説明

携帯無線端末

【課題】筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができる携帯無線端末を提供する。
【解決手段】筐体2の側面に、板状の第1の金属フレーム8を設けるとともに、給電部6の近傍で、かつ第1の金属フレーム8から間隙部10を隔てた位置に第2の金属フレーム9を設け、第1の金属フレーム8を回路基板4の四つの角部4a〜4dのそれぞれの近傍で接地し、第2の金属フレーム9を非接地とし、さらに、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9との間の間隙部10を、筐体2の角部2a近傍の側面上に露出させて配置する。このような構成を採ることで、筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができる。また、自由空間では第2の金属フレーム9はアンテナ素子7に影響を与えることがないため、自由空間と手保持の双方の状態でアンテナの高性能化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレート型の筐体を有する携帯無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したストレート型の筐体を有する携帯無線端末として、例えば特許文献1に記載された携帯無線機がある。また、近年めざましく普及しているスマートフォンと呼ばれる携帯無線端末も同様の形状を成している。スマートフォンは、携帯電話とPDA(Personal Digital Assistant)を融合させたものであり、携帯電話としての無線通信機能の他に、無線LAN機能、スケジュール機能、個人情報管理機能などの多種多様な機能を有している。
【0003】
ところで、上述した特許文献1に記載された携帯無線機では、アンテナを筐体の上端部に設けているが、SAR(Specific Absorption Rate、比吸収率)設計上の観点からすると、筐体の下端部に配置するのが望ましい。
なお、携帯無線端末用のアンテナとして、例えば特許文献2に記載された無給電素子付板状アンテナがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−072486号公報
【特許文献2】特開平6−334420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SAR設計上の観点からアンテナを筐体の下端部に配置した場合、実使用時にアンテナが手で覆われることになり、インピーダンスの共振周波数が低下して、アンテナ性能が劣化する懸念がある。
【0006】
前述した特許文献1に記載された携帯無線機のアンテナは、地線の共振周波数において、実使用時における人体によるアンテナ性能劣化が大きい。また、前述した特許文献2に記載された無給電素子付板状アンテナは、手での保持を想定した設計が成されていないため、手での保持時に大幅なアンテナ性能劣化(具体的には、利得が低下する)が予想される。
【0007】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができる携帯無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の携帯無線端末は、筐体と、前記筐体に設けられた操作部と、前記筐体の内部に設けられ、グランドを有する回路基板と、前記回路基板上に実装された無線回路部と、前記無線回路部に接続された給電部と、前記給電部に接続され、前記無線回路部の動作周波数に励振するアンテナ素子と、前記筐体に設けられ、少なくとも前記給電部近傍で接地された板状の第1の金属フレームと、前記筐体に設けられ、かつ前記給電部の近傍に設けられた、非接地の第2の金属フレームと、前記第1の金属フレームと前記第2の金属フレームとの間に所定の間隔を設けた間隙部と、を備え、前記間隙部は、前記筐体の表面上に露出し、前記筐体の角近傍の側面もしくは前記操作部と反対面に位置することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、筐体に、板状の第1の金属フレームを設けるとともに、給電部の近傍で、かつ第1の金属フレームから間隙部を隔てて第2の金属フレームを設け、第1の金属フレームを、少なくとも給電部近傍で接地し、第2の金属フレームを非接地とし、さらに、間隙部を、筐体の表面上に露出させるとともに、筐体の角近傍の側面もしくは操作部と反対面に位置させたので、筐体の手保持状態において、間隙部に手が触れることで、第1の金属フレームと第2の金属フレームが高周波的に接続されて、第2の金属フレームがグランドとなり、手がアンテナ素子に近接することによる共振周波数の低周波数化(ずれ)を抑制することが可能となる。これは、グランドとアンテナ素子との近接による共振周波数の高周波化する原理を利用したものであり、手がアンテナ素子に近接することによる共振周波数の低周波化を抑制することができる。
【0010】
また、自由空間では第2の金属フレームはアンテナ素子に影響を与えることがないため、自由空間と手保持の双方の状態でアンテナの高性能化を実現できる。
【0011】
上記構成において、前記間隙部の寸法は、前記無線回路部の動作周波数の0.1波長以下である。
【0012】
上記構成において、前記アンテナ素子と前記第2の金属フレームとの間隔は、前記無線回路部の動作周波数の0.1波長以下である。
【0013】
上記構成において、前記第2の金属フレームの長さは、前記無線回路部の動作周波数の0.25波長以下0.025波長以上である。
【0014】
上記構成において、前記第1の金属フレーム及び前記第2の金属フレームの少なくともいずれか一方は、前記筐体より露出している。
【0015】
上記構成において、前記第1の金属フレーム及び前記第2の金属フレームの少なくともいずれか一方は、前記筐体の一部である。
【0016】
上記構成において、前記第2の金属フレームは、前記筐体の内部に設けられた寄生素子と電気的に接続する。
【0017】
上記構成によれば、筐体の内部に設けられた寄生素子を第2の金属フレームに接続することで、アンテナ素子の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【0018】
