説明

携帯端末およびRFIDタグ通信システム

【課題】 消費電力を小さくすることができる携帯端末およびRFIDタグ通信システムを実現する。
【解決手段】 第1回目の通信ではタグリーダ1は最大出力レベルで第1の要求信号をRFIDタグ20へ送信する(t1)。それを受信したRFIDタグ20が第1の応答信号をタグリーダへ返信すると(t3)、タグリーダ1は第1の応答信号を復調して識別情報を読取り(t5)、第1の応答信号の応答レベルを検出する(t6)。タグリーダ1は検出した応答レベルに対応する出力レベルよりも一段低い出力レベルを出力レベルテーブル2aから選択し(t7,t8)、その選択した出力レベルで第2の要求信号をRFIDタグ20へ送信する(t9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波でRFIDタグと通信することにより、RFIDタグに記録されている情報を読取る機能を備えた携帯端末およびRFIDタグ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のRFIDタグ通信システムにおける通信手順は、最初に携帯端末からシングルリードコマンドをRFIDタグへ送信すると、RFIDタグが自身のID情報を携帯端末へ返信し、続いて携帯端末からデータリードコマンドをRFIDタグへ送信すると、RFIDタグが自身に記録されているデータを携帯端末へ返信するという手順である。
【0003】
このように上記のRFIDタグ通信システムでは、電波で通信を行うため、携帯端末とRFIDタグとの通信可能な距離が仕様に設定されている。また、携帯端末は上記の各コマンドを常時最大出力で送信することにより、RFIDタグとの距離が仕様の最長になった場合でも通信できるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−8481号公報(第26〜37段落、図1,2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した従来の携帯端末は、RFIDタグまでの距離に関係無く各コマンドを常時最大出力で送信するため、消費電力が大きく、バッテリの消耗が早いという問題がある。特に、RFIDタグとの距離が短く、RFIDタグと1個ずつ通信を行うような使い方では、最大出力で各コマンドを送信する必要がないため、消費電力が無駄になってしまう。
【0006】
そこでこの発明は、上述の諸問題を解決するためになされたものであり、消費電力を小さくすることができる携帯端末およびRFIDタグ通信システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明の第1の特徴は、電波でRFIDタグ(20)と通信することにより、前記RFIDタグに記録されている情報を読取る携帯端末(1)において、前記RFIDタグへ送信する送信信号の出力レベル(V1〜V11)と、前記RFIDタグが前記送信信号に応答して返信する応答信号の応答レベル(Vr1〜Vr11)とを対応付けて格納してなる格納手段(5)と、前記RFIDタグから受信した応答信号の応答レベルを検出する検出手段(S10)と、前記送信信号を最大出力レベルで前記RFIDタグへ出力し、前記RFIDタグから前記応答信号を受信した場合に、その受信した応答信号に対して前記検出手段が検出した応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも低い出力レベルを前記格納手段から選択する選択手段(S23)と、を備えており、前記送信信号を最大出力レベルで出力した後は、前記選択手段により選択された出力レベルにて次の送信信号を出力するように構成されてなる(S6)ことにある。
【0008】
上記の第1の特徴によれば、送信信号を最大出力レベルで出力した後は、RFIDタグから受信した応答信号の応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも低い出力レベルにて次の送信信号を出力することができるため、常時最大出力で送信信号を出力するものよりも消費電力を小さくすることができる。
【0009】
また、この発明の第2の特徴は、前述の第1の特徴において、前記選択手段(S23)は、前記検出手段(S10)により検出された応答レベル(Vr1〜Vr11)と対応付けられた出力レベル(V1〜V11)よりも一段低い出力レベルを前記格納手段(5)から選択することにある。
【0010】
上記の第2の特徴によれば、送信信号を最大出力レベルで出力した後は、RFIDタグから受信した応答信号の応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも一段低い出力レベルにて次の送信信号を出力することができるため、常時最大出力で送信信号を出力するものよりも消費電力を小さくすることができる。
