説明

携帯用切断機

【課題】
可動式の保護カバーを有する携帯用切断機において、保護カバーが作業者の意図しない方向に移動することを阻止できるようにする。
【解決手段】
モータと、モータによって駆動される切断手段(5)と、モータを収容するハウジング(7)と、ハウジングに取り付けられ非切断作業時に切断手段の露出部分を覆う可動式の保護カバー(11)と、を有する携帯用切断機(1)において、携帯用切断機の姿勢変化を検出する加速度センサ(31)と、切断作業中に加速度センサ(31)によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した際に、保護カバー(11)の移動を制限するロック機構16を設けた。加速度センサ31によって携帯用切断機(1)の急激な姿勢変化を検出した後には、自動的に定常状態(閉状態)に復帰した保護カバー(11)の再移動を制限するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯用切断機に関し、特に切断手段の露出部分を覆う可動式の保護カバーを有する携帯用切断機の保護カバーのロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断手段の露出部分を覆う可動式の保護カバーを有する携帯用切断機が、例えば特許文献1で知られている。この従来の携帯用切断機の構成を図17及び図18を用いて説明する。図17及び図18では、携帯用切断機の例として丸のこ装置201を用いたものである。丸のこ装置201は、駆動源としてモータ202を用い、モータ202により図示しない減速部を介して回転駆動される鋸刃205(図18)を回転させることによって、被切断材を切断するものである。丸のこ装置201のハウジングは、モータ202を収容するためのモータハウジング204と、鋸刃205の上側半分のモータ202側をほぼ覆うと共に鋸刃205の刃先部206の上側を覆う上カバー(固定カバー)207の主に2つの部材によって構成される。モータハウジング204には、モータ202の回転軸に直交する方向に延在し、作業者が把持するためのハンドル部204Aが形成され、ハンドル部204Aには、モータ202の駆動を制御するトリガスイッチ(図示せず)が設けられる。
【0003】
上カバー207の下部には、鋸刃205を底面210Aより下方に突出させる開口部210Bを有するベース210が設けられる。図18に示すように、ベース210は、切断作業時に丸のこ装置201が被加工材上を摺動可能なように、平らな底面210Aが形成される。ハウジングには、さらに、下カバー(可動カバー、保護カバー)211が取り付けられる。下カバー211は、切断作業を行わない時に底面210Aから突出する鋸刃205の下側半分のモータ202側の側部と、刃先部206の外縁側をほぼ覆うように構成され、切断作業時には下カバー211が被加工材に当接する事によって上カバー207の中に収納されて、刃先部206の一部がベース210の下側で一定量露出する定常状態となる。下カバー211は、上カバー207内に回動可能なように支持され、切断作業を行わない時はスプリング212によって付勢され、下カバー211は刃先部206を覆う方向に回動する。上カバー207には、ネジ213で固定された緩衝材で形成されたストッパ214が設けられ、付勢された下カバー211は、ストッパ214に当接することによってその移動範囲が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−142001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような携帯用切断機は、切断作業を行わない時に下カバー211が鋸刃205の露出部分をほぼ覆う構成となっている。切断作業時において、刃先部206が被加工材に噛み込んだ反動で携帯用切断機自身が被加工材から跳ね返される所謂キックバックが生じた場合には、すぐさま下カバー211が移動して被加工材から離れた鋸刃205の露出部分をほぼ覆うような位置(保護位置(閉状態):図18に示す下カバー211の位置)に復帰する。しかしながら、携帯用切断機自身が被加工材から離れた際に、何らかの理由で下カバー211が周囲の造作物や材料に接触して回動してしまうと、刃先部206が露出してしまって造作物や材料を傷付けてしまう可能性があり得る。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は可動式の保護カバーを有する携帯用切断機において、保護カバーが作業者の意図しない方向に移動することを阻止できるようにした携帯用切断機を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、携帯用切断機の異常な動きを検出して保護カバーを保護位置に固定するロック機構を実現した携帯用切断機を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、簡単な構造にて可動式の保護カバーのロック機構を実現した携帯用切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0010】
本発明の一つの特徴によれば、モータと、モータによって駆動される切断手段と、前記モータを収容するハウジングと、ハウジングに取り付けられ切断手段によって切断される被加工材上を摺動するベースと、ハウジングに取り付けられベースから可能に突出する切断手段の外周を覆う閉状態と該外周を露出する開状態とに回動可能な保護カバーと、を有する携帯用切断機において、携帯用切断機の姿勢変化を検出する検出手段と、切断作業中に検出手段によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後に、保護カバーが開状態から閉状態になった際に保護カバーを閉状態に規制するロック機構を設けた。検出手段によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後には、自動的に初期状態(閉状態)に復帰した保護カバーの再移動を制限するように構成した。