上記構成において、前記第2の金属フレームは、前記アンテナ素子と電気的に接続する。
【0019】
上記構成によれば、第2の金属フレームをアンテナ素子に電気的に接続することで、アンテナ素子の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【0020】
上記構成において、前記第2の金属フレームは、集中定数素子を介して前記アンテナ素子と電気的に接続する。
【0021】
上記構成によれば、第2の金属フレームを、集中定数素子を介してアンテナ素子に電気的に接続することで、アンテナ素子の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯無線端末の概観を示す斜視図
【図2】図1の携帯無線端末を示す要部構成図
【図3】図1の携帯無線端末において、3つの方向を持つ形状の間隙部を示す図
【図4】本発明の実施の形態2に係る携帯無線端末を示す要部構成図
【図5】本発明の実施の形態3に係る携帯無線端末を示す要部構成図
【図6】図5の携帯無線端末の応用例であって、集中定数素子を介在させた場合の携帯無線端末を示す要部構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る携帯無線端末の概観を示す斜視図である。また、図2は、図1の携帯無線端末を示す要部構成図である。なお、図1では、携帯無線端末の1箇所で内部を露出させて各部材が見えるようにしている。
【0026】
図1及び図2において、本実施の形態の携帯無線端末1は、スマートフォンと呼ばれる携帯無線機であり、ストレート型の筐体2と、筐体2の2つの幅広面の一方の側に設けられた表示・操作部3と、筐体2の内部に設けられ、グランド(図示略)を有する回路基板4と、回路基板4上に実装された無線回路部5と、無線回路部5に接続された給電部6(図2参照)と、給電部6に接続され、無線回路部5の動作周波数に励振するアンテナ素子7(図2参照)と、筐体2の側面上であって、該側面に沿って設けられ、回路基板4の四つの角部4a〜4dのそれぞれの近傍で接地された板状の第1の金属フレーム8と、筐体2の側面上で給電部6近傍に設けられ、グランドへの接地を行っていない非接地の第2の金属フレーム9と、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9との間に所定の間隔を設けて得た間隙部10と、を備える。
【0027】
第1,第2の金属フレーム8,9に使用する材料としては、例えばアルミニウム、マグネシウム合金、ステンレス、銅箔(金属箔)などの金属が好適である。表示・操作部3は、LCD(Liquid Crystal Display)等の液晶表示器(図示略)とその表面側に配置されたタッチパネル(図示略)とから構成される。第2の金属フレーム9の長さは、無線回路部5の動作周波数の0.25波長以下0.025波長以上である。また、間隙部10の寸法は、無線回路部5の動作周波数の0.1波長以下である。また、アンテナ素子7と第2の金属フレーム9との間隔は、無線回路部5の動作周波数の0.1波長以下である。アンテナ素子7は、筐体2の内部で、筐体2の下端部に設けられている。
【0028】
本実施の形態の携帯無線端末1は、このような構成を採り、筐体2を手で保持した状態すなわち手保持状態において、間隙部10に手が触れることで、該手を介して第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9とが高周波的に接続されて、第2の金属フレーム9が無線回路部5のグランドに接地される。第2の金属フレーム9が接地されることで、手がアンテナ素子7に近接することによる共振周波数の低周波数化(ずれ)が抑制される。すなわち、無線回路部5のグランドとアンテナ素子7を近接させることで共振周波数が高周波化する原理を利用することで、筐体2の手保持状態において共振周波数の低周波化を抑制することができる。
【0029】
また、自由空間では第2の金属フレーム9がアンテナ素子7に影響を与えることがないため、自由空間と手保持の双方の状態でアンテナの高性能化を実現できる。
【0030】
このように本実施の形態の携帯無線端末1によれば、筐体2の側面に、板状の第1の金属フレーム8を有するとともに、給電部6の近傍で、かつ第1の金属フレーム8から間隙部10を隔てた位置に第2の金属フレーム9を有し、第1の金属フレーム8を回路基板4の四つの角部4a〜4dのそれぞれの近傍で接地し、第2の金属フレーム9を非接地とし、さらに、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9との間の間隙部10を、筐体2の角部2a近傍の側面上に露出させて配置した構成を採ったので、筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができる。また、自由空間では第2の金属フレーム9はアンテナ素子7に影響を与えることがないことから、自由空間と手保持の双方の状態でアンテナの高性能化を実現できる。
【0031】
なお、本実施の形態の携帯無線端末1では、第1の金属フレーム8を回路基板4の四つの角部4a〜4dのそれぞれの近傍で接地させたが、少なくとも給電部6の近傍で接地してあればよい。
【0032】
また、本実施の形態の携帯無線端末1では、間隙部10を筐体2の角近傍の側面に配置したが、表示・操作部3と反対面に配置してもよい。
【0033】
また、本実施の形態の携帯無線端末1では、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9を筐体2の側面上に設けて筐体2より露出させているが、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9のいずれも筐体2の内側に設けても良いし、いずれか一方を筐体2の内側に設けてもよい。
【0034】
また、本実施の形態の携帯無線端末1では、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9を筐体2とは別体のものとしたが、第1の金属フレーム8及び第2の金属フレーム9を筐体そのものとしてもよいし、少なくともいずれか一方を筐体2の一部としてもよい。特に、第1の金属フレーム8及び第2の金属フレーム9を筐体そのものとする場合、十分な厚みを持たせるとよい。