特に、送信信号を一度に複数段低い出力レベルで出力しないため、次のRFIDタグに記録されている情報の読取りを失敗するおそれが少ない。
【0011】
特に、この発明の第3の特徴は、前述の第2の特徴において、前記選択手段(S23)は、前記応答信号により示される情報を読取る毎に、前記格納手段(5)から選択する出力レベル(V1〜V11)を一段ずつ低くすることにある。
【0012】
上記の第3の特徴によれば、応答信号により示される情報を読取る毎に、送信信号の出力レベルを一段ずつ低くすることができるため、常時最大出力で送信信号を出力するものよりも消費電力を小さくすることができる。
特に、応答信号により示される情報を読取る毎に、送信信号の出力レベルを一段ずつ低くすることができるため、出力レベルを情報の読取りに必要な最小の出力レベルまで絞ることができるので、より一層消費電力を小さくすることができる。
【0013】
この発明の第4の特徴は、前述の第1ないし第3の特徴のいずれか1つにおいて、前記選択手段(S23)は、前記応答信号により示される情報の読取りに失敗した場合に、今回出力した送信信号の出力レベルよりも一段高い出力レベルを選択することにある。
【0014】
上記の第4の特徴によれば、応答信号により示される情報の読取りに失敗した場合に、今回出力した送信信号の出力レベルよりも一段高い出力レベルにて送信信号を出力することができるため、次回は、その読取りに失敗した情報の読取りに成功することができる。
したがって、消費電力が小さく、かつ、情報の読取りの失敗が少ない携帯端末を実現することができる。
【0015】
この発明の第5の特徴は、前述の第4の特徴において、前記選択手段(S5〜S12)は、前記情報の読取りに失敗する毎に、前記格納手段から選択する出力レベルを一段ずつ高くすることにある。
【0016】
上記の第5の特徴によれば、情報の読取りに失敗する毎に、出力レベルを一段ずつ高くすることができるため、出力レベルを一度に複数段高くする場合よりも消費電力の増加を小さくすることができる。
【0017】
この発明の第6の特徴は、前述の第1ないし第6の特徴のいずれか1つにおいて、前記送信信号を最大出力レベルで出力した後、前記情報の読取りが成功したときの前記送信信号の出力レベルが第1の出力レベル以上または第2の出力レベル以下の場合は、その情報の読取りに成功したときの出力レベル以外で次の送信信号を出力することにある。
【0018】
情報の読取りに成功したときの出力レベルが必要以上に高い場合、あるいは、低い場合は、RFIDタグに異常が発生していると推定される。そこで、RFIDタグに異常が発生していると推定できる第1および第2の出力レベルを予め携帯端末に設定しておく。そして、情報の読取りに成功したときの出力レベルが第1の出力レベル以上の場合、あるいは、第2の出力レベル以下の場合は、その情報の読取りに成功したときの出力レベル以外で次の送信信号を出力することにより、次のRFIDタグに対して適正な出力レベルにて送信信号を出力することができる。
したがって、異常の発生しているRFIDタグよりも後のRFIDタグから情報を読取ることのできる確率を高めることができる。
【0019】
この発明の第7の特徴は、前述の第6の特徴において、前記情報の読取りが成功したときの送信信号の出力レベルが前記第1の出力レベル以上になった場合は、前記第1の出力レベルよりも少なくとも一段低い出力レベルにて前記次の送信信号を出力するように構成されてなることにある。
【0020】
RFIDタグに異常が発生し、RFIDタグの受信感度または応答レベルが正常時よりも低い場合に、RFIDタグからの応答が無いために携帯端末の出力レベルを高くして行くと、出力レベルが必要以上に高くなることが考えられる。このような場合に、次のRFIDタグに対しても必要以上に高い出力レベルで送信信号を出力すると、RFIDタグから正常に情報を受信できないおそれがある。
しかし、上記の第7の特徴によれば、第1の出力レベルよりも少なくとも一段低い出力レベルにて次の送信信号を出力することができるため、異常の発生しているRFIDタグよりも後のRFIDタグから情報を読取ることのできる確率を高めることができる。
【0021】
この発明の第8の特徴は、前述の第6の特徴において、前記情報の読取りが成功したときの送信信号の出力レベルが前記第2の出力レベル以下になった場合は、前記第2の出力レベルよりも少なくとも一段高い出力レベルにて前記次の送信信号を出力するように構成されてなることにある。
【0022】
RFIDタグに異常が発生し、RFIDタグの受信感度または応答レベルが正常時よりも高い場合に、携帯端末の出力レベルを低くして行くと、出力レベルが必要以上に低くなることが考えられる。このような場合に、次のRFIDタグに対しても必要以上に低い出力レベルで送信信号を出力すると、RFIDタグから正常に情報を受信できないおそれがある。
しかし、上記の第8の特徴によれば、第2の出力レベルよりも少なくとも一段高い出力レベルにて次の送信信号を出力することができるため、RFIDタグから正常に情報を受信することができる。