【0011】
本発明の他の特徴によれば、保護カバーは、携帯用切断機が被切断材から離れた際に、自動で定常位置まで戻って切断手段の露出部分を覆う自動復帰式であり、携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出された後に、ロック機構は保護カバーが定常位置(閉状態)まで戻った後に保護カバーの移動を制限する。携帯用切断機に用いられるモータは、ブラシレスDCモータであり、ブラシレスDCモータの回転を制御する制御手段を設け、制御手段が、検出手段の出力を用いてロック機構の動作を制御するように構成すると好ましい。検出手段はハウジングに設けられた加速度センサであり、携帯用切断機に加えられる加速度の大きさを検出する。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、携帯用切断機は携帯用の丸のこ装置であり、保護カバーは、丸のこ刃の外周に沿って円周方向に移動するカバーであり、ロック機構は、保護カバーの移動範囲の外周側に設けられる。ロック機構は、ソレノイドと、ソレノイドにより移動されるソレノイドピンを有し、ソレノイドピンが移動した際に保護カバーに当接することによって保護カバーの移動を制限する。また、保護カバー外縁には、ロック機構が稼働した際に保護カバーの一方向のみの移動を可能にする段差部が設けると良い。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、ロック機構の動作を制御する制御手段と、ベース底面からの切断手段の突出量を変更する突出量変更手段とを備え、制御手段は、突出量変更手段によって設定された突出量に応じてロック機構を制御する。また、検出手段はモータに流れる電流或いはモータの回転数を検出し、制御手段は検出手段からの信号に応じてロック機構を制御する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、切断作業中に検出手段によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後に、保護カバーの移動を制限するロック機構を設けたので、刃先部が露出してしまって造作物や材料を傷付けてしまうことを抑制することができる携帯用切断機を実現できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、検出手段によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後には、保護カバーの移動を制限すると共にモータを停止させるので、刃先部が露出してしまって造作物や材料を傷付けてしまうことを抑制することができる携帯用切断機を実現できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、保護カバーは自動復帰式であり、携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出された後に、ロック機構は保護カバーが定常位置(閉状態)まで戻った後に保護カバーの移動を制限するので、確実に保護位置に戻った状態で保護カバーの移動をロックすることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、ブラシレスDCモータの回転を制御する制御手段を設け、制御手段が、検出手段の出力を用いてロック機構の動作を制御するので、ロック機構のための専用のマイコンや制御装置を準備する必要がないので、製造コストアップを最小に抑えることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、検出手段は加速度センサであり、携帯用切断機に加えられる加速度の大きさを検出するので、安価なセンサを用いて本発明のロック機構を実現することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、携帯用切断機は携帯用の丸のこ装置であり、丸のこ刃の外周に沿って円周方向に移動するカバーをロックするので、確実に保護カバーをロックできる丸のこ装置を実現することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、ロック機構は、ソレノイドと、ソレノイドにより移動されるソレノイドピンを有し、ソレノイドピンが移動した際に保護カバーに当接することによって保護カバーの移動を制限するので、簡単な構造でロック機構を実現できる。
【0021】
請求項8の発明によれば、保護カバー外縁には、ロック機構が稼働した際に保護カバーの一方向のみの移動を可能にする段差部が設けられるので、何らかの理由で保護カバーの保護位置への復帰が遅れた場合でも、ロック機構はその復帰を阻害することがない。
【0022】
請求項9及び10の発明によれば、切断手段のベース底面からの突出量に応じてロック機構が制御されるため、さまざまな突出量(切込み深さ)でも対応することができる。
【0023】
請求項11の発明によれば、モータ電流或いはモータ回転数によって携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出するため、別途検出手段を設ける必要がなく、安価な構成で造作物や材料を傷付けてしまうことを抑制できる携帯用切断機を実現することができる。
【0024】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る丸のこ装置の上面図であり、一部をその断面で示す。
【図2】本発明の実施例に係る丸のこ装置の側面図であり、一部をその断面で示す。
【図3】図2のロック機構部16の拡大断面図である。
【図4】基板18に電子素子が搭載された状態を示す図で、(1)は基板18の側方から見た側面図であり、(2)は後方から見た背面図である。
【図5】上ケース22の形状を示す図であり、(1)は後方から見た背面図であり、(2)は(1)のA−A部の断面図である。
