー、14・・・回路基板、15・・・測定回路IC、16・・・表示器、17・・・窓、18・・・熱電素子、19・・・放熱板、20・・・接続基板、21・・・サムローラ、131・・・上部取っ手カバー、132・・・下部取っ手カバー、133・・・切り欠き部、100,110・・・ノギス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定部と、前記測定部で測定される測定値を検出する検出部と、前記測定値をデジタル値で表示する表示器と、前記検出部及び前記表示器と電気的に接続する電源部と、を備える携帯型測定器であって、
前記電源部は、熱電素子で構成されることを特徴とする携帯型測定器。
【請求項2】
本尺と、前記本尺に対して可動するスライダ部を有し、
前記測定部は、前記本尺に設けられた固定部と、前記スライダ部に設けられた可動部とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の携帯型測定器。
【請求項3】
前記熱電素子は、前記スライダ部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯型測定器。
【請求項4】
前記スライダ部は金属で形成され、
前記熱電素子は、放熱側の面が前記スライダ部に接していることを特徴とする請求項3に記載の携帯型測定器。
【請求項5】
前記検出部及びスライダ部は、前記スライダ部とともに可動する検出部カバーで覆われており、
前記検出部カバーは金属で形成されるとともに、前記熱電素子の収熱側の面と接していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の携帯型測定器。
【請求項6】
前記本尺は、取っ手カバーに収納され、
前記取っ手カバーは、前記スライダ部と接続され、
前記熱電素子は、前記本尺と前記取っ手カバーとの間に設けられるとともに、収熱側の面が前記取っ手カバーと接していることを特徴とする請求項2に記載の携帯型測定器。
【請求項7】
前記熱電素子は、複数設けられていることを特徴とする請求項6に記載の携帯型測定器。
【請求項8】
前記熱電素子は、本尺と取っ手カバーとの間に収納される放熱板上に配置されるとともに、放熱側の面が前記放熱板と接していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の携帯型測定器。
【請求項9】
前記スライダ部は、回転可能な円状のサムローラに接しており、
前記サムローラの回転によって前記スライダ部が可動することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の携帯型測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185093(P2012−185093A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49450(P2011−49450)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】