【0023】
この発明の第9の特徴は、前述の第1ないし第8の特徴のいずれか1つに記載の携帯端末と、RFIDタグとを備えるRFIDタグ通信システムにある。
【0024】
上記の第9の特徴によれば、消費電力を小さくすることができるRFIDタグ通信システムを実現することができる。
【0025】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1実施形態に係るRFIDタグ通信システムを構成するタグリーダの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図2】第1実施形態に係るRFIDタグ通信システムを構成するRFIDタグの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【図3】出力レベルテーブルの構成を示す説明図である。
【図4】タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離と、応答信号の応答レベルとの関係を示す説明図である。
【図5】送信信号の出力レベルと応答信号の応答レベルとの関係を示す説明図である。
【図6】タグリーダ1およびRFIDタグ20間の通信手順を示す説明図である。
【図7】図6の続きを示す説明図である。
【図8】タグリーダ1の主制御部2が実行する通信制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】図8の続きを示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態におけるタグリーダ1およびRFIDタグ20間の通信手順を示す説明図である。
【図11】タグリーダ1の主制御部2が実行する通信制御の流れを示すフローチャートである。
【図12】図11の続きを示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態の変更例に係るタグリーダに備えられた主制御部が実行する通信制御の流れの一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〈第1実施形態〉
この発明に係る第1実施形態について図を参照して説明する。図1は、この第1実施形態に係るRFIDタグ通信システムを構成するタグリーダの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。
【0028】
[タグリーダの主な電気的構成]
図1に示すように、携帯型のタグリーダ1は、主制御部2と、送信回路3と、受信回路4と、メモリ5と、送受信アンテナ6と、送信出力可変回路7と、サーキュレータ8と、電源回路9と、電池10と、表示部11と、キー操作部12とを備える。
【0029】
キー操作部12は、読取りを開始するときに操作するトリガースイッチやデータを入力するためのテンキーなどから構成されている。表示部11は、液晶表示装置などにより構成されており、タグリーダ1の動作状態やRFIDタグ20から読取った情報などを表示する。
主制御部2は、CPU、ROMおよびRAMなどから構成されており、キー操作部12から与えられる操作信号に応じてタグリーダ1の動作を制御する。
【0030】
送信回路3は、その詳細な構成については図示しないが、主制御部2から出力されたデータを変調用の信号に変換する変換回路と、この変換回路からの信号をASK(Amplitude Shift Keying)変調する変調回路と、この変調回路からの信号を増幅する増幅回路と、この増幅回路からの信号のうち必要な周波数の信号だけを通過させるフィルタ回路とを備える。
【0031】
サーキュレータ8は、送信回路3のフィルタから出力された高周波信号の逆方向への流れを防止する。つまり、送信回路3側から入力した高周波信号を送受信アンテナ6へ出力し、送受信アンテナ6から入力した高周波信号を受信回路4側に出力する。そして、送受信アンテナ6は、高周波信号を無線信号としてRFIDタグ20へ送信し、また、RFIDタグ20からの無線信号を受信する。
【0032】
受信回路4は、その詳細な構成については図示しないが、送受信アンテナ6によって受信され、サーキュレータ8から出力された信号を復調する復調回路と、この復調回路からの信号を2値化する2値化回路と、この2値化回路からのデジタルデータに基づいてRFIDタグ20からの応答信号を復元する復元回路とを備える。
電源回路9は、電池10から供給される電源に基づいて、表示部11および各回路へ動作電源を供給する。
【0033】