【図6】下ケース23の形状を示す図であり、(1)は後方から見た背面図であり、(2)は(1)のB−B部の断面図である。
【図7】本発明の実施例に係るロック機構部16の回路構成を示すブロック図である。
【図8】ロック機構部16の動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施例に係るロック機構部56の拡大断面図である。
【図10】図9のロック部材70の組立構造を示す図であり、(1)は側面から見た図であり、(2)は上から見た上面図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係るロック機構部56の拡大断面図であり、ロック機構部56が動作した状況を示す。
【図12】本発明の第2の実施例に係るロック機構部56の拡大断面図であり、ロック機構部56が動作した状況を示す別の図である。
【図13】図9の保護カバー61の一部形状を示す図であり、(1)は背面図であり、(2)は側面図である。
【図14】本発明の第3の実施例に係る丸のこ装置の上面図であり、一部をその断面で示す。
【図15】図14のブラシレスDCモータ102の駆動制御系の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の実施例に係る丸のこ装置の姿勢変化が生じた際のモータ電流及びモータ回転数を示すタイムチャートである。
【図17】従来の丸のこ装置の上面図であり、一部をその断面で示す。
【図18】従来の丸のこ装置の側面図であり、一部をその断面で示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例に係る携帯用切断機を図面に基づいて説明する。本実施例では携帯用切断機の例として電動式の丸のこ装置1を用いて説明する。尚、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、切断の際に丸のこ装置1を移動させる方向を前方向とし、前後左右、上下の方向は図1及び2に示す方向であるとして説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施例に係る丸のこ装置1の上面図であり、一部をその断面図で示している。丸のこ装置1は、駆動部として電気式のモータ2を用いる。丸のこ装置1の外形を形づけるハウジングは、モータ2を収納するモータハウジング4と、モータハウジング4の右側方であって、モータ2の回転軸に直交する方向に設けられた上カバー7によって主に構成される。モータハウジング4には作業者が把持するためのハンドル部4Aが一体に形成され、ハンドル部4Aにはモータ2の駆動を制御するためのトリガスイッチ(図示せず)が設けられる。ハンドル部4Aにはさらにトリガスイッチのオン状態を維持するオンロックスイッチ3が設けられる。上カバー7には、被加工材上を摺動可能な底面を有し、切断作業の基準位置を定めるためのベース10が設けられる。ベース10は、上カバー7がベース10に設けられた係止部8と掛合する事によって、鋸刃5の一部がベースの下側で一定量露出するように、その露出量を調整するために用いられる。ベース10の一部には、鋸刃5を底面より下方に貫通させて突出可能にするための開口部10Bが形成される。
【0028】
図2は、本発明の実施例に係る丸のこ装置1の右側面図であり、一部をその断面図で示す。鋸刃5は、モータ2により減速部(図示しない)を介して回転駆動される。鋸刃5の回転方向は、図2でみると反時計回りであり、鋸刃5の外周部には複数の刃先部6が形成される。上カバー7は、モータハウジング4(図1参照)に取付けられ、鋸刃5の上側半分のモータ2側をほぼ全体を覆うと共に、鋸刃5の刃先部6の上側外周付近を覆う。ベース10は、後方側が上カバー7に回動可能なように軸支され、前方側が、上カバー7とベース10の相対的位置を可変させて固定する係止部8を介して上カバー7に固定される。ベース10は、被加工材上を摺動可能な底面10Aを持ち、鋸刃5を底面10Aより下方に突出可能な位置に設けられる。底面10Aより下側に突出する鋸刃5の量は、ベース10の後方側であって上カバー7内に設けた切込み深さ調整機構(図示せず)により、係止部8を支点として所望の切込み量に調整した後に切込み調整レバー8A(図1参照)を締め付けることにより調整できる。
【0029】
ハウジングには、切断作業を行わない時に鋸刃5を覆う下カバー11が設けられる。下カバー11は、底面10Aから突出した鋸刃5のモータ2側の側面をほぼ覆うと共に、露出する刃先部6の外周側の周囲を覆うように構成される。切断作業時には、下カバー11の先端部11Aが被加工材に当接する事によって、下カバー11は鋸刃5の外縁にそって図2中の時計回りに移動し、先端部11Aがベース10の底面10Aと同じ高さとなる位置まで移動することにより上カバー7の中に収納される。このように下カバー11が上カバー7内に回動可能にするために、下カバー11は切断作業を行わない時は刃先部6を覆う方向に回動するようスプリング12によって反時計回りに付勢され、先端部11Aの上方部分が、上カバー7にネジ13で固定された緩衝材14に当接し、図2に示すように一部の刃先部6だけがベース10の下側で露出する状態となる。この状態にある下カバー11の位置を、本明細書では「定常位置」又は「保護位置」又は「閉状態」ということにする。
【0030】
上カバー7の後端側の内壁7Aには、ロック機構部16がネジ17によって固定される。ロック機構部16は、丸のこ装置1の姿勢変化を検出するセンサを含み、刃先部6が被加工材に噛み込んだ反動で丸のこ装置が被加工材から跳ね返される等、何らかの理由により丸のこ装置に急激な姿勢変化を生じた際は、定常位置にまで戻った下カバー11を回動不能にロックする。ロック機構部16は、ソレノイド20によって鋸刃の半径方向に移動するソレノイドピン21を含んで構成され、ソレノイドピン21が前方に移動することにより、下カバー11が移動する領域の外側位置よりも内周側まで突出し、下カバー11の後端部11Bの動きを制限する。この結果、図2で示す下カバー11の位置から、下カバー11が何らかの外力によって時計回りに回転しようとしても、後端部11Bがソレノイドピン21に当接するため、下カバー11は移動することができない。