【0035】
また、本実施の形態の携帯無線端末1では、第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9の突き合わせ部分で形成される間隙部10の形状を矩形としたが、この形状に限定されるものではなく、2つ以上の方向を持つ形状としてもよい。図3は、3つの方向を持つ形状の間隙部10Aを示す図である。このように間隙部10の形状に(例えば2次元的に)自由度を持たせることで、手保持時における第1の金属フレーム8と第2の金属フレーム9との間の接続のし易さを改善できる。
【0036】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る携帯無線端末を示す要部構成図である。なお、図4において前述した図1及び図2と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
図4において、本実施の形態の携帯無線端末20は、第2の金属フレーム9と電気的に接続される寄生素子21を備えている。この寄生素子21は、筐体2の内部に設けられ、接続部22を介して第2の金属フレーム9の一端に接続される。寄生素子21には、板金又はフレキシブルパターンサーキット(“フレキ基板”と呼ばれる)が用いられる。筐体2の内部に設けた寄生素子21を第2の金属フレーム9に接続することで、アンテナ素子7の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【0037】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る携帯無線端末を示す要部構成図である。なお、図5において前述した図1及び図2と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
図5において、本実施の形態の携帯無線端末30は、第2の金属フレーム9を、接続部31を介してアンテナ素子7に電気的に接続したものである。第2の金属フレーム9をアンテナ素子7に電気的に接続することで、アンテナ素子7の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【0038】
なお、アンテナ素子7と接続部31との間に集中定数素子を介在させてもよい。図6は、集中定数素子32を介在させた場合の携帯無線端末30を示す要部構成図である。第2の金属フレーム9を、集中定数素子32を介してアンテナ素子7と電気的に接続することで、アンテナ素子7の長さなどの設計の自由度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、筐体の手持ち時のアンテナ性能劣化を低く抑えることができるといった効果を有し、スマートフォンなどのストレート型の筐体を有する携帯無線端末への適用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1,20,30 携帯無線端末
2 筐体
3 表示・操作部
4 回路基板
5 無線回路部
6 給電部
7 アンテナ素子
8 第1の金属フレーム
9 第2の金属フレーム
10,10A 間隙部
21 寄生素子
22,31 接続部
32 集中定数素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられた操作部と、
前記筐体の内部に設けられ、グランドを有する回路基板と、
前記回路基板上に実装された無線回路部と、
前記無線回路部に接続された給電部と、
前記給電部に接続され、前記無線回路部の動作周波数に励振するアンテナ素子と、
前記筐体に設けられ、少なくとも前記給電部近傍で接地された板状の第1の金属フレームと、
前記筐体に設けられ、かつ前記給電部の近傍に設けられた、非接地の第2の金属フレームと、
前記第1の金属フレームと前記第2の金属フレームとの間に所定の間隔を設けた間隙部と、
を備え、
前記間隙部は、前記筐体の表面上に露出し、前記筐体の角近傍の側面もしくは前記操作部と反対面に位置することを特徴とする携帯無線端末。
【請求項2】
前記間隙部の寸法は、前記無線回路部の動作周波数の0.1波長以下であることを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記アンテナ素子と前記第2の金属フレームとの間隔は、前記無線回路部の動作周波数の0.1波長以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記第2の金属フレームの長さは、前記無線回路部の動作周波数の0.25波長以下0.025波長以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項5】
前記第1の金属フレーム及び前記第2の金属フレームの少なくともいずれか一方は、前記筐体より露出していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記第1の金属フレーム及び前記第2の金属フレームの少なくともいずれか一方は、前記筐体の一部であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項7】
前記第2の金属フレームは、前記筐体の内部に設けられた寄生素子と電気的に接続することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項8】
前記第2の金属フレームは、前記アンテナ素子と電気的に接続することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の携帯無線端末。
【請求項9】
前記第2の金属フレームは、集中定数素子を介して前記アンテナ素子と電気的に接続することを特徴とする請求項8に記載の携帯無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−227850(P2012−227850A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95740(P2011−95740)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】