送信出力可変回路7は、タグリーダ1の特徴部分であり、送信信号の出力レベルを適切な出力レベルに変えることにより、消費電力を小さくするためのものである。送信出力可変回路7は、RFIDタグ20から返信される応答信号の応答レベルに応じて送信信号の出力レベルを適切な出力レベルに変えるように構成されている。メモリ5は、送信出力可変回路7によって変更された出力レベルを更新可能に格納する。この実施形態では、メモリ5は、格納されたデータを書換え可能なメモリであり、例えば、EEPROMなどのフラッシュメモリ、または、RAMである。
【0034】
ここで、送信信号の出力レベルと、応答信号の応答レベルとの関係について説明する。図4は、タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離と、応答信号の応答レベルとの関係を示す説明図であり、図5は、送信信号の出力レベルと応答信号の応答レベルとの関係を示す説明図である。
【0035】
タグリーダ1の出力レベルを最大にした状態では、図4に示すように、タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離が遠くなるほど、応答信号の応答レベルが低くなる(低,中,高)。ここで、出力レベルが最大出力レベル固定ではなく、可変であるとすると、距離が仕様範囲の最長である場合は、送信出力レベルを最大にする必要があるが、距離が最長よりも短い場合は、出力レベルを最大にしなくてもRFIDタグ20が応答できるため、出力レベルを最大にする必要がない。
【0036】
図5に示すように、タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離が近距離(P1)の範囲である場合は、出力レベルをV1〜V4の低レベルに設定すれば、RFIDタグ20は、応答レベルVr1〜Vr4の範囲で応答信号を返信することができる。また、距離が中距離(P2)の範囲である場合は、出力レベルをV4〜V6に設定すれば、RFIDタグ20は、応答レベルVr4〜Vr6の範囲で応答信号を返信することができる。さらに、距離が遠距離(P3)の範囲である場合は、出力レベルをV6〜V8に設定すれば、RFIDタグ20は、応答レベルVr6〜Vr8の範囲で応答信号を返信することができる。さらに、RFIDタグ20は、タグリーダ1の出力が一定である場合に、距離が所定範囲内で変化してもタグリーダ1に応答することができる。
【0037】
つまり、ある距離の範囲に対して必要な出力レベルは1つではなく、複数存在する。このため、タグリーダ1は、その複数存在する出力レベルの中でより低い出力レベルにて送信信号をRFIDタグ20へ出力すれば、無駄な電力を消費しないため、消費電力を小さくすることができる。例えば、図5において、最初に最大出力レベルで送信信号を出力したときにRFIDタグ20から返信された応答信号の応答レベルがVr5であった場合、RFIDタグ20は、中距離P2の範囲に存在すると推定される。
【0038】
このとき、応答レベルVr5に対応する出力レベルはV5であるが、出力レベルV4でも中距離P2内に存在するRFIDタグ20を応答させることができるため、出力レベルV5よりも一段低い出力レベルV4を選択し、出力レベルV4で次の送信信号を出力すれば、消費電力を小さくすることができる。
【0039】
図3は、出力レベルテーブルの構成を示す説明図である。出力レベルテーブル2aは、複数の応答レベルと出力レベルとを対応付けて構成されており、主制御部2を構成するROMに格納されている。主制御部2は、受信回路4により受信された応答信号の応答レベルを検出し、その検出した応答レベルに対応付けられている出力レベルよりも一段低い出力レベルを出力レベルテーブル2aから選択し、その選択した出力レベルを送信出力可変回路7へ出力する。
【0040】
そして、送信出力可変回路7は、送受信アンテナ6から送信される送信信号の出力レベルが、主制御部2から入力した出力レベルとなるように送信回路3に指示する。この実施形態では、送信回路3に設けられた増幅回路は、送信出力可変回路7からの指示に応じて増幅信号の電圧を変えるように構成されており、増幅回路が増幅信号の電圧を変えることにより、送信信号の出力レベルが変わるようになっている。
【0041】
[RFIDタグの主な電気的構成]
図2は、この第1実施形態に係るRFIDタグ通信システムを構成するRFIDタグの主な電気的構成をブロックで示す説明図である。RFIDタグ20は、ICチップ21を搭載している。ICチップ21は、送受信アンテナ22と、整流回路23と、復調回路24と、変調回路25と、制御回路26と、メモリ27とを備える。
【0042】
整流回路23は、タグリーダ1から送信された送信信号が送受信アンテナ22を介して入力されると、その入力された送信信号の搬送波信号を整流して動作用電源を生成し、制御回路26およびその他の構成要素に供給する。復調回路24は、搬送波信号に重畳されている受信データを復調して制御回路26に出力する。メモリ27は、RFIDタグ20が取付けられている物品などに関する情報(以下、格納情報という)、他のRFIDタグと識別するための識別情報などが書換え可能に格納されている。
【0043】