【0031】
この状態を詳述するのが図3である。図2はロック機構部16の拡大断面図である。図2においてはソレノイドピン21が非ロック状態、即ち後方側に位置する状態であるのに対して、図3の拡大断面図においては、ソレノイドピン21がロック状態、即ち前方側に位置する状態であることを示す。ソレノイドピン21は、ソレノイド20の可動鉄心であり、ソレノイド20によって供給される電気的エネルギーをソレノイドピン21の直線運動に変換し、ソレノイド20の可動鉄心に結合された機構(機械的負荷)を駆動する。ソレノイド20には、ソレノイドピン21から一定の空隙を有して配置され、コイルが巻かれた固定鉄心(図示せず)が含まれ、コイルに電流を流した時に発生する磁束によって、固定鉄心と可動鉄心との間に作用する磁力により、ソレノイドピン21に対してその軸方向に機械的運動を与える。コイルの通電を継続すれば可動鉄心は固定鉄心に吸着した状態を保つが、電流を断とすれば可動鉄心に結合している復旧バネの力で元の位置に引き戻される。
【0032】
ソレノイド20は基板18に搭載され、これらは保護ケース19に収容される。基板18に配設されたソレノイド20のソレノイドピン21は、保護ケース19を構成する上ケース22、下ケース23の内の下ケース23に穿設された穴23A(図6参照)、内壁7Aに穿設された穴7Bを貫通し、上カバー7の内部空間に移動可能にされる。スプリング12の作用によって上カバー7から下カバー11が突出する刃先部6をほぼ覆うように定常位置(閉状態)にある際に、ソレノイドピン21が突出すると、図3に示すように下カバー11の後端部11Bの上部にソレノイドピン21が位置することになり、下カバー11が上カバー7内に収納されるのを防ぐ事ができる。このように構成することにより、切断作業時において、何らかの理由で下カバー11が定常位置(閉状態)に移動した場合に、再び刃先部6が開放されないように下カバー11の開放状態への移動をロックすることができる。よって、被加工材の切断箇所以外の箇所に丸のこ装置1が不意に当たったとしても下カバー11が開くことなく鋸刃5によって被加工材を傷つけることを抑制することができる。
【0033】
保護ケース19は、下ケース23と上ケース22の2つの部材より構成される。保護ケース19内の基板18には、複数の電子素子及び/又は機械素子が搭載される。図4は、基板18に電子素子が搭載された状態を示す図で、(1)は後方側から見た背面図であり、(2)は基板18の側方からみた側面図である。基板18には、ソレノイド20、加速度センサ31、マイコン32、及び、抵抗やコンデンサ等のその他の電子素子が搭載される。また基板18には、基板18からはモータハウジング4内で適度に変圧された電力を得るための電源線27と、トリガスイッチ3のON,OFF状態を検知するための信号線28が配設され、それぞれ下ケース23内に穿設けられた切り抜き穴23C(後述)から引き出されてモータハウジング4内に引き込まれ、所定の箇所に接続される。
【0034】
図5は上ケース22の形状を示す図であり、(1)は後方側から見た背面図であり、(2)は(1)のA−A部の断面図である。上ケース22は、平板状の基本形状であるが、その一部に円筒形に突出した突出部22Aが形成される。突出部22Aは保護ケース19の内部に収容されるソレノイド20のソレノイドピン21の移動空間を確保するために形成されるものであり、図2に示すように、ソレノイドピン21が非ロック状態の場合はソレノイドピン21の後端部が突出部22A内の空間に位置することになる。
【0035】
図6は下ケース23の形状を示す図であり、(1)は後方から見た背面図であり、(2)は(1)のB−B部の断面図である。下ケース23は、上ケース22と組み合わせることにより、箱形の保護ケース19を形成するものであり、下ケース23の基本形状は一面が開放された箱状の形状である。下ケース23の前方側の壁には、ソレノイドピン21を貫通させるための穴23A、ネジ17を貫通させるための穴23Bが形成され、下ケース23の前方側の壁には電源線27と信号線28を引き出すための略四角形の切り抜き穴23Cが形成される。上ケース22及び下ケース23は、例えばプラスチック等の合成樹脂で製造することができ、上ケース22及び下ケース23は接着あるいは、公知の接合手段によって接合される。
【0036】
次に図7を用いて、本発明の実施例に係るロック機構部16の回路構成を説明する。本実施例においては、基板18上には、マイコン32等の制御部、加速度センサ31、ソレノイド20が搭載される。マイコン32には記憶手段32Aとタイマ32Bが含まれ、トリガスイッチのON/OFF信号が入力される。また、マイコン32には加速度センサ31からの出力が入力される。加速度センサ31の出力は姿勢変化検出回路33に入力され、姿勢変化検出回路33で検出された信号はマイコン32に出力される。マイコン32は、出力信号を解析することにより、その出力信号が閾値を超えるか否かを判定する。トリガスイッチ3がONである時に、マイコン32が所定の加速度、振動を検出すると、マイコン32はソレノイド20を駆動し、ソレノイドピン21を移動させることにより下カバー11の移動を制限する。
【0037】
次に、図8を用いてロック機構部16の動作を説明する。まず、丸のこ装置のトリガスイッチがONになると、マイコン32は加速度センサ31からの出力があったか否かを判断する(ステップ81)。次に、マイコン32は、タイマ32Bにより時間をカウントすることにより所定の時間だけ待つ(ステップ82)。これは、加速度センサ31からの出力ですぐにソレノイド20を駆動すると、下カバー11が定常位置(閉状態)に戻る前にソレノイドピン21が突出してしまい、下カバー11の外周部に衝突してしまうからである。待機する時間は、スプリング12の強度や下カバー11の移動距離等を考慮して設定すれば良い。次に、所定の時間が経過したらマイコン32は、ソレノイド21を駆動するための信号を発してソレノイドピン21を、ソレノイド20の一端側(後方側)から他端側(前方側)に移動させる(ステップ83)。尚、この際に、モータ2をも停止させるように制御しても良い。