制御回路26は、整流回路23から動作用電源が供給されると、メモリ27から情報を読出して送信データとして変調回路25に出力し、変調回路25は、搬送波信号をメモリ27から読出された送信データで変調して送受信アンテナ22からタグリーダ1へ返信する。
【0044】
[通信制御]
次に、タグリーダ1がRFIDタグと行う通信制御の内容について図を参照して説明する。図6はタグリーダ1およびRFIDタグ20間の通信手順を示す説明図であり、図7は図6の続きを示す説明図である。図8はタグリーダ1の主制御部2が実行する通信制御の流れを示すフローチャートであり、図9は図8の続きを示すフローチャートである。なお、タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離は、仕様範囲の最大距離以下であるとする。
【0045】
タグリーダ1の電源が立ち上がると、主制御部2は、メモリ5に格納されているデータを消去するなどの初期設定を実行する(図8のステップ(以下、ステップをSと略す)1)。続いて、主制御部2は、初期設定を実行したことを示す初期設定フラグをONする(S2)。続いて、主制御部2は、トリガースイッチがONしたか否かを判定し(S3)、ONしたと判定した場合は(S3:Yes)、初期設定フラグがONしているか否かを判定する(S4)。
【0046】
ここで、主制御部2は、初期設定フラグがONしていると判定した場合は(S4:Yes)、RFIDタグ20に記録されている識別情報の返信を要求するための第1の要求信号を最大出力レベルV8でRFIDタグ20へ送信し(S5、図6の時間t1)、初期設定フラグをOFFする(S7)。一方、RFIDタグ20は、タグリーダ1から送信された第1の要求信号の受信に成功すると(t2)、自身の識別情報を重畳した第1の応答信号をタグリーダ1へ返信する(t3)。
【0047】
そして、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20から返信された第1の応答信号を受信したか否かを判定し(S8)、受信したと判定すると(S8:Yes、t4)、その受信した第1の応答信号を復調して識別情報を読取る(S9、t5)。続いて、主制御部2は、受信した第1の応答信号の応答レベルVrを検出する(S10、T6)。続いて、主制御部2は、出力レベルテーブル2a(図3)を参照し(S12、t7)、検出した応答レベルVrに対応する出力レベルを検索する(S13)。
【0048】
続いて、主制御部2は、検索された出力レベルよりも一段低い出力レベルを出力レベルテーブル2aから読出し、それをメモリ5に格納する(図9のS14、t8)。たとえば、S10において検出した応答レベルがVr6であった場合は、その応答レベルVr6に対応する出力レベルV6よりも一段低い出力レベルV5をメモリ5に格納する。
【0049】
続いて、主制御部2は、RFIDタグ20のメモリ27に格納されている格納情報の返信を要求するための第2の要求信号を、メモリ5に格納されている出力レベルにてRFIDタグ20へ送信する(S15、t9)。一方、RFIDタグ20は、タグリーダ1から送信された第2の要求信号の受信に成功すると(t10)、自身のメモリ27に格納されている格納情報を重畳した第2の応答信号をタグリーダへ返信する(t11)。
【0050】
そして、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20から返信された第2の応答信号を所定時間内に受信したか否かを判定し(S19)、受信したと判定すると(S19:Yes、t12)、その受信した第2の応答信号を復調して格納情報を読取る(S20、t13)。また、主制御部2は、第2の応答信号を所定時間内に受信しなかったと判定した場合は(S19:No)、エラー報知を行う(S21)。
【0051】
そして、次の読取り対象であるRFIDタグ20に対してトリガースイッチがONすると(図8のS3:Yes)、前回のルーチンのS7において初期設定フラグがOFFになっているため、初期設定フラグはONしていないと判定し(S4:No)、第1の要求信号をメモリ5に格納されている出力レベルでRFIDタグ20に出力する(S6)。つまり、タグリーダ1の操作者は、次のRFIDタグ20も前回と略同じ距離で読取りを行う可能性が高いため、前回の読取り時と同じ出力レベルで第1の要求信号を出力する。
【0052】
続いて、主制御部2は、前回のルーチンと同じように識別情報および格納情報の読取りを行い、RFIDタグ20から返信された第1の応答信号の受信に成功する毎に送信出力レベルを一段ずつ低くして行く(S14)。このように、タグリーダ1は、2個目のRFIDタグ20に対する送信出力レベルを1個目のRFIDタグ20に対する送信出力レベルよりも低くすることができるため、消費電力を小さくすることができる。
【0053】
ここで、RFIDタグ20が応答しなかった場合を説明する。主制御部2は、n回目の読取り時に、メモリ5に格納されている出力レベルで第1の要求信号をRFIDタグ20へ送信したとする(S6、図7のt14)。一方、RFIDタグ20は、第1の要求信号の受信に失敗し(t15)、応答できなかったとする(t16)。このため、主制御部2は、第1の応答信号を所定時間内に受信しなかったと判定する(S8:No)。
【0054】
続いて、主制御部2は、出力レベルテーブル2aを参照し(S16、t18)、メモリ5に格納されている出力レベルよりも一段高い出力レベルを読出す(S17、t19)。続いて、主制御部2は、メモリ5に格納されている出力レベルをS17において読出した出力レベルに更新し(S18)、その更新した出力レベルにて再度第1の要求信号をRFIDタグ20へ送信する(S6、t20)。また、主制御部2は、RFIDタグ20から第1の応答信号を受信するまで出力レベルを一段ずつ高くして行く。
【0055】
つまり、操作者が、RFIDタグ20の読取りを繰り返すうちに、タグリーダ1からRFIDタグ20までの距離が遠くなり、第1の要求信号の出力レベルが不足することが考えられるため、このような場合には、第1の応答信号の受信に成功するまで出力レベルを一段ずつ高くする。
したがって、第1の要求信号の出力レベルが不足することによって、RFIDタグ20の識別情報および格納情報を読取ることができなくなってしまうおそれがない。
【0056】
そして、上記のように第1の要求信号の出力レベルが高くなった結果、RFIDタグ20が第1の要求信号の受信に成功し(t21)、第1の応答信号をタグリーダ1へ返信すると(t22)、タグリーダ1の主制御部2は、第1の応答信号の受信に成功し(S8:Yes、t23)、その第1の応答信号を復調して識別情報を読取る(S9、t24)。
【0057】
[第1実施形態の効果]
(1)第1実施形態のタグリーダおよびRFIDタグ通信システムを実施すれば、第1の要求信号を最大出力レベルで送信した後は、RFIDタグ20から受信した第1の応答信号の応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも低い出力レベルにて次の信号をRFIDタグ20へ送信することができるため、常時最大出力で第1および第2の要求信号を出力するタグリーダよりも消費電力を小さくすることができる。
【0058】
(2)特に、出力レベルを一段ずつ低くすることができるため、出力レベルが低くなり過ぎて情報の読取りに失敗するおそれがない。
したがって、消費電力が小さく、かつ、情報の読取りの失敗が少ないタグリーダを実現することができる。
【0059】
(3)また、情報の読取りに失敗した場合に、今回出力した信号の出力レベルよりも一段高い出力レベルにて信号を出力することができるため、次回は、その読取りに失敗した情報の読取りに成功することができる。
したがって、消費電力が小さく、かつ、情報の読取りの失敗が少ないタグリーダを実現することができる。
【0060】
(4)さらに、情報の読取りに失敗する毎に、出力レベルを一段ずつ高くすることができるため、出力レベルを一度に複数段高くする場合よりも消費電力の増加を小さくすることができる。
【0061】
(5)さらに、情報の読取りに成功するまで、情報の読取りに失敗する毎に、出力レベルを一段ずつ高くするため、情報の読取に失敗するおそれが少ない。
【0062】
〈第2実施形態〉
次に、この発明の第2実施形態について図を参照しながら説明する。この実施形態のタグリーダおよびRFIDタグ通信システムは、RFIDタグの異常によってタグリーダの出力レベルが所定レベル以上になった場合でも次以降のRFIDタグを正常に読取ることのできることを特徴とする。図10は、タグリーダ1およびRFIDタグ20間の通信手順を示す説明図である。図11はタグリーダ1の主制御部2が実行する通信制御の流れを示すフローチャートであり、図12は図11の続きを示すフローチャートである。なお、この実施形態のタグリーダは、主制御部2が実行する通信制御の一部以外は、前述の第1実施形態のタグリーダ1と同じ構成であるため、同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0063】
[通信制御]
ここでは、異常が発生しているRFIDタグ20は、受信感度または応答レベルが正常よりも低いとする。図10に示すように、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20の受信感度または応答レベルが正常よりも低いために、第1の要求信号の出力レベルを一段ずつ高くして行った(t20、t25)。そして、その結果、RFIDタグ20が第1の要求信号の受信に成功し(t26)、第1の応答信号を返信し(t27)、タグリーダ1が第1の応答信号の受信に成功した(図11のS8、t28)。
【0064】