【0038】
次に、マイコン11は、トリガスイッチがOFFからONに切り替わったかを検出し、切り替わったならばソレノイド20を駆動させて、ソレノイドピン21を初期状態の位置に戻してロック状態を解除すなわちソレノイド20をリセットする(ステップ84、85)。トリガスイッチ3がOFFからONに切り替わっていない場合、即ち、ソレノイド21がロック状態になった際(即ちトリガスイッチがON)から、作業者がトリガスイッチを握りっぱなしであってトリガスイッチを開放していない場合、或いは、ソレノイド21がロック状態になった際に作業者がトリガスイッチを開放したものの再びトリガスイッチ3をONにしていない場合は、待機する(ステップ84)。
【0039】
以上説明したように、本実施例では刃先部6が被加工材に噛み込んだ反動で被加工材から跳ね返される所謂キックバック等、丸のこ装置1が作業者の意図しない急激な姿勢変化をした際は、基板18に配設された加速度センサ31がその挙動の変化を検知し、マイコン32で閾値を越える変化か否かを判断し、閾値以上の変化である場合はソレノイド20を動作させる。しかも、下カバー11が定常状態(閉状態)に復帰するのに要する時間をおいた後に、下カバー11をロックするので、下カバー11が定常位置(閉状態)に確実に戻った状態でロックすることができる。従って、丸のこ装置1の急激な姿勢変化の際に保護状態に戻った下カバー11の再度の動きをロックさせるので、刃先部6によって造作物や材料を傷付けてしまうことを抑制できる丸のこ装置1を実現できる。
【実施例2】
【0040】
次に、本発明の第2の実施例に係るロック機構部56を図9及び図10を用いて説明する。尚、図中において上述した第1の実施例と同じ構成の部分は、同じ参照符号を付して繰り返しの説明は省略する。図9は、本発明の第2の実施例に係るロック機構部56の拡大断面図である。図3に示す第1の実施例と違う構成の部分は、下カバー61の外周部の形状と、ロック部材70の構造である。
【0041】
ロック部材70の組立構造を示すのが図10である。図10において(1)は側面から見た図であり、(2)は上から見た上面図である。ソレノイド20の可動鉄心であるソレノイドピン71にスプリング73をかぶせ、その後ロックピン72が取り付けられる。ソレノイドピン71の先端には、上下方向に貫通する貫通穴71Aが形成され、ロックピン72には、上下方向に貫通する貫通穴72Cが形成される。図10(2)に示すように貫通穴72Cは、軸方向に扁平な長穴形状である。ソレノイドピン71の先端にロックピン72を取り付ける際には、スプリング73をロックピン72の外周側に設ける。スプリング73の後ろ側は、上カバー7の内壁7Aに接し、前側はロックピン72の部分的に径が太くなっているフランジ部72Aの後端面に接する。このようにスプリング73を介在させることによって、通常時にロックピン72はソレノイドピン71から離れる方向に付勢される。この状態では、固定ピン74は貫通穴72Cの後端側の内壁に接することになる。このような構成において、ロックピン72を後方へ押す外力が加わった場合には、固定ピン74が貫通穴72Cの前端側の内壁に接するまでロックピン72がスプリング73の反発力に抗して移動することができる。尚、ロックピン72の先端側は、斜めに形成された斜面72Bが形成される。このようにソレノイドピン71の先端に、移動可能なロックピン72を取り付けたことによる得られる効果を図11〜13で説明する。
【0042】
図11は、下カバー61がスプリング12の動きによって鋸刃5が露出された開状態から保護状態(閉状態)の位置に移動し、その後にロック部材70が前方に突出し、下カバー61の後端部61Bの上側に突出した状態を示す。第2の実施例においては、ソレノイドピン71から離合するように付勢されたロックピン72の先端部付近が下カバー61の移動領域にまで突出するような位置関係となる。下カバー61の外周部には複数の突起部(ラッチ部)75が形成される。ところで図8のフローチャートのステップ82において、下カバー61をロックさせるために所定の待ち時間をおいてからロック部材70を稼働させるようにしている。しかしながら、下カバー61が被削材あるいは周囲の部材等に接触して何らかの理由で下カバー61の保護位置(閉状態)への復帰ができなかったり遅れたりした場合には、図12に示すように下カバー61の外周面61Cに接触する。この際、ロックピン72はスプリング73を圧縮してソレノイドピン71側に後退する。このようにロックピン72がソレノイドピン71に対して相対的に移動するので、ソレノイド20に対して無理な力がかからず、ソレノイド20の耐久性が向上する。一方、ロックピン72はスプリング73の付勢力を利用して下カバー61側に押しつけられるので、下カバー側の外周面を破損することもない。
【0043】
第2の実施例においては、ソレノイド20が稼働してロックピン72が前方に移動した際に、下カバー61が開放方向(反時計回りの移動、つまり刃先部6を露出させる方向)に移動させないようにするのが重要である。そのため、ロックピン72が前方に移動した際に、下カバー61が一方向(時計回り)にだけ回転できるように下カバー61の外周面に複数のラッチ部75が設けられる。ラッチ部75は、外周面から一定の高さ分突出する平坦面75Aと、平坦面から外周面までを斜めに接続する斜面75Bにより構成される。この構成によりロックピン72が下カバー61に当接しても、定常位置に戻る方向(反時計回り)への移動はロックされない。一方、稼働位置にする方向(時計回り)への移動は。ロックピン72の先端部の下面が平坦面75Aの片側(上側)部分に形成された段差面に当接するので制限される。
【0044】
図13は保護カバー61の一部形状を示す図であり、(1)は背面図であり、(2)は側面図である。この図から理解できるように、ラッチ部75は保護カバー61の外周面61Cに一定間隔で設けられる。ラッチ部75は、保護カバー61と一体に合成樹脂で製造される。尚、本実施例ではラッチ部75を突起形状で実現したが、突起でなく外周面61Cに形成された凹部として実現しても良い。尚、下カバー61には操作レバー62が一体的に設けられ、作業者が任意に下カバー61を開閉する際に作業者が操作レバー62を把持することができる。
【0045】
以上説明したように第2の実施例によれば、丸のこ装置1が作業者の意図しない急激な姿勢変化をした後、自動的に定常位置に復帰した下カバーの移動を確実にロックする事ができるようにしたので、周囲の造作物や材料の損傷を抑える事ができる。また、下カバー61の定常位置への復帰が遅れて、復帰途中にロック機構部56が稼働した場合であっても、ロック機構部56は下カバー61の定常位置への復帰を妨げないので、どんな稼働状況でも確実に造作物や材料の損傷を抑えることができる丸のこ装置を実現できる。
【実施例3】
【0046】
図14は、本発明の第3の実施例に係る丸のこ装置の上面図であり、一部をその断面図で示している。第3の実施例に係る丸のこ装置101においては、ブラシレスDCモータ102を用いることに特徴がある。ブラシレスDCモータは、ブラシ(整流用刷子)の無いDC(直流)モータであり、コイル(巻線)をステータ102B側に有し、永久磁石をロータ102A側に用い、インバータ回路で駆動された電力を所定のコイルへ順次通電することによりロータ102を回転させる。ステータ102Bのコイルへの通電をオン・オフさせるためのスイッチング素子106は、ブラシレスDCモータ102の一端側に取り付けられる回路基板105上に配置される。スイッチング素子106を駆動するために、丸のこ装置101の内部にはマイコン等の制御部(図示せず)が搭載される。
【0047】
図15はブラシレスDCモータ102の駆動制御系の構成を示すブロック図である。ブラシレスDCモータ102は、いわゆるインナーロータ型であって、複数組(本実施例では2組)のN極とS極を含む永久磁石(マグネット)を含んで構成される回転子(ロータ)102Aと、スター結線された3相の固定子巻線U、V、Wから成る固定子102Bと、回転子102Aの回転位置を検出するために周方向に所定の間隔毎、例えば角度60°毎に配置された3つの回転位置検出素子(ホール素子)121を有する。これら回転位置検出素子121からの位置検出信号に基づいて固定子巻線U、V、Wへの通電方向と時間が制御され、ブラシレスDCモータ102が回転する。回転位置検出素子121は、回路基板105(図14参照)上に配置すると良い。
【0048】
駆動回路基板7上に搭載される素子には、3相ブリッジ形式に接続されたFET(Field effect transistor)などの6個のスイッチング素子106(Q1〜Q6)を含む。ブリッジ接続された6個のスイッチング素子106(Q1〜Q6)の各ゲートは、制御信号出力回路129に接続され、6個のスイッチング素子106(Q1〜Q6)の各ドレインまたは各ソースは、スター結線された固定子巻線U、V、Wに接続される。これによって、6個のスイッチング素子106(Q1〜Q6)は、制御信号出力回路129から入力されたスイッチング素子駆動信号(H4、H5、H6等の駆動信号)によってスイッチング動作を行い、インバータ回路119に印加される直流電源115の直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに電力を供給する。尚、電源は直流電源ではなく交流電源でも良い。
【0049】
6個のスイッチング素子106(Q1〜Q6)の各ゲートを駆動するスイッチング素子駆動信号(3相信号)のうち、3個の負電源側スイッチング素子Q4、Q5、Q6をパルス幅変調信号(PWM信号)H4、H5、H6として供給し、制御・演算部120によって、トリガスイッチ127のトリガ操作量(ストローク)の検出信号に基づいてPWM信号のパルス幅(デューティ比)を変化させることによってブラシレスDCモータ102への電力供給量を調整し、ブラシレスDCモータ102の起動/停止と回転速度を制御する。
【0050】
ここで、PWM信号は、駆動回路基板7の正電源側スイッチング素子Q1〜Q3または負電源側スイッチング素子Q4〜Q6の何れか一方に供給され、スイッチング素子Q1〜Q3またはスイッチング素子Q4〜Q6を高速スイッチングさせることによって結果的に直流電源115の直流電圧から各固定子巻線U、V、Wに供給する電力を制御する。尚、本実施の形態では、負電源側スイッチング素子Q4〜Q6にPWM信号が供給されるため、PWM信号のパルス幅を制御することによって各固定子巻線U、V、Wに供給する電力を調整してブラシレスDCモータ102の回転速度を制御することができる。
【0051】
丸のこ装置101には、ブラシレスDCモータ102の回転速度を設定する速度設定手段128が設けられ、速度指示回路126は、速度設定手段128の設定状態を検出することによって、回転速度信号を制御・演算部120に送信する。制御・演算部120(マイコン)は、図示していないが、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための中央処理装置(CPU)、処理プログラムや制御データを記憶するためのROM、データを一時記憶するためのRAM、タイマ等を含んで構成される。
【0052】
制御・演算部120は、回転子位置検出回路122と回転数検出回路123の出力信号に基づいて所定のスイッチング素子106(Q1〜Q6)を交互にスイッチングするための駆動信号を形成し、その駆動信号を制御信号出力回路129に出力する。これによって固定子巻線U、V、Wの所定の巻線に交互に通電し、回転子102Aを設定された回転方向に回転させる。この場合、インバータ回路119の負電源側スイッチング素子Q4〜Q6に印加する駆動信号は、印加電圧設定回路125の出力制御信号に基づいてPWM変調信号として出力される。ブラシレスDCモータ102に供給される電流値は、電流検出回路124によって測定され、その値が制御・演算部120にフィードバックされることにより、設定された駆動電力となるように調整される。尚、PWM信号は正電源側スイッチング素子Q1〜Q3に印加しても良い。