すると、タグリーダ1の主制御部2は、受信した第1の応答信号を復調して識別情報を読取り(S9、t29)、受信した第1の応答信号の応答レベルを検出する(S10、t30)。続いて、主制御部2は、今回のルーチンのS6においてRFIDタグ20へ送信した第1の要求信号の出力レベル、つまり現在メモリ5に格納されている出力レベルVが、予めROMなどに設定されている閾値Vth1以上か否かを判定する(S11)。ここで、閾値Vth1以上であると判定した場合は(S11:Yes、t31)、出力レベルテーブル2aを参照し(図12のS22、t32)、閾値Vth1と対応する出力レベルよりも一段低い出力レベルを読出し、それをメモリ5に格納する(S23、t33)。
【0065】
続いて、主制御部2は、メモリ5に格納されている出力レベルで第2の要求信号をRFIDタグ20へ送信する(S15)。続いて、主制御部2は、RFIDタグ20から返信された第2の応答信号を受信すると(S19:Yes)、その受信した第2の応答信号を復調して格納情報を読取る(S20)。
【0066】
[第2実施形態の効果]
上述のように、第2実施形態のタグリーダおよびRFIDタグ通信システムを実施すれば、RFIDタグ20に異常が発生し、RFIDタグ20の受信感度または応答レベルが正常時よりも低くなっているためにタグリーダ1の出力レベルが必要以上に高くなった場合であっても、その必要以上に出力レベルが高くなったことを検出し、出力レベルを低くしてから要求信号をRFIDタグ20へ送信することができる。
したがって、異常が発生しているRFIDタグ20と通信を行った場合でも、それ以降のRFIDタグ20からは正常に情報を読取ることができる。なお、上記第2実施形態のタグリーダ1が、この発明の請求項7,8に係るタグリーダに対応する。
【0067】
(第2実施形態の変更例)
図13は、第2実施形態の変更例に係るタグリーダに備えられた主制御部が実行する通信制御の流れの一部を示すフローチャートである。主制御部2は、第2実施形態における通信制御のS1〜S10およびS16〜S18と同じ処理を実行するため、その同じ処理に対応する部分の図示を省略している。ここでは、異常が発生しているRFIDタグ20は、受信感度または応答レベルが正常よりも高いとする。
【0068】
タグリーダ1の主制御部2は、第1の要求信号を送信したときの出力レベルが、予めROMなどに設定されている閾値Vth2以下か否かを判定する(S11)。ここで、閾値Vth2以下であると判定した場合は(S11:Yes)、出力レベルテーブル2aを参照し(S22)、閾値Vth2と対応する出力レベルよりも一段高い出力レベルを読出し、それをメモリ5に格納する(S24)。
【0069】
続いて、主制御部2は、メモリ5に格納されている出力レベルで第2の要求信号をRFIDタグ20へ送信する(S15)。続いて、主制御部2は、RFIDタグ20から返信された第2の応答信号を受信すると(S19:Yes)、その受信した第2の応答信号を復調して格納情報を読取る(S20)。
【0070】
上述のように、第2実施形態の変更例に係るタグリーダ1を実施すれば、RFIDタグ20に異常が発生し、RFIDタグ20の受信感度または応答レベルが正常時よりも高くなっているためにタグリーダ1の出力レベルが必要以上に低くなった場合であっても、その必要以上に出力レベルが低くなったことを検出し、出力レベルを高くしてから要求信号をRFIDタグ20へ送信することができる。
したがって、異常が発生しているRFIDタグ20と通信を行った場合でも、それ以降のRFIDタグ20からは正常に情報を読取ることができる。なお、上記第2実施形態のタグリーダ1が、この発明の請求項7,9に係るタグリーダに対応する。
【0071】
〈その他の実施形態〉
(1)前述の各実施形態において、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20から第2の応答信号を受信したときに出力レベルを低く設定することもできる。この制御内容を実行するタグリーダも前述の各実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0072】
(2)また、RFIDタグ20から第1および第2の応答信号を受信したときのそれぞれにおいて出力レベルを低く設定することもできる。この制御内容を実行するタグリーダも前述の各実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0073】
(3)前述の第2実施形態において、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20から第2の応答信号を受信したときに(S19:Yes)、今回のルーチン(S15)でRFIDタグ20へ送信した第2の要求信号の出力レベルVが閾値Vth1以上であるか否かを判定することもできる。また、RFIDタグ20から第1および第2の応答信号を受信したときのそれぞれにおいて出力レベルVが閾値Vth1以上であるか否かを判定することもできる。これらの制御内容を実行するタグリーダも前述の第2実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0074】