【0053】
本実施例においては、加速度センサ131からの入力を受け付ける姿勢変化検出回路133は制御・演算部120と同じ回路基板上に設けられ、その出力は制御・演算部120にて判定される。つまり、第1の実施例のように加速度センサの出力の判定とソレノイドの駆動制御を行うためのマイコンを設ける必要はなく、ブラシレスDCモータ102を制御するためのマイコン(制御・演算部120)を用いて制御を行うことができる。制御・演算部120からソレノイド20への制御信号が出力され、ソレノイド20がソレノイドピン21を駆動することによって、下カバー111をロックする。
【0054】
第3の実施例によれば、切断作業を開始し下カバー111が被加工材に当接すると、下カバー112は切断作業の進行に合わせて回動し、上カバー107内に収納されて行く(開状態)。丸のこ装置101が刃先部が被加工材に噛み込んだ反動で被加工材から跳ね返される等して作業者の意図しない急激な姿勢変化をした際は、上カバー107の任意の箇所例えば上カバー107の後方側下端部に配設された加速度センサ131がその挙動の変化を検知し、制御・演算部120で閾値を越える変化か否かを判断する。その変化が閾値以上である場合は、下カバー111がスプリングの作用で定常位置(閉状態)に復帰するのに要する待ち時間をおいた後、ソレノイド20を駆動させ、ソレノイドピン21を下カバー111の回動動作を妨げる位置に突出させる。この状態では、下カバー111が周囲の造作物や材料に接触しても回動する事が出来ないため、刃先部の露出量は変わらない。よって、刃先部によって造作物や材料を損傷する可能性は増加しない。その後、制御・演算部120がトリガスイッチ127がON状態になった事を検知すると切断作業を再開するものと判断し、ソレノイドピン21を定常位置に復帰させる。
【0055】
さらに、制御・演算部120は、ソレノイド20を駆動を駆動する共に制御信号出力回路129に対してPWMデューティをゼロにするように制御するので、ブラシレスDCモータ102を即座に停止させることができる。第3の実施例においては、ブラシレスDCモータ102用に用いられる制御・演算部120を用いて加速度センサ131の信号処理やソレノイド20の駆動制御を行うので、部品点数の増加が最小で済み、携帯用切断機の製造コストアップを最小にすることができる。
【0056】
更に、丸のこ装置101は、鋸刃5のベース底面からの突出量を変更する所謂切込み深さ調整機構を有するため、作業者によって設定された切込み深さに対応するように、下カバー111がスプリングの作用で定常位置(閉状態)に復帰するのに要する待ち時間を、制御・演算部120の記憶手段に記憶させると共に、切込み深さ量を検出するための検出手段を設けるようにしても良い。この場合、例えば図14に示すように切込み深さ調整機構を構成する調整ノブ109を緩めてベース110の底面からの鋸刃の突出量を変更する際に、調整ノブ109近傍に切込み深さ検出手段150(図15参照)を設けることにより、設定された切込み深さを検出して制御・演算部120に切込み量信号を出力する。制御・演算部120は切込み深さ検出手段150からの信号に基づいて、記憶手段に予め記憶させてある切込み量と待ち時間との関係から対応する待ち時間を選択し、タイマに待ち時間をセットしておく。制御・演算部120は、加速度センサ131から姿勢変化信号(キックバック信号)が姿勢変化検出回路133を介して制御・演算部120に入力されたら、待ち時間がセットされたタイマを起動させて切込み深さに応じた待ち時間経過後にソレノイド20を駆動させ下カバー111をロックさせる。切込み深さが最大の場合(図2)は切込み深さが最小の場合(ベース底面からの鋸刃の突出量が少ない)に比べて待ち時間が長くなる。
【0057】
更に、丸のこ装置101の急激な姿勢変化として加速度センサ131を用いて加速度を検出するようにしたが、加速度に加えて、或いは加速度に変えて、モータに流れる電流やモータの回転速度を検出するようにしても良い。モータの電流は電流検出回路124、モータの回転数は回転数検出回路123によりそれぞれ検出し、モータ電流或いはモータ回転数の急激な変化を検出してキックバック等の姿勢変化を検出することもできる。図16に示すように、丸のこ装置101を駆動中のあるタイミングで、刃先部6が被加工材に噛み込んだ反動で被加工材から跳ね返される所謂キックバックが生じた場合、加速度が急激に上昇すると共に、モータ102に流れる電流(或いはインバータ回路119に流れる電流)も急激に上昇し、モータ102の回転数はロックされた状態となり低下する。この状態を各検出回路によって検出することでキックバックの発生を検出することができる。
【0058】
以上、本発明を示す実施例に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば本実施例においては携帯用切断機として丸のこ装置を用いた例で説明したが、丸のこ装置だけに限られずに可動式の保護カバー等を有する携帯用切断機であれば、本発明を同様に適用することができる。また、モータとして電気モータを用いた例で説明したが、エアモータやその他の動力モータを用いた携帯用切断機であっても同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 丸のこ装置 2 モータ 3 トリガスイッチ
4 モータハウジング 4A ハンドル部 5 鋸刃 6 刃先部
7 上カバー 7A (上カバーの)内壁 7B (上カバーの)穴
8 掛止部 9 調整レバー
10 ベース 10A (ベースの)底面 10B (ベースの)開口部
11 下カバー 11A (下カバーの)先端部
11B (下カバーの)後端部 12 スプリング 13 ネジ
14 緩衝材 16 ロック機構部 17 ネジ 18 基板
19 保護ケース 20 ソレノイド 21 ソレノイドピン
22 上ケース 22A (上ケースの)突出部
23 下ケース 23A、23B (下ケースの)穴
23C (下ケースの)切り抜き穴 27 電源線 28 信号線
29 ネジ穴 31 加速度センサ 32 マイコン 32A 記憶手段
32B タイマ 33 姿勢変化検出回路
56 ロック機構部 61 下カバー 61A (下カバーの)先端部
61B (下カバーの)後端部 61 (下カバーの)外周面
62 操作レバー 70 ロック部材 71 ソレノイドピン
71A (ソレノイドピンの)貫通穴 72 ロックピン
72A (ロックピンの)フランジ部 72B (ロックピンの)斜面
72C (ロックピンの)貫通穴 73 スプリング 74 固定ピン
75 突起部 75A (突起部の)平坦面 75B (突起部の)斜面
102 ブラシレスDCモータ 102A ロータ 102B ステータ
102C 回転軸 102 ハウジング
104 ハンドル部 106 スイッチング素子 107 上カバー
105 回路基板 106 スイッチング素子 109 調整ノブ
110 ベース 111 下カバー 112 冷却ファン
115 直流電源 116 ロック機構部 119 インバータ回路
120 制御・演算部 121 回転位置検出素子
122 回転子位置検出回路 123 回転数検出回路
124 電流検出回路 125 印加電圧設定回路 126 速度指示回路
127 トリガスイッチ 128 速度設定手段 129 制御信号出力回路
131 加速度センサ 133 姿勢変化検出回路
150 切込み深さ検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータによって駆動される切断手段と、前記モータを収容するハウジングと該ハウジングに取り付けられ前記切断手段によって切断される被加工材上を摺動するベースと、前記ハウジングに取り付けられ前記ベースから下方に突出する前記切断手段の外周を覆う閉状態と該外周を露出する開状態とに回動可能な保護カバーと、を有する携帯用切断機において、
前記携帯用切断機の姿勢変化を検出する検出手段と、
切断作業中に前記検出手段によって前記携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後に、前記保護カバーの前記開状態への移動を規制するロック機構を設けたことを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
前記検出手段によって前記携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出した後には、前記保護カバーの移動を制限すると共に前記モータを停止させることを特徴とする請求項1に記載の携帯用切断機。
【請求項3】
前記保護カバーは、前記携帯用切断機が前記被切断材から離れた際に、自動で定常位置まで戻って切断手段の露出部分を覆う自動復帰式であり、
前記携帯用切断機の急激な姿勢変化を検出された後に、前記ロック機構は前記保護カバーが前記閉状態まで戻った後に前記保護カバーの移動を制限することを特徴とする請求項1又は2の携帯用切断機。
【請求項4】
前記モータはブラシレスDCモータであり、該ブラシレスDCモータの回転を制御する制御手段を設け、
前記制御手段が、前記検出手段の出力を用いて前記ロック機構の動作を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の携帯用切断機。
【請求項5】
前記検出手段センサは前記ハウジングに設けられた加速度センサであり、前記携帯用切断機に加えられる加速度の大きさを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯用切断機。
【請求項6】
前記携帯用切断機は携帯用の丸のこ装置であり、
前記保護カバーは、丸のこ刃の外周に沿って円周方向に移動するカバーであり、
前記ロック機構は、前記保護カバーの移動範囲の外周側に設けられることを特徴とする請求項5に記載の携帯用切断機。
【請求項7】
前記ロック機構は、ソレノイドと、該ソレノイドにより移動されるソレノイドピンを有し、
前記ソレノイドピンが移動した際に前記保護カバーに当接することによって前記保護カバーの移動を制限することを特徴とする請求項6に記載の携帯用切断機。
【請求項8】
前記保護カバー外縁には、前記ロック機構が稼働した際に前記保護カバーの一方向のみの移動を可能にする段差部が設けられることを特徴とする請求項7に記載の携帯用切断機。
【請求項9】
前記ロック機構の動作を制御する制御手段と、
前記ベースの底面からの前記切断手段の突出量を変更する突出量変更機構と、を備え、
前記制御手段は、前記検出手段によって前記切断機の姿勢変化を検出した後、前記突出量変更機構によって設定された前記ベースの底面からの前記切断手段の突出量に応じて前記ロック機構を制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の携帯用切断機。
【請求項10】
前記突出量変更機構は、前記切断手段の前記ベースからの突出量を検出する突出量検出手段を有し、
前記制御手段は、前記突出量検出手段の検出結果に基づいて前記ロック機構の動作時間を制御することを特徴とする請求項9に記載の携帯用切断機。
【請求項11】
前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電流検出手段及び回転数検出手段の少なくとも一方からの検出信号に基づいて前記ロック手段を制御することを特徴とする請求項4〜10のいずれか一項に記載の携帯用切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−20205(P2011−20205A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166510(P2009−166510)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】