(4)前述の第2実施形態の変更例において、タグリーダ1の主制御部2は、RFIDタグ20から第2の応答信号を受信したときに(S19:Yes)、今回のルーチン(S15)でRFIDタグ20へ送信した第2の要求信号の出力レベルVが閾値Vth2以下であるか否かを判定することもできる。また、RFIDタグ20から第1および第2の応答信号を受信したときのそれぞれにおいて出力レベルVが閾値Vth2以下であるか否かを判定することもできる。これらの制御内容を実行するタグリーダも前述の第2実施形態の変更例と同じ効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0075】
1・・タグリーダ(携帯端末)、2・・主制御部、2a・・出力レベルテーブル、
5・・メモリ、7・・送信出力可変回路、20・・RFIDタグ、
21・・ICチップ、27・・メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波でRFIDタグと通信することにより、前記RFIDタグに記録されている情報を読取る携帯端末において、
前記RFIDタグへ送信する送信信号の出力レベルと、前記RFIDタグが前記送信信号に応答して返信する応答信号の応答レベルとを対応付けて格納してなる格納手段と、
前記RFIDタグから受信した応答信号の応答レベルを検出する検出手段と、
前記送信信号を最大出力レベルで前記RFIDタグへ出力し、前記RFIDタグから前記応答信号を受信した場合に、その受信した応答信号に対して前記検出手段が検出した応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも低い出力レベルを前記格納手段から選択する選択手段と、を備えており、
前記送信信号を最大出力レベルで出力した後は、前記選択手段により選択された出力レベルにて次の送信信号を出力するように構成されてなることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記選択手段は、
前記検出手段により検出された応答レベルと対応付けられた出力レベルよりも一段低い出力レベルを前記格納手段から選択することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記応答信号により示される情報を読取る毎に、前記格納手段から選択する出力レベルを一段ずつ低くすることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記選択手段は、
前記応答信号により示される情報の読取りに失敗した場合に、今回出力した送信信号の出力レベルよりも一段高い出力レベルを選択することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の携帯端末。
【請求項5】
前記選択手段は、
前記情報の読取りに失敗する毎に、前記格納手段から選択する出力レベルを一段ずつ高くすることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記送信信号を最大出力レベルで出力した後、前記情報の読取りが成功したときの前記送信信号の出力レベルが第1の出力レベル以上または第2の出力レベル以下の場合は、その情報の読取りに成功したときの出力レベル以外で次の送信信号を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記情報の読取りが成功したときの送信信号の出力レベルが前記第1の出力レベル以上になった場合は、前記第1の出力レベルよりも少なくとも一段低い出力レベルにて前記次の送信信号を出力することを特徴とする請求項6に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記情報の読取りが成功したときの送信信号の出力レベルが前記第2の出力レベル以下になった場合は、前記第2の出力レベルよりも少なくとも一段高い出力レベルにて前記次の送信信号を出力するように構成されてなることを特徴とする請求項6に記載の携帯端末。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の携帯端末と、RFIDタグとを備えることを特徴とするRFIDタグ通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−231318(P2010−231318A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75874(P2009−75874